澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「憲法の番人」か「安倍政権の番犬」か

「月とすっぽん」とは、形ばかりは似たようで実は正反対なものの喩え。「月」は仰ぎ見る美しいもの。「スッポン」は泥沼を這う美しからざるもの。「あなたは月のよう」とは褒め言葉で、「スッポン同然」は悪口となる。

「番人」と「番犬」も、似ているようでニュアンスは大きく異なる。番人は自分の意思を持っている。守るべき価値あるものを意識して守る。最高裁を指して、「人権の砦、憲法の番人」と言って、最高裁が怒ることはない。しかし、番犬は自分の意思を持たずに命令に盲従する。命令の正邪や理非を解せず、守るべき物の価値を判断する意思も能力ももたない。特定の人に面と向かって「番犬」と言えば、その姿勢の批判となる。言われた方は、その喩えが侮辱だと言いたくもなろう。

共産党の論客として知られる小池晃議員が、小松一郎法制局長官に向かって、「安倍政権の番犬と言った」と報道されている。複数の報道によると、正確には「番犬」ではなく「番犬みたい」。それも「安倍政権の番犬みたいなことをしないで下さい」という言いまわしで、「番犬」との決めつけはしていなかったようだ。それでも、言われた小松さんが腹に据えかねたとして、社民党党首への答弁の機会に「反論」したことで話題となった。

各紙が報道しているが、本日(3月6日)の朝日は「『安倍政権の番犬』指摘に反論」という見出しで次のように報じ、小池さんの反論も掲載している。

『小松一郎・内閣法制局長官は5日の参院予算委員会で、4日に共産党の小池晃副委員長から「安倍政権の番犬みたい」と言われたことに対し、「国家公務員にも、プライバシーや名誉に関わるものを含め、憲法上、基本的人権が保障されている」と反論した。

 小池氏は4日の同委で、菅義偉官房長官にイラク特措法やテロ特措法の条文解釈を質問したのに、小松氏が答弁に立ったとして「憲法の番人なんだから、安倍政権の番犬みたいなことをしないで下さい」と指摘していた。

 小松氏は5日の同委で、社民党の吉田忠智党首への答弁の際、「他の党の所属の委員だが」と切り出し、小池氏の発言に「このようなご指摘を受けることはできない」と反論。共産党にも「日頃、国民の基本的人権をことさら重視している」と指摘した。

 小池氏は朝日新聞の取材に「政権をかばうようなことをしたから指摘した。番犬だと断定はしていないし、人権をおとしめるというようなことを言われるのは心外だ」と語った。』

さて、問題は2点。小池さんの小松長官に対する「番犬みたい」発言は正鵠を射たものか。そして、小松長官の人格を侮辱するものとして人権侵害に当たるか。小松長官の反論は、後者に対するものだけで、前者についてはない。

小池さんの委員会でのとっさの発言は、「本来内閣法制局長官といえば、その役割は憲法という大切なものを擁護すべき番人ではないか。ところが、今のあなたが官房長官をかばって答弁を買って出ようというその姿勢は、憲法ではなく安倍政権を擁護しようというものでしかない。憲法の番人であるべき立場の人が、あたかも安倍政権に盲従する番犬みたいなことをすべきではない」という趣旨と解される。正鵠を射たものであること、この上ない。

いまさら言うまでもなく、小松一郎長官と言えば、集団的自衛権行使容認という解釈改憲実現の手段として安倍内閣に抜擢された人物。しかも、前例のない外務省からの異例の人事。予てから安倍政権の番犬とささやかれていた人。おそらくは自分でも気にしていたに違いない。面と向かって言われたからには反論しておかねばならないと、翌日の他党議員の質問に対する回答の機会をとらえたのだ。しかし、「私は憲法の番人の役割を放擲していない」とも、「安倍政権に盲従しているわけではない」とも弁解はしていない。おそらくは、そのような弁明の意思はないのだろう。

では、小池さんの小松長官に対する「番犬みたい」発言は人格を侮辱するものとして人権侵害に当たるのだろうか。さすがに小池さんの発言は慎重で、「安倍政権の番犬みたいなことをしないで下さい」という言い方が、侮辱になるとは考えがたい。これをしも人権侵害というなら、活発な議論そのものを封じることになってしまうだろう。

一般論として、強い批判の表現が人格攻撃の色彩を帯びることは往々にしてあり得る。原則論としては、そのような批判の仕方は避けた方が好ましい。しかし、対等者間の言論交換ではなく非対等者間で、権力を持つ側、強者の側、多数を握る側に対する批判に遠慮や萎縮が生じてはならない。権力を持つ側、強者の側、多数を握る側は、民衆の側からする強い批判を甘受しなければならない。それが、民主主義の要請するところ。

場面が変れば事情も変わる。共産党の副委員長である小池さんは、党組織幹部として党内からの批判には十分に耳を傾けなければならない。たとえ、その批判が人格攻撃的な色彩を帯びるものであろうとも。

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NHK籾井会長、百田・長谷川両経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い

下記URLから
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3030-1.html
http://chn.ge/1eySG24

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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html
☆抗議内容の大綱は
 *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
 *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
 *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
 *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
以上よろしくお願いします。
(2014年3月6日)

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Published in 木曜日, 3月 6th, 2014, at 14:59, and filed under 未分類.

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