澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「法と民主主義」5月号紹介。「ロシアのウクライナ侵略に抗議する ― 9条徹底の立場から」

(2022年5月6日)
 「法と民主主義」2022年5月号【568号】が、連休にはいる前の4月27日に発刊になっている。特集は、「ロシア―ウクライナ問題」だが、メインタイトルは、「ロシアのウクライナ侵略に抗議する」。そして、副題が「9条徹底の立場から」。拠って立つ立場を明確にしての、平和論であり、9条改憲反対論の特集である。いずれも、時宜にかなった力作。掛け値なく読み応えは十分。学習(会)資料としても使える。ぜひ、ご購読だけでなく、熟読いただきたい。

特集・ロシアのウクライナ侵略に抗議する ― 9条徹底の立場から

◆戦争はやめろ! 絶対に殺すな! ── 特集にあたって … 新倉 修
◆巻頭論文●ウクライナ危機における国際法と国連の役割 … 松井芳郎
◆インタビュー●軍事侵攻の根本原因と市民社会の役割を考える … 君島東彦
◆ウクライナ戦争と日本政府の責任、そしてわれわれは … 和田春樹
◆歴史の針を巻き戻すプーチンの戦争 … 木畑洋一
◆軍事侵攻を契機とする反9条論と改憲論 … 清水雅彦
◆台湾有事の発生を阻止するための外交力こそ … 猿田佐世
◆ウクライナ侵攻を考える ── イラク訴訟の経験から … 川口 創
◆そして、誰もいなくなる前に ── 核兵器による威嚇を許さない … 和田征子
◆ロシアにおける「言論抑圧」 … 竹森正孝
◆ロシアの軍事侵攻に抗議する各地の運動 … 大山勇一
◆【資料】
 ・ウクライナ侵略をめぐる動き
 ・ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する平和を求める声明等を発出した団体

◆連続企画・憲法9条実現のために(37)
 「核共有論」の非現実性 … 前田哲男
◆司法をめぐる動き〈73〉
 ・旧優生保護法国賠訴訟 大阪高裁判決の意義 … 安枝伸雄
 ・3月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2022●《「核時代の戦争」と世論・情報・メディア その2》
 君は「核戦争」を想定するのか? テレビ、新聞での議論を考える … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズⅡ─〈№12〉
 明るいリアリスト … 松井繁明先生×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈№40〉
 敵基地攻撃能力について「〔基地だけでなく〕中枢を攻撃することも含むべき」と
 主張する安倍晋三元首相 … 飯島滋明
◆インフォメーション
 あらためて緊急事態条項創設改憲案に反対する法律家団体の緊急声明/
 「改憲ありき」の拙速な憲法論議に異議あり(いま、憲法審査会は?4・7院内集会)
◆時評●プーチンによるウクライナ侵略 … 大久保賢一
◆ひろば●司法の限界? ── 一部に停止命令、一方で工事進行 … 丸山重威

https://www.jdla.jp/houmin/backnumber/pdf/202205_01.pdf

 松井芳郎巻頭論文が必読であることは当然として、君島東彦インタビューが短いながらも印象的である。ウクライナ国内にも、ウクライナの軍事行動を批判する平和運動があることを紹介したあとに、次の言葉がある。

 「日本国憲法の平和原理の核心は、安全を確保するために軍事力依存を極小化し(軍事主権の放棄)、他国との信頼関係を構築するというもの(共通の安全保障)です。安全保障のためにはなによりも武力紛争を「予防」するために積極的に行動することが大切です。21世紀に入って、『受け身の応答から積極的な予防へ』と言われるようになりました」

 そして、「積極的な武力紛争予防」のキーワードが「信頼関係」の構築であるという。「市民に求められているのは、軍事力を使えない環境―信頼関係―を作る努力です」「国境を越えて連帯する市民、越境的市民の連帯が東アジアにおいて平和を構築する努力をしているのです」

 また、清水雅彦論稿が、こういう比喩を述べている。耳を傾けたいと思う。
    
「人が強盗にあったとき、
   ① 強盗が刃物を持っていようが闘う
   ② その場から逃げる
   ③ 強盗の要求通り財布を差し出す
という選択肢が考えられるが、②や③の選択を責めることはない。
 しかし、これが国家による戦争だと、なぜ戦うことが当然かの議論になるのだろうか」
 「今回の件でも、ウクライナ国民が
   ① ロシア軍と戦う 
   ② 国内外に逃げる
   ③ 降伏する
という選択肢から自身の判断で選択できるのが望ましく、兵役の拒否も保障されるべきである。特に③は屈辱的なことではあるが、犠牲者を最小限にする。時間がかかっても国際世論を背景にした非軍事・不服従等で抵抗するという選択肢もあるはずだ。単純に「非武装」「非戦」(無抵抗ではない)がダメとはならない」

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 なお、「『維新』とは何か」を特集した「法と民主主義」4月号【567号】の売れ行きが好調で、在庫が枯渇しそうとの報告。ぜひ、こちらも、お早めの申し込みを。

https://www.jdla.jp/houmin/backnumber/202204.html

気をつけよう「身を切る改革」あなたの身 ― 維新の正体を見つめよう

(2022年4月5日)
 「法と民主主義」4月号(567号・3月末発刊)の特集タイトルは、「『維新』とは何か」というもの。下記の目次のとおり、維新を多面的によく語っている。維新という事象を考えるについて必読と言ってよい。

 『維新』とは何か? その性格を表すのに、次の3ワードが必要にして十分ではないだろうか。
 新自由主義・ポピュリズム、そして改憲策動。

 このほかに、この特集を通読すると「成長至上主義」「幻想ふりまき」「管理・統制」「略奪型経済政策」「メディア露出」「新たな利権」「自助努力・自己責任」「反科学主義」「批判拒絶体質」「政権擦り寄り」等々の評価も述べられているが、概ね前記の3点で包括できるだろう。

 維新と言えば、何よりも極端な新自由主義政党である。資本の利益のために、府民・国民の利益を切り捨てようという政党。それでいて、府民・国民の利益を擁護するごときポーズで幻想を振りまき、選挙民の欺瞞に一定の成功を収めてきたポピュリスト集団である。

 だから、この特集の中の教育面解説「維新政治による教育破壊の“ほんの一部”」の記事の中にあるように、《気をつけよう「身を切る改革」 あなたの身》なのだ。維新は、容赦なく大阪府民・市民の身を切ってきた。そして、府外からの収奪も狙う。それでいて、「開発幻想」を振りまいているのだ。

 そしていま維新は、現政権の言いにくいことを代弁して改憲策動の尖兵となり、「非核三原則の見直し」「核共有」の声を上げている。野党ではなく、与党の政策をさらに保守の立場から引っ張る存在である。

 維新を語る際の最大の関心事は、いったい誰が維新支持の担い手なのかということ。近畿圏以外の人には、まったく分からない。この点について、特集リードの中に、次の一節がある。

 「関西学院大学の冨田宏治教授が三年前に分析した論文(「維新政治の本質ーその支持層についての一考察」)は次のとおり、維新支持層のイメージを描いている。
 そこに浮かび上がってくるのは「格差に喘ぐ若年貧困層」などでは決してなく、税や社会保険などの公的負担への負担感を重く感じつつ、それに見合う公的サービスの恩恵を受けられない不満と、自分たちとは逆に公的負担を負うことなくもっぱら福祉医療などの公的サービスの恩恵を受けている「貧乏人」や「年寄り」や「病人」への激しい怨嗟や憎悪に身を焦がす「勝ち組」・中堅サラリーマン層の姿にほかなりません」

 本号の巻頭論文に当たる「日本維新の会の『支持基盤』を探る」(岡田知弘・京大名誉教授)は、この見解をベースにしつつも、維新は「さらなる成長を」というスローガンによる「開発幻想」を振りまくことによって、「勝ち組」以外からも集票したとみる。強固な支持層としての、新自由主義の利益に均霑する「勝ち組」 中堅サラリーマン層 と、「開発幻想」にすがるしかない立場の「非勝ち組」層

 しかし、現実の地域経済の衰退は覆うべくもないことを指摘し、在阪マスコミの維新擁護の報道を乗り越えて、「維新が振りまく幻想の危険性」と「真実にもとづく維新批判」の言論高揚の必要を説いている。

