この夏の参院選は、日本国憲法の命運を大きく左右する。アベ政権の改憲策動実現への第一歩となるか、それとも改憲を阻止することによってさらに国民に定着したものとするのか。
その参院選の日程が、いよいよ「6月22日公示、7月10日投開票」と本決まりの模様。そして、衆院の解散によるダブル選挙はなくなったというのが各紙の報ずるところ。寝たふり解散や抜き打ち選挙もあり得ないではないが、解散権を持つ側にとって、「ダブル選挙必ずしも有利ならず」と読ませる状況があるということだ。
選挙をめぐる関心の焦点は、自公の改憲勢力で、改憲発議のできる3分の2をとれるか否か。それは野党共闘の成否にかかっている。とりわけ、32ある一人区で、どこまで野党統一候補の擁立ができるかがカギとなる。いま、その動きが全国に浸透しつつあるが、改憲派から見て、「野党の選挙共闘恐るべし」なのだろうか、それとも「恐るに足りず」なのだろうか。本日の産経がこの点を語っている。しかも、北海道5区補選の彼らなりの教訓を踏まえてのこと。「2016参院選 本紙シミュレーション」という記事である。
右翼と自民党に支えられた産経である。スポンサーに失礼あっては社運に関わる。徹底して、改憲派の側からの分析であり、表現となっている。それでも、危機感横溢の内容となっている。おそらくは、この危機感が保守層の本音なのではないか。
メインのタイトルは「野党共闘効果は限定的 本紙が前回結果から試算」となっているが、サブのタイトルは、「与党、無党派で苦戦も 閣僚不祥事・失言など影響大」というもの。つまり、「野党統一候補は一部地域で善戦する可能性があるとはいえ、効果は限定的ともいえる」とスポンサーのご機嫌を伺いながらも、「補選の結果をみれば、無党派層の動向いかんでは野党共闘に勢いがつきかねない」「自民党は保守層の支持基盤を強化するとともに、無党派層の取り込みに向けた対策を進める必要がありそうだ」と献策している。この大事な選挙、自民党は安泰なのか、危ういのか。タイトルではなく、記事を読む限りは、大いに危ういのだ。
産経が、「野党共闘ができたとしても効果は限定的」という根拠は、3年前の参院選における有権者の投票行動を基礎としてのもの。これはたいして当てになるものではない。それでも、野党が一本化すれば、それだけで自民党候補に勝つところが7選挙区になるという。
さらに、次の記事が北海道5区補選の保守側の衝撃をよく表現している。
「自民党にとって枕を高くして寝ていられる状況でもない。夏の参院選の帰趨を占うとされた4月の衆院北海道5区補欠選挙で、野党統一候補が自民党公認候補を相手に健闘したからだ。
補選は参院選の構図とほぼ同じ「与党候補」と「野党統一候補」の一騎打ち。両候補の得票数を市町村別に分析すると、支持政党を持たない無党派層が多い都市部で与党候補の得票数が野党統一候補を下回った。
共同通信の出口調査では無党派層の約7割が野党候補に投票しており、自民党に大きな衝撃を与えた。自民党は政策がバラバラな「民共合作」を批判する戦術で辛くも制したが、無党派層の投票率が伸びれば与党候補が逆転されることもあり得た。もともと革新系が強いとされる北海道とはいえ、「堅調な内閣支持率のもとで党の支持層を固めれば、無党派層もそれほど取りこぼさない」というセオリーが覆された形だ。
ある自民党選対幹部は『民進、共産両党にほぼきっちり支持層の票を積み上げられ、結果的に「1+1=1・9」になった。0・1は誤差の範囲内。勝ったものの、恐ろしい結果だ』と警戒感をあらわにする。」
要は、野党共闘のあり方次第で、参院選を制することで改憲を阻止し、アベ政権を窮地に追い込むことは可能なのだ。
誰がどう考えても、主敵・アベ政権を倒すには、野党の選挙共闘しかありえない。その基本枠組みは、既に2月19日にできている。
民主、維新、共産、生活、社民の野党5党(現在は、民主・維新が民進となって4党)の党首は2月19日、安全保障関連法を廃止する2法案を同日共同で衆院に提出するに当たって国会内で会談。国会での対応や国政選挙などで協力を強化していくことなど、下記の4点の共闘項目についてあらためて合意している。
(1)安全保障関連法の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回
(2)安倍政権の打倒を目指す
(3)国政選挙で現与党とその補完勢力を少数に追い込む
(4)国会での対応や国政選挙などあらゆる場面で5党のできる限りの協力を行う
本年4月3日の毎日新聞が、その参院選における野党共闘進展の具体的模様を伝えている。見出しは、「野党一本化、15選挙区…32の1人区 本紙調査」というもの。
「夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で『自民党一強』を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。」
同日の毎日記事は、32の「1人区」を野党の選挙協力成否に関して3分している。
合意成立 15区
青森・宮城・山形・栃木・新潟・福井・山梨・長野・「鳥取島根」・山口・「徳島高知」・長崎・熊本・宮崎・沖縄
協議中 10区
岩手・秋田・福島・富山・三重・滋賀・和歌山・岡山・佐賀・大分
難航 7区
群馬・石川・岐阜・奈良・香川・愛媛・鹿児島
そして、昨日(5月1日)の赤旗が、最新情勢を伝えている。
「一人区野党統一候補が大勢に」「政権に危機感」というもの。
「夏の参院選にむけ、32の1人区での野党統一候補の擁立が20選挙区を数え、大勢になりつつあります。『野党と市民・国民』対『自公と補完勢力』という選挙の対決構図が鮮明になるなか、安倍政権・与党は警戒感を募らせています。」という内容。
「前回参院選(2013年)の野党票を合計すると、9選挙区で野党が勝利、3選挙区で接戦となる計算となります。前々回(10年)の野党票合計では、18選挙区で野党が勝利、5選挙区で接戦。市民とともに野党が団結し本気で選挙をたたかえば、自民を負かす可能性がみえています。」
「一方、野党は統一候補擁立とともに政策課題でも一致点を広げています。26日、徳島・高知選挙区で野党4党と大西聡統一候補は、消費税増税反対、TPP(環太平洋連携協定)批准反対、原発に依存しない社会の実現、辺野古新基地建設反対など11項目の共通政策を発表しています。」
赤旗が報じる参院選1人区での野党統一候補は以下のとおり。
青森 田名部匡代 民進公認
秋田 松浦大悟 民進公認
宮城 桜井充 民進公認
山形 舟山康江 無所属
栃木 たのべたかお 無所属
群馬 堀越啓仁 民進公認
新潟 森裕子 無所属
長野 杉尾ひでや 民進公認
山梨 宮沢ゆか 民進公認
石川 柴田未来 無所属
福井 横山龍寛 無所属
滋賀 林久美子 民進公認
岡山 黒石健太郎 民進公認
鳥取・島根 福島浩彦 無所属
山口 こうけつ厚 無所属
