昨日(2月17日)の衆院予算委員会質疑は苦しかった。ホテルニューオータニの方は、事前に丸め込んでおいたから、まあ、何とかボロを取り繕ってここまできたが、ANAインターコンチネンタルには十分な手当をしてこなかった。手薄のところから手痛い一撃。虚を突かれて嘘がばれちゃった。私が、「書面はないが、内閣総理大臣として責任をもって答弁している」なんて恰好つけて、我ながら、みっともないったらありゃあしない。
立憲民主の黒岩宇洋議員を「嘘つき」呼ばわりし、「人間としてどうなのかな」とまで言ってきたのに、全部自分に返ってきちゃった。どうしよう。どうしたらいいんだろう。
問題は、2019年の「桜を見る会」前日の「前夜祭」だったはず。ホテルニューオータニと久兵衛は話が分かる。ところが、ANAインターコンチネンタルは、堅物の朴念仁だった。これが計算外。
17日の午前中には、辻元清美から、ANAホテルからの回答メールを突きつけられた。2013年以降に同ホテルで開かれたパーティーについて、「明細書を主催者に発行しないケースはない」「政治家だから例外としたことはない」などと、はっきりとしたものだ。だから困った。
午後の関連質疑では、少々不安だったが、強気で行くしかなかった。「安倍事務所がホテル側に問い合わせたところ、辻元氏への回答は一般論で、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答に含まれていないとのことだ」と答弁した。何とかこれで切り抜けたかと思ったら、その日の内に、朝日と毎日が余計なことをした。ANAホテルに問合せをしたというんだ。私を窮地に陥れようという、新聞社も新聞社だが、ホテルもホテルだ。新聞社の取材にまたまたメールで回答したのだという。内閣総理大臣の私に忖度なしだ。
「直接(首相側と)話をした者が『一般論として答えた』という説明をしたが、例外があったとはお答えしていない。私共が『個別の案件については、営業の秘密にかかわるため回答に含まれていない』と申し上げた事実はない」と、これはまたはっきりした言い分。「弊ホテルとしては、主催者に対して明細書を提示しないケースはないため、例外はないと理解している」とまで書いてあったそうではないか。これじゃ、かたなしだ。私が嘘つきだとバレちゃった。
安倍事務所がオータニの広報部長ら二人を議員会館に呼び出したのが、昨年11月15日のことだ。ここで、公職選挙法・政治資金規正法の違反を免れるスキームを作ったはずだ。安倍後援会・安倍事務所は契約の主体じゃない。参加者一人ひとりが契約主体で、会費は5000円と確認した。この報告を受けて、私はその日に安心してぶら下がり会見をやった。
さらに、産経が「銀座久兵衛」を取材して、「桜を見る会」前日の後援会夕食会には、「うちの寿司は出していない。報道は間違いだ」とする記事を書いたのは、その日の深夜のことだ。これで、防戦できるかと思っていた。
ところが昨日以来、明らかに私の方の旗色が悪くなった。ニューオータニも久兵衛も、サービス業の常道として、客の顔を立ててくれている。どうして、ANAは、ああ頑なにホントのことを言っちゃうんだろう。忖度もサービスのうちじゃないか。もう、安倍政権に尻尾を振っても商売にはならないということなのか。それとも、ホテルマンにも矜持があるということなのかね。プライドなんて、商売にならないのにだ。
しょうがない。また、もう一本、尻尾を切ることにするか。
(2020年2月18日)
本日(2月13日)正午より、参議院議員会館会議室で、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成集会が開かれた。その式次第は、以下のとおり。
〇 開会宣言
〇 法律家の会結成の趣旨
? 泉 澤 章(弁護士、呼びかけ人)
〇 呼びかけ人から
小野寺 義 象
(弁護士、「桜を見る会」を追及する弁護士の会・宮城共同代表)
澤 藤 統一郎
(弁護士、背任罪告発代理人共同代表)
毛 利 正 道
(弁護士、「桜」私物化!怒り満開 市民の会チーフスタッフ)
〇 国会議員の方々から
〇 今後の会の活動と行動提起
南 典 男(弁護士、呼びかけ人)
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「『桜を見る会』を追及する法律家の会」結成の趣旨
1 全国から湧き上がる「桜を見る会」私物化と情報隠蔽への怒り
昨年の臨時国会以来、安倍総理が主催してきた「桜を見る会」に関連して様々な問題が噴出し、国政上の重大な焦点のひとつとなっています。
特に「桜を見る会」の前夜祭として行われたホテルでの夕食会は、この間判明した事実からだけでも、安倍総理の事務所が主体となって開催された後援者向けの宴会であり、公職選挙法、政治資金規正法に抵触する疑いが極めて強いことが明らかになっています。また、本来国の行事として開催されるはずの「桜を見る会」を、自らの支援者に向けて権勢を示し、今後の政治的地位を固めるため、私的に流用した疑いも濃厚になっています。
安倍総理は、一国の総理が違法行為をしていたのではないかという疑いを払拭するため、本来であれば、自ら積極的に客観的な事実を示して、合理的な弁明をすべき義務があるはずです。
ところがこの間の国会論戦をみると、安倍総理は合理的な弁明どころか、ホテルとの契約は後援者個々人である、明細書は出せない、招待者名簿もないなどと、非合理的な弁明に終始しています。さらに政府も、「桜を見る会」の招待者名簿は、管理簿への記載もなく、事前同意手続もなしに廃棄したなどと説明し、公文書管理法違反の事実を認めながら、更なる調査やデータ復旧の試みはしないと居直るなど、ひたすら逃げ切りをはかろうとしています。