目次は、下記のURLをご覧いただきたい。
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特集●「維新」とは何か

◆特集にあたって … 岩田研二郎
◆日本維新の会の「支持基盤」を探る … 岡田知弘
◆在阪マスコミと中央政権が育てた新たな利権政党 … 幸田 泉
◆大阪IRカジノの問題点 … 桜田照雄
◆大阪都構想の問題点とその後の動き … 森 裕之
◆地域経済を疲弊させる維新の略奪型経済対策 … 中山 徹
◆維新府政のもとでのコロナ禍の保健所の現状 … 小松康則
◆維新政治による教育破壊の“ほんの一部”
 ~大阪は 維新政治で 滅茶苦茶に~ … 今井政廣
◆維新政治による人権侵害と闘う弁護団活動 … 岩田研二郎
◆維新による公務員の団結権への侵害と反撃 … 豊川義明
◆改憲勢力としての日本維新の会 ── 憲法審査会での策動を中心に … 田中 隆
◆維新は政党政治の一翼を担えるか … 栗原 猛

特集外記事
◆連続企画・学術会議問題を考える〈5〉
 「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ(令和4年1月21日)/ CSTI有識者議員懇談会」をどう読むか … 広渡清吾
◆司法をめぐる動き〈72〉
 ・「日の君」再任用訴訟で逆転勝訴判決
  ── 再任用拒否の違法性を正面から認定 … 谷 次郎
 ・2月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2022●《「核時代の戦争」と世論・情報・メディア》
 どんな理由でも戦争は認めない 不戦、非核、非武装の外交の確立を
 ── ウクライナ戦争を機に … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズⅡ─〈№11〉
 「戦争の不条理」を胸に … 鶴見祐策先生×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈№39〉
 憲法改正を「今こそ成し遂げなければならない」と主張する岸田首相 … 飯島滋明
◆書籍紹介
◆インフォメーション
 ロシアによるウクライナ侵攻に対し強く抗議するとともに直ちに戦闘行動を停止し撤退することを求める声明/ロシアのウクライナへの軍事侵攻に強く抗議し、ロシア軍の即時撤収を訴える声明/自民党改憲案(4項目改憲案)に反対し、改憲ありきの憲法審査会の始動には反対する法律家団体の声明
◆時評●地位協定と新型コロナ対策 ── 日伊の比較 … 高橋利安
◆ひろば●和歌山での憲法を守る取り組み ── 93回目のランチタイムデモ … 阪本康文

「法と民主主義・創立60周年記念号」ご紹介

(2022年1月5日)
 年末に、「法と民主主義」の特別号が発刊された。「創立60周年記念号」である。「創立50周年記念号」以来10年の法律家運動総括号となっている。
 以下に目次を掲載する。絢爛豪華にして殷賑隆盛の壮観とはちとオーバーではあるが、なかなかのものと自讃している。私も、象徴天皇制について寄稿している。手に取ってお読みいただけたら、ありがたい。

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創立60周年記念●激動の10年と新たな展望 ―― 日民協この10年

◆巻頭言・60年、最初の一歩と次の一歩 … 理事長・新倉 修
■巻頭論文・激動の10年の政治史と日本民主法律家協会の役割 … 渡辺 治

■激動の10年の政治史と法律家運動
◆企画にあたって … 編集委員会・前事務局長 米倉洋子
◆原発差止訴訟のこの10年 ── 弁護団の奮闘と判決の推移、そして今後の展望 … 北村 栄
◆公害・環境法における理論(研究者)と実務(弁護士)の協働
── 建設アスベスト訴訟・福島原発事故賠償訴訟を例に … 吉村良一
◆秘密保護法の内容・問題点とその後につながる運動 … 清水雅彦
◆監視社会と戦争する国づくり
── 特定秘密保護法/刑訴法・盗聴法改悪/共謀罪/
   デジタル監視法/土地規制法/内閣情報局 … 海渡雄一
◆戦争法反対・9条改憲阻止運動 ── 激動の10年 … 南 典男
◆機密費・財務省「森友学園」・「桜を見る会」追及とその闇を暴く運動 … 上脇博之
◆象徴天皇をめぐる議論状況この10年 … 澤藤統一郎
◆検察庁法改正反対運動の経緯と教訓 … 島田 広
◆「桜を見る会前夜祭」刑事告発の取組み … 小野寺義象
◆日本学術会議会員任命拒否問題と情報公開請求の取組み … 福田 護
◆原発事故から10 年
── 日民協の取組み、「原発と人権」の活動など … 海部幸造
◆改憲問題対策法律家6団体連絡会の活動 ── 憲法の危機に抗して … 大江京子
◆司法制度研究集会の10年を振り返る … 米倉洋子

■日民協創立の頃の息吹を伝え、60年を振り返る
◆日民協創立に至る迄 思い出すまま … 内藤 功
◆日民協創立の経緯とその「初心」 … 新井 章
◆『法民』とともに … 上条貞夫
◆鈴木安蔵先生の思い出 … 金子 勝
◆断想 野村平爾先生 … 大石 進

■これまでとこれからの日民協に寄せるおもい
―― 歴代理事長・事務局長・本部事務局員と現執行部員から
【理事長】
◆日民協活動の年月 … 久保田 穣
◆安倍改憲策動との闘いの3 年間 … 右崎正博
◆国際の平和と安全を実現する地球的な運動を … 新倉 修
【事務局長】
◆司法反動化に抗して ── 私の事務局長時代 … 鷲野忠雄
◆国際交流を実現した協会活動を振り返って ── 近況報告を兼ねて … 小野寺利孝
◆日本の司法の遅れを取り戻すために ── ドイツの司法の実態を学ぶ … 高見澤昭治
◆事務局長退任の日の「事務局長日記」 … 澤藤統一郎
◆事務局長雑感 ── 刺激をうけ、視野を拡げることのできた6年 … 海部幸造
◆原発、壊憲…未曾有の危機のなかで … 南 典男
◆事務局長時代を振り返って … 米倉洋子
◆「友情」「努力」「勝利」を体感できる日民協へ … 大山勇一
【本部事務局員】
◆京橋から四谷、そして新宿御苑へ … 林 敦子
【執行部員】
◆「手をとり合って」(クイーン) … 戒能通厚
◆インボイス中止のたたかい … 浦野広明
◆司法制度への恒常的問題提起を … 新屋達之
◆多様な「まなざし」 … 佐々木光明
◆土砂降りの日にすること … 永山茂樹
◆裁判官経験者としての活動参加と雑感 … 北澤貞男
◆日民協と法律関係労働組合 … 有村一巳
◆「危機の時代」の法律家の役割 … 飯島滋明
◆継続は力なり、でもそれだけでは不十分 … 辻田 航
◆メディアの変容とジャーナリズム … 丸山重威
◆次の60 年存続・発展のため … 奥津年弘

■日民協の未来を語る座談会
 出席者・辻田 航/大住広太/宮腰直子/飯島滋明/
 大江京子/米倉洋子/南 典男/新倉 修/大山勇一(司会)

■ともに歩んだ皆さんの連帯メッセージ
◆これからも司法の民主化をめざして … 中矢正晴
◆法務省の労働組合として … 西山義治
◆たたかいは続く ── 独立、平和、民主主義、基本的人権をまもるために … 山口真美
◆市民とともに9条をもう一度選び直したい … 小賀坂 徹
◆法律家に課された使命 ── 日本民主法律家協会創立60周年に寄せて … 阿部健太郎
◆働く者の権利擁護と団結の再生のために … 井上幸夫
◆若手会員とともに司法の民主化をめざして … 上野 格
◆共同の闘いで未来を変えよう! … 海渡雄一
◆日本民主法律家協会と日本国際法律家協会という二つの顔で人権活動にかかわって … 清末愛砂
◆「核兵器も戦争もない世界」を目指す取り組み … 森 一恵
◆憲法活かし、悪法阻止のたたかいに手を携えて … 岸田 郁
◆緊迫する情況の中での法律家の役割 … 山岸良太
◆国民審査運動の再生を … 瑞慶覧 淳
◆今こそ、憲法を実践するとき … 菱山南帆子
◆薩長連合のこと … 高田 健