徳島・高知 大西聡 無所属
長崎 西岡秀子 民進公認
宮崎 読谷山洋司 無所属
熊本 あべ広美 無所属
沖縄 イハ洋一 オール沖縄
残る一人区(12)は、 岩手 福島 富山 岐阜 三重 奈良 和歌山 香川 愛媛 佐賀 大分 鹿児島である。
日経(4月30日)によれば、「7月の参院選で勝敗のカギを握る32の改選定数1の選挙区を巡り、民進、共産、社民、生活の野党4党は全体の6割を超える20選挙区で統一候補の擁立に合意した。残る12のうち、9選挙区で一本化に向け最終調整に入っている。参院選で「自民1強」に歯止めをかけるには野党共闘の加速が欠かせないと判断。残る選挙区で協議を進め、5月中の決着をめざす」とのことである。
私は、無原則な選挙共闘の相乗効果を安易に信じる立場にはない。しかし、今回参院選に限っては、野党候補統一の相乗効果は大いに期待しうるのではないだろうか。『1+1=2』にとどまらず、『1+1=2.5』にも、あるいは『1+1=3』にもなり得ると思う。
「一人区では、どうせ野党候補に勝ち目はない」という雰囲気は、アンチ・アベ無党派層の投票意欲を著しく殺ぐことになる。ところが、第2位・第3位の候補者の共闘が実現して接戦に持ち込めるとなれば、反アベ・反自民・反公明の無党派層の投票行動へのインセンティブが跳ね上がるのだ。
前回参院選(2013年)は、野党陣営にとっては最悪の事態でのものだった。このときの票の分布を今回も同様と安易に決めつけてはならない。北海道5区で示された接戦状態が、至るところで現出するだろう。そして、その経験は来たるべき総選挙における小選挙区共闘につながることになる。
「野党は共闘」という昨年の戦争法案反対デモのシュプレヒコールが、まだ耳に響いている。あのコールが、ここまで政治を動かしつつあるのだ。もしかしたら、あのデモが、アベ政治を許さず、改憲を阻止することになるのかも知れない。
(2016年5月2日)
北海道5区補選の教訓をどうとらえるかについては、各地のいたるところで議論がまき起こり、貴重な情報や意見が飛びかっていることだろう。メーリングリストというツールは、議論の場の設定にこれ以上のものはない。
私も、いくつかのメーリングリストで議論に参加しているが、同期弁護士のメーリングリストに札幌の郷路征記君から、以下の傾聴に値する意見をもらった。同君の許可を得たので、ご紹介したい。
まずは、郷路君が推薦する動画の画像。キャプションは省いての紹介。これだけでも、十分な「選挙総括」となりうる。
https://youtu.be/dkBxZu4IO5A
http://www.kanaloco.jp/article/168575
https://www.youtube.com/watch?v=6F-IicWUgZU
http://www.asyura2.com/16/senkyo204/msg/851.html
メーリングリストでは、私が次のように振った。
「さて、5区補選。残念でならない。「いま一歩及ばずの敗北」である。いま一歩のところまで追い詰めた積極面の教訓と、もう一歩のところで勝利に届かなかった消極面の教訓と。その両面について多くの人からの、とりわけ直接選挙に携わった人たちからの報告や意見を聞きたい。
共闘は本当にうまくいったのか。共闘によるシナジー効果が、客観的にあったのか。選挙戦を戦った人に実感できたのか。その「成果」についての確信が、全国に伝播するのか。
そこが最大の関心事だ。」
これに対して、郷路君のこの上ない丁寧な回答があった。
「澤藤君の問題提起に答えることができるかどうか。次のように考えている。
考える下敷きにしたのは、次の分析。
善戦じゃダメなのだ 衆院補選・野党共闘「惜敗」の絶望
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/180218
安倍官邸を苛立たせる、補欠選挙の「ある調査結果」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48537
そして、朝日の4月27日道内版記事「市民主導」浸透に壁
http://www.asahi.com/articles/CMTW1604270100003.html
1 野党共闘成立前には、ダブルスコアで自民が勝つという調査結果が出ていたという。票差の点は別にして野党分立では勝てっこないことは自明だったと思う。
その理由の一つは、安倍内閣への厚い支持。これがずっと変わっていないこと。アベノミクスによる経済活性化を掲げた(プラス、財政規律を無視した 自民党的ばら撒き政策の実行による)安倍内閣への支持は、正月以来の株安や円高、中国をはじめとする新興国経済の減速など、この先に不安要因をはらみつつ、まだ国民の支持をつなぎとめることに成功していたと思う。
2 それが、自民党・和田候補は、「伯仲・誤差の範囲」という調査がでるところまで追いつめられた。
その理由は
ア なんといっても野党共闘の成立。そのことによって前回の選挙での票数でいえば、勝負になるところまで持ち込めた。これがなければ何も起きなかっただろう。なんといっても展望がないからだ。
イ 「保育園落ちた 日本死ね」のブログによって、安倍内閣の新自由主義的経済政策による弱者切り捨て、格差拡大に苦しめられている国民の怒りのマグマに火が付きそうになった。そのことが契機となって、奨学金の問題とか、最低賃金の問題とか、保育士の待遇の問題とか、国民の貧困に関わるさまざまな問題が噴出しそうな形勢となった。
ウ 池田候補は子供時代から青年期を超える期間の、極度の貧困を乗り越えてきた経歴を持ち、他方、和田候補は三菱商事の社員。妻は町村の娘。一見して「上級国民」である。イの問題との関係で池田候補の経歴とその人柄が強い訴求力を発揮したと思う。
3 危機感を持った自民党は、党本部の総力を挙げた組織選挙をおこなった。なにせ、ダブル選の可否を占うという意味があった。
陣営の幹部の発言として新聞報道されたものの中に、「票を削り出している」という表現があった。それくらい、必死になってやったようだ。それくらいの危機感をもったようだ。野党陣営が勝って勢いがつけば、参議院の議席10程度に影響するという考え方もあった。自公が総力をあげた組織選挙を行うことによって、前回の票を若干上回る程度の得票に繋げることができたのだと思う。これが自民党の勝因だとおもう。総力をあげれば、この程度の票を削り出すことができる組織・人間関係の束を自民党・公明党は持っているということだと思う。大地の票(鈴木宗男)がどう動いたのかはわからないが、和田候補に行ったと考えるのが妥当だと思う。だとすると、必死で、総力をあげて、前回を下回っている程度ということもできそうである。
参議院選挙になれば、党本部が一地域に総力を挙げることはできない。この点では、自民党は厳しい選挙を強いられることになるのではないか?