このように、「桜を見る会」を私物化し、自らに不利な証拠は隠蔽する安倍総理と政権への怒りは、全国各地で湧き上がっています。
2 いま、私たち法律家に求められていること
このような安倍総理による「桜を見る会」の私物化と政権の情報隠蔽に対し、政治的・道義的責任を問う声が高まっています。しかし、ことは政治的・道義的責任だけに止まるものではありません。なぜならこの問題は、前述した公職選挙法や政治資金規正法、公文書管理法等々といったわが国の法律に違反する“違法行為”を、わが国の総理大臣が行ったのではないか、ということが問われているからです。
独裁国家下ならまだしも、立憲民主主義の下で暮らしているはずの私たちは、為政者の違法行為疑惑を目の前にして、これを些細なこととして済ますわけにはゆきません。特に私たち法律家は、日本国憲法における法の支配のもと、法律がこの国において公正・公平に適用されるべく日々業務を行い、研究をしています。そのような法律家としては、為政者の違法行為疑惑を目の前にしつつ、これをただ座して眺めていることは到底許されないのです。
いまこそ、私たち法律家が率先して声をあげ、「桜を見る会」問題の真相を究明し、真に責任ある者の法的責任を追及することが求められているのです。
3 「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成とこれからへ向けて
そこで今般、私たちは、全国の法律家に呼びかけて、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」を結成することにしました。
これからは、すでに全国で「桜を見る会」問題の取り組みを進めている人たちや団体と相互に協力し合い、さらにこの問題で精力的に事実関係を追及してきた野党の対策チームにも協力を仰いで、「桜を見る会」問題の真相を徹底的に究明するとともに、刑事告発を含めた法的責任を追及する手段を慎重に検討し、早期に実現してゆこうと考えています。
本会の目的と活動が、国民各層の支持を得てさらに全国各地に広がり、わが国の立憲主義と法の支配が回復するよう、法律家として全力を尽くしてゆく所存です。
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私(澤藤)の発言は、「内閣総理大臣たる者による政治の私物化に法的な形を与えるには背任がふさわしいとする」趣旨のもの。
去る1月14日、「桜を見る会」についての公私混同疑惑を背任罪(刑法247条)に当たるものとして、内閣総理大臣・安倍晋三を東京地検特捜部に告発いたしました。告発人は、上脇博之さんら研究者グループ13名。代理人弁護士は、阪口徳雄君を筆頭とする51名。
「桜疑惑」については、公職選挙法違反、政治資金規正法違反、公用文書毀棄などが論じられてきました。背任派は少数意見にとどまっています。それでも、なぜ今あえて背任罪での告発なのか。私見を申しあげます。
◆私は、背任こそが国民の怒りの根源をとらえた告発だと思うのです。
森友・加計疑惑を曖昧にしたままの「桜疑惑」です。広範な国民のこの疑惑に対する怒りの根源は、内閣総理大臣たる者の国政私物化にほかなりません。
国政私物化とは、内閣総理大臣たる者が国民からの信頼を裏切り、私の利益のために国民から与えられた権限を悪用する行為です。国民はこの人物を信頼し、当然に国民全体の利益のために適切に権限を行使してくれるものと期待して、権力を預け権限を負託しました。にもかかわらず、この人物は国民の信頼を裏切って私益のために権限を悪用したのです。
このことを、法的に表現すれば、内閣総理大臣たる者の国(ないし国民)に対する「信任義務違反」というほかはありません。他人から負託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が背任である以上、背任罪告発はことの本質を捉え、国民の怒りに形を与える刑事責任追及として最も適切と考えられるのです。
にもかかわらず、これまで首相の背任を意識した議論が少ないと言わざるを得ません。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたいと思うのです。単に、「安倍首相は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍首相は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論を喚起したい。そうすることではじめて、忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となると考えます。
◆ 具体的に背任成立の要件について、述べたいと思います。
(1) 主体
背任罪は身分犯であって、その主体は、「他人のためにその事務を処理する者」です。憲法第15条に基づき、「全体の奉仕者」として公共の利益のために職務を行うべき公務員が、身分犯としての背任罪の主体となり得ることは判例通説の認めるところです。内閣総理大臣の職にある者においてはなお当然というべきで、この点に疑問の余地はありません。
本件の場合、「他人」とは国であって、被告発人は、各年の「桜を見る会」の主催者です。同「会」の遂行について国の利益のために適切に企画し実行すべき立場にある者として、構成要件における「他人のためにその事務を処理する者」に当たます。
