澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

ベルリンの少女像は、国際的・普遍的な人権問題の象徴となりつつある。

(2020年10月14日)

本日の毎日新聞夕刊に「ベルリンに少女像設置、二転三転、区当局『当面認める』」の見出し。共同通信記事を引用の各紙は、「少女像設置『当面認める』 撤去要求の独首都自治体」としている。

これは朗報。真の当事者は、加害者としての日本なのだ。日本の保守層と政権の、ドイツに対する圧力が一時は功を奏しそうになったが、土俵際で形勢が逆転したというところ。理性的な解決への筋道が見えてきたと言ってよいようだ。

舞台は、ベルリン市中心部ミッテ区の公有地。9月下旬、ここに韓国系市民団体「コリア協議会」が従軍慰安婦を象徴する少女像を設置し、9月28日に除幕式を行った。もちろん、同区の許可を得てのことである。これに不快感をあらわにした茂木敏充外相が今月1日にドイツのマース外相とオンライン会談した際に、像の撤去を要請した。この会談が政治的圧力となって、区は10月8日、設置許可を取り消し、10月14日までに像を撤去するよう命じていた。「日韓間の複雑な政治的、歴史的な対立をドイツで扱うのは適切ではない」というのが、その理由だった。

「コリア協議会」側は、直ちに区の取り消し決定の効力停止をベルリンの裁判所に申立て、区にも異議を申し出た。その成り行きが注目されていたが、ミッテ区のフォンダッセル区長は13日の声明で「コリア協議会と日本側双方の利益となる妥協案を望む」とし、今後すべての関係者の意見を慎重に検討する考えを表明した。

私(澤藤)が、この事件を初めて知ったのは、10月9日の21時過ぎ、「産経ニュースメールマガジン」によってのこと。「韓国の手法、もはや国際社会で通じず 独の慰安婦像設置撤去要請」という、勝ち誇った見出しの下記産経記事(一部引用)の紹介だった。これが、日本の右翼勢力のホンネであり、願望である。

 【ソウル=名村隆寛】ドイツの首都ベルリン中心部に設置された慰安婦像の撤去を地元当局が求めたことは、戦時下における女性への性暴力を非難し、女性の人権を訴える名目で、慰安婦像設置を続けてきた韓国側の手法が、国際社会では通じなくなってきたことを示す。

 設置したのは韓国系の市民団体であり、製作費は韓国の慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」が支援した。米国各地に設置された慰安婦像と同様、実際には韓国が地元自治体や市民を2国間の問題に巻き込む形で設置を強行したに過ぎない。

 韓国では日韓の問題と関係ない第三国で慰安婦像設置を拒絶されたことで「像を守れるか」(聯合)との危機感が出ており、メディアでは設置を続けようとする市民団体の姿勢が強調される一方、反日意識を強引に世界で広めることによる韓国のイメージダウンを懸念する声は聞かれない。」

これを追いかけるように、複数の友人から、下記の「★菅首相及び茂木外相宛の抗議文」への署名依頼のメールが送信されてきた。これは、格調が高い。

「ベルリンの『平和の少女像』撤去問題における『記憶の闘争』。問われているのは、日本政府であり、日本人である私(たち) なのだ。」という表題がついている。

日本軍『慰安婦』問題解決全国行動
http://www.restoringhonor1000.info/2020/10/blog-post_11.html?m=1

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★菅首相及び茂木外相宛の抗議文(抜粋)

「これまでは「日本政府の立場を説明していく」という表現に留め、妨害の事実についても認めようとしなかった政府が、菅政権になって初めての今回の碑に対しては、露骨に「撤去を要請する」と官房長官が言い切り、外相が当該国の外相に電話会談で撤去を要請したと臆面もなく発言することに恐怖すら感じます。

今からでも、このような姿勢を正すべきです。日本軍「慰安婦」を生んだ加害国として、誰よりも事実を正面から直視し、心から反省し、この教訓を人類が生かしていくことができるよう、率先して記憶し教育し継承していく姿を被害者たちに、被害国に、そして世界に示してこそ、日本は尊敬され尊重される国となり、日本軍「慰安婦」問題も解決することができるでしょう。

あったことを無かったことにはできません。日本軍「慰安婦」問題を記憶することで性暴力のない平和な社会をめざそうとする各国市民の動きも止めることはできません。できないことに邁進するのではなく、なすべきことに力を尽くすよう求めます。」

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幾つかの韓国からの報道が、興味深い。

★ドイツの大学教授が「日本の戦争犯罪否定」を批判
https://news.yahoo.co.jp/articles/4719faf6543c8d8243229436510f411e35dcb204

独ボーフム大学社会学科元教授のイルゼ・レンツさん(72)は11日、ハンギョレの電子メールインタビューで、なぜ少女像がドイツになければならないのかという質問に対し、「植民地主義と戦争暴力の歴史を持つドイツは、日本と似た問題に直面している」と説明した。レンツさんは「少女像は戦時性暴力と植民地主義を記憶しようとする記憶運動の象徴」だとし、「この暴力的な植民地時代の過去と、第2次世界大戦当時に東欧とロシアで起きた無数の性暴力を把握することこそ、私たちの課題」と述べた。レンツさんはまた「少女像の設置承認取り消しは、日本政府の外交的圧力に加えて、ベルリン市が慰安婦問題と戦時性暴力問題をきちんと知らないために起きた容認できない事件」と強く批判した。

★ハンギョレ新聞「裁判所に行った少女像」
http://japan.hani.co.kr/arti/international/37981.html

★ 市民が阻止した「ベルリン少女像」撤去…ドイツ、碑文修正など妥協案か
https://news.yahoo.co.jp/articles/483d57894e3e54e55b7f95f47d648beb2eb03826

ミッテ区のシュテファン・フォン・ダッセル区長は「我々は十分に時間をかけて論争の当事者と我々の立場を検討する」とし「コリア協議会と日本側の双方の利益を公正に扱うことができる妥協案を用意したい。みんなが共存できる方式で記念物が設置されることを望む」と明らかにした。続いて「ミッテ区は時間と場所、理由を問わず、女性に対するあらゆる形態の性暴力と武力衝突に反対する」とも強調した。

これに先立ちダッセル区長はミッテ区庁前で開かれた撤去反対集会に予告なく姿を現し、「裁判所に撤去命令中止仮処分申請が出され、時間が生じた。調和が取れた解決策を議論しよう」と述べた。

これに対しコリア協議会側は、少女像設置の趣旨が反日民族主義でなく国際的・普遍的な女性人権問題であることを強調した。

ダッセル区長の立場の変化は、現地同胞と市民の反発に加え、自身が所属する緑の党の内部でも撤去命令を取り消すべきという声が出たからだ。ただ、少女像撤去命令を完全に撤回したというより、今後の裁判所の判断を待って妥協点を見いだそうという意味と解釈される。現地では、少女像の碑文に慰安婦被害者問題の普遍的価値を強調する内容を追加する方向で妥協するという可能性が高いという見方が出ている。

 茂木外相の政治的圧力は、どうやら藪を突いて蛇を出したごとくである。勝ち誇った産経ニュースの思惑も裏目に出たようだ。事情をよく知らなかったドイツの世論が、この事件を切っ掛けに、日韓の植民地処理問題未解決の現状に関心をもつことになった。ドイツと日本のその歴史的な責任の記憶と反省のありかたについて比較して、大いに意見を述べてもらいたいと思う。まさしく、国際的・普遍的な人権問題の立場から

「女帝」が、今に刻む「国恥」の歴史

(2020年9月1日)
コロナに加えての熱暑の8月がようやく終わった。暦が替わると、照りつける8月から涼やかな9月に、鮮やかな様変わり。なるほど、明けぬ夜はなく、遷ろわぬ季節もない。横暴な政権も、いつまでもはもたないのだ。

戦禍と平和を考えるべき8月が去って、常であれば、今日からの9月は侵略の歴史を噛みしめるべき日。今年はこれに、アベ後継政権の構成が絡まる。また、日本国憲法の命運に重要な時季となった。

ところで、本日(9月1日)は私が名付けた「国恥の日」である。「国」は、国家だけではなく国民をも指している。「恥」の第1は、無抵抗の者を大量に虐殺したこと。これに過ぐる恥はない。「恥」の第2は、その虐殺が民族差別・排外主義と結びついていたこと。そして、いま強調されねばならない決定的な「恥」の第3は、いまだにその事実を認めず謝罪をしようともしないことである。

1923年9月1日午前11時58分、関東地方をマグニチュード7.9の巨大地震が襲った。地震はたちまち大火災となり、死者10万5千余といわれる甚大な被害を生じた。関東大震災である。その被害はいたましい限りだが、自然災害としての震災は恥とも罪とも無縁である。

