澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

明日10月4日、「DHCスラップ反撃訴訟」判決。

ときに、新聞記者から電話をもらうことがある。取材だったり、コメントを求められたり。あるいは、記者の理解でよいのか確認のための説明を求められることも。

 8月20日ころのある日、電話を取ったら韓国の記者からの取材だった。これは初めての経験。私の数少ない韓国の知人の名をあげて、その人の伝手とのことだった。必ずしも流暢とは言いがたいが、しっかりした日本語で、「JTBCの記者の通訳」を名乗り、記者の名前も通訳の自己紹介も聞いたが名前は難しくて聞き取れない。かなりの時間を割いて、DHC・吉田嘉明との裁判の経過を詳しく語った。もちろん、吉田嘉明のヘイト体質についても、DHCテレビ問題についても、的確な質問があり、自論を述べた。その電話取材がどのように放送に生かされたかは、まったく分からない。

その後間もなく、韓国のある国会議員秘書氏からの電話をもらった。今度は、JTBCの放送で私(澤藤)と吉田嘉明の関係を知ったとのこと。なかなかに達者な日本語だった。韓国の与党である「共に民主党」が、「嫌韓ヘイト発言問題で、国会に、吉田嘉明を召喚して証言を求めたいと思っているが、吉田の呼出先をどう特定すべきかのアドバイスを得たい。また、彼は呼び出せば召喚に応じる人物であろうか」という趣旨の問合せ。

韓国ヘイトのDHC・吉田嘉明が、したたかに韓国でも商売をしていることは、この夏までまったく知らなかった。DHCテレビが、インターネット番組で韓国を中傷する発言をし、韓国のドラッグストア業界がDHC商品の販売中止を始めるなど不買運動が広がった。

DHCは、徴用工を酷使した企業ではない。朝鮮侵略とも無縁な新興企業。日本を代表するほどの企業ではない。それが、敢えて嫌韓ヘイト発言をすることによって、韓国民衆による不買運動の標的とされた。「#さよならDHC」のハッシュタグが大規模に拡散されているという。

DHCコリアは、自分たちは東京の本社とは立場が違うと弁明に努めたが苦境に立たされた。一昨日(10月1日)の報道では、DHCのイメージキャラクターだった女優チョン・ユミが、DHCコリアとの契約を解除した。聯合ニュース配信記事が簡潔に事態を伝えている。

【ソウル聯合ニュース】日本の化粧品販売会社ディーエイチシー(DHC)の韓国内イメージキャラクターを務めた女優のチョン・ユミが、同社の韓国法人、DHCコリアとの契約を終了した。期間満了前の契約終了で、残る契約期間の契約料は返還した。
  所属事務所は1日、DHCコリアが事務所側の立場を理解し、解約の要請に対し円満に合意したと発表した。
 8月に放送されたDHC子会社「DHCテレビ」が制作するネット番組の出演者による嫌韓発言が韓国で問題視されたことを受け、所属事務所はDHCに対し、チョン・ユミの肖像権使用撤回とイメージキャラクターとしての活動中止を要請した。

同日の中央日報日本語版の記事では、

チョン・ユミは、「再契約も絶対に無いだろう」と宣言した。さらに、契約終了前のモデル料を返してまでDHCとの縁をバッサリと切った。韓国芸能人がこのような決定を下したのはまれな事。チョン・ユミはDHC側の常識外れの態度に対して積極的に対応したわけだ。チョン・ユミが返す6カ月分のモデル料は数千万ウォンに達するものと見られる。

 ヘイトの代償は高い。DHCの場合、韓国だけではない。日本国内でも、じわりと影響が出てきている様子なのだ。

パルシステム生活協同組合連合会という大組織がある。首都圏を中心とした消費生活協同組合の連合体。加盟総数は約152万世帯、年額総事業高2,117.8億円。食を中心とした商品の供給事業を主としている。

「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民」のツイッターには、次のような「朗報」が連ねられている。

パルシステムに電話で問い合わせたところ、商品企画部署から回答があり、「DHCについては事前の調査が不十分だったため、こういう企業とは知らずに商品を企画してしまった(知っていれば企画しなかった)。今後はDHCの商品は取り扱わないし、事前の調査を十分行うようにする」とのことでした。

パルシステムの商品企画部によると「9月の3回以降、DHC商品は扱わない」「事前の調査が不十分だった。今後は、事前の調査を十分行うようにする」とのことです。問い合わせをした組合員のみなさま、本当にお疲れ様でした。#さよならDHC

DHC の商品は生協の理念に合わないのでは? と9月1回のカタログを見てすぐに問い合わせたところ、書面で回答を得ました。直ちに仕入れ企画の修正を決定したパルシステムの対応はナイスだったと思います。市民の運動ってこのように小さい事からですね。

パルシステムを信じて長年使ってきたから本当に良かった。パルは、食べ物だけじゃなく政治や社会問題の勉強会を組合員主催で開催したり、利用者の意識も高いのできっと沢山声が届いたんだと思います。これからも沢山パルシステムでお買い物します

パルシステムすばらしい!声をあげる意味大きいね!

Dema Hate Company、また販路を失いました。パルシステムさん、ありがとう。

こういう「うっかりミス」が起きないように、ヘイト企業一覧が必要だと思う。

パルシステムに本件に対する意見を送った者です。本日パルシステム東京のご担当者様より、お詫びの言葉と併せて今後のDHCブランドの企画については見送る旨ご連絡をいただきました!同様の意見が多数届いていたようです。ご報告まで。

日韓それぞれの社会環境変化の中で、明日10月4日(金)13時15分に、DHCスラップ「反撃訴訟」判決が言い渡される。法廷は、東京地方裁判所4階の415号法廷。

(2019年10月3日)

ご存知ですか。フジ住宅というヘイト企業があることを。

上には上があるというベきか。あるいは、下にはさらに下があると驚くべきか。オーナーの身勝手なヘイト志向の信念を従業員に押し付けるブラック企業としてはDHCが極め付けと思っていた。が、世の中は広い。DHCに勝るとも劣らぬ企業が関西にあることを知った。これまで知らなかったその社名が、フジ住宅。大阪府岸和田市に本社を置く東証1部上場の不動産大手。従業員数は1000人に近く、関連会社を含めると1200名規模だという。

DHCは、デマとヘイトとスラップの3拍子で知られる。フジ住宅は、従業員へのヘイト文書大量配布と、育鵬社教科書の採択運動に社員を動員してきたことで有名になった。どちらのオーナーも、独善と押し付け、嫌韓・反中の信念の強固なことにおいて、兄たりがたく弟たりがたい。

フジ住宅が一躍全国区で有名になったのは、この夏のこと。大阪弁護士が、この会社の女性従業員からの人権救済申立を容れて、異例の人権救済勧告を出し、本年(2019年)7月16日にこのことを公表してからのこと。

同月11日付の勧告の主文は、以下のとおりである。
勧告の趣旨
1 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと
2 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、中学校の歴史及び公民教科書の採択に際し、特定の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を被申立人にするよう求めないこと

つまり、フジ住宅は、弁護士会から「人権侵害に当たるからおやめなさい」と注意を受けるほどに、「社員に対して、韓国など本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布」していたし、「社員に、歴史・公民教科書の採択に際し、歴史修正主義派の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を会社にするよう求め」ていたということなのだ。

この会社のヘイトぶりに我慢ができなくなった在日三世の女性従業員は、弁護士会に対する人権救済申し立てだけでなく、大阪地裁堺支部に名誉毀損の損害賠償請求の提訴もしている。ネットで、両者の主張を読むことができる。

通常この種の事件で裁判所に提出される主張は、法律家のスクリーニングを経て、それなりの抑制が利いたものとなる。ところが、この会社の準備書面は、弁護士が作成したとは思えないほどにストレートな会社の言い分そのままなのだ。そのストレートな会社側の主張が興味津々である。たとえば、これが準備書面の文章である。

「被告会社会長である被告今井の信念として、戦後の日本人が自らの国に誇りを持てないことが社会に大きなひずみを生みだしているところ、それは東京裁判に象徴される第二次世界大戦戦勝国の措置によって日本人に植え付けられたいわゆる「自虐史観」が主な原因であるから、自らの国に誇りを持つためには「自虐史観」を払拭する必要がある。この観点から、戦後日本において多くの国民の自己肯定感情の障害となってきたと考える「自虐史観」の払拭に役立つと思われる文書を配布している。

この会社のホームページには、こうある。

「弊社が当裁判に負けることは、原告を除くほぼ全ての、外国籍の方を含む社員全体が支持してくれている弊社の仕事の進め方、それを通じて広く社員が見識を高めてくれることを期待する社員育成の方法が採れなくなることを意味しており、弊社としましては、この点で、妥協できる余地は一切なく、弊社の存立に深く関わるこの経営のあり方を続けたいと思っております。
また、当方を応援して下さる方の中には、当裁判の帰趨が非常に重要な歴史的意味を持っており、日本国民として絶対に負けられない裁判であると言ってくださる方も多くおられます。弊社と致しましても、万が一当裁判に負けるような事があれば、日本人全体の人権や、言論の自由が大きく毀損される事になるとの危機感を共有しており、当社経営理念「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」をしっかりと守り、「ひいては国家の為に当社を経営する。」と述べている事に、嘘、偽りの無い姿勢を貫きたいと思っています。

この会社には、従業員を主体性ある独立した人格と見る視点がない。労使の関係が、対等な法主体間の労働契約であることの基礎的な理解を欠いている。この会社も、この弁護士たちも、近代的労使関係の何たるかをまったく分かっていないとしか評しようがない。「社風」とか、「社員育成」によって、社員の人格や思想・良心を蹂躙することができて当然と思い込んでいるのだ。従来、企業側弁護士はこのような会社をたしなめ、説得し、教育してきたはずだが、ただただこの会社の愚かな主張に追随しているようにしか見えない。

この大阪弁護士会の異例の勧告を、朝日(関西版)は、こう伝えた。

東証1部上場の住宅販売会社で、韓国人などを侮辱する表現を記した文書が繰り返し配布されていたとして、大阪弁護士会は(7月)16日、人権侵害に当たるため配布をやめるよう勧告したと発表した。同社では、中学校の教科書に育鵬社版が採択されるよう社員の動員もしていたといい、思想・良心の自由を侵害する可能性も指摘した。

毎日はこうだ。

今月11日付の勧告書によると、同社は2013年、「息を吐くようにうそをつく」など、韓国や北朝鮮、中国を差別する表現がある雑誌記事などを少なくとも8回にわたって全従業員に配布した。さらに15年、「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集に関わった育鵬社の「歴史」と「公民」が公立中学校の教科書に採択されるよう従業員に各自治体の住民アンケートなどへの回答を推奨。同社の会長に結果を報告するよう求め多くの従業員が応じていたという。

どうも、メディアの伝え方が、いまいち十分ではないという印象を否めないが、それはとかく、これからはこう決意し、こう訴えよう。
DHCの製品は買わない
アパホテルには泊まらない
フジ住宅で家は建てない
播磨屋のせんべいは食べない。

