澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

政党助成金を受け取らない日本共産党の心意気に一票を。

(2022年6月26日)
 経済的な依存関係は、政治的な支配と被支配の従属関係を作る。商店はお得意様に、芸術家はパトロンに、メディアは広告主に頭が上がらない。そして政治家は、献金のスポンサーの言うことを聴かざるを得ない。金主に対する「聞く耳」「聞く力」は政治家の本能なのだ。

 分かりやすい実例を、2021年12月6日付「赤旗」が報じている。「軍需企業 自民に献金2億円」「軍事費6兆円突破の陰で」「契約額上位 三菱重工など」という見出し。
 「護衛艦や潜水艦などの軍需品を2020年度に防衛省に納入した軍需企業上位の各社が、同年、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にあわせて2億円を超す献金をしていたことが本紙の調べでわかりました。政府が閣議決定した21年度補正予算案で、軍事費は過去最高の7738億円、当初予算の歳出額と合わせると初めて6兆円を突破しました。アメリカ言いなりに大軍拡をすすめる陰に、軍需企業の献金攻勢が浮かび上がりました」という記事。

 政治資金収支報告書で明らかになった2億円超の献金元企業とは、三菱重工業・川崎重工業・富士通・三菱電機・日本電気・IHI・日立製作所・小松製作所等々の軍需産業。利潤追求を株主に対する使命とする株式会社が、何の見返りもなく政治献金をするはずはない。献金とは、見返りを求めての賄賂に限りなく近いもの。自民党と大企業・軍需産業とは、相身互い持ちつ持たれつの相い寄る魂なのだ。美しい魂ではない、カネで結ばれた増収賄に限りなく近似したうすぎたない魂と魂である。

 かつて政党運営の財政は、全て支持勢力からの献金でまかなわれていた。当然のごとく、自民党は財界に、社会党や民社党は労組に政治資金の拠出を求めた。分かり易い構図だが、民主主義の観点から、その双方に問題があることは自明であった。

 民主主義は、全ての主権者が平等の政治的権利を持つことを基本原則とする。選挙権は各自平等であり、言論による選挙運動も対等なルールで行われなければならない。社会における富の偏在が民意の正確な反映を撹乱してはならない。政治資金としても選挙資金としても、企業献金は本来全面禁止されてしかるべきものなのだ。

 また、労働組合は政治思想で結集した集団ではない。組合員に対する政党支持の自由を保障しなければならない。労働組合が政治活動を行う余地はあるにせよ、特定政党への政治献金はなし得ない。献金先政党の支持者ではない組合員の政治的信条の自由(思想・良心の自由=憲法19条)を蹂躙するからだ。

 リクルート事件やゼネコン汚職で政治の浄化が叫ばれたとき、企業献金規制の世論が高まり、併せて労働組合・団体などからの献金も制限されることになった。これに代わって、政党に対し国が助成を行う制度が新設された。1994年2月4日成立の政党助成法である。

 毎年の政党交付金の総額は、総人口に250円を乗じた金額とされる。現在、その総額は300億円強である。これを各政党が、その規模に応じて山分けすることになる。もっとも、この政党助成金の制度はできたが、企業献金が禁じられたわけではない。だから、軍需産業から自民党に政治献金が流れることになる。

 そのような事態の中で、ご存じのとおり、ひとり日本共産党だけが、この制度を違憲として政党助成金を一円も受領していない。その理由を、党自身がこう説明している。

 「日本共産党が政党助成金を受け取らず、制度の廃止を強く主張しているのは、次の理由からです。

1、国民には政党を支持する自由も、支持しない自由もあります。政党助成金とは、国民の税金の「山分け」ですから、支持していない政党にも献金することを事実上強制する、「思想及び信条の自由」をふみにじる憲法違反の制度だからです。

2、政党の政治資金は、国民とのむすびつきを通じて、自主的につくるべきものです。税金からの分けどりは、この本来のあり方に根本的に反し、政党の堕落と国民無視の政治を助長する制度だからです。

 一部に「うけとって有効に使えば?」との意見もありますが、憲法違反のお金を受けとること自体が、国民への背信行為になります。また、制度の廃止をめざす世論の結集にも逆行することになると、私たちは考えています」

 私は、この日本共産党の、頑固なまでに筋を通そうという姿勢を好ましいものと思う。その筋とは、「思想信条の自由」の尊重でもあるが、むしろ、政党活動資金は自前で調達すべきものという政治活動の原則であろう。国や企業や組合を頼り、これをスポンサーにしたのでは、その意向を忖度せざるを得ない事態も考えなければならない。党費と支持者からの個人カンパと、あとは赤旗や出版物の販売による利益。これだけの原資で党を運営していれば、党自身と支持者の意見以外に、耳を傾ける対象はない。国からカネをもらって、国にきちんとものが言えるか、という心意気である。

 「有権者一人一人が個人献金によって政治活動を支えるという、あたりまえの姿を実現してこそ、政治が本当に国民のものになるのではないでしょうか」という、日本共産党の姿勢に賛同して、一票を投じたい。

献金も 平たく言えば 賄賂なり

(2021年12月12日)
 一昨日の維新の政治資金規正法違反告発について、足りないところを補いたい。
 政治資金規正法の理念は、大きくは二つある。
 一つは、《(1) 政治資金の動きを透明化し、国民の目に見えるようにすること》であり、もう一つは、《(2) 政治資金の流れに一定の縛りを儲けて、カネの力で政治を動かすことに歯止めをかけること》である。
 
 (1)の目的は、各政治団体の収支や資産状況を明らかにすることによって、その政治団体を経済的に支えている人や団体を明確にすることにある。そのことを明らかにすることによって、それぞれの政党や政治団体の性格の把握が可能となる。それが、国民の次の投票行動に結びつくことが期待されている。

 たとえば、DHC・吉田嘉明やフジ住宅から献金を受けている政党や政治家は、ヘイト体質だと考えてよい。アパホテルからの寄附を受けていれば、歴史修正主義と親和性が高いと判断されるだろう。

 今回話題となった維新の政治資金収支報告では、金融市場でのマネーゲームで大儲けをしていた人物から、年に2150万円もの政治献金を受けていることが明らかとなった。維新とはそういう性格の政党なのだ。そういう勢力から、献金を受けて恥じない政党なのだ。しかも、村上世彰といえば、インサイダー取引で有罪確定した人物ではないか。

 (2)の目的は、極端な不公正が生じることのないように、政治献金の量的・質的取締りを行おうというというものである。村上世彰の維新への政治献金は法が取り締まらざるを得ない巨額なのだ。

 貧者の一灯が集まって支えている政党であるか、マネーゲームの上がりを原資とする献金を集めて運営されている政党であるか、国民は目を凝らして注視し、そして判断しなければならない。自分にとって、誰が味方で、誰が敵なのかを。

 しばらく前に、私のブログに「そのカネが無償の愛のはずはない」という表題の記事を書いた。DHC・吉田嘉明の渡辺喜美(当時・みんなの党)に対する8億円貸付に関してのものだが、村上世彰の維新への政治献金についても当てはまる。

 毎日新聞「仲畑流万能川柳」(略称「万柳」)欄、2015年2月10日掲載の末尾18句目に、
  民意なら万柳(ここ)の投句でよくわかる(大阪 ださい治)
とある。まったくそのとおりだ。

 その民意反映句として、第4句に目が留まった。
  出すほうは賄賂のつもりだよ献金(富里 石橋勤)
 思わず膝を打つ。まったくそのとおり。

 過去の句を少し調べてみたら、次のようなものが見つかった。
  献金も 平たく言えば 賄賂なり(日立 峰松清高)
  献金が無償の愛のはずがない(久喜 宮本佳則)
  超ケチな社長が献金する理由(白石 よねづ徹夜)

 選に洩れた「没句供養」欄の
  献金と賄賂の違い霧と靄(別府 吉四六)
という句も実に面白い。庶民感覚からは、疑いもなく「献金=賄賂」である。譲歩しても「献金≒賄賂」。