「国民的恥辱」「日本人として恥を知るべき」というのは、震災後の混乱のなかで日本の軍警と民衆の手によって行われた、在日朝鮮人・中国人に対する無数の虐殺事件である。これは、まぎれもなく犯罪であり刑罰に値する行為。人倫に反すること甚だしい。その事実から目を背け、まともに調査と責任追求を怠り、反省も謝罪もしないままに97年を徒過したこの態度を「国恥」といわざるを得ない。そして、今なお、この事実に正面から向き合おうとしない日本社会の排外主義容認の姿勢を「国恥」というのだ。

もちろん、日本の歴史に真摯に向き合おうという日本人も少なくない。日本の民衆が、民族差別と排外主義とによって在日の朝鮮人・中国人を集団で大規模に虐殺した事実を直視し、自らの民族がした蛮行を恥辱としてこれを記憶し、再びの過ちを繰り返してはならないと願う人々。

そのような思いの人々が、毎年9月1日に、東京都墨田区の都立横網町公園内の追悼碑前で、「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」を開催している。今年も行われたが、コロナ禍のなか、On-line式典として挙行された。私も、YouTubeで「参加」した。いつもなら、ここで友人に遭って挨拶を交わすことになるのだが、勝手が違った。

恒例の行事ではあるが、我が国の世論が政権とメディアによって、いびつな「反韓・嫌韓」の方向に煽動されているこの数年、日韓関係の根底をなす歴史を想起するために格別の意味づけをもった式典となっている。

「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」は、1973年に都議会全会派の賛同で設置されたものである。以来、追悼式典は毎年行われ、歴代知事が追悼文を送付してきた。あの右翼・石原慎太郎でさえも。しかし小池百合子現知事は、就任翌年の2017年追悼文送付を意識的に中止した。そのきっかけは、「朝鮮人虐殺はデマ」派の極右・古賀俊昭都議(故人・日野)による、都議会での追悼文送付やめろという質疑だった。悪質極まりない、工藤美代子のデマ・ヘイト本をネタにしてのものである。こうして、いまや小池百合子が、「国恥」を代表する人物となっている。

その小池百合子は今年(2020年)7月5日の都知事選に圧勝して再選された。なぜ、圧勝できたか。対抗勢力が余りに脆弱であり、全体として本気度が足りなかったから。野党共闘のスジができず、フライング立候補者に振り回されて、形作りの選挙しかできなかったという体たらくだったから…。ではあるが、実は、小池百合子の何たるかが選挙民に知られなかったことが最大の理由ではなかったか。選挙のあとに話題の「女帝 小池百合子」(石井妙子著・文藝春秋社)を読んで、選挙前に読んでおくべきだったと後悔した。

この書物の刊行は2020年5月29日。選挙までの期間はわずか1か月余に過ぎない。もう1年前、あるいは半年前にでも出版されていれば、選挙は違った様相になったのではないか。野党も真剣に選挙に取り組み、勝てる候補者の出馬も可能となったのではないだろうか。

出版後、選挙期間中にも話題にはなり、私も内容は一通り把握した気になっていたが、選挙後にようやく書物を手にし目を通してみて、その内容に衝撃を受けた。ひとつは、外面の虚像とは甚だしいギャップの小池百合子という実像の凄まじさに。そしてもう一つは、民主主義社会における政治家として最もふさわしからぬこの人物が、「嘘の物語」と「遊泳術」を駆使して有力政治家となり都知事にまでなることを許している日本社会の現実に、である。

著者石井妙子は、こう述べている。

「私は、小池氏の実像を追いかけることに徹しました。ノンフィクション作家として、極めてオーソドックスな手法を取っています。本書で利用した資料のほとんどは公刊されているもので、誰でも見る事ができます。それらを精読すれば、小池氏の発言の矛盾や『おかしさ』には気づけるはずなんです。でも、今まで誰も、彼女を取材対象として正面から扱ってこなかった。まともな批判にさらされることなく今に至ってしまったのです。」「小池さんは『女性であること』『女性のイメージ』を巧みに利用した。『女性』も本書のテーマの一つです。“有能な女性政治家小池百合子”というキャラクターを、小池氏は今も演じ続けています。メディアにはそれを持て囃してきた罪がある。彼女の共犯者です。『小池百合子』を生み出した、日本社会の歪みにも目を向けて欲しいです」

なるほど、そのとおりの内容となっている。また、「読者メーター」というサイトに、こんな読書感想が寄せられている。

…彼女の内面を抉る。 地位や権力自体が目的で、それらを得て実現したいことがあるわけではない、全ての言動はそれらの維持・拡大のためで、人を助けるとか世の中を良くするというマインドは皆無‥と完全にこき下ろし。著者の個人的感情が強過ぎとの書評を事前に幾つか目にしていたが、十分な取材や証言に基づいた客観的な結論との印象。カイロ大主席卒業についても(実質的には)事実ではなさそうだ。

エジプト人が言ったという、「辿々しい日本語のエジプト人が東大を4年でしかも首席で卒業したと聞いたら信じますか?」これが一番しっくりきた。

読み終わった今、表紙の小池さんを直視できない。不安や恐怖を感じる。人間性は遺伝子や幼少期からの環境に左右されると聞く。彼女の生い立ちを知ると同情心も覚えるけれど、長年にわたり形成された小池百合子という人格は、もう誰にも変えられないのだろうと思う。犬猫150匹近くを殺処分したあとで、“ペット殺処分ゼロ”の公約達成を笑顔で報告する彼女に心はあるのかな。 

自らが生きていくために、地位と名声を求め虚飾にまみれた小池百合子の人生を丹念にあぶり出すオーソドックスかつ丹念な取材のもとにかかれた名ノンフィクション。生い立ち、時代、様々な要素があるなかで、こんなにかわいそうな生き方(蔑んだ意味で)しかできない人もいるのかと、絶句する。都民には是非読んでほしい。

小池百合子という人間は、働く女性の象徴だと何となく思っていたし、同じ女として応援するのが普通になっていた。 今回、女性をテーマに本を書くことが多い石井さんが、こんなにも批判的に割と心配になる強い書き方で、小池百合子の物語を書いたのはすごく意味があると思うし、あって欲しいと思った。 こんなにも売れていて政治系の本かなあと思って読んだ一冊が、読んだ今では、読まなかったかもしれない自分がいたかもしれないと思うと怖い。今後、この本を読んだ都民はどう判断してどう投票したら良いのか。

環境相時代のアスベスト被害者との懇談や都知事として築地女将さん会とやり取りしたエピソードが印象的。知事に窮状を訴え、気持ちが伝わり信頼関係を築いたと思った人々の失望が語られる。知事の資質だけでなく、政党や権力者、マスコミの問題が描かれている。私(有権者)もしっかりせねばと思う

著者の記述を信用するかは一つの判断だが、(法的措置のリスクを考えると)現為政者に対してここまで踏み込んだ内容を記述していること自体、かなりのエビデンスを保有していると考えられること、また、多くの核心的な部分で取材源が明かされトレーサビリティが確保されていることを考えると、私は信用出来ると考える。 イカロスの翼の例えは秀逸だ。今日も氏をテレビで見た。翼が燃え尽きるまで、昇っていくのだろうか。

「小池都知事を見る目が180度変わるというのが、共通の読後感ではないか。私も同感だ。そして改めて、こんな人物に都政を任せてはならない、こんな人物を選任してしまう民主主義の質を変えなければならない、と強く思う。

この書のなかでは、小池百合子から欺され裏切られた多くの人の怨みが語られている。この小池に対する怨みのグループの結集が力になってくるのではないか。そうして、傲慢な「女帝」を掣肘し、「関東大震災時の朝鮮人虐殺」の事実を認識して追悼の意を表するくらいのことはさせねばならない。そのことが、「国恥」を雪ぐ第一歩になるだろう。

「9・1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」 ー ようやく、雨降って地固まるの趣

(2020年8月7日)
今年(2020年)の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」の準備は、例年にない波乱含みだった。一つは、3年越しの排外ヘイト団体「そよ風」の挑発妨害と、それに呼応した小池都政のイヤガラセ。そして、もう一つがコロナ禍である。が、両者ともに問題解決となった模様である。当たり前のことが当たり前に行われるために、どれほどの苦労が必要かを思い知らされる。

一昨日、たまたま実行委員長の宮川泰彦さんと顔を合わせる機会があって、「9月1日、例年のとおり横網町公園で会いましょう」と声をかけた。ところが、「いや、今年はいらっしゃらないで結構。ご夫婦で、ユーチューブをご覧になってください」との返答。では、安心してそうすることにいたしましょう。

問題になっていたのは、東京都が実行委員会に対してとうてい応じることのできない、不当な「誓約書」の提出を要請していたことだったが、多くの人々の批判を受けてその要請は取り下げざるを得ない事態となった。のみならず、東京都は、8月3日に昨年(2019年)9月1日における「そよ風」の言動をヘイトと認定して公表した。これで、基本的な解決となった。

下記が、最新の経過を報告する実行委員会のネット記事である。

https://sites.google.com/site/japankoreatokyo/911
https://sites.google.com/site/japankoreatokyo/912