◆とっておきの100枚 彼岸への伝言Ⅱ … 佐藤むつみ
◆鳥生基金の創設にあたって 鳥生忠佑先生への感謝のことば … 大山勇一
◆改憲動向レポート〈№36(特別編)〉
 壊憲・改憲の危機にある日本と法律家の果たすべき役割 … 飯島滋明
●年表・この6年の日民協のあゆみ(2015.9~2021.11)
●資料・総もくじ(500+501号~562号)
●インフォメーション
 「法と民主主義」バックナンバー検索システムについて

なお、今回は「563・564号」の合併号として、特別の2000円(送料別)。
ご注文は、下記のフォームから。

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「法と民主主義」10月号 ー 「アジアの各地で闘う民衆」

(2021年10月27日)
「法と民主主義」の今月号(21年10月号【通算562号】)が、本日発行となった。
特集の表題は、「アジアの各地で闘う民衆ーそれぞれの課題と法律家の役割」というもの。本号の編集専任者は私である。

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 香港・中国・ミャンマー・タイ・フィリピン・アフガンなどの緊迫した情勢を、それぞれの国に深く関わっている方にご報告いただいた。総選挙を間近にしての今この各国の深刻な報告に目を通すと、不満だらけの日本ではあるが、それでも不十分ながらもこの日本に根付いている民主主義を貴重なものと思わざるを得ない。

 各国の闘いが問うている課題はこの上なく重い。人権や自由を獲得するための権力との苦闘の歴史は、アジアの各地で今まさに進行中なのだ。そして、各国の状況の報告のあとに、各国個別の枠を越えた民衆の闘いの連帯や法律家の課題についての論稿を寄稿いただいた。特集全体で、「法と民主主義」らしい構成になったと思う。


「法と民主主義」・10月号の特集企画 リード

 いま、アジアの各地で、多様な「民衆の闘い」が展開されている。闘いの背景も要因もその態様も一様ではないが、それぞれの人権課題・民主主義課題が、どの国にあっても凶暴な権力との深刻な対立によって、熾烈な民衆の闘いを余儀なくされている。そして、一国での闘いはいずれも困難な局面にあって、国際的な連帯と支援を求めている。
 また、それぞれの闘いに法律家が関わり、一定の役割を果たしながらも、法律家自身も苦境の現状にある。現実は苛酷であり、人権や民主主義を獲得するための歴史の苦悩は、今なお進行中であることを実感せざるを得ない。
 本特集は、この各国の実状をご紹介するとともに、国際法の課題や、国境を越えた法律家の連帯や支援の可能性についての問題提起とし、われわれが何をなしうるかを考える契機としたい。

 今号の特集は、各論からの順序となる。まず、読者に関心の深い香港の民主主義の苦境と、その背後にある中国の立憲主義についての2論稿。併せて読むことで、顕在化した現実の厳しさと、さらにその奥にある厳しさの源泉を理解することになろう。
◆死にゆく「一国二制度」──香港で何が起きているか………鈴木 賢
◆「憲法あって憲政なし」の国で………石塚 迅

 以下は、さらに苛酷で深刻な各国の民衆の闘いの現状の報告である。ミャンマー、タイ、フィリピン、アフガニスタン、それぞれの歴史的な背景事情の中での闘いの厳しさと、解決の難しさにたじろがざるを得ない。が、その困難な状況下で闘っている人々の崇高さに打たれる。
◆ミャンマー軍事政権との闘いの現状と日本における連帯・支援の課題………渡 辺彰悟
◆岐路に立つ「タイ式民主主義」………今泉慎也
◆フィリピンの超法規的殺人EJK(Extrajudicial Killing)………井上 啓
◆アフガン女性の闘う〈勇気〉を生み出したもの──長期的視野で築いてきた闘争 の歴史………清末愛砂

 そして、以下の論稿が、各国の具体的な現状を考察するための総論となる。稲論文はアジアにおける人権課題を網羅的に俯瞰し、申論稿は国際法の枠組みを提供するもの、新倉論文は闘う民衆の国際連帯の可能性について論じ、笹本論文は、朝鮮半島の平和を素材に法律家の国際連帯の実践を報告する。それぞれ、有益なものとなっている。
◆アジア各地における「民衆の闘い」の現状と課題………稲 正樹
◆人権と民主主義を求める民衆の危機と国際社会─大国のエゴを超えて………申惠丰
◆アジア各地での民衆の闘いと国際連帯………新倉 修
◆朝鮮半島の平和プロセス実現のための、法律家の国際連帯………笹本 潤

 ミャンマーの軍事政権との闘いについての、渡辺彰悟弁護士の報告の最後に、こうある。「ミャンマーの詩人KT氏は「彼ら(権力)は頭を打つが、革命は心にあることを分かっていない」と詠んだ(彼は拘束され尋問され死亡した)。この詩に込められた思いに連帯し、私達は日本がなすべきことを積み重ねたい。」
 この一文を重く受けとめたい。
       (編集委員・澤藤統一郎)


法と民主主義2021年10月号【562号】(目次と記事)

特集●アジアの各地で闘う民衆 ―― それぞれの課題と法律家の役割

◆特集にあたって … 編集委員会・澤藤統一郎
◆死にゆく「一国二制度」 ── 香港で何が起きているか … 鈴木 賢
◆「憲法あって憲政なし」の国で … 石塚 迅
◆ミャンマー軍事政権との闘いの現状と
 日本における連帯・支援の課題 … 渡邉彰悟
◆岐路に立つ「タイ式民主主義」 … 今泉慎也
◆フィリピンの超法規的殺人EJK(Extrajudicial Killing) … 井上 啓
◆アフガン女性の闘う〈勇気〉を生み出したもの
── 長期的視野で築いてきた闘争の歴史 … 清末愛砂
◆アジア各地における「民衆の闘い」の現状と課題 … 稲 正樹
◆人権と民主主義を求める民衆の危機と国際社会
── 大国のエゴを超えて … 申 惠丰
◆アジア各地での民衆の闘いと国際連帯 … 新倉 修
◆朝鮮半島の平和プロセス実現のための、法律家の国際連帯 … 笹本 潤

◆特別寄稿 フランスにおける衛生パス … 植野妙実子
◆連続企画・学術会議問題を考える〈3〉
 学術会議任命拒否情報不開示決定に対する審査請求のゆくえ … 三宅 弘
◆司法をめぐる動き〈69〉
 ・岡口判事に対する弾劾裁判について … 野間 啓
 ・9月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2021●《政権選択選挙》
 選挙で問われる変節と政治姿勢 問われる「メディアの主体性」
 ウソで情報操作する会社、政党? … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズⅡ─〈№8〉
 人が裁かれる時 … 村井敏邦先生×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈№35〉
 本質は何も変わらない岸田自公政権 … 飯島滋明
◆インフォメーション
 自公政権に終止符をうち、命と平和を守る憲法に基づく政治への転換を!
 立憲野党は共同し、市民連合との合意を踏まえ、
 政権交代に向けて全力を尽くすことを求める法律家団体のアピール
◆時評●大企業、軽すぎる税負担 ── 巨額増益の一方で優遇税制拡大 … 菅 隆徳
◆ひろば●今日の危機の内容と、打開する力としての民主主義 … 豊川義明

「法と民主主義」1月号購読のお願い

(2021年1月31日)
1月28日発行の「法と民主主義」1月号が、通算555号となった。毎年10号の発刊を、1号の欠落もなく50年余にわたって積み上げての555号である。編集に参加してきた者の一人として、いささかの感慨を禁じえない。

自らの画に自ら讃の趣ではあるが、最近の本誌は充実していると思う。本号も<第51回司法制度研究集会>特集を中心に読み応えあるものになっていると思う。

51回目となる司研集会のテーマは、「今の司法に求めるもの ─ 特に、最高裁判事任命手続きと冤罪防止の制度について」である。その趣旨は、以下のとおり。

第49回司研集会のテーマは、「国策に加担する司法を問う」。そして昨年の第50回は「いま、あらためて司法と裁判官の独立を考える、ー 司法の危機の時代から50年」であった。この両シンポジウムで、安倍政権になってからの最高裁の重要判決の中に、国の政策に積極的に加担するものが散見されると指摘され、共通認識となった。これにともなって、安倍政権下での最高裁判事任命の恣意性がクローズアップされてきた。
こうした流れを受けて今回は、最高裁判事任命のありかたを中心に、司法の独立や司法の人権保障機能強化のための提言ができないかという問題意識をもって集会を準備した。結局は、今回の実行委員会で具体的な政策提言などを作ることは困難として、集会の中で方向性が見いだせればということになった。
そこに10月1日菅首相が日本学術会議会員候補者6名の任命を拒否するという前代未聞の事態が起きた。この政権の問題性は今回の司研集会に色濃く反映され、非常に緊張感のある充実した集会になった。