 国語としての賄賂の語釈に優れたものが見あたらない。とりあえずは、面白くもおかしくもない広辞苑から、「不正な目的で贈る金品」としておこう。「アンダーテーブル」、「袖の下」、「にぎにぎ」という裏に隠れた語感が出ていないのが不満だが。
 
 村上ファンド・村上世彰から維新・馬場伸幸への政治献金として渡ったカネは、これが健全な庶民感覚に照らして「不正な目的で贈る金品」の範疇に含まれることは理の当然というべきだろう。

 前述の各川柳子の言い回しを借りれば、この2150万円は、「出すほうは賄賂のつもりだよ」であり、「平たく言えば 賄賂なり」である。なぜならば、「出すカネが無償の愛のはずがない」のであって、「超ケチな社長が金を出す理由」は別のところにちゃんとある。結局は、「無償の政治献金」と、「私益を求めての賄賂」の違いは、その実態や当事者間の思惑において「霧と靄」の程度の差のものでしかない。これが社会の常識なのだ。

維新の政治資金規正法違反告発と、被告発人馬場伸幸の弁明

(2021年12月11日)
 昨日(12月10日)上脇博之さんら学者グループ11名が告発人となって、大阪地検に維新の政治献金収支における違法を告発した。告発代理人弁護士は阪口徳雄君以下21名。私もその一人である。

本日の赤旗は、この告発を次のように報じている。

「維新共同代表らを告発」「投資家から上限超す献金の疑い」「教授ら大阪地検に」
 日本維新の会とその党支部が2020年、旧「村上ファンド」で知られた投資家の村上世彰(よしあき)氏から政治資金規正法が定める年間の上限額を上回る計2150万円の寄付を受けたと届け出ていた問題で、神戸学院大学の上脇博之教授ら11人が10日、規正法違反の疑いがあるとして村上氏や維新の会の馬場伸幸共同代表らを大阪地検特捜部に告発しました。

 告発状によると、党本部である日本維新の会は、20年10月26日に村上氏から2000万円の寄付を受けました。翌27日には馬場幹事長(当時)が代表者の「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」が、村上氏からの寄付150万円を受け取ったため、上限を超える寄付を受けた疑いがあるとしています。

 規正法は、一個人から政党への年間の寄付が2000万円を「超えることができない」としています。党本部と支部の額は合算され、違反した場合は寄付と受領の双方に「1年以下の禁錮または50万円以下の罰金」を規定しています。

 本紙はこの問題を1日に維新の会に質問し、3日付で特報していました。馬場氏は8日に自身のツイッターで、支部が政治資金収支報告書で届け出た150万円の寄付について、別団体である馬場氏の後援会への寄付を支部への寄付として誤記したと説明。今月1日に収支報告書を訂正したとしています。

NHKは、被告発人馬場の弁明を次のように報道している。

【馬場氏“ケアレスミス”】
 告発状を提出されたことについて、馬場氏は「事務所が記載する団体を間違えたケアレスミスだった。今後は、このようなことがないよう複数人態勢でチェックするように事務所に指示した」とコメントしています。

 政治家の責任逃れは、自民党だけの専売特許ではない。「秘書のせい、部下のせいで、オレの責任じゃない」という醜悪なセリフがここでも聞かれる。決して自らの身を切ろうとはせず、秘書や部下に責任を転嫁してすまそうというみっともなさ。

 被告発人馬場はこう言っている。「村上から維新本部への寄附のうち2000万円は維新の本部に、150万円は馬場個人の後援会口座に振り込まれた。ところが、それを後援会事務所職員のケアレスミスで 大阪府第17選挙区支部の入金として届けてしまった。今は訂正されているのだから問題はない」
 それはない。常識的に考えられない不自然な弁明としか言いようがない。

本件告発状の冒頭、「告発の趣旨」は下記のとおりである。
1.告発事実
(1) 被告発人村上世彰は、
 「日本維新の会」本部に対し2020年10月26日に金2000万円を、
 「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」に対し同年同月27日に金2000万円を超える金150万円の寄附を供与した。

(2) 被告発人「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」は、2020年10月27日、被告発人村上世彰から金2000万円を超える金150万円を受領した。
  また被告発人同支部代表馬場伸幸、被告発人同支部会計責任者米田晃之らは、互いに共謀して、同日上記金員を受領した。

2.罪名及び罰条
(1)被告発人村上世彰は、政治資金規正法第26条第1号(第21条の3第1項1号)違反。
(2)ア 被告発人「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」は政治資金規正法第26条第3号(22条の2違反)同第28条の3第1項違反(両罰規定)。
   イ 被告発人馬場伸幸及び被告発人米田晃之は、刑法第60条、政治資金規正法第26条第3号(第22条の2)違反。

 政治資金収支報告書の作成・届出に関する違反行為が発覚して後に「訂正」しても、遡及して犯罪の成立を消滅させることはできない。「盗んだが盗品は返還済み」「詐欺はしたが金は戻し」ても、情状として考慮はされても、犯罪成立を否定する弁明にはならない。本件の事後訂正も同様である。

 それだけではなく、本件での馬場の「ケアレスミス」弁明も常識的には成り立ち得ない。こういう姑息な弁明が見苦しい。

 本件の告発人らは、この点について12月10日付け「告発補充書」を提出している。その要点は、以下のとおりである。

1.馬場議員の弁明
 私たち告発人・告発代理人は、2日前の8日正午過ぎに、被告発人村上世彰氏及び被告発人馬場伸幸衆議院議員(当時日本維新の会幹事長、現在共同代表)らを10日10時に政治資金規正法違反で御庁(大阪地検)に刑事告発し、その後記者会見する旨、大阪地裁司法記者クラブに連絡したところ、
馬場議員は、同日午後5時49分自らのツイッター上に「【ご報告】令和2年分政治資金収支報告書の訂正について」を公表し
(https://mobile.twitter.com/baba_ishin/status/1468502968005984260)、その内容の一部が報道された。
その内容を箇条書きすると、以下の通りである。
① 昨年10月、村上世彰氏が党(日本維新の会本部)及び馬場幹事長に対し個人献金を申し出た。
② その際、村上氏は、党(日本維新の会本部)に対しすでに上限額(2,000万円)の献金をする意思を示していたので、馬場幹事長への献金は政党支部(日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部)ではなく個人後援会(馬場伸幸後援会)に行い、実際馬場伸幸後援会の銀行口座に振り込んだ。
③ その経過については、事務方同士で行ったメールのやり取り等もすべて残っている。
④ 村上氏は、上限額を超える寄附をする意図がなかったことは確実である。
⑤ しかし、馬場事務所のミスにより、村上氏が振り込んだ献金を政党支部への寄附として誤って計上し、収支報告書にも誤記した。
⑥ (1年1か月経過の後)今年の12月1 日に政党支部と馬場伸幸後援会の両政治団体の収支報告書の訂正を届け出た。

2.上記弁明はとうてい真実とは言い難くおよそ信用できない
 被告発人村上氏が本当に「馬場伸幸後援会の銀行口座」に金150万円を振り込んでいたら、当該後援会が村上氏には領収書を発行し、それらに基づき会計帳簿にその旨を記載して、それに基づいて収支報告書も記載したはずである。にもかかわらず、入金されていない政党支部の会計帳簿に金150万円の寄附収入を計上して収支報告書に記載するミスを犯すことなどありえない。たとえ、そのようなミスをしたとしても、後援会と政党支部の各収支も各残高も合わないことになるはずだから、必ずミスに気付いていたはずであり、支部の収支報告書の作成段階で気が付き、訂正するはずである。
 また、馬場議員側は、2015年分以降の政治資金収支報告書を見ると、個人からの寄附は全て政党支部で受けており、後援会では一切受けていない。昨2020年も同様である。したがって、被告発人村上氏には政党支部の口座情報を伝え、村上氏は、伝えられた政党支部の口座に金150万円を振り込んだというのが真実であると思われる。そして、寄附を受けた政党支部は、村上氏に領収書を発行しているはずである。もしも村上氏が後援会に寄付するつもりだったら、領収書の発行者が政党支部になっていることに驚き、その領収書を突き返して後援会の領収書を発行するよう求めていたはずである。しかし、それもしていない。村上氏は政党支部に寄附する故意を有し、馬場議員側は政党支部で寄附を受領する認識を有していたことを間違いではないと思われる。

