澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

日弁連「教育法制『改正』問題に関する各界懇談会」

日本弁護士連合会は、全国の弁護士の強制加入団体である。当然に様々な政治信条をもつ人が会員となっている。だから、政治的スローガンで、会としての行動をすることはない。

法に基づく弁護士の使命は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」である(弁護士法1条1項)。だから、「基本的人権を擁護すること」「社会正義を実現すること」を目標とした活動をすることは旺盛に行われるべきで、むしろ弁護士会の責務でもある。しかも、「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない」(同条2項)という規定さえある。個人としての弁護士が、弁護士活動に参加して、基本的人権擁護のために「法律制度の改善に努力」すべきことは弁護士の義務ですらある。

もっとも、制度の改善は政治的な過程を経なければ実現し得ない。また、人権課題と政治課題との境界には微妙なものがある。ときに、「人権課題のようでもあるが、政治的色彩を払拭できない以上は弁護士会として取りあげるべきではない。」との意見にぶつかる。しかし、そのように萎縮していたのではすべての人権課題への取り組みが不可能になる。むしろ、「現実の社会に生起するすべての人権課題が、多かれ少なかれ政治的色彩を帯びることは当然である。人権課題である以上は、政治的色彩があろうとなかろうと弁護士会がとり組むことに躊躇してはならない」というべきだろう。

法体系の最上位にある日本国憲法は、豊かな諸人権の擁護を最高の憲法的価値とし、その諸人権の実現のために諸制度を設けている。弁護士会は、人権問題として広範な諸制度に関わる問題に取り組むことが可能である。「その課題は政治的色彩が濃いから、政治問題だ」という会内の声は克服しなければならない。法律家の団体として、自ずから圧倒的多数の賛意を得る合意形成の着地点がある。

そのような弁護士会の課題のひとつに教育問題がある。安倍政権の教育再生実行会議の動向を見極め、子どもの教育を受ける権利擁護の観点から、適切な対応をしなければならない。2006年の第1次安倍内閣における教育基本法改正問題の際にも、重大な憲法問題と考えられたが、今また教育は喫緊の重要課題となっている。

日弁連に、教育法制改正問題対策ワーキンググループができて、教育関係の各学会や市民運動団体に呼び掛けて、本日、第1回の「教育法制『改正』問題に関する各界懇談会」が開催され、私も出席した。

本日は、各参加者がそれぞれの問題意識を語った。それだけで2時間近く。
発言に共通しているものは、強い危機意識。異口同音に、このままではたいへんな事態になってしまう、戦後民主主義の成果としての教育が根こそぎ改変されてしまいかねない危機にあることが語られた。

もう少し具体的には、「教育への権力的統制の強化」と「競争による教育の破壊」の2点が柱になっている。前者は明文改憲や集団的自衛権行使容認の解釈改憲、特定秘密保護法などと軌を一にする国家主義的路線。「戦争のできる国づくりに適合する教育」と何人もが語った。後者は、一握りのエリートとそれに奉仕する従順な労働力を養成しようという新自由主義路線。格差社会化、子どもの貧困化などの問題が語られた。

最大のテーマとして関心の中心となったのが、やはり教育委員会制度改変問題。具体的には、今国会に上程予定とされる地教行法改正問題。課題はそれひとつだけでなく、教科書検定や採択の制度の問題。「日の丸・君が代」強制、教育助成の問題、在日の民族教育への差別解消、道徳の教科化、学力テスト、歴史教科書への介入、学習指導要領解説書の押し付け問題…。「安倍政権は、これからもっと多様な教育統制の具体策を出してくる予定だ」という研究者からの発言もあった。

いくつか、印象深い発言を摘記しておきたい。
「教育行政は、やらねばならない課題が山積していることが明確なのにやろうとしない。そして、やってはならないとされている教育内容への介入だけにこの上なく熱心になっている」

「今、戦後の教育改革を振り返って見るチャンスでもある。あのときに、地方だけでなく中央にも教育委員会をという声が高かった。当然、文部省など有害無益で不要ということだった。文部省は辛うじて生き残ったが、もう一度そのときの議論を今振り返って見るべきではないか」

「辛うじて生き残った文部省の大臣は、最初のうちは政治家ではなく、学者を充てていた。教育の独立と政治的中立には、それだけの気を使っていたのだ。そのことをもう一度思いおこそう」

「戦後の教育改革といえば、教育基本法、6・3制、共学、社会科、教育委員会制度ではないか。今、その全部が『教育再生』の名の下に、なし崩しにされようとしている」

そうして、自戒の念を込めて、何人もが次のように語った。
「理念や制度の問題は複雑で面倒だ。私たちは、多くの市民に理解してもらえるように話してこなかったのではないか。これからは、分かりやすい言葉で、正確にやさしく語る術を身に付けなければならない」

今後も連絡を取りあうことを確認して散会した。第1回懇談会、首尾は上々ではなかったか。
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NHK籾井会長、百田・長谷川両経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い

下記URLから
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3030-1.html
http://chn.ge/1eySG24

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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.htmlに
☆抗議内容の大綱は
 *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
 *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
 *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
 *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
以上よろしくお願いします。
(2014年3月5日)

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