澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「アメリカ・ファースト」ではなく、「トランプ・ファースト」「金儲け・ファースト」だろう。

トランプの長女がイバンカ。そのイバンカが手がけるファッションのブランド名が、「イバンカ・トランプ」だという。「イバンカ・トランプ」は、人気が低迷して売れ行きが悪くなった。大手百貨店が売り上げ3割減の不振を理由に「イバンカ・トランプ」の販売中止を決めたという。売れ行き不振がトランプの不人気のゆえか、商品の質の悪さか、それはどうでもよい。大統領の名を冠した商品が、売れても売れなくても、政治や行政と何の関係もない純粋に私的な領域の問題だ。

ところが、まず、トランプ自身が大手デパートに対して、ツイッターで激怒した。その行為が「公私混同だ」と批判されてのテレビ取材で、大統領顧問が「イバンカ・トランプ」の宣伝をしたというから、これは事件だ。トランプ一族とその取り巻き連中の薄汚さが芬々たる腐臭を放っている。

事件は、次のようであったらしい。2月9日、コンウェー大統領顧問がテレビ局フォックス・ニュースに出演した際に、「イバンカ・トランプ」の商品を買うよう国民に呼びかけたのだ。「とてもすてきで、私も幾つか持っている」「宣伝するわ」「皆さん、きょう、買いに行って!」と訴えたと報道されている。公私混同ここにきわまれり、ではないか。

コンウェーといえば、「オルタナティブ・ファクト」(「もう一つの事実」、あるいは「都合のよい真実」)発言で有名になった人。彼女にとっては、真実とは取り替えの利くもので、けっしてひとつのものではない。「とてもすてきで、私も幾つか持っている」もオルタナティブ・ファクトの類だろう。いや、彼女の発言の全てが真実とは思えない。大統領府の発言全体の信憑性が怪しい。

「連邦政府の倫理規定は、政府職員が立場を利用して商品を宣伝することを禁じている」と報道されているが、規定の有る無しにかかわらず当たり前のことだ。コンウェーの行為を倫理規定違反として公的機関に申告する動きは速かった。テレビ番組で発言を問題視した下院監視・政府改革委員会のチェイフェッツ委員長(共和党)が米政府倫理局に調査を申し立てた。

米政府倫理局は13日付で結論を出した。実に素早い。コンウェーが「公的な立場でテレビ番組に出演し、イバンカの製品を宣伝する機会として利用した」点を取り上げ、「公的立場の悪用を禁じる規定に明確に反する」と断定。ホワイトハウスに対し、コンウェーの発言を調査し、懲戒処分を検討するよう勧告した。

ウォルター・シャウブ局長名のこの勧告は、「コンウェー氏が行動規範を違反したと強く疑う理由があり、懲戒処分が必要」と指摘。そのうえで、トランプ政権に調査の実施を求めるとともに、「2週間以内に調査結果を提示し、懲戒処分を行ったら詳細を説明するよう」求める、具体的なものである。

この勧告は、2月14日公表され、15日には世界を駆け巡った。さて、ホワイトハウスはどうするか、注目しなければならない。トランプ政権の独善性の程度がいかほどのものか、また、自省や反省による自浄能力がいかほどのものか、それが問われている。

いくつかの感想がある。
一つは、トランプ一族の金儲けへの執念である。何もかも、金儲けのためなのだ。「アメリカ・ファースト」は嘘っぱち。「トランプ・ファースト」であり、「金儲け・ファースト」なのだ。政治も行政も選挙も、彼にとっては全てが金儲けの手段なのだ。

二つ目。そのような貪欲な金の亡者の大富豪を、失業や貧困に悩む大衆が支持し、大統領職に就けたというパラドックスである。トランプの政策は、けっして搾取や収奪、格差や貧困をなくするものではない。大企業減税と規制緩和の徹底した企業優遇策であり、長目では明らかに反労働者政策である。オバマケア撤回に見られる反福祉政策でもある。奴隷が、奴隷主を称賛するがごとき、奇妙な現象なのだ。

三つ目。それでも、政府倫理局の審理と結論の素早さには驚かざるをえない。迅速であるだけでなく、萎縮のない真っ当な結論も称賛に値する。「古い」アメリカのリベラルな秩序が、トランプ流の乱暴な暴走に歯止めを掛けているのだ。

共和党の委員長が共和党のトランプ政権の非に申立をしているのも立派ではないか。わが国で、自民党の議員がアベ内閣の非を申し立てることができるだろうか。アベの妻が名誉校長を務める小学校の敷地に、ただ同然で国有地を払い下げるなどの醜聞に、自民党員が疑義を糺すことができるだろうか。

わが国のチェック機関もこのようであって欲しい。たとえば、BPO。TOKYO MX「ニュース女子」番組(DHCシアター作成)についての辛淑玉さんの人権侵害申立に、迅速に曖昧さを残さない結論を出していただきたい。こんなに露骨なデマとヘイトにまみれた地上波放送は前例がないだろう。BPOの存在と役割が問われている。いや、BPOの存在意義をアピールする絶好の機会ではないか。
(2017年2月15日)

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