新型コロナウィルスの感染拡大にともない、当日の集会に関して細心の注意を払って実施いたします。ぜひご参集ください。
もっとも、発熱その他体調ご心配の方については、無理をなさらずに参加を見合わせくいただくようお願いします。
また、集会での発言予定者の中にも、参加見合わせとなる方が予想されます。当初予定よりも、集会規模は小さく、予定のプログラムも一部縮小になるかも知れません。予め、ご了解をお願いしておきたいと存じます。
なお、ご参加するにあたっては、できるだけ、マスクの着用をお願い致します。
主催者側では、除菌テイッシュ、手袋(使い捨て)を用意いたします。ドアノブ等の除菌にも努めます。ご協力よろしくお願いいたします。
皆様が体調を整えて当日ご参加され、お目にかかれることを願っております。
「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議
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「3・1発足集会」の次第(予定)
日時 2020年3月1日(日曜日)
13時40分?16時40分(開場13時20分)
会場 日比谷図書文化館(B1) 日比谷コンベンションホール
東京都千代田区日比谷公園内
資料代 500円
主催「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議
あなたも運動サポーターに!
運動への協力金を
個人 1口500円 / 団体 1口1,000円(何口でも結構です)
郵便振替口座 番号00170?0?768037
「安達洋子」又は「アダチヨウコ」
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ILO/ユネスコ勧告を遵守し、
国旗・国歌(日の丸・君が代)強制の中止を日本政府に求める声明(案)
2019年、ILO(国際労働機関)とユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、日本政府に対し国旗国歌強制の是正を求める勧告(以下「ILO/ユネスコ勧告」という。)を採択した。
ILO/ユネスコ勧告は、2014年にアイム‘89東京教育労働者組合から「『国旗・国歌(日の丸・君が代)』の強制は『教員の地位に関する勧告』(1966年)に違反している」との申し立てを受けたILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会(以下、合同委員会)が、2018年に採択し、翌年、ILO及びユネスコが正式に承認・公表したものである。
ILO/ユネスコ勧告は、国歌斉唱時に「起立や斉唱を静かに拒否することは、職場という環境においてさえ、個人的な領域の市民的権利を保持する個々の教員の権利に含まれる」ことを
、明確に認めた上で、この見解に基づいて以下の6点について、日本政府に勧告した。
(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること
1985年以降、文部省(当時)は国旗掲揚・国歌斉唱徹底の通知、実施状況の全校調査と結果の公表、学習指導要領の改訂(1989年)、国旗国歌法の制定(1999年)など、様々な方法で国旗・国歌(日の丸・君が代)の強制を推し進めてきた。2000年代以降になると東京都や大阪府では、国歌の起立斉唱を命ずる職務命令が出され、起立斉唱できない教員に対して過重な懲戒処分が行われているが、これも、こうした施策の延長線上にある。したがって、日本政府には、今回の是正勧告を真摯に受け止めて応答する責任がある。
これまで、日本政府は、国連機関から勧告を出されても、「勧告には法的拘束力がなく、直ちに履行責任を生じるものではない」との見解を示し、ILO/ユネスコ勧告についても同様の対応をしている。
しかし、「教員の地位に関する勧告」(1966年)は、日本政府も賛成し、ユネスコ特別政府間会議で採択された勧告である。その勧告の適用推進を目的として設置された合同委員会のILO/ユネスコ勧告を軽視する対応は矛盾している。
「教員の地位に関する勧告」(1966年)は、専門職である教員の権利と責務を明示した国際基準であり、条約に準じる性格を有する。自国の教員の権利保障が国際基準に達していないと指摘された以上、日本政府は国際基準に合致するように直ちに具体的な行動を開始しなければならない。
私たちは、日本政府に対し、ILO/ユネスコ勧告を遵守し、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」の強制を直ちに中止することを強く求める。
今回のILO/ユネスコ勧告も指摘するように、国旗・国歌(日の丸・君が代)の強制は、民主主義社会とは相容れないものである。
日本政府にILO/ユネスコ勧告の遵守を求める私たちの運動は、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」の強制に苦しむ教職員や「日の丸・君が代」に抵抗感を持つ者だけのものではない。多様性を尊重し、人間の尊厳と権利を大切にするすべての人々と手を携えていけるものと確信している。
力を結集して日本政府に勧告の実施を求めるため、本日、私たちは「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を発足させた。
多くの皆様がこの市民会議に参加・協力してくださることを、心からお願いする。
(2020年2月27日)
教育現場において、「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ!」という「職務命令」が濫発されている。これに従えないとする教職員に戒告・減給・停職などの処分が繰り返されており、司法がこれに対する有効な歯止めになりえていない現実がある。
教職員の思想・良心の自由が抑圧され、公権力が教育を不当に支配する構図ができつつある。こうした教育の実態は、日本国憲法や教育基本法が想定したありかたではなく、国際的なスタンダードからも大きくはずれている。
昨年、ILO(国際労働機関)とユネスコが、日本政府に対して、《「日の丸・君が代」の強制を是正するように》、という画期的な勧告が出された。その内容は、以下の6点で、「日の丸・君が代」強制を是正するよう求めるものとなっている。
(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること
このILO・ユネスコ勧告が、「日の丸・君が代」強制の入学式・卒業式を「愛国的な式典」と呼んでいることが興味深い。「愛国的な式典」に関する教員の義務については、公権力が一方的に命令するのではなく、教職員組合との合意で規則を制定せよという。そして、その規則は「国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できる内容」でなければならないというのだ。これこそが、世界標準なのである。
日本政府と各地の教育委員会、とりわけ東京都教育委員会・大阪府教育委員会は、このILO・ユネスコ勧告の基本理念をしっかりと理解しなければならない。国旗国歌の強制、しかも懲戒処分までしてする「日の丸・君が代」への敬意表明の強制は、世界標準からみて非常識なものであることを真摯に受け止めなければならない。
教育の場から思想・良心の自由が失われ、国家の統制が横行することとなれば、やがて民主主義は死滅することになるだろう。ちょうど、「日の丸・君が代」と「ご真影」への敬意表明が当然とされた、あの暗黒の時代のごとくに。
市民運動によって、「ILO/ユネスコ勧告」の完全実施を求め、「日の丸・君が代」強制の是正を実現しようという構想の下、《「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告》実施市民会議が発足する。
下記が、間近となった「3・1発足集会」の次第(予定)
日時 2020年3月1日(日曜日)
13時40分?16時40分(開場13時20分)
会場 日比谷図書文化館(B1)
日比谷コンベンションホール
〒100-0012東京都千代田区日比谷公園1-4 03-3502-3340
資料代 500円
主催「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議
あなたも運動サポーターに!