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東京都の「誓約」要請取り下げと、今年の追悼式典の一般参加中止(ネット中継)についてのご報告

2020年8月3日

9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会

実行委員長  宮 川 泰 彦

                 記

■東京都がついに「誓約書提出を求めない」と明言

7月29日、9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会(以下、当実行委)と東京都建設局の交渉が行われました。建設局はこの場で、「誓約書提出を求めない」と明言し、その日のうちに申請を受理しました。昨年12月以来の「誓約書」問題に一定の区切りがついたのです。これにより、今年の式典が無事に執り行われることとなりました。

建設局は昨年12月、2020年の追悼式典に向けた占用許可申請に対して、「横網町公園において9月1日に集会を開催する場合の占用許可条件について」と題する文書を当実行委に提示し、「公園管理上支障となる行為は行わない」「(集会で使う拡声器は)当該参加者に聞こえるための必要最小限の音量とすること」などの条件の順守を求めました。問題なのは、これらを守れない場合は「次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」との誓約を求めてきたことです。

その背景には、この3年間、同じ横網町公園内で、追悼式典と同日同時刻に意図的にぶつけるかたちで右翼団体「そよ風」主催の集会が行われていることがあります。彼らは「不逞朝鮮人が震災に乗じて凶悪犯罪を行ったのが真相」などと虚偽の主張とヘイトスピーチを叫び、拡声器を追悼式典に向けて放送するなどの妨害を行っています。これによって「慰霊の公園」である横網町公園の静穏が破られてきました。建設局の「誓約書」要請が、この集会と追悼式典の双方を同列に規制することでこうした「トラブル」を回避しようと考えたものであることは間違いありません。しかし、ヘイトスピーチなどの問題を起こしている集会と何の瑕疵もない追悼式典を同列に規制することを公正と呼ぶことはできません。

そのため当実行委はこの要請を認めず、5月18日には撤回を求めて声明を発表しました(注)。その反響は大きく、ネット署名を呼び掛ける人々が現れて「誓約要請撤回」を求めて3万人を集めたほか、知識人127人と1団体が賛同する共同声明、自由法曹団東京支部による声明、そして東京弁護士会の会長声明が発せられるなど、様々な抗議の声が上がりました。この他にも、建設局や総務局人権部に抗議の声を届けた方は少なくないようです。

今回の「誓約書」要請の取り下げは、私たちの呼びかけに応えて様々な立場から抗議の声を上げ、奔走して下さった多くの方々の努力の成果です。心より厚くお礼を申し上げます。

また建設局は同日、10項目からなる、横網町公園使用に当たっての「注意事項」を示しました。内容はごく常識的なものであり、建設局は「追悼式典は例年通りに行うことができる」と明言しています。

この「注意事項」には「ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、いかなる差別的言動もしないこと」との項目もあり、これについては高く評価します。ただし、同法と東京都人権尊重条例によれば、建設局と総務局人権部には、公共施設である横網町公園において差別的言動をさせないように対処する責務があるはずです。集会主催者に注意するだけでなく、東京都が「慰霊の公園」における差別的言動を確実に防ぐため、実効ある取り組みを行うことを求めたいと思います。

■今年の追悼式典は一般参加なしのインターネット中継に

新型コロナウイルス感染拡大の勢いは今のところ収まる気配はなく、すべての行事において、感染防止対策が最大の課題となっています。当実行委では議論の結果、今年の式典行事については例年どおりに行いつつ、一般参加者の参加はご遠慮いただくこととしました。追悼の場を守るために声を上げて下さった方々、追悼碑の前で犠牲者に手を合わせたいという思いでいらっしゃる方々に対し、こうしたお願いをするのは心苦しい限りですが、何卒ご諒解ください。

ただし、追悼式典はIWJ(Independent Web Journal)のご協力をいただいてインターネット生中継を行いますので、PCやスマホでのご視聴を通じて全国の人々にご参加いただければ幸いです。チャンネルは以下の通りです。

2020年 9月1日(火)午前11時から1時間強。youtubeチャンネル「Movie Iwj」にて。

https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501

(yahooやgoogleで「Movie Iwj」と検索すればアクセス可能)

Movie Iwj https://www.youtube.com/channel/UCO6c-ejeQxxKArNHWieU2OQ

3年後の2023年には、関東大震災100年、朝鮮人犠牲者追悼碑建立から50年を迎えます。虐殺犠牲者への追悼を捧げ、民族差別による暴力を「繰り返しはせぬ」と誓う場である朝鮮人犠牲者追悼式典と追悼碑を、今後とも幅広い人々と共に守っていきたいと考えます。引き続き、多くの皆さんのご支援、ご協力を訴えます。

以上

(注)「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会が声明を発表」

https://blog.goo.ne.jp/nicchokyokai-honbu/c/4bf22b0296e721d49361f7334619df04

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占用にあたっての注意事項(東京都から実行委員会に示されたもの)

1 占用目的外及び占用許可区域外の使用はしないこと。
2 他の公園利用者や近隣住民の迷惑となるなど、公園管理上支障となる行為は行わないこと。
3 9時50分から10時50分はマイク・スピーカー等、音響装置を使用しないこと。それ以外の時間に音響装置を使用する場合は、他の公園利用者や近隣住民等に影響がないよう、当該集会参加者の方向に向けて設置し、必要最低限の音量とすること。
4 掲示物・看板等を設置する場合は、当該集会参加者の方向に向けて設置すること。なお、当該集会め会場の場所を示すための看板を設置する場合には、行事名・主催音名のみを記載すること。
5 搬出入に使用する車両は必要最低限の台数とするとともに、公園内では徐行すること。また、指示された場所以外に車両の乗り入れ及び留め置きはしないこと。
6 平成28年6月3日に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)の趣旨を踏まえ、いかなる差別的言動もしないこと
7 原状の回復については、公園管理者の確認を受けること
8 新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、適切な対策を講じること
9 公園管理者からの指示に従うこと
10 本注意事項について、集会参加者に周知・指導すること

東部公園緑地事務所

言うまでもなく、上記の第6項が、そよ風のヘイトスピーチを意識してのもの。

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その、「そよ風」のホームページには、8月4日付で次の記事が掲載されている。

生き残りをかけた左翼総攻撃に、都が負けた!
「誓約書」を引っ込めさせられた東京都!

そよ風が、関東大震災朝鮮人犠牲者慰霊碑(以降、朝鮮人碑)を支持する左翼から、総攻撃を受けている事はお伝えしてきました。しかし話はそれで終わりませんでした。
私達は、その攻撃がどれほど恐ろしい事か目の当たりにしました。

かねてより両団体に都庁から求められていた、慰霊祭で公園を使わせて頂く為の誓約書を提出しに行った時の事。
なんと、都は、今度は、誓約書は受け取れない、というのです。
思わず、一同、椅子から転げ落ちそうになりました。
理由は、両団体とも信頼できると思えるに至ったから、と、理解不能な説明。

役所がきちんと審議し、一旦は、決定し、要請した誓約書を、途中で、必要がなかったことにするとは、前代未聞、驚天動地。

私はこれを「都庁文書引っ込め事件」と呼びたい。

都を庇うわけではないが、都は、慰霊祭を開催させないとは一言も言っておらず、誓約書は、去年、朝鮮人碑を支持する側の人間が、そよ風慰霊祭参加者に、なぐりかかるという暴行事件(逮捕、10万円罰金)があり、安全を担保するためには、公園管理者として、当然の文書でした。

それを左翼は、あたかも、都が、慰霊祭を許可しなかったかのごとく、ネットで訴え、煽りに煽りました。
正に、左翼の、生き残りをかけたかのように、自分たちと、そよ風ごときを、同格に扱うとは何事だ!と大キャンペーンを張り、必死の署名活動で、3万筆を集め、暴行事件を起こした本人等が都に提出、又、知識人127人と1団体の声明、まで出し、朝日、前衛などのメディアを使って、公園を使わせろ!と絶妙に論点をすり替えて、危機感を煽りました。

もちろん、こんなことだけで都庁が動くとは思われませんが、強力な圧力で、役所をねじふせ、誓約書を吹き飛ばしたのだと思います。

あれほど、厳格であるべき役所の指導を、指導してしまう共産党。
役人をも意のままに出来る共産党。恐るべき日本共産党!
(以下略)

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その前日の8月3日、東京都は、2019年開催の関東大震災追悼式の際の「そよ風」の言動について、本邦外出身者に対する不当な差別的言動と認定したことを公表している。

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第12条第1項の規定に基づく表現活動の概要等の公表について

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例(以下「条例」という。)第14条の規定により設置する審査会(以下「審査会」という。)の意見を踏まえ、以下のとおり条例第12条の規定に基づき表現活動の概要等を公表する。

1 表現活動の内容
令和元年9月1日、東京都墨田区内の集会における以下の言動

1.「犯人は不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです。」
2.「不逞在日朝鮮人たちによって身内を殺され、家を焼かれ、財物を奪われ、女子供を強姦された多くの日本人たち」
3.「その中にあって日本政府は、不逞朝鮮人ではない鮮人の保護を」

