澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

NHK文書開示等請求事件・第5回期日 ー 法廷でのパワポによる解説。

(2022年10月26日)
東京地裁令和3年(ワ)第15257・24143号NHK文書開示等請求事件
原告ら代理人弁護士澤藤大河

請求の縮減

これまでの開示請求文書
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料

(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料

縮減後の請求の趣旨
 被告日本放送協会は原告らに対し、別紙開示請求文書目録記載の各文書を、いずれも正確に複写(電磁的記録については複製)して交付する方法で開示せよ

開示請求文書目録
1.放送法41条及び経営委員会議事運営規則第5条に基づいて作成された、下記 各経営委員会議事録(「上田良一会長」に対する厳重注意に関する議事における各発言者ならびに発言内容が明記されているもの)
?「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
?「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
?「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)

2.下記各経営委員会議事録作成のために、各議事内容を録音または録画した電磁的記録。
?「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
?「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
?「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)

請求の趣旨の縮減の理由
 請求の趣旨第1項の被告NHKに対する開示請求文書の範囲の減縮であって、第2項および3項については変更はない。
 本件提訴後、被告NHKは、請求の趣旨第1項に特定した文書の多くを原告らに開示し、原告らはこれを受領した。残る未開示文書についてのみ、判決での開示を求める趣旨を明確にするため、本申立をする。

原告第7準備書面の概要

債権侵害の不法行為
?被侵害利益
?加害行為
?故意過失
?損害
?(因果関係)

被侵害利益
? 原告らの「権利または法律上保護される利益」が被告森下によって侵害された
? 侵害されたのは、「各原告の被告NHKに対する本件各文書開示請求権」であり、憲法上の知る権利を実質的な内容とする重要な権利

加害行為について
 被告森下は、被告NHKに明示的に指示する態様で、各原告がNHKに対して有する本件各文書開示請求権の行使を妨害した。

加害行為にはあたらないが・・・
 被告森下は、放送法32条2項に違反し「番組編成権」を蹂躙した。また、放送法41条に違反し、経営委員会議事録も作成しない。被告森下の明らかな違法行為は、原告との関係では、被告森下の加害行為の動機や態様の悪質性を証明する間接事実である。これらの悪質性は、原告の慰謝料額を増大させる事由である。

故意・過失
 権利侵害行為は、被告森下の明示的な指示により行われた故意不法行為である。
少なくとも、被告森下において遵守すべき放送法やその下位規則に敢えて違反していることからも、重過失あることは明らかである。

損害
原告らの損害は二つ。
1.精神的損害
 原告らはいずれも、巨大公共放送機関であるNHKの運営のあり方を、我が国の民主主義の消長に関わる問題として重大な関心を寄せてきた。本件経営委員会議事録は、NHKの存在意義にも関わる重要文書。
 一万円を下回ることはない。

2.弁護士費用
 原告らは提訴を余儀なくされ、訴訟追行のための弁護士費用を負担した。その額が一万円を下回ることはない。

被告森下の加害行為
? 被告NHKに対して、その影響力を行使して、作成済みである本件議事録およびその録音データを開示させないように働きかけた。
? 本件各文書は、被告森下において強く隠蔽を望む内容を含んでいる
? 放送法第3条で保証されている放送の自由を侵害した。
? 同法32条2項で明示的に禁止されているにもかかわらず、経営委員として、個別の放送番組の編集について、介入した。

被告森下の加害行為の立証に関して
?被告森下の具体的な行為については、完全に被告の領域での事実なので、
原告には知る術がない
?だからこそ、被告森下の尋問が必要である。

文書の存在について
? 原告の開示請求対象文書は、3回の経営委員会議事録とその録音データに絞られた。
? 仮にも国会から選任された被告森下が、放送法に明確に違反して議事録を作らないなどあり得ないこと。
? 録音データについても、消去した日も、消去した人も、具体的な作業内容も示すことができない→当然存在するはず。

しかし、仮に議事録もなく、データも消去されていた場合
? 原告は、議事録もデータも存在しているが、開示されていないと考えている。
? 仮に、証拠調べの結果、議事録が作成されておらず、データも消去されていた可能性が高い場合には、新たな不法行為を主張する予定である。
? その場合、「被告森下において、議事録を作成しないことで、各原告の文書開示請求権を妨害したこと」「被告森下が録音データを削除して各原告の文書開示請求権を妨害したこと」を不法行為として追加する。

文書等が存在しない場合の予定予備的主張
? 「被告森下において、議事録を作成しないことで、各原告の文書開示請求権を侵害したこと」
? 「被告森下が録音データを削除して、各原告の文書開示請求権を妨害したこと」
? 被告森下は、議事録をつくらないことで、原告らの開示請求権を有名無実なものとしたのである。
? これらの不法行為の存在は、被告森下において先行自白がなされている

《NHK文書開示請求訴訟》明後日・10月26日14時の法廷傍聴を ー 森下俊三経営委員長の不法行為責任を追及

(2022年10月24日)
 NHKと安倍晋三任命の森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と、最高意思決定機関経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第5回口頭弁論が、明後日に以下の日程で開かれます。
  日時 10月26日(水) 午後2時
  法廷 東京地裁415号

 また、閉廷後下記の報告集会を開催いたします。こちらにも、ご参加下さい。
  時刻 同日 15時30分?
  会場 参議院議員会館 B102会議室

 今回の法廷では、原告主張の第7準備書面の要約を、パワーポイントを使って、弁護士澤藤大河が解説いたします。テーマは、被告森下俊三の不法行為責任にしぼった陳述です。ぜひ傍聴をお願いいたします。

 なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に415号法廷に入廷してください。コロナ対策としての空席確保の措置はありませんので、傍聴席の座席数は十分と思われます。
 また、閉廷後の報告集会では、関係者からNHKにまつわる詳細な報告を予定しています。ぜひ、こちらにもご参加下さい。

 この訴訟は、原告114名の情報公開請求訴訟です。もっとも、行政文書の公開を求める訴訟ではなく、被告NHKに対して、その最高意思決定機関である経営委員会議事録の開示を求める訴訟です。いい加減に誤魔化した議事録ではなく、手抜きのない完全な議事録と、その文字起こしの元になった録音・録画の生データを開示せよという訴訟になっています。

 問題の議事録は、経営委員会が当時の上田良一NHK会長に「厳重注意」を言い渡したことや、その前後の事情が明記されているものです。なにゆえの「厳重注意」だったのか。経営委員会が、NHKの報道番組に介入して、良心的な番組の放送を妨害する意図をもっての「会長厳重注意」だったのです。とうてい、看過できることではありません。

 NHKの良心的看板番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政の幹部がこの番組をけしからんとして、NHKに圧力をかけてきました。経営委員会は、この外部の圧力をはね除けて、番組制作の自主性を護らなければならない立場であるにかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかしました。当時経営委員会委員長代行だった森下俊三が先頭に立って、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える意図をもっての『会長厳重注意』を強行したのです。明らかに放送の公正を歪める、放送法違反の行為です。