運動への協力金を
個人 1口500円 / 団体 1口1,000円(何口でも結構です)
郵便振替口座 番号00170?0?768037
「安達洋子」又は「アダチヨウコ」(市民会議メンバーの口座を利用)
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集会プログラム
(13時20分 開場、13時40分 開会、16時40分 閉会)
主催者挨拶 金井知明弁護士
国会議員メッセージ 代読
呼びかけ人代表挨拶(岡田正則・早稲田大学教授)
第1部 シンポジウム
「 それでもまだ歌わせますか? ? 教育の中の市民的不服従 」
寺中 誠 ( 東京経済大学・国際人権法 / 司会 )
中原 道子 ( VAWW RAC共同代表 )
志田 陽子 ( 武蔵野美術大学・憲法学 )
中田 康彦 ( 一橋大学・教育学 )
第2部 発言
布施 恵輔 ( 全労連・国際局長 )
前田 朗 ( 東京造形大学・刑事人権論 )
元山 仁士郎(「辺野古」県民投票の会 元代表 )
朴金 優綺 ( 在日本朝鮮人人権協会 事務局 )
大能 清子 ( 君が代5次訴訟原告予定者 )
関 誠 ( アイム’89東京教育労働者組合 )
声明文採択
閉会挨拶 澤藤統一郎(弁護士)
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賛同団体 「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 2020.2.20.現在 50音順
I LOVE 憲法川越の会、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、あるこう会、アルバイト・派遣・パート非正規労働組合(神戸)、「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク、一葉社、大田子どもの教育を守る会、学校と地域をむすぶ板橋の会、川越地域ユニオン、川崎から日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民の会、国連に障がい児の権利を訴える会、子どもと教科書全国ネット21、山西省における日本軍性暴力の実態を明らかにし大娘たちと共に歩む会、三多摩合同労働組合、三多摩合同労働組合ケミカルプリント分会、三多摩合同労組三信自動車、三多摩合同労組中大生協、三多摩労組争議団連絡会議、自治体労働者組合・杉並、市民の意見30の会・東京、自由と人権、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合、精神障害者権利主張センター・絆、西部地区労働者共闘会議、全金本山労働組合/東京分会、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター、戦争への道を許さない北・板橋・豊島の女たちの会、大道測量闘争支援共闘会議、台湾の日本軍性暴力被害者・阿媽たちを記憶し未来につなぐ会、高尾山の自然を守る市民の会、中国人「慰安婦」裁判を支援する会、中大生協闘争・吉田さんを支える会、中部地区労働者交流会、東京・教育の自由裁判をすすめる会、東京中部地域労働者組合、東京・中部地域労働者組合旭ダイヤ、東京・中部地域労働者組合東邦エンタープライズ分会、東京・中部地域労働者組合利久庵、東京都教職員組合八王子支部、東京都障害児学校労働組合、東京都歴史教育者協議会、東京南部労働者組合、東京ふじせ企画労働組合、特別区教職員組合、なくそう戸籍と婚外子差別・交流会、南部地区労働者交流会、日本キリスト協議会(NCC)女性委員会、貫井九条の会、練馬教育問題交流会、練馬全労協、練馬地域ユニオン、年金者組合八王子、NO NUKES PLAZA たんぽぽ舎、八王子退職教職員の会、反天皇制運動連絡会、「日の丸・君が代」強制に反対の意思表示の会、「日の丸・君が代」強制反対・再雇用二次訴訟を語りつぐ会、「日の丸・君が代」強制反対 予防訴訟をひきつぐ会、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(略称ロラネット)、ふじせ闘争支援共闘会議、部落解放同盟練馬支部、平和といのち・イグナチオ9条の会、平和をつくり出す宗教者ネット、北部労働者共同闘争会議、北部労働者法律センター、武蔵学園闘争勝利!支援共闘会議、明治大学消費生活協同組合労働組合、ユニオン東京合同、ユニオンらくだ、「良心・表現の自由を!」声を上げる市民の会、歴史教育者協議会、連帯労働者組合、連帯労働者組合・板橋区パート、連帯労働者組合・杉並、連帯労働者組合・大道測量連帯労働者組合・東京ビジネスサービス、連帯労働者組合・武蔵学園、連帯労働者組合・ライフエイド
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ILO/ユネスコ勧告を遵守し、
国旗・国歌(日の丸・君が代)強制の中止を日本政府に求める声明(案・部分)
1985年以降、文部省(当時)は国旗掲揚・国歌斉唱徹底の通知、実施状況の全校調査と結果の公表、学習指導要領の改訂(1989年)、国旗国歌法の制定(1999年)など、様々な方法で国旗・国歌(日の丸・君が代)の強制を推し進めてきた。2000年代以降になると東京都や大阪府では、国歌の起立斉唱を命ずる職務命令が出され、起立斉唱できない教員に対して過重な懲戒処分が行われているが、これも、こうした施策の延長線上にある。したがって、日本政府には、今回の是正勧告を真摯に受け止めて応答する責任がある。
これまで、日本政府は、国連機関から勧告を出されても、「勧告には法的拘束力がなく、直ちに履行責任を生じるものではない」との見解を示し、ILO/ユネスコ勧告についても同様の対応をしている。
しかし、「教員の地位に関する勧告」(1966年)は、日本政府も賛成し、ユネスコ特別政府間会議で採択された勧告である。その勧告の適用推進を目的として設置された合同委員会のILO/ユネスコ勧告を軽視する対応は矛盾している。
「教員の地位に関する勧告」(1966年)は、専門職である教員の権利と責務を明示した国際基準であり、条約に準じる性格を有する。自国の教員の権利保障が国際基準に達していないと指摘された以上、日本政府は国際基準に合致するように直ちに具体的な行動を開始しなければならない。
私たちは、日本政府に対し、ILO/ユネスコ勧告を遵守し、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」の強制を直ちに中止することを強く求める。
今回のILO/ユネスコ勧告も指摘するように、国旗・国歌(日の丸・君が代)の強制は、民主主義社会とは相容れないものである。
日本政府にILO/ユネスコ勧告の遵守を求める私たちの運動は、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」の強制に苦しむ教職員や「日の丸・君が代」に抵抗感を持つ者だけのものではない。多様性を尊重し、人間の尊厳と権利を大切にするすべての人々と手を携えていけるものと確信している。
力を結集して日本政府に勧告の実施を求めるため、本日、私たちは「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を発足させた。
多くの皆様がこの市民会議に参加・協力してくださることを、心からお願いする。
呼びかけ人 34人(50音順 2020.2.23 現在)
阿部 浩己(明治学院大学教授)/荒牧 重人(山梨学院大学教授)/池田 香代子(翻訳家)/石山 久男(子どもと教科書全国ネット21代表委員)/岩井 信(弁護士)/内田 雅敏(弁護士)/大森 直樹(東京学芸大学教授)/岡田 正則(早稲田大学教授)/落合 恵子(作家、クレヨンハウス主宰)/小野 雅章(日本大学教授)/児玉 勇二(弁護士)/小森 陽一(東京大学名誉教授)/佐野 通夫(大学教員)/澤藤 統一郎(弁護士)/島薗 進(上智大学教授、東京大学名誉教授)/清水 雅彦(日本体育大学教授)/白井 劍(弁護士)/鈴木 敏夫(子どもと教科書全国ネット21代表委員・事務局長)/醍醐 聡(東京大学名誉教授)/高嶋 伸欣(琉球大学名誉教授)/高橋 哲哉(東京大学大学院教授)/田中 重仁(弁護士)/角田 由紀子(弁護士)/中原 道子(VAWW RAC共同代表)/成嶋 隆(新潟大学名誉教授)/新倉 修(青山学院大学名誉教授、弁護士)/野田 正彰(精神病理学者)/朴 保(ミュージシャン)/花崎 皋平(哲学者)/堀尾 輝久(東京大学名誉教)/前田 朗(東京造形大学教授)/三宅 晶子(千葉大教授)/森川 輝紀(埼玉大学名誉教授、福山市立大学名誉教授)/安川 寿之輔(名古屋大学名誉教授)
賛同人 85人(50音順 2020.2.23 現在)
青井 未帆(学習院大学教授)/浅井 春夫(立教大学名誉教授)/阿部 泰隆(神戸大学名誉教授、弁護士)/荒井 文昭(東京都立大学教授)/有馬 保彦(市民の意見30の会 東京)/飯田 美弥子(弁護士)/石川 晃弘(中央大学名誉教授)/石坂 浩一(立教大学准教授)/石田 勇治(東京大学大学院教授)/市川 須美子(獨協大学教授)/伊藤 セツ(昭和女子大学名誉教授)/植竹 和弘(弁護士)/内海 愛子(恵泉女学園大学名誉教授)/梅田 正己(歴史研究者)/梅津 和時(サックス奏者)/浦部 法穂(神戸大学名誉教授)/大久保 正禎(日本基督教団王子教会牧師)/奥田 圭一(弁護士)/奥田 靖二(浅川金比羅神社 宮司)/加藤 晋介(弁護士)/加藤 文也(弁護士)/川口 彩子(弁護士)/川副 詔三(「地域と労働運動」編集長)/河村 健夫(弁護士)/北村 小夜(障害児を普通学校へ・全国連絡会世話人)/木下 ちがや(政治学者)/木村 真実(弁護士)/金 哲敏(弁護士)/金城 吉春(あしびなー)/窪田 之喜(弁護士)/鎗田 英三(駿河台大学名誉教授)/小寺 隆幸(原爆の図丸木美術館館理事長)/寿kotobuki(ミュージシャン)/児美川 孝一郎(法政大学教授)/小山 弘泉(東京宗教者平和の会)/斎藤 園生(弁護士)/斎藤 貴男(ジャーナリスト)/早乙女 勝元(作家)/澤地 久枝(作家)/志田 陽子(武蔵野美術大学教授)/島袋マカト陽子(東京琉球館)/白石 孝(NPO法人官製ワーキングプア研究会)/新藤 宗幸(千葉大学名誉教授)/鈴木 孝夫(東京都障害児学校労働組合執行委員)/鈴木 亜英(弁護士)/関島 保雄(弁護士、公害弁連代表委員、ストップリニア新幹線訴訟弁護団共同代表)/大道 万里子(編集者)/高田 健(総がかり行動実行委員会)/高橋 哲(埼玉大学准教授)/飛幡 祐規(文筆業、翻訳家)/立松 彰(弁護士)/田中 宏(一橋大学名誉教授)/崔 善愛(ピアニスト)/趙 博(ミュージシャン、芸人)/筑紫 建彦(憲法を生かす会)/勅使河原 彰(考古学者)/友部 正人(ミュージシャン)/豊田 勇造(ミュージシャン)/ながい よう(ミュージシャン)/ 中川 五郎(ミュージシャン)/中田 康彦(一橋大学教授)/中西 新太郎(関東学院大学教授)/中間 陽子(弁護士)/中村 雅子(桜美林大学教員)/中山 ラビ(ミュージシャン)/並木 浩一(国際基督教大学名誉教授)/並木 陽介(弁護士、憲法フェスティバル実行委員会実行委員長代行)/橋本 良仁(高尾山の自然を守る市民の会事務局長)/樋口 陽一(東北大学名誉教授、東京大学名誉教授)/平野 裕二(子どもの人権連代表委員)/藤田 昌士(元立教大学教授)/藤本 晃嗣(敬和学園大学人文学部准教授)/穂積 匡史(弁護士)/三上 昭彦(元明治大学教授)/門奈 直樹(立教大学名誉教授)/安田 浩一(ジャーナリスト)/矢野 敏広(ミュージシャン)/山田 真(小児科医)/山中 眞人(ニューヨーク州弁護士)/山本 由美(和光大学教授)/梁 澄子(一般社団法人希望のたね基金代表理事)/横田 耕一(九州大学名誉教授)/よしだ よしこ(ミュージシャン)/渡邉 寛之(弁護士)/和田 悌二(編集者)