2 都の対応
1.上記1.について、条例第12条第2項の規定に基づく申出を受け、これらの表現は、不逞朝鮮人という言葉を用いながら、本邦外出身者を著しく侮蔑し、地域社会から排除することを煽動する目的を持っていたものと考えられる。
 また、当該発言がなされた日時、場所、その他の態様等に照らせば、別の集会に対して挑発的意図をもって発せられたものであって、その表現内容も朝鮮人を貶め、傷つける差別的表現であることから、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当すると認められるため、適切な措置をとるべきとの審査会の意見を聴取した。
2.条例第13条第1項の規定に基づき、審査会の意見を踏まえ、都としては、上記1.の表現は、条例第8条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する表現活動であると判断した。
3.都は、条例第12条第1項の規定に基づき、本件公表を行い、このような本邦外出身者に対する不当な差別的言動はあってはならないものとして、その解消を推進していく。

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この経過を報道する朝日新聞の記事を引用しておきたい。

朝鮮人虐殺の追悼式、公園使用に誓約書求めず 都が一転

 関東大震災の際のデマなどで虐殺された朝鮮人犠牲者らの追悼式典をめぐり、会場の公園を管理する東京都が主催者に誓約書の提出を求めた問題で、都は、誓約書なしで公園使用を許可する方針に転換した。

追悼式典は1974年から日朝協会などでつくる実行委員会が、9月1日に都立横網町公園(墨田区)の朝鮮人犠牲者追悼碑前で開いてきた。これに対し2017年から、虐殺の事実を否定する団体「そよ風」も同時刻に同じ公園で「慰霊祭」を開催。昨年は抗議する活動家との衝突もあった。

都は昨年末、公園使用許可申請の際に、管理に支障となる行為をしないなどの条件が守れない場合は「管理者が集会の中止を指示したら従います」とする誓約書の提出を双方の主催者に求めた。実行委は「誓約書は集会運営を萎縮させる」と反発。抗議署名や抗議声明の動きが相次いだ。

都は7月末に方針を転換。「注意事項を守り、行事を平穏に行う意思が口頭で確認できた」として、誓約書なしで実行委の申請を受理した。そよ風からも申請の相談はあり、意思確認をした上で受理する方向という。都公園緑地部の樽見憲介・適正化推進担当課長は「今後も必要が生じたら誓約書を提出してもらう」と話す。

実行委は3日、「都が誓約書の要請を取り下げたのは、多くの方々の抗議の成果」との見解を発表。都に対し「差別的言動を防ぐため実効ある取り組みを」と求めた。9月の追悼式典は新型コロナウイルスの感染防止のため、一般参加者を入れずに実施し、インターネットで中継する。

そよ風が昨年開いた集会では「不逞(ふてい)在日朝鮮人たちに身内を殺された」などの発言があった。この発言について、都は人権尊重条例に基づく不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)にあたると認定し、3日発表した。

追悼式典をめぐっては歴代の都知事が追悼文を送ってきたが、小池百合子知事は「犠牲者数については様々な意見がある」と発言し、2017年から見送っている。

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この間の事情の詳報が、年8月3日付ハンギョレ新聞(日本語・デジタル版)にも掲載されている。朝日が「客観報道」に徹しているのに対して、ハンギョレは小池都政の意図にも言及した「論評報道」に踏み込んでいる。このハンギョレの論評部分は常識的なもので、全体の流れが分かり易い。

東京都は、関東大震災の時に虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式の開催条件として提示していた一種の「順法誓約書」提出要求を撤回した。

「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」(以下、実行委)は3日、先月29日に東京都が「誓約書提出を求めない」とし、(追悼式典開催)申請を受理したと明らかにした。東京都は右翼団体との公平性を口実に、追悼式典開催のための公園占有許可を出す条件としてマイクやスピーカーの使用などを自制することを要求していた。
追悼式典の開催を妨害してきた右翼団体の「ヘイトスピーチ」(特定集団に対する公開的差別、嫌悪発言)を事実上、朝鮮人犠牲者追悼式典と同様の性格の集会と規定しようとしたものの、市民の反発にぶつかり、要求を撤回した格好だ。実行委は、1923年の関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼するために、1974年から毎年9月1日に、東京墨田区の横網町公園で追悼式典を開いてきた。しかし、右寄りの小池百合子東京都知事の就任後、制動がかかっていた。

東京都は昨年12月、実行委に対し、追悼式典開催に必要となる公園の占有を許可する条件として、「(すべての関東大震災犠牲者を対象に東京都が行う行事の時間帯には、集会で使う拡声器は)当該参加者に聞こえるための必要最小限の音量とすること」などを内容とする誓約書の提出を要求し、物議を醸していた。誓約書には、これらの内容が順守できない場合は、「次年度以降、(行事開催のための)公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」との内容も含まれていた。さらに東京都は、追悼式典の開催を妨害することを目的として3年前から同じ公園で集会を開いている右翼団体にも、同一の誓約書を提出することを求め、波紋はさらに広がった。事実上、右翼団体の「ヘイトスピーチ」と朝鮮人犠牲者追悼式典を同じ性格の集会と規定し、規制しようという意図があるという分析がなされた。実行委が5月に東京都のこうした措置を批判する声明を発表したところ、日本の市民社会からは「民族差別の犠牲者を追悼する式典と、民族差別を煽動する集会とを同列に扱い規制することは、『公平』でもなければ『公正』でもない」とする「文化人声明」などが相次いだ。

実行委は「『誓約書』要請の取り下げは、私たちの呼びかけに応えて様々な立場から抗議の声を上げ、奔走して下さった多くの方々の努力の成果」とし「心より厚くお礼を申し上げます」と述べた。そして「(東京都)建設局は同日、10項目からなる、横網町公園使用に当たっての『注意事項』を示しました。内容はごく常識的なものであり、建設局は『追悼式典は例年通りに行うことができる』と明言しています」と明かした。

一方、実行委は、今年の横網町公園での関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典はコロナ感染拡大防止のため、一般参加者なしで行うことにしたと発表した。追悼式はオンライン中継される予定だ。

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なお、賛同・支援の募金は下記まで。

郵便振込 00110-5-401438
加入者名 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼実行委員会

朝日社説「虐殺の史実 都は改ざんに手貸すな」に敬意

(2020年7月25日)
本日(7月25日)の2本の朝日社説。ひとつは、「朝鮮人犠牲者追悼式」に対する小池知事の姿勢を批判するもの。そうして、もう一つが「検察刷新会議」の議論の在り方についてのもの。いずれも、分かり易く説得力があり余計な忖度のない、優れた内容である。

そのうち、「虐殺の史実 都は改ざんに手貸すなと表題する小池知事の姿勢についての社説を取りあげて紹介したい。

「虐殺の史実 都は改ざんに手貸すな」という表題が立場を明確にしている。「関東大震災時の朝鮮人虐殺」は「揺るぎない史実」なのだ。小池都政は、「その史実の改ざんに手を貸してはならない」と警告している。

冒頭の一文が、次のとおりである。

「こうしたおかしな行いが自由な社会を窒息させ、都政に対する不信を膨らませると、小池百合子知事は気づくべきだ。」

「史実の改ざんに積極的に手を貸す、こうしたおかしな行い」は、「自由な社会を窒息させ」る罪の深い醜行である。にもかかわらず、小池百合子は自分の生来の歴史修正主義思想や差別意識から、あるいは支持勢力への慮りから、敢えて「こうしたおかしな行い」をしようとしているが、そのことは、結局のところ、都民の小池都政に対する不信を膨らませることになるのだから、「結局あなたの得にはならないことに気づくべきだ」と、説得を試みているのだ。

「関東大震災後の混乱の中で虐殺された朝鮮人や中国人の追悼式典を開いてきた団体が、会場の公園を管理する都から「誓約書」の提出を求められている。
 (提出を求められている誓約書の)内容は、
▽参加者に管理の支障となるような行為をさせない
▽順守されなければ都の式典中止指示に従う
▽次年度以降、公園利用が許可されなくなっても異存はない、というものだ。」

この「誓約書」提出の要求が、「自由な社会を窒息させるおかしな行い」であり、都政に対する都民の不信を膨らませる」問題の行為なのだ。

 なぜ問題か。虐殺の事実を否定する団体が3年前から式典と同じ時間帯に「犠牲者慰霊祭」と称して集まり、大音量で「虐殺はでっち上げだ」などと演説を行っているためだ。昨年はこれに抗議する人たちとの間で衝突もあった。
 同様のことが起きれば来年から式典を開けなくなる恐れがある。否定派の団体の関係者はブログで「目標は両方の慰霊祭が許可されないこと」だと公言している。その思惑に手を貸し、歴史の改ざんにつながる「誓約書」になりかねない。