3.領収書、会計帳簿、金融機関口座等の捜査を!
 被告発人馬場議員の政党支部と後援会の両政治団体の収支報告書の訂正は、以上の通り虚偽であると思われる。被告発人馬場議員は、被告発人村上が党本部に2000万円の寄附をしたことを知らなかったとは弁明せず、被告発人村上氏が党本部に2000万円の寄附をしたことを知っており、それが政治資金規正法の定める個人寄附の上限額だと知っていたと認めた(上記1②)。
 告発人らは、御庁に対し、被告発人村上が受け取った領収書、被告発人馬場議員の政党支部と後援会の会計帳簿、送金銀行口座、事務方同士の間で送信・受信された電子メールがあるというなら強制捜査で確認して、本件政治資金規正法違反事件の真相を解明していただき、刑事事件として立件していただきたい。国会議員側の収支報告書訂正で犯罪を不問にする「不当な特権」を許してはならないとの思いで告発補充書を提出する。

幸田露伴「渋沢栄一伝」異聞

(2021年2月15日)
したたかなはずの資本主義だが、誰の目にもその行き詰まりが見えてきている。環境問題、エネルギー問題、貧困・格差…。とりわけ、新自由主義という資本主義の原初形態の矛盾が明らかとなり、グローバル化が事態の混乱を拡大している。

その反映だろうか、ノスタルジックに「日本資本主義の父」が持ち上げられている。この「父」は、福沢諭吉に代わって間もなく1万円札の図柄になるという。そして、昨日(2月14日)が第1回だったNHK大河ドラマ「青天を衝け」の視聴率も上々の滑り出しだという。

何ともバカバカしい限りではないか。「資本主義の父」とは、搾取と収奪の生みの親であり育ての親であるということなのだ。この「父」は、カネが支配する世の中を作りあげて自らも富を蓄積することに成功した。多くの人を搾取し収奪しての富の蓄積である。搾取され収奪された側が、「資本主義の父」の成功談に喝采を送っているのだ。

資本主義社会は、天皇親政の時代や、封建的身分制社会よりはずっとマシではある。だが、社会の一方に少数の富める者を作り、他方に多数の貧困者を作る宿命をもっている。「資本主義の父」とは本来唾棄すべき存在で、尊敬や敬愛の対象たり得ない。

仮に渋沢栄一に尊敬に値する事蹟があるとすれば、「資本主義の父」としてではなく、「資本抑制主義の父」「資本主義万能論を掣肘した論者」「野放図な資本主義否定論者の嚆矢」「資本主義原則の修正実践者」としてでしかない。彼が、そう言われるにふさわしいかは別として。

この点を意識してか、NHKは、渋沢について「資本主義の父」と呼ぶことを慎重に避けているようだ。番組の公式サイトではこう言っている。

幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一。豪農に生まれた栄一は、幕末の動乱期に尊王攘夷思想に傾倒する。しかし、最後の将軍・徳川慶喜との出会いで人生が転換。やがて日本の近代化に向けて奔走していく…。

「実業家」「日本の近代化」という用語の選択は無難なところ。

幸田露伴の筆になる「渋沢栄一伝」(岩波文庫)に目を通した。下記のとおり、岩波の帯の文句がこの上なく大仰であることに白ける。

「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の伝記を、文豪が手掛けた。士は士を知る。本書は,類書中,出色独自の評伝。激動の幕末・近代を一心不乱に生きた一人の青年は、「その人即ち時代その者」であった。枯淡洗練された名文は,含蓄味豊かな解釈を織り込んで、人間・渋沢栄一を活写する。露伴史伝文学の名品(解説=山田俊治)

渋沢の死が1931年で、その後に執筆依頼があり露伴の脱稿は1939年となった。渋沢の顕彰会からの依頼で引き受けた伝記である。稿料の額についての記載はないが、文豪・幸田露伴たるもの、こんな伝記を書くべきではなかった。今ころは、泉下で後悔しているに違いない。

執筆の動機からも、対象を客観視しての叙述ではない。ヨイショの資料を集めてもう一段のヨイショを重ねた決定版。執筆の時期が日中戦争のさなか、太平洋戦争開戦も間近のころ。ヨイショの方向は、尊皇の一点。資本主義の権化に徹した渋沢像がまだマシだったのではないか。下記の記述が、資本主義の権化ではないとする渋沢像の描出である。

商人は古より存在した。しかしそれは単に有無を貿遷し、輜銖(ししゅ・物事の微細なこと)を計較して、財を生じ富を成すを念とせるもののみであって、栄一の如くに国家民庶の福利を増進せんことを念として、商業界に立ったものは栄一以前にはほとんど無い。金融業者も古より存在した。しかしそれも単に母を以て子を招び、資を放って利を収むるを主となせるもののみであって、栄一の如く一般社会の栄衛を豊かに健やかならしめんことを願とせるものは栄一以前にはほとんど無い。各種の工業に従事したり事功を立てたりしたものも古より存在した。しかしこれまた多くは自家一個の為に業を為し功を挙ぐるを念として、栄一の以前には其業の普及、その功の広被を念としたものは少い。

栄一以前の世界は封建の世界であった。時代は封建時代であった。従って社会の制度も経済も工業も、社会事象の全般もまた封建的であった。従って人間の精神もまた封建的であった。大処高処より観れば封建的にはおのずから封建的の美が有り利かあって、何も封建的のものが尽く皆宜しくないということは無いが、しかし日月運行、四時遷移の道理で、長い間封建的であった我邦は封建的で有り得ない時勢に到達した。世界諸国は我邦よりも少し早く非封建的になった。我邦における封建の功果は既に毒爛して、その弊は漸くに人をして倦厭を感ぜしむるに至った。この時に当って非封建的の波は外国より封建的の我国の磯にも浜にも打寄せて来た。我国は震憾させられた。そして漸くにして起って来たものは尊皇攘夷の運動であった。尊皇は勿論我が国体の明顕に本づき、攘夷は勿論我が国民の忠勇に発したのであった。あるいは不純なる動機を交えたものも有る疑も無きにあらずといえども、それは些細のことで、大体において尊皇攘夷の運動は誠心実意に出で、その勢は一世に澎湃するに至って、遂に武家政治は滅び、王政維新の世は現わるるに及んだ。

上記は、切れ目のない文章を二段に分けてみたもの。前段は、私利を貪らぬ実業家としての渋沢に対するヨイショ。後段は、尊皇攘夷運動によって王政維新の世が到来したことの積極評価。露伴の頭の中では、この二つが結びついていたのであろう。

露伴は、戦後まで永らえて、47年に没している。もしかしたら、価値観の転換後は下記のように改作したいと思ったのではないだろうか。

世界諸国は我邦よりも少し早く民主主義的になった。我邦における天皇制の功果は既に毒爛して、その弊は漸くに人をして倦厭を感ぜしむるに至った。この時に当って民主主義の波は外国より天皇制の我国の磯にも浜にも打寄せて来た。我国は震憾させられた。そして漸くにして起って来たものは人民の民主主義を実現せんとする一大運動であった。天皇は勿論我が守旧勢力の傀儡にして、国体は勿論我が一億国民に対する思想統制の手段であり、全ては国民欺罔と抑圧の意図に発したのものであった。敗戦を機とした、民主主義を求むる人民の運動の勢は一世に澎湃するに至って、遂に天皇制は瓦解し、人権尊重と民主主義の「日本国憲法」の世は現わるるに及んだ。