(2020年2月26日)
メディア総合研究所が発行している「放送レポート」に、スポーツジャーナリスト谷口源太郎氏が、「スポーツとマスコミ」というコラムを連載している。最新号(2020年3月号)が、その第174回。
「オリパラ翼賛を煽動する安倍首相の狙い」と表題するシリーズで、「2020東京五輪」を論じている。以下は、その中の一節である。
強調される日の丸カラー
日本オリンピック委員会(JOC)と日本パラリンピック委員会は1月23日、2020東京オリンピック・パラリンピックで日本選手団が着用する公式服を発表した。
それは、1964年大会での赤のジャケットに白のズボンを逆に白のジャケットに赤のズボンにしたものだが、狙いは同じ「日の丸カラー」ということだ。
この公式服が象徴的だが、オリンピック・イヤーということで「日の丸」が目いっぱい強調されるような事態になるのは間違いなかろう。
とりわけ、目立つのは、メディアの扇動もあって国威発揚の道具にされることに無自覚な代表選手たちの「日の丸」へのこだわりだ。
今、改めて「日の丸」にどのような真実が隠されているのかを知る必要があるであろう。
その意味から、原爆詩人として知られる栗原貞子さんの詩「旗」の一部を紹介したい。
日の丸の赤は じんみんの血
白地の白は じんみんの骨
いくさのたびに
骨と血の旗を押し立てて
他国の女やこどもまで
血を流させ骨にした
いくさが終わると
平和の旗になり
オリンピックにも
アジア大会にも
高く掲げられ
競技に優勝するたびに
君が代が吹奏される
千万の血を吸い
千万の骨をさらした
犯罪の旗が
おくめんもなくひるがえっている
「君が代は千代に八千代に
苔のむすまで」と
そのためにじんみんは血を流し
骨をさらさねばならなかった
今もまだ還って来ない骨たちが
アジアの野や山にさらされている
日の丸の赤は じんみんの血
白地の白は じんみんの骨
日本人は忘れても
アジアの人々は忘れはしない
日の丸を背負うことを誇りにするのが、いかに愚かで誤ったことか、この詩は教えてくれるのではないか。絶大な影響力を持つメディアがこうした「日の丸」の真実に背を向けていることで生み出される負の大きさは計り知れない。
報道によると、自国開催ということで、中継など放送枠が増える民放では、従来の各キイ局が競技ごとにバラバラに放送する方式を各局集中方式に変えるという。
新聞報道によると、1月23日に日本民間放送連盟(民放連)が発表した内容は「7〜8月に開かれる東京五輪の期間中、民放地上波テレビ各局が担当日を決め、各日で基本的に午前9時〜午後11時、生中継を中心とした長時間放送を行う」というもの。
従来、オリンピック放送については、NHKが独占的な存在で、民放の存在感を示せなかった。そこで、2020東京大会では、なんとしても民放を目立たせたいとの思いから集中放送方式に踏み切った、ということのようだ。NHKに、民放の集中放送が加わることで「がんばれ日本!」の翼賛報道が極限までエスカレートするのは間違いなかろう。
谷口源太郎の健筆の冴えに敬服せざるを得ない。「日の丸・君が代」の氾濫も、「『がんばれ日本!』の翼賛報道」の跋扈も、御免こうむる。そして、栗原貞子の詩を、もう1編紹介しておきたい。
『ヒロシマというとき』
〈ヒロシマ〉というとき
〈ああ ヒロシマ〉と
やさしくこたえてくれるだろうか
〈ヒロシマ〉といえば〈パール・ハーバー〉
〈ヒロシマ〉といえば〈南京虐殺〉
〈ヒロシマ〉といえば 女や子供を
壕のなかにとじこめ
ガソリンをかけて焼いたマニラの火刑
〈ヒロシマ〉といえば
血と炎のこだまが 返って来るのだ
〈ヒロシマ〉といえば
〈ああ ヒロシマ〉とやさしくは
返ってこない
アジアの国々の死者たちや無告の民が
いっせいに犯されたものの怒りを
噴き出すのだ
〈ヒロシマ〉といえば
〈ああヒロシマ〉と
やさしくかえってくるためには
捨てた筈の武器を ほんとうに
捨てねばならない
異国の基地を撤去せねばならない
その日までヒロシマは
残酷と不信のにがい都市だ
私たちは潜在する放射能に
灼かれるパリアだ
〈ヒロシマ〉といえば
〈ああヒロシマ〉と
やさしいこたえが
かえって来るためには
わたしたちは
わたしたちの汚れた手を
きよめねばならない
国旗国歌の強制に服することができないという人の中には、実は国旗国歌の理解に関して大別して2種類の見解がある。国家や権力の象徴としての国旗国歌一般に対して受容しがたいとする一群がある。この人たちは、どんな歌詞や曲の歌であろうとも、あるいはいかなるデザインの旗であろうとも、国家というものの象徴である限りは、人権主体の個人の尊厳を懸けて、あるいは主権者の一人としてその強制には服しがたいとする。
もう一群は、国旗国歌一般ではなく、「日の丸・君が代」だから受容しがたいとする。言わば歴史にこだわるのだ。大日本帝国憲法・天皇制国家・侵略戦争・植民地主義・軍国主義・差別・個人の尊厳の否定・政治的弾圧…等々の負の遺産とあまりに緊密に結びついたこの歌と旗。無反省に、この歌と旗を用い続ける今の世に我慢がならず、その強制に服してはならないと自分に命じるのだ。そう、わたしたちの汚れた手を、さらに汚してはならない、と。
谷口源太郎は、「目立つのは、メディアの扇動もあって国威発揚の道具にされることに無自覚な代表選手たちの『日の丸』へのこだわり」という。そして、「改めて『日の丸』にどのような真実が隠されているのかを知る必要がある」という。『日の丸』に隠された真実、それが栗原貞子の詩のとおりなのだ。
(2020年2月14日)
日本政府と各地の教育委員会、とりわけ東京都教育委員会は、ILO・ユネスコ勧告の基本理念をしっかりと理解しなければならない。国旗国歌の強制、しかも懲戒処分までしてする「日の丸・君が代」への敬意表明の強制は、世界標準からみて非常識なものであることを真摯に受け止めなければならない。
教育の場から思想・良心の自由が失われ、国家の統制のみが横行することとなれば、やがて民主主義は死滅することになるだろう。ちょうど、「日の丸・君が代」と「ご真影」への敬意表明が当然とされた、あの暗黒の時代のごとくに。
大きな市民運動によって、「ILO/ユネスコ勧告」の完全実施を求め、「日の丸・君が代」強制の是正を実現しようという構想の下、《「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告》実施市民会議が発足する。
下記が、「3・1発足集会」の次第である。
日時 2020年3月1日(日曜日)
13時40分?16時40分(開場13時20分)
会場 日比谷図書文化館(B1)
日比谷コンベンションホール
〒100-0012東京都千代田区日比谷公園1-4 03-3502-3340
資料代 500円
主催「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議
「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ!」などの「職務命令」に従わなかった教職員は戒告・減給・停職処分を受けています。また「起立斉唱は儀礼的所作であり、思想良心の自由の侵害にはあたらない」という司法判断が繰り返されています。
起立斉唱強制は子どもにも及んでいます。
こうした状況に対して2019年春、ILO(国際労働機関)とユネスコから日本政府に、「日の丸・君が代」の強制を是正するように、という勧告が出されました。画期的なことです。
しかし、文科省は、(起立斉唱は)「適切に行われている」として、勧告を無視し、実施に動こうとしません。都教委担当部署は話し合いに出てこようともしません。
私たちはこうした事態を看過できず、勧告実現のため《「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議》を立ち上げることにしました。教育の未来のために、勧告実現に一緒に取り組みましょう。
プログラム
シンポジウム
「それでもまだ歌わせますか??教育の中の市民的不服従」
寺中誠(東京経済大学・国際人権法 司会)
志田陽子(武蔵野美術大学一憲法学)
中田康彦(一橋大学・教育学)
中原道子(VAWW RAC共同代表)
発言
前田朗(東京造形大学・刑事人権論)
布施恵輔(全労連・国際局長)
本山仁士郎(「辺野古」県民投票の会元代表)
朴金優綺(在日本朝鮮人人権協会 事務局)
教育現場の声
君が代5次訴訟原告予定者
アイム’89東京教育労働者組合
連絡先 潭藤統一郎法律事務所 03-5802-0881
共同事務局長 金井知明(弁護士)・寺中誠(東京経済大学)・山本紘太郎(弁護士)
呼びかけ人(50音順)
阿部浩己(明治学院大学教授)/荒牧重人(山梨学院大学教授)/池田香代子(翻訳家)/石山久男(子どもと教科書全国ネット21代表委員)/岩井信(弁護士)/内田雅敏(弁護士)/大森直樹(東京学芸大学教授)/岡田正則(早稲田大学教授)/落合恵子(作家、クレヨンハウス主宰)/小野雅章(日本大学教授)/児玉勇二(弁護士)/小森陽一(東京大学名誉教授)/佐野通夫(大学教員)/澤藤統一郎(弁護士)/島薗進(上智大学教授、東京大学名誉教授)/清水雅彦(日本体育大学教授)/白井劍(弁護士)/鈴木敏夫(子どもと教科書全国ネット21代表委員・事務局長)/醍醐聡(東京大学名誉教授)/高鳴伸欣(琉球大学名誉教授)/高橋哲哉(東京大学大学院教授)/田中重仁(弁護士)/角田由紀子(弁護士)/中原道子(VAWW RAC共同代表)/成鳴隆(新潟大学名誉教授)/新倉修(青山学院大学名誉教授、弁護士)/野田正彰(精神病理学者)/朴保(ミュージシャン)/花崎皋平(哲学者)/堀尾輝久(東京大学名誉教)/前田朗(東京造形大学教授)/森川輝紀(埼玉大学名誉教授、福山市立大学名誉教授)
あなたも運動サポーターに!