「関東大震災時の朝鮮人虐殺」は、検証された史実である。しかし、この史実を認めたくない人々がいる。「常に清く正しい日本人がそのような悪逆非道の行いをするはずはない」「存在しない虐殺をあたかも存在したように吹聴するのは、悪意の陰謀である」「仮に、朝鮮人殺りくがあったとしても、それは悪行に対する懲罰に過ぎず、朝鮮人の自業自得で日本人に責任はない」と言いたいのだ。史実を直視しようとしない、歴史修正主義派の一群。その典型である「そよ風」というグループが、小池百合子の知事就任直後から、追悼式典にぶつける形で集会をもち、大音量で「虐殺はでっち上げだ」と演説を始めたのだ。

 そもそも地方自治法は「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」と定め、安易な規制は許されないとする最高裁の判例もある。都の対応は集会や表現の自由への理解を欠き、いきすぎと言わざるを得ない。

この問題に関する東京弁護士会の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明」(本年6月22)の次の一節を引用しておきたい。
言うまでもなく、集会の自由(日本国憲法第21条第1項)は、民主政の過程を支える憲法上優越的な人権として尊重されるべきものである。これを受けて公共施設の利用について、地方自治法第244条第2項は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである(最判平成8年3月15日・民集第50巻第3号549頁)

 知事の姿勢が影響していることはないだろうか。小池氏は歴代知事が式典宛てに出してきた追悼文をとりやめ、虐殺について「様々な見方がある」などとあいまいな発言を繰り返す。

「知事の姿勢が影響していることはないだろうか。」は、反語表現である。明らかに影響しているのだ。小池の姿勢が、歴史修正主義派、ヘイトスピーチ派の跳梁を誘発している。しかし、かろうじて、小池自身にあからさまにホンネを語らせないだけの世論状況にはある、ということなのだ。

 だが「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒を投げ込んだ」といった虚偽の話が広がり、市民や軍、警察によって各地で虐殺が行われたのは厳然たる事実だ。多くの公的記録や証言があり、内閣府中央防災会議の報告書にも明記されている。にもかかわらず、否定派の団体は差別的表現を使いながら、暴動やテロがあったと言い募る。

歴史の修正は一種の信仰である。「神聖なる陛下ご親政の御代の日本人が、理由もなく他国の民を虐殺することなどあり得ない」「伝えられる自警団の朝鮮人への懲罰は、あったとしてもやむを得ない正当防衛に過ぎない」。明治維新後権力者によって意図的に作られたこのような信仰が、いま息を吹き返しつつあるのだ。恐るべきことではないか。

 小池氏は先の知事選で、ヘイトスピーチ対策を盛り込んだ都条例の制定を1期目の成果に挙げた。そうであるなら、事実に基づかぬ差別的な言説を放置せず、適切に対応するのが知事の務めではないか。自らも歴史に誠実に向き合い、都民の代表として追悼文を出すべきだ。

まったく、そのとおりだと思う。ここで提言されているのは以下の2点である。
(1) 事実に基づかぬ差別的な言説を放置せず、知事の務めとして適切に対応すべきこと
(2) 自らも歴史に誠実に向き合う証しとして、都民の代表として追悼文を出すべきこと

(2) は、都知事独断でできることだ。追悼式実行委員会への「誓約書」要求は撤回して、改めて都民の代表として追悼文を提出するべきであろう。できることなら、ご自分で起案をされて、心情のあふれるものとしていただきたい。
(1) については、3年後に迫った100周年の記念史を編纂してはどうだろうか。史実に基づく生々しい過去の記録に留めず、この史実を踏まえて「共生の東京」の未来図を描くものとして。

朝日の社説は、ここで終わらない。関東大震災時に振りまかれ今に至る「災害時のデマ」に筆を進めて締めくくっている。この締めくくり方には、やや不満が残る。

 災害時のデマは過去の問題ではない。東日本大震災では外国人窃盗団が暗躍しているとの流言が広がり、現下のコロナ禍でも外国人の排斥や感染者へのいわれない攻撃が起きている。
 社会不安が広がるとどんなことが起き、そうさせないために日頃からどうすべきか。97年前の惨劇から学ぶことは多い。

97年前の軍・警・民間が一体になっての朝鮮人虐殺は、決して「災害時のデマ」一般の問題に矮小化してはならない。帝国日本の朝鮮侵略に伴う作られた差別意識と反抗への恐れの感情を基本に据えて読み解かれるべきであろう。

とは言うものの、この朝日社説の見識に敬意を表したい。

フジ住宅ヘイトハラスメント訴訟。原告女性は何を求めて提訴を決意したのか。

(2020年7月20日)
ヘイト企業として名を馳せている「フジ住宅」(大阪府・岸和田市)。社内での「ヘイトハラスメント」を苦痛とした、在日3世の女性社員が果敢に会社を訴え、5年の審理を経て、7月2日に大阪地裁堺支部で一審勝訴判決を得た。文字通り、勝ち取ったというにふさわしい。世の中にはたいした人がいるものだ。こんなひどい会社の中でのたった一人の闘いを毅然とやり抜いた人。おそらくは、同僚からの暗黙の支援があったのだろうと想像する。

原告弁護団は、「ほぼ完全勝訴! ご支援ありがとうございました!!」という判決の評価。ただし、原被告双方が控訴の見込みだという。おそらくは、双方の控訴があって、既に大阪高裁に控訴審が係属しているのだろう。

この訴訟は、損害賠償請求事件。原告は、フジ住宅株式会社に勤務する在日コリアン3世の女性、被告はフジ住宅とその創業者で会長の今井光郎。
判決は両被告に連帯して110万円の支払いを命じる請求の一部認容。判決理由で会社の次の行為を違法と認めた。

(1) 被告らが社内で全従業員に対し、ヘイトスピーチをはじめ人種民族差別的な記載あるいはこれらを助長する記載のある文書や今井会長の信奉する見解が記載された文書を大量に反復継続して配布した。この行為は、労働者の国籍によって差別的取扱いを受けない人格的利益である内心の静隠な感情に対する介入として社会的に許容できる限度を超え、違法であるとした。

(2) また、フジ住宅及び今井会長は、地方自治体における中学校の教科書採択にあたって、全従業員に対し、特定の教科書が採択されるようアンケートの提出等の運動に従事するよう動員した。これは、業務と関連しない政治活動であって、労働者である原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取扱いを伴うもので、その侵害の態様、程度が社会的に許容できる限度を超えるものといわざるを得ず、原告の人格的利益を侵害して違法であるとした。

(3) フジ住宅は、本件訴訟の提訴直後の2015年9月に、社内で、原告を含む全従業員に対し、原告について「温情を仇で返すバカ者」などと非難する内容の大量の従業員の感想文を配布した。

会社がこれだけのことをやれば当然にアウトだ。判決は至極当然のこと。但し、判決の認容額はあまりに低額である。ネットに、こんな記事を見つけた。

フジ住宅控訴!!がんばれフジ住宅!!
東京都知事選まであとわずか 桜井誠一択
300万円の和解案を提示された時点で(民族関係なく)まともな人なら和解で済ます。裁判所が昨日認めた慰謝料金額を見ると、この原告は実質的には負けているのでは…弁護士費用だけで100万飛ぶだろうに。フジ住宅側から控訴状キター、民事弁護士費用は自己負担だからさらに費用がかかります。裁判所も「在日の訴訟好き」にあきれていると見た。今回の控訴でフジ住宅は間違いなく注文が立て続けに入りますね。

この匿名ネトウヨ君は、「人は、金を求め、金のために裁判をする」「裁判の目的は金なのだから、金額の最大化のために行動することが合理的」としか考えていない。そんな思考回路の持ち主。人が、ブライドのために、自由や平等の理念を実現するために裁判を起こすことなどは、考えも及ばないのだ。

裁判所から300万円の和解案があったのに、それを蹴って110万円の判決を得た。これは原告の200万円の損。費用をかけて何をしているのか、理解ができないという。

しかし、人はパンのみにて生きるものに非ず。裁判は金のみを求めて提訴するものではない。何よりも、不合理に怒りこれを是正しようとして訴えるのだ。判決が、会社の違法を確認する。メディアがそれを報じる。社会も、正義が女性社員の側にあることを認めることになる。原告は、自分の精神の矜持を保ったのだ。そして、どんな会社も、フジ住宅のようなヘイトハラスメントをしてはならないことを天下に示したのだ。110万円の金額以上に判決の価値は大きい。

とは言うものの、認容額は高いに越したことはない。こんな違法行為を根絶するためには、慰謝料も弁護士費用ももっと高水準にしなければならない。

控訴審、さらなる闘いの成果を期待したい。

関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典の公園使用に、不当な条件の撤回を求める東弁会長声明

(2020年6月24日)

一昨日(6月22日)、東京弁護士会が素晴らしい会長声明を発表した。私は、東京弁護士会会員であることを誇りに思う。

その会長声明のタイトルは長い。「9.1 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明」というもの。下記に全文を掲載するが、下記URLで東京弁護士会ホームページの原文を読むことができる。
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-584.html