(2) 図利加害目的
背任罪は目的犯であって、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要とされます。本件の場合は、被告発人自身の利益、ならびに第三者である被告発人の妻・被告発人の政治的後援会員・被告発人と所属政党を同じくする国会議員らの利益をはかる目的があっての任務違背であることは、自明のことというべきです。
(3) 任務違背
背任罪の本質は背信であると説かれます。被告発人の国に対する任務に違背する行為が、構成要件上の犯罪行為です。当該任務は、具体的には「法令、予算、通達、定款、内規、契約等」を根拠とします。その根拠にもとづく「任務に反する行為でその行為が、国に財産的損害を生ぜしめる性質のものである限り原則的に任務違背が成立する。」と説かれます。
被告発人は内閣府の長として、本件各「桜を見る会」を企画し実施して必要な経費を支出するに当たっては、「桜を見る会開催要領」と予め定められた歳出予算額とを遵守すべき義務を負っていたものです。
歳出予算は拘束力を持ち、いわゆる「超過支出禁止の原則」にしたがって、予算計上額を上回って超過支出することが禁止され、予算外支出も認められません。にもかかわらず、被告発人は、「桜を見る会開催要領」を無視して、招待者の範囲を恣に拡大し、約1万名と限定されていた範囲を大幅に逸脱して無原則に招待者を拡大し、予算の制約を大幅に超えて費用を支出した点において、その任務に違背したものです。
(4) 国の財産的損害
背任罪は財産犯ですから、被告発人が国に幾らの損害を与えているかが問題となります。被告発人は総理大臣になって以来、毎年「桜を見る会」への招待者数を増やし、国に予算を超過する支出を余儀なくさせて、毎年予算超過額に相当する損害をあたえました。その金額の総計は、公訴時効完成前5年分で1億5200万円となります。
◆ 政府側の弁明
予算超過に関する内閣府大臣官房長の説明は、「最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、結果的に支出額が予算額を上回った分については、『一般共通経費』で補填している」というものです。つまりは、予算で最低限必要なことはできるのです。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのです。国会が承認した予算を漫然と超過することは許されありません。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、しかるべき理由と証明がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されようはずはありえません。
以上のとおり、「桜疑惑」とは,その本質において、まずは「総理大臣の国民に対する」背任だというのが私たちの主張です。
弁護士 澤藤統一郎
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黒岩宇洋(立民)、池田真紀(同)、奥野聡一郎(国民)、山井和則(無所属)、田村智子(共産)、山添拓(共産)の各議員から、それぞれに熱のはいったご挨拶があった。
こもごも熱く語られたことは、「いったい、これが法治主義国家か」「法の支配はどこへ行ったのか」「民主主義の根幹が揺らいでいる」「権力者は法を破ってもよいとでも思っているのか」「こんなことが許されてはならない」「徹底した追及が必要だ」「そのために、法律家の協力を期待する」ということ。
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今後の方針と行動提起
南典男
1 「桜を見る会」の問題は、安倍首相による国政の私物化という問題ですが、同時に、民主主義や法治主義を壊すという問題でもあります。安倍首相は、国民の血税を使って地元の後援会員に便宜を図るだけでなく、前夜祭では本来なすべき収支報告をなさない、これは政治資金規正法に違反すると思われます。また、ホテル側が通常よりも低い金額で料理等を提供しており、これは公職選挙法に違反すると思われます。
安倍首相は、違法行為であることを弁解するために、ホテルと800人の参加者が個別に契約しているとか、安倍事務所はホテルと合意はしたが契約はしていないとか、説明にもならない、非常識かつ不合理な弁明に終始しています。
本来、率先して法を守るべき立場に立たなくてはならない首相が、率先して違法行為をする、弁解にもならない不合理な弁明に終始する、これでは私たちの国は法治国家の体をなしていないと言わざるを得ません。
2 私たち弁護士や法学者は、法の支配を回復するために、法の専門家として「「桜を見る会」を追及する全国法律家の会」を立ち上げました。今後の行動を提起します。
? 96人が呼びかけ人になりました。これから全国から千を超えるような賛同者を幅広く募ります。
? 刑事告発を視野に違法行為に基づく法的責任をはっきりさせます。集めた多くの証拠資料を分析し、また、新たな証拠の収集を行い、論点を絞り込んで法的責任を明確にします。
? 「桜を見る会」の問題について、全国津々浦々で集会などの企画を成功させます。既に、仙台、長野、沖縄などが先頭に立って走って頂いていますが、全国で企画を立てて頂ければと思います。3月に桜が開花するのとともに、違法責任を追及する運動を展開し、追及運動の季節にしていきましょう。