運動への協力金を
個人 1口500円 / 団体 1口1,000円(何口でも結構です)
郵便振替口座 番号00170?0?768037
「安達洋子」又は「アダチヨウコ」(市民会議メンバーの口座を利用)
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なお、ILOとユネスコの日本政府に対する勧告は、以下の6点で、「日の丸・君が代」強制を是正するよう求めるものとなっている。
(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること
ILO・ユネスコ勧告が、「日の丸・君が代」強制の入学式・卒業式を「愛国的な式典」と呼んでいることが興味深い。「愛国的な式典」に関する教員の義務については、都教委が一方的に命令するのではなく、教職員組合との合意で規則を制定せよという。そして、その規則は「国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できる内容とする」というのだ。これこそが、世界標準なのである。
(2020年2月10日)
暮れから正月にかけて、市民団体の機関紙や活動報告が夥しく郵送されてくる。草の根で地道に活動している多くの人々がいることに、この上ない心強さを覚える。
その中の,いかにも手作りの一通が提起している問題をご紹介したい。
「学校と地域をむすぶ板橋の会」という市民団体がある。略称は「むすぶ会」。公立校における「日の丸・君が代」強制を、地域の問題として受けとめようという貴重な運動体。その機関紙が、「手と手 声と声」という。不定期の刊行なのだろうが、そのN0.19が暮れに届いた。
その中に、「板橋区男女平等推進センターでチラシ配架を拒否される」という看過しがたい記事がある。チラシ「配架」とは、来館者の誰もが取っていけるよう「棚にチラシを置いておく」ことだという。市民運動用語では、「置きビラ」である。
「政治的なチラシは、配架して便宜をはかることができない」と拒否されたという。これは、地域に訴えようという市民団体には、切実な問題である。おそらく全国のあちらこちらで,同様の問題が起こっているのではないだろうか。行政が市民運動を「政治的」と色づけて、「政治的な活動には一切の協力お断り」というありがちな構図。これは、考えさせられる。やや長文だが、全文転載させていただく。
板橋区男女平等推進センターには、私たち登録団体が依頼すれば窓口のラックにチラシを置けることになっています。来館者が自由にチラシを取ることができます。
会は、7月に日比谷で開催された「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会に賛同し、この集会チラシに「むすぶ会は賛同団体です」と連絡先を明記したシールを貼り、7月8日にラックに置いてほしいと依頼しました。しかし、センターから「政治的なものはダメ。登録団体連絡会のルールにもある」と拒否の電話がありました。
私たちは忙しくて直ぐ話に行けないが、判断した責任者と話したいと返事をしました。9月5日に担当の係長と話をすることになりました。係長の見解は課長も当然承知している内容とのことです。
区の判断
板橋区男女平等推進センター「スクエア・I(あい)」のチラシ類の取り扱い基準(登録団体用)の「3 配架をお断りするもの(3)政治的なもの」にあたると判断した。
区として、地方公務員法36条(政治的行為の制限)の「2 職員は、特定の政党その他の政治団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもって、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもって、次に掲げる政治的行為をしてはならない。(略)四、文書又は図画を地方公共団体又は地方独立行政法人の庁舎(略)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。」とあり、地方公務員として、行なってはならないことであるから断った。
私たちの反論
チラシ裏面に「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と書かれていますが、「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか。政治的で問題とされるのは選挙のことではないか。現政権の施策について考えようというのは全く問題ない。」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい。」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ。表現の自由を保障すべきだ。」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っている。」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
等と抗議しました。
2014年にも区は、区民祭り時に男女平等推進センター掲示の登録団体紹介用に提出した会のポスターに対して、「議員の目にとまる可能性があり、」政治的と捉えられる心配があるから」と文章中の「『日の丸・君が代』強制反対!を掲げた活動紹介として添付した講演写真の「『日の丸・君が代』強制に反対!板橋のつどい」との文字をボカシてほしいと言ってきました。その時は期間が追っており他の部分でも趣旨は伝わると判断し掲示を優先しました。ところがその後の話合いの場では、「男女平等に関係ないから」と言い方を変えてきました。それ以降は、このような問題は起きませんでした。
今回、区は、一貫して「政治的」を理由に 「区施設の管理責任を持つ必要がある」「会の活動を否定している訳ではない」と言い私たちの意見について「弁護士に確認してみます」と答えました。私たちは、今後、配架依頼した時の対応を見ていく、ということでこの日の話し合いを終えました。
その後、会が実行委員として参加している「わいわい祭り」のチラシ(戦争させない!なくそう原発!と記載)は、何の問題もなく配架されました。今回同封の「板橋つどいのチラシ」は、これから配架依頼しますが、区の対応によっては速やかな話し合いを要求し、配架を獲得したいと考えます。ご注目ください。
理不尽な行政側の言い分に、活動家が位負けすることなく頑張って抗議し反論している様子が彷彿とする。できれば、このような場合には行政側の文書が欲しい。問題のチラシの何が「政治的なもの」なのか理由を確認したいところ。
ややはっきりしないが、板橋区の言い分は、次のように整理できるだろう。
(1) 「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準(登録団体用)」に、「配架をお断りするもの」として「政治的なもの」と規定されているところ、当該のビラはその「政治的なもの」に当たるので配架をお断りする。
(2) 地方公務員法36条(政治的行為の制限)2項・四号を根拠に、地方公務員として、「政治的活動に庁舎を利用させてはならない」とされているから、配架お断り。
言うまでもなく、この問題のベースには、憲法がある。「むすぶ会」の会員には、思想・良心の自由(19条)があり、思想・良心に従って表現する自由(21条)が基本権として保障されている。板橋区には、区民の基本的人権を尊重し、その施設を区民に利用させるに際して、一切の差別的取り扱いをしてはならない。これが大原則である。
法律レベルで問題とすべきは、地方自治法第244条と社会教育法第23条である。
(1)「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準」の内容は詳らかにしないが、係長が言うような内容であれば、明らかに両法に違反している。違憲・違法で無効である。早急に取り扱い規準を作りかえなければならない。
(2)問題は、区民の権利の有無なのだから、職員の地位を定める地方公務員法の規定を持ち出すのは筋違いである。しかも、担当職員の地公法36条解釈は、明らかに間違っている。
地方自治法第244条を確認しておこう。市民運動が行政施設を利用する際の大原則である。お上に、施設を使わせてもらっているのではない。私たち主権者・住民の権利としての公の施設の合理的使用方法を条文化したものである。
第1項 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
第2項 普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
第3項 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
市民運動活動家は、地方自治法第244条2項を暗記しておくとよい。「板橋区は、むすぶ会のセンター利用を拒否してはならない」のだ。
もう一つは、社会教育法第23条である。いわゆる「公民館」に関する法的根拠。
関連条文を引用しておこう。
社会教育法「第五章 公民館」
第20条(目的) 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
第22条(公民館の事業) 公民館は、第20条の目的達成のために、おおむね、左の事業を行う。
五 各種の団体、機関等の連絡を図ること。
六 その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。
第23条(公民館の運営方針)
第1項 公民館は、次の行為を行つてはならない。
一 もつぱら営利を目的として事業を行い、特定の営利事務に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること。
二 特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。
第2項 市町村の設置する公民館は、特定の宗教を支持し、又は特定の教派、宗派若しくは教団を支援してはならない。
これで十分だろう。問題は、社会教育法第23条1項2号である。公民館の運営において禁止されているのは、「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。」に限定されている。市民運動における安倍政権批判が、「特定の政党の利害に関する事業」になろうはずはない。
「手と手 声と声」の主張はまことにもっともなのだ。
「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか」「政治的で問題とされるのは選挙のことではないか」「現政権の施策について考えようというのは全く問題ない」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ」「表現の自由を保障すべきだ」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っているのか」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
すべて、自信をもっていただきたい。
ほとんど無関係だが、地方公務員法36条2項にも触れておきたい。その条文は以下のとおりである。
36条2項
職員は、
・特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
・あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
次に掲げる政治的行為をしてはならない。
四 文書又は図画を地方公共団体庁舎、施設等に掲示し又は掲示させ、その他地方公共団体の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
一見して明らかなとおり、これは公務員の規律の問題である。本件に関係するとすれば、「職員が、特定の目的をもって、庁舎、施設を利用させること」という禁止規定に触れるか否かである。重要なのは、36条2項の目的である。下記のどちらかがなければならない。
1 特定の政党その他の政治団体・特定の内閣・地方公共団体の執行機関を支持又は反対するという目的
2 公の選挙・投票において特定の人または事件を支持または反対するという目的
注意すべきは、目的をもつ主体は職員である。「むすぶ会」のチラシが、そのような職員の目的を推認させることになるとは、到底考え難い。「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と記載されていたとしても、その配架を許可した職員が、安倍内閣に反対する目的で配架したことになろうはずはない。
のみならず、同法36条には次の第5項の規定がある。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。
担当職員は、安心してビラの配架を認めてよい。うっかり禁止すると大ごとになる。板橋区は憲法と法の趣旨立ち返って、言いがかりに等しい社会教育施設の濫用的運用を改めるべきである。
なお、この通信の最終ページには、次の集会案内が掲載されている。このビラの配架がどうなったか。興味津々である。
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「日の丸・君が代」強制反対!
