澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

核なき世界を求めて第五福竜丸は今なお航海中ー展示館開館40周年

昨日(5月29日)、「第五福竜丸展示館開館40周年記念レセプション」が、賑々しく行われた。主催は公益財団法人第五福竜丸平和協会、参加者は核廃絶運動に真摯に関わってこられた方々。会場はクラシック然たる神田の学士会館であった。

都立第五福竜丸展示館は1976年6月10日に開館している。その都立第五福竜丸展示館の管理を担っているのが、第五福竜丸平和協会。協会の活動に関しては、ぜひとも下記のサイトをご覧いただきたい。私は、浦野広明さんとともに、監事を務めている。
  http://d5f.org/kyokai.html

協会の定款第3条は、「この法人は、昭和29年3月1日ビキニ水爆実験の被災船第五福竜丸を記念し、原水爆被害の諸資料を収集・保管・展示することにより、都民をはじめ広く国民の核兵器禁止・平和思想の育成に寄与することを目的とする。」と謳っている。船体の保存は意義ある重要なものだが、協会はこれを自己目的化しているわけではない。目的は飽くまで「核兵器禁止・平和思想の育成」なのだ。「育成」という用語が気になる方は、「涵養」「普及」「啓発」あるいは「訴え」「呼びかけ」とでも、読み替えていただきたい。

核爆弾が実戦においてその残虐な威力を示したのは1945年8月の広島と長崎だった。広島投下の原爆はウラン型。長崎のものはプルトニウム型。その7年後、52年にアメリカは南太平洋のエニウェトク環礁で初の水爆実験を行う。そして、1954年3月から5月にかけてアメリカは一連の最大級水爆実験をビキニ環礁で行う。キャッスル作戦と名付けた6回の実験の最初のものが、3月1日の15メガトン水爆「ブラボー」だった。ブラボーの爆発力は、広島に落とされた原爆の1000倍である。なんという脅威、そしてなんというふざけた命名。

たまたま近海で操業していてたマグロ漁船・第五福竜丸は、爆発地点から160キロの距離で被災することになる。未明、太陽が西に昇ったと思わせる閃光の後に、乗組員23名が珊瑚礁の死の灰を浴びることになった。これが「3・1ビキニ事件」。「急性放射線症」で全員が入院した後、最年長の通信士久保山愛吉さんが半年後に逝去される。その命日は9月23日、「久保山忌」である。

久保山さんの遺言「原水爆の被害者はわたしをさいごにしてほしい」という言葉を刻した「久保山愛吉碑」が、展示館の裏庭に建立されている。その書体は、三宅泰雄(協会初代会長)の筆になるもの。

こうして、原爆だけでなく、水爆の犠牲者としても日本人の名が歴史にきざまれた。広島・長崎だけでなく、第五福竜丸も核による悲惨な歴史の告発者であり証人なのだ。

昨日のレセプションでは「都立第五福竜丸展示館 40年のあゆみ」と表題した64頁のパンフレットが配布された。同パンフレットには付録「世界の核爆発実験年表」がついている。これによると、これまでの「爆発をともなう」核実験数は2061回。それ以外に「爆発をともなわな」核実験として、「アメリカ39回、ロシア10数回」があるという。

そして、まだ世界には、アメリカ(7200個)」、ロシア(7500個)をはじめとして、イギリス・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮が、核弾頭をもっている。核拡散の危険も払拭できない。

現実に被爆した、歴史の証人としての第五福竜丸は、多くのことを語っている。また、多くの人が、この船体を囲んで、多くのことを語りあい、語り継いでいる。まさしく、核なき世界を目指して「第五福竜丸は航海中」(被爆60年記念記録集の表題)なのである。

ところで、この「都立展示館」の開設は、廃船とされ捨てられていた第五福竜丸保存を求める市民運動を当時の都政が受け止めた結果である。当時の美濃部革新都政の姿勢を表明する「歴史的な」一文をご紹介しておきたい。展示館開館の2年前、第五福竜丸保存を目指して第五福竜丸保存協会が発足したときの「平和協会ニュース・第1号」への寄稿である。

憲法や平和運動に敵意を剥き出しにした石原都政や、みっともなさをさらけ出した舛添都政との恐るべき絶対格差に慨嘆せざるを得ない。われわれは再び、美濃部時代の真っ当な都政を手にすることがあるだろうか。

「平和協会に期待する」 東京都知事 美濃部亮吉
 第五福竜丸の保存を通して、平和と人道のためのたたかいを根気よく進めてこられたみなさんが、さらにその活動を拡大発展させるため、去年の暮、新たに財団法人第五福竜丸保存平和協会を設立されました。
 当然のこととはいえ、この運動は何一つ権力や財力に依存しない純粋な市民の善意と勇気だけでおし進められてきたものです。また、居丈高な絶叫や人目を驚かす街頭デモなどでなく、静かな情熱と知的な訴えによってささえられてきたものです。そういうみなさんの活動が、とかく先細りしがちなこの種の運動の中で、多くの困難をのり越えて着実に歩み続けてきたばかりか、今回の設立によっていっそう豊かな展望を持つ新たな段階に進まれたことに心から敬服し、その未来に熱い祝福をお送りいたします。
 いま、狂ったようなインフレの昂進によって、市民の生活は日々深い危機にさらされています。この混乱と不安をもたらしたものが、市民の立場をかえりみず、もっぱら資本の論理と利益に奉仕してきた高度経済成長政策であることは言うまでもありません。かつて私たちをあの悲惨な戦争にまきこんだものも、当時の日本の特殊な条件の下で進められた資本の論理と利益ではなかったでしょうか。私たちは、そのような根が生き続けていることに警戒を怠ってはなりません。
 それにしても、今日、内外の条件はそのころと一変し、戦争を喰いとめ平和を進めようとする各国市民の力は前例のない規模に達しています。みなさんの活動は、その責重な一環をなすものです。この力をますます強めなくてはなりません。第五福竜丸の小さな船体は、人々の心を戦争への怒りと平和への決意に駆りたてる大きなシンボルです。それは、平和をそこない、人間をしいたげるすべてのものに対し、私たちが何をしなければならないかを生々しく語りかけています。私は、みなさんの運動に心からの拍手と連帯をお送りし、協会のご発展に期待いたします。

なお、都立第五福竜丸展示館の開館時間は、9:30-16:00。入場無料である。
協会支援の下記賛助会員の制度がある。会員としてご支援いただけたら幸甚です。
1.賛助会員
第五福竜丸だよりはじめイベントのご案内などを差し上げます。(年会費:個人5千円・団体1万円)
2.ニュース(福竜丸だより)会員
会員様のご自宅へ「福竜丸だより」をお送りいたしております。(年会費:個人2千円 )

協会への連絡方法は下記のとおり。
東京都江東区夢の島3-2 夢の島公園内
TEL:03-3521-8494 FAX:03-3521-2900
アクセスは、http://d5f.org/access.html
(2016年5月30日)

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