? 国民世論を高め、立憲野党の議員の皆さんと連携して国会での追及を強め、事実と真相を明らかにしていきます。
? 以上4つのことを実践して、3月12日午後5時から大きな規模で院内集会を行います。場所は衆議院第2議員会館多目的会議室です。
3月12日まで1か月、お互いに頑張りましょう。そして、違法責任の当事者である安倍首相の法的責任を明確にするまで、追及運動を大きくしていきましょう。
(2020年2月13日)
「前門の桜、後門のIR」。
「紙の爆弾」(鹿砦社)3月号の「不祥事連発の安倍政権を倒す 野党再編への道筋」(朝霞唯夫)の冒頭に紹介されている至言。もちろん、自民党幹部にとっての切実な感想である。「桜」「IR」に、「ウグイス嬢」「香典」と続いて、「不祥事連発」という表題となる。
アベ政権の不祥事はいろいろあれど、安倍晋三本人の国政私物化体質を良く表している点で、桜疑惑が抜きん出ている。「桜」と「疑惑」、「桜」と「安倍セコイ」、「桜」と「安倍汚い」のイメージがしっかりと結びついた。罪ない桜には気の毒なことこのうえない。
一昨日(2月7日)新宿御苑に足を運んで、たった一人の「桜を見る会」をやってきた。天気はよし、風はなし。人もまばら。コロナウィルスの影響もあるのだろうが、なんとも広い庭園を独り占めの贅沢。もちろん、ソメイヨシノもサトザクラも蕾は固い。しかし、翔天亭そばの寒桜は今が見頃である。温かい「ワンカップ甘酒」300円のなんともつましい「一人桜を見る会」。
長い間この庭園の入場料は200円だったが、昨年(2019年)3月に500円への大幅値上げをした。19年4月の「18000人桜を見る会」は、値上げ後のこと。参加者は入場料を支払っていない。
よく知られているとおり、この広い庭園は江戸時代には、旗本内藤家の屋敷だった。それが徳川家崩壊で、維新後は天皇家の財産となった。いまだに、「新宿御苑」と、ことさらに「御」の文字が入っているのは、もともとは天皇家のものであったことを忘れてはならぬとするおもんばかり。「上野恩賜公園」も同様である。
新宿御苑の公式ホームページに、こうある。
江戸の大名屋敷から皇室庭園、国民公園として、400年を超える時代の中で、さまざまな役割を担い、発展を遂げてきた新宿御苑は、日本における貴重な歴史文化と自然を継承する庭園として、時代を超えて人々に愛され続けています。
そりゃウソだろう。旗本屋敷も皇室庭園も、所詮庶民とは縁無きもの。「時代を超えて人々に愛され続けて」きたわけがない。
「新宿御苑は明治35年から4年の歳月をかけて明治39年(1906)5月に完成し、明治天皇の御臨席のもとに日露戦争の戦勝祝賀を兼ねた開苑式が催されたとのことです。」
ここにも、国のすべてが「天皇の戦争」に結びつけられていた歴史の片鱗がある。また、戦後の庭園の歴史については、こう記されている。
昭和24年(1949)4月1日から「国民公園新宿御苑」と名称をあらため、5月21日に正式に公開が始まりました。最初の入園料は20円で、翌年3月までの10ヵ月間で105万人もの入園者数を記録しました。
その後まもなく入園者サービスの充実を目指し、財団法人新宿御苑保存会(現在の一般財団法人国民公園協会新宿御苑の前身)が発足し、…中断されていた観菊会は、開苑から2年後の昭和26年(1951)に内閣総理大臣主催の「菊を見る会」として再開し、観桜会も、その翌年に「桜を見る会」としてふたたび催され、伝統の花々が初めて一般に公開されることになりました。
1952年に始まった「桜を見る会」。21世紀になって出てきた、ヘンな総理が、これを私物化することになろうとは、内藤様も、天皇家も、考えもしなかったろう。
その「桜を見る会」疑惑。常識的には、もう詰んでいる。野党の追及に、抵抗すればするほど、泥沼にはまり身動きできなくなっている。しかし、それでも安倍は「投了」しようとしない。万が一にも、こんな安倍の悪あがきが功を奏して、うやむやにされるようなことがあってはならない。
この事態に、法律家有志も力を合わせようという気運が盛り上がっている。先日来の国会論戦が、契約主体や、公職選挙法・政治資金規正法・公文書管理法の解釈問題に踏み込んだ、法的な問題に関わるものとなっているからである。
現在26人の学者と弁護士が呼びかけ人となって、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(仮称)結成の準備をしている。安倍晋三による国政私物化、国民財産私物化に憤っている法律家への呼びかけの趣旨の概要は以下のとおりである。
昨年の臨時国会以来、安倍総理が主催してきた「桜を見る会」の問題が、国政上の一大焦点となっています。とりわけこの問題は、安倍総理が、国の主催する「桜を見る会」を、自らの支援者に向けて権勢を示し、さらに今後の政治的地位を固めるため私的に利用したという意味で、政治的・道義的責任が問われているとともに、公職選挙法や政治資金規制法、公文書管理法等々の法律に抵触する違法な行為として、法的責任も問われるべき問題です。
ところが、通常国会の論戦において安倍総理は、野党による「桜を見る会」とその前夜祭の追及に対し、客観的な書類の公表を拒否するなど、納得のゆく説明を尽くそうとせず、ひたすら逃げ切りをはかろうとしており、違法行為の疑惑はますます深まるばかりです。
私たちは法の支配のもとに生きる法律家として、一国の総理の違法行為疑惑を目の前にしながら、座して見ているわけにはゆきません。いまこそ、私たち法律家が率先して、「桜を見る会」の真相を解明し、安倍総理の法的責任を追及するときではないでしょうか。