アベに昭恵(妻)ありて、スガに正剛(長男)あり。

(2021年2月5日)
菅内閣は、安倍後継を以て任じている。菅義偉は、ウソとゴマカシの安倍政治の大半に官房長官として関わっていたのだから、負の遺産の承継における「後継内閣」の資格はもとより十分である。だが、それにとどまらないようだ。

何よりも、真似をしがたい近親者の公私混同についても、菅は安倍に負けない。アベにおける昭恵(妻)に当たる存在が、スガでは正剛(長男)のごとくである。

菅の長男・菅正剛が、総務省幹部を違法接待していたことを昨日(2月4日)発売の「週刊文春」が記事にして話題となっている。これは、安倍晋三にとって、妻の安倍昭恵が籠池夫妻と関わって森友学園事件を引き起こしたごとく、菅義偉にとっての痛恨事となりかねない。が、本日のメディアの報道は、オリンピックに関連した森喜朗の「女性差別発言」一色となり、スガ長男の総務省高級官僚接待はやや霞んでしまったことが惜しい。

以下、文春On-lineからの抜粋引用である。

総務省の幹部らが、同省が許認可にかかわる衛星放送関連会社(東北新社)に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。

接待を受けたのは、今夏の総務事務次官就任が確実視されている谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送等の許認可にかかわる情報流通行政局の秋本芳徳局長、その部下で同局官房審議官の湯本博信氏の計4名。昨年の10月から12月にかけてそれぞれが株式会社東北新社の呼びかけに応じ、都内の1人4万円を超す料亭や割烹、寿司屋で接待を受けていた。また、手土産やタクシーチケットを受け取っていた。

コロナ禍のさなかに総務省幹部らはなぜ接待に応じたのか。菅首相は、総務大臣を務め、総務省でアメと鞭の人事を行い、人事に強い影響力を持つとされる。また、東北新社の創業者父子は、過去、菅首相に合計500万円の政治献金を行っているが、その影響はなかったのか。東北新社に勤める長男が行った総務官僚への違法接待について、菅政権が今後どのような対応をするのか、注目される。

さっそく、昨日(2月4日)菅は衆院予算委員会で立憲民主党の黒岩宇洋議員の質問の矢面に立った。菅の釈明はこんなものだった。

「公的立場にない一民間人に関するもの(問題)だ。プライバシーに関わることであり、本来このような場でお答えすべきことではない」「(長男とは)普段ほとんど会っていない。完全に別人格だ。そこはご理解いただきたい」。

おいおい、それはないだろう。「ご理解いただきたい」という言葉は、そっくりお返ししなければならない。責任を追及されているのは一民間人に過ぎない菅正剛ではなく、内閣総理大臣たる菅義偉、あなたご自身なのだよ。内閣総理大臣たるあなたの影響力が、一民間人に過ぎない長男を通じて総務省の官僚に伝播し、公正な行政を曲げて東北新社という民間企業に不当な利益をもたらしているのではないかという疑惑が掛けられている。そのことをしっかりと自覚していただきたい。

行政の廉潔性や、廉潔性に対する国民の信頼に疑惑を生じさせたのは、直接にはあなたの長男だ。しかし、その疑惑はあなたという国政の最高権力者のバックがあればこそのことだ。つまりは、内閣総理大臣たるあなたと、一民間人たるあなたの長男との二人で疑惑を生じさせたのだ。責任の軽重は、もちろん内閣総理大臣たるあなたの方が限りなく重いが、一民間人の長男も、その疑惑に関わる限りは、プライバシー保護に逃げ込むことは許されない。

夫婦も親子も、別人格であることは当然だ。だが、別人格ながらも親密な関係にあることも、第三者から親密な関係と見られることも至極当然なのだ。総務省の官僚の側から見れば、菅義偉と菅正剛という別人格が、極めて親密な関係にあると忖度せざるを得ないのだ。うっかり正剛に不愉快な思いをさせると、義偉の機嫌を損ねて不利益を被ることになりはしまいか。そのように官僚を思わせているのが、スガさん、あなたの不徳の至り、自業自得なのではないか。そうは思わないかね。

黒岩宇洋は菅の答弁に対して「この疑念、疑惑は私人にかけられたものではなくて、菅政権そのものの疑念、疑惑だ」と批判。まったくそのとおりなのだ。

問題は、「実際に行政の廉潔性が傷つけられたか否か」というだけではない。首相の長男による高級官僚の接待があったというだけで、「行政の廉潔性に対する国民の信頼が傷つけられた」ということでもある。首相の不祥事である。徹底して追及しなければならない。

しかも、周知のとおり、昔も今も菅義偉は総務省とのつながりが深い。メディアの取材に、「同省関係者は『首相の息子に誘われたら、断れないだろう』と漏らす」というコメントがあった。さあ、菅義偉よ、この官僚の声をどのように聞く。

安倍晋三よ、もう悪あがきは止めて野党の4項目要求に誠実に応えよ。

(2020年12月29日)
報道によれば、野党4党でつくる「総理主催『桜を見る会』追及本部」は、昨日(12月28日)「桜を見る会」前夜祭疑惑の真相を解明するために、安倍晋三に対して、
(1) ホテルが発行した明細書を提出せよ
(2) 同領収書を提出せよ
(3) 安倍晋三が答弁を訂正したいとする事実と異なる箇所はどこか明確にせよ
(4) ホテルへの支出に見合う費用補てんの原資を明らかにせよ
という4項目の要求書を提出した。回答期限は1月初旬までである。同要求書は、衆参の議院運営委員長にも提出された。

国会内で記者会見した追及本部の黒岩宇洋事務局長(立憲民主党・衆院議員)は、12月25日衆参両院の議院運営委員会で行われた安倍晋三(前首相)への聴取の答弁で、「疑念は晴れるどころか、さらに深まった」「安倍前首相が発言を訂正したいとしている箇所すら具体的にわからない」と指摘。「安倍氏がしらを切るのなら、証人喚問しなければならない」と批判した。

田村智子追求本部事務局長代行(日本共産党・参院議員)は、「要求する4点は、疑惑の焦点である『桜』前夜祭が供応接待にあたるのではないかという核心部分のものだ。安倍氏は資料を示し、まともな説明をすべきだ」と強調。

また、日本共産党の宮本徹衆院議員は、「領収書が出てくれば宛先がわかり、(安倍前首相の資金管理団体である)晋和会の政治資金収支報告書が虚偽記載かどうかがわかる」と述べた。

また、4野党は、真相解明に向け、年明けの通常国会でも追及を続ける方針を明確にしている。

政治資金規正法の主たる立法趣旨は、以下のとおり政治資金の流れの透明化にある。
「議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開…の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することである(規正法1条より)。」

安倍晋三による国政の私物化、安倍晋三による「カネで政治を買い取ろうという汚い行為」の有無を監視するために、安倍晋三がどこから金を調達し、誰にどのように支払っているか、その資金の流れの透明化の確保を、法は要求しているのだ。

主権者国民は、常にこの透明化された政治資金の収支に関心を寄せて、監視し批判の対象としなければならない。

そのためには、
(1) ホテルが発行した明細書を提出せよ
(2) 同領収書を提出せよ
の2項目はあまりに当然の最低限の要求である。なお、1件当たり5万円以上の領収書等は、提出を義務付けられている書類でもある。

(4) ホテルへの支出に見合う費用補てんの原資を明らかにせよ
も同様である。今に至るも、いったい何を隠そうとしているのか。

(3) 安倍晋三が答弁を訂正したいとする事実と異なる箇所はどこか明確にせよ
は、少し趣が異なる。これは、安倍晋三特有の「ご飯論法」による答弁の不明確さ故の釈明要求である。