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以下に、大阪弁護士会「勧告」の判断部分を要約してご紹介する。極めて常識的なものだが、この会社の耳にははいらないようだ。
https://moonkh.wixsite.com/hateharassment/blank-7

2 当会の判断
(1)別紙一覧表1記載の文書の配布について
何人も平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する権利は、憲法第13条に由来する人格権として強く保護され、かかる権利は、国籍・民族の知何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されるべきものである。
ただし、憲法は私人間の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないから、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになる。
ところで、一般に私人の表現行為は、個人の基本的な自由として憲法第21条第1項に基づき厚く保障されるべきものである。しかし、本邦以外の特定の民族または国籍の出身者を侮辱し、これらの者に対する差別的意識を醸成させる行為は、憲法第13条、第14条に照らし、社会的に許容される合理的範囲を超えて他人の法的利益を侵害していると認められるときは、人権侵害行為にあたり、民法第709条の不法行為(ないし契約関係が存する場合には、契約内容に応じ債務不履行)が成立すると評価できる。
これを本件についてみると、申立人(従業員)は、韓国国籍を有する在日韓国人3世として本邦に居住しているのであるから、平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する人格権を有しているというべきである。他方、被申立人(フジ住宅)には、会社の目的に必要とされている範囲で表現行為の自由が保障されているところ、被申立人が、自身に所属する全役職員に対し配布した別紙一覧表1記載の文書には、いずれも韓国又は韓国国民に対する批判的論評の域を超えた侮辱的表現が随所に見られる上、被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどしている。確かに、被申立人による上記文書配布は、申立人を被申立人の職場から排除することや申立人の人格権を侵害することを直接の目的とするものではなく、また、配布された文書を申立人が受領することが強制されていた事実は認められない。しかし、被申立人は、1000名を超える従業員を雇用する東証一部上場企業であり、いわば社会の公器として多様な価値観・歴史観を許容し、国籍や人種等による差別的意識を排する職場環境の構築が求められるところ、被申立人の創業者であり、被申立人の全役職員に対して極めて大きな影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどして上記文書を被申立人の全役職員に配布した行為は、いずれも被申立人の業務に必要とは言いがたく、被申立人の全役職員に対して上記文書を配布することを保障する必要性に乏しい。以上からすると、被申立人による別紙一覧表1記載の文章の配布が、被申立人の人格権を侵害したものといえると評価されたとしても、その評価が不当であるとは決していえない。

(2)別紙一覧表2記載の文書の配布について
憲法第19条が思想・良心の自由を保障しているのは、いかなる国家観、世界観、人生観を持とうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想、に基づいて不利益を課したり、あるいは特定の思想を抱くことを禁止することができないということである。そして、かかる自由が国籍・民族の如何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されること、憲法が私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないので、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになることは、前記(1)と同様である。これを本件についてみると、本邦の歴史、とりわけ明治維新以降の近現代史における歴史的事実については、個人の歴史観や思想・信条によって様々な評価があることは、公知の事実である。そのため、中学校における歴史及び公民の教科書は、各執筆者が近現代史における歴史的事実を各々評価し執筆しているので、異なる叙述がされている。したがって、教科書に対する評価は、個人の歴史観その他思想・信条と密接に結びついているといえる。しかるに、創業者であり被申立人役職員に強い影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、被申立人の全役職員に対し、別紙一覧表2記載の文書を配布するなどして特定の教科書を採択させるための運動に従事するよう強く推奨するとともに、かかる運動に従事したときは、その内容を上記代表取締役会長に報告することを求めている。そして、現にかかる推奨に応じて多くの役職員が上記報告に及んでいる。被申立人のこの一連の行為は、被申立人の業務に必要とはいい難く、しかも、被申立人は、これらの収集した報告をどのようにでも使える立場にあるので、例えば、上記採択運動に従事したか否かで、従業員の待遇に差を設けることもできる。以上からすると、かかる運動に従事することを被申立人の全役職員に強制するものではないことが、別紙一覧表2記載の文書の一部に明記されているとはいえ、被申立人が、その収集した思想・良心にかかる報告を自由に使える立場あることからして、かかる運動に従事したか否かによって、申立人を含めた従業員がその待遇等において差別的取扱いを受ける可能性が高い状況下にあるので、申立人を含めた従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれの高いことを否定することはできない。

3 結語
以上によれば、被申立人による各行為に対し、申立人の救済には今後の人権侵害の防止につき適当な措置を採ることを勧告することが相当であるから、勧告の趣旨記載のとおり、勧告する。

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なお、会長の信念によって、全社員に配布されたヘイト文書の一部を抜き書きしておく。
多くは、「月刊WILL」「正論」「産経」「加瀬英明」「呉善花」「中山成彬」「櫻井よしこ」などの文章の転載である。

「韓国の国民性を痛烈にえぐっている。…嘘と無恥の国なのだ」
「では、なぜ韓国人は第三国でこれほど反日活動に走るのだろうか。それは韓国人の習性に由来している。韓国人同士がケンカする時は相手の言い分などに耳を貸さず、ひたすら自分の主張を大声で怒鳴り合う。さらに、周りの人々に訴えて自分の味方を増やそうとする。直接相手に堂々と挑むのではなく、第三者に訴えてねじ伏せようとするのが韓国流のケンカである。彼らは味方を増やすために『いかに自分の主張が正しいか』嘘八百を並べながら、身振り手振り、場合によっては号泣して周りに訴える
「『金王朝』を信奉する朝鮮学校出身者のせいか・・・息を吐くように嘘をつく反日サヨクの生き様そのもの」「自分たちの悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ』!と大騒ぎする在日朝鮮族」
「韓国も中国も、日本人とは異なった国民性を持つ民族であると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教育されます。しかし、中国や韓国は『騙される方が悪い』『嘘も100回言えば本当になる』と信じている国民です
「日本非難を共産党独裁の正当化につなげる無神論の中国と、日本たたきを民族プライドにつなげる情緒的な韓国からしか参拝糾弾が出てこない点注目すべきです」「『ワイロは国民性』日本とは逆に韓国・北朝鮮はワイロを当然とする民族性があります。ワイロを与えることによって見返りを得るという伝統です」「今の韓国も北朝鮮もワイロ無しでは社会が成り立たないほど、ワイロはまさしく国民性にまで、なっています」
「韓国人の思考の中に敵相手ならどんな非道をしても許されると勘違いしているところがありますよね、確かに野生動物がまさしくこれです。鳥類、ほ乳類、は虫類ではないが、恐に足りないものに対しての攻撃性は、見るに堪えがたいものがあります」
「韓国は未だ売春は犯罪という意識もなく普通に売春している」

中学校であれば『育鵬社』、高校で在れば『明成社』が良いということを・・
アンケート記入に行かれる方は、昨年同様、ボールペンで、記入し、フジ住宅の社章と拉致被害者救う会のバッジは外して行ってくださいネ・・・女性の方は私服で、行ってくださいネ。」「市長や教育長にお手紙を書かれたり、FAX、メールをされたり、また会いに行かれたり、あるいは教科書アンケートに行かれる場合は、勿論勤務時間中にしていただいて結構です。」「市長や教育長の方にお手紙やメール、FAXをされました方は、私(会長)・・(に)ご報告してくだされば、ありがたく思います。」「一般的に(各市)2~3名で十分かナアと思います。あまり多くの方がお手紙を出すとかえってマイナスになると思いますので。」

(2019年9月28日)

「差別を差別と非難し、デマをデマと断じることはメディアの役目。」

またまたの典型的なスラップ訴訟のご紹介。ヘイトスピーチへの批判の新聞記事が名誉毀損とされ、地方紙の記者が訴えられた事例。いま、ヘイトとヘイト規制が熱くせめぎ合っている川崎での事件である。

まずは、神奈川新聞社会面の今日(9月25日)の記事で概要を把握いただきたい。

「差別報じた記事、名誉毀損と提訴」「本紙記者争う姿勢」

 在日コリアンに関する講演会での自身の発言を悪質なデマなどと報道され、名誉を毀損されたとして、今春の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏が神奈川新聞社の石橋学記者に140万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、横浜地裁川崎支部(飯塚宏裁判長)であった。石橋記者側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

 訴えによると、佐久間氏は自身が代表を務める団体が同市内で主催した2月の講演会で、「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」と発言。この発言に対し、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と石橋記者に報じられたことで、立候補予定者である佐久間氏の名誉が著しく毀損されたと主張している。

 口頭弁論で、石橋記者側は「佐久間氏の発言は事実に反している」と指摘。「そうした発言は在日コリアンを敵とみなし、在日コリアンを傷つける差別の扇動である」とした上で、「記事は、佐久間氏の言動が人権侵害に当たるとの意見ないし論評の域を出ていない」と反論した。

原告(佐久閒)は、排外主義を掲げる日本第一党の活動家。ヘイトの常連といってよい。石橋記者は事後報告集会で「記事を書けば訴えられ、面倒に巻き込まれると萎縮効果を狙っているのは間違いない。メディアこそが先頭に立って差別をなくすべきだとの記事を書き続けていく。ヘイトの状況がこうなる以前にメディアとしての役割を果たしていなかったという思いもある」と今後の裁判に決意を表したという。

報じられている限りでだが、名誉毀損とされた表現は、以下のとおり。
原告(佐久閒)の「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」との発言》に関しての、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」との記事。

この事件、原告(佐久閒)側に100%勝ち目はない。勝ち目がなくても、相手に相応の嫌がらせにはなる。その効果を狙っての提訴がスラップ訴訟というものだ。石橋記者が、「記事を書けば訴えられ、面倒に巻き込まれると萎縮効果を狙っているのは間違いない。」と言っているとおり。

名誉毀損訴訟では、名誉毀損表現を構成する「事実摘示〉評(ないし意見表明」とを厳密に分ける。判例は、「事実摘示」の誤りには厳しいが、「論評」の自由の幅は、表現の自由の理念を意識して極めて広い。極端な人格攻撃をともなわない限り、論評の違法はないと考えてよい。

事実摘示の主要部分が真実で、記事に公共性・公益性が認められる限り、違法性はないものとされ、損害賠償請求は棄却される。

本件訴訟における「名誉毀損表現」の事実摘示は、《原告佐久閒が「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」と発言したことである。被告石橋記者は、この発言がなされたという事実の真実性の挙証は要求される。しかし、それで十分でそれ以上は要求されない。

念のためだが、「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」との佐久閒の発言の真偽は、実は訴訟の本筋に無関係で、審理や判決に影響を及ぼさない。もちろん、石橋記者側に、これがデマであることの挙証責任の負担はない。

ところで、被告・石橋記者の代理人となっている神原元弁護士のツイートのボルテージが高い。こちらも紹介しておく。

【拡散希望】「佐久間吾一氏・『差別扇動』裁判」第一回期日のお知らせ
神奈川新聞記者石橋学さんは、市議候補者佐久間吾一氏の発言を扱った、記事『差別言動繰り返し』で訴えられました。

佐久間氏の発言は差別扇動か否か?世紀の裁判が始まる??
9月24日午前11時30分
横浜地裁川崎支部1号法廷

問題にされたのはこの記事。ヘイト団体の集会を「差別扇動」と批判し、佐久間吾一氏の発言を批判する内容だ。

佐久間氏は名誉毀損だと主張しているが、「佐久間氏の発言は川崎南部に集住する在日コリアンに対する差別扇動だ」というのか石橋さんの主張だ。

裁判所はどちらの主張に軍配をあげるか?