そこで今般、私たちは、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(仮称)を結成し、すでに全国で取り組みを進めている人たちや団体と相互に協力し合い、野党の対策チームとも連携して、安倍総理の法的責任を追及する、全国規模の運動を立ち上げようと考えました。
皆様におかれましては、ぜひ当会の設立について呼びかけにご賛同いただき、当会が予定する活動にご協力いただけますよう、お願いする次第です。
この会の結成総会予定は2月13日(木)。安倍の退陣を実現して、心ゆくまでの花見を楽しみたいと思う。
(2020年2月9日)
河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反事件。最初はさしたる問題に見えなかった。保守の選挙には付きものの「運動員買収事件」がまたぞろ出てきたかという程度。河井克行と安倍晋三との距離感も、選挙区事情も知らないまま、事務方の未熟さから内部のトラブルが外に洩れたのだろうくらいにしか考えなかった。
それが、急に雲行きが変わって、安倍政権の中枢を揺るがす大きな問題としての再登場である。安倍晋三の秘書4人が河井案里の選挙事務をとり仕切っていたということもさりながら、1億5000万円のアベ・マネー投入が衝撃である。なるほど、事件後当事者両名とも雲隠れせざるを得なかったわけだ。
ここまでのことは、1月23日の当ブログに記事を書いた。
https://article9.jp/wordpress/?p=14179
一昨日(1月24日)毎日新聞朝刊の5面の報道が興味深い。「案里氏1.5億円 自民に波紋」「下村氏『首相か幹事長の判断』」という見出し。毎日デジタルでは、「河井案里氏1.5億円にざわつく自民」となっている。この問題は、自民党外よりも、党内に波紋を呼び、ざわつかせているわけだ。テレビ番組で憮然たる発言をしたのが、下村博文であることにも興味をそそられる。
アベの組織統制の基本手法は、自分への忠誠を量っての極端な論功行賞という古典的なものである。これが、露骨な「オトモダチ優遇」だが、実は「えこひいき」に過ぎない。アベに力量があるという幻想があるうちは、この差別は統制に有効である。優遇される者には恩義を売り、冷遇される者には徹底した屈従を余儀なくさせる。しかし、所詮はえこひいき。不満の鬱積は必然で、アベに力量があるという幻想にヒビがはいれば、この不満が噴出することになる。今、そのような事態が生じつつあるのではないか。
同じ広島選挙区の自民党候補者の一方には、選挙資金1億5000万円を投入し、もう一方には1500万円。誰が見ても、これは尋常ではない。これに,安倍側近の一人と数えられていた下村博文が口火を切ってもの申す姿勢を見せたのだ。
自民党の選挙対策委員長である下村博文が、「誰の判断でそうなったかは分からない」「首相か二階俊博幹事長の判断だろう」という。さらに「通常は都道府県連を通すとし、『候補者に直接党本部が政治資金を含めて選挙活動費を振り込むのはあり得ない話だ』と強調。金額に関し『ちょっと想像を超えている。接戦で厳しいところには相場より上乗せすることもあるが、桁が違って驚いている』と述べた。」と報じられている。
閣僚経験者は「広島が重点区なら溝手さんも同じ額にしないといけない。重点区じゃなくて『重点人』だ」と皮肉った。露骨な肩入れに党内からは「俺ももらってみたい」(閣僚経験者)、「永田町の常識でも破格だ」(党関係者)との声が上がる一方で、「こんなことをやっていたら、国民から見放される」(中堅議員)との批判も。党幹部は「余計なことを言わなければいいのに」と下村氏の発言に不快感を示した。
また、本日(1月26日)放送のフジテレビ系「日曜報道THE PRIME」に出演した自民党・中谷元議員が、次のように語ったと報じられている。
「私の事務所も調べたんですけど、1500万円でした。公認料と活動費なんですけど。やっぱり1億5000万円というのはにわか信じられません。破格を通り越しているということで、何に使ったのかなということなんですけど」
「当選した案里さん自身も、『私も知りません』というのは良くないと思います。候補者もきちんと事務所の中、管理しないといけません。政治家自らがしっかり説明できるようにしないといけません」「党内の規律は公平公正が必要でそうじゃないと組織が動かなくなってしまうと思う。野党の時に原点に戻って謙虚に国民目線でと政権復帰したわけですから、この気持ちを忘れずにやっていかないといけない」
下村も、中谷も明確にアベ批判を始めている。これは、注目すべきことだろう。明日からの予算委員会審議が楽しみとなってきた。
追及すべき課題は満載である。モリ・カケ・サクラ、カジノにスギタ、テストとアンリ。中東派兵に兵器の爆買い。景気の後退・韓国問題も。改憲どこじゃないだろう。
(2020年1月26日・連続更新2491日)
通常国会は本日が3日目。野党の代表質問が始まった。立憲民主の枝野幸男代表の質問冒頭はやはり、桜疑惑だった。報道の見出しは、『野党いきなり“辞任要求” 「桜を見る会」「IR汚職」で追及』となっている。
「あなたが疑惑まみれのまま、そのまま地位に留まり続ければ、日本社会のモラル崩壊が続くばかりです。潔く総理の職を自ら辞すことを強く求めます」
まったくそのとおりだ。古来、右翼とは立ち居振る舞いの潔さを身上としたはずではなかったか。卑怯未練・ウソやゴマカシを嫌う美学を身につけていたはずなのだが、この安倍晋三の姿勢のみっともなさはどうしたものか。