問題は、9月1日に予定されている恒例の「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」に対する小池百合子都知事の対応。端的に言えば、関東大震災朝鮮人犠牲者を追悼しようという日・韓・朝の人々に対する、小池都知事の嫌がらせをたしなめるもの。

いま、小池都知事は、追悼式典実行委員会の公園占用許可申請に対して、不当な誓約書の提出を条件として要求し、誓約書の提出がなければ公園占用許可をしないと言明している。東弁会長声明は、この態度を改めるよう強く求めている。

当ブログでは、本年5月28日に下記の記事を掲載した。

小池都知事よ、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への嫌がらせをやめよ
http://article9.jp/wordpress/?p=14988 (2020年5月28日)

同日のブログでは、「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」(実行委員長 宮川泰彦)と、自由法曹団東京支部(支部長 黒岩哲彦)の声明を紹介して、小池都知事に対して追悼式典への嫌がらせをやめるよう訴えた。

周知のとおり、東京市本所区(現東京都墨田区)横網町の陸軍被服廠跡地は1923年の関東大震災による被災地として知られる。痛ましくも、推定3万8000と数えられる老若男女がこの場所で焼死した。この犠牲者を悼むために、この地が「大正震災記念公園」とされたが、1930年「震災記念堂」が建立されて公園名も「横網町公園」となった。戦後は東京大空襲による身元不明者10万人余をも合祀して、名称を「都立横網町公園」「東京都慰霊堂」と改称して現在に至っている。

1973年、この公園の一角に、「朝鮮人犠牲者追悼碑」が建立された。横網町公園のホームページには、こう解説されている。

「関東大震災時の混乱のなかで、あやまった策動と流言ひ語により尊い命を奪われた多くの朝鮮人を追悼し、二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを願い、震災50周年を記念して昭和48年(1973年)に「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼行事実行委員会」により立てられた碑です。」

 この実行委員会は、当時の都議会全会派の幹事長が参加するものだったという。その碑には、こう刻まれている。

「1923年9月に発生した関東大震災の混乱のなかであやまった策動と流言蜚語のため6千余名にのぽる朝鮮人が尊い生命を奪われました。私たちは、震災50周年をむかえ、朝鮮人犠牲者を心から追悼します。この事件の真実を知ることは不幸な歴史をくりかえさず民族差別を無くし人権を尊重し、善隣友好と平和の大道を拓く礎となると信じます。思想・信条の相違を越えてこの碑の建設に寄せられた日本人の誠意と献身が、日本と朝鮮両民族の永遠の親善の力となることを期待します。
 1973年9月 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑建立実行委員会」

  碑 文

この歴史
   永遠に忘れず
  在日朝鮮人と固く
  手を握り
  日朝親善
   アジア平和を
  打ちたてん
        藤森成吉

 この碑の建立以降、毎年9月1日には、追悼碑前での「9・1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」が続けられてきた。「事前に都との打ち合わせを経て使用許可を得、厳粛且つ平穏な追悼式典が執り行われてきた。」ということは、実行委員会の声明にあるところ。式では、歴代の知事が追悼文を送り式で紹介されてきた。あの石原慎太郎でさえ、追悼文を欠かすことはなかった。

ところが、事態は小池百合子知事になって変わる。小池は追悼式に追悼文を送らなくなった。古賀俊昭という極右都議の議会での質疑に応えての方針変更である。そしてこの度は、ヘイト集団「そよ風」を利用しての、形式的平等取り扱いを装った、嫌がらせである。もしかしたら、本気で追悼集会を潰すつもりなのかも知れないのだ。

都市公園法という法律がある。その第6条1項に「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。」とある。これに基づいて、実行委員会は、昨年(2019年)9月以降、追悼式典のための占用許可申請(実行委員会声明では、「使用許可申請」)を重ねてきたが、東京都は3回にわたって、申請受理を拒否という。そして、12月24日には、「横網町公園において9月1日に集会を開催する場合の占有許可条件について」と題する文書を実行委に示してきた。

問題なのは、東京都が、これを遵守する旨の都知事宛ての誓約書を提出することを求めていることである。しかも、この誓約書には「下記事項が遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」とある。この当不当、あるいは違法性の有無が論じられなければならない。

東弁会長声明は、「地方自治法第244条第2項は、『普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。』としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである」と、上尾市福祉会館事件判決を引用している。同判決はこう言って、不許可を違法と判断した。その判決理由中に、下記の判示が見える。

 本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、被上告人は、正当な理由がない限り、これを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、その利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。

 (条例は)「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが、右規定は、会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。

 また、泉佐野市民会館事件最高裁判決(最判1995(平成7)年3月7 日)はこう判示している。

被上告人(泉佐野市)の設置した本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、被上告人は、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、住民の利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。

市立泉佐野市民会館条例の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」の危険性は、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である。

主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法21条の趣旨に反するところである。

 もっとも、泉佐野市民会館事件では、最終的には例外的に不許可が認められた。当時の情勢から、中核派と対立グループとの抗争による混乱は、警察力の行使によっても制止困難な「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」事態の認定あってのことである。本件とは比較すべくもない。飽くまでこの原則論が尊重されなければならない。

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9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明

2020(令和2)年6月22日
東京弁護士会 会長 冨田 秀実

 東京都は、今般、本年度の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」開催のため、同追悼式典の実行委員会が、東京都立横網町公園の占用許可を申請したのに対して、誓約書の提出を占用許可の条件とし、誓約書の提出がなければ、占用を許可しないと言明した。誓約書の内容は、「公園管理上支障となる行為は行わない」、「遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などというものである。

同追悼式典は、同公園において毎年9月1日に開催されてきた式典である。関東大震災時に「朝鮮人が井戸に毒をいれた」等のデマが流布したことなどにより、自警団や軍隊、警察による殺傷事件が起きた。政府の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(2008年3月 内閣府中央防災会議)」は朝鮮人らの虐殺犠牲者数を、震災死者数(約10万人)の「1~数%」に当たると指摘している。こうした悲劇を踏まえ、同公園に1973年、朝鮮人犠牲者追悼碑が建立され、40年以上追悼式典が行われてきた。同追悼式典は、犠牲者を追悼するためのものであり、管理上の支障や混乱なく開催されてきた。これまで、占用許可について、上記の内容の誓約書の提出を求められたことはなかった。

しかるに、2017年以降、朝鮮人虐殺の事実を否定する団体が、同追悼式典と同時間帯に、同追悼式典と近接した場所で、「慰霊祭」を開くようになった。「慰霊祭」において、この団体は、同追悼式典を「歴史捏造」とする看板をかかげ、追悼式典の参加者を挑発するように「不逞朝鮮人」などのことばも用いて、朝鮮人に対するヘイトスピーチを行い、あからさまに同追悼式典を挑発し、同追悼式典の静謐さは破られた。

言うまでもなく、集会の自由(日本国憲法第21条第1項)は、民主政の過程を支える憲法上優越的な人権として尊重されるべきものである。これを受けて公共施設の利用について、地方自治法第244条第2項は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである(最判平成8年3月15日・民集第50巻第3号549頁)。

その上、上記誓約書の「公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などの文言は、不許可を容認させる点で制限が強度であるだけでなく、指示の内容が具体的に示されていないため、萎縮効果をもたらすおそれがあるばかりか、前に述べた経緯を看過して、上記誓約書の提出を条件とすることは、ヘイトスピーチを用いた妨害行為を容認、助長する効果をももたらしかねない。それは、集会の自由の不当な制限であるだけでなく、人種差別撤廃条約、ヘイトスピーチ解消法、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」等、人種差別、ヘイトスピーチの撤廃、解消を企図する法令の趣旨にも合致しない。

当会は、東京都に対し、上記追悼式典のための占用許可にあたって、従来どおり、上記内容の誓約書の提出を条件としないことを強く求める。

韓国総選挙での文在寅与党勝利に祝意

聯合ニュースの伝えるところでは、韓国主要紙の本日(4月16日)朝刊ヘッドラインは、以下のとおりである。
<朝鮮日報>共に民主党が前例なき圧勝 与党陣営180議席以上獲得
<東亜日報>「国難克服」に力を添えた民心 与党が圧倒的な過半数確保
<中央日報>共に民主党が圧勝 コロナ禍で民心は安定を選択した
<ハンギョレ>共に民主党170議席前後 民主化後で与党が最大の勝利
<京郷新聞>共に民主党が「単独過半数」 与党陣営180議席獲得の可能性
<毎日経済>与党が圧勝 国民は野党を審判した
<韓国経済>共に民主党 170議席以上を席巻…巨大与党独走体制

韓国の国会は一院制である。議席の定数は300、小選挙区比例代表並立制の選挙制度で議員の任期は4年。文在寅政権与党である「共に民主党」は、2016年4月の前回総選挙では、小選挙区110、比例13の合計123議席獲得にとどまっていた。比例の得票率は25.5%で3位だったという。今回総選挙直前には、「共に民主党」は120議席、連立与党の「共に市民党」の8議席を加えて、128議席の少数与党であった。