我々石橋さんの弁護団は、川崎におけるヘイトスピーチ被害の実態や佐久間氏の発言の悪質性を立証し、「悪意あるデマであり、差別扇動」という石橋記事の正当性を主張する。

この訴訟の勝利により、全国のヘイト団体は、川崎南部地域において差別扇動を決して許さない活動の力強さを、思い知るだろう。

いよいよ今日。
川崎におけるヘイトvs.反ヘイトの最後の決戦の火蓋が切られる。
ここが「主戦場」だ。

この裁判は、川崎におけるヘイトと反ヘイトの、いわば「主戦場」になるかもしれない。そして、川崎は全国における反ヘイトの「主戦場」である。

したがって、川崎におけるこの裁判の勝利の効果は全国に波及するかもしれない。そして、正義は我々にある。正義は勝つだろう。

石橋学記者も、こう発信している。
「差別を差別と非難し、デマをデマと断じることはメディアの役目。ヘイトを断罪する判決を勝ち取ります。」

その意気や良し、である。もちろん、メディアの役割を「客観的なできごとの伝達」に限定する立場もあろう。しかし、今の権力主導のヘイトとデマの蔓延、そして権力忖度のメディアの状況を考えるとき、石橋記者のごとき心意気をたいへん貴重なものと思わざるを得ない。私も、DHCスラップ訴訟被害者の立場として協力・応援を惜しまない。

同じ神奈川新聞の記者の下記連帯の意思表示が心強い。まことにそのとおりだ。
「言論封じにつながりかねない今回の訴訟は、すべての記者が当事者と言えます。差別のない社会に向けて、差別に対して声を上げる言論を守らなくてはなりません。」
(2019年9月25日)

川崎市『ヘイトスピーチ規制条例』パプコメに賛成の立場からの応募を

8月に入った。暦(大暑)のとおりの猛暑である。本日も早朝6時に家を出ての散歩だったが、汗が吹き出る。世の中も暑苦しい。安倍晋三が政権に居座る日本だけではない。世界中が、である。暑苦しさの根源に差別がある。ヘイトスピーチを一掃して、涼やかな世にしたいものと思う。

昨日(7月31日)の毎日新聞・夕刊の「特集ワイド」に、川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関するタイミングのよい記事。「ヘイトスピーチに罰則、条例化目指す川崎市はいま 実効性に期待する被害者」というタイトルで、この条例案の意義を的確に指摘して分かり易い。井田純記者の労作である。
https://mainichi.jp/articles/20190731/dde/012/040/007000c

川崎市のホームページを検索すると、関係資料に接することができるが、如何せん公的な文書。やや繁雑でもある。ぜひとも、「特集ワイド」をお読み願いたい。

ところが、これはネットでは有料記事となっている。やむを得ない。毎日新聞読者以外は、下記の私の記事に目を通していただきたい。

6月24日、川崎市はこの条例案を公表し、パブリックコメントを募集している。期間は、7月8日から8月9日(金)まで。
市の広報では、「意見を提出できる方の範囲」を、「市内に在住、在勤、在学の方、又はこの案件の内容に利害関係のある方(個人、団体を問いません。)」としているが、誰もが「この案件の内容に利害関係のある方」と言ってよい。「特集ワイド」の最後が、「川崎市に呼応するように、同じ神奈川県内の相模原市でも、罰則付きのヘイト対策条例制定に向けた動きが始まっている。」と締めくくられている。この条例が、ヘイトスピーチ規制に実効ある法規制の第1号である。国民的議論の対象とされてしかるべきで、大いに意見を寄せるべきだと思う。

なお、パブコメは分類されて発表されることになろうから、賛成の趣旨をまずは明確に述べて、その理由を書くべきだろう。URLは下記のとおり。

「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関する意見募集について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/250/0000108585.html

意見のフォームはこちら。
https://sc.city.kawasaki.jp/multiform/multiform.php?form_id=3851
ご参考までに、私のコメントは、以下のとおりである。
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私は、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に、積極的に賛成します。併せて、川崎市がこのような人権尊重のまちづくりに取り組んでいることに、敬意を評します。

私は、1971年に登録した弁護士です。日本国憲法の理念をこの上なく大切なものとして、その実現のために努力して参りました。憲法の根幹に、人権の尊重があることはいうまでもありません。人権尊重とは、すべての人が平等に、その人格が尊厳あるものとして、処遇されなければならないことを意味します。「差別のない人権尊重の社会」は、日本国憲法の目指すところであり、暮らしやすい社会でもあります。
ところが、近年、民族や人種に対する差別を公然と口にして恥と思わない人びとや集団が目立つようになっていることを憂慮せざるを得ません。
戦前、富国強制のスローガンのもと、近隣諸国への侵略や植民地化を国是としていた時代には、日本や日本国民が他に優越したものであるという明らかに誤った独善的な選民思想が意図的に流布されました。そのことが、近隣諸国民に対する差別意識を醸成し、現在なおこの差別意識に捕らわれている人が少なくありません。その差別意識を公然と口にしてよいという近時の社会の雰囲気に、極めて危険な兆候を感じます。
私は、国民の自由に対する権力的規制には、反対の立場を貫いて参りました。規制は権力がするもので、現政権のごとき、日本国憲法の理念理解に乏しく、むしろ日本国憲法を敵視する権力が悪用することを恐れてのことです。しかし、ヘイトスピーチ跋扈の現状は、いわゆるヘイトスピーチ解消法制定3年を経てなお治まることなく、到底これを看過し得ません。もはや、言論の自由を根拠としてヘイトスピーチ規制をすることに躊躇しえないと考えるに至りました。
本条例素案が表現の自由一般を不当に侵害することのないよう、種々の配慮をしていることを歓迎して、条例制定に賛成いたします。

当然のことながら、ヘイトスピーチ派はこの条例制定に反対しています。もちろん、そのホンネは、今までどおりにマイノリティとして弱者である宿命を持った在日の人びとに対する根拠のないイジメを続けたいだけのことです。しかし、それでは、訴える力となりませんので、何とか「理論付け」しようと試みているようではあります。しかし、真面目な議論として耳を傾けるべきものは見あたりません。その幾つかのパターンへの感想を述べておきます。

反対論その1 「条例素案における犯罪構成要件が特定性を欠き、曖昧に過ぎないのではないか。たとえば、「ヘイトスピーチ」の定義にしても、禁止されている行為にしても。」

 そんなことはありません。「ヘイトスピーチ」の定義自体は、「ヘイトスピーチ解消法」第2条の定義規定「この法律において『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において『本邦外出身者』という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」で、構成要件文言としては特定性十分ではありませんか。

 また、本条素案が禁止する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」については、以下のとおり、特定性十分と考えまられます。
 「素案の説明資料4(2)」に、明記されているとおり、「何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行い、又は行わせてはならない。」
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。
◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。
◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。

反対論その2 「条例素案の罰則部分は、過剰に表現の自由を規制をするものとして憲法21条に違反するものではないか。」

 憲法21条「表現の自由」保障の本領は、権力者や社会的強者を批判する自由の領域にあります。マイノリティであり、社会的弱者の人権を侵害する表現が自由になされてよいはずはありません。ヘイトスピーチの自由など、本来てきにあり得ないのです。しかし、ヘイトスピーチを権力的規制の対象として処罰条項を設けてよいかは、また別のことになります。いわゆる立法事実(そのような処罰規定を作る根拠としての事実)が必要となります。まさしく、ここが争点です。私は、ヘイトスピーチデモの口汚さや、ネットでのネトウヨ言論の品性のなさの積み重ねが、雄弁に立法事実の存在を物語っていると考えます。
しかも、「ヘイトスピーチ」即犯罪の成立ではなく、市長からの勧告・命令を経て、なおこれに従わない場合にはじめて罰則の適用となるというのですから、けっして過剰な言論規制になっているとは考えません。

反対論その3 「条例素案の『インターネット表現活動に係る拡散防止措置』は、一地方自治体の条例でネット上の『表現の自由』を規制するものとして、条例の権限を越えているのではないか。」

匿名性に隠れてのネット上での差別発言、しかも差別感情剥き出しの罵詈雑言は、当然に規制されてしかるべきものと考えます。したがって、条例素案が、ネットでのヘイト発言を罰則での取締りから除外していることに、生温い規制との批判があるかも知れません。私は、提案のとおり、この点は将来の課題として留保してよいと思います。

なお、条例素案は、「インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表」は、その対象を、次のものに限定しています。
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの

けっして、無限定に規制をしているものではなく、「条例の権限を越えている」ものではないと考えられます。

反対論その4 「条例素案は、『本邦外出身者』だけを保護対象にしており、『本邦出身者』のヘイトスピーチ被害を保護対象としていない。この非対称性は、逆差別として許されないのではないか。」

 これはかなり数多くみられる見解ですが、言いがかりの類の見解というほかはありません。圧倒的なマイノリティである『本邦外出身者』が、圧倒的なマジョリティであり、それゆえ社会的強者である『本邦出身者』(日本人)に対して、差別的発言がなされているとは考えられないところです。少なくとも、「『本邦出身者』(日本人)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の出身であることを理由として、本邦出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」がなされているはずはありません。
 一方的なヘイトスピーチがなされている現実が非対称なのです。これを是正する措置が非対称になるのは当然ことと言わねばなりません。
  条例素案の解説を一読すれば、お分かりのとおり、人権侵害となる不当な差別は数多くあります。解説が挙げているものだけでも、「こども」「男女平等」「高齢者」「障害者」「部落差別」「外国人」「性的マイノリティ」「その他…」。条例素案は、それらの侵害された人権全般を救済し、あるいは不当な差別全般の解消に思いをいたしながら、特に緊急の対応の必要ある『本邦外出身者』に対する差別に限って、刑事罰もやむを得ないと限定して考えています。この姿勢を支持するものです。

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なお、「条例」(素案)の内容は以下のURLで読めるが、読みにくい。読み易いよう、以下にコピペしておきたい。
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/cmsfiles/contents/0000108/108585/20190624soan_hp.pdf

目次
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)を作成しました。
<主な内容>
Ⅰ 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)について
1 条例制定の背景
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について
3 条例制定について
Ⅱ 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
2 総則
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
Ⅲ 今後のスケジュール

本文
1 条例制定の背景
川崎市は、日本各地や海外から多くの人たちが移り住み、地域に根づいて多様な文化が交流する「多文化のまち」へと発展する中、「川崎市外国人市民代表者会議条例」の制定をはじめ、「川崎市子どもの権利に関する条例」や「男女平等かわさき条例」を制定するなど先駆的な取組を行い、その後も、「川崎市子どもを虐待から守る条例」や「川崎市自殺対策の推進に関する条例」の制定など、着実に人権施策を実施してきました。
しかしながら、近年、本邦外出身者に対する不当な差別的言動、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化してきました。
このような状況の下、平成28年7月、市長が、「川崎市人権施策推進協議会」に対し、「ヘイトスピーチ対策に関すること」につき優先審議を依頼したところ、同年12月には、同協議会が、市長に対し、「ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例として、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの「人権全般を見据えた条例」の制定を求める」提言を提出しました。
また、平成28年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、「部落差別の解消の推進に関する法律」のいわゆる「差別解消三法」が施行され、川崎市をはじめとした地方公共団体にも地域の実情に応じた施策を講ずることが求められることになりました。