4 野党共闘は浸透しきれなかった。投票率60%を目標にしたが届かなかった。60%に届いていれば勝てていたかもしれない。無党派層の7割を獲得していたのだから、その層が投票に来てくれていれば、勝機は生まれたのである。
浸透できなかった理由は
ア 熊本地震だという。たしかに、熊本地震を契機に、雰囲気は変わったと思う。保育園落ちたも報道の表層から消えて行った。おおさか維新の片山代表が「タイミングのいい地震」と言ったのは、本音で本当だったようだ。安倍首相はこの地震を利用したと思う。事故直後に食糧90万食を送ると表明したり、自衛隊の派遣規模を2000から2万に増加するなどした。現地視察を投票日の前日である土曜日にして、激甚災害指定をその時までしなかった。
報道によれば、選挙狙いの面もあると思われる安倍首相の対応は、国民には評価されているのだという。 危機が発生すると世論は政権支持に回る。このことによって、上記2イの問題が消し去られていった。
イ シールズも市民連合も学者の会もママの会も、全体から見れば少数である。北海道5区の住民に人的なつながりを持っているわけではない。絵を作るべく努力はした。でも、その絵が大きな力になるほどの参加者のボリュームはなかったと思うし、期間もなかったと思う。また、北 海道5区という地域性もあると思う(札幌市厚別区を除く)。
そうだとしても、昨年以来のシールズを先頭にした市民組織の継続的活動なしには、野党共闘すら考えることができなかった。その点で、彼らの奮闘と先見的活動には本当に頭が下がる。
ウ 市民主導の選挙運動を支え、実体化する組織が弱体化しているのではないか。民進党北海道の主体を担っていると思われる官公労 (北教祖・全道庁を中心とする自治労等)に往年の力はないだろう。共産党とその関連組織の力量の減退も疑う余地がないだろう。
エ 自民党の政治的影響力は全世代に及んでいる。池田候補は60代の年齢層でのみ多数だった。20代から50代のすべて、70代以上で和田候補が多数を占めている。若い世代まで、もはや保守である。そのような広い自民党支持層が醸し出す政治的雰囲気が、リベラルの風を吹かせなかったのではないかと思う。
5 以上で、澤藤君の問いに答えるとすれば、共闘は本当にうまくいったのかということについては、イエスなのだと思う。選挙対策の関係者達の談話でも否定的なものはない。お互い努力しあい、尊重し合ったのではないか。そして、各党の支持者を池田支持にほぼ纏めきることができたことも、信頼関係を作ることになったと思う。
共闘によるシナジー効果が客観的にあったのかという点についていえば、上記の経過が示す通り、客観的にあったといえるのではないか。その程度においては、この程度だったとしても。
選挙戦を闘った人たちが共闘の成果を実感できたのかという点でいえば、ぞれで一発逆転できるものではないにせよ、共闘して必死に戦わない限り、勝負にならない、共闘すれば勝負ができるというレベルではその成果を実感したのではないだろうか。
それが、全国に伝播するかという点については、多分、伝播すると思うが、判らないというところかな。確信が全国に伝播するかどうかは判らないけれども、野党共闘は広がると思う。民進党内部の主要な反対者らがこの選挙の経験を通じて、明確な反対をしなくなるのではないかなと思っている。
6 参議院選挙に向けて、安倍内閣の争点隠しは横行するだろうし、社会福祉についてもばら撒き的政策を打ち出すことによって、不利な争点を消失させようとするだろう。その中で、何をどう訴え、市民主導を拡げていくかが課題になりそうに思う。
弁護士 郷路征記
必死で選挙戦を闘った人たちがおり、共闘の成果を実感した人たちもいたことがよく分かる。私の、「その成果についての確信が、全国に伝播するのか。」は愚問だ。全国に伝播するのは、全国の人びと、私を含めた私たち自身の役割なのだから。
ささやかながらも、当ブログもその役割を果たしたいと思う。
(2016年4月28日)
本日は、文京区民センターでの「アベ政治を許さない! 4・27文京区民集会」。熱気のこもったなかなかの集会となった。若者の姿も見えたのが頼もしい。
以下は、私の基調報告のレジメ。このレジメの行間をそれぞれの立場で読み込み、使いやすいように改変して活用していただけたらありがたい。
現在の状況を、「アベ政治の罪」と「国民の被害」と「処罰(退陣)」と構成してみた。医療に喩えれば、「病名(疾患)」と「症状」と「処方」と構成もできるだろう。アベ政治にレッドカードを突きつけて「ピッチから退場」させなければならない。その理由と方法を分かり易く整理したつもりである。
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アベ政治十の大罪
1 憲法をないがしろにする罪 (解釈改憲と明文改憲)
2 平和を破壊する罪 (戦争法と7・1閣議)
3 民主主義を蹂躙する罪 (安保特での「採決」強行)
4 格差を拡大し貧困をつくり出す罪 (新自由主義経済政策)
5 メディアを規制し国民の耳と目をふさぐ罪(秘密保護法と停波・NHK)
6 原発再稼働と原発プラント輸出推進の罪(本音は核保有)
7 歴史の真実を曲げる罪 (靖国・慰安婦・教科書)
8 オール沖縄の民意を圧殺する罪 (辺野古新基地建設強行)
9 TPP交渉推進の罪 (秘密主義と主権の放棄)
10 劣化政治家濫造の罪 (甘利・宮崎・武藤・大西…)
アベ政治による七つの被害
1 危うくされているものは平和
2 奪われたものは民意に基づく政治
3 覆われたものは真実
4 痛めつけられたものは庶民の生活
5 汚されたものは歴史の真実
6 断ち切られたものは未来と希望
7 損なわれたものは安全と安心
こうしてアベ政治に引導を渡そう
アベ政治の罪と被害を深く知ること、広く知らせること
至るところでアベ・ビリケン(非立憲)政治批判の声を上げること
声を上げた市民が幅広く連帯すること
市民が野党の背を押して野党共闘を作り上げ選挙戦に勝ち抜くこと
勝ち抜いた国会で、憲法改正の発議を許さず、戦争法を廃止すること
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アベ政治の基本姿勢は、「戦後レジームから脱却」して、「美しい日本を取り戻す」というもの。これは、戦後民主主義を否定して戦前回帰を呼号するものにほかならない。
なぜ、戦前回帰なのか。天皇制下の臣民こそが、政権にとって統治しやすく、資本にとって使い勝手がよいからだ。文句を言わず権利主張をせず、権威主義的で勤勉な国民、これこそ政権と政権を支える資本が望む国民像なのだ。
権力や資本に従属する臣民は、敗戦を経て主権者となり人権主体となった。この変化をもたらしたものこそ戦後民主主義であり、その制度の中核に日本国憲法がある。アベ政治は、この戦後民主主義体制を総体として否定し去ろうという政権である。だから、日本国憲法に激しい敵意をもっている。アベ政権はこれまでの保守政権とは違う。戦後民主主義と日本国憲法を否定する危険な存在と認識しなければならない。
アベ政治のもう一つの基本姿勢は、新自由主義の徹底である。資本を優遇し、資本の活動への最大限の自由を保障しようとする。具体的には、解雇の自由であり、労働条件差別化の自由であり、不当労働行為の自由であり、最大限の規制緩和であり、企業減税である。格差・貧困の積極的容認策でもある。
新自由主義政策と戦前回帰政策とが、奇妙なマッチングをしているのが、アベ政治の特徴ではないか。このマッチングは、必然的に軍事大国化路線を志向し、富国強兵を国策とすることになる。
だから、政治・経済・財政・外交・防衛・教育・福祉・労働…等々のあらゆる分野において、アベ政権は国民生活と軋轢をもたらす。一言で表現すれば、アベ政治とは本質的に反国民的政治なのだ。しかも、政権の好戦性は際立っている。
それを整理すれば、「アベ政治 十の大罪 七つの被害」となる。