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法と民主主義2021年1月号【555号】(目次と記事)

●特集のリード(PDF) ●時評(PDF) ●ひろば(PDF)
特集●今の司法に求めるもの ─ 特に、最高裁判事任命手続きと冤罪防止の制度について<第51回司法制度研究集会から>
◆特集にあたって … 日本民主法律家協会事務局長・米倉洋子
◆基調報告・今の司法、何が問題か ── 新聞記者の視点から … 豊 秀一
◆報告①・最高裁判事任命の問題点
── その基本構造及び安倍政権下の問題、改革の方向性 … 梓澤和幸
◆報告②・冤罪防止のための制度の実現を … 周防正行
◆質疑応答・発言
… 近藤ゆり子/明賀英樹/岡田正則/晴山一穂/西川伸一/森野俊彦
平松真二郎/澤藤統一郎/毛利正道/瑞慶覧淳/白取祐司
◆集会のまとめと閉会の挨拶 … 新屋達之

◆連続企画●憲法9条実現のために〈33〉
日本学術会議会員任命拒否と「科学技術・イノベーション基本法」… 南典男
◆司法をめぐる動き〈62〉
・大飯原発設置許可取消判決の意義と展望──大阪地裁2020・12・4判決 … 冠木克彦
・11/12月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2021●《政治とことば》
問われる政治家、リーダーの資質 「迷走」の要因はどこにあるのか? … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズ2─〈№1〉
被爆者として、被爆者によりそって … 田中熙巳さん×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈No.30〉
「ずさんな議論」で改正改憲手続法案の早期採決を求める自民・公明・維新・国民民主党 … 飯島滋明
◆BOOK REVIEW●ティモシー・ジック著、田島泰彦監訳、森口千弘ほか訳
『異論排除に向かう社会─トランプ時代の負の遺産』(日本評論社) … 澤藤統一郎
◆インフォメーション
新型インフルエンザ等対策特措法等の一部を改正する法律案に反対する法律家団体の声明
◆時評●沖縄の米軍基地撤去は日本の歴史的責務 … 加藤 裕
◆ひろば●カジノ関連法の廃止を … 新里宏二

記事の紹介は下記URL
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集会でのメインの各報告は、本誌をお読みいただくとして、「フロア発言」の2件の抜粋をご紹介させていただく。森野俊彦さんと私のもの。

学術会議任命拒否と重なる裁判官の任命拒否

森野俊彦(弁護士・大阪弁護士会)

 私は、いまは弁護士ですが、40年間裁判官をしていた者です。今回、日本学術会議の被推薦者6名の方が任命拒否をされましたが、私はそれを聞いて、50年前に私たちが経験した「任官拒否」を思い出しました。私たち60数名の任官希望者のうち7名が裁判官任官を拒否されました。私はその方たちと一緒に修習し、いかなる裁判官になっていくかを真剣に考え、任官し得たあかつきには、ともに少数者の権利を擁護する司法権の担い手として頑張っていこうと誓い合っておりました。
その方たちは、裁判官になって当然とも言うべき人で、裁判官にふさわしい人でありました。こうした人たちが拒否されたことは、本当に驚きでありました。せめてその拒否理由を明らかにすべきであると考えて、裁判官内定者55名のうち45名の不採用理由開示を求める要望書を最高裁に持っていきました。
拒否された人のうち六名が青法協に入っており、また経歴や人柄から推測しますと、おそらく最高裁はそういう方たちが裁判官として存在し活動することを絶対に避けたいと考えたのだと思います。つまり最高裁判所は、裁判所にとって都合が悪くなる可能性がある人は基本的には入れない。特に任官拒否は採用の問題ですから、入場門に立って入場を拒否すれば足りると考えたのです。
その年、私たちの10期上の13期の宮本裁判官の再任拒否もありました。私は紛れもなく思想信条を理由とする差別であったと考えます。その後、再任問題については、下級裁判官指名諮問委員会が設けられて一定の改善を見たのですが、それで裁判所の中が良くなったかというと、そうは言えないところがあるのです。残念なことに、裁判所内の民主化をめざす運動は、いまは風前の灯火です。われわれの時代には任官者の中にも結構骨太な、あるいは少数者の権利擁護こそ司法権の任務だと力説する方がいたのですが、現在そういった方が裁判官として入ってこれるかというと、それが難しい。採用の段階で選別されてしまうわけです。
最高裁判所の判事の任命は、まだ弁護士出身などいろいろなところから入ってくる部分があるのですが、国民の権利を擁護する、あるいは政府にノーと言える裁判官がどれだけ最高裁の判事になれるかということになると、これは極めて否定的なのですね。裁判官時代はともかく面従腹背して、それなりに出世をしないとだめなのです。だいたい現職で最高裁判所の判事になろうと思ったら、最高裁事務総局経験者、司法研修所の教官、最高裁の調査官などにならなければならない。それには、言いたいことも言わずに、しかし時々はこれはという判決も書かなければならない。残念ながら、今の裁判官にそんなことができるはずがない。
私の場合で言えば、青法協の会員でもありましたし、全国裁判官懇話会にも入りました。日本裁判官ネットワークを一緒にやって、そういう問題を市民とともに考えようと頑張ったのですが、残念ながら、裁判所自体を根本から変えるということにはなり得なかったのです。
どうしたらいいかということは、本当に難しい問題なのですが、ある日突然、いい裁判所ができるはずはないですね。時々いい裁判官が出るときがある。そういう裁判官を盛り立てるということも私は大切ではないかなと思っています。あとは、弁護士からの最高裁判事、少数意見がちゃんと書ける裁判官にもっともっと入っていってもらうとか、いろいろな方策が考えられます。どれも、けっこう厳しいこととは思いますが。(拍手)

50年前の苦い経験を繰りかえさないために

澤藤統一郎(弁護士・東京弁護士会)

 私も森野さんと同じ23期で、50年前に同期の裁判官志望者7名が任官を拒否された事件に立ち会いました。このときの衝撃は非常に大きかった。
当時私たちは、私たちなりの常識的な裁判官像、あるいは裁判所、司法像を描いていました。憲法の理念を厳格に守る裁判所、これが当然のありかただと考えていたのが、どうもおかしい。そうではない権力の意のままになる裁判所がつくられてしまうのではないかという違和感と衝撃です。私たちが理解していた、三権分立とか司法の独立とか、あるいは裁判官の独立などとはまったく異質のものが、いま目の前に立ち上がろうとしている。そういう恐怖心を、50年前に感じたことを思い出します。
その同じ悪夢が、また今年の10月1日に繰り返され、現実の出来事として受け止めざるを得なくなりました。さきほど森野さんが発言されたとおり、50年前に私たちがいったい何を考えて何をし、それがどうしてうまくいかなかったのか。その教訓をもう一度きちんと整理すべきなのだと、あらためて思います。
50年前の苦い総括ですが、私は最高裁が成功体験を積み上げたのだと思っています。つまり最高裁は、判事補採用の段階で数名の任官志望者を拒否することによって、自らの思惑は公にせずとも、誰にでも忖度可能な状況をつくり出した。そして人事の問題だからと言う理屈で、決して採用を拒否をした理由を明らかにしない。それでいて、自分の組織の隅々にまで、トップが何を考えているか、トップに忖度をせず逆らえばどうなるのかを見せつける。そういうやり方で、巧妙に組織全体を動かしたのです。採用人事を梃子にして、全裁判官を統制し、裁判の内容まで変えてしまった。それをいま司法官僚ではなく、内閣総理大臣、行政のトップが真似てやろうとしている。
私たちは50年前の苦い経験から、その轍を踏まないように、いまの学術会議問題について、発言を継続していかなければならない。それが私たちの使命であろうと思っています。