2020板橋のつどい
【開催要項】
2020年2月1日 開場17:30 開会18:00 閉会20:30
場所:板橋グリーンホール601号室
東武東上線大山駅・都営地下鉄三田線板橋区役所前駅共に下車5分
講演:現代の教育政策とこれからの課題
講師:現代教育行政研究会代表 前川喜平さん
1955年奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て、2016年文部科学事務次官。17年同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。
報告:CEART(セアート、国連の合同専門委員会)報告を生かす取り組み
「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 準備会
2014年、アイム89東京教育労働者組合は、東京都教育委員会が発した10・23通達が、国際労働機関(ILO)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「教員の地位に関する勧告」(1966年発出)に違反していると申し立てました。その結果、19年春「日の丸・君が代」強制に対する、是正勧告が両機関で承認され、公表されました。国際機関からのこの問題に関しての是正勧告が出されたのは初めてのことだそうです。
しかし、文科省は日本語訳を行おうともせず、できるだけ知られずに忘れ去られることを願う姑息な対応をしています。それに対して、勧告の拡散・実現を求め、「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を組織し、3月1日に発足集会を開催する準備が進められています。
つどい当日には、勧告内容、今後の取組みについてのアピールが市民会議準備会メンバーから行われます。
報告:八王子「天皇奉迎」に子どもたちは動員されなかった
元東京教組八王子支部役員 水谷 辰夫さん
4月23日に天皇が退位の報告に昭和天皇の墓を訪れた際、二小、横山二小、浅川小の子どもたちが「日の丸」の小旗を振らされ「天皇奉迎」に駆り出された。それに対して……。
(2020年1月13日)
以下は、弁護団会議の議論にもとづいて、私が起案した飽くまでもドラフトである。もちろん、まだ弁護団の正式文書ではない。これが正式文書になるまでには、幾重もの加除添削が行われることになる。その議を経ていない、私個人の考え方を示すものとしてご理解願をお願いしたい。
私としては、またまたの都教委の理不尽な蠢動をこの時点で、多くの方に知って欲しい。
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私どもは、都立校において教職員に対する国旗・国歌(日の丸・君が代)への敬意表明強制の事態を深く憂慮する立場の弁護士で構成している弁護団です。
「10・23通達」発出以来の、入学式・卒業式における国歌斉唱時の起立・斉唱命令に従いがたいとする教職員の皆さんからの委任を受け、「職務命令予防訴訟」、「懲戒処分取消訴訟」、「再雇用拒否違法訴訟」を始めとする数々の訴訟を受任してまいりました。
多くの教職員が、「国旗(日の丸)に正対して起立し国歌(君が代)を斉唱せよ」との命令に従うことは、自らの思想・信条・信仰に照らして、大きな精神的苦痛を感じているところです。
また、教員という職能は、次代の主権者を育てる職責でもあって、生徒の教育を受ける権利に照応して、生徒たちに憲法に保障された人権擁護の実践を示さねばならない立場にもあります。
私たち弁護団の弁護士は、そのような教員に共感し、これまで国旗・国歌(日の丸・君が代)の強制、ならびに強制に服さないことを理由とする懲戒処分を始めとするあらゆる不利益を違憲・違法と主張する法廷活動を重ねてまいりました。
長年にわたる諸訴訟の結果、処分量定が重きに失するとした多くの勝訴判決を重ねて、懲戒処分の量定は実質的な不利益を伴わない戒告に限定しなければならないという判例法を確立し、東京都教育委員会の違法な暴走には然るべき歯止めを掛けてきたところです。とはいえ、すべての処分を違憲と断じる最高裁判決を未獲得であることにおいて必ずしも満足すべきものではなく、今後の課題として戒告処分についても、違憲ないし違法として取消しを命じる判決を獲得すべく決意を新たにしているところです。
そして今、私どもは、減給処分の取消しを命じる判決が最高裁で確定したT教諭の事案において、これまでの例から懲戒量定を戒告とした再処分がありうるものとして、同教諭からの依頼によって、その処分手続の全過程に関わる所存です。
ところで、これまで「国旗・国歌(日の丸・君が代)」強制に服さなかったことを理由とする懲戒処分には必ず「事情聴取」と称する聴聞の機会が設けられてきました。行政処分において不利益を被る者の防御権保障の一般論からも、また行政手続法13条1項の類推からも、当然に履践されて然るべき手続と考えられます。
当弁護団は、T教諭の聴聞手続(「事情聴取」)に同席して、T教諭の発言をサポートし、法的な助言をすることを予定しておりました。
ところが都教委は、去る12月18日(水)の午後、おそらくは再処分を前提として、T教諭に都庁教育庁までの呼出を通知しました。驚くべきことに、その指定時刻が翌19日(木)午後3時ということでした。しかも、同教諭の授業の差し支えなどに対する配慮はまったく無視してのことです。同教諭は、授業への差し支えを理由に、別の3日程を提案しましたが、都教委が耳を傾けるところではありませんでした。
また、同教諭は弁護士の立ち会いを求めましたが、これも都教委の承諾するところではなかったと聞いています。
あらためて本書面をもって、同教諭の聴聞手続(「事情聴取」)への当弁護団所属弁護士の同席を求めます。19日の聴聞手続(「事情聴取」)は未了となっているようですので、続回には席を設けてください。
弁護士とは、法の支配が貫徹する現代社会において、国民の人権を擁護するための法律専門職です。とりわけ、市民が公権力と対峙する局面において、その依頼があれば、現場で法的な助言をすることがその職責とされています。国会で発言する参考人や証人の側に、発言者の要請ある限り弁護士がアドバイスできるよう同席しているのは、そのような理念の表れにほかなりません。
この弁護士の職責は、弁護士法の根拠をもつもので、T教諭の防御の権利の保障のために、弁護士の同席が不可欠なものとお考えください。同教諭の弁護士を依頼し、最も困難な場で弁護士の法的助言を受ける権利を奪うことは許されません。
19日の呼出を18日に通知するという性急さは、実質的に弁護士同席の機会を奪うためとしか考えられません。翌日の呼出ではなく、せめて4?5日の期間をおいての呼出であれば、当弁護団の誰かが、聴聞手続の席に伺うことが可能です。そのようにして、懲戒を受けようとしている教員の事前の言い分や意見を、依頼する弁護士の助言も含めてよく聞いていただき、間違った処分に至ることのないよう、十分な配慮を願う次第です。
また問題は、当弁護団所属の各弁護士の立ち会いの権利が全うされているか否かという視点からも吟味されなければなりません。同教諭から委任があった以上は、各弁護士は、その裁量において弁護士法に則った最善の義務を尽くすべき義務のみならず権利をも有することになります。刑事訴訟における弁護人の弁護権に類似するものとお考えください。弁護人に弁護のために必要な権利が保障されるように、懲戒処分に関して委任を受けた弁護士は、受任弁護士として弁護士法が要請する義務遂行のための権限がなければなりません。懲戒処分に先立つ聴聞の機会への弁護士の同席は、被聴聞者の権利であるとともに、依頼された弁護士の権利でもあると考えられます。
以上のとおり、事実上弁護士の同席を拒絶している東京都教育委員会に対して、当弁護団として抗議の意を表明するとともに、弁護団に属する弁護団の同席を実質的に保障されるよう、強く要望いたします。
(2019年12月23日)
本日のブログは、やや長文だが理屈っぽくなく、読み易い。生き生きとした活動家の奮闘ぶりを紹介するもの。
広島県「(安芸)府中町」は人口5万余。県外の者には紛らわしいが、県東の「(備後)府中市」とは異なる。マツダの企業城下町として知られ、100万都市広島との合併を拒否して、広島市という海に囲まれた孤島のような存在となっている。
その町議会の議員定数は18。うち、共産党が2名、公明党が2名。残る14が無所属だが、そのうち2名が選挙公報にマツダの社員であることを明記している。
その「ふちゅう町議会だより」の今年(2019年)2月1日号に、こんな記事が掲載されている。
・府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議
賛成多数可決
町民を代表する議員の議決場所である本会議場に、国旗及び町旗を掲揚することについて、11人の議員が議案を提出しました。
提出された議案に対し、「議会運営委員会に付託し、慎重に審議すべき」と動議がありましたが、この動議は賛成5人の少数で否決されました。
改めて議案について反対討論と賛成討論が行われた後、採決を行い、賛成多数で原案可決となりました。
議長と欠席者を除く議決は、賛成10・反対5だった。多数決強行の議員の中に、公明の2と、マツダの2が含まれている。共産以外にも、反対票3があったことが注目される。
この決議の経過を,ネットで詳細に報告しているのが、共産党の二見伸吾議員。その熱意と奮闘ぶりが生き生きと伝わってくる。そして、理論的にも、さすが共産党議員。自分の立場で考えた、国旗掲揚問題がよく整理されている。抜粋してなお長文ではあるが、紹介させていただく。
「国旗」に反対するものは「非国民」だと副議長
http://futamishingo.com/3792/
「(2018年)12月議会最終日の今日、18日に「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」が出されました。
この議案に対して、山口こうじ議員(無所属)から、「全く論議のないまま決すること、拙速は避けるべき。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議を」という動議が出されました。