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アベ政治にレッドカードを突きつけなくては、壊憲の動きは止まらない。引導を渡す手段は、何よりも選挙である。反アベ陣営が小異を捨てて選挙共闘の大同につかなくては選挙戦での勝利はできない。
反アベ陣営とは、市民と諸野党である。北海道5区の補選から貴重な教訓を汲むべきである。池田候補の惜敗を共闘の失敗とみてはならない。
NHKの出口調査による投票者の政党支持率のうち与党は次の数字だった。
自民 44%
公明 5%
自・公の合計が49%となる。これに、1%未満の「大地」を切り上げて足せば、ちょうど50%。つまり、町村後継である和田候補の基礎票はほぼ50ポイント。
これに対する野党側は、以下のとおりである。
民進 20%
共産 5%
社民 1%
合計して、26%。つまり、池田候補の基礎票は26ポイント。
アベ側の和田候補に、民進と共産と社民の候補がバラバラに対抗しても勝ち目はない。候補者を統一した場合の基礎票の割合は50対26。ほぼ2対1の差。当初は、「ダブルスコアでの和田勝利」と囁かれたことにはそれなりの根拠がある。
しかし、池田候補と支持者の奮闘にはめざましいものがあった。市民が各野党の紐帯となって選挙運動の母体を作り、市民候補を市民と各野党が一体となって推す形ができた。創意にあふれた自発性の高い運動の結果、ダブルスコアを伯仲まで押し戻したのだ。熊本震災前には逆転の声も聞かれたし、千歳・恵庭という基地の街を除けば池田候補が勝っていたという側面も見なければならない。
参院選が近い。一人区の共闘がどこまで出来るかがカギとなってきている。参院選の経験は、総選挙の小選挙区での共闘につながる。市民と野党の選挙共闘によって、議席を確保しアベ政権を退場させて、改憲を阻止しなければならない。切実にそう思う。
アベ政治跳梁の現事態は、紛れもなく非常時である。立憲主義も危うい。民主主義も自由も危うい。何よりも平和が危うい。明文改憲を許せば、悔いを千載に遺すことになる。ならば、この非常時を乗り切るために、市民の声を背にした野党の大同団結があってしかるべきだ。いや、憲法と平和と民主主義を守るには、この道以外にはないではないか。
(2016年4月27日)
昨夜から元気が出ない。北海道5区の補選の投票結果は、紙一重に肉薄しながらも、野党共闘が支援する市民派池田まき候補の敗北となった。残念でならない。
「いま一歩及ばずの敗北」である。いま一歩のところまで追い詰めた積極面の教訓と、もう一歩のところで勝利に届かなかった消極面の教訓と。その両面について多くの人からの、とりわけ直接選挙に携わった人たちからの報告や意見を聞きたい。
今回は、勝利に結びつかなかったが、差し迫っている憲法の危機を回避するには、市民と野党が大同団結して選挙で勝つしか方法がない。北海道5区補選で形づくられた「この道」「この形」しかないのだ。どのようにすれば、「この道」をもっと大きく広げ、多くの人に歩いてもらうことができるのか。その教訓を得たいと思う。がっかりはしているが、「結局共闘しても勝てない」と清算主義に陥ってはならない。私も、及ばずながら、分かる範囲で、考えてみたい。
北海道5区補選が注目されたのは、野党共闘の効果の試金石としてである。任意の一小選挙区で野党共闘候補が勝てれば、日本中の小選挙区で勝つ展望が開ける。北海道5区は、そのような意味の「任意の一選挙区」であっただろうか。
選挙結果でまず目についたのは、5区内での得票の地域的偏りである。区内各自治体は、札幌市厚別区・江別市・千歳市・恵庭市・北広島市・石狩市・石狩郡当別町・石狩郡新篠津村である。各自治体ごとの候補者別得票数は以下のとおり。
和田 池田
札幌市厚別区 29,292 33,434
江別市 28,661 29,687
千歳市 25,591 14,439
恵庭市 19,447 13,062
北広島市 13,419 15,200
石狩市 13,103 13,133
市区計 129,513 118,955
当別町 5,023 3,902
新篠津村 1,306 660
北海道第5区 135,842 123,517
以上のとおり、池田候補は、札幌市厚別区、江別市、北広島市、石狩市では勝っているのだ。千歳市、恵庭市で大きく負け込んでいるのが敗因となっている。全体の票差は1万2300票だが、千歳市での1万1100票差、恵庭市での6400票差が大きい。言うまでもなく、この両市は基地の街である。自衛隊関係者の有権者が多い。安全保障問題が大きな争点となった今回選挙では、明らかに千歳・恵庭は「任意の一選挙区」ではなかった。
千歳・恵庭を例外地域とすれば、これを除いた札幌市厚別区・江別市・北広島市・石狩市と市部では野党共闘候補が勝っている。このことは、大いに勇気づけられるところではないか。
ところで、朝日・NHK・道新・共同通信が、それぞれの出口調査の結果を発表している。
朝日は、その結果の報道に「無党派層68%『池田氏に投票』」と見出しを付けている。
「池田氏の方が無党派層依存度が高く、無党派層で和田氏に大きく水をあける必要があった。この日の出口調査で、無党派層は32%が和田氏に、68%が池田氏に投票。池田氏善戦に見えるが、結果を見ればその差では不十分だった。」という分析が、正鵠を得ているのだろう。
NHKの調査は、「和田氏は、無党派層では30%余りの支持を集めました。これに対して池田氏は、また、無党派層からは70%近くの支持を集めました」と、ほぼ朝日と同じ結果を報じている。
道新の分析も同様である。「池田氏は、民進党支持層と、共産党支持層の9割以上を固めた。無党派層からも7割の支持を得たが、当選には及ばなかった。」
共同通信の調査結果では、「『支持政党なし』の無党派層は、73・0%が池田氏に投票した。」という。
朝日によれば、「自公の支持層は出口調査回答者の4割を超えるのに対し、4野党の支持層は3割に満たない」という。そもそも基礎票が「4割強」対「3割弱」と、我が方著しく劣勢なのだ。結局は無党派層の票を上積みするための奪い合いとなるが、野党陣営が勝つためには、基礎票の差を埋める以上の票差をつけて無党派層を取り込まなければならない。池田候補は、「68%」(朝日)、「70%近く」(NHK)、「7割」(道新)、「73%」(共同)と無党派層に浸透したが、基礎票の差を埋めるに至らず、いま一歩及ばなかったということなのだ。
道新の調査は、「野党統一候補で無所属新人の池田真紀氏も民進支持層の95・5%、共産支持層の97・9%の票を得ており、両候補とも支持層を手堅くまとめた。」と報告している。
野党陣営は、それぞれの自陣を固めきり、無党派層を取り込む相乗効果も上げた。共闘は成功したと言ってよい。しかし、千歳・恵庭を擁するこの選挙区では、基礎票が不足していた。そして、無党派層の取り込みが、勝つための高いハードルをクリアーするには十分でなかった。
さて、他の多くの選挙区であれば、基礎票の差は北海道5区ほどではないとして、勝てたのではないか。池田まき候補には、政見放送の機会が与えられなかったなどの無所属故のハンディもあった。このような不公平をカバーすることができれば、勝機があったのではなかろうか。
勝敗の分かれ目は、無党派層の取り込み如何である。さらに無党派からの支持率を上げるには、どのような訴えをすればよいのだろうか。また、投票率のアップは野党有利という図式が明確になった。投票率を上げる工夫はどうすればよいのだろうか。そして、いよいよ次からは18歳の有権者が登場する。この若者たちに、どのような訴えかけが有効なのだろうか。
「これ以外にはない」道を大道とするために、知恵を集めたいものである。
(2016年4月25日)
選挙は戦争によく似ている。昨日(4月12日)開戦の、北海道5区の「選挙戦」について、本日の朝日トップは、「衆院2補選告示 参院選前哨戦」と見出しを打った。天下分け目の総力戦の前哨戦。しかも、アベ自民と野党・市民連合の一騎打ちである。
