澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

NHK森下俊三経営委員長の責任を問う。《NHK文書開示請求訴訟》次回9月6日(火)法廷。

(2022年9月4日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第4回口頭弁論が、以下の日程で開かれます。
 9月6日(火)午前11時
 東京地裁103号法廷

 今回の法廷では、原告主張の要約をパワーポイントを使って、原告代理人(澤藤大河)が説明いたします。原告の一人浪本勝年さん(元立正大学教授・教育学)の意見陳述もあります。ぜひ傍聴をお願いいたします。

 なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に103号に入廷してください。コロナ対策としての空席確保の措置はありませんので、傍聴席の座席数は十分だと思われます。
 また、引き続いて下記の報告集会を開催いたします。
  同日午後1時から、
  参議院議員会館102会議室

 こちらにも、ご参加下さい。時間をかけてのご報告をいたします。意見交換の機会もあります。

 この訴訟で開示を求めている最重要文書は、2018年10月23日経営委員会議事録の未公表部分です。公表されているこの日の会議の議事録には、経営委員に不都合な経過の記載が欠落しているのです。

 この日の経営委員会で驚くべきことが起こりました。経営委員会は、呼びつけた上田良一NHK会長に『厳重注意』を言い渡したのです。しかも、その理由がとうてい看過し得ません。

 NHKの良心的番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政がこの番組をけしからんとして、NHKに圧力をかけてきました。経営委員会は、この外部の圧力から番組制作を護らなければならない立場であるにかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかした。当時経営委員会委員長代行だった森下俊三らは、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える『会長厳重注意』を強行したのです。

 公共放送であるNHKの適正な運営を確保するための経営委員会が暴走して、番組制作現場とNHK執行部を攻撃している構図なのです。NHKの最高機関が、NHKの放送の自由を侵害しているのです。こんな経営委員を任命したのが、安倍晋三。国葬なんぞ、とんでもない。

 放送法41条は、経営委員会委員長に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けています。しかし、公表されている議事録に、『会長厳重注意』の部分は抜け落ちています。しかも、一定の場合、議事録公表義務には免除の規定がありますが、議事録作成義務の免除の余地はありません。ですから、「公表されてはいなくても、存在するはずの議事録を開示せよ」というのが原告の請求です。

 もっとも、本件の提訴後原告には「議事録のようなもの」(「粗起こしの議事録草案」と言われる)が開示されてはいます。しかし、これは議事録ではありません。法が必ず作成せよと命じているのですから、正式の議事録はあるはずと言わねばなりません。

 「のようなもの」ではない、正式の議事録を開示せよ、というのが原告の要求で、仮にもし被告森下が議事録を作成もせず、公表もしていないとなれば、明白で重大な法律違反です。おそらくは、番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないのです。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃しているのです。総理の任命責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければなりません。

 そして、もう一つの問題は、「議事録のようなもの」の原資料である録音データです。「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はありません。そこで、録音記録を開示せよと要求したら、なんと「消去しました」というのです。バックアップもとっていないという。どこかで聞いたような話。

 えっ? こんな大事なものを簡単に消去? いつ、誰が、どうして、誰の指示で?と問い質しても、けっして回答しないのが森下俊三さん。まったく困ったお人です。

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《NHK文書開示請求訴訟》経過

◎2021年4月7日 文書開示の求め(その後、2度の延期)
◎2021年6月14日 第1次提訴 (原告104名・被告2名)
 ・被告NHKに対する文書開示請求
  開示対象は2グループの文書だが、
  その主たるものは、下記経営委員会議事録の未公開部分
   「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
   「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)上田会長厳重注意
   「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
 ・被告両名に対する損害賠償請求(慰謝料・弁護士費用、原告一人2万円)
◎同年   7月9日 NHK「3会議の議事録・粗起こしの草案」(「議事録の原告らに開示
(◎同年 9月16日 第2次提訴 (原告10名・被告2名)1次訴訟に併合)
☆同年  9月15日 被告NHK答弁書(現時点では対象文書は全て開示済み)
★同年  9月21日 被告森下答弁書(不法行為はない、請求棄却を求める)
◇同年  9月23日 原告 被告NHKに対する求釈明
◇同年  9月24日 原告 甲1の1?4 NHK開示文書提出
◎同年  9月28日 第1回口頭弁論期日
(西川さん・長井さん・醍醐さんの原告3名と代理人1名の意見陳述)
☆同年 12月 3日 被告NHK準備書面(1)「現時点で、所定の議事録作成手続は完了しておらず、放送法41条の定める議事録とはなっていない」
★同年 12月 3日 被告森下 準備書面(1) 「本件各文書はいずれも開示済」と言いながら、「粗起しのもので、適式の議事録でない」ことを自認している。
★同日        被告森下丙1?32号証 提出
◇2022年1月12日 原告第1書面(被告森下の求釈明に対する回答)提出
☆同年   1月17日 被告NHK 乙1(放送法逐条解説・29条部分)提出
◎同年   1月19日 第2回口頭弁論期日
★同年   2月28日 被告森下 準備書面(2)
◇同年   3月 2日 原告第2準備書面
◇同年   4月 7日 原告第3準備書面
☆同年   4月22日 被告NHK 準備書面(2)
★同年   4月22日 被告森下 準備書面(3)
◎同年   4月27日 第3回口頭弁論期日
◇同年   4月28日 原告第4準備書面(求釈明)
★同年   6月14日 被告森下 準備書面(4) (電磁記録は消去済みである)
◇同年   7月 1日 原告第5準備書面(求釈明)
◎同年   7月14日 進行協議
★同年   8月22日 被告森下準備書面(5)  (求釈明に対する回答)
◇同年   8月30日 原告第6準備書面
◎同年   9月 6日 第4回口頭弁論期日(予定)

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