2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について(一部略)
提言で取り組むべきとされた項目
項目1 公的施設の利用に関するガイドラインの策定
項目2 インターネット上の対策
項目3 制定すべき条例の検討
「人権全般を見据えた条例の制定に必要な作業に入るべきである。」
【協議会の意見】
● ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例が必要である。
● 内容については、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが想定される。
【特に留意すべき点】
● 協議会及び部会において、幅広い条例が必要との認識では一致したところであり、具体的な内容については、ヘイトスピーチ対策を含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが求められる。

3 条例制定について
(1)条例制定の考え方
いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化している現状を踏まえ、全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、条例を制定します。
(2)条例の特徴
① 人権全般を見据えた条例
「川崎市人権施策推進協議会」からの提言を踏まえ、ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例とします。
したがって、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害等の人権全般を見据え、不当な差別のない人権尊重のまちづくりを推進します。
② 本邦外出身者に対する不当な差別的言動を規制する条例
特に、一定の要件に該当するヘイトスピーチに対しては、罰則等をもって規制する条例とします。

「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
● 川崎市は、日本国憲法及び人権に関する諸条約の理念を踏まえ、あらゆる不当な差別の解消に向けて、一人ひとりの人間の尊厳を最優先する人権施策を、平等と多様性を尊重し、着実に実施してきた。
● 今なお、不当な差別は存在し、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題も生じている。
● 市、市民及び事業者が協力して、不当な差別の解消と人権課題の解決に向けて、人権尊重の理念の普及をより一層推進していく必要がある。
● 全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、この条例を制定する。

2 総則
(1)目的
ア 不当な差別のない人権尊重のまちづくりに関し、市、市民及び事業者の責務を明らかにする。
イ 人権に関する施策の基本となる事項と、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する事項を定める。
ウ 前記ア及びイにより、人権尊重のまちづくりを総合的かつ計画的に推進し、もって人権を尊重し、共に生きる社会の実現に資する。
(2)定義
ア 不当な差別…人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別をいう。
イ 本邦外出身者に対する不当な差別的言動…「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ解消法」という。)第2条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動をいう。

3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
(1)市の責務
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進する。
(2)市民及び事業者の責務
市民及び事業者は、市の実施する不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策に協力するよう努める。
(3)不当な差別的取扱いの禁止
何人も、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
(4)人権施策推進基本計画
ア 市長は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画を策定し、基本計画には、人権に関する施策の基本理念、基本目標、基本的施策、その他人権に関する施策を推進するために必要な事項を定める。
イ 市長は、基本計画を策定(変更)しようとするときは、あらかじめ、「人権尊重のまちづくり推進協議会」の意見を聴き、また、基本計画を策定(変更)したときは、公表する。
(5)人権教育及び人権啓発
市は、不当な差別を解消し、人権尊重のまちづくりに対する市民及び事業者の理解を深めるため、人権教育及び人権啓発を推進する。
(6)人権侵害を受けた者に対する支援
市は、関係機関等と連携し、インターネットを利用した不当な差別その他の人権侵害を受けた者に対する相談の実施その他必要な支援に努める。
(7)情報の収集及び調査研究
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を効果的に実施するため、必要な情報の収集及び調査研究を行う。
(8)人権尊重のまちづくり推進協議会
ア 前記(4)イの場合のほか、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進に関する重要事項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「人権尊重のまちづくり推進協議会」を置く。協議会は、委員12人以内で組織し、委員は、学識経験者、関係団体の役職員、市民のうちから市長が委嘱する。
イ 委員の任期は2年とし、再任可とする。そのほか、臨時委員を置くことやその解嘱、秘密漏えい禁止、部会を置くことについて規定し、その他協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
(1)この章の趣旨
市は、ヘイトスピーチ解消法第4条第2項の規定に基づき、市の実情に応じた施策を講ずることにより、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る。
(2)本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止
何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」を行い、又は行わせてはならない。
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。 ◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。 ◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。

(3)勧告・命令・公表
◎前記(2)に違反(1回目)⇒勧告
市長は、1回目と同様の違反行為を行ってはならない旨を勧告することができ
る。
◎違反行為(2回目)⇒命令
市長は、前2回と同様の違反行為を行ってはならない旨を命ずることができる。
◎違反行為(3回目)⇒公 表
市長は、命令に従わなかったときは、氏名又は団体の名称、住所、団体の代表者等の氏名のほか、命令の内容その他規則で定める事項を公表する。
・市長は、勧告の前に、1回目の違反があったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、命令の前に、勧告に従わなかったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、公表の前に、公表される者にその理由を通知し、その者が意見を述べ、証拠を提示する機会を与える。
(4)公の施設の利用許可等の基準
市長は、市が設置する公の施設において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が行われるおそれがある場合における公の施設の利用許可及びその取消しの基準その他必要な事項を定める。
(5)インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表
対象
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動※
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの
※ インターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用する方法による表現活動で、デモや演説など他の表現活動の内容を記録した文書、図画、映像等を不特定多数の者による閲覧又は視聴ができる状態に置くこと(いわゆる「拡散する」こと。)を含む。
ア インターネット表現活動に係る拡散防止措置
市長は、インターネット表現活動が「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当すると認めるとき。
→ インターネット表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずる。
イ インターネット表現活動に係る公表
市長は、前記アの措置を講じたとき。
→ 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当する旨、表現の内容の概要、拡散を防止するために講じた措置その他規則で定める事項を公表する。ただし、公表することにより前記(1)の「「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る」との趣旨を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。
・ 前記の措置と公表は、市民等の申出又は職権により行う。
・ 市長は、措置や公表の前に、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・ 市長は、公表をするに当たっては、当該「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容が拡散することのないよう十分に留意する。

(6)差別防止対策等審査会
ア 前記(3)の勧告、命令、前記(5)の措置、公表を行う場合のほか、不当な差別の解消のために必要な事
項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「差別防止対策等審査会」を置く。審査会は、委員5人以内で組織し、委員は、学識経験者のうちから市長が委嘱する。その他の細目については、前記3(8)の「人権尊重のまちづくり推進協議会」と同様とする。
イ 審査会は、前記(5)の措置と公表に係る申出を行った市民等に意見書又は資料の提出を求めること等の必要な調査を行うことができ、前記(2)に違反したと認められる者、前記(3)の勧告に従わなかったと認められる者又は前記(5)のインターネット表現活動を行ったと認められる者に対し、書面により意見を述べる機会を与えることができる。また、その指名する委員に前記の必要な調査を行わせることができる。
(7)表現の自由等への配慮
この4の欄に記載の項目の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意する。

5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
(1)報告及び質問
ア 市長は、前記4(2)に違反したと認められる者、前記4(3)の勧告や命令に従わなかったと認められる者に対し報告を求めることができ、また、その職員に、関係者に質問させることができる。
イ 質問を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯する。
ウ 前記アの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(2)委任
この条例の実施のため必要な事項は、規則で定める。
(3)罰則
前記4(3)の命令に違反した者は、500,000円以下の罰金に処する。また、法人等の場合には、行為者を罰するほか、法人等も罰する(両罰規定)。
(4)施行期日
ア 公布の日 次のイとウ以外のもの
イ 令和2年4月1日 「人権尊重のまちづくり推進協議会」、インターネット表現に係る拡散防止措置及び公表並びに「差別防止対策等審査会」に関するもの
ウ 令和2年7月1日 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消に向けた取組に関するもののうち、禁止、勧告、命令、公表、報告及び質問並びに罰則
(以下略)

(2019年8月1日)

「ホロコーストはなかった」 ― トンデモ医師のトンデモ発言の真意

本日(3月19日)の赤旗社会面に、ユダヤ人大虐殺は史実」「現地博物館が高須氏に反論」という記事。さして長いものではないので、全文を引用する。

「第2次大戦下でのナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)についてのアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館(ポーランド南部)が14日、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長のアウシュビッツは「捏造(ねつぞう)」とのツイート(2015年10月)に対し、公式にツイートで「史実」だと反論しました。

 博物館は高須氏への「返信」に、異例の日本語で「アウシュビッツは世界中の人々の心に絶えず忠告する史実です。ナチス・ドイツによって造られたその強制・絶滅収容所の史跡は、人類史上最大の悲劇を象徴しています」と述べました。博物館の公式ツイートは主に英語やポーランド語です。

 博物館はナチスが推定約110万人を虐殺したアウシュビッツ強制収容所(1940~45年)を管理し、歴史教育の活動などを行っています。ホロコーストや虐殺の否定論についてはホームページで、「多くの国で社会の秩序を脅かすと認識され、法的にも処罰されている」と指摘し、虐殺者こそ虐殺を否定してきたと警戒を呼び掛けています。」

 通信社の配信記事だろうが、赤旗は掲載に値するニュースと判断したのだ。私も、この件を見過ごしてはならないと思う。

高須克弥という人物については、かつて当ブログで1度だけ取りあげたことがある。できれば、こちらもお読みいただきたい。「『落とし前をつけます』と宣告して始められた、議員に対するスラップ訴訟」という表題のもの。(2018年4月24日)
http://article9.jp/wordpress/?p=10258

この人は医師だというが、この人の発言は、およそ医学的な専門性とは無縁。自然科学的教養に裏付けられたものでもない。一市民として、政治や経済あるいは歴史や社会や文学や芸術に、傾聴に値する見識があるかといえば、その片鱗も窺うことができない。

「売られたら買います。僕はアホで馬鹿です。喧嘩強いです」というのが、この人自身の言葉だが、おそらくはその言葉のとおりなのだろう。典型的な、「トンデモ医者」の「トンデモ発言」の類なのだ。

この人はツイッターで、こんな発言をしている。
 その時代に生きていた人は真実を知っています。
 洗脳された人たちは真実がわかりません。
 誤解された父祖の名誉を回復するのは子孫の義務だと思います。
 僕はこのドイツを祖国に持つ女性に負けず、従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと勇気を持って世界に叫びます。
 投獄されてもかまいません

「このドイツを祖国に持つ女性」とは、ホロコーストを否定することで刑事訴追された人物を指している。周知のとおり、国際人権B規約(20条2項)には、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」とある。
これを具体化するかたちで、ドイツだけでなく、フランス、オーストリア、ベルギーなど10か国が、「ナチスドイツの犯罪」を「否定もしくは矮小化」したことを構成要件として刑事罰を科している。イスラエルには、「ホロコースト否定禁止法」があり、外国に対して「ホロコースト否定」の言動をした者の身柄引渡しを要求できるという法制が整備されている。

なぜ、このような犯罪類型が必要になるのか。歴史を真っ当に見ようとしない民族的偏見の持ち主が、差別の言論を繰り返すからである。夥しい証拠に目を背けて、歴史の真実を否定し、あるいは修正しようという勢力が絶えないからである。たとえば、高須克弥のごとき。