この桜疑惑について、問題の違法性を調べようと、宮城県内の弁護士が17日までに「『桜を見る会』を追及する弁護士の会・宮城」を立ち上げたことが話題となっている。
中心人物は、小野寺義象弁護士。10人余の弁護士が、これから、「首相の政治資金収支報告書を精査したり国会議員と連携したりして、公選法違反や政治資金規正法違反などに当たるかどうかを調べる。刑事告発や民事訴訟を起こすことも検討する」という。同弁護士は、「法律家の目線で一つ一つの証拠を確かめる。運動が全国に広がってほしい」と語っているという。
その小野寺さんが、最新の自由法曹団通信(旬刊・1月21日号)に、「団の総力をあげて『桜を見る会』を追及しよう」と呼びかけている。これを紹介したい。
「『桜を見る会』問題には、次のような特質がある。
第1に、安倍首相自身の問題(安倍後援会と内閣府・内閣官房)であるため、安倍首相は他に責任転嫁できない。
第2に、単なる政治的道義的責任問題ではなく、公職選挙法・政治資金規正法違反等の刑事事件を含む違法行為が問題となっており、それが立件されると日本のトップが犯罪者になり、公職資格が剥奪される。
第3に、問題発覚後の安倍政権の証拠隠滅・説明拒否の異常さである。この現象は安倍首相らが「桜を見る会」問題の恐ろしさを十分認識していることを意味している。
第4に、問題が収束するどころか拡大し(消費者被害加害者・反社会的勢力の招待、「反社会的勢力」の定義、首相夫人枠、「60」番問題、公文書管理法違反等々)、様々な角度・分野からの追及ができる。
第5に、「税金でタダで飲み食い」「5000円で高級ホテルで宴会」など庶民に分かりやすいテーマが問題になっている。そして、
第6に、桜は「モリカケ」と異なり、今年も全国各地で咲き、国民は桜が味けば「桜を見る会」を思い出すので、事件が風化しにくい。
このように「桜を見る会」は、安倍政権そのものを直撃する事件であり、それゆえ、相手方は「何としても安倍を守る」陣容で臨んでいる。その理由は、「安倍しか改憲ができない」からにほかならない。
そして小野寺さんは、「このような問題の特質を最大限生かして、以下のような取り組みが求められている」という。
第1に、「桜を見る会」が刑事事件であり、安倍首相は犯罪者であることを国民に知らせる取組みをすること。
第2に、国民の強い怒りに応える、国民参加型の取組みをすること。
第3に、真相究明・責任追及運動を全国各地で拡大させ、安倍首相を包囲し孤立させる取組みをすること、
第4に、抽象的な「政治の私物化・税金の私物化」批判だけにとどめず、違反している具体的な法規(◎法△条)を示し、攻撃のターゲットを絞り込んだ責任追及をすること。
まったく異存がない。安倍首相に対する背任告発も、同じ発想である。もうすぐ、日民協の「法と民主主義」1月号が発刊となる。その中に、2頁をいただいて私が、「なぜ、今、安倍首相告発罪名が背任なのか」を寄稿している。
告発状はやや長文だが、下記ブログに投稿している。
https://article9.jp/wordpress/?p=14139
併せて、下記にも目をお通しいただきたい。
https://article9.jp/wordpress/?p=14156
以下は、小野寺さんの問題意識に応える、「法民」寄稿の一部である。
「桜疑惑」には、様々な問題がある。そのうち、公職選挙法違反、政治資金規正法違反、公文書管理の不適切が主として論じられてきた。にもかかわらず、なぜ今、背任罪での告発なのか。飽くまで現時点での私見だが、整理をしておきたい。
◆国民の怒りの根源をとらえた告発
森友事件・加計学園事件を曖昧にしたままの「桜疑惑」。広範な国民のこの疑惑に対する深い怒りの根源は、内閣総理大臣たる者の国政私物化にある。
国政私物化とは、国民が信頼してこの人物に権力を負託し、国民全体の利益のために適切に行使してくれるものと信頼して権限を付与したにも拘わらず、その人物が国民からの信頼を裏切って私益のために権限を悪用したということである。
このことを、法的に表現すれば、内閣総理大臣たる者の国(ないし国民)に対する「信任義務違反」にほかならない。国民から負託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が背任である以上、背任罪告発はことの本質を捉え、国民の怒りに形を与える刑事責任追及として最も適切と考えられる。
にもかかわらず、これまで安倍晋三の背任を意識した議論が少ない。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたい。単に、「安倍首相は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍首相は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論を喚起したい。そうすることで、政権忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となる。
◆ 安倍首相本人を直撃する告発
公職選挙法違反・政治資金規正法違反・公用文書毀棄等々の告発の場合、主犯はそれぞれの事務の担当者とならざるを得ない。報告書の作成者、会計事務責任者、当該文書の作成者管理者等々。そこから、安倍晋三本人の罪責にまでたどり着くのは一苦労であり、さらに立証のための調査を重ねなければならない。
