96条改憲批判ーその2 「敵は本能寺」論の切り口
安倍首相は、こういう。
「6、7割の国民が憲法を変えたいと思っていても、3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば、国民が一切、指一本触れることができないのはおかしい」「3分の1超の国会議員が反対すれば議論すらできない。あまりにもハードルが高すぎる」
えっ? 「6、7割の国民が憲法を変えたい」ですって? 何をどのように変えたいということでしょうか。「9条2項の削除」と「集団的自衛権の明記」、そして「基本的人権の縮減」に「天皇の元首化」ですって。それが、国民大多数の意見? それはないでしょう。国民ではなくて、あなたが変えたい憲法の中身じゃないですか。
えっ? 「6、7割の国民が憲法を変えたい」は仮定の話ですって? そんな仮定に過ぎない話で、大切な憲法を変えようだなんて、それこそ不謹慎。
96条は改憲手続き条項。改憲勢力が手続条項の改正だけに甘んじるはずはない。96条改憲は、紛れもなく「改憲のための改憲」である。「手段としての改憲」であるからには、必ず「目的としての改憲」が想定されている。では、安倍自民と維新・みんなの右翼3党が「手段としての改憲」のあとに、真の狙いとしている「目的としての改憲」の内容とは何か。
96条改憲の目的を意識すると、「96条改憲は、9条改憲の突破口」「96条改憲の先には、軍事大国化への道がある」「96条改憲は、本丸攻撃への外堀を埋めること」「96条改憲は、戦争への一里塚」「96条改憲の狙いは天皇を戴く国作りのため」「96条は9条の防波堤」「96条は人権と平和の砦だ」‥と言えよう。
改憲派の戦術は、まずは改憲手続のハードルを下げておくと言うこと。改憲の真の目的については、敢えて明確にしない。手続の変更だから国民の抵抗は激しくはあるまい。改憲要件を緩めておけば、頃合いを見計らって、真の目的達成に有利にことを運ぶことができる。これが右翼3党の思惑である。夏の陣の前に、大阪城の外堀・内堀を埋めた、あのやり方だ。何のための96条改憲かは伏せておいて、突如「敵は本能寺にあり」というあのやり方でもある。
「敵は本能寺」論はこんな語り口だろうか。
*「安倍首相は、『3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば、国民が憲法を変えたいと思っても実現できないというのはおかしい』と言っているね。議会より国民の意思が優先すべきなのだから、一理あるんじゃない」
☆「それ、まさしく『敵は本能寺』だ。安倍さんは、国民の意思を尊重しようなんて思っているんじゃない。本音のところは、憲法を根本から変えてしまおうと思っているだけさ」
*「96条の手続ではなく、その先にある変えたい憲法の中身が『本能寺』ってわけか。具体的にはどんなことだろう」
☆「ボクは、四つに整理している。日本国憲法の3本の柱である、基本的人権・国民主権・戦力の放棄の全部をなし崩しにしてしまうこと、そしてその3本の柱の土台である立憲主義を骨抜きにしてしまうこと」
*「いきなり『敵は本能寺』なんて言わずに、堂々と攻撃対象を明確にしたってよさそうじゃないか」
☆「それができないから、ごまかしているんだと思うよ。安倍さんが自分でも言っているとおり9条改憲の提案はハードルが高すぎる。9条改憲を争点に選挙するリスクも回避したい。取りあえずは、アベノミクスのボロがでる前、支持率が高いうちに96条改憲をやってしまいたい。」
*「手続きを変えるんだから、抵抗も少ないという読みだろうね。それで、『敵は本能寺にあり』と名乗りを上げるのは、いつになるんだろうね」
☆「96条改憲が終わって、しばらくしてから。右派勢力を糾合して改憲発議の案文を作るときだね」
*「明智光秀の作戦は図に当たった。本当の狙いはできるだけ隠しておくことが、有効だったわけだ。改憲も同じことだろうか」
☆「96条改憲の真の狙いが何で、発議要件緩和のあとに何が続くかを見極めておかないと、信長同様に、われわれ国民が寝首をかかれることになる」