アベに昭恵(妻)ありて、スガに正剛(長男)あり。
(2021年2月5日)
菅内閣は、安倍後継を以て任じている。菅義偉は、ウソとゴマカシの安倍政治の大半に官房長官として関わっていたのだから、負の遺産の承継における「後継内閣」の資格はもとより十分である。だが、それにとどまらないようだ。
何よりも、真似をしがたい近親者の公私混同についても、菅は安倍に負けない。アベにおける昭恵(妻)に当たる存在が、スガでは正剛(長男)のごとくである。
菅の長男・菅正剛が、総務省幹部を違法接待していたことを昨日(2月4日)発売の「週刊文春」が記事にして話題となっている。これは、安倍晋三にとって、妻の安倍昭恵が籠池夫妻と関わって森友学園事件を引き起こしたごとく、菅義偉にとっての痛恨事となりかねない。が、本日のメディアの報道は、オリンピックに関連した森喜朗の「女性差別発言」一色となり、スガ長男の総務省高級官僚接待はやや霞んでしまったことが惜しい。
以下、文春On-lineからの抜粋引用である。
総務省の幹部らが、同省が許認可にかかわる衛星放送関連会社(東北新社)に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。
接待を受けたのは、今夏の総務事務次官就任が確実視されている谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送等の許認可にかかわる情報流通行政局の秋本芳徳局長、その部下で同局官房審議官の湯本博信氏の計4名。昨年の10月から12月にかけてそれぞれが株式会社東北新社の呼びかけに応じ、都内の1人4万円を超す料亭や割烹、寿司屋で接待を受けていた。また、手土産やタクシーチケットを受け取っていた。
コロナ禍のさなかに総務省幹部らはなぜ接待に応じたのか。菅首相は、総務大臣を務め、総務省でアメと鞭の人事を行い、人事に強い影響力を持つとされる。また、東北新社の創業者父子は、過去、菅首相に合計500万円の政治献金を行っているが、その影響はなかったのか。東北新社に勤める長男が行った総務官僚への違法接待について、菅政権が今後どのような対応をするのか、注目される。
さっそく、昨日(2月4日)菅は衆院予算委員会で立憲民主党の黒岩宇洋議員の質問の矢面に立った。菅の釈明はこんなものだった。
「公的立場にない一民間人に関するもの(問題)だ。プライバシーに関わることであり、本来このような場でお答えすべきことではない」「(長男とは)普段ほとんど会っていない。完全に別人格だ。そこはご理解いただきたい」。
おいおい、それはないだろう。「ご理解いただきたい」という言葉は、そっくりお返ししなければならない。責任を追及されているのは一民間人に過ぎない菅正剛ではなく、内閣総理大臣たる菅義偉、あなたご自身なのだよ。内閣総理大臣たるあなたの影響力が、一民間人に過ぎない長男を通じて総務省の官僚に伝播し、公正な行政を曲げて東北新社という民間企業に不当な利益をもたらしているのではないかという疑惑が掛けられている。そのことをしっかりと自覚していただきたい。
行政の廉潔性や、廉潔性に対する国民の信頼に疑惑を生じさせたのは、直接にはあなたの長男だ。しかし、その疑惑はあなたという国政の最高権力者のバックがあればこそのことだ。つまりは、内閣総理大臣たるあなたと、一民間人たるあなたの長男との二人で疑惑を生じさせたのだ。責任の軽重は、もちろん内閣総理大臣たるあなたの方が限りなく重いが、一民間人の長男も、その疑惑に関わる限りは、プライバシー保護に逃げ込むことは許されない。
夫婦も親子も、別人格であることは当然だ。だが、別人格ながらも親密な関係にあることも、第三者から親密な関係と見られることも至極当然なのだ。総務省の官僚の側から見れば、菅義偉と菅正剛という別人格が、極めて親密な関係にあると忖度せざるを得ないのだ。うっかり正剛に不愉快な思いをさせると、義偉の機嫌を損ねて不利益を被ることになりはしまいか。そのように官僚を思わせているのが、スガさん、あなたの不徳の至り、自業自得なのではないか。そうは思わないかね。
黒岩宇洋は菅の答弁に対して「この疑念、疑惑は私人にかけられたものではなくて、菅政権そのものの疑念、疑惑だ」と批判。まったくそのとおりなのだ。
問題は、「実際に行政の廉潔性が傷つけられたか否か」というだけではない。首相の長男による高級官僚の接待があったというだけで、「行政の廉潔性に対する国民の信頼が傷つけられた」ということでもある。首相の不祥事である。徹底して追及しなければならない。
しかも、周知のとおり、昔も今も菅義偉は総務省とのつながりが深い。メディアの取材に、「同省関係者は『首相の息子に誘われたら、断れないだろう』と漏らす」というコメントがあった。さあ、菅義偉よ、この官僚の声をどのように聞く。