しかし、背任罪なら、安倍首相本人の責任が明らかである。同人が「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。そして、不適格者を大量に招待させたり、あるいは招待もないままに参加させた安倍晋三後援会の主宰者でもある。両者の立場を兼ねていればこそ、国民に対する信頼を裏切って行政を私物化し国費を私的な利益に流用することができたのだ。
◆ 政府側の弁明
予算超過に関する内閣府大臣官房長の説明は、「最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、結果的に支出額が予算額を上回った分については、『一般共通経費』で補填している」というものである。つまりは、予算の範囲で最低限必要なことはできるのだ。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのだ。国会が承認した予算を漫然と超過することは許されない。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、しかるべき理由とその証明がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されようはずはない。
以上のとおり、「桜疑惑」とは、まずは背任である。
(2020年1月22日)
一昨日(1月14日)、学者グループ13名が、代理人弁護士51名を立てて、安倍晋三を東京地検特捜部に告発した。告発罪名は背任罪(刑法247条)。私も告発代理人の一人として,地検に赴き告発状を提出した。
告発状全文は、下記URLを開いてご覧いただきたい。
https://article9.jp/wordpress/?p=14139
昨日(1月15日)、国会で桜疑惑追及の中心メンバーの一人、宮本徹議員から私の事務所に電話での問合せがあって、澤藤大河弁護士が応接した。
問合せの趣旨は、告発罪名が公職選挙法違反や政治資金規正法違反ではなく、なぜ背任だったのか、ということ。さらには、「法律家グループは、公職選挙法違反や政治資金規正法違反では告発は困難と考えているのか」と疑念あってのことのようだ。なるほど、これまでメディアで発信された見解からは、そのような誤解もありえようか。
改めて、なぜ今桜疑惑で背任告発か。飽くまで現時点での私見だが、整理をしておきたい。
1 ことの本質は、安倍晋三の国民に対する裏切りにある。この国民からの信頼を裏切る行為を法的に表現すれば、背任にほかならない。桜疑惑を犯罪として捉えようとすれば、内閣総理大臣が国民から付託された任務に違背する行為として、背任罪が最も適切なのだ。
森友事件・加計学園事件に続く桜疑惑である。なぜ、国民がこれほどに怒っているのか。それは、内閣総理大臣たる者の国政私物化である。国政私物化とは、国民が信頼してこの人物に権力を預け、国民全体の利益のために適切に行使してくれるものと信頼して権限を与えたにも拘わらず、その人物が国民からの信頼を裏切って私益のために権限を悪用したということである。この国民から付託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が、背任罪である。背任罪告発は、ことの本質を捉え、国民の怒りの根源を問う告発であると考えられる。
2 にもかかわらず、これまで安倍晋三の背任を意識した議論が少ない。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたい。単に、「安倍晋三は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍晋三は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論とすることで、政権忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となる。検察審査会の議決の勝負になったときには、この世論のありかたが決定的にものをいうことになる。
3 国民の怒りは、国政私物化の安倍晋三に向いている。安倍本人を直撃する告発が本筋であろう。
公職選挙法違反・政治資金規正法違反・公用文書毀棄等々の告発の場合、主犯はそれぞれの事務の担当者とならざるを得ない。報告書の作成者、会計事務責任者、当該文書の作成者等々。そこから、安倍晋三本人の罪責にまで行き着くのが一苦労であり、さらに調査を重ねなければならない。
しかし、背任罪なら、安倍晋三の責任が明らかというべきなのだ。何しろ、「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。そして、何の功績もなく大量に招待させたり、あるいは招待もなく会に参加させた安倍晋三後援会の主宰者でもあるのだ。両者の立場を兼ねていればこそ、国民に対する信頼を裏切って行政を私物化し国費を私的な利益に流用することができたのだ。
4 しかも、安倍晋三に対する背任告発は、報道された事実だけで完結している。基本的に告発状に記載したもの以上の未解明の事実が必要というわけではない。このことは、野党の責任追及に支障となることがないことを意味している。国会で、安倍晋三やその取り巻きに、「告発されていますから、そのことのお答えは差し控えさせていただきます」という答弁拒否の口実を与えることはありえない。
5 背任罪は、身分犯であり、目的犯であり、財産犯でもある。信任関係違背だけでは犯罪成立とはならない。身分と目的を充足していることには、ほぼ問題がない。