田村智子のいう「要求する4点は、疑惑の焦点である『桜』前夜祭が供応接待にあたるのではないかという核心部分のものだ」は、まことにそのとおりであろう。

買収・供応等の「カネで政治をねじ曲げる」実質犯を防ぐために、形式犯としての政治資金の透明化が求められているのだ。倫理にも法規制にも反する透明化要求拒否の姿勢は、当然に買収・供応等の「カネで政治をねじ曲げる」実質犯の存在を疑わしめるものと指摘せざるをえない。

安倍晋三の疑惑の追及は、ようやく本格的に始まった。まずは、4項目の要求に対する態度の誠実さを見極めようではないか。

露骨に企業のホンネを見せつけた、「アキタフーズ」と「DHC・吉田嘉明」。

(2020年12月27日)
久しぶりに安倍晋三の「記者会見」や「委員会答弁」に接して、あらためて腹立たしい思い。この男、日本の政治を腐敗させた元兇。あわよくば憲法を壊そうとまでしたのだ。そしてこの男、国会での数々のウソを「心から反省」「政治責任を痛感」などと言いながら、議員に居座ると開き直っている。いま、「安倍晋三の議員辞職を求める」「議員をやめろ、アベヤメロ」というスローガンが実践的に重要だと思う。

そのアベ政治の負の遺産が、あちこちに吹き出している。その中の一つとして、吉川貴盛元農水相の受託収賄疑惑がある。賄賂としての現金授受は3度にわたり、合計500万円。授受の趣旨や職務との関連性が明確である。そして、この賄賂の収受の後に政策が動いている。

吉川貴盛が安倍内閣の農水大臣だったのは2018年10月2日~2019年9月11日、ごく最近のこと。果たして腐敗は農水大臣限りのものなのか、またアキタフーズだけのことなのか疑心暗鬼とならざるをえない。

批判の目は、吉川とその背後のアベ政治に向けられているが、吉川に汚いカネを渡した鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)に注目したい。3回にわたって直接に現金を渡した贈賄実行者が、グループの「元代表(87才)」だというが、氏名を特定しての報道はなされていない。便宜、この人物をAとしておこう。

報道によれば、Aは、家畜にとってストレスの少ない飼育環境を目指す「アニマルウェルフェア」(AW)をめぐり、農水族を中心とした政治家らに陳情を重ねていたという。

「アニマルウェルフェア」(AW)とは、部外者にはなじみがないが、農水省はこう説明している。

我が国も加盟しており、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としては、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。

《生産性の向上》と《安全な畜産物の生産》が、政策目的として挙げられているが、コスト高になることから業者は反対したのだ。明らかに、「アニマルウェルフェア」(AW)とは、消費者利益のための業者規制の政策である。この政策を嫌った業界から主務大臣への賄賂の提供は、営利追求を本質とする企業の恒常的な衝動の表れにほかならない。このような犯罪の誘発は、安倍政権の業者に甘い体質の表れとみるべきであろう。安倍自身の責任も小さくはない。

消費者の声を背にした行政による業者規制と、それに対する業界からの反発は、この社会の政治と経済の基本構造に根差している。消費者や労働者や生活者は行政を通じて業者に対する厳格な規制を求め、業界は常にこの規制を緩和せよ撤廃せよと蠢動する。

常識的に、Aは自社の利益のために行政を動かそうと画策した。しかし、賄賂の提供が明るみに出た今、「(鶏卵)業界のため」の現金提供だったと「弁明」しているという。個別企業でも業界でも、薄汚い事業者は、政治や行政に携わる者に、カネを渡し利益を供与して、自社の儲けの障害となる行政規制を取り除こうとあがくのだ。

6年前の「週刊新潮記事」を思い出す。ある経営者の「独占手記」の次の一節である。

 私の経営する会社は主に化粧品とサプリメントを取り扱っています。その主務官庁は厚労省です。厚労省の規制チェックは他の省庁と比べても特別煩わしく何やかやと縛りをかけてきます。天下りを一人も受け入れていない弊社のような会社には特別厳しいのかと勘ぐったりするぐらいです。
 いずれにせよ50年近くのリアルな経営に従事してきた私から見れば、厚労省に限らず官僚たちが手を出せば出すほど日本の産業はおかしくなっているように思います。つまり霞が関官僚機構の打破こそが今の日本に求められる改革であり、それを託せる人こそが私の求める政治家でした。ですから声高に《脱官僚》を主張していた渡辺喜美さんに興味を持つのは自然のこと。少なくとも5年前はそうでした。

 よくもまあ、こうまで露骨に消費者利益のための社会的規制に悪罵を投げつけられるものと驚嘆せざるをえない。記者から追い詰められて、こうしゃべったのではなく、無邪気に自分から「手記」を書いたのだ。およそ、企業の社会的責任(CSR)や、企業倫理コンプライアンスなどの世のトレンドとは無縁の、「非良心派経営」の典型。これが、DHCの吉田嘉明の「独占手記」である。タイトルは、「さらば器量なき政治家 渡辺喜美」。これに「借金8億円を裏金にして隠したみんなの党代表」と副題が付いている。

私は、吉田嘉明の渡辺喜美(当時、みんなの党代表)に対する、8億円の政治資金支援に関して、「矜持のない政治家を金で買った」「金で政治を買おうというこの行動は…徹底して批判されなくてはならない」、「DHC吉田が8億出しても惜しくないのは…『規制緩和という政治』を買い取りたいからなのだ」、「金を持つ者がその金の力で政治を自らの利益をはかるように誘導することを許してはならない。DHCの吉田嘉明はその許すべからざることをやったのだ」「自らの私益のために金で政治を買おうとした主犯が吉田。…渡辺だけを批判するのは、この事件の本質を見ないものではないか」と批判の記事をブログに掲載した。

このブログを怪しからんとして、DHC・吉田嘉明は私に、6000万円請求のスラップ訴訟を提起した。こういう恥ずかしい訴訟を受任する弁護士も現実に存在するのだ。

明らかに「吉田嘉明はカネで政治を買おうとした」のだ。「カネで政治を買おうとした」とは、言論の応酬によってのみ成り立つべき民主主義の政治過程において、カネの力で政治への影響力を獲得しようと企図したとの意である。渡辺喜美は小なりとはいえ公党の党首である。ワンマンとしても知られていた。渡辺に巨額のカネを注ぎこむことによって、一政党を事実上支配し、国政に自らの意図する方向での影響力を及ぼすことができると考えたものと合理的に推察される。これは、常識的な思考のしからしめるところである。

もとより、政治が個人や企業の経済力によって左右されるようなことがあってはならない。「民主的な政治過程がカネの力で歪められてはならない」「カネで政治を買ってはならない」という規範は、憲法上の理念や教科書上の倫理にとどまるものではなく、政治資金規正法が刑罰の制裁をもって具体的に規正しているところである。同法は、政治資金の動きの透明性を徹底することだけでなく、個人や企業(政治資金出捐者)と政治家・政治団体(政治資金受領者)間の政治資金の授受の限度額を法定して、「カネの力で民主的な政治過程が歪められることのないよう」規正し、国民による政治に「不断の監視と批判」を実効あらしめるべきことを法定している。

「アキタフーズ」のAが主務大臣に500万円を提供したという報道に照らして、DHC・吉田嘉明の渡辺喜美に対する8億円提供の事実の重大性を再認識せざるをえない。私のDHC・吉田嘉明に対する批判は、「許される言論」の範疇ではない。私は、民主主義に望まれる主権者の行動として、「カネの力で民主的な政治過程が歪められることのないよう」「不断の監視と批判」を実行したのだ。

最近は、DHC批判は、デマとヘイトとスラップに集中しているが、カネで政治を買おうという、その体質の根本をも批判の対象としなければならない。

安倍晋三という人物への対応をめぐって、国民の民度が問われている。

(2020年12月24日)
日本国民の民度なるものの寸法が、安倍晋三という人物にぴったりだったのであろう。国民は、この上なくみっともない政権投げ出しのあとの安倍の復権に寛容であった。のみならず、何と7年8か月もの長期政権の継続を許した。