 森下俊三はその後経営委員会委員長となり、さらに再選されて今なお、経営委員会委員長におさまっています。こんな経営委員を選任したのは、あんな内閣総理大臣、安倍晋三でした。NHK経営委員会人事は、安倍政権の負のレガシーです。大きな責任が清算されずに放置されたままです。正常な事態を取り戻さねばなりません。

 本件文書開示請求訴訟はその第一歩としての基礎作業です。これまで出てこなかった資料が、提訴によってある程度は開示されました。しかし、完全なものではありません。

 本件の提訴後原告に開示された「議事録のようなもの」(部内では「粗起こしの議事録草案」と言われる)は、議事録ではありません。「のようなもの」ではなく正式の議事録を開示せよ、というのが原告の要求です。仮にもし被告森下が議事録を作成もせず、公表もしないとなれば、明白で重大な法律違反です。当然に内閣の任命責任が問われなければなりません。

 そして、もう一つの開示請求対象は、「議事録のようなもの」の原資料である録音データです。「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はありません。そこで、録音記録を開示せよと要求したら、何と、「消去しました」というのです。バックアップもとっていないという。どこかで聞いたような話。さすがに、安倍が任命した経営委員長の弁明。

 訴訟までされながら、なぜNHKは、原告たちに開示を求められた議事録やデータを出さないのか、あるいは出せないのか。NHK執行部に議事録を出せない理由はありません。むしろ、経営委員から不当な「厳重注意」の処分を受けた会長側とすれば、きちんと議事録を提出してことの曲直を糺して欲しいという希望があるに違いないのです。

 しかし、経営委員会側は、出したくないのです。番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないのです。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃し、さらにはその証拠を残したくないとして、正式の議事録の開示を妨害しているのです。これを任命した総理の責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければなりません。

 原告たちは、被告NHKに対する文書開示請求権を持っています。その請求権の行使を妨害しているのが、経営委員会委員長の森下俊三なのです。これが、不法行為に当たるとして、損害賠償を請求しているのです。

 NHKという組織では、経営委員会が最高権力者です。NHKの会長を選任することも、クビを切ることもできます。何といっても、その議事録には経営委員の放送法違反が書き込まれているという微妙な問題です。NHKが独自の判断で経営委員会議事録の開示も非開示もできるはずはありません。お伺いを立てて、経営委員会のご意向次第。

 以上のスジを約10分のパワポにまとめて、ご説明いたします。本来、権力を監視することを本領とするのがジャーナリズムです。権力から独立していなければならない巨大メディアが、こんなにも権力にズブズブなのです。そして、自浄能力がない。NHKという巨大メディアの政治権力への従属性という問題の本質がよく見える法廷となるはずです。

《NHK文書開示請求訴訟》次回10月26日法廷は、森下俊三の不法行為がテーマ。

(2022年10月17日)

NHK森下俊三経営委員長の不法行為責任を問う
《NHK文書開示請求訴訟》10月26日(水)14時・415号法廷。

 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第5回口頭弁論が、以下の日程で開かれます。
  日時 10月26日(水) 午後2時
  法廷 東京地裁415号

 今回の法廷では、原告主張の第7準備書面の要約を、パワーポイントを使って、弁護士澤藤大河が解説いたします。テーマは、被告森下俊三の不法行為責任にしぼった陳述です。ぜひ傍聴をお願いいたします。

 なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に415号法廷に入廷してください。コロナ対策としての空席確保の措置はありませんので、傍聴席の座席数は十分だと思われます。
 また、閉廷後報告集会を開催いたします。時刻・場所は未定ですが、決まり次第お知らせいたします。こちらにも、ご参加下さい。

 この訴訟は、原告114名の情報公開請求訴訟です。もっとも、行政文書の公開を求める訴訟ではなく、NHKに対して、その最高意思決定機関である経営委員会議事録の開示を求める訴訟です。いい加減に誤魔化した議事録ではなく、手抜きのない完全な議事録と、その文字起こしの元になった録音・録画の生データを開示せよという訴訟になっています。

 問題の議事録は、経営委員会が当時の上田良一会長に「厳重注意」を言い渡したこと、そしてその前後の事情が明記されているものです。なにゆえの「厳重注意」だったか。経営委員会が、NHKの報道番組に介入して、放送を妨害する意図をもっての「会長厳重注意」だったのです。

 NHKの良心的看板番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政がこの番組をけしからんとして、NHKに圧力をかけてきました。経営委員会は、この外部の圧力から番組制作を護らなければならない立場であるにかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかしました。当時経営委員会委員長代行だった森下俊三が先頭に立って、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える『会長厳重注意』を強行したのです。放送の公正を歪める、放送法違反の行為です。

 森下俊三はその後経営委員会委員長となり、さらに再選されて今なお、経営委員会委員長におさまっています。こんな経営委員を選任したのは、あんな内閣総理大臣、安倍晋三でした。大きな責任があります。

 訴訟までされながら、なぜNHKは、原告たちに開示を求められた議事録やデータを出さないのか、あるいは出せないのか。NHK執行部に議事録を出せない理由はありません。むしろ、経営委員から不当な「厳重注意」の処分を受けた会長側とすれば、きちんと議事録を提出してことの曲直を糺して欲しいという希望があるに違いないのです。

 原告たちは、被告NHKに対する文書開示請求権を持っている。その請求権の履行を妨害しているのは、経営委員会委員長の森下俊三なのです。これを、不法行為として、損害賠償を請求しているのです。

 何しろ、NHKという組織では、経営委員会が最高権力者です。NHKの会長を選任することも、クビを切ることもできます。NHKが独自の判断で、経営委員会議事録の開示も非開示もできるはずはありません。お伺いを立てて、経営委員会のご意向次第。何しろ、議事録には経営委員会の放送法違反が書き込まれているのです。

 以上のスジを約10分のパワポにまとめて、ご説明いたします。本来、権力を監視することを本領とするのがジャーナリズムです。権力から独立していなければならない巨大メディアが、こんなにも権力にズブズブなのです。NHKという巨大メディアの政治権力への従属性という問題の本質がよく見える法廷となるはずです。

森下俊三の責任を問う《NHK文書開示請求訴訟》。次回には、森下の尋問採用決定も。

(2022年9月6日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。本日午前11時、その第4回口頭弁論が、東京地裁103号法廷で開かれた。

 前回の第3回口頭弁論以後、原告は被告森下に対して、2回にわたる求釈明を重ねた。本訴訟提起直後に被告NHKから原告に開示された「議事録のようなもの」の原記録である録音データの消去の真実性をめぐるものである。