前記の高須の舌足らずのツイートは、こう読むことができる。
 ナチスの時代に生きていた人だけが、ホロコーストがなかったという真実を知っています。
 後世の史観で洗脳された、ホロコーストがあったといっている人たちには真実がわかっていないのです。
 あたかもホロコーストがあったかのごとくに誤解された父祖の名誉を回復するのは子孫の義務だと思います。
 僕はこの「ホロコーストはなかった」と言うドイツの女性に負けず、従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと勇気を持って世界に叫びます。

要するに、高須の発言は、ホロコーストの史実を言葉の上で抹殺することによって、最悪の民族差別、最大のヘイトクライムを隠蔽し、その犯人を擁護しようとするものである。のみならず、同じ手法で朝鮮や中国に対する近代日本の歴史的罪科を免責しようというものなのだ。これが、歴史修正主義者の常套手段。

「従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと世界に叫びます」が、彼の発言の本意なのだ。残念ながら、いま、歴史修正主義的発言は、「勇気を持って」言わねばならない時代ではない。むしろ、歴史的真実に基づいて、天皇の戦争責任や、9・1朝鮮人虐殺、3・1独立宣言運動大弾圧、従軍「慰安婦」、徴用工、南京大虐殺、三光作戦等々の責任に言及することの方が、ある種の覚悟を要する時代になってはいないか。

高須のホロコースト否定発言は、耳を傾けるべき根拠に基づくものではない。にもかかわらず、歴史修正主義派の有象無象がこれを持ち上げる構図が、時代の空気を物語っている。この時代の空気が、歴史修正主義派の首魁である安倍晋三を首相にまでまつりあげたのだ。この時代の空気を作ってアベを支えている連中の中に、歴史の認識において甚だしく知性に欠けた高須や、これを取り巻く無知蒙昧の輩が位置している。

赤旗は、たかが高須の言動と言わずに、社会面の記事として取りあげた。面倒ではあっても、機敏に反論することが求められている。そして、あらためて、政府の介入によらない歴史教育と、日韓や日中の民間交流の必要性を痛感する。民族差別を露わにした、トンデモ発言を許さないために。
(2019年3月19日)

徴兵検査のない成人を迎えた若者に訴える。ぜひ主権者として、平和憲法擁護の自覚を。

本日(1月14日)は「成人の日」。数少ない、天皇制とは無縁の、戦後に生まれた祝日。「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日(祝日法)とされている。関東は天気も晴朗。「みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」にふさわしい日となった。私も、この日に、若者諸君に祝意と励ましの言葉を贈りたい。

何をもって「成人」であることを自覚するかは、社会によって時代によって異なる。かつての日本では徴兵検査だった。その時代、すべての成人男子には否応なく兵役の義務が課せられた。男子にとって大人になるとは、天皇の赤子として、天皇の軍隊の兵士になる義務を負うことだった。軍人勅諭を暗唱し、行軍と殺人の訓練を受けた。戦地に送られ、命じられるままの殺戮を余儀なくもされた。

その時代、主権は天皇にあって国民にはなかった。立法権も天皇に属し、帝国議会は立法の協賛機関に過ぎなかった。女子には、その選挙権も被選挙権もなかった。その時代、天皇制を支えた家制度において女性は徹底的に差別され、民事的に「妻は無能力者」とされていた。

あり得ないことに、天皇は神を自称していた。もちろん、神なる天皇は操り人形に過ぎなかった。この天皇を操って権力や富をほしいままにした連中があって、その末裔が今の日本の保守政治の主流となっている。

天皇、戦争、女性差別は一体のものだった。そのような非合理な国は亡ぶべくして亡びた。国の再生の原理は、新しい憲法に確固として記載された。国民主権、平和、そして自由と平等である。徴兵制はなくなった。天皇に対する批判の言論も自由である。女性差別もなくなった…はずである。その憲法の「改正」をめぐって、いませめぎ合いが続いている。

平和も、国民主権も、性差のない平等も、言論の自由も、昔からあったものではない。これからずっと続く保障もない。現実に、憲法は一貫して「改悪」の攻撃に曝されている。徴兵検査のない成人式も、主権者の意識的な努力なければ、今後どうなるか定かではない。

私たち戦後間もなくの時代に育った世代は、日本国憲法の理念を積極的に受容して、今日までこの憲法を守り抜いてきた。しかし、この憲法をよりよい方向に進歩させることは今日までできていない。いま、せめぎ合っているのは、憲法を進歩させようという改正問題についてのことではない。大日本帝国憲法時代の「富国強兵」の理念を復活させようという勢力が力を盛り返そうとしているのだ。言わば、「成人男子には徴兵検査を」という時代への方向性をもった「憲法改悪」なのである。

今の若者は保守化していると言う言葉をよく聞く。しかし、今のままでよいじゃないかというほどの社会はできていない。今のままでは将来が不安だと若者たちも気付いているはずだ。

この世の不正義、この世の不平等、権力や資本の横暴、人権の侵害、平和の蹂躙、核の恐怖、原発再稼働の理不尽、沖縄への圧迫。格差貧困の拡大、過労死、パワハラ、セクハラ…。この世の現実は理想にほど遠い。若さとは、この現実を変えて理想に近づけようという変革の意志のことではないか。

若さとは将来という意味でもある。社会がよりよくなればその利益は君たちが享受することになる。反対に社会が今より悪くなればその不利益は君たちが甘受しなければならない。

君たちには多様な可能性が開けている。未来は、君たちのものだ。君たち自身の力で、未来を変えることができる。これから長く君たちが生きていくことになるこの社会をよりよく変えていくのは君たちだ。

さて、今年は、選挙の年だ。君たちの一票が、この国の命運を決める。とりわけ7月に予定の参院選。いまは、自・公・維・希の改憲勢力が、かろうじて議席の3分の2を占めている。この3分の2の砦を突き崩せば、安倍改憲の策動は阻止することができる。君たちの肩に、主権者としての責任が重くのしかかっている。

投票日だけの主権者であってはならない。常に、主権者としての自覚をもって、民主主義や人権・平和のために何ができるかを考える人であって欲しいと思う。

一つ、主権者としての自覚における行動を提案したい。DHCという、サプリメントや化粧品を販売している企業をご存知だろうか。その製品を一切購入しない運動に参加して欲しい。商品の積極的不買運動、ボイコットでこの企業に反省を迫ろうというのだ。

DHCとは、デマとヘイトとスラップをこととする三拍子揃った企業。その会長である吉田嘉明が在日や沖縄に関する差別意識に凝り固まった人物。電波メディアを使って、デマとヘイトの放送を続けている。そして、吉田嘉明とDHCは、自分を批判する言論に対するスラップ(言論抑圧を動機とする高額損害賠償訴訟)濫発の常習者でもある。詳しくは、当ブログの下記URLを開いて、「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズをお読みいただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?cat=12

あなたがなんとなくDHC製品を買うことが、デマとヘイトとスラップを蔓延させることになる。あなたの貴重なお金の一部が、この社会における在日差別の感情を煽り、沖縄の基地反対闘争を貶める。また、安倍改憲の旗振りに寄与することにもなる。

言論の自由を圧迫するスラップ訴訟は、経済合理性を考えればあり得ない。しかし、DHCの売り上げの一部が、こんな訴訟を引き受ける弁護士の報酬にまわることにもなる。

DHC製品不買は、「消費者主権」にもとづく法的に何の問題もない行動。意識的にDHC製品を購入しないだけで、この社会からデマとヘイトとスラップをなくすることができる。若者たちに訴える。ぜひ、主権者としての自覚のもと、「DHC製品私は買わない」「あなたも買っちゃダメ」と多くの人に呼びかけていただきたい。投票日だけの主権者ではない、自覚的な主権者の一人として。
(2019年1月14日)

東京都知事は、熊谷市の爪の垢を煎じて飲むべし。

毎日新聞・9月12日(水)夕刊の「特集ワイド」は、「関東大震災から95年 虐殺された朝鮮人の遺族来日」と題する文字通りワイドな記事。毎日は、いま日本のメディアがなすべき仕事をよくしていると思う。

中見出しに、「否定の動き、ヘイトスピーチ続く中… 伝える努力に希望」「『反省なき教育』が戦争になった」とある。井田純記者の署名記事だが、事件を見る視点に確かなものがある。

関東大震災から95年の今年、震災直後のデマで虐殺された朝鮮人の遺族、権在益(クォンジェイク)さん(62)と曺光煥(ソガンファン)さん(57)が韓国から来日した。事件ゆかりの地を訪ね、各地の追悼行事に参列しながら、市民と交流を重ねた。初めて日本を訪れた2人は、2代前の祖先が犠牲になった地を踏んで、何を感じたのか。

記事の一部を引用させていただく。全文は、(有料記事だが)下記を参照されたい。
https://mainichi.jp/articles/20180912/dde/012/040/006000c

権さんの母方の祖父は1923年、この寺(藤岡市・成道寺)の隣にあった藤岡警察署内で殺害された朝鮮人17人の1人。震災後、「朝鮮人が放火している」「井戸に毒を入れている」などのデマは群馬県内にも伝わり、各地で自警団が結成された。藤岡警察署は保護を求めてきた朝鮮人をかくまっていたが、9月5日、群衆が「朝鮮人を引き渡せ」と署に乱入、翌日にかけて竹やりや日本刀などで惨殺したという。
 安全が保証されていたはずの署内で起きた「藤岡事件」は、「藤岡市史」「群馬県警史」などにも記録が残る。事件後、地域住民らは犠牲者追悼の思いを込めて成道寺に慰霊碑を建立した。碑の裏には「今後再びこのような惨事の発生を断ち」と願う文言とともに、17人の犠牲者、建立に関わった藤岡市長らの名前が刻まれている。

震災後の関東一円で無数に生じた、民衆による朝鮮人虐殺事件の一断片である。このケースでは、朝鮮人を保護しようとした警察を群衆(自警団)が敢えて排除したのだ。無防備で無抵抗な朝鮮人に対する虐殺が警察署の庁内で行われたのだ。日本人の所業として「国恥」というしかない同胞による蛮行の一端である。

しかし、救いの一つは、「市史」「県警史」などに記録が残されていることだ。記録に残しておかねばならないとする良心の人が複数いたということなのだ。安倍政権の記録隠蔽改ざんの忖度官僚よりも、ずっと立派な人たちではないか。そして、地域住民らの手で犠牲者追悼の思いを込めた慰霊碑が建立され、成道寺では20年以上も慰霊祭が継続されているという。

だれがどのように殺戮をしたかを思いめぐらすと断腸の思いだが、他方、だれがどんなかたちで碑の建立を思い立ち、その思いがどんな風に広まって、どんな風に費用負担についての協議が調い、ことが実行されたのだろうか。その経過に日本人の良心を見ることができる。

同様の追悼行事は各地で続いているという。たとえば…、
埼玉県熊谷市では、95年から追悼行事を市が主催。市長、市議会議長が悲惨な出来事が二度と繰り返されないようにと追悼の言葉を贈る。だが、在日コリアンに対するヘイトスピーチ(差別扇動表現)拡大の影響か、市に抗議電話やメールが寄せられることがあるという。市の担当者は「そういった方には、公的記録からも聞違いなくこの事件があったことがわかっている、と伝えています。犠牲者の冥福を祈り、再発を防止する趣旨の行事だとお話しします」と話す。