《教科書採択》《原発と人権》特集の「法と民主主義」11月号購読のお願い

(2020年11月29日)
11月26日、日本民主法律家協会の機関誌「法と民主主義」2020年11月号【通算553号】が予定どおりに発刊となった。

今号は、特集Ⅰ「2020年夏 教科書採択をめぐるたたかいの成果と教訓」と、特集Ⅱ「第5回 『原発と人権』全国研究・市民交流集会ーー福島原発事故から10年─これまでとこれから」の二本建て。「法民」ならではの内容で充実していると思う。

目次は以下のとおり。

特集 Ⅰ 2020年夏 教科書採択をめぐるたたかいの成果と教訓
◆特集にあたって … 編集委員会・澤藤統一郎
◆欺瞞と瑕疵事項だらけの教科書制度
──教育者・市民と法律家との連携による是正活動への期待 … 髙嶋伸欣
◆「つくる会」系教科書の激減と今後の課題 … 鈴木敏夫
◆これが、問題教科書の内容だ … 石山久男
◆教科書づくりの現場からの報告 … 吉田典裕
◆教科書づくりの夢を語る … 関  誠
◆この夏、全国の運動はこうだった。
── 自由法曹団の取り組みについて … 穂積匡史

特集 Ⅱ 第5回 「原発と人権」全国研究・市民交流集会 in ふくしま オンラインプレシンポジウム  福島原発事故から10年─これまでとこれから

◆特集にあたって … 「第5回 『原発と人権』全国研究・市民交流集会 in ふくしま」実行委員長・礒野弥生
◆講演:技術の存否や倫理的側面の議論を
── 核燃料サイクルと核エネルギーのあり方を考える … 池内 了
◆報告:10 年目の被災地の今 … 伊東達也
◆報告:飯舘などリスクの高い復興を問う
── 復興核災害の危険性 … 糸長浩司
◆訴訟報告:被害者訴訟の司法戦略について
── 裁判の到達点と今後 … 南雲芳夫
◆訴訟報告:いわき避難者訴訟・第一陣
仙台高裁判決の意義と、上告審における東電主張の問題点 … 米倉 勉
◆各地からの報告 … 東島浩幸/谷崎嘉治/今大地晴美/佐藤嘉幸
◆集会のまとめと閉会の挨拶 … 松野信夫

◆司法をめぐる動き〈61〉
・安保法制違憲訴訟の意義と課題
── 前橋地裁判決を受けて … 大塚武一
・10月の動き… 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2020 《菅内閣のメディア政策》
自著も改変、批判に「怒り」 「世論」狙って、あの手この手 … 丸山重威
◆改憲動向レポート〈No.28〉
日本学術会議問題の陰でも進む「壊憲」 … 飯島滋明
◆書籍紹介
◆時評 「デジタル化」と向き合う日本の民事司法 … 今村与一
◆ひろば 継承されるミーナーの精神 … 清末愛砂

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特集Ⅰのリードだけをご紹介しておきたい。編集担当者として、私が書いたもの。

本号の第一特集は、《2020年夏 教科書採択をめぐるたたかいの成果と教訓》である。教科書採択をめぐる運動に成果あったことを確認して、その成果を生み出した運動の教訓を汲み取ろうというもの。
教育をめぐる時代の状況が決して楽観できるものでないことは、共通の認識と言えよう。そのような中でも、各地の地道な運動が、貴重な「たたかいの成果」を生み出し得ることは、それ自体が学ぶべき教訓である。
学校教育において、教科書は重要な存在である。とりわけ、義務教育の授業で使われる「歴史」や「公民」の教科書の記述の在り方は、次代の国民の主権者意識に大きな影響を及ぼす。そのため、どのような教科書を作るか、どのような教科書を採択するかについて、自ずから熾烈なせめぎ合いとなる。その結果は民主主義の成熟度を示す象徴的なバロメータともなる。
近年、このバロメータの指し示すところが思わしくなかった。この国の政治の現状と符合して、歴史修正主義や国家主義、改憲指向の教科書の採択が無視し得ないシェアを獲得してきたからである。
今年・2020年は、4年に一度の中学校教科書採択の年、熱い夏の攻防の焦点は、「歴史」と「公民」の教科書だったが、「つくる会」系の、育鵬社・自由社の教科書採択は両者ともに激減した。企業としての採算点を大きく割り込んでいることが報告されている。もちろん、自然にそうなったのではない。各地で積み重ねられた、教科書採択をめぐる運動の成果である。
6件の論稿は、全体として、原理的な教科書検定や採択の制度や運用の問題点を指摘しつつも、今夏の運動が獲得した成果と意義とを正確に把握し、これを勝ち取った全国の運動を素描するものとなっている。

「欺瞞と瑕疵事項だらけの教科書制度」(高嶋伸欣・琉球大学名誉教授)は、本質的に戦前と変わりのない教科書検定制度とその運用の実態の問題点を指摘して、その打開のために法律家への連携を呼びかけるものとなっている。
「『作る会』系教科書の激減と今後の課題」(鈴木敏夫・教科書ネット21事務局長)は、一覧表にして教科書採択シェアの激変を解説している。実践に携わった立場からの現場の運動の報告として貴重なものである。
「これが、問題教科書の内容だ」(石山久男・教科書ネット21代表委員)は、問題教科書の、歴史修正主義・侵略戦争と植民地支配の美化・改憲への誘導の具体的記述についての明快な指摘である。その上で、具体的な改善の道筋を提言して示唆に富む。
「教科書づくりの現場からの報告」(吉田典裕・出版労連教科書対策部事務局長)は、教科書を作る側からの貴重なレポートである。教科書を使う側の視点しかない者には、気が付かない「現実」を教えてくれる。教科書に自由を取り戻すための提言も興味深い。
「教科書づくりの夢を語る」(関誠・公立中学校社会科教師)は、現役の歴史教員が、「子どもと学ぶ」教育実践の中から、「学び舎」の歴史教科書を作った報告である。筆者の「教科書は誰のものか」という問いかけは重い。
「この夏、全国の運動はこうだった。ー 自由法曹団の取り組みについて」(穂積匡史・弁護士)は、法律家の運動のありかたについての典型を示している。成果著しかった神奈川と大阪の具体例が報告されているが、学ぶべきところが大きい。

全体として、成果ばかりが強調されてはいない。運動あればこそ、多くの課題も見えてきている。まずは、その両面を共通の認識としたい。
(編集委員 澤藤統一郎)
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「法と民主主義」紹介のホームページは下記のとおり。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html

お申し込みは、下記のURLから。
https://www.jdla.jp/houmin/form.html

司法も学術会議も、行政権力から独立していなければ存在価値はない。

(2020年11月14日)
素晴らしい小春日和の土曜日。午後は、引きこもっての「第51回司法制度研究集会」だった。昨年に続いて、今年も自由法曹団/青年法律家協会弁護士学者合同部会/日本民主法律家協会の共催。ズームで参加できるのが、ありがたい。

「今の司法に求められるもの ― 特に、最高裁判事任命手続きと冤罪防止の制度について」を総合タイトルとして、基調報告が豊秀一さん(朝日新聞編集委員)による「今の司法、何が問題か―新聞記者の視点から」。これに、梓澤和幸さんの「司法の民主化のために」と、周防正行さんの「冤罪防止のための制度の実現を」という報告。

今回の集会企画の段階では学術会議問題は出ていなかった。予定されたテーマとして学術会議問題関連のものはない。しかし、当面する最重要課題として学術会議問題を語らざるを得ない。司法を語りながらも学術会議問題を論じ、学術会議問題を論じつつも、司法を語る集会となった。

よく分かったことは、司法の独立侵害の問題と、学術会議の自主性侵害問題とは同質、同根の問題であること。そして、学術会議の会員任命問題と最高裁裁判官任命問題とについては、同じ法理で考えるべきことである。

司法の独立とは、権力分立を実効化するための制度である。司法部のみならず裁判官は、権力とりわけ行政権から独立して、権力の憲法や法からの逸脱を是正する機能をもたなければならない。行政権力から独立していない司法部も、司法官僚の権力から独立していない裁判官も、権力の暴走を止めることができない。