文政権の経済政策に目に見えた成果が上がらず、政権運営にも閣僚不祥事などがあって、国民の与党批判のなかで迎えるかに見えた今回総選挙だったが、新型コロナ問題で情勢は一変したという。

与党「共に民主党」は、友党「共に市民党」と合わせて改選前の128議席から50議席増の180議席を獲得して圧勝した。これが、各紙のヘッドラインとなっている。文在寅大統領は、自信をもっての政権運営を続けことになるだろう。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で不安が高まる中、有権者が現政権によるコロナ対策の実績に高い評価を与え、安定的な国政運営を望んだ結果とされている。確かに、文政権のコロナ対策は素早く果敢で、創意にあふれたものだった。WHOの賞讃するところでもある。次の記事における彼我の差は、どこから出て来るのだろうか。

本年2月段階で既に一日1万件を超すPCR検査を実施していた。それだけの国家と国民の力量が備わっているのだ。ドライブスルー方式や電話ボックス型検査所の設置など、現場のやる気と創意が伝えられている。

検査数の多さも世界を驚かせている。韓国疾病管理本部は13日基準で検査件数を51万4621名と発表していたが、実際はそれよりはるかに多い86万1216名であったことが報告された。13日行われた中央防疫対策本部チョン・ウンギョン本部長のブリーフィングによると、統計は疾病情報統合システムから報告された、疑わしい患者や症状が出ている検査対象者の数であり、医療機関や保健所からの申告件数を収集しているため、すでに感染が確定された患者などに対する調査件数は除いた統計を発表していたという。韓国全体の検査件数は日本をはるかにしのぐ件数行っていたこと示しながら、さらに積極的に国民の検査を行うとブリーフィングを締めくくっている。
医療崩壊を懸念し、数日間は家で様子を見るなどをすぐに検査を行わない日本の正反対を行く韓国は、疑わしきは即検査をして対処する方針だ。(ニューズウィーク・日本語ウェッブ版・4月16日

「韓国でできることがなぜ日本ではできないのか」と、問われている。当然できるはずではないかという思い上がりは禁物である。政権の姿勢が異なる。国民の力量も意欲も異なるのだ。日本が学ぶべきことが多々あるとしるべきである。

もっとも、韓国の手法がすべて学ぶべきものとも思えない。とりわけ、国民のプラバシーをさらけ出させての感染経路探査には、果たしてそこまでの必要があるものかと首を傾げざるを得ない。一歩間違うと中国型の統制社会となりかねない。この点の検証は、これからも続くことになろう。

とは言え、韓国国民は、政権選択を国民の生命に関わるものと受けとめたうえで、高い投票率において現政権与党に支持を表明した。<ハンギョレ新聞>の見出しのとおり、「韓国民主化後における与党の最大の勝利」として、祝意を表したい。
(2020年4月16日)

「2020東京オリパラ」と「東京都ヘイト規制条例」

日朝協会の機関誌「日本と朝鮮」の2月1日号が届いた。全国版と東京版の両者。どちらもなかなかの充実した内容である。政府間の関係が不正常である今日、市民団体の親韓国・親朝鮮の運動の役割が重要なのだ。機関誌はこれに応える内容となっている。

その東京版に私の寄稿がある。これを転載させていただく。内容は「東京都ヘイト規制条例」にちなむものだが、「2020東京オリパラ」にも関係するもの。なお、オリンピック開会は、猛暑のさなかの7月24日である。その直前7月5日が東京都知事選挙の投票日となった。ぜひとも、都知事を交代させて、少しはマシなイベントにしたい。

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東京都ヘイト規制条例の誕生と現状

 2020年東京の新年は、オリンピック・パラリンピックで浮き足立っている。オリパラをカネ儲けのタネにしたい、あるいは政治的に利用したいという不愉快な思惑があふれかえった新春。あの愚物の総理大臣が「2020年東京オリンピックの年に憲法改正の施行を」と表明したその年の始めなのだ。

オリンピックには、国威発揚と商業主義跋扈の負のイメージが強い。国民統合とナショナリズム喚起の最大限活用のイベントだが、言うまでもなく、国民統合は排他性と一対をなし、ナショナリズムは排外主義を伴う。内には「日の丸」を打ち振り、外には差別の舞台なのだ。

もっとも、オリンピックの理念そのものは薄汚いものではない。オリンピック憲章に「オリンピズムの根本原則」という節があり、その1項目に、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」とある。

これを承けて、東京都はオリンピック開催都市として、「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を制定した。これが、「東京都ヘイト規制条例」と呼ばれるもので、昨年(19年)4月に施行されている。

その柱は2本ある。「多様な性の理解の推進」(第2章)と、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」(第3章)。性的マイノリティーに対する差別解消も、ヘイトスピーチ解消への取り組みも、都道府県レベルでは、初めての条例であるという。しかし、極めて実効性に乏しい規制内容と言わざるを得ない。

オリンピックとは、これ以上はない壮大なホンネ(商業主義・国威発揚)タテマエ(人類愛・国際協調)乖離の催しである。都条例は、タテマエに合わせて最低限の「差別解消」の目標を条例化したのだ。しかしこの条例には、具体的な「在日差別禁止」条項はない。「ヘイトスピーチ違法」を規定する条文すらない。また、「在日」以外の外国人に対する差別については、「様々な人権に関する不当な差別を許さないことを改めてここに明らかにする」と述べられた一般理念の中に埋もれてしまっている。もちろん、罰則規定などはない。

オリンピック開催都市として、東京都の人権問題への取り組みをアピールするだけの条例制定となっている感があるが、それでも自民党はこれに賛成しなかった。「集会や表現の自由を制限することになりかねない」という,なんともご立派な理由からである。

条例のヘイトスピーチ対策は、「不当な差別的言動を解消するための啓発の推進」「不当な差別的言動が行われることを防止するための公の施設の利用制限」「不当な差別的言動の拡散防止するための措置」「当該表現活動の概要等を公表」にとどまる。

それでも、東京都は同条例に基づいて、10月16日に2件、12月9日に1件の下記「公表」を行った。

(1)5月20日、練馬区内での拡声器を使用した街頭宣伝における「朝鮮人を東京湾に叩き込め」「朝鮮人を日本から叩き出せ、叩き殺せ」の言動
(2)6月16日、東京都台東区内でのデモ行進における「朝鮮人を叩き出せ」の言動
(3)9月15日、墨田区内でのデモ行進における「百害あって一利なし。反日在日朝鮮人はいますぐ韓国に帰りなさい」「犯罪朝鮮人は日本から出ていけ」「日本に嫌がらせの限りを続ける朝鮮人を日本から叩き出せ」の言動

 公表内容はこれだけである。この言動を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する表現活動」であると判断はしたものの、街宣活動の主催者名の公表もしていない。

問題はこれからである。タテマエから生まれたにせよ、東京都ヘイトスピーチ条例が動き出した。これを真に有効なものとしての活用の努力が必要となろう。東京都や同条例に基づいて設置された有識者による「審査会」の監視や激励が課題となっている。また、ヘイトスピーチ解消の効果が上がらなければ、条例の改正も考えなければならない。

オリパラの成功よりも、差別を解消した首都の実現こそが、遙かに重要な課題なのだから。

(2020年2月3日・連続更新2499日)

「無意識の植民地主義」と、「無邪気で無自覚な植民者」と。

学生時代の級友・小村滋君(元朝日記者)が精力的に発刊しているネット個人紙「アジぶら通信」。もっぱら沖縄問題をテーマに、その筆致が暖かい。個人的に多忙とのことでしばらく途絶えていたが、「アジぶら通信Ⅱ」として復刊し、その2号(1月24日発信)が届いた。

A4・4ページ建。「沖縄の基地『無意識の植民地主義』(平野次郎・記)」が、紙面のほとんどを埋めている。『無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』という書物の紹介と、その著者野村浩也講演の報告である。

私は知らなかったが、沖縄の基地を日本本土へ引き取ろうという市民運動の契機となったのが、2005年に御茶の水書房から発刊された『無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』(野村浩也著)だという。久しく絶版となっていたが、2019年8月に松籟社から増補改訂版が復刊され、12月15日に神戸市内で復刊を記念して著者の講演会が開催された。詳しく、その講演内容が紹介されている。

『無意識の植民地主義』というタイトルは刺激的だが頷ける。沖縄を除く本土の日本人を、二重の意味で否定的に論難している。ひとつは「沖縄に基地を押し付けて自らはその負担から逃れている植民地主義者」と規定しての批判であり、さらに「沖縄にのみ基地負担を押し付けているという意識すらない」という無自覚への批判でもある。