熊谷市。暑いだけでなく、人を思いやる心が熱い。いまだに国恥にまみれたままの東京都知事小池百合子は、この記事を読んだだろうか。この人には、熊谷市担当職員の爪の垢を煎じて飲ませたい。

横浜で震災後の朝鮮人虐殺の実態を調査している元教員が次のように語っている。この言葉は肝に銘じておこう。
「(デマと知っていたのに)デマだったと教えない教師、事件に対する反省のない教育が、次の時代の戦争を担う世代を準備したのです。」

この記事の最後は、こう締めくくられている。
先祖が殺された地を踏むことに抵抗があった、という曺さんは離日前にこう言った。「震災時の虐殺に関するフィールドワークや慰霊行事を続け、忘れずに伝えていこうとする日本のみなさんの努力に敬意を持っています。悪い日本人ばかりじゃない、ということを帰って伝えたい。韓国と日本が、力を合わせて記録と記憶を継承していきたいと願っています」

歴史的事実は消えない。民族差別を背景とした虐殺の「恥」は消えようもない。しかし、その事実を隠蔽し、あるものをないことにするのは、さらに恥ずべきことなのだ。痛みを伴う同胞の「恥」の事実を見据えるところからしか、未来は開けない。藤岡にも熊谷にも、良心の人がいたことに希望の光を見る思いである。

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いまこそウソとごまかしの「安倍政治」に終止符を! 賛同署名のお願い。
http://article9.jp/wordpress/?p=11058

安倍政治に即刻の終止符を求める人々の熱い言葉の数々。
http://article9.jp/wordpress/?p=11073

ネット署名にご協力を。そして、是非とも拡散をお願いします。
9月10日に開始して、賛同者は本日(1 6日)6500筆を上回っています。

署名は、下記URLからお願いいたします。
https://bit.ly/2MpH0qW

(2018年9月16日・連続更新1995日)

「私は捏造記者ではありません」 ー 植村(札幌)訴訟結審

植村隆元朝日新聞記者が、櫻井よしこらを訴えた名誉毀損損害賠償請求訴訟(札幌地裁)が先週の金曜日(7月6日)に結審した。判決言渡は11月9日の予定。原告・弁護団そして支援者は意気軒昂である。

櫻井よしこや西岡力らは、産経や週刊文春、WiLLなどを舞台に、植村隆を「捏造記者」として攻撃した。櫻井や西岡に煽動されたネット右翼が、植村本人だけでなく、その家族や勤務先の北星学園までを標的に攻撃して、大きな社会問題となった。問題とされた植村隆の朝日の記事は、1991年8月のもの。常軌を逸したバッシングというほかはない。

ことは表現の自由やジャーナリズムのありかたにとどまらない。従軍慰安婦をめぐる歴史修正主義の跋扈を許すのか、安倍政権を押し上げた右翼勢力の民族差別やリベラル派勢力への攻撃を默過するのか、という背景をもっている。

私も、同期の友人たちと語らって、植村・北星バッシングへの反撃の声をあげた。そのときの率直な気持は、この社会の動向に、薄気味悪さだけでなく恐ろしさを感じていた。伝えられている、あのマッカーシズムの雰囲気を嗅ぎ取らざるを得なかったのだ。この訴訟、この判決は、この社会の健全さを占うものとしての重みをもっている。

リベラルバネが多少は働いて、いま櫻井よしこや西岡力の影響力は明らかに落ちてきている。判決が、植村ではなく櫻井よしここそが「捏造ジャーナリスト」であることを明らかにするものとなるよう期待したい。

「植村裁判を支える市民の会」が立派なホームページを作っている。
http://sasaerukai.blogspot.com/

そのサイトから、結審(2018年7月6日)の法廷と、2年前3か月前の第1回法廷(2016年4月22日)での、原告植村隆渾身の意見陳述を引用しておきたい。

植村の「私は捏造記者ではありません」との痛切な訴えは、歴史を捏造し修正しようとする者の鋭い指弾ともなっている。

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結審(2018年7月6日)法廷での意見陳述

今年3月、支援メンバーらの前で、直前に迫った本人尋問の準備をしていました。「なぜ、当該記事を書いたのか」、背景説明をしていました。こんな内容でした。

私は高知の田舎町で、母一人子一人の家で育ちました。豊かな暮らしではありませんでした。小さな町でも、在日朝鮮人や被差別部落の人びとへの理不尽な差別がありました。そんな中で、「自分は立場の弱い人々の側に立とう。決して差別する側に立たない」と決意しました。そして、その延長線上に、慰安婦問題の取材があったと説明していました。

その時です。突然、涙があふれ、止まらなくなり、嗚咽してしまいました。

新聞記者となり、差別のない社会、人権が守られる社会をつくりたいと思って、記事を書いてきました。それがなぜ、こんな理不尽なバッシングにあい、日本での大学教員の道を奪われたのでしょうか。なぜ、娘を殺すという脅迫状まで、送られて来なければならなかったのでしょうか。なぜ、私へのバッシングに北星学園大学の教職員や学生が巻き込まれ、爆破や殺害の予告まで受けなければならなかったのでしょうか。「捏造記者」と言われ、それによって引き起こされた様々な苦難を一気に思い出し、涙がとめどなく流れたのでした。強いストレス体験の後のフラッシュバックだったのかもしれません。

本人尋問が迫るにつれ、悔しさと共に緊張と恐怖感が増してきました。反対尋問では再び、あのバッシングの時のような「悪意」「憎悪」にさらされるだろうと思ったからです。

「そうだ、金学順(キム・ハクスン)さんと一緒に法廷に行こう」と考えました。そして、金学順さんの言葉を書いた紙を背広の内ポケットに入れることにしたのです。

この紙は、私に最初に金学順さんのことを語ってくれた尹貞玉(ユン・ジョンオク)先生の著書の表紙にあった写真付の著者紹介の部分を切り取ったものです。その裏の、白い部分に金学順さんが自分の裁判の際に提出した陳述書の中の言葉を黒いマジックで、「私は日本軍により連行され、『慰安婦』にされ人生そのものを奪われたのです」と書きいれました。

私の受けたバッシング被害など、金さんの苦しみから比べたら、取るに足らないものです。いろんな夢のあった数えで17歳の少女が意に反して戦場に連行され、数多くの日本軍兵士にレイプされ続けたのです。絶望的な状況、悪夢のような日々だったと思います。

そして、私は、こう自分に言い聞かせました。「お前は、『慰安婦にされ人生を奪われた』とその無念を訴えた人の記事を書いただけではないか。それの何が問題なのか。負けるな植村」

金さんの言葉を、胸ポケットに入れて、法廷に臨むと、心が落ち着き、肝が据わりました。

きょうも、金さんの言葉を胸に、意見陳述の席に立っています。

私は、慰安婦としての被害を訴えた金学順さんの思いを伝えただけなのです。

そして「日本の加害の歴史を、日本人として、忘れないようにしよう」と訴えただけなのです。韓国で慰安婦を意味し、日本の新聞報道でも普通に使われていた「挺身隊」という言葉を使って、記事を書いただけです。それなのに、私が記事を捏造したと櫻井よしこさんに繰り返し断定されました。

北海道新聞のソウル特派員だった喜多義憲さんは私の記事が出た4日後、私と同じように「挺身隊」という言葉を使って、ほぼ同じような内容の記事を書きました。記事を書いた当時、私との面識はなく、喜多さんは私の記事を読んでもいなかったのです。喜多さん自身が直接、金学順さんに取材した結果、私と同じような記事を書いた、ということは、私の記事が「捏造」でない、という何よりの証拠ではないでしょうか。その喜多さんは、2月に証人として、この法廷で、櫻井よしこさんが私だけを「捏造」したと決め付けた言説について、「言い掛かり」との認識を示されました。

そして、こうも述べられました。「植村さんと僕はほとんど同じ時期に同じような記事を書いておりました。それで、片方は捏造したと言われ、私は捏造記者と非難する人から見れば不問に付されているような、そういう気持ちで、やっぱりそういう状況を見れば、違うよと言うのが人間であり、ジャーナリストであるという思いが強くいたしました」この言葉に、私は大いに勇気づけられました。

1990年代初期に、産経新聞は、金学順さんに取材し、金学順さんが慰安婦になった経緯について、少なくとも二度にわたって、日本軍の強制連行と書きました。読売新聞は、「『女性挺身隊』として強制連行され」と書きました。

いま産経新聞や読売新聞は、慰安婦の強制連行はなかったと主張する立場にありますが、1990年代の初めに金学順さんのことを書いたこの両新聞の記者たちは、金さんの被害体験をきちんと伝えようと、ジャーナリストとして当たり前のことをしたのだと思います。私は金さんが、慰安婦にさせられた経緯について、「だまされた」と書きました。「だまされ」ようが「強制連行され」ようが、17歳の少女だった金学順さんが意に反して慰安婦にさせられ、日本軍人たちに繰り返しレイプされたことには変わりないのです。彼女が慰安婦にさせられた経緯が重要なのではなく、慰安婦として毎日のように凌辱された行為自体が重大な人権侵害にあたるということです。

しかし、私だけがバッシングを受けました。娘は、「『国賊』植村隆の娘」として名指しされ、「地の果てまで追い詰めて殺す」とまで脅されました。

あのひどいバッシングに巻き込まれた時、娘は17歳でした。それから4年。『殺す』とまで脅迫を受けたのに、娘は、心折れなかった。そのおかげで、私も心折れず、闘い続けられました。私は娘に「ありがとう」と言いたい。娘を誇りに思っています。

被告・櫻井よしこさんは、明らかに朝日新聞記者だった私だけをターゲットに攻撃しています。私への憎悪を掻き立てるような文章を書き続け、それに煽られた無数の人びとがいます。櫻井さんは「慰安婦の強制連行はなかった」という強い「思い込み」があります。その「思い込み」ゆえなのでしょうか。事実を以て、私を批判するのではなく、事実に基づかない形で、私を誹謗中傷していることが、この裁判を通じて明らかになりました。そして誤った事実に基づいた、櫻井さんの言説が広がり、ネット世界で私への憎悪が増幅されたことも判明しました。

「WiLL」の2014年4月号の記事がその典型です。金さんの訴状に書いていない「継父によって40円で売られた」とか「継父によって・・・慰安婦にさせられた」という話で、あたかも金さんが人身売買で慰安婦にされたかのように書き、私に対し、「継父によって人身売買されたという重要な点を報じなかった」「真実を隠して捏造記事を報じた」として、「捏造」記者のレッテルを貼りました。「捏造」の根拠とした「月刊宝石」やハンギョレ新聞の引用でも都合のいい部分だけを抜き出し、金さんが日本軍に強制連行されたという結論の部分は無視していました。