続いて、「アベノミクスの評価 焦点」という大見出し。関連の記事は以下のとおり。
「安倍首相はこれまで、経済が好調であることを前面に掲げて国政選挙を連勝してきた。ただ、今年に入り世界経済の減速を受けた円高・株安の影響で、政権が掲げる「経済の好循環」の実現が見通せなくなっており、アベノミクスの評価が改めて問われる。安全保障関連法が昨年9月に成立してから初めての国政選挙でもあり、同法の是非をめぐる論戦も焦点だ。環太平洋経済連携協定(TPP)への賛否も争われる。」
結局対立軸となる争点は、「アベノミクス」「安全保障関連法」「TPP」の3本というわけ。3本ともアベ側が放った矢だが、色褪せ、折れている。「アベノミクスの失敗」「戦争法の違憲性」「TPPの秘密主義と地域経済切り捨て」の3本の矢が、返り討ちの矢となっている。
谷垣幹事長の街頭演説が紹介されている。
「野党統一候補を『何党に所属して政治をやるのかも分からない』と批判。一方で『アベノミクスを力の限りやってきた。あと一歩のために、政治の安定が何よりも大事だ』と訴えた。」という。この人、性格上大言壮語は似合わない。結局、これくらいのことしか言えないのだ。
アベ側候補の出陣式で読み上げられた安倍晋三自身のメッセージは次のとおり。
「国民に責任を持つ自民党、公明党の連立政権か、批判だけの(旧)民主党、共産党勢力かの選択を問う極めて重要な戦いだ」。
防戦一方のメッセージ、積極的な武器も戦略も戦術もなんにもない。迫力ないことこの上ない。総大将がこれでは、士気は上がらない。
戦は、勢いだ。いま自公側に勢いはなく、野党・市民側には勢いがある。緒戦の戦況、我が軍に大いに有望ではないか。
ところで、野党連合軍に新兵器はないのか。敵の放った矢を的外れとし、あらためて射返すだけでも大いに意気が上がってはいるが、さて、果たしてこれで十分だろうか。
常々、不思議に思っていたのは、アベ自民の評判はよくない。よくないどころではなく、悪いと言いきってよい。アベの性格もよくない。政策もよくない。個別の政策では明らかに世論の支持を得ていない。ところが、内閣支持率はなかなか落ちない。落ちそうになりながらも、落ちきらない。その理由が実感しにくい。
本日の東京新聞「本音のコラム」欄に、斉藤美奈子が「一発逆転の秘策」という記事を書いている。中身は、松尾匡『この経済政策が民主主義を救うー安倍政権に勝てる対案』(大月書店)の紹介。斎藤美奈子をして、「安倍自民党に勝つための起死回生ともいうべき本を見つけた。」と言わしめている。
大筋ははこんなことだ。「安保法制も改憲も問題だけど、人々が求めているのは景気と福祉だ。対抗勢力はそこがわかってない。個別の案件では反対者が多いのに安倍政権の支持率が落ちないのはなぜか。人々が不況に戻るのを恐れているからだ」というのが、この書の基本視点。確かにそうだと頷かざるを得ない。
自民党は長期低落傾向にあって、国民から見放された。国民の輿望を担って、民主党政権ができたが、国民の意識としては大きな失敗をしたのだ。この失敗の失望が大きい。
自民党の方がまだマシだった。アベ自民に戻って、なにか民主党政権よりはマシなことをやっているようだ。自分の生活は少しも楽にはならないが、いつかはよくなることを期待できそうだ。自民以外の政権に委ねるのは冒険ではないか。そんな気分が、安倍の評判の悪さにもかかわらず、内閣支持率を支えているのだろう。
「英労働党の党首選でコービン氏が勝ったのも、米大統領選の民主党候補者指名争いでサンダース氏が躍進したのも、庶民に手厚い政策ゆえだった。」ことから学べ、というのが松尾書のコンセプト。
「よって野党が勝つには『こんなものでは足りない』『もっと好景気を実現します』『日銀マネーを福祉・医療・教育・子育て支援にどんどんつぎこみます』というスローガンを掲げる以外に方法はない!」というのだ。なるほど。それは基本的に正しいと思う。
アベノミクスは、「パイを大きくしましょう。そうすれば、貧者にも分け前が期待できる」とした。しかし、パイもさして大きくはならず、むしろいびつな形に変形した。何よりも3年待っても分け前は来ない。ならば、アベノミクスとはおさらばして、徹底してパイの分け前優先に切り替えよう。国民1%の利益にではなく、99%の利益のために。ここから、社会は活性化する。経済の好循環が始まる第一歩ともなる。
いま、野党・市民連合の池田まき候補が、「誰一人置いてきぼりにしない政治をつくる」としているのは、結局はその路線だ。一人ひとりの人間を大切にする政治の実現こそが、社会全体の経済を活性化し、パイの拡大にも繋がるということなのだ。
池田まき候補の公式ウェブサイトを何度も開いて宣伝に努めたい。
http://ikemaki.jp/mypolicy
同候補はこう言っている。
「飢餓、貧困、格差、紛争、難民、テロ。立憲主義、民主主義の危機。
世界の、そして日本の大きな課題です。
強い者による強い者たちのための政治が、
こうした問題を深刻化させています。
権力の暴走を止めなければなりません。
声なき声をもよく聞き、政治に反映させなくてはいけません。
『誰一人、置いてきぼりにしない』
『誰もが安心して暮らせる社会をつくる』
私、池田まきはそれをモットーに、福祉の現場で、
既成概念にとらわれず、行動を起こしてきました。
さらに、環境、経済、政治など広い分野で
社会的な危機の解決に取り組んでいくために。
ここ北海道から、より良い日本をつくりたい。
池田まきは、皆さんと共に、
平和、いのち、暮らしを守る戦いに挑みます。」
がんばれ。野党市民共闘候補。安倍の「強い者による強い者たちのための政治」に負けるな。
(2016年4月13日)
いよいよ、市民主体の選挙戦が幕を開けた。本日(4月12日)、京都3区と北海道5区の衆院補選の告示である。いずれも投開票は4月24日。これが、今年の政治決戦のプラスのスパイラルの発火点。ドミノ倒しの最初の一コマだ。アベ政権には、これがケチのつきはじめ。
平和や人権に関心をもつ国民にとって、第2次アベ政権は3年も続く悪夢だ。しかし、ようやく「驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し」となる終わりの始まりがやって来た。
京都3区は自民の不戦敗で、自民の議席減1は闘いの前から決まった。自公の議席の増には憲法が泣き、議席の減には憲法が微笑む。京都でも、少し憲法が微笑んだ。
しかし、天下分け目は北海道5区だ。この選挙区の勝敗は、単なる1議席の増減ではない。その後に続く、参院選と総選挙の野党共闘の成否がかかっているのだ。政党レベルでは、民・共・社・生の4党だが、実はその背後に広範な市民の後押しがある。野党共闘とは、野党支持者を単純に束ねただけのものではない。「野党は共闘」とコールを上げる無党派市民が支えているのだ。その典型としての「北海道5区モデル」が成功すれば、正のスパイラルが動き出す。ドミノ倒しが始まるのだ。
ブロガーは、今日からは大いにブログでツイッターで池田まき候補の応援をしよう。虚偽や誹謗はいけない。しかし、アベ政権や、自公与党への批判に何の遠慮も要らない。今、最大の問題は戦争法の廃止であり、明文改憲の阻止である。そのための池田候補を徹底して応援しよう。せっかく、そのような選挙運動が自由になったのだ。大いに活用しようではないか。
一昨日(4月10日)の日曜日、千歳市で開かれた池田陣営の街頭演説会が象徴的だ。3700人の聴衆に、6人の弁士が池田候補推薦の弁を語った。ジャーナリストの鳥越俊太郎、SEALDsの奥田愛基、「安保関連法に反対するママの会」の長尾詩子、「市民連合」の山口二郎、そして「戦争させない北海道をつくる市民の会」の前札幌市長・上田文雄弁護士だという。政治家がいない!のだ。