 被告森下はまことに不誠実な対応に終始し、データの消去についてもバックアップの有無に関しても、納得しうる説明をしない。そこで、原告としては、本日提出の第6準備書面において、これ以上の求釈明を繰り返すことをやめ、被告森下俊三本人とデータ消去の担当職員の尋問によって、その存在を立証する方針を明確にした。

 今回の法廷では、この点の経過を、下記のとおりのパワーポイントを使って、原告代理人(澤藤大河)が説明した。傍聴者に分かりやすいものであったと思う。

 また、原告の一人浪本勝年さん(元立正大学教授・教育学)が意見を陳述した。NHKに対する国民の期待を語り、その期待を大きくはずれたNHKのあり方を慨嘆して、被告らには本訴訟においての誠実な対応をもとめ、裁判所には法に基づいた納得しうる審理と判決を求めた。

 裁判所は、両者の主張によく目を通しての無理のない訴訟指揮を行っているという印象を受けた。次回までに提出すべき、各当事者の「宿題」が明らかにされ、次回期日には人証の採用決定が見込まれる進行となった。

 次回・第5回口頭弁論期日の予定は、以下ののとおり。
  日時 10月26日(水) 午後2時
  法廷 東京地裁415号

 この訴訟で開示請求の対象になっている最重要文書は、2018年10月23日経営委員会議事録の未公表部分。下記のパワポで「未開示文書?」と表示されている文書。公表されているこの日の経営委員会議事録には、経営委員会が上田良一NHK会長に『厳重注意』を言い渡した経緯の記載が欠落している。これを開示せよという請求が第1の問題。

 NHKの良心番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政が、この番組をけしからんとしてNHKに圧力をかけてきた。経営委員会は、この外部の圧力から番組制作を護らなければならない立場であるにもかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかした。

 当時経営委員会委員長代行だった森下俊三らは、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える『会長厳重注意』を強行した。公共放送であるNHKの適正な運営を確保するための経営委員会が暴走して、番組制作現場とNHK執行部を攻撃したのだ。NHKの最高機関が、NHKの放送の自由を侵害している。

 放送法41条は、経営委員会委員長に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けている。しかし、公表されている議事録に、『会長厳重注意』の部分は抜け落ちている。しかも、一定の場合、議事録公表義務免除の規定はあっても、議事録作成義務の免除の余地はない。だから、「公表されてはいないが、法の規定によって存在するはずの議事録を開示せよ」というのが原告の請求。

 もっとも、本件の提訴後原告には「議事録のようなもの」(「粗起こしの議事録草案」と言われる)が開示されてはいる。しかし、これは「のようなもの」ではあつても議事録ではない。法が必ず作成せよと命じている以上は、正式の議事録がなくてはならない。その、あるはずの議事録を開示せよというのが、「未開示文書?」の問題。

 仮にもし、被告森下が議事録を作成もせず、公表もしていないとなれば、明白で重大な法律違反である。なぜ、そのような違法を敢えてしたか。その動機は、経営委員に番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないから、という以外に考えようはない。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃しているのである。総理の任命責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければならない。

 そして、もう一つが、「議事録のようなもの」の原資料である録音データである。これが、「未開示文書?」の問題。

 「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はない。そこで、録音の原電子データを開示せよと要求したら、なんと「消去しました」という。バックアップもとっていないと。

 えっ? こんな大事なものを簡単に消去? いつ、誰が、どうして、誰の指示で?と問い質しても、けっして回答しないのが森下俊三である。以上が、原告第6準備書面の内容。以下が、そのパワポ説明である。

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NHK情報開示等請求事件第4回期日
原告第6準備書面の概要

1.未開示記録の特定
 ? 未公表部分を含む完全な議事録
 ?「粗起こし」の原記録である録音データ
2.不誠実極まる被告森下の釈明
3.当事者意識を欠いた被告NHKの釈明

被告NHKは請求された文書を開示していない
開示請求文書目録
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料

原告の開示請求には議事録が含まれる
原告開示請求対象の第1項
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
経営委員会の正式な議事録があれば、「NHK経営委員会でなされた議論の内容・・・がわかる・・・記録」に該当する。
当然、本件訴訟の開示請求の対象となる。

争点となっている議事録(未開示文書?)
番組「クローズアップ現代+」の「かんぽ(生命)保険不正販売」報道に被告森下らが外部と呼応して圧力を加え『会長厳重注意』を言い渡した際の「経営委員会議事録」未公表部分(会長厳重注意言い渡しに関わる部分)

何ゆえ正式の議事録を作らないのか
? 合理的に推認すれば、番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくない
? 法的義務に違法することを恥じない人物が、NHKの最高幹部になっている
? 法廷で、自らの放送法違反行為を認めることは、驚愕の事態
? 放送法は経営委員長が違法行為をする場合の制裁等定めていない。考えられない事態。
? 総理の任命責任は重大で、罷免を求める政治的イシューへ

当該の議事録は本当にないのか?
? 原告らに開示された「粗起こし」は正式な議事録ではない。
「議事録のようなもの」でしかない。
? 議事録作成は放送法41条で経営委員長(2018年12月24日以後は被告森下)に課された法的義務である。
しかも、議事録作成義務が免除されることは一切ない。
? よって、「のようなもの」ではない、法が求める適式のものとして存在する議事録の開示を求める。
? 仮に当該部分の正式な議事録が未作成とすれば、被告森下の明白にして重大な違法であり、経営委員としての不適任を意味し、これを任命した内閣総理大臣の責任も追及されざるも得ない。

審議委員会は何を見たのか?
? 審議委員会答申は、議事録を開示すべきとしている。
? 今まで、4年間も議事録が存在することを前提に手続きが進んできたのに、いきなり「実はない」と言われても・・・・・。

録音データ(未開示記録?)の隠蔽がなされている
? 原告の請求は、「一切の記録・資料」の開示
? 当然、録音・録画も含まれる
? 被告は経営委員会の録音があったことを認めつつ、消去したとしている
? 消去した日も、消去した人も、具体的な作業内容も示すことができない
? 審議委員会の審議にかかっている最重要な録音データを消去するはずがない

本当に消去されたのか?
? 被告森下は、録音は担当者の個人的なメモのようなものでありすでにその担当者が消去したとしている
? 誰が?→答えない
? いつ? →答えない
? どんな作業をしたのか? →答えない
? とにかく「存在しない」とする
? NHK経営委員会のシステムにはバックアップはないのか?

被告森下による「存在しない根拠」その?
? 令和3年4月7日時点における本件録音データの不存在が確認されていること
? 誰が、どうやって確認したのか?
? 存在確認はできても、不存在の確認は難しい

被告森下による「存在しない根拠」その?
? 個人の備忘録として補助的な使用に留まる本件録音データが、それを基に作成された議事録の完成後に廃棄されることに何ら不自然・不合理な点はないこと
? 経営委員長の法的義務である議事録作成であるのに、担当職員の私的活動として録音がなされる不自然さ
? 経営委員長が私的録音を許していたのか?
? データの管理はどうなっていたのか?
? 議事録が作成されていないのに、職員の一存で消去できるのか?