そのアベ政治が残したレガシーを「モリカケ桜クロカワイ」という。毎日新聞仲畑川柳欄投句の名言である。森友・加計・桜を見る会・黒川・河合、いずれも安倍晋三とその取り巻きによる政治腐敗、国政私物化を象徴する事件。嘘とゴマカシに充ち満ちた負のレガシーである。

その安倍晋三、一見しおらしく、本日の記者会見で、「国民のみなさま」に謝罪した。「深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」と頭を下げたのだ。

安倍晋三によると、「会計責任者である私の公設第1秘書が、(桜を見る会前夜祭での)政治資金収支報告書不記載の事実により略式起訴され、罰金を命ぜられたとの報告を受けた」。「こうした会計処理については、私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」「今般の事態を招いた私の政治責任はきわめて思いと自覚しており、真摯に受け止めている」という。

難解なアベ語を翻訳すると、こんなところだろうか。

「これまでずっと、繰り返しウソをつき続けてきたんだけど、ばれちゃったから一応ゴメンネって言うの。でも、あれはみんな秘書がやったことなの。その秘書が罰金100万円の責任とったんだから、もう問題済んだよね。ボク、な~んにも知らなかったんだから、しょうがないでしょ。ただね、みんな怒っているようだから、取りあえず『政治責任を自覚』って言ってみたんだ。どういうふうに、政治責任をとるかって? そんなこと、なーんにも。口だけ、口だけ。これまでそれで通ってきたんだから,今回もそれでいいでしょ。今回ちょっとまずかったから、これからはバレないように気をつけなくっちゃね」。

「桜を見る会」とは何であったか。各界の功労者を招いて総理大臣が主催する、公的行事である。これを安倍晋三は,露骨なまでに私的な後援会活動に利用した。これを許したのは山口4区の選挙民の民度である。下関・長門両市民は大いに恥ずべきである。石原慎太郎を知事にした、かつての東京都民より以上に。

しかし、公的行事である「桜を見る会」の私物化が明らかになっても、国民の民度は十分な安倍批判をなしえなかった。やむなく、「桜を見る会」ではなく、「桜を見る会」とセットにされた後援会主催の「前夜祭」の、その収支報告書の不記載という、本筋ではないところに問題の焦点を宛てざるを得なかった。そして、本来であれば、国民の怒りをもって国政私物化政権を糾弾しなければならないところ、検察への告発という形で安倍晋三を追い詰めたのだ。

しかし、本日の段階では、安倍は不起訴で逃げ延びた。たくさん持っている尻尾の一つを切り落として。しかし、まだ問題は解決していない。国会での追及もある。検察審査会もある。なによりも、世論の糾弾が重要なのだ。

不起訴処分となって、「深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」と頭を下げる安倍晋三の姿を見る国民の感想は両様あろう。「不起訴で済ますとは怪しからん。天性のウソつきの嘘を見抜けない検察の何という甘さ」という嘆きと、「権勢を誇った有力政治家でも、こうして主権者国民に謝罪しなければならないのだから、わが国の民主主義もけっして捨てたものでもない」という評価と。

さて、どの程度の民主主義の水準を望むのか。いま、安倍晋三という人物への対応をめぐって、日本国民の民度が問われている。

「秘書がやったこと」という弁明を許さない ー 安倍晋三告発のお勧め

(2020年12月23日)
なんとも不愉快なことに、「桜を見る会・前夜祭」の収支報告疑惑について、東京地検特捜部は、安倍晋三を事情聴取したうえで不起訴処分の方向だという。

公設第1秘書(配川博之)については年内に略式起訴する見通しだというが、安倍晋三を「共謀に問うのは困難だと判断した模様」と報道されている。それはおかしい。そんな幕引きは、許されない。必ずしも、共謀の立証がされなくても、「知らぬ存ぜぬ」の安倍を起訴することはできるのだ。

 「みんな秘書がやったこと」「私は秘書のやってることを知らなかった」という言い訳を許さないために政治資金規正法25条2項がある。その活用が必要だ。

そこで、このブログに目を留めた皆様に訴えたい。安倍晋三の尻尾切りの逃げ得を許さないために、ぜひ、下記の告発状の様式を活用し、安倍晋三を告発していただきたい。A4・3頁に過ぎない。自署捺印をして下記宛、郵送すればよい。告発が不起訴処分となれば、その処分を不服として検察審査会に審査を申し立てる資格が与えられる。積極的に、憤懣を行動に表してみてはいかがだろうか。選挙だけではない。これも、政治参加の一手段である。ぜひ、自ら言いたいことも書き添えて、国政私物化の張本人の告発を。

〒100-8903 千代田区霞が関1丁目1番1号
東京地方検察庁特捜部御中

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告  発  状

年  月  日

東京地方検察庁 御中

告発人 住所

氏名                印

被告発人
 住所 東京都千代田区永田町2丁目2番1号 衆議院第一議員会館1212号室
 氏名 安倍晋三 (衆議院議員・晋和会代表者)

被告発人
住所 同上 衆議院第一議員会館1212号室 晋和会事務所
氏名 西山猛(晋和会会計責任者)

告発の趣旨

 被告発人西山猛の後記各行為は、政治資金規正法第25条1項1号(政治資金収支報告書不記載)に該当し、これに関連する被告発人安倍晋三の行為は同法第25条2項に該当する。
よって、上記の各被告発人につき、厳正な捜査と処罰を求める。

告発の事実

第1 被告発人安倍は、国会議員安倍晋三の政治資金管理団体である晋和会の代表者であり、被告発人西山は晋和会の会計責任者である。
西山は、政治資金規正法第12条1項により、晋和会の収支について、毎年所定の時期に政治資金収支報告書を作成して、山口県選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出すべき義務を負い、その義務の不履行は同法25条1項の犯罪として、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金に処せられる。
安倍は、当該政治資金収支報告書の記載が正確になされるよう、会計責任者の選任ならびに監督について相当の注意を尽くすべき義務が課せられ、その違反者は50万円以下の罰金に処せられる。

第2 被告発人西山の責任
1 被告発人西山は、下記各日に各ホテルにおいて恒例行事として行われた「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」の代金補填分として、晋和会会計から各金員を各ホテルに支出したにもかかわらず、晋和会の各年分の収支報告書に上記補填分合計916万円の支出及びその原資となる収入を記載することなく、山口県選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出した。
(1) 2015年4月17日 ホテルニューオータニ東京 157万円
(2) 2016年4月8日 ANAインターコンチネンタルホテル東京 177万円
(3) 2017年4月14日 ホテルニューオータニ東京 186万円
(4) 2018年4月17日 ホテルニューオータニ東京 145万円
(5) 2019年4月17日 ホテルニューオータニ東京 215万円
2 以上は、政治資金規正法25条1項1号に違反し、法定刑の5年以下の禁錮または100万円以下の罰金の範囲で処罰されねばならない。

第3 被告発人安倍の責任
安倍は晋和会の代表者として、永年にわたる上記西山の犯罪行為をうかつにも知らなかった場合には、犯罪行為を重ねた西山を会計責任者として選任したこと、及び会計責任者としての任務遂行の監督につき相当の注意を怠ったものとして、政治資金規正法25条2項によって、50万円以下の罰金の範囲で処罰されねばならない。