学術会議も、学術の国家的利用の在り方に関して、権力から独立して提言をなすべき存在である。政府からの掣肘を受けることのない、自律性あってこそ、学術を国策に反映させることができる。権力から独立していない学術会議では、権力の暴走を止めることができず、その使命を達することができない。

いま、司法の独立も、日本学術会議の自律性も危うい。ここを持ちこたえないと、大学にも、教育にも、メディアにも、法曹にも、文学や芸術や宗教にも、累が及ぶことになりかねない。そのような危機感をもたざるを得ない。

私も、ズームで短く発言した。次のような内容。

 今回の6名の学術会議会員任命拒否は、49年前の23期司法修習からの裁判官希望者7名に対する任官拒否問題の再現という側面を持っている。

 あのとき、採用人事を梃子として組織全体を統制する手法の有効性が確認された。司法部は成功体験を持ったのだ。「人事のことだから理由は言わない」という開き直りつつ、それでいて組織全体の萎縮効果を狙う狡猾さ。今度は、同じことを官邸が行っている。49年前のあの時の教訓をどう生かすべきかを総括し直さなければならない。

本日の司法制度研究集会の発言は、いずれ「法と民主主義」に掲載される。是非、ご一読をお願いしたい。

豊さんの基調講演も充実したものだったが、フロアからの岡田正則さんの発言がさすがに印象に残るものだった。その大要をご紹介したい。

6人の任命拒否が、違憲であり違法であることは明らかで、法律解釈論争は既に決着がついている。政権は既に詰んでいるのに、それでも「参った」と言わずに居直っている。そのような違法の居直りを許しているのが今の日本の政治状況なのだ。

自由・平等・連帯という市民革命のスローガンの内、利潤追求の自由のみが神聖化されつづけられる一方、歪んだ政治空間の中で本来の連帯が失われている。既得権益・特権を叩くという名目で、公務員や教員、正規労働者までが攻撃対象とされ、研究者や科学者などの専門家も同じような攻撃対象となっている。

さらに、国民に対する情報操作によって、任命を拒否された6名は、「反政府的傾向の連中」というレッテルを貼られつつあり、それゆえの混沌とした政治状況となっている。このままでは、大学の自治も、メディアの在野性も、日弁連の独立性なども、危うくなってしまいかねない。

アベ政権って、いったい何だ? これだ。

(2020年8月8日)

本日(8月8日)、第59回日本民主法律家協会定時総会が開催された。
コロナ禍のさなか、リアルの出席者はできるだけ押さえて、大半はOn-lineでの参加。これをハイブリッド方式というそうだ。昨年までは考えられなかったこと。

人事では、右崎正博代表理事が勇退して、新理事長に新倉修氏が就任した。事務局長は、米倉洋子氏が留任。また、33年にわたって事務局員として協会の実務と「法と民主主義」編集を支えて来られたた林敦子さんが退任の挨拶をされた。

恒例の相磯まつ江記念「法と民主主義賞」の授賞式も、今年は第16回となった。
受賞者は2019年4月号の「特集・日韓関係をめぐる諸問題を検証する」の執筆者である下記の各氏。

◆日・朝・韓関係の戦後史と現状 … 和田春樹
◆日韓の戦後処理の全体像と問題点 … 山本晴太
◆中国人強制連行強制労働事件の解決事例と韓国徴用工問題解決への展望 … 森田太三
◆韓国徴用工裁判の経緯、判決の概要と今後の取り組みについて … 川上詩朗
◆徴用工判決と金景錫事件 … 梓澤和幸
◆日韓合意の破綻……「慰安婦」問題と日韓関係 … 大森典子
◆韓国の側から見た日韓関係の現状と提言 … 李 洪千

特別賞として、19年7月号特集『軍事力に頼らない安全保障とは』の中の論文
◆平成27年「安保法制」による集団的自衛権行使容認の違憲性 … 宮﨑礼壹
に授与された。

広渡清吾選考委員長から選考経過と受賞理由についての解説があり、受賞者の森田太三、宮﨑礼壹の両氏から、さすがに聞かせる挨拶があった。

なお、今年の春、相磯まつ江氏は、天寿を全うされて97歳の生涯を閉じられた。長女の芹沢真澄氏が、母の志と「法と民主主義」への思いを語って、「今後も、相磯まつ江記念賞の継続を」と訴えられた。

記念講演は、石田勇治氏(東京大学教授・歴史学)の「ナチドイツの経験に見る 緊急事態条項の危険性」である。時宜に適ったもので、要約が「法と民主主義」に掲載されることになるだろう。

総会アピールの全文を紹介しよう。やや長文だが、面白い。あらためて、アベ政権って、いったい何なんだ? という問に対する回答である。

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コロナ禍の今を見つめ、安倍政治に終止符を打ち、
平和で民主的で個人の尊厳が守られる政治に転換しよう!

2020年8月8日 日本民主法律家協会

(はじめに)新型コロナウィルス感染拡大は、安倍政権が市民の命と生活を守らない政権であることを白日の下にさらけ出した。営業停止要請や失職に対する補償はないに等しく、有効な感染防止策を打つことができない。しかも、感染者数が急増する中、巨費を投じて旅行を奨励する「Go-Toトラベルキャンペーン」を強行するなど、支離滅裂なパフォーマンスと明らかな税金の無駄遣いは目を覆わんばかりである。
コロナ禍の中、市民の政治的関心が高まる一方、政権への不信は深刻化している。5月に検察庁法改正法案が約900万の抗議のツイッターの力で廃案になったことは、その現れである。今こそ、安倍政権に代わる、平和で民主的で市民1人1人の尊厳が守られる、市民と野党の新しい政権が必要である。
9月にも解散総選挙が予想される今、2012年12月に発足して7年7か月になる第二次以後の安倍政権がどのような政権だったかを改めて振り返り、政権交代が必須であることを確認したい。

(権力の集中)安倍政権は、発足と同時に、国の根幹部分の人事を官邸が握る手法で権力の集中をはかった。日銀総裁、内閣法制局長官、NHK会長を交代させ、内閣人事局を設置して各省庁の幹部人事を官邸が一括して握った。恣意的な人事は司法にも及び、最高裁判事の任命において日弁連の推薦を初めて拒否した。ただし今年、検察庁法改正により検察幹部の人事も内閣が握る体制を作ろうとしたが、世論の強い反対の前に同法案は廃案となった。

(軍事大国化への暴走)安倍政権は、歴代自民党もなしえなかった方法で、日米軍事同盟の強化による軍事大国化への道を暴走した。政権発足後直ちに国家安全保障会議(日本版NSC)を設立し、米軍との情報共有のための特定秘密保護法を成立させ、2014年7月には集団的自衛権を容認する閣議決定を行い、2015年9月市民の強い反対の声を押し切って戦争法(安保法制)を強行採決した。その後は、戦争法による新任務を与えて戦闘状態にある南スーダンに自衛隊を派遣し、本年1月には「調査研究」名目で自衛隊を中東に派遣するなど、自衛隊の海外派遣を積み重ねた。
また、唯一の被爆国でありながら、2017年122か国の賛成で採択された核兵器禁止条約に反対した。
防衛費は、第二次安倍政権以降8年連続で増額され、トランプ大統領の言いなりにアメリカ製兵器を大量購入し、2020年度防衛予算は5兆3000億円を突破した。沖縄では県民の明確な意思を無視し、巨費を投じて辺野古基地建設を強行している。
中国や北朝鮮への敵視も異常である。第二次世界大戦中の日本のアジア侵略を反省する姿勢がないことから、韓国の徴用工判決を巡って日韓関係も最悪となっている。東アジアの平和を構築しようとする姿勢は皆無であり、かえって緊張関係を高めている。最近首相は、北朝鮮を対象とする敵基地攻撃能力論を言い出しており、「戦争をする国」への野望はとどまるところを知らない。