被告森下による「存在しない根拠」その?
? 本件録音データの廃棄は、経営委員会における録音データの一般的な取扱いに従って行われていること
? 「私的録音」だったはずなのに、データ廃棄だけは突然「経営委員会における録音データの一般的な取扱い」に従って行われる矛盾
? 「経営委員会における録音データの一般的な取扱い」とは何なのか具体的には示されない

被告森下による「存在しない根拠」その?
? 既に開示済みである議事経過(粗起こし)に記載された内容以外の内容が本件録音データに含まれていることを疑わせる事情は存在しないこと
? 粗起こしが正確であることは検証不能
? 「かつて録音はあったが削除されていた」と自発的に申告したわけではない
? 原告に指摘されて突然無かったことが確認されていたと主張して、どうして信頼できるか

被告森下による「存在しない根拠」その?
? 録音データは、担当職員が議事録の作成のための個人的な備忘録として補助的に使用するものであって、「NHK役職員が業務上共有することは予定されていないから、本件録音データがNHK情報公開規程(丙36)3条の「開示の求めの対象となる文書」に該当しない
? NHK情報公開規程3条「開示の求めの対象となる文書は、NHKの役職員が業務上共用するものとして保有している文書(電磁的に記録されたものを含む)」

被告森下らの尋問が不可欠
? 被告森下
経営委員長としてどのように議事録を作ったのか、法的義務を果たしたのか、果たさないのならその理由
? 上田元会長
経営委員会に臨席した者として粗起こしの正確性、被告森下の議事録非公表についての違法性の重大さ
? 経営委員会の事務責任者
議事録作成の経緯、録音データの管理

NHK森下俊三経営委員長の責任を問う。《NHK文書開示請求訴訟》次回9月6日(火)法廷。

(2022年9月4日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第4回口頭弁論が、以下の日程で開かれます。
 9月6日(火)午前11時
 東京地裁103号法廷

 今回の法廷では、原告主張の要約をパワーポイントを使って、原告代理人(澤藤大河)が説明いたします。原告の一人浪本勝年さん(元立正大学教授・教育学)の意見陳述もあります。ぜひ傍聴をお願いいたします。

 なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に103号に入廷してください。コロナ対策としての空席確保の措置はありませんので、傍聴席の座席数は十分だと思われます。
 また、引き続いて下記の報告集会を開催いたします。
  同日午後1時から、
  参議院議員会館102会議室

 こちらにも、ご参加下さい。時間をかけてのご報告をいたします。意見交換の機会もあります。

 この訴訟で開示を求めている最重要文書は、2018年10月23日経営委員会議事録の未公表部分です。公表されているこの日の会議の議事録には、経営委員に不都合な経過の記載が欠落しているのです。

 この日の経営委員会で驚くべきことが起こりました。経営委員会は、呼びつけた上田良一NHK会長に『厳重注意』を言い渡したのです。しかも、その理由がとうてい看過し得ません。

 NHKの良心的番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政がこの番組をけしからんとして、NHKに圧力をかけてきました。経営委員会は、この外部の圧力から番組制作を護らなければならない立場であるにかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかした。当時経営委員会委員長代行だった森下俊三らは、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える『会長厳重注意』を強行したのです。

 公共放送であるNHKの適正な運営を確保するための経営委員会が暴走して、番組制作現場とNHK執行部を攻撃している構図なのです。NHKの最高機関が、NHKの放送の自由を侵害しているのです。こんな経営委員を任命したのが、安倍晋三。国葬なんぞ、とんでもない。

 放送法41条は、経営委員会委員長に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けています。しかし、公表されている議事録に、『会長厳重注意』の部分は抜け落ちています。しかも、一定の場合、議事録公表義務には免除の規定がありますが、議事録作成義務の免除の余地はありません。ですから、「公表されてはいなくても、存在するはずの議事録を開示せよ」というのが原告の請求です。

 もっとも、本件の提訴後原告には「議事録のようなもの」(「粗起こしの議事録草案」と言われる)が開示されてはいます。しかし、これは議事録ではありません。法が必ず作成せよと命じているのですから、正式の議事録はあるはずと言わねばなりません。

 「のようなもの」ではない、正式の議事録を開示せよ、というのが原告の要求で、仮にもし被告森下が議事録を作成もせず、公表もしていないとなれば、明白で重大な法律違反です。おそらくは、番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないのです。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃しているのです。総理の任命責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければなりません。

 そして、もう一つの問題は、「議事録のようなもの」の原資料である録音データです。「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はありません。そこで、録音記録を開示せよと要求したら、なんと「消去しました」というのです。バックアップもとっていないという。どこかで聞いたような話。

 えっ? こんな大事なものを簡単に消去? いつ、誰が、どうして、誰の指示で?と問い質しても、けっして回答しないのが森下俊三さん。まったく困ったお人です。

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《NHK文書開示請求訴訟》経過

◎2021年4月7日 文書開示の求め(その後、2度の延期)
◎2021年6月14日 第1次提訴 (原告104名・被告2名)
 ・被告NHKに対する文書開示請求
  開示対象は2グループの文書だが、
  その主たるものは、下記経営委員会議事録の未公開部分
   「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
   「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)上田会長厳重注意
   「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
 ・被告両名に対する損害賠償請求(慰謝料・弁護士費用、原告一人2万円)
◎同年   7月9日 NHK「3会議の議事録・粗起こしの草案」(「議事録の原告らに開示
(◎同年 9月16日 第2次提訴 (原告10名・被告2名)1次訴訟に併合)
☆同年  9月15日 被告NHK答弁書(現時点では対象文書は全て開示済み)
★同年  9月21日 被告森下答弁書(不法行為はない、請求棄却を求める)
◇同年  9月23日 原告 被告NHKに対する求釈明
◇同年  9月24日 原告 甲1の1?4 NHK開示文書提出
◎同年  9月28日 第1回口頭弁論期日
(西川さん・長井さん・醍醐さんの原告3名と代理人1名の意見陳述)
☆同年 12月 3日 被告NHK準備書面(1)「現時点で、所定の議事録作成手続は完了しておらず、放送法41条の定める議事録とはなっていない」
★同年 12月 3日 被告森下 準備書面(1) 「本件各文書はいずれも開示済」と言いながら、「粗起しのもので、適式の議事録でない」ことを自認している。
★同日        被告森下丙1?32号証 提出
◇2022年1月12日 原告第1書面(被告森下の求釈明に対する回答)提出
☆同年   1月17日 被告NHK 乙1(放送法逐条解説・29条部分)提出
◎同年   1月19日 第2回口頭弁論期日
★同年   2月28日 被告森下 準備書面(2)
◇同年   3月 2日 原告第2準備書面
◇同年   4月 7日 原告第3準備書面
☆同年   4月22日 被告NHK 準備書面(2)
★同年   4月22日 被告森下 準備書面(3)
◎同年   4月27日 第3回口頭弁論期日
◇同年   4月28日 原告第4準備書面(求釈明)
★同年   6月14日 被告森下 準備書面(4) (電磁記録は消去済みである)
◇同年   7月 1日 原告第5準備書面(求釈明)
◎同年   7月14日 進行協議
★同年   8月22日 被告森下準備書面(5)  (求釈明に対する回答)
◇同年   8月30日 原告第6準備書面
◎同年   9月 6日 第4回口頭弁論期日(予定)