集会の名称が、「千歳から、未来の日本を考える」。意気込みは、「北海道5区から、市民の力で平和な日本を切り開く」というもの。たいへんな盛り上がりだったと報じられている。
参加者の共通の思いは「平和」だ。平和な日本の未来を願う人びとにとって、アベ政権は危険きわまりない。その暴走にストップをかけないと、日本は本当に戦争をする国になってしまう。その危機感が、反アベ、反自公の共闘を成立させているのだ。
いま日本の平和のために最も必要なことは、選挙に行くことだ。選挙に行って、反アベの野党共闘候補に投票することだ。自公政権の候補者を落選させて、改憲を阻止することだ。「戦争に行くな」「投票に行こう」。このスローガンで、反アベの野党共闘を応援しよう。
ドミノ倒しを警戒するアベ政権は、北海道5区で負けたら衆参のダブル選挙は回避するだろうと言われてきた。ところが急に空気が変わっている。「北海道5区で負けたらどうせジリ貧。それなら早い総選挙の方が傷が浅く済む」という、与党内の声があると報じられている。つまりは、全国の衆院小選挙区での野党共闘が十分に進展せず、統一候補が決まらないうちの抜き打ち解散が与党に有利という読みなのだ。
しかし、ダブル選挙はそれこそ壮大な歴史的ドミノ倒し実現の場となる公算が高い。すべては、アベ政権を倒すに足りる野党共闘の成否にかかっており、野党共闘の成否は市民の後押しの声如何にかかっている。
がんばれ、池田まき候補。がんばれ、4野党。そして、がんばれ5区の無党派市民。全国の市民たちよ。
(2016年4月12日)
今、政治のすべてが7月参院選挙をにらんで動いている。総選挙との同日選になる可能性も高いとされ、7月政治決戦の重大性は高まるばかり。仮に同日選となり、両院とも改憲勢力が3分の2の議席を占めることになれば、一気に明文改憲の気運が高まることにもなりかねない。
明文改憲は、取り返しのつかない政治的後退と考えざるをえない。日本国憲法の「改正」とは、立憲主義・平和主義・人権保障・民主主義が大きく損なわれることにほかならない。「小異を捨てて大同につく」とした場合、「改憲阻止」以上の大同はない。いまや、安倍政権とその追随勢力が明文改憲を強行しようという事態である。すべての政治勢力は改憲派と護憲派に二分される。それ以外はないのだ。
7月政治決戦において改憲に必要な議席を獲得すべく、与党勢力は不人気の政策を選挙後に先送りして失政隠しに余念なく、ひたすらにバラマキを狙っている。一方、院内では守勢に立つ野党は、小異を捨てた選挙協力によって、改憲にストップをかけようとしている。いまや、日本の命運が野党の選挙協力の成否にかかっていると言って過言でない。
一昨日(4月3日)の毎日新聞トップ記事が、参院選の野党共闘進展の模様を伝えている。見出しは、「野党一本化、15選挙区…32の1人区 本紙調査」というもの。これが、全国の最新情勢と見てよいだろう。
「夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」(改選数1)のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で『自民党一強』を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。」
毎日は、32の「1人区」を野党の選挙協力成否に関して3分している。
合意成立 15区
青森・宮城・山形・栃木・新潟・福井・山梨・長野・「鳥取島根」・山口・「徳島高知」・長崎・熊本・宮崎・沖縄
協議中 10区
岩手・秋田・福島・富山・三重・滋賀・和歌山・岡山・佐賀・大分
難航 7区
群馬・石川・岐阜・奈良・香川・愛媛・鹿児島
これはまずまずの朗報ではないか。昨年(2015年)の戦争法反対運動の中での市民のコール「野党は共闘」が、このような形で実を結びつつあるのだ。
毎日は次のようにもいう。
「13年参院選の1人区(当時は31選挙区)で29勝2敗と圧勝した自民党は、野党の動きに警戒を強めている。」
「単純には比較できないが、13年参院選の結果を基に試算すると、15選挙区のうち宮城、山形、栃木、新潟、山梨、長野の6選挙区で野党の合計得票数が自民党を上回る。」
なお、逆転は「協議中」の三重を入れれば7選挙区となる。他の選挙区も、共闘の相乗作用で勝機が出てこよう。参院一人区は小選挙区制なのだから、野党の選挙協力なき限り、与党圧勝となるのだ。明文改憲が日程に上る情勢では、野党は選挙協力をするしかなく、反自民で野党の選挙協力ができれば、小選挙区効果で底上げの議席に胡座をかいている与党に大きな打撃を与えうることになる。
アベノミクスの失敗による地方の疲弊。TPPのウソ。原発再稼働の強行。平和や民主主義の危機…。安倍政権に魅力的な政策はないでないか。共闘の成果は、大きく情勢を変えるものとなるだろう。
選挙協力しても野党に失うものはないように見えるところだが、合意成立難航の理由については、このように説明されている。
「逆に協議が難航しているのは7選挙区。民進党や連合の県組織に共産党へのアレルギーが強いのが主な原因だ。奈良では民進、共産両党が協力を探っているものの、おおさか維新の会が候補者を擁立するため、野党票が分散する。一方、愛媛では今後、民進党の元衆院議員擁立で野党がまとまる余地がある。」
市民が共闘を願っているこのときに、野党各党の改憲阻止本気度が問われている。共産党アレルギーが共闘の障害とは情けない。おそらくは、市民からの手痛い批判を免れないだろう。全国的に、野党の選挙共闘が進展すれば、「難航7区」の情勢も変化せざるを得ない。
本日(4月5日)になって、「難航7区」のうちの愛媛選挙区での野党統一候補擁立が報道されている。また、「協議中10区」のうちの富山でも、「今月中旬にも野党統一候補擁立へ」の報道がなされている。地元テレビが報じるその共闘協議のあり方が、たいへんに興味深い。
候補者調整の主役は、「アベ政治を許さない!戦争法反対!野党共闘を求める オールとやま市民会議」である。「オールとやま」が、民・共・社・生の4党に呼びかけて、協議を重ね、本日(4月5日)時点で、民・共ともに独自候補擁立を断念し、4党が「オールとやま」推薦の「政党色のない清新な統一候補」擁立に原則合意したというのだ。富山から目が離せない。毎日が報じた「最新情勢」も急速に動きつつあるのだ。
野党共闘の動きに与党は戦々恐々というところ。「ばらばらだったものがまとまった時に野党票が大きく上向く可能性はあり、脅威だ」というのが、ホンネのところ。タテマエとしては、「何のために野党共闘を作り上げるかの大義名分も不鮮明だ。国民の信頼は向かない」という野合論が語られている。
野党内の政策の違いは当然だ。当選した統一候補が、議会の審議において、民・共どちらの立場に立つか、難しい局面におかれることも当然にあるだろう。それでも、その程度のことを小異として共闘しているのは、もっと大きな大義があるからなのだ。その大義とは、「アベ政治を許さない!戦争法反対!」そして「憲法改悪阻止」である。
解釈改憲による戦争法に反対。その廃止法成立を求める立場においての共闘が必要であり、明文改憲阻止がその次の問題点。その理念で議員としての活動があれば、あとは各議員の判断に任せればよいことではないか。敏感に世論に耳を傾け、自分の判断で発言し行動する議員が増えることは大歓迎だ。
私はひそかに思っている。こうなるのではないか。
各地での選挙協力協議の推進⇒各地での選挙準備活動の活発化⇒各地相互の波及効果⇒全国での選挙協力合意促進⇒議会内での野党活動原則の確認⇒議会外での市民運動の活発化⇒各野党の党勢拡大⇒参院選勝利⇒総選挙への波及⇒改憲阻止⇒安倍退陣⇒日本の民主主義と立憲主義の前進
これこそ「好循環」ではないか。
(2016年4月5日)