(9条改憲への執念)安倍政権は、発足と同時に「戦後レジームの転換」、「日本を取り戻す」と叫び、憲法尊重擁護義務を投げ捨てて憲法改正を政策の前面に掲げた。ただし、復古調の自民党改憲草案や憲法96条改正が世論の支持を得られないとわかるや、明文改憲の主張はいったんおさめ、集団的自衛権行使を盛り込んだ安保法制を成立させて9条の「実質改憲」を果たした。その上で、2017年5月、憲法9条1項2項を維持しつつ自衛隊を憲法に明記する改憲を2020年までに実現するとのメッセージを発し、これに、緊急事態条項、教育の充実、参議院の合区解消を加えた「改憲4項目」を打ち出した。しかし、改憲を望まない世論の力で、現在までの3年3か月、「安倍改憲」の議論は一歩も進ませていない。

(大企業と富裕層のためのアベノミクス)安倍政権は、デフレを克服し景気を浮揚させるとして、「アベノミクス」と称する経済政策を強行した。しかし、アベノミクスは、日銀に大量の株式や国債を引き受けさせて、株高と湯水のような公共投資を実現するものであり、大企業と富裕層には過去最高水準の利益をもたらしたが、労働者の所得は増えなかった。非正規雇用が増え、年収200万円以下のワーキングプアは1000万人を超え、社会保障は年々削減され、消費税は5%から8%に、8%から10%にと引き上げられ、格差と貧困は拡大する一方である。

(権力の私物化)安倍政権はまた、権力の私物化を大胆に行った。森友学園問題では、学校建設用地の売買において、安倍首相夫人の関与により9億円余の国有地を8億円値引きさせた。加計学園問題では、理事長と安倍首相が「腹心の友」であるところ、獣医学部新設について文科省の反対を安倍首相が抑え込んだ。7年連続で行われた首相主催の「桜を見る会」では、安倍後援会の会員を800名以上招待し、予算の3倍以上の国費を費やしていたことが明らかになった。

(相次ぐ閣僚の辞任)安倍政権の下では、10名もの閣僚が公職選挙法違反の不祥事や失言で辞任した。しかし、安倍首相が任命責任をとって辞任することはなく、森友、加計、「桜」など安倍首相こそが辞任すべき案件においても絶対に責任を認めることはなかった。

(公文書の隠蔽・改ざん)公文書の隠蔽・改ざんが多発したことも、安倍政権の大きな特徴である。
森友学園問題では、安倍首相夫人の関与が記載された近畿財務局の公文書が改ざんされ、これに関与させられた職員が自殺するという痛ましい事件が起きた。加計学園問題でも、官邸の関与を裏付ける記録が作成されていなかった。「桜を見る会」では、国会議員の質問通告の直後、招待者名簿が廃棄された。
これらの他、自衛隊の南スーダンの日報やイラク派兵時の日報の隠蔽、裁量労働制に関する労働時間のデータや「毎月勤労統計調査」のデータの偽装、コロナ専門家会議の議事録不作成など、安倍政権下における情報隠しや偽装は枚挙にいとまがない。2013年12月成立した特定秘密保護法は、内閣が勝手に秘密指定をすることによって市民の知る権利を奪うものであり、公文書隠蔽の法制化である。

(反憲的法案の採決強行)安倍政権は、2013年12月の特定秘密保護法、2015年9月の戦争法(安保法制)、2017年6月の共謀罪、2018年5月の働き方改革関連法案における高度プロフェッショナル制度の導入などの反憲法的な重大法案について、市民の強い反対の声に背を向け、数の力による採決強行を繰り返してきた。なかでも、過去3度廃案になった共謀罪法案は、「中間報告」の手法で参議院法務委員会の審議を省略し、参議院本会議で採決が強行された。まさに民主主義を踏みにじる暴挙であった。

以上をみるならば、安倍政権は日本国憲法に基づく国の形を変えてしまった、戦後最悪の政権であると断ぜざるを得ない。この最悪の政権に終止符を打ち、安倍政権が行ってきた悪政・失政を一つ一つ覆し、平和・人権・民主主義を守る市民のための政治を築くことは、まさに必須の課題である。
日本民主法律家協会は、そのために全力をあげる決意である。

「総点検・安倍政権のコロナ『対策』」を特集する「法と民主主義」7月号購読のお願い

(2020年7月31日)
「法と民主主義」7月号(№550)の特集は「総点検・安倍政権のコロナ『対策』」である。僭越ながら、私が総論に当たる一文を書いている。だからというわけだけでもないが、だからということもあって、ご購読いただくよう、お願い申しあげます。

以下、特集のリードをご紹介する。

突然に世界を襲った新型コロナウィルス (COVID-19)の蔓延は、それぞれの国と社会に大きな衝撃を与えた。各国とも、否応なく突きつけられたこの現実に全力で対応せざるをえない。同時に、この災厄は、克服しなければならない国家や社会の諸問題を露呈している。それぞれの国や社会の対応能力が試されてもいる。

本誌は、本年5月号に「新型コロナウィルス問題を考える」を特集し、続く6月号の特集を「新型コロナウィルス問題があぶり出したもの」とした。そして、今号は「総点検・安倍政権のコロナ『対策』」である。

唐突に生じた新型コロナ禍がいったいいかなる現象で、社会的にいかなる意味をもち、どのような法的・政治的問題を孕んでいるのか。その関心に応えた特集が、「問題を考える」という表題となった。次いで、感染症蔓延の現実が進行する中で、平常時には必ずしも十分に見えなかったこの社会の諸矛盾がさらけ出された。見えてきたものは、何よりも医療と福祉の脆弱性であり、経済至上主義がもたらした格差・貧困の実態であった。また、コロナ禍による経済活動の自粛は、社会的弱者への苛酷な皺寄せとなった。その実情報告が、「あぶり出したもの」である。

そして、今号の特集は、「総点検・安倍政権のコロナ『対策』」。コロナ禍が生みだした直接の問題点ではなく、安倍政権によってなされた「対策」を検証しようというもの。言うまでもなく、「対策」には括弧を付けねばならない。嘘とごまかしをもっぱらとし、政治と行政を私物化してきた安倍政権である。コロナ禍がこの社会の矛盾点をあぶり出したように、コロナ禍対策が改めてこの政権の体質をあぶり出している。

総点検は、対策の分野別に、[経済][財政][税制][労働][外国人][福祉][ジェンダー][政策手法]などを取りあげる。通底しているものは、一強体制のもと、国民からの信頼を失った政権の末期症状である。この期に及んでなお、相も変わらぬ新自由主義的本質と、オトモダチ偏重の体質である。

破綻寸前の政権による、コロナ対策不手際の実態を明らかにしつつ、憲法の理念から根底的に批判することが本号特集の趣旨である。

問題意識を示す[総論]は、「安倍政権のコロナ対策を素描する」との標題で、編集部の澤藤が執筆した。本来、国はこのような危急の事態に経済的弱者を救済するためにこそ存在する。そのあるべき姿と大きく乖離した安倍政権の在り方を批判するもの。また、この政権の否定的な諸特質がコロナ対策において顕著に露呈し、政権の末期症状を呈していることに言及されている。

[経済]の部門は、浜矩子氏インタビュー。コロナ対策で露わとなったアベノミクスの本質を語り、そもそも経済とは人の幸せのためにあると力説。「Go To トラベル」キャンペーンなどに典型的に見られる景気振興策の実態と問題点。監視社会論やベーシックインカムなどにも触れて切れ味がよい。提唱される「人間の経済学」に耳を傾けたい。
[財政]は熊澤道夫氏に解説願った。コロナ対策の財政出動は、時期に遅れ、生存権保障、事業継続の必要額に届かず、金融では内部留保豊かな大企業ほど有利。そして、一〇兆円の予備費計上が憲法上の財政民主主義を侵しているという。
[税制]は、全ての対策費用の財源に関わる論点。菅隆徳氏の論稿は、「コロナ税」や消費税増税を許さず、財源は大企業、大資産家に応分の負担をもとめ、法人税に所得税並みの超過累進課税を提言している。
[労働問題]は、実務家諸氏には避けて通れない。棗一郎氏の論稿は、コロナショック下の労働者の雇用と労働条件の維持に、安倍政権の政策は適切に対応しているかに焦点を当てて、網羅的に論点が提示されている。新しい事態に生じた労働問題と政権の対応も論じられている。
[福祉]政策は、今がその真価を問われるとき。藤田孝典氏は「コロナ対策とあるべき福祉」では、生存のための権利を保障するための三一の緊急提案が掲載されている。その中には、ジェンダーや外国人政策が詳細である。
[ジェンダー]の問題を明珍美紀氏が指摘している。自粛要請の中でDV被害が深刻化している。にもかかわらず、暴力に対する処罰は生ぬるく、窮地に陥る人々への支援は不十分。それが、「女性活躍を掲げる」この国の実態だという。
[政策手法]は栗原猛氏。まず、安倍政治の通弊を8項目にまとめる。それが、コロナ対策にどう現れているかを論じる。「財政民主主義と説明責任」「『中抜き』『孫抜き』と利権構造」 「経産省、電通、パソナをめぐる ブラックホール」「トップダウン手法と側近政治」と肯かざるをえない。