《NHK文書開示請求訴訟》次回口頭弁論期日・9月6日(火)11時、103号法廷で。

(2022年8月31日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と内閣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第4回口頭弁論が、以下の日程で開かれます。
 9月6日(火)午前11時
 東京地裁103号法廷

 今回の法廷では、原告主張の要約をパワーポイントを使って、原告代理人が説明いたします。原告のお一人浪本勝年さんの意見陳述もあります。ぜひ傍聴をお願いいたします。
 
 なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に入廷してください。余裕をもって時間までにお願いいたします。
 また、引き続いて報告集会を開催いたします。
  同日午後1時から、
  参議院議員会館102会議室で

こちらにも、ご参加下さい。資料を配付し法廷よりも時間をたっぷりとって、パワポの解説をいたします。

 この訴訟は、興味津々の進行となっています。提訴以前には意図的に隠蔽されていた問題の経営委員会議事録(「NHK会長を厳重注意した会議の議事録」)ですが、提訴後にそれらしきものが出てきました。いま、問題は「粗起こしの議事録草案」と言われる、「議事録みたいなもの」の取り扱いが問題となっています。

 放送法第41条は、経営委員会委員長(被告森下俊三)に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けています。この「公表」の実行は、NHKがそのインターネットホームページ(NHKの公式サイト)に掲載して、視聴者の誰もが閲覧できるようにすることになっています。NHKは準備書面において、経営委員長(被告森下)の指示さえあれば、ホームページへの掲載に何の差し支えもないことを明言しています。

 放送法で義務付けられている経営委員会議事録の公表がなぜ実現しないのか。その責任は、NHK執行部にではなく、もっぱら被告森下俊三の側にあることが明白になりつつあります。放送法32条2項によって禁じられている番組編成に対する露骨な介入の違法を隠蔽しようという動機以外には考えられません。

 しかも、一定の場合、議事録公表義務には免除の規定がありますが、議事録作成の免除はありません。だから、「公表されてはいなくても、存在するはずの議事録を開示せよ」というのが原告の主張です。もし被告森下が議事録を作成もせず、公表もしないとなれば、明白で重大な法律違反です。任命した安倍内閣の責任も生じますし、現内閣には罷免事由になるものと考えます。

 そして、もう一つの問題は、「議事録みたいなもの」の原資料である録音データです。この資料は作成者の記載はなく、正確性を確認する術はありません。そこで、録音記録を出せと要求したら、何と、「消去しました」というのです。

 えっ? こんな大事なものを簡単に消去? いつ、誰が、どうして、誰の指示で消去したの? バックアップはあるはずでしょう? と問い質したのですが、大事なことはけっして回答しません。森下俊三、そりゃひどい。
 法廷では、この点をパワーポイントを使って、原告代理人が説明いたします。

 もとはと言えば、「クローズアップ現代+」の「かんぽ生命保険違法勧誘問題」報道に端を発した「会長厳重注意の議事録」隠蔽問題です。放送法違反の違法行為を重ねた被告森下俊三の責任だけでなく、これを選任した政権の責任問題が浮かび上がっています。そして、森下を罷免しない現政権の責任も。

 NHKが暴走することのないよう、放送法は、NHKの最高意思決定機関として経営委員会を置き、その重責を担う経営委員12名を「国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」という制度設計をしました。当然に良識を備えた経営委員の選任を想定してのことなのです。

 ところが、この経営委員の選任が、安倍政権以来ムチャクチャというしかないのです。政権の思惑で送り込まれた、明らかな違法をして恥じない経営委員たちが、今回の事件を起こしているのです。この訴訟は、その問題に切り込んでいます。
 ぜひとも、ご注目ください。傍聴にも、報告集会にもお越しください。

経営委員会委員長・森下俊三による経営委員会議事録記録データ廃棄が大きな問題に

(2022年4月27日)
NHK情報開示請求訴訟、本日の103号法廷でのパワポの概略は以下のとおり。

NHK情報開示等請求事件
第3回期日
東京地裁令和3年(ワ)第15257・24143号
原告ら代理人弁護士澤藤大河

原告第3準備書面の概要

1.被告NHKの文書開示義務は未履行
2.被告NHKに対する文書開示請求権の根拠
3.各被告への損害賠償請求の根拠

被告NHKは請求にかかる文書を開示したのか

開示請求文書目録
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会?に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料

提訴への経緯(1)

? 本件訴訟は、放送法において法的な義務とされている経営委員会議事録の公表がされず、開示にも応じないことから、なんとか、その内容を開示させようと提起された。
? 放送法41条は経営委員会委員長に議事録を作成し公表する法的義務を課しているが、その公表手続は被告NHKが実行しなければならない。
? しかし、被告NHKは議事録を公表しなかった。

提訴への経緯(2

? 2名の視聴者が情報開示請求
? 被告NHK、8点について開示拒否(2018年10月23日)
? 審議委員会がすべて開示すべきとの答申(2020年5月22日)
? しかし、なお下記3点の文書が不開示とされた
「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月9日開催)
「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)

提訴への経緯(3)

? 新たに3名の視聴者が議事録について開示請求
? NHK不開示決定
? 審議委員会は3件について、すべて開示すべきと答申(2021年2月4日)
? しかし、NHKは、この開示請求に対してもなお開示しないまま現在に至っている。

原告の開示請求には議事録が含まれる

原告開示請求対象の第1項
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会?に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
経営委員会の正式な議事録があれば、「NHK経営委員会でなされた議論の内容・・・がわかる・・・記録」に該当し、当然、本件訴訟の開示請求の対象となる。

議事録はないのか?

? 被告NHKも被告森下も、正式な議事録は存在しないとしている。
? しかし、議事録作成は放送法41条で被告森下に課された義務
? 議事運営規則(丙2)は、議事録「公表」義務の一部免除は認めても、「作成」義務免除の例外は認めていない。
? 今までの経営委員会については議事録を作成しているのに、本件にかかる会議だけ議事録を作成しない不自然さ。
? 何より、先行する開示請求にかかる手続きでは、議事録が存在することを前提に進んでいる。

審議委員会は何を見たのか?