第4 被告発人安倍の処罰の必要性
1 被告発人安倍は、7年8か月にわたって内閣総理大臣の地位に就き、森友学園問題、加計学園問題、そして公的行事である「桜を見る会」に自分の後援会員約800名を山口県から招待し続けてきたことに典型的に見られるとおり、国政を私物化してきた人物である。
市民は、検察当局に対し、たとえ被疑者が政治権力者であろうとも、遠慮や忖度をすることなく、公正な捜査により事案の真相を解明し、適正に訴追権限を行使することを、心から期待している。ぜひ、この告発を真摯に受け止め、徹底した捜査と正式裁判請求を求める。
2 なお、法25条2項の法定刑は、最高罰金50万円に過ぎないが、被告発人安倍が起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、法第28条第1項によって、その裁判確定の日から原則5年間選挙権及び被選挙権を失う。その結果、安倍は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失う。
この結果は、法が当然に想定するところである。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受せざるを得ない。本件告発に、特別の政治的な配慮が絡んではならない。市民の期待に応えて検察は臆するところなく、厳正な捜査を遂げられたい。

「桜・前夜祭収支疑惑」で、安倍晋三を第2次告発

(2020年12月21日)
「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成が本年2月。その「会」が、本日(12月21日)安倍晋三前首相に対する第2次告発状を東京地検特捜部に提出した。

「会」は、安倍晋三による国政私物化の象徴としての『桜を見る会』を刑事的に追及することを目的とし、その前夜祭の収支における意図的なゴマカシを東京地検に告発している。本年5月21日に《安倍晋三》と《その後援会代表である公設第1秘書》、《会計責任者》の3名を、政治資金規正法違反(政治資金収支報告書不記載)と、公職選挙法違反(有権者に対する寄付)の被疑事実を告発した。これが、第1次告発である。

同日の告発状提出者は622人に及んだが、さらにその後の追加賛同者を得て、現在の第1次告発状提出者の人数は980人に達している。

国政を私物化し、政治倫理を崩壊させた安倍晋三の罪は重い。しかし、政治資金規正法違反や公職選挙法の寄付などの構造は、政治家安倍本人ではなく、秘書や会計責任者の責任を主たるものとして組み立てられている。だから、政治家安倍晋三は、「自分は何も知らない」「問題があるとすれば、秘書の責任」「あるいは、会計責任者だろう」と言って、逃れようとする。

報道によれば、「秘書だけ立件して略式で済ませ」「安倍晋三は不起訴処分」というのが、特捜の方針だという。それを、防止するための急遽の第2次告発である。

私の見解では、「第2次告発」のポイントは、晋和会代表者・安倍晋三の責任を政治資金規正法25条2項で問うところにこそある。

★ 安倍晋三の「知らぬ存ぜぬ」「秘書が…」は法25条2項については通じない。
★ 《会計責任者の法25条1項の罪が成立》≒《代表者安倍の同2項の罪も成立》
★ 安倍の25条2項の罰金刑が確定すれば、公民権停止となり、議員失職となる。
★ だから検察は、安倍に対する捜査を徹底しなければならない。

※報道によれば、「桜・前夜祭」の会場となったホテル側からの領収証の宛先は、安倍晋三の政治資金管理団体である「晋和会」であったという。つまりは、「補填資金」の出所は「晋和会」だったことになる。しかし、晋和会の政治資金収支報告書に前夜祭の収支についての記載はない。

※とすれば、まず、晋和会の会計責任者(西山)の不記載罪(法25条1項)が問われねばならない。これを免責する理由は見あたらない。
*25条1項「(政治団体の会計責任者が)政治資金収支報告書の提出をしなかつた場合に最高刑禁錮5年」

※同時に、晋和会の代表者である安倍晋三の刑事責任も免れない。
*25条2項「前項の場合において、政治団体の代表者(安倍晋三)が当該政治団体(晋和会)の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、50万円以下の罰金に処する」

つまり、安倍晋三が収支の不記載について「知らぬ、存ぜぬ」「秘書の責任」を押し通して、25条1項の罪責を会計責任者だけに押し付け、最高刑禁錮5年の罪責を免れたとしても、「会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたとき」には処罰され、罰金を科せられることになる。

※問題は、「会計責任者の《選任》及び《監督》について政治家に要求される相当の注意」の水準である。会計責任者の不記載罪が成立した場合には、当然に過失の存在が推定されなければならない。資金管理団体を主宰する政治家が自らの政治資金の正確な収支報告書の作成に、常に注意し責任をもつべきは当然だからである。

被告発人安倍において、十分な措置をとったにもかかわらず会計責任者の不記載を虚偽記載を防止できなかったという特殊な事情のない限り、会計責任者の犯罪成立があれば直ちにその選任監督の刑事責任も生じるものと考えるべきである。
とりわけ、被告発人安倍晋三は、当時内閣総理大臣として行政府のトップにあって、行政全般の法令遵守に責任をもつべき立場にあった。自らが代表を務める資金管理団体の法令遵守についても厳格な態度を貫くべき責任を負わねばならない。

※25条2項の法定刑は、最高罰金50万円に過ぎないが、被告発人安倍晋三が起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、政治資金規正法第28条第1項によって、その裁判確定の日から原則5年間公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を失う。その結果、安倍晋三は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失う。
*政治資金規正法第28条第1項「第23条から第26条の5まで及び前条第2項の罪を犯し罰金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から5年間公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。」
*公職選挙法99条「当選人は、その選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、当選を失う。」

※この結果は、法が当然に想定するところである。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受せざるを得ない。本件告発に、特別の政治的な配慮が絡んではならない。臆するところなく、検察は厳正な捜査を遂げるべきである。**************************************************************************

告  発  状 (第2次・抜粋) 

被告発人
住所 山ロ県下関市上田中町…
氏名 安倍晋三
職業 衆議院議員・晋和会代表者

住所 山ロ県下関市東大和町…
氏名 配川博之
職業 安倍晋三後援会代表者・同前会計責任者

住所 山口県下関市東大和町…
氏名 阿立豊彦
職業 安倍音三後後会会計責任者

住所 千代田区永田町 衆議院第一議員会館1212号室 晋和会事務所
氏名 西山 猛
職業 晋和会会計責任者

告発の趣旨

 被告発人安倍音三、被告発人配川博之、被告発人阿立豊彦及び被告発人西山猛の後記第1の1ないし5及び第2の1ないし5の所為は、刑法60条、政治資金規正法第25条1項2号、同法12条1項1号ホ及び同2号に該当する。
 被告発人安倍音三の後記第3の所為は、政治資金規正法第25条2項、同条1項、同法12条1項1号ホ及び同2号に該当する。
 被告発人安倍音三の後記第4の所為は、政治資金規E法第27条2項、同法25条1項、同法12条1項1号ホ及び同2号に該当する。
 被告発人安倍晋三及び被告発人配川博之の後記第5の1および2の所為は、刑法60条、公職選挙法249条の5第1項及び同法199条の5第1項に該当する。
よって、上記の被告発人らにつき、厳重な処罰を求め、告発する。

告発の事実

第1 (略)
第2 (略)
第3 被告発人安倍は、晋和会の代表者であるが、政治資金規正法第12条1項により山口県選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出すべき後援会の収支報告書につき、上記第2の3ないし5の所為について仮に故意がなかったとしても、晋和会の会計責任者である被告発人西山の選出及び監督につき相当の注意を怠った。