北海道5区の衆議院補欠選挙の日程が間近だ。4月12日告示24日投開票。この選挙の意味が大きい。参院選の前哨戦でもあり、野党共闘成功の試金石でもある。この選挙結果が衆参同時選挙の有無を決めることになるかも知れない。今後の情勢を大きく変えうる選挙として注目せざるを得ない。
北海道5区とは、札幌市厚別区、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村の地域。有権者455,720人。
補欠選挙は、町村信孝前衆院議長の死去に伴うもの。自民党は亡町村信孝の次女の夫を立てての「弔い合戦」。これに対抗して「安全保障関連法廃止を目指す野党統一候補」となっているのが、無所属新人池田まき(43歳)。どのメディアも、「池田まき急追」「大接戦」の報。当然のことながら知名度はイマイチだが、清新さでは断然リード。
下記URLが、池田まき公式WEBサイト。政治家らしくなく、候補者らしくない、同候補の好感度は抜群と言ってよい。
http://ikemaki.jp/
「ずっと平和を。もっと安心を。北海道5区から日本を変えよう」
これが、同候補のメイン・スローガン。
そして、同候補の最大の強みは、福祉の現場で働いてきたこと。多くの人の生活苦や不幸と直接に接してきたことである。
同サイトでは、こんな挨拶文を読むことができる。
「飢餓、貧困、格差、紛争、難民、テロ。
立憲主義、民主主義の危機。
世界の、そして日本の大きな課題です。
強い者による強い者たちのための政治が、
こうした問題を深刻化させています。
権力の暴走を止めなければなりません。
声なき声をもよく聞き、政治に反映させなくてはいけません。
『誰一人、置いてきぼりにしない』
『誰もが安心して暮らせる社会をつくる』
私、池田まきはそれをモットーに、福祉の現場で、
既成概念にとらわれず、行動を起こしてきました。
さらに、環境、経済、政治など広い分野で
社会的な危機の解決に取り組んでいくために。
ここ北海道から、より良い日本をつくりたい。
池田まきは、皆さんと共に、
平和、いのち、暮らしを守る戦いに挑みます。」
『誰一人、置いてきぼりにしない』は、手垢の付いた政治家には言えないセリフ。「安保関連法案に反対するママの会」の名言、「だれのこどもも、ころさせない」を連想させる。野党共闘候補としてまことにふさわしいものではないか。
北海道新聞が同候補の人となりを詳報している。
「池田氏 虐待、夫蒸発…壮絶な半生あえて語る」という見出し。およそ、二世候補などとはまったく違う生い立ち。政治家になるべく育ったのではない。恵まれない家庭に生まれ、社会に翻弄された「普通の生活者」が政治の世界に跳び込もうというのだ。
「子供時代は平和な家庭でなかった。今でいうDV(ドメスティックバイオレンス)。社会は助けてくれず、いつも空を見ていた。」
「幼いころから、父親によるDVは日常茶飯事。母親、妹とともに、暴力を受け続けた。中学時代には父親から避難するため、4人家族がバラバラになった。18歳で結婚した。2人の子どもに恵まれ、やっとつかんだ幸せも、わずか2年で夫が借金で蒸発。シングルマザーとして生活保護を受けながら介護ヘルパーなどの資格を取得し、東京都板橋区職員に採用された。」
「安全保障関連法廃止を目指す野党統一候補として脚光を浴びるが、政治家を志した原点は福祉だ。生きづらさをばねにはい上がり、当事者目線で福祉の仕事をしてきた自負がある。」
こんな候補者なら、応援したくなるではないか。
2014年12月の前回(第47回総選挙)北海道第5区の選挙結果は、以下のとおりだった。なお、投票率は58.43%。
当 町村信孝 70 自民(公明推薦) 前 131,394票 50.9%
勝部賢志 55 民主党 新 94,975票 36.8%
鈴木龍次 54 日本共産党 新 31,523票 12.2%
単純な票数合計なら、「自・公」対「民・共」は自公若干有利ながらもほぼ互角。但し、今回の自民公認(公明推薦)候補は、町村後継の強み。「弔い合戦」の有利もある。これに対して、反安倍統一候補は、選挙協力の相乗効果を生かせるかどうかがカギ。
相乗効果ならぬ「相殺効果」が生じることもある。民共各支持者の意見が余りに違い、各党の公認候補なら投票するが、共闘候補では投票の意欲が湧かないという場合だ。あるいは、共闘を至上目的として候補者を選任した結果、結局魅力ある共闘の候補者を得られなかった場合など。そんな場合は、共闘候補の得票数は、民・共それぞれ単独立候補の場合の想定得票数に及ばぬことになる。
しかし、今回の場合その心配はなさそうだ。何よりも、共闘の大義がある。非立憲安倍政治の暴走を許すなという広範な市民層に後押しされての共闘である。大きな相乗効果が期待できるのではないか。
前回選挙で、日本共産党候補に投票した3万人余の多くは、死票になることを覚悟で同党への支援アピールの投票であったろう。反自民候補当選の可能性が低いことから、投票の意欲を失った有権者もすくなくなかったのではないか。これらの有権者が今度は、共闘候補に投票するだろう。何しろ、民共の統一候補ならば、現実に当選の可能性が出て来る。この可能性は選挙活動のモチベーションを上げることになるだろう。
私はひそかに思っている。
北海道5区選挙共闘成功⇒緒戦の勝利⇒参院選野党選挙共闘の進展⇒参院選での野党共闘勢力の勝利⇒衆院小選挙区での選挙共闘の進展⇒総選挙での野党共闘の勝利⇒自民改憲断念⇒安倍退陣
これを、「好循環」という。アベノミクスへの期待が蜃気楼として消えつつある今、このような好循環はけっして夢でも幻でもないと思うのだが。
(2016年4月4日)
さて、今日はクイズである。
ある識者が、政治と運動の情勢について、次のとおりの発言をしているという。この発言をお読みになって、発言の主が誰だか当てていただきたい。
この問題の正解者はたいへんな知恵者だ。尊敬に値する。このクイズの出題者は、さらに高い知性の持ち主。もちろん私ではない。憲法学者の横田耕一である。
「強行採決をめぐって、これだけ広範な層からこれだけの批判が高まっているのに、何故、政府与党は馬の耳に念仏の態度で押し通そうとするのでしょうか。…むろんそこには種々の背景があります。しかし根本の由来はここ数年来の政府の相つぐ憲法じゅうりんのやり方を私達国民が結局のところ黙って見過ごして来たところにあると私は考えます。一たび既成事実をさえ作ってしまえば、一時は世論がわきたっても、やがては権力の無理押しが通って行くという事態がこれまでに重なってきたからこそ、ああいう議会政治の常識では考えられないやり方をして政府は平然としているのです。権力はもし欲すれば何事でも強行してそれに法の衣をかぶせることができるということになれば、それは民主主義の基本原則の破壊にほかなりません。私たち国民は今こそこうしたやり方にストップをかけなければ、人民主権も、したがって私たちの幸福追求の権利も、政府の万能の権力の前に否定される結果になるでしょう…。政府の権力濫用にたいして憲法や法律は本当に歯どめとして効いているのかいないのか、私たち主権者としての国民がそうした権力の歯どめとして憲法を生かす力をもっているのかいないのか、それがいままさに試されようとしております。これが現在の根本の問題点です。」
多くの人が、昨年9月の戦争法の強行採決を思い浮かべたはず。この発言の時期は、まさしく今であろう。樋口陽一さんの発言ではないか、あるいは中野晃一さんかと思った人が多かったのではないか。残念、みんなハズレだ。
正解は丸山眞男なのだという。60年安保闘争のさなか、「民主主義をまもる音楽家の集いへのアピール」として書かれた一文だそうだ。多分正解者はいないだろう。
私も、まさかこの一文が、半世紀前の60年安保の際の運動体への語りかけとは思わなかった。いまとなんとよく似た状況での、よく似た問題提起ではないか。
本日郵送された「月刊 靖国・天皇問題情報センター通信」(通算510号)の巻頭言「偏見録」として横田が書いた論文である。題して「既視感(デジャビュー)」。