? 審議委員会答申は、議事録を開示すべきとしている。
? 存在しない書面を開示せよと答申したのか?
? 開示すべきかどうか、審議委員会は現物を見て判断したはずではないか?
? これらの開示請求手続きで、議事録「不存在」の主張は一切なかった
? 今まで、4年間も議事録が存在することを前提に手続きが進んできたのに、いきなり「実はない」と言われても・・・・・

本件訴訟における開示請求の履行はない

? 原告の請求は、「一切の記録・資料」の開示
? 当然、録音・録画も含まれる。
? いわゆる「粗起こし」の正確さをみれば、録音・録画が存在する可能性は極めて高い。
? にもかわらず、NHKは録音・録画を提出していない。「粗起こし」は、電磁的記録を文字におこしたものであることを明示しておらず、「電磁的記録の開示」にはあたらない。

議事録は本当に不存在なのか?

? 今までの手続きで、存在を前提に4年間もやりとりがなされてきた議事録について、突然不存在と主張する。
? しかし、被告NHKは、存在可能性が極めて高い経営委員会の録音録画データを提出していない。誠実でなく信用できない。
? 原告としては、議事録が不存在とはとうてい考えられない
? 議事録不存在については、被告において蓋然性をもって証明されなければならない。
? 議事録の存否を明らかにするための被告森下の尋問が必要である。

被告NHKに対する損害賠償請求の根拠

? 被告NHKは、原告らの情報開示請求について、受信契約に基づく債務を負っている。
? この点、被告NHKは、情報開示制度は契約に基づくものではないとするが、「合意」に基づくものとしている。
? いずれにせよ、少なくとも合意に基づく法的効果としては、契約と同様となる。
? 被告NHKには開示すべき債務がある。
? 原告の請求はこの債務不履行損害賠償請求である。

被告NHKの開示義務履行遅滞

? 被告NHKは、開示請求から47日以内に開示する法的義務を負っていた。
? 具体的には2021年5月24日の経過を持って履行遅滞となった。
? 請求にかかる文書がすべて開示されていたとしても、5月24日から開示までの履行遅滞がある。
? 請求にかかる文書が開示されていないということなら、現在まで履行遅滞が続いている。

被告森下の損害賠償義務

? 被告森下は、被告NHKにおいてなすべき開示の履行を妨害した不法行為を行った。
? 放送法41条違反の公表義務を怠ったことから、一連の活動として履行を妨害している。
? 被告森下が放送法41条に基づき公表していれば、そもそも開示請求にいたらない。
? 被告森下の放送法41条違反行為に始まり、一連の行為として、被告NHKに絶対に本件議事録を開示させないように活動した。

被告森下が何をしたか?

? 被告森下が、被告NHKにどのように働きかけたのかは、原告らにはわからない。
? しかし、被告NHKには、議事録を不開示にする動機がない。審議委員会の答申が出ている以上、これに反対する理由がない。
? 被告森下には、議事録を不開示にする動機がある。自らの放送法32条2項に違反して、放送に介入した行為を隠蔽する必要があるという強烈な動機である。
? また、被告森下には、働きかけることのできる能力もある。経営委員会委員?として、NHKの最高幹部の人事権も有している。

被告森下の尋問が必要

? 被告森下が、被告NHKにどんな働きかけをしたのかは、原告らには具体的にはわからない。
? しかし、前述のように、被告森下が働きかけた蓋然性が高い。
? 働きかけをした被告森下、働きかけられた側NHK会?を尋問して明らかにする必要がある

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 原告は、本件の提訴後に原告らに公開された「粗起こしの議事録草案」の取り扱いについて被告両名に提案した。
 これは、適式の議事録ではないものと明記された代物である。このままでは、被告NHKの文書開示義務の履行があったと認めることはできない。内容の真実性を確認するすべもない。
 しかし、他の議事録と同様に、適式の手続きを履践してこれに所定の責任者が署名捺印のうえNHKのサイトに掲載するのであれば、議事録と認めよう、というものである。これに対して、被告NHKは異議を述べなかった。「経営委員会委員長である被告森下の意向次第」という姿勢。
 ところが、被告森下は「ノー」なのだ。驚くべき頑なさである。

それなら、原告は徹底して請求を続けるというしかない。「41条に基づいて経営委員会委員長が作成した議事録があるはずだから、これを開示せよ」「これが存在しないと言うのなら重大な任務違背だ」と追求するも、「ない」との回答。

 さらに、本日の法廷では以下のことが問題となった。
 原告が開示を求めているのは、「一切の記録・資料」であって、当然に電磁的記録を含む。音声記録か画像記録か、元データがあるはずだから提出せよ。それと照合することによって、「原告らには公開されたが、国民には公表されていない、《粗起こしの議事録草案》」の正確性を確認することができる。

 これに対する被告森下の回答が驚くべきものである。「消去して、現在存在しない」というのだ。文書の隠匿の次は、廃棄である。とうてい納得できない。これから、この点が大きな問題となる。

 まずは、誰が、いつ、なぜ、どのように、消去したのかを問い質さなければならない。また、復元可能性についても追求しなければならない。そして、被告森下の悪性を明確にし、その任命者である安倍政権の責任も追及しなければならない。

《NHK文書開示請求訴訟》明日・4月27日(水)103号法廷で口頭弁論。パワーポイントでの解説をお楽しみに。

(2022年4月26日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道と経営の姿勢を問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第3回口頭弁論が、明日・4月27日(水)14時から東京地裁103号法廷で開かれます。
 
 法廷では、原告主張の要約をパワーポイントを使って、原告代理人が説明いたします。ぜひ傍聴をお願いいたします。
 なお、傍聴券の配布は1時20分からとされています。1時20分までに地裁庁舎入り口での抽選に参加すれば、おそらく全員が傍聴可能です。万が一、満席で入廷できなかった方は、参議院議員会館102会議室で、15時30分開会の報告集会にご参加下さい。こちらでは、詳しい資料を配付し、法廷よりも時間をたっぷりとって、パワポの解説を繰り返します。

 この訴訟は、興味津々の進行となっています。これまで意図的に隠蔽されていた問題の経営委員会議事録(「NHK会長を厳重注意した会議の議事録」)が、明日の法廷の進行次第では、NHKのホームページへの公表が実現することになりそうなのです。そうなれば、この提訴の大きな成果です。ぜひ、この法廷の進行にご注目ください。

 放送法第41条は、経営委員会委員長(被告森下俊三)に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けています。この「公表」の実行は、NHKがそのインターネットホームページ(NHKの公式サイト)に掲載して、視聴者の誰もが閲覧できるようにすることになっています。NHKは、4月22日提出の準備書面において、経営委員長(被告森下)の指示さえあれば、ホームページへの掲載に何の差し支えもないことを明言しています。