告発に至る経緯

 2020(令和2)年5月21日、法律家621人が、2018(平成30)年4月20日同催された「安倍音三後援会桜を見る会前夜祭」に関して、被告発人安倍、被告発人阿立及び被告発人配川を政治資金咀正法第25条1項2号(収支報告書不記載)の罪で、また被告発人安倍及び被告発人配川を公職選挙法249条の5第1項(寄附)の罪で東京地検に告発し、大きく報道された。その後も、同じ内容の告発は続き、告発人は現在、980人に達している(第1次告発)。
 しかるに東京地検特捜部は、いまだに上記告発人らに対し、捜査の進捗状況を明らかにしないばかりか、再三の問合せに対しても、告発を受理したかどうかすら、「捜査に関わることはお答えできない」などとして明らかにしない。極めて不当かつ不誠実な対応であり、強く抗議する。
 同年11月23日、読売新聞が、「『桜を見る会』の前夜祭を巡り、安倍氏らに対して政治資金規正法違反容疑などでの告発状が出されていた問題で、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書らから任意で事情聴取していた」、「前夜祭の飲食代などの総額は、参加者の会費だけでは不足していた」と報道したのを皮切りに、報道機関各社が独自取材に基づき、捜査内容を報道し始めた。
これまでの報道によれば、収支報告書不記載の罪で時効にかからない2015(平成27)年4月から2019(平成31)年4月まで5回開催された前夜祭において、参加者らから徴収する1人5000円の参加費ではホテルへの支払額に足りず、差額分を被告発人安倍の政治資金団体晋和会がホテルに対し現金で支払っていたとのことであり、毎年の参加費及び補填額も明らかにされている。ホテルからは晋和会宛ての領収証が発行されていたが、被告発人安倍側はこれら領収証を廃棄していたということである。
また、ホテル側はつねに前夜祭の明細書を作成し、後援会に渡していたということである。
被告発人安倍は、国会において、「会費はホテル側が設定した。安倍事務所の職員が会場入り口で会費を受け取り、その場でホテル側に現金を渡した」、「後援会に収入支出は一切なく、政治資金規正法への記載は必要ない」、「ホテルからの明細書も見積書もない」と再三答弁してきたが、こうした答弁が客観的に虚偽だったことが明白になった。
 現在、報道によれば、検察は、公設第1秘書及び事務担当者の収支報告書不記載につき政治資金規正法違反により略式起訴をして罰金刑とし、被告発人安倍については「事情聴取」の上、年内に不起訴処分とする予定であるとされている。
しかし、本件は、7年8か月にわたり内閣総理大臣の地位にあった披告発人安倍の後後会や資金管理団体が犯し続けてきた犯罪であり、しかも国会で虚偽答弁を重ね続けたこと、国会での追及後である2020(令和2)年5月に提出した2019(令和1)年分の収支報告書にもあえて収支を不記載としたことなど、悪質かつ重大な犯罪であり、決して秘書だけの処罰、略式請求により犯罪の全容が国民に公同されない処理で済ませるべき事業ではない。
また、捜査の過程で、後援会だけでなく、被告発人安倍が代表者となっている政治資金団体晋和会から資金が拠出されたことが明白になったにもかかわらず、晋和会の収支不記載についての被疑事実がいっこうに報道されないこと、第一次告発で指摘した後援会員らに対する寄附行為についても捜査が及んでいる様子がうかがわれないことも、不可解であり、問題である。
 私たちは、12月1日、東京地検特捜部に対し、徹底した捜査と真相解明を尽くし、略式起訴で終わらせず正式起訴をせよとの要請書を提出し、同月8田こは東京地検特技知に対し再度の要請書を提出するとともに、東京簡易裁判所裁判官に対し、仮に略式請求がなされても事案の重大陸に鑑み正式裁判をせよとの要請書を提出したが、東京地検特捜部はこれらの要請を受け止めることなく、年内に捜査の幕を引くことを公言している。
 そこで、私たちは、安易な事件終結を許さないため、このたび改めて、2015(平成27)年4月から2019(平成31)年4月まで5回開催された前夜祭に関する2016(平成28)年5月から2020(令和2)年5月まで5回提出された、後援会及び晋和会の収支報告書の不記載による政治資金規正法違反の犯罪と、2018(平成30)年4月および2019(平成31)年4月の前夜祭における後援会員らに対する寄附による公職選挙法違反の犯罪について、被告発人安倍らを告発するものである。
告発対象を過去5年内ないし3年内の行為に限定したのは、公訴時効の関係であって、これら犯罪は2013(平成25)年4月の第1回目の前夜祭から7年7回にわたって行われてきたことを重く受け止めるべきである。

告発事実のポイント

(略)
4 被告発人安倍の悪質性
一少なくとも2019(令和1)年分の収支報告書不記載には「故意」がある
前述のとおり、被告発人安倍は、国会において、「会費はホテル側が設定した。安倍事務所の職員が会場入りロで会費を受け取り、その場でホテル側に現金を渡した」、「後後会に収入支出は一切なく、政治資金規正法への記載は必要ない」、「ホテルからの明細書も見積書もない」などと再三答弁してきたが、こうした答弁が客観釣に虚偽だったことが明白になった。
被告発人安倍は、国会においても、また補填が明らかになった現在に至っても、「自分は知らなかった」、「秘書が自分に隠していた」として、秘書に責任を押し付け、自らに故意はなかったと供述して逃げ切ろうとしているようである。
しかしながら、そもそも「安倍事務所」の実質的代表者である被告発人安倍が、自らの政治団体の金の流れや収支報告書の内容について、「知らない」ことはあり得ない。
2013(平成25)年4月に初めて開催した前夜祭については、同年5月10日、晋和会が補填分82万9394円を株式会社パノラマ・ホテルズ・ワン(ANAインターコンチネンタルホテルの運用会社)宛てに支払い、2014(平成26)年5月に提出された晋和会の収支報告書には、上記支出を「会合費」として記載している。あえて契約主体である後援会ではなく晋和会が支出し、しかもわかりにくい「会合費」として記載したこと自体、補填を隠す意図が明白である。ところが、翌2015(平成27)年5月に提出した収支報告書以降ほ、支出を記載すること自体をやめている。これは、小渕優子衆議院議員の関連政治団体の収支報告書不記載が発覚し、同議員が閣僚辞任に追い込まれたことの影響ではないかと報道されている。こうした「安倍事務所」ぐるみの隠蔽工作について、被告発人安倍が全く知らなかったことがあり得るとは思われない。
少なくとも、「桜を見る会」や「前夜祭」が国会で厳しく追及された2019(令和1)年11月以降、被告発人安倍が、真実はどうなのかと改めて真剣に把握しないはずがない。被告発人安倍は、その上で、意図的に虚偽答弁を重ねて追及から逃げ切ろうとしてきたのであり、極めて悪質である。
確実に言えることは、2019(令和1)年分の収支報告書を作成提出した時期は、2020(令和2)年5月、つまり上記の国会での厳しい追及の後だったということである。新たに2019(令和1)年分の収支報告書を作成するにあたり、被告発人安倍は、収支の不記載が犯罪となることを明確に認識しており、2019(平成31)年4月の前夜祭での参加者から徴収した会費額やホテルの請求額を確認することは容易にできたにもかかわらず、あえて収支を記載しなかったのであって、このことは、被告発人安倍に明確な犯罪の「故意」があったことに他ならない。

 告発事実第3(会計責任者の選任監督につき相当の注意を怠った)
この罪は、第一次告発の対象とはしなかったものであるが、政治資金規正法第25条2項は、政治団体の会計責任者が収支報告書に収支を記載しなかった(同条1項)場合、「政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠ったときは、50万円以下の罰金に処する」と定めている。
被告発人安倍は、晋和会の代表者である。
万一、被告発人安倍に晋和会の収支報告書の不記載につき故意が認められなかった場合でも、政治資金団体である晋和会の会計責任者である披告発人西山の「選任及び監督について相当の注意を怠った」と言えるであろう。
晋和会の事務所は衆議院第1議員会館の被告発人安倍の事務所1212号室にあり、報道によれば、ホテル側は上記事務所に集金に行き、その部屋にある金庫から被告発人西山が補填分を現金で出金し、ホテル側こ手渡して領収証を受領したということである。被告発人安倍の本拠地である議員事務所に常駐する秘書が、政治資金を後後会の宴会の補填費用として出金し、通常であれば口座に記録を残すところを、あえて現金払いにして隠蔽工作を行っていたのである。百歩譲って、安倍が収支報告書不記載について「知らなかった」としても、このようなことをする人物を会計担当者として選任し、なおかつ監督を怠ったことにつき、被告発人安倍は責任を免れることはできない。
ちなみに被告発人西山は、2020(令和2)年2月4日、首相官邸付近の路上で、くわえ煙草で放尿し、麹町警察署に連行され始末書処分を受けている。

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