著者野村浩也は1964年沖縄生まれで、現在は広島修道大学文学部教授(社会学)。講演会は兵庫の「基地を引き取る行動」のメンバーらの主催だという。アジぶら記者の見解として、「なぜいまこの著書の復刊が待たれたのか。沖縄人だけでなく在日韓国・朝鮮人などへのヘイトスピーチの横行を止められないのは、日本人の『無意識の植民地主義』がいまも続いているからではないのか」とある。

たまたま、広瀬玲子著の「帝国に生きた少女たち:京城第一公立高等女学校生の植民地経験」(大月書店・2019年8月刊)に目を通しているところだった。この著作が、よく似た問題意識から書かれた労作となっている。

この書についての出版社の惹句は、「内なる植民地主義、その根深さと、克服過程を見つめる」「植民者二世の少女たちの目に植民地はどのように映っていたのか。敗戦~引揚げ後を生きるなかで、内面化した植民地主義をどのように自覚し、克服していくのか。 ー アンケート・インタビュー・同窓会誌などの生の声から読み解く。」というもの。

その書評として、アマゾンのカスタマーレビュー欄に、「植民地朝鮮に暮らした女学生たちは、無邪気で無自覚な「植民者」であった」(2019年10月27日)が掲載されている。筆者は「つくしん坊」とだけあるが、その書評の一部を引用させていただく。

京城第一公立高等女学校は、1908年に居留民によって設立された。開校式には伊藤博文も列席し、格式あるトップクラスの女学校として順調に発展し、最盛期には1000人以上の生徒が在学した。

京城第一公立高等女学校に通う女生徒たちは、日本人居留民の中でも中流以上の恵まれた家庭に育っていた。女学校では日本と同様の皇民化教育が行われ、日本人女生徒たちは、朝鮮が日本の植民地であること、朝鮮人たちが様々な点で差別されていたことに無自覚であった。

敗戦後、家族とともに女生徒たちは一斉に日本に引き揚げた。そこで待っていたのは荒廃した国土、失われた生活基盤の立て直し、引き揚げ民に対する差別だった。家族とともに厳しい生活が始まった。この過程で、多くの女生徒たちが朝鮮での生活と意識を自省し始めた。

総じて、植民地朝鮮に暮らした女学生たちは、無邪気で無自覚な「植民者」であり、自らが朝鮮人に対して過酷な差別を強いていた「植民者」であったことは、戦後初めて自覚した。そのような自覚者の「内なる植民地主義」克服事例が参考に値する。

「戦前における、朝鮮に対する無邪気で無自覚な植民者」と、「現在の沖縄に対する無意識の植民地主義」と。無自覚・無意識の人びとのネガティブな客観的役割の指摘は重要である。

もっとも、私は「本土が沖縄の基地を引き取るべき」とする見解にも、そのような運動にも与しない。基地撤去の方向での運動をこそ追及すべきだとする立場を固執して小村君の不興をかっている。

(2020年1月28日・連続更新2493日)

12月27日韓国憲法裁判所・慰安婦合意案件却下決定は、『最終的かつ不可逆的解決』の法的効果を否定したものと読むべきである。

私は、2012年4月に韓国憲法裁判所を見学し,東北大学に留学していたという見事な日本語を語る判事補の通訳を介して、広報担当裁判官から懇篤な説明を受けた。その際の、「人権擁護のための真摯な姿勢」に深い感銘を受けた。そして、「世論調査によれば、韓国内で最も信頼に足りる団体が憲法裁判所とされている」と誇りをもって述べられたことが印象的だった。

その韓国憲法裁判所が、昨日(12月27日)、日韓慰安婦合意に関する案件で却下の決定を言い渡した。憲法裁判所という存在が、われわれにはなじみが薄い。却下決定が意味するものはやや複雑である。

ソウル発の聯合ニュース(日本語版)から引用する。
まずは、判決の内容について。

 韓国憲法裁判所は27日、慰安婦被害者らが旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日政府間合意の違憲性判断を求めた訴えに対し、「違憲性判断の対象ではない」とし、却下した。
 却下は違憲かどうかの判断を求めた訴えが憲法裁判所の判断対象ではないとみた際に審理をせずに下す処分。つまり、裁判所は慰安婦問題を巡る韓日政府間合意が慰安婦被害者の基本権を侵害したかどうかについて、判断しないということだ。
 憲法裁判所は「同合意は政治的合意であり、これに対するさまざまな評価は政治の領域に含まれる。違憲性判断は認められない」とした。

 審理の対象となった慰安婦合意については、次のように解説している。

 同合意は15年12月に当時の朴槿恵(パク・クネ)政権と日本政府が「最終的かつ不可逆的」に解決すると約束したもの。慰安婦問題に関する日本政府の責任を認め、韓国政府が合意に基づき、被害者を支援する「和解・癒やし財団」を設立。日本政府が財団に10億円を拠出することを骨子とする。
 ただ、合意過程で慰安婦被害者らの意見が排除された上、合意の条件として韓国政府が二度と慰安婦問題を提起しないとの内容が含まれたことが明らかになり、韓国では不公正な合意との指摘が上がった。

 提訴と審理の経過については、次のように述べている。

 16年3月、姜日出(カン・イルチュル)さんら慰安婦被害者29人と遺族12人は憲法裁判所に、合意を違憲とするよう求める訴えを起こした。被害者側の代理の弁護士団体「民主社会のための弁護士会」(民弁)は、「日本の法的な責任を問おうとするハルモニ(おばあさん)たちを除いたまま政府が合意し、彼らの財産権や知る権利、外交的に保護される権利などの基本権を侵害した」とした。
 一方、韓国外交部は18年6月、「合意は法的効力を持つ条約でなく、外交的な合意にすぎないため、『国家機関の公権力行使』と見なすことができない」と主張し、憲法裁判所の判断以前に訴えの却下を求める意見書を提出していた。

 以上のとおり、形の上では、憲法裁判所の判決は韓国外交部(外務省)の意見を採用したことにになり、訴えた元慰安婦らの落胆が伝えられている。しかし、実は慰安婦合意の性格についての憲法裁判所の判断は、法的拘束力を否定したことにおいて、積極的なインパクトを持つものとなっている。毎日新聞の解説記事にあるとおり、この決定が「法的義務はないとしたことで、合意でうたわれた『最終的かつ不可逆的解決』の確約が失われ逆に元慰安婦の支援団体が日本政府の責任を追及する動きを強める契機となる可能性もある』と考えるべきだろう。

共同通信の報道が端的にこう述べている。

 韓国の憲法裁判所は27日、旧日本軍の元従軍慰安婦らが慰安婦問題を巡る2015年の日韓政府間合意は憲法違反だと認めるよう求めた訴訟で、合意は条約や協定締結に必要な書面交換も国会同意も経ていない「政治的合意」にすぎず、効力も不明だと指摘、法的な履行義務がないと判断した。
 裁判所は、合意で履行義務が生じていないため元慰安婦らの権利侵害はなく、合意を結んだ政府の行動が違憲かどうかを判断するまでもないとして、元慰安婦らの訴えは却下した。
 合意履行を韓国政府に求めている日本政府は反発を強めそうだ。

毎日が詳細に報じているが、昨日の決定は、日韓政府間合意は条約ではなく、「外交協議の過程での政治的合意」だと判断。両国を法的に拘束するものではない(法的拘束力はない)、合意によって具体的な権利や義務が生じたとは認められないため、元慰安婦らの法的地位は影響を受けないという。とりわけ問題となったのが、「外交的に保護を受ける権利」だったが、裁判所はこれを含めて基本権を侵害する可能性自体がないとした。もちろん、「政治的合意」がもつ政治的効果まで否定したわけではない。
この決定を受けて、原告側代理人の李東俊(イドンジュン)弁護士は「日韓合意は条約ではないと判断したので、韓国政府が破棄、再交渉する手がかりを作った」と述べたという。
一方、請求を却下するよう求める意見書を提出していた韓国外務省は「憲法裁の判断を尊重する。被害者の名誉、尊厳の回復や心の傷の治癒に向け、努力を続けていく」とコメントした。

また、同じ原告団が政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル高裁は26日、日韓合意について「(韓国政府が)被害者中心主義に違反した合意であることを認め、真の問題解決ではなかったことを明らかにし、被害者の名誉回復のために内外で努力する」という調停案を提示。双方が受け入れた、という。韓国政府が合意した「内外での努力」の具体的内容はよく分からない。

なお、昨日の憲法裁判所の決定には、慰安婦合意の1項目である「日本大使館敷地前の少女像移転」問題について、「(合意は)解決時期や未履行による責任も定めていない」としており、市民団体が活動を活発化させることも考えられると報じられている(毎日)。

念のため、2015年日韓合意(「12・28合意」)の骨子は以下のとおりである。

・慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認。今後、互いに非難や批判を控える
・日本政府は、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた慰安婦問題の責任を痛感
・安倍晋三首相は心からおわびと反省の気持ちを表明
・韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立し、日本政府の予算で10億円程度を拠出
・韓国政府は在韓国日本大使館前の少女像への日本政府の懸念を認知し、適切な解決に努力

(2019年12月28日)

 

 

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