横田は、上記丸山の論説を引いて、「60安保闘争は『狭義の安保闘争』ではなかった。」という。むしろ、「強行採決を境に、『安保に賛成の者も、反対の者も』含めた、『国会解散・岸を倒せ!』をスローガンとする『民主主義を守れ!』で、運動は飛躍的に拡大した」という。このことは、「『安保法制』強行採決に9条改正論者も含めて『立憲主義を守れ!』で反対している状況に似ていはしないか。」という。これが、表題を「既視感」としている所以だ。
さらに問題は、この先にある。
「60年安保の盛り上がった運動も、6月19日の『自然承認』によってほとんど終息し、学生たちが行なった『帰郷運動』は厚い土着の人びとの壁に跳ね返された」そして、「12月の衆院選挙では296議席を獲得して自民党が大勝した」と指摘する。さて、いまはどうだろうか。
横田の現状の見方は次のようなものだ。
「各地で運動は継続されているものの、残念ながら一時期の熱気は冷めつつあり、諸調査機関が示す安倍内閣の支持率は、世論調査のはらむ欠陥を認めても、低下しないばかりか増加傾向すら示しており、自民党の支持率は他党を圧倒している。選挙では、「立憲主義・安保法制」のみが争点にならないことも加味すれば、今夏の参院選挙(衆参同日選挙?)で、与党に打撃を与えることはかなり困難であり、60年末の衆院選挙の敗北が目にちらつく。」
シビアな現状認識である。60年には高揚した運動は「厚い土着の人びとの壁」に跳ね返された。いま、同じことが繰り返されはしないか。そのような無力感や敗北感に陥って「60年」の二の舞に陥ってはならない、と警告されている。しかし、たどうすればよいのか、簡単に答が見つかる問題ではない。
60年の丸山の言葉を振り返ってみよう。
「ここ数年来の政府の相つぐ憲法じゅうりんのやり方を私達国民が結局のところ黙って見過ごして来た」「私たち主権者としての国民がそうした権力の歯どめとして憲法を生かす力をもっているのかいないのか、それがいままさに試されようとしている」。これが、当時の運動の前に立ちはだかった壁だ。「主権者としての力量(不足)の壁」である。そして、今、当時と同様の立ち向かうべき壁があり、乗り越えなければならない壁となっている。
横田はいう。「この壁を崩さない限り個々の運動は実を結ばないように思われる」。この壁とは、かつて帰郷運動の学生たちをはね返した「厚い土着の人びとの壁」と等質のもの。
おそらくは、運動が後押ししての野党共闘の成立こそが、「この壁を突き崩す」唯一の切り札である。それなくしては、再び厚い土着の壁に阻まれてしまうことになる。まさしく、「既視感(デジャビュー)」である。
(2016年3月13日)
本日(10月16日)の朝日に、「共産・志位氏『連合政府実現なら日米安保廃棄を凍結』」の大きな記事。共産党の戦争法廃止に向けた、国民連合政府構想が大きな関心を呼んでいる。
「共産党の志位和夫委員長は15日、東京都内の日本外国特派員協会で会見し、安全保障関連法を廃止するために提唱する「国民連合政府」が実現すれば、「日米安保条約の枠組みで対応する。急迫不正の時には自衛隊を活用する」と述べ、党綱領で掲げる日米安保条約の廃棄や自衛隊の解消などの政策を凍結する考えを示した。安倍政権に対抗する野党の結集をめざし、現実的な対応を強調したものだ。
志位氏は会見で「私たちは国民連合政府という政権構想が、現時点で安倍政権に代わる唯一の現実的で合理的な政権構想だと確信している」と話した。さらに「戦争法廃止、立憲主義の回復という国民的大義での大同団結ができれば、相違点は横に置き、一致点で合意形成を図る」と語った。」
また、朝日の記事では、「共産、野党結集へ動く」「『安保法廃止』本気アピール」との見出しで、「(戦争法)成立後の同月19日には、党中央委員会総会を開き、「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す。この一点で一致するすべての政党・団体・個人が共同して『国民連合政府』を樹立しよう」と宣言。その上で野党間の政策的な違いについても「互いに留保・凍結して大同団結しよう」と呼びかけた。」とまとめられている。
「戦争法を廃止して立憲主義を取り戻す」この一点を大義とし、この一点での共闘で、選挙協力をし、国民連合政府を作ろうというのが共産党の提案である。そのあまりの大胆さに、やや戸惑いを禁じ得ない。他の多くの課題を切り捨ててこの一点の共闘で本当によいのか。各政党や政治勢力がそれぞれに持つ理念や主張を棚上げできるのか。何より、この提案が反安倍勢力の総結集に現実性を持つものなのだろうか…。
かつて、民主連合政府構想というものがあった。1970年代の遅くない時期に、「革新三目標」で一致できる諸勢力を糾合して、民主的な統一戦線政府を作ろうと、共産党が呼びかけたものである。
革新勢力がさしあたって一致できる目標とされた、「革新三目標」とは、
(1)日米軍事同盟と手を切り、真に独立した非核・非同盟・中立の日本をめざす
(2)大資本中心、軍拡優先の政治を打破し、国民のいのちと暮らし、教育をまもる政治を実行する
(3)軍国主義の全面復活・強化、日本型ファシズムの実現に反対し、議会の民主的運営と民主主義を確立する
というものであった。
「安保廃棄」・「経済民主化」・「政治的民主主義の確立」の3点。これなら、革新の3課題であり3目標である。違和感はなかった。今度の提案は、まずは安保廃棄は棚上げだ。自衛隊の存続も認める。集団的自衛権の行使は容認しないが、自衛のための武力行使までは認めることになる。
安全保障以外にも課題は多い。沖縄・原発・TPP・雇用・福祉・教育・近隣外交…。はたして、敢えて「戦争法廃止して立憲主義を取り戻す」の一点で、選挙協力が可能だろうか。政府の運営ができるのだろうか。
逡巡は残しつつも、結局のところ、いま反安倍勢力を結集するスローガンを考えて、「戦争法廃止」「立憲主義の回復」以上のものも、以外のものも思いつかない。思い至ったのは、今求められているのは、「革新の統一」ではない。反安倍勢力の結集は革新の課題ではなく、保守をも含めた民主主義・立憲主義の課題だということ。だから、逡巡は不要ではないのか。
私は、安倍政権打倒のためなら、悪魔との契約も辞さない立場だ。それに比べれば安保廃棄も自衛隊違憲も脇に置く課題でよいと言うべきなのだ。安保ハンタイ、自衛隊イケンは、自らの見解と留保しつつも、大同団結の輪の中で「戦争法廃止」「立憲主義の回復」の声を上げよう。「美しい日本を取り戻す」のではない。戦争法を廃止して、「まともな立憲主義に基づく日本を取り戻す」ためにだ。
戦争法国会の最終盤、国会を取り囲むデモの中から印象的なシュプレヒコールが巻きおこった。「野党は共闘、野党は共闘」。院内から、デモの現場に議事の様子を報告に駆けつけた野党議員に対してのもの。
戦争法案の廃案を求めるデモのうねりが、野党共闘の背を押したのだ。法が成立したからといって、この事態を放置しておくことはできない。今度は戦争法を廃止する闘いを続けなければならない。そのためには、選挙に勝つしかない。選挙に勝って反安倍勢力の暫定政権を作らねばならない。いち早くこの世論の声に応えたのが共産党だが、共闘は相手あってのもの。他党・他勢力の立場を尊重して、大きな共闘の成立にに尽力して欲しいと思う。
同じ朝日の報道では、「国民連合政府を持ちかける共産党との連携に、民主党内の大半は後ろ向きだ。岡田克也代表は15日の都内での講演で、「同じ政権を作るのはかなりハードルが高い。基本的な政策の違いが現時点で多過ぎる」と否定的な考えを示した。」という。
まだまだ、国民のシュプレヒコールの音量が足りないようだ。
精一杯声を出そう。「野党は共闘、野党は共闘!」「反安倍勢力は一つにまとまれ」「選挙で足の引っ張り合いをするな」「小異を捨てて大同に就け」「国民の大義につけ」「戦争法廃止で大同団結をせよ」
(2015年10月16日・連続929回)