しかし、櫻井さんは、私の指摘を無視できず、2年以上経っていましたが、「WiLL」と産経新聞で訂正を出すまでに追い込まれました。実は、訂正文には新たな間違いが付け加えられていました。金さんが強制連行の被害者でないというのです。日本軍による強制連行という結論をもつ記事に依拠しながらも、その結論の部分を再び無視していました。極めて問題の大きい訂正でしたが、櫻井さんの取材のいい加減さが、白日のもとに晒されたという点では大きな前進だったと思います。支援団体の調べでは、この種の間違いが、産経、「WiLL」を含めて、少なくとも6件確認されています。

提訴以来3年5か月が経ちました。弁護団、支援の方々、様々な方々の支援を受け、勇気をもらって、歩んでまいりました。絶望的な状況から反撃が始まりましたが、「希望の光」が見えてきたことを、実感しています。

そして櫻井よしこさんをはじめとする被告の皆さん、被告の代理人の皆さん。長い審理でしたが、皆様方はいまだに、ご理解されていないことがあると思われます。大事なことなので、ここで、皆様方に、もう一度、大きな声で、訴えたいと思います。

「私は捏造記者ではありません」

裁判所におかれては、私の意見を十分に聞いてくださったことに、感謝しております。公正な判決が下されることを期待しております。

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第1回法廷(2016年4月22日)での原告意見陳述

■「殺人予告」の恐怖
裁判長、裁判官のみなさま、法廷にいらっしゃる、すべての皆様。知っていただきたいことがあります。17歳の娘を持つ親の元に、「娘を殺す、絶対に殺す」という脅迫状が届いたら、毎日、毎日、どんな思いで暮らさなければならないかということです。そのことを考えるたびに、千枚通しで胸を刺されるような痛みを感じ、くやし涙がこぼれてきます。

私は、2015年2月2日、北星学園大学の事務局から、「学長宛に脅迫状が送られてきた」という連絡を受けました。脅迫状はこういう書き出しでした。

「貴殿らは、我々の度重なる警告にも関わらず、国賊である植村隆の雇用継続を決定した。この決定は、国賊である植村隆による悪辣な捏造行為を肯定するだけでなく、南朝鮮をはじめとする反日勢力の走狗と成り果てたことを意味するものである」

5枚に及ぶ脅迫状は、次の言葉で終わっています。

「『国賊』植村隆の娘である●●●を必ず殺す。期限は設けない。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。地の果てまで追い詰めて殺す。絶対にコロス」

私は、足が震えました。

大学に脅迫状が送られてきたのは2014年5月末以来、これで5回目でした。最初の脅迫状は、私を「捏造記者」と断定し、「なぶり殺しにしてやる」と脅していました。さらに「すぐに辞めさせろ。やらないのであれば、天誅として学生を痛めつけてやる」と書いていました。

娘を殺害する、というのは、5回目の脅迫状が初めてでした。もう娘には隠せませんでした。「お前を殺す、という脅迫状が来ている。警察が警戒を強めている」と伝えました。娘は黙って聞いていました。

娘への攻撃は脅迫だけではありません。2014年8月には、インターネットに顔写真と名前が晒されました。そして、「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。自殺するまで追い込むしかない」と書かれました。こうした書き込みを削除するため、札幌の弁護士たちが、娘の話を聞いてくれました。私には愚痴をこぼさず、明るく振舞っていた娘が、弁護士の前でぽろぽろ涙をこぼすのを見て、私は胸が張り裂ける思いでした。

なぜ、娘がこんな目にあわなければならないのでしょうか。1991年8月11日に私が書いた慰安婦問題の記事への攻撃は、当時生まれてもいなかった高校生の娘まで、標的にしているのです。悔しくてなりません。脅迫事件の犯人は捕まっていません。いつになったら、私たちは、この恐怖から逃れられるのでしょうか。

■私への憎悪をあおる櫻井さん
櫻井よしこさんは、2014年3月3日の産経新聞朝刊第一面の自身のコラムに、「真実ゆがめる朝日報道」との見出しの記事を書いています。このコラムで、櫻井さんは私が91年8月に書いた元従軍慰安婦の記事について、こう記述しています。

「この女性、金学順氏は後に東京地裁に 訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている」。その上で、櫻井さんは「植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じ」ていない、と批判しています。しかし、訴状には「40円」の話もありませんし、「再び継父に売られた」とも書かれていません。

櫻井さんは、訴状にないことを付け加え、慰安婦になった経緯を継父が売った人身売買であると決めつけて、読者への印象をあえて操作したのです。これはジャーナリストとして、許されない行為だと思います。

さらに、櫻井さんは、私の記事について、「慰安婦とは無関係の「女子挺身隊」と慰安婦が同じであるかのように報じた。それを朝日は訂正もせず、大々的に紙面化、社説でも取り上げた。捏造を朝日は全社挙げて広げたのである」と断定しています。

櫻井さんは「慰安婦と『女子挺身隊』が無関係」と言い、それを「捏造」の根拠にしていますが、間違っています。当時、韓国では慰安婦のことを「女子挺身隊」と呼んでいたのです。他の日本メディアも同様の表現をしていました。

例えば、櫻井さんがニュースキャスターだった日本テレビでも、「女子挺身隊」という言葉を使っていました。1982年3月1日の新聞各紙のテレビ欄に、日本テレビが「女子てい身隊という名の韓国人従軍慰安婦」というドキュメンタリーを放映すると出ています。

私は、神戸松蔭女子学院大学に教授として一度は採用されました。その大学気付で、私宛に手紙が来ました。「産経ニュース」電子版に掲載された櫻井さんの、そのコラムがプリントされたうえ、手書きで、こう書き込んでいました。

「良心に従って説明して下さい。日本人を貶めた大罪をゆるせません」

手紙は匿名でしたので、誰が送ってきたかわかりません。しかし、内容から見て、櫻井さんのコラムにあおられたものだと思われます。

この神戸の大学には、私の就任取り消しなどを要求するメールが1週間ほどの間に250本も送られてきました。結局、私の教授就任は実現しませんでした。

櫻井さんは、雑誌「WiLL」2014年4月号の「朝日は日本の進路を誤らせる」という論文でも、40円の話が訴状にあるとするなど、産経のコラムと似たような間違いを犯しています。

このように、櫻井さんは、調べれば、すぐに分かることをきちんと調べずに、私の記事を標的にして、「捏造」と決めつけ、私や朝日新聞に対する憎悪をあおっているのです。

その「WiLL」の論文では、私の教員適格性まで問題にしています。「改めて疑問に思う。こんな人物に、果たして学生を教える資格があるのか、と。植村氏は人に教えるより前に、まず自らの捏造について説明する責任があるだろう」

「捏造」とは、事実でないことを事実のようにこしらえること、デッチあげることです。記事が「捏造」と言われることは、新聞記者にとって「死刑判決」に等しいものです。

朝日新聞は、2014年8月の検証記事で、私の記事について「事実のねじ曲げない」と発表しました。しかし、私に対するバッシングや脅迫はなくなるどころか、一層激しさを増しました。北星学園大学に対しても、抗議メールや電話、脅迫状が押し寄せ、対応に追われた教職員は疲弊し、警備費は膨らみました。

北星学園大学がバッシングにあえぎ、苦しんでいた最中、櫻井さんは、私と朝日新聞だけでなく、北星学園大学への批判まで展開しました。

2014年10月23日号の「週刊新潮」の連載コラムで、「朝日は脅迫も自己防衛に使うのか」という見出しを立て、北星学園大学をこう批判しました。「23年間、捏造報道の訂正も説明もせず頬被りを続ける元記者を教壇に立たせ学生に教えさせることが、一体、大学教育のあるべき姿なのか」

同じ2014年10月23日号の「週刊文春」には、「朝日新聞よ、被害者ぶるのはお止めなさい “OB記者脅迫”を錦の御旗にする姑息」との見出しで、櫻井よしこさんと西岡力さんの対談記事が掲載されました。私はこの対談の中の、櫻井さんの言葉に、大きなショックを受けました。

「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすれば、それは朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」

櫻井さんの発言には極めて大きい影響力があります。この対談記事に反応したインターネットのブログがありました。

「週刊文春の新聞広告に、ようやく納得。もし、私がこの大学の学生の親や祖父母だとしたなら、捏造で大問題になった元記者の事で北星大に電話で問い合わせるとかしそう。実際、心配の電話や、辞めさせてといった電話が多数寄せられている筈で、たまたまその中に脅迫の手紙が入っていたからといって、こんな大騒ぎを起こす方がおかしい。櫻井よしこ氏の言うように、「錦の御旗」にして「捏造問題」を誤魔化すのは止めた方が良い」

私はこのブログを読んで、一層恐怖を感じました。ブログはいまでもネットに残っています。

櫻井さんは、朝日新聞の慰安婦報道を批判し、「朝日新聞を廃刊にすべきだ」とまで訴えています。言論の自由を尊ぶべきジャーナリストにもかかわらず、言葉による暴力をふるっているようです。「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起している」のは、むしろ、櫻井さん自身の姿勢ではないか、と思っています。

■「判決で、救済を」
「言論には言論で闘え」という批判があります。私は「朝日新聞」の検証記事が出た後、複数のメディアの取材を受け、きちんと説明してきました。また、複数の月刊誌に手記を掲載し、自分の記事が「捏造」ではないことを、根拠を上げて論証しています。にもかかわらず、私の記事が「捏造」であると断定し続ける人がいます。大学や家族への脅迫もやむことがありませんでした。こうした事態を変えるには、「司法の力」が必要です。

脅迫や嫌がらせを受けている現場はすべて札幌です。櫻井さんの「捏造」発言が事実ではない、と札幌で判断されなければ、こうした脅迫や嫌がらせも、根絶できないと思います。

私の記事を「捏造」と決めつけ、繰り返し世間に触れ回っている櫻井さんと、その言説を広く伝えた「週刊新潮」、「週刊ダイヤモンド」、「WiLL」の発行元の責任を、司法の場で問いたいと思います。私の記事が「捏造」でないことを証明したいと思います。

裁判長、裁判官のみなさま。どうか、正しい司法判断によって、「捏造」記者の汚名を晴らしてください。家族や大学を脅迫から守ってください。そのことは、憲法で保障された個人の表現の自由、学問の自由を守ることにもつながると確信しています。

(2018年7月13日)

ネトウヨ集団の弁護士懲戒請求運動に、きっちり責任をとらせよう

一昨日(5月11日)の毎日新聞朝刊「ネットウオッチ」欄に、「懲戒請求被害の弁護士 広がる対抗措置の動き (ネトウヨに対して)損害賠償求め提訴へ/請求側(ネトウヨ)は動揺」との記事。(括弧内は澤藤の挿入、以下同)

朝鮮学校への補助金交付は利敵行為--などとするネット上での扇動を背景に(ネトウヨから)大量の懲戒請求を送られた弁護士たちの間で、懲戒請求者(ネトウヨ)に対し、損害賠償請求や刑事告訴など法的措置をとる動きが広がっている。これを恐れ、弁護士に和解金10万円を支払って謝罪する請求者(ネトウヨ)も出ている。ネット空間の無責任な言説にあおられた軽率な行動が、実社会で法的制裁を受けようとしている。