▼山口議員の動議
口頭により動議を提案します。本案についてですが、議会運営委員会に付託し、慎重審議すべきです。
過去の議事録を読み直したところ平成17年から19年にかけて府中町議会は議会運営委員会、全員協議会、そして本会議で論議を積み重ねてきました。全員協議会では議員一人ひとりが国旗について時間をかけて慎重に検討しました。
その議論を踏まえ、議会運営委員会は、『府中町議会本会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議』を否決致しました。加島議運委員長は否決に至った経緯を平成19年3月議会で次のように報告しております。
「全員協議会でも多くの議員から全会一致が望ましく、(その方が)いいのではないか、また申し合わせ等による方法で対応すべき問題であると、全員の理解のもとに実施すべきものとの意見がありました。よって、決議という手段、多数決で決めることには問題が少々あるんではないんかと、また決して国旗を否定するものではない、慎重的意見が大半を占める中、この件で議会運営に支障が生じることがあってはならない、現状維持が望ましい、そしてもう一点は、町民の中にも日の丸に賛成しかねる人もおられる、強引に議会が掲揚すべきではないと思う、そういったいろんなご意見があったことを報告をさせていただきます」
本会議でも賛成、反対の討論がありましたが、採決の結果、原案に対して賛成少数で、国旗の掲揚は否決されました。
このように平成17年から19年にかけて丁寧な論議をつみかさ、その結果、国旗の掲揚に賛成の方も含めて、慎重に検討しよう、強制にならないようにしよう、議会運営に支障が生じないようにしようという結論に至ったわけです。
にもかかわらず、慎重審議の上否決されたものが、新たに議論する場を設けることもなく唐突に議案として出されました。論議もせず、多数決で決めようというのは、これまでの論議を大切にしてきた府中町議会の歴史と伝統の否定ではないでしょうか。
急いで多数決でことを決することは避けるべきだと思います。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議すべきと思いますので、どうぞみなさん、よろしくご理解のほどお願いしたいと思います。
これに対して、国旗掲揚推進派の議員(副議長)が動議を出し、山口議員を誹謗中傷しました。
「一つにまとまることはありえない。全会一致などというのはおかしい。議運には一部のメンバーしかいない。チャーチルは国民が反対してもヒットラーとたたかった」ほか、支離滅裂。
私は「議事進行」と声を上げ、「山口議員は慎重審議をと言っているのであって、全会一致で決めなければならないとは言っていない。言っていないことで批判するのはおかしい」「議運への付託というのは全員協議会での論議も当然含まれている」と反論。論議はヒートアップしていきます。
すると副議長は「国旗を否定する者は非国民だ」と言ったのです。
これに対しても「議事進行」で、猛烈に抗議し、取り消すよう求めました。さすがにこれはまずかったと思ったのか、言い過ぎであったと認めました。しかし、語るに落ちるとはこのこと。国旗への忠誠を求め、それを拒む者は非国民のレッテルを貼る。許しがたいことです。
山口議員の出した動議は共産党2人、山口議員を含め無所属議員3人の計5人が賛成。残念ながら賛成少数で否決されました。
その後、反対・賛成の討論を経て、「国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」は採決され、賛成多数(議長を除く出席議員15人中、賛成10人、反対5人)で可決されました。
国旗掲揚に反対ではないが、議論なしの拙速な決め方に反対だという議員が共産党以外に3人もいたことに感激。立場をこえて、審議を尽くす民主的な議会運営になるように今後も協力・共同をすすめていきたい。
以下は、私の反対討論と梶川三樹夫議員の賛成討論です。
■二見伸吾 反対討論
議員提出議案「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」に反対の立場から討論します。
まず初めに、議場に府中町町旗を掲示することには異議がないことを申し上げます。問題は国旗の掲示であり、5つの問題点があります。
第一に、地方自治法に照らして問題がある。
地方自治法第1条の2は、地方自治体の役割について「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」と述べています。
「国民」ではなく、「住民の福祉」の増進が地方自治体の役割なのです。国民と住民は同じではありません。住民には日本国籍を持たない人たちも含まれます。
ですから、決議(案)の述べている「日本国民としての自覚と誇り」を求めるのは、そもそも自治体のあり方としておかしい。
9月19日、法務省は、日本に在留する外国人が今年6月末時点で263万7251人(速報値)で、統計を取り始めた1959年以降、最も多かったと発表しました。日本の総人口は約1億2659万人で、在留外国人数はこの約2%にあたります。府中町でも外国籍の町民は663人、町民の1.3%が外国人なのです。今後さらに町内に住む外国人は増えることになるでしょう。
国旗=日の丸については、日本人のなかにも様々な受け止めがある。ましてや、かつて日本が戦争をしかけ、侵略した国々の人たちも日本に在留し、今後さらに増えていくわけです。このことをよく考える必要があります。
外国人の方には選挙権・被選挙権はありませんが、住民すなわち府中町民です。私たち町議会議員は日本国民でない外国人を含めた府中町民の代表なのです。
このことを踏まえたとき、「国民として自覚と誇りを持て」と議場に国旗を掲示することは、地方自治法のめざす方向に反するものであることは明白です。
第二に、過去に国旗、日の丸が戦争で果たした役割です。
1945年に終わったアジア太平洋戦争において日の丸は戦争のシンボルでした。そのことは戦中に使われた修身の教科書に明確に述べられています。例えば国民学校3年生用の『初等科修身一』(1942年)には次のように書かれています。
「敵軍を追ひはらって、せんりゃうしたところに、まっ先に高く立てるのは、やはり日の丸の旗です。兵士たちは、この旗の下に集まって、聲をかぎりに、『ばんざい。』をさけびます」
侵略の先頭に日の丸があり、そのことを小学生にも教え、子どもたちを軍国主義に導く役割も果たしたわけです。日本人はアジアで2000万を超える人々を殺しました。南京大虐殺の死者は30万人と言われています。
「虐殺は、大規模なものから1人?2人の単位まで、南京周辺のあらゆる場所で行なわれ、日本兵に見つかった婦女子は片端から強姦を受けた。最も普通の殺し方は小銃による銃殺と銃剣による刺殺である。大勢を殺すときは、まず隊列を作らせて、手近な殺人予定地まで歩かせる。着き次第、まとめて機関銃で皆殺しにする。生存者がないかどうかを銃剣で刺してテストしたのち、死体を積み上げて石油をかけ、焼いてしまう」(本多勝一『中国の村』朝日文庫)
こういうことを中国だけでなくアジア全土でやりました。従軍慰安婦、中国人や朝鮮半島(韓半島)の人々を徴用工として賃金も払わず、暴力を振るって働かせた。日の丸はこういう戦争と一体のものです。
第三に、国旗・国歌は強制はしないというのが政府の立場です。
「国旗及び国歌に関する法律」制定当時の内閣総理大臣は小渕恵三氏です。1999年(平成11年)6月29日の衆議院本会議において、次のように答弁しています。
「政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております」。
この立場は現在の政府でも引き継がれています。内閣府のホームページをみますと「内閣総理大臣の談話(平成11年8月9日)」が載っており、「今回の法制化は、国旗と国歌に関し、国民の皆様方に新たに義務を課すものではありません」とあります。
議場正面に国旗を掲示するとどうなるのか。現在、議場では、まず議長に向かって礼をし、その後、同僚議員のみなさんに向かって礼をしています。国旗を掲げると議長の後ろにある国旗に礼をすることが事実上強要されます。私は日の丸、現在の国旗が戦争中に果たした役割を考えるとき、日の丸に向かって礼をすることはできません。国旗に対して特段の感情を持たない人はいいでしょう。しかし、私は違います。議会の代表である議長に対しては失礼のないようにしたい。しかし、議長に対して礼をすると国旗・日の丸に対しても礼をすることになる。礼をしてもしなくても私は質問に立つたびに苦痛を感じます。これは憲法の定める「思想及び良心の自由」を侵すものであります。
第四に、第二次世界大戦後の日本の国のありようです。
日の丸にまつわる問題は、「過去のものとして反省したのだからもういいではないか」という意見もあります。
しかし果たしてそうでしょうか。今の日本はどうか。南京虐殺も従軍慰安婦もなかった。安倍総理は、徴用工問題は解決済みで、「今回の裁判の原告は(徴用でなく)全部『募集』に応じたため、『朝鮮半島出身労働者問題』と言いたい」と言う。過去、日本がやってきたことをなかったかのように否定する。
先ほど申しました外国からの移民、外国人労働者の扱いは酷いものであります。戦前・戦中で犯した過ちに対して反省するどころか、開き直り、同じ過ちを繰り返しています。
2015年、安倍政権のもとで、アメリカ軍が起こす戦争に自衛隊が参戦し武力を行使することを可能にした安保法制=戦争法が成立しました。そのもとで、航空母艦、空母のことを「多用途運用護衛艦」と言い換え、アメリカとともに海外で戦争する準備をすすめています。戦闘機を積むのに空母ではないとごまかす。
今年1月4日の年頭会見で安倍総理は「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、国民的な議論を一層深めていく」と主張しました。実際には年内には何もできなかったわけですが、憲法を変え、戦争のできる国へ変えようとしている。