 放送法で義務付けられている経営委員会議事録の公表がなぜ実現しないのか。その責任は、NHK執行部にではなく、もっぱら被告森下俊三の側にあることが明白になりつつあります。放送法32条2項によって禁じられている番組編成に対する露骨な介入の違法を隠蔽しようとしていたことが明らかになっていると言って差し支えないからです。法廷では、この点をパワーポイントを使って、原告代理人が説明いたします。

 「クローズアップ現代+」の「かんぽ生命保険違法勧誘問題」報道に端を発した「会長厳重注意の議事録」隠蔽は、放送法違反の違法行為を重ねた被告森下俊三の責任だけでなく、これを選任した政権の責任問題が浮かび上がっています。

 なお、簡単に、これまでの経緯を確認しておきます。
 本件の原告となった110名は、NHKの報道姿勢を正す市民運動に参加してきた者として、「かんぽ保険違法勧誘問題」報道に対する日本郵政グループ幹部からの介入とこれに呼応した経営委員会の動きにを重大視し、先行する経営委員会議事録開示請求に対するNHKの不開示決定を許せないと考えました。

 そのため、「もしまた、NHKが議事録を不開示とするときには文書開示請求の訴訟を提起する」ことを広言して、「文書開示の求め」の手続に及び、所定の期間内に開示に至らなかったため、昨年6月14日に本件文書開示請求訴訟を提起した。その結果、ようやく7月9日に至って「議事録と思しき文書」(被告NHKはこれを「議事録草案」と呼んでいます)が開示されました。

 おそらくは、これだけで大きな成果です。この「議事録草案」では、森下らが、日本郵政の上級副社長鈴木康雄と意を通じて、「クローズアップ現代+」の《かんぽ生命保険不正販売問題報道》を妨害しようとたくらんだことが浮かび上がっているからです。経営委員会の無法に、NHK執行部と番組作成現場が蹂躙されている構図なのです。結局は安倍政権以来、政権が関わる人事の全てがムチャクチャなのです。

 もっとも、この「議事録草案」は、所定の手続を経て作成されるべき「議事録」ではありません。放送法41条では、「経営委員会委員長は、経営委員会の終了後、遅滞なく、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならない」とされていますが、そのようにして作成され、公表されなければならない議事録の開示はまだないことになります。

 被告森下が、この「議事録草案」を適式な「議事録」であって、遅ればせながらも文書開示義務は履行済みだというのであれば、その議事録は「公表」されなければなりません。NHKの公式サイトに公表する決断が求められています。今さらこれを躊躇する理由は、天下に違法を知られたくないからという以外は考えられません。いまだに適式の議事録が作成されておらず、公表もされていないとすれば、森下の責任は重大です。

 NHKが暴走することのないよう、放送法は、NHKの最高意思決定機関として経営委員会を置き、その重責を担う経営委員12名を「国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」という制度設計をしました。当然に良識を備えた経営委員の選任を想定してのことなのです。

 ところが、この経営委員の選任が、安倍政権以来ムチャクチャというしかないのです。政権の思惑で送り込まれた、明らかな違法をして恥じない経営委員たちが、今回の事件を起こしているのです。この訴訟は、その問題に切り込んでいます。
 ぜひとも、ご注目ください。

NHK文書開示請求訴訟次回法廷で、パワーポイントを使って興味津々の解説。

(2022年4月21日)
 NHKと森下俊三(NHK経営委員長)の両名を被告として、NHKの姿勢を問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第3回口頭弁論期日が、4月27日(水)14時から東京地裁103号法廷で開かれる。

 この訴訟は、興味津々の進行となっている。これまで意図的に公表を避けられていた問題の経営委員会議事録だが、もしかしたら、この法廷の進行次第で、てNHKのホームページへの公表が実現することになるかも知れない。それが実現すれば、大きな提訴の成果である。この法廷にご注目いただきたい。

 それだけでなく、放送法で義務付けられている経営委員会議事録の公表がなぜ実現しないのか。その責任は、NHK執行部にあるのではなく、もっぱら被告森下俊三ら経営委員会側にある。経営委員会が、禁じられている番組編成に対する露骨な介入の違法を隠蔽しようとしていたことが、ほぼ明らかになっていると言ってよい。

 法廷では、この点をパワーポイントを使って、原告代理人が説明する。ぜひ傍聴をお願いしたい。傍聴券の配布は1時20分からとされている。

 「クローズアップ現代+」の「かんぽ保険違法勧誘問題」報道に端を発した「会長厳重注意の議事録」隠蔽は、放送法違反の違法行為を重ねた本件被告森下俊三の責任だけでなく、これを選任した政権の責任問題を浮かび上がらせている。

 なお、報告集会を参議院議員会館102会議室にて15時30分ごろより開催する。こちらにもぜひご参加をお願いしたい。

 簡単に、これまでの経緯を確認しておきたい。

 本件原告らNHKの報道姿勢を正す市民運動に参加してきた者として、「かんぽ保険違法勧誘問題」報道に対する日本郵政グループ幹部からの介入とこれに呼応した経営委員会の動きにを重大視し、先行する経営委員会議事録開示請求に対するNHKの不開示決定を許せないと考えた。

 そのため、「もしまた、NHKが議事録を不開示とするときには文書開示請求の訴訟を提起する」ことを広言して、「文書開示の求め」の手続に及び、所定の期間内に開示に至らなかったため、21年6月14日に本件文書開示請求訴訟を提起した。その結果、ようやく同年7月9日に至って「議事録と思しき文書」(被告NHKはこれを「議事録草案」と呼ぶ)が開示されたのだ。

 おそらくは、これだけで大きな成果である。この「議事録草案」では、森下らが、日本郵政の上級副社長鈴木康雄と意を通じて、「クローズアップ現代+」の《かんぽ生命保険不正販売問題報道》を妨害しようとたくらんだことが明確になったからだ。この局面では明らかに、経営委員会の無法にNHK執行部と番組作成現場が蹂躙されている構図である。結局は安倍政権以来、政権が関わる人事の全てがおかしいのだ。

 もっとも、この「議事録と思しき文書」は、所定の手続を経て作成されるべき「議事録」ではない。放送法41条で、「経営委員会委員長は、経営委員会の終了後、遅滞なく、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならない」とされている、適式の「議事録」については、いまだに不開示ということになる。真実、放送法の規定に反して、いまだに適式の議事録が作成されておらず、公表もされていないとすれば、森下の責任は重大である。その理由はどこにあるのか。森下主導の経営委員会が、放送法(32条)に違反して、番組(「クローズアップ現代+」)制作に介入していることが明らかになることを恐れたからである。

 責任は、経営委員会、なかんづく委員長・森下俊三にある。無法・横暴な経営委員会とその委員長によって、NHK執行部と番組制作現場の報道の自由が蹂躙されている構図である。NHKは、乙1号証として「放送法逐条解説・29条部分」を提出して、文中の「経営委員会は、協会(NHK)の最高意思決定機関として設置したものである」という記述にマーカーを付けている。「NHK執行部が、経営委員会にもの申すなどできようもない」という内心の溜息が聞こえる。