栗原氏論稿の末尾が、「今一番大事なことは国民一人一人が、不真面目でいい加減な政治に怒りを発することではないか。」と結ばれている。これが、特集の結論でもあろう。
(「法と民主主義」編集委員会)

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「法と民主主義」7月号

特集●総点検・安倍政権のコロナ「対策」

◆特集にあたって … 「法と民主主義」編集委員会
◆安倍政権の新型コロナ対策素描 … 澤藤統一郎
◆インタビュー●コロナ対策で露呈、覆い隠せないタチの悪さ
世のため、人のためを考えないアホノミクス
あらためて「人間の経済学」を … 浜 矩子
◆新型コロナウイルス感染症の財政政策 … 熊澤通夫
◆コロナ禍で問われる税収の空洞化 … 菅 隆徳
◆新型コロナショック下における労働問題に安倍政権の政策は対応できているか
── 労働者の雇用・労働条件は守られているか? … 棗 一郎
◆コロナ禍と外国人労働者を巡る課題と現状 … 板倉由実
◆コロナ対策とあるべき福祉 … 藤田孝典
◆加害者の処罰と支援体制の充実を──国際社会に後れを取る日本 … 明珍美紀
◆グローバル主義の限界と利益誘導政治 … 栗原 猛

◆連続企画●憲法9条実現のために〈31〉
イージス・アショア導入断念と日米の防衛戦略 … 千坂 純
◆司法をめぐる動き〈58〉
・解釈すれども判断せず
──憲法53条訴訟・那覇地裁判決が投げかけたもの … 志田陽子
・5/6月の動き … 司法制度委員会

◆メディアウオッチ2020●《コロナ危機とメディア》
いま改めて問われるジャーナリズム
メディア利用で知事選勝利、 宣伝効果求めコロナ政策迷走 … 丸山重威
◆あなたとランチを〈番外編〉
美魔女は法民に乗ってⅢ … 林 敦子さんインタビュー×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈No.26〉
「憲法改正国民投票」を訴える安倍首相、橋下徹氏、吉村洋文氏 … 飯島滋明
◆時評●辺野古から考える「法の支配」の現在 … 岡田正則
◆ひろば●追悼 鬼追明夫先生
あの「記録映画・日独裁判官物語」は
今なお、司法のあり方を問うています … 高橋利明

『法と民主主義』6月号(特集「新型コロナウイルス問題があぶり出したもの」)のお勧め

(2020年7月3日)
日本民主法律家協会発行の『法と民主主義』6月号(6月29日発行・第549号)のご紹介とご注文のお願い。
5月号に引き続いての新型コロナ問題特集となっている。先月号の特集が「新型コロナウイルス問題を考える」だったが、今月号は「新型コロナウイルス問題があぶり出したもの」。今までは見えなかった、あるいは目につきにくかった諸問題が、このコロナ禍の中であぶり出されている。まずは、目を背けずに見つめなければならない。

巻頭論文が金子勝氏の「新型コロナウイルス対策はなぜ失敗するのか」。筆者は、住専破綻に端を発した金融危機や福島第1原発事故に典型的に見られるように、日本社会はリスク対応能力を欠いた無責任社会であるとし、今回のコロナ危機にも、適切な対応ができていないという。日本のコロナウィルス対応を失敗と断定して、クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス号」事故以来の政府の対応を分析する。その上で、「危機管理の鉄則を踏まえた抜本的なコロナ対策こそが、最大の経済政策になる」という。

次いで、コロナ感染の拡大によってあぶり出された医療の脆弱性が、医療者からの2本の論文によって明らかにされる。これまで、政策的に医療は質も規模も脆弱化させられてきたのだ。

子どもの発達成長権から見た教育も脆弱なのだ。政治的思惑から学校が全国一斉の休校となって、子どもの環境における経済格差が教育格差となっている実態が語られている。

コロナ禍の中では、公文書の作成・保管もおろそかになっている。専門家会議の議事録はいまだ作成されていない。

そして、ドイツ・フランス・イタリアからの報告である。各国とも、真摯な議論をしていることがよく分かる。

さらに、各界各現場から「『新型コロナ問題』から見えてきたもの」の寸評をいただいた。この深刻な事態だからこそ見えてきた様々な問題、とりわけ、この「危機」から生じた社会的弱者への深刻な被害のしわ寄せは看過しがたい。敢えて、お一人の原稿字数を800字に抑えての凝縮したコメント。読者の関心に応える貴重なものとなっている。

なお、「あなたとランチを〈番外編〉」は、「美魔女は法民に乗ってⅡ」と題して、33年間「法と民主主義」の編集に携わってきた林敦子さんのインタビュー。この間、1号の欠落もなく「法と民主主義」を作り続けてきたことが、どれほどたいへんなものだったのか、その片鱗が語られている。

そのほか、特別報告が2本。「黒川弘務元東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案問題 ─ 問題の本質と廃案までの経過」「法律家662名が安倍首相を刑事告発 ― 政治資金規正法違反・公職選挙法違反」

以上、読み応えは十分と思う。

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特集●新型コロナウイルス問題があぶり出したもの

◆特集にあたって ……… 編集委員会・丸山重威
■日本はなぜ間違ったのか
◆新型コロナウイルス対策はなぜ失敗するのか ……… 金子 勝
◆医療政策の大転換を─ショックドクトリンの向こうへ─ ……… 吉中丈志
◆新型コロナ危機、なぜ日本の医療は、脆弱な実態をさらけ出したのか ……… 本田 宏

■基本的人権とコロナ緊急事態── 欧州各国に学ぶ
◆ドイツにおける新型コロナウイルス感染症への対応 ……… 奥田喜道
◆フランスの緊急事態における権力の統制 ……… 植野妙実子
◆期間限定と比例性の原則── イタリアからの報告 ……… 高橋利安

◆緊急事態時における公文書は誰のものか? ……… 榎澤幸広
◆新型コロナウイルス感染症の拡大と子どもの権利 ……… 世取山洋介
◆「新型コロナ問題」から見えてきたもの
前川喜平/鈴木敏夫/大久保賢一/原 和良/笹渡義夫/二平 章/伊賀興一/青龍美和子/大竹 進/菊地雅彦/長谷川京子/笹本 潤/長谷川弥生/原いこい/浪本勝年/金 竜介/岩崎詩都香

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◆連続企画●憲法9条実現のために〈30〉
新型コロナと在日米軍、日米地位協定 ……… 布施祐仁
◆特別報告
黒川弘務元東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案問題
── 問題の本質と廃案までの経過 ……… 大江京子
◆特別報告
法律家662名が安倍首相を刑事告発
──政治資金規正法違反・公職選挙法違反 ……… 米倉洋子
◆メディアウオッチ2020●《コロナ危機・余聞》
逃走する政治、問われるメディア、そして電通
国会閉幕、「火事場」に問題は錯綜 ……… 丸山重威
◆あなたとランチを〈番外編〉
美魔女は法民に乗ってⅡ ……… 林 敦子さんインタビュー×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈No.25〉
コロナ禍の最中にも憲法審査会開催に固執する自民党・公明党・日本維新の会 ……飯島滋明
◆書評●道理の通る国をめざしての刑事弁護六〇年余
── 石川元也著『創意─事実と道理に即して 刑事弁護六〇年余─』(日本評論社) ……… 加藤文也
◆インフォメーション
◆時評●子育て・教育の行方~暴言・暴力の威力(弊害) ……… 村松敦子
◆ひろば●マイナンバー利用の失態と懲りない策動 ……… 奥津年弘

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