医療制度や福祉はどんどん悪くなり格差と貧困が広がっています。東京電力福島第一原発事故で避難している人たちは満足な補償も受けていない。7年も経つのに生活再建のめどの立たない人がたくさんいる。沖縄の人たちがどんなに辺野古基地建設に反対しても、平気で無視して美しい海に土砂を投入する。
こういう日本で、「日本国民としての自覚と誇り」を持て、国旗を敬え、議場にも掲示しろ、というのでしょうか。
大切なのは「日本国民としての誇り」が持てるような日本にすることです。
戦争のないもとで、誰もが健康で文化的な暮らしができ、自由で平和な日本をつくることではないでしょうか。旗の問題ではない。
最後に 府中町議会の歴史と伝統に対してです。
府中町はこれまで日の丸=国旗を議場に掲示してきませんでした。それで何か問題があったでしょうか。議論が深まらないとか、どうしても真剣になれないとか。そんなことはなかったはずです。
今から10年ほど前、2005年から2007年にかけて町議会で国旗の掲示について論議がありました。当時の議事録を読み、その真摯な討論に感激しました。国旗の掲示に反対ではないが、十分に審議すべきである、いろいろな意見があるなかでそれを封じ込める形で決めるべきでない。こういう意見が多数でした。
慎重審議という結論になった1回目の全員協議会のあと、突如本会議に、今回と同じような議案が今回と同じやり方で出されました。そのとき、お亡くなりになった加島議員が「十分お互いに意見を交わしながら検討の時間を持とう」というのが全員協議会での結論であり、議運への付託をすべきという動議を出し、議案提出者を含め議員全員がこの動議に賛成したわけであります。
このように、重大な問題について軽々に結論を出さず、熟議するというのが府中町議会の歴史であり、よき伝統であります。今回の提案はこの歴史と伝統を踏みにじるものであります。
以上、5点を申し述べまして、本議案に対する反対討論といたします。
■梶川三樹夫議員 賛成討論
平成11年8月9日に成立した「国旗及び国歌に関する法律」によって、これまで慣習法として定着してきた我が国の国旗「日の丸」、国家(議事録のママ)「君が代」が改めて法制化されました。
現在、我が日本国の国旗「日の丸」は国民に親しまれ、定着しており世界各国からも、広く認められているところです。自分の国の国旗を敬愛し、誇りに思うことは、世界各国の国民にとっても共通した感情であり、日本国民もまた同様であります。
このような認識に立ち、我が国、我が県、そして本町の永遠の繁栄と恒久の平和を切に願い、憲法に基づく民主主義実現の厳粛な議場に国旗を掲揚することは、極めて自然なことと考えます。
本町においても、町の施設には国旗が掲揚され、小中学校の入学式、卒業式での国旗掲揚率は100%です。
広島県内の23市町の調査でも、議場に国旗、市町旗が掲揚されてないのは府中町と大崎上島町のみになりました。その大崎上島町も来年度には、議場に国旗、町旗を掲げる予定と聞いております。
戦後73年を過ぎた現在、先に述べた理由からも、我が国の国旗を議場に掲揚してはいけないといった結論には至らず本議案については、賛成をいたします。
この反対討論と賛成討論。月とスッポン、提灯と釣り鐘の落差。それでも、数で負ければ、負けは負け。悔しいが、どうにもならない。
ところで、先の「山口議員の動議」は、民主主義における合意形成の在り方についてのお手本を見せてもらっている感がある。「これまでの国旗掲揚をめぐる府中町議会での論議の経過 2005-2007」は、下記URLに詳しい。感動的な議論の積み重ねで、これまでの国旗掲揚が阻まれてきた。ここに、保守の良識を見ることができる。しかし、いまや日本の保守は余裕を失い、良識をなげうったかに見える。公明党も同様である。
http://futamishingo.com/3846/
反対討論の中で出てきた、副議長(西友幸議員)の「非国民発言」。議事録では以下のとおり。
○12番(西友幸君) 発言ですよ、私の。ちょっと失礼ですよ、共産党。
ですから、全体の議員の中でやれば、議運というのはもう半分ぐらいの議員の中でまとめていこうというわけですよ。そんなひどいこというてありませんよ、これ。みんな一人一人思想を持って、日本国民として堂々として生きていっとるわけですから、それを上げないなんて何て非国民なことを言うんか、私は理解できんのですが。以上です。私のほうは。
○7番(二見伸吾君) 意見の異なる者に対して非国民という言い方はないと思います。これは撤回していただきたい。
山口議員は全会一致ということは一言も言ってない。山口議員が言ってるのは、慎重審議をすべきだということを言ってるんで、全然違う。西議員が言ってることは、言ってないことで批判してるじゃないですか。こんなでたらめな話ないです。
○12番(西友幸君) 二見議員に非国民言うたのは、私が確かに言い過ぎだと思いますけど、これは議員というのは我々議会に出て、それぞれいろんな意見を言うことを与えられて権限を持っとるわけなんですよね。
西議員の発言はこのように補うことができるだろう。
「私たち議案提出の議員11人は、みんな一人一人がそれぞれの思想を持って、日本国民として堂々として生きていっとるわけですから、当然に議場には国旗を掲揚すべきだと考えている。それを国旗を掲揚しないなんて、何て非国民なことを言うんか。私には理解できんのです」
なお、私が府中町の二見議員に注目したのは、醍醐聰さんのツイートで、同議員が町議会の賀詞決議に反対したことを教えられてのこと。この点についての下記の記事も面白い。ぜひ,お目をお通しを。
国民主権をないがしろにする賀詞決議に反対しました
http://futamishingo.com/4308/
二見伸吾,全開・絶好調である。がんばれ、最前線で。
共産党の地方議員が、このように全国で生き生きと逞しく奮闘しておられることを頼もしく思う。
(2019年9月23日)
嫌いな言葉は山ほどある。なかでも、「愛国」「愛国者」「愛国心」はその最たるもの。憂国・国士・祖国・殉国・忠義・忠勇など、類語のすべてに虫酸が走る。「真の愛国者」は、なおいけない。生理的に受け付けない。
パトリオティズムやナショナリズムと横文字に置き換えても同じことだ。パトリオティズムは理性の香りあるものとして肯定的に、ナショナリズムは泥臭く否定的に語られることが多いが、大した変わりはない。どちらも胡散臭さに変わりはない。どちらも、個人よりも国家や民族などを優越した存在として美化するもの。まっぴらご免だ。
辟易するのは、「愛国」とは倫理的に立派な心根であると思い込んでいる多くの人びとの押し付けがましい態度である。この愛国信仰者の愛国心の押し売りほど嫌みなものはない。夫婦同姓の強制、LBGTへの非寛容などとよく似ている。要するに、過剰なお節介なのだ。
国家や社会にゆとりがあるときには、「愛国」を叫ぶ者は少なく、邪悪な思惑による愛国心の鼓吹は国民の精神に響かない。愛国心の強制や強調が蔓延する時代には、国家や社会にゆとりがなくなって、個人の尊厳が危うくなっているのだ。とりわけ、政治権力が意図してする愛国心の鼓吹は、国家や社会が軋んでいることの証左であり警告なのだ。まさしく今、そのような事態ではないか。
為政者にとって最も望ましい国民とは、その精神において為政者と同一体となった国民,それも一つの束となった国民である。為政者は国家を僭称して、国民を愛国心の紐で、ひとつの束にくくろうと試みる。それさえできれば、為政者の望む方向に国民を誘導できる。そう。戦争の準備にも。場合によっては開戦にも。
国民の「愛国心」は、易々と為政者の「国家主義」に取り込まれる。あるいは、国家主義が愛国心を作り出す。愛国心に支えられた国家主義は、容易に排外主義ともなり、軍国主義ともなる。結局は、大日本帝国のごとき対外膨張主義となるのだ。愛国心とはきわめて危険なものと考えざるを得ない。
もうすぐ東京五輪である。ナショナリズムとナショナリズムが交錯して昂揚する一大イベント。どの国の為政者も、この場を利用しようとする。国旗国歌が輻輳 する空間が生まれる。旗や歌がもつ国民統合の作用を最大限利用しない手はない。どの為政者もそう考えて実行する。
日の丸が打ち振られる。あの戦争のときのように。今度は旭日旗までがスタジアムに登場するという。形を変えた、擬似戦争であり、ミニ戦争である。
今のままでは、安倍政権下、小池百合子都政が、東京五輪の主催者となる。世が、あげて東京都五輪礼賛であることが、まことに不愉快極まりない。
山ほどある嫌いな言葉に、もう少し付け加えよう。「東京五輪」「日本選手を応援しよう」「日本チームの奮闘が素晴らしい」「日本の活躍が楽しみですね」…。
(2019年9月16日)
ILOとユネスコが合同委員会(セアート)での検討を経て、日本政府に対して「日の丸・君が代」強制の是正を求める勧告を出した。このことは、8月29日の当ブログで述べたとおりである。
ILOとユネスコが、「日の丸・君が代」強制問題に是正勧告
https://article9.jp/wordpress/?p=13082
本日(9月3日)参議院会館で、その勧告の取り扱いをめぐって、文科省の担当者と当該労組である「アイム」との交渉があり、私も参加した。
私が、文科省との交渉の席に出たのはこれが2度目。本日の文科省の対応は、到底誠実なものとは言いがたいが、とにもかくにも1時間半の意見交換の場を設定するだけの良識は持ち合わせているのだ。この点、都教委とは大違いである。都教委は、逃げ回っているばかり。教育委員はもとより、教育庁の幹部も交渉の場にはけっして出て来ない。自分のしていることに、およそ自信が持てないからとしか考えられない。
まず確認しておこう。ILOとユネスコの日本政府に対する勧告は、以下の6点である。「日の丸・君が代」強制を是正するよう求めるものとなっている。
(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること
この度のILO・ユネスコ勧告は、「日の丸・君が代」強制の入学式・卒業式を「愛国的な式典」と呼んでいる。最も注目すべき上記(a)は「国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員」の立場を慮るものであり、(b)では「消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける」よう手段を尽くせと言う。つまり、「入学式・卒業式での国歌斉唱時における強制はやめよ。平穏な不起立に対する懲戒処分は避けよ」と言っているのだ。これが、勧告の眼目である。
もう一つ、(d)は「現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。」というのも、影響が大きい。周知のとおり、都教委は被処分者に対して「嫌がらせの研修」を行う。研修センターにカンヅメにして、転向を迫るやり口。これを「懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。」と端的な勧告となっている。
これに対する文科省の総括的な対応は、以下のとおりである。
今般ILO事務局より送付されたセアート報告書については、法的拘束力を有するものではなく、また、必ずしも我が国の実情や法制を十分に斟酌しないままに記述されているところがある。文部科学省としては、…「教員の地位に関する勧告」の精神を尊重しつつ、我が国の実情や法制に適合した方法で取り組みを進めてまいりたい。
文科省が指摘する問題は3点ある。
(1) 報告書は飽くまで「勧告」であって、法的拘束力を有するものではない。
(2) 報告書は必ずしも我が国の実情を十分に斟酌したものではない。
(3) 報告書は必ずしも我が国の法制を十分に斟酌したものではない。
(1)は論外であろう。ILO・ユネスコの参加国である日本が、その勧告を「法的拘束力を有するものではない」として無視するとすれば大問題である。当然のことながら、勧告には誠実な対応が求められる。開き直って、無頼国家、破落戸官庁の汚名を着るようなことがあってはならない。
(2) の「十分に斟酌すべき我が国の実情」が何をいうのか、私にはよく分からない。私の理解では、国旗国歌に関する我が国特有の実情とは、旧憲法時代の国旗国歌を今なお使用し続けていることである。「日の丸・君が代」は、神権天皇制時代の国旗国歌であり、富国強兵を国是とする大日本帝国の国旗国歌として侵略戦争と植民地支配の象徴であった。憲法改正によって国家の基本原理が根本的に変更された今なお、同じ旗と歌を国旗国歌とすることにはおおきな無理があるのだ。日本の国旗国歌事情は、あたかも戦後のドイツがハーケンクロイツを国旗として使用し続けているに等しい。この国旗国歌に違和感をもつ国民こそが正常な感覚といわねばならない。
(3)は、本日の文科省担当者の説明によれば、「我が国の法制」とは、教育公務員の懲戒権は各教委にあって政府にはない、というものの如くである。文科省によると、「ILO・ユネスコは、そんなことも知らずに政府に勧告を出してきた」といわんばかりなのだ。しかも、「懲戒権の行使は、国内法(地公法)に則り適切に行われている」という認識なのである。これは、ILO・ユネスコからの勧告に誠実に対応しようという姿勢ではない。「無視するぞ」と言わんばかりではないか。
日本政府は、国旗国歌の強制、しかも懲戒処分までしてする「日の丸・君が代」への敬意表明の強制は、世界標準からみて非常識なものであることを真摯に受け止めなければならない。ILO・ユネスコが言っていることの枝葉末節ではなく、基本理念を理解しなければならない。
教育の場から思想・良心の自由が失われれ、国家の統制のみが横行することとなれば、やがて民主主義は死滅することになろうからである。ちょうど、「日の丸・君が代」とご真影への敬意表明が当然とされた、あの暗黒の時代のごとくに。
(2019年9月3日)
安全保障理事会と総会ばかりが国連ではない。国連はいくつもの専門機関を擁して、多様な人権課題に精力的に取り組んでいる。労働分野では、ILO(国際労働機関)が世界標準の労働者の権利を確認し、その実現に大きな実績を上げてきた。また、おなじみのユネスコ(国際教育科学文化機関)が、教育分野で旺盛な活動を展開している。
その両機関の活動領域の交わるところ、労働問題でもあり教育問題でもある分野、あるいは各国の教育労働者(教職員)に固有の問題については、ILOとユネスコの合同委員会が作られて、その権利擁護を担当している。この合同委員会が「セアート(CEART)」である。日本語に置き換えると「ILO・ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会」というのだそうだ。
各国の教職員の労組が、それぞれに抱える問題をセアートに訴え、国連から各国にしかるべき勧告がなされるよう働きかけている。そのような試みのひとつとして、我が国のいくつかの教職員労組が、「日の丸・君が代」強制問題を取りあげるようセアートに申し立てた。この春、これが正式に取りあげられ、ILOとユネスコ両機関での正式決議が成立し、日本政府に対する勧告となった。このことがもつ意義は大きい。
申し立てを行って、勧告を得たのは、東京と大阪にある二つの独立系教職員組合。「アイム’89東京教育労働者組合」と「合同労組仲間ユニオン」の教職員支部である。小さな組合の大きな成果となった。
アイム’89が申し立てたのは2014年8月。その内容は、1966年のILO「教員の地位に関する勧告」を、日本政府が遵守していないことについての申立だが、その中で「日の丸・君が代」強制問題に言及してこれを是正するよう具体的な勧告を求めるというものである。
「1966年・教員の地位に関する勧告」は、にユネスコが全会一致で採択した教員にとっての「人権宣言」とも言うべきもので、全世界の教員の自由、専門職性を認め、その地位の保護と向上を各国政府に求めたもの。
日本で進行している、学校の卒業式・入学式における「日の丸に向かって起立し、君が代を斉唱する」ことの強制は、公権力が教育の場に愛国心強制を持ち込み、教員に対して愛国的な教育を強制するもので、教員の思想・良心の自由、その専門職性に支えられた教職員の教育の自由を侵害するものとなっているという主張。
とりわけ、東京都教育委員会は2003年「10・23通達」を発出し、これに基づいて、全校長が管轄する全教職員を対象に、「会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」よう職務命令を発し、これに従わない教職員に対する大量の懲戒処分を重ねてきた。既に、500に近い教職員が、戒告、減給、停職処分を受け、処分者には「再発防止研修」が懲罰的に課され、すべての処分者は定年退職後の再雇用希望も拒否されつづけている。
アイム’89によると、「日の丸・君が代」処分に関連する申立の根拠たる事由は、下記の3点だという。
1 教職員は,卒業式・入学式において「日の丸・君が代」への敬愛行為を強制され,思想良心の自由を侵害されています。
2 教員は,卒業式・入学式の実施内容に関して何ら決定権を持ちません。教員は教育の自由の権利を侵害されています。侵害は,年を追うごとに領域 が拡がり,深刻になっています。
3 教職員は,自らの思想良心,教育信念にもとづいて,卒業式・入学式において「日の丸君が代」起立斉唱命令に従わないと,懲戒処分を科され,経済的不利益,精神的苦痛を被ります。そればかりか,考え方を改めるように再発防止研修という名の思想転向を強要されます。また退職時には,再雇用職員への採用が拒否され,5年間の教育的関わりの機会が剥奪されます。
この申立をセアートは受理し調査を実施した。日本政府へ問い合わせもおこない、アイム’89と日本政府の双方にそれぞれ意見と反論を述べる機会を与えたうえで、2018年10月、ILOとユネスコに対する報告・勧告を採択した。この勧告に基づいて、2019年3月ILO理事会が4月にはユネスコ執行委員会が、正式に採択して公表した。
ILOとユネスコの日本政府に対する勧告は、以下の6点である。申立を認めて、「日の丸・君が代」強制を是正するよう求めるものとなっている。
(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること
ILOユネスコ勧告が、「日の丸・君が代」強制の入学式・卒業式を「愛国的な式典」と呼んでいることが興味深い。「愛国的な式典」に関する教員の義務については、都教委が一方的に命令するのではなく、教職員組合との合意で規則を制定せよという。そして、その規則は「国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できる内容とする」というのだ。これを、世界標準と考えるべきなのだ。
この勧告を受けて、アイム’89は、次のような声明を挙げている。
・日本政府および文部科学省は、「日の丸・君が代」が強制されるべきものではないことを明確に示し、各地方自治体教育委員会に通達すること。
・各地方自治体および各地方自治体教育委員会は、直ちに「日の丸・君が代」を強制する条例や通達等を廃止・撤回すること。
・各地方自治体教育委員会は、「日の丸・君が代」強制による処分のすべてを取り消すこと。
・日本政府および文部科学省、各地方自治体教育委員会は、学校における卒業式・入学式等の実施内容・方法について、教職員団体と話し合いをする機会を設定すること。
・日本政府および文部科学省、各地方自治体教育委員会は、学校における卒業式・入学式等の実施内容・方法について、すべての教職員および子どもの自由と尊厳が尊重され、ニーズが満たされるものとなるように設定すること。
・文部科学省および各地方自治体教育委員会が設定する教員研修については、 教員の専門的発達を目的とする以外のものとしないこと。
・最高裁判所および下級裁判所は、「教員の地位に関する勧告」および「セアート勧告」に照らし、「日の丸・君が代」強制により損害・不利益を被った者の訴えに対し、正当な補償・救済をすること。
まことにもっともではないか。次に予定されている「東京・君が代裁判」においては、十分にこれを活用したいものと思う。また、大いにこれの宣伝に務め、「日の丸・君が代」強制反対の世論を喚起したい。
(2019年8月29日)