 NHKが暴走することのないよう、放送法は、NHKの最高意思決定機関として経営委員会を置き、その重責を担う経営委員12名を「国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」という制度設計をした。当然に良識を備えた経営委員の選任を想定してのことである。ところが、この経営委員会が、とりわけその委員長が、政権の思惑で送り込まれ、明らかな違法をして恥じない。この事態に、内閣と国会とはどう責任をとろうというのだ。

 この訴訟は、その問題に切り込んでいる。ご注目いただきたい。

あらためて問う、NHK経営委員長森下俊三の違法行為と安倍晋三の任命責任。

(2022年3月30日・明日で連続更新満9年)
 NHKの予算決算は国会の承認事項となっている。衆参両院の本会議に諮られる前に、各院の総務委員会で質疑が行われる。今年は、3月24日に衆院の、昨日3月29日に参議院の各総務委員会でNHK予算についての質疑が行われた。この質疑において、衆院では宮本岳志、参院では伊藤岳の、共産党の両議員が、経営委員会の議事録開示問題に関して、鋭く的確な質問を行った。

 参院総務委員会での伊藤岳議員の反対討論を紹介しておきたい。

 「日本共産党はNHKのかんぽ生命不正販売に関するクローズアップ現代プラスの報道をめぐって、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈して、第二弾の放送を取り止め、さらに経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法第3条、および第32条第2項に違反する行為であると指摘してきました。しかも経営委員会は、放送法第41条に反して、会長を厳重注意した議事録の公開にも背を向けてきました。こうしたもと、わが党は2020年度、21年度のNHK予算の承認に反対しました。昨年7月、経営員会は『議事起こし』を情報公開請求者などに対して開示しました。そこには、日本郵政からの圧力に屈する経営委員会の対応が生々しく記されていました。しかし、未だに全文を議事録として作成・公表しておりません。放送の自主自律を遵守せず、視聴者・国民への説明責任も放棄したNHKの対応に、国民の信頼は揺らいだままです。こうしたもとで、執行部が編成し、経営委員会が議決をした予算を承認することは出来ません」

 まことにこのとおりである。念のために、細かいことだが、用語の説明をしておきたい。NHKはその内規で、独自の情報公開制度を設けている。「情報公開」の態様を、「情報の開示」と「情報の提供」に分け、前者を開示請求者に対する「文書開示」とし、後者はホームページに掲載など全ての視聴者に閲覧可能とする。経営委員会議事録については、内規ではなく法律(放送法41条)が、遅滞なく作成して「公表」するよう命じている。公表はホームページに掲載して行われる。なお、『議事起こし』とは、経営委員会の議事の速記録と思われるが、文書開示請求者には開示されたが、NHKのホームページに掲載する方法での「公表」はなされていない。

 言うまでもなく、健全なジャーナリズムは健全な民主主義の基盤である。ジャーナリズムが権力の膝下におかれた状況では、平和も国際協調も人権も自由も平等も全てが危うくなる。

 歴史的経緯があって、日本のジャーナリズムの中心にはNHKが位置すると言って過言でない。おそらく今もなお、NHKは日本で最も影響力の大きなメディアである。その報道姿勢の如何は、日本の民主主義のあり方に死活的な影響を及ぼす。

 NHK執行部を監督する立場にあって、会長の任免権を持つNHKの最高機関が経営委員会である。内閣総理大臣の任命によるが、安倍晋三国政私物化内閣が成立して以来、この経営委員会の人選がメチャクチャである。ジャーナリズムのなんたるかを理解し、その理念を貫徹しようという委員の存在はまったく見えない。とりわけ、委員長森下俊三の不適切性は際立っている。

 今、100名余の原告がNHK情報公開訴訟に取り組んでおり、私も弁護団の一員である。原告らは、いずれも、これまでNHKに対する監視と批判の市民運動に携わってきた者。NHKが権力から独立していないことに危機感をもちつつも、NHKに真っ当なジャーナリズムの精神を期待して、一面批判し、一面激励してきたという立場である。

 その訴訟における最重要の請求は、「2018年10月23日経営委員会議事録の開示」である。この会議で、経営委員会は上田良一NHK会長(当時)を呼びつけて厳重注意を言い渡している。明らかにNHKの良心的看板番組「クローズアップ現代+」が、日本郵政グループによる「かんぽ生命保険の不正販売問題」に切り込んだ報道をしたことに対する牽制であり、続編の制作妨害を意図した恫喝である。

 これは、明々白々な経営委員会による番組制作への介入であって、放送法32条に違反する違法行為である。内閣総理大臣が任命した12人の経営委員が、このようなあからさまな違法行為を行っているのだ。

 我が国の民主主義のあり方に重大な影響力をもつ公共放送の最高機関である経営委員会がどのように運営されているか。また、その識見を見込まれて内閣総理大臣が任命した各経営委員が、それぞれの問題について、どのような発言をしているか。その言動に関して、視聴者に対する徹底した透明性が確保されなければならない。その「透明性」「説明責任」の確保があって始めて、視聴者の経営委員会批判やNHKのあり方への批判が可能となり、その自由で闊達な批判の言論こそが公共放送のあり方を健全なものとし、日本の民主主義の発展に資するべきことが想定されている。

 ところが、日本郵政グループの上級副社長・鈴木康雄と意を通じて、違法な「会長厳重注意」をリードした中心人物が、当時経営委員会委員長代行だった森下俊三である。こんな違法をやっているのだから、法が公表を明示しているにもかかわらず、議事録は出せない、出したくもない。2年にもわたって非公開とされ、文書開示請求も拒絶してきた。

 もとより、情報公開とは、行政に不都合な情報の開示を強制する制度である。行政の透明性を高め、歪んだ密室行政を是正するために不可欠な制度である。行政文書の開示請求への拒絶が問題となるのは、文書の公開を不都合とする行政当局者の姿勢の故である。公開を不都合とする行政の実態があり、これを隠蔽しなければならないとする行政側の意図が働いているからである。国民の目の届かないところで、国民に知られては困る行政が進められていることが根本の問題としてある。

 この点に関しては、NHKが自ら定めた情報公開制度においても、その理念も事情も異にするところはない。本件のごとき「経営委員会が隠したい議事録」こそが、正確に、且つ速やかに作成され、公表されなければならないのだ。

 『議事起こし』が、法41条の要求する文書であるなら、遅滞なく、誰もが閲覧できるように、ホームページに掲載する方法で、「公表」しなければならない。そうすれば、誰にも、外部勢力と通じてNHKの良心的な番組の制作に圧力を掛けた森下俊三の違法行為がよく分かるだろう。森下と、森下を任命した安倍晋三内閣の責任が厳しく問われなくてはならない。我が国の民主主義を救うために。

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