この「《ネット空間》の無責任な言説にあおられた軽率な行動が、《実社会》で法的制裁を受けようとしている」という指摘が的確で印象的である。ネトウヨ諸君には現実感覚が乏しいようだ。バーチャルな《ネット空間》と、リアルな《実社会での法的制裁》の結び付きについての認識が希薄で、クリック一つが高くつくことへの警戒心がなく、あとで仰天することになる。

このことは、弁護士に対する不当懲戒請求に限らない。ネトウヨが寄り集まっての集団提訴や集団告発、あるいはヘイトデモ参加についても同様である。最終的には、違法な行為の責任は個人が、損害賠償という形で負わねばならない。それこそが、アベの大好きな「自己責任」なのだ。煽動に乗せられただけ、単に記事を転送しただけ、後ろにくっついて行っただけ、などは免責理由とならない。

なお、毎日が言う「無責任な言説にあおられた軽率な行動」とは、「余命三年時事日記」なるブログの煽動にうかうか乗せられたことを指す。このブログが、テンプレートをつくっての書き込みを誘っていた。当の「余命三年時事日記」を主宰する者の氏名住所は現時点では未特定。自分は闇に隠れて、人を裏から煽動しているわけだ。私もこのブログに目を通してみた。どうして、こんな低劣な煽動に乗せられる者が続出するのだろうか。詐欺まがい悪徳商法の被害者についても同じ思いだが、まことに不思議でならない。

もちろん、ネトウヨ諸君にも表現の自由はある。しかし、事実無根の主張によって人の名誉を毀損する自由は誰にもない。民族や国籍による差別言動も許されない。ネトウヨ諸君よ。もし、表現の自由を謳歌しようというなら、匿名に隠れることなく堂々と顕名で論争するがよかろう。

毎日新聞の同記事によれば、佐々木亮・北周士の両弁護士が、全懲戒請求者に損害賠償請求訴訟を起こす予定で、虚偽告訴や業務妨害での刑事告訴も検討するという。懲戒請求の全件数は約3000件だそうだから、3000人を被告とする訴訟となる。もっとも、管轄は損害賠償債務の履行地でよいから、全国のすべての被告に対する請求が一通の訴状で、東京地裁に提訴が可能だ。

毎日の記事は、こうも伝えている。

 ある(ネット上の)掲示板には懲戒請求者とみられる人物が「(ネット情報で)俺の連絡先が通知されないと信じて請求した。(扇動者に)裏切られた」「裁判とめるにはどうしたらよいのか」などと不安を書き込んでいる。

佐々木弁護士らは、訴訟前に和解する条件として、明確な謝罪や慰謝料10万円(両弁護士分合計)の支払いなどを求め、すでに応じた請求者もいる。懲戒請求では請求者の実名や住所が当該弁護士に伝えられる。佐々木弁護士は「匿名で請求できると勘違いしている人もいるようだ。素直に謝ってきた人もいた。軽い気持ちでやったという印象を受けた」と話す。

佐々木亮・北周士の両弁護士は、まずは事前の和解を推進する方針で、5月16日に記者会見の予定という。その後塵を拝することなく、榊原元弁護士が5月9日に、東京地裁に提訴した。
以下は、当日の彼のツィート。

朝鮮学校への補助金などを巡って弁護士に対して大量の懲戒請求がなされた件、不当な懲戒請求による損害賠償金の支払いを求め、本日、東京地方裁判所等に訴訟を提起した。現時点で被告は未だごく一部であるが、訴訟前に和解が成立した方を除き、最終的には請求者全員に裁判所までお越し頂きたいと思う。

その後のツィートで彼の基本認識が以下のように語られている。

弁護士に対する大量懲戒請求事件の件。確かに我々個々の弁護士は被害者だ。しかし、本当に攻撃されているのは弁護士会であり、弁護士自治である。さらにいうと、本件は在日コリアンを差別するという動機でなされたヘイトクライムである点を看過してはならない。究極的な被害者は在日コリアンなのである

たかがネットに煽られて弁護士に大量の懲戒請求をしたり、在日コリアンを入管に大量通報したり、検察庁に大量告発したりする日本人が、新聞に煽られたら朝鮮人虐殺をしないはずがない。
何度も言うが、大量懲戒請求事件はヘイトクライムである。ヘイトクライム防止につながる解決でなければならない。

神原弁護士のこの訴状は見ていない。弁護士ドットコムによれば大要以下のとおり。

訴状によると、被告(懲戒請求のネトウヨ)は2017年6月、神奈川県弁護士会に対して、神原弁護士ら複数の弁護士を対象として、弁護士法に基づく懲戒請求をおこなった。同弁護士会綱紀委員会は2018年4月、神原弁護士らを懲戒しないと判断した。

懲戒理由として、「違法である朝鮮学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為は、日弁連のみならず当会(神奈川県弁護士会)でも積極的に行われている二重、三重の確信的犯罪行為である」などと書かれていたという。

原告(神原弁護士)は「少なくとも朝鮮学校補助金要求に関連して違法行為をした事実はまったくない」「存在しない事実について、あえて懲戒請求を申し立てていたことが明らかだ」としている。現時点で、被告数や請求額などは明らかにされていない。

そして同記事は次のようにまとめている。

最高裁の判例では、事実上または法律上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら、または普通の注意を払えば知りえたのに、あえて懲戒請求していれば不法行為にあたる、とされている。日弁連によると、2017年だけで組織的な懲戒請求は約13万件あり、その多くが問題のブログに起因するものとみられる。

当ブログも、このことについては、何度か論及してきた。ぜひ、ご参照いただきたい。
民族差別主義者らの「弁護士懲戒請求の濫用」に歯止めを
http://article9.jp/wordpress/?p=9724
(2018年1月5日) 

安易な弁護士懲戒請求は、損害賠償請求の対象となる。
http://article9.jp/wordpress/?p=9311
(2017年10月12日)

さて、懲戒濫用に対抗の武器となる最高裁判例(平成19年4月24日・三小)の当該部分を再確認しておこう。

「…懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。そして、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであるから、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。そうすると、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」

つまり、「通常人としての普通の注意を払うことなく」軽々に弁護士懲戒請求をすれば、不法行為として損害賠償請求されることを覚悟しなければならないのだ。

しかも、当然のことながら、懲戒請求は請求者の住所氏名を明記しなければ、受け付けられない。うかうか、扇動に乗せられると、ある日、裁判所から損害賠償請求の訴状が届くことになる。よく考えるべきなのだ。ネトウヨ諸君。
(2018年5月13日)

安易な弁護士懲戒請求は、損害賠償請求の対象となり得る。

この国は、いまだにヘイトスピーチ天国なのか。臆面もない民族差別の横行を恥ずかしいとも、腹ただしいとも思う。

「懲戒請求:弁護士会に4万件超」「『朝鮮学校無償化』に反発」「インターネットに文書のひな型掲載」という見出しの記事が報道されている。

朝鮮学校への高校授業料無償化の適用、補助金交付などを求める声明を出した全国の弁護士会に対し、弁護士会長らの懲戒を請求する文書が殺到していることが分かった。毎日新聞の取材では、少なくとも全国の10弁護士会で計約4万8000件を確認。インターネットを通じて文書のひな型が拡散し、大量請求につながったとみられる。

各地の弁護士によると、請求は今年6月以降に一斉に届いた。現時点で、
▽東京約1万1000件
▽山口約6000件
▽新潟約6000件
▽愛知約5600件
▽京都約5000件
▽岐阜約4900件
▽茨城約4000件
▽和歌山約3600件--などに達している。

請求書では、当時の弁護士会長らを懲戒対象者とし、「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、活動を推進するのは犯罪行為」などと主張している。様式はほぼ同じで、不特定多数の賛同者がネット上のホームページに掲載されたひな型を複製し、各弁護士会に送られた可能性が高い。

請求書に記された「声明」は、2010年に民主党政権が高校無償化を導入した際に各弁護士会が朝鮮学校を含めるよう求めた声明や、自民党政権下の16年に国が都道府県に通知を出して補助金縮小の動きを招いたことに対し、通知撤回や補助金交付を求めた声明を指すとみられる。 (以下略)

弁護士に対する批判を遠慮する必要はない。しかし、この懲戒請求は、弁護士懲戒に名を借りた朝鮮学校に対する悪罵であり民族差別である。少数者の側、弱者の側の人権を擁護すべき弁護士の使命に対する不当な攻撃でもある。

この、特定弁護士や弁護士の特定業務への大量懲戒請求呼びかけ戦術は、2007年に橋下徹が始めたものだ。殺人事件被告の弁護団への懲戒請求をテレビで呼び掛け、同年中に約8000件の請求が届いたという。橋下を被告とする民事訴訟は、最高裁が2011年に「表現行為の一環に過ぎず、不法行為に当たらない」として終了した。一方、別の訴訟で最高裁は07年に「懲戒請求の乱用が不法行為になり得る」ことを明言している。

私は、DHCスラップ訴訟の被告となって、この種の事案に敏感となっている。スラップ訴訟は民事訴訟制度を濫用して表現の自由を侵すものだが、同じことは刑事告訴でもできるし、弁護士に対しては懲戒請求という戦術で達成できる。DHCスラップ訴訟弁護団で、この3者が違法となる要件について比較検討したことがある。

この点については、私は何か言わねばならないと思っていたところ、先を越された。親しい弁護士から、こんなメールをいただいた。抜粋して紹介させていただく。

「問題は、弁護士懲戒制度が自分の気に入らない意見や立場を攻撃する手段として濫用させることが一般化しつつあることです。この風潮を止めないと、制度そのものが破壊され、弁護士自治が揺らぎかねません。さらに、本件で標的となっている朝鮮学校支援のような類の問題に関わりを持つ弁護士の行動に制約がかかったり、弁護士会がこの種の問題に関わることを躊躇させる危険もはらんでいます。

このような事案について、ありがちな態度は『馬鹿は相手にしない』という大人の対応です。しかし、そのような『大人の対応』がこれまでどれほど排外主義や反知性主義を増長させてきたでしょうか?私は、そのような『大人の態度』は断固拒絶し、強く批判したいと思います。」

「被害者である各弁護士に訴えたいのですが、このような濫用的懲戒については、毅然とした対応をしましょう。具体的には、民事の不法行為を根拠とした損害賠償請求がもっとも有効だと思われます。これについては、最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決(民集61巻3号1102頁)が明確な基準を示していますから、決然と行うべきです。」

なんと素晴らしい毅然たる姿勢。そう、弁護士は逃げてはならないのだ。不当な攻撃とは精一杯闘わなければならない。それが、弁護士が享受する自由に伴う責任というものだ。

同弁護士が引用する、懲戒濫用に対抗の武器となる最高裁判例の一部。
「…懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。そして、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであるから、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。そうすると、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」

つまり、「通常人としての普通の注意を払うことなく」軽々に弁護士懲戒請求をすれば、不法行為として損害賠償請求されることを覚悟しなければならないのだ。

当然のことながら、懲戒請求は請求者の住所氏名を明記しなければ、受け付けられない。うかうか、扇動に乗せられると、ある日、裁判所から損害賠償請求の訴状が届くことになりかねない。
よく考えるべきなのだ。
(2017年10月12日)

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