財産犯であるから、被告発人安倍が国に幾らの損害を与えているかが問題となる。これを予算超過額とした。合計、1億5200万円である。
厳密には、招待すべからざる参加者に対する飲食費の特定が必要なのかも知れない。しかし、それは告発者に不可能を強いることになる。参加者名簿を破棄しておいて、資料の不存在を奇貨とする言い逃れは許されない。
このことに関して、昨年(2019年)5月13日の衆議院決算行政監視委員会議事録に、次のような、宮本徹議員の質問と、政府参考人(内閣府大臣官房長)の回答がある。
○宮本委員 予算を積んでいる額は、今のお話では、二〇一三年は一千七百十八万円、二〇一四年以降ことしまで一千七百六十六万円。支出を聞いたら、三千万円、それから三千八百万、四千六百万、四千七百万、五千二百万と。ことしはもっとふえていると思います。
? 予算よりも支出が多いじゃないですか。これはどこからお金が出てきているんですか。
○井野靖久政府参考人(内閣府大臣官房長) お答えいたします。
? 桜を見る会につきましては、準備、設営に最低限必要となる経費を前提に予算を計上しているところでございます。
? 他方、実際の開催に当たりましては、その時々の情勢を踏まえまして必要な支出を行っておりまして、例えば、金属探知機の設置等のテロ対策強化でありますとか、参加者数に応じた飲食物提供業務経費などがございまして、結果的に予算額を上回る経費がかかっております。
? このように、支出額が予算額を上回った分につきましては、内閣府本府の一般共通経費を活用することにより経費を確保しているところでございます。
○宮本委員 情勢によってとかいって招待客をどんどんどんどんふやして、予算にもないようなお金をどこかから流用して使っているという話じゃないですか。とんでもない話じゃないですか。しかも、招待客の基準が全く不透明なんですよね。
? 安倍政権を応援している「虎ノ門ニュース」というネット番組があるそうです。レギュラー出演している方がブログに書いておりますが、いつも招待をもらっていたが、ことしは例年と異なり、ネット番組「虎ノ門ニュース」の出演者全員でというお招きだったので、虎ノ門ファミリーの皆さんとともに参加しましたと書いてあります。
? こうやって政権に近い人をどんどんどんどん呼んで参加人数が膨らんで、予算にもないような支出がどんどんどんどんふえているという話じゃないですか。
? こういう支出のふやし方というのは、官房長官、国民の理解は決して得られないんじゃないですか。
○菅国務大臣 桜を見る会については、準備、設営に最低限必要と考えられる経費を前提に予算を計上しているところであり、来年度以降についても、これまでの計算上の考え方、実際の支出状況などを踏まえつつ対応していくことになるだろうというふうに思います。
? また、この桜を見る会は、昭和二十七年以来、内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日ごろの御苦労を慰労するとともに、親しく懇談される内閣の公的行事として開催をしているものであり、必要な経費については予算から先ほど言われましたように支出しているということであります。
○宮本委員 功労、功績といいますけれども、「虎ノ門ニュース」の皆さんがどういう功績があったのかわからないですけれども、安倍内閣になってから、それまで一万人前後であったのが一万八千二百人にふえているわけですよ、参加者が。
? 功労を上げた人が急にふえた、政府の基準からいって、そういうことですか。
○海江田委員長 答弁は。(宮本委員「官房長官です」と呼ぶ)
菅官房長官、指名していますから。もう時間がありません。時間が過ぎておりますので、手短に。
○菅国務大臣 いずれにしても、各府省からの意見を踏まえて、幅広く招待をさせていただいているということであります。
○海江田委員長 もう時間が過ぎていますから、手短に。
○宮本委員 こういうやり方は、国民の納得は絶対に得られないですよ。
つまり、最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、支出額が予算額を上回った分については、「一般共通経費」で補填しているという。問題は明らかだ。予算で最低限必要なことはできるのだ。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのだ。最初から「一般共通経費」の「活用」を前提として予算を組むことなどありえないのだから。
国会が承認した予算を漫然と超過することは許されない。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、根拠となる証票がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されるはずはない。
被告発人安倍晋三が遵守しなけばならないのは、「桜を見る会開催要領」と予算である。日本とは、内閣総理大臣自らが法を守る姿勢をもたない情けない国なのだ。まずはこの人物の背任罪の責任を徹底して追及しよう。
(2020年1月16日)
本日(1月14日)、桜疑惑での安倍晋三に対する告発状を東京地検特捜部に提出した。告発人は、上脇博之さんら憲法専攻者を中心とする研究者13名。代理人は、阪口徳雄君を筆頭とする51名の弁護士。告発罪名は、背任である。
告発人の上脇博之さんと、代理人である阪口徳雄・澤藤統一郎・児玉勇二の3弁護士が午後1時地検に赴き、告発状を提出。その後、記者会見をした。
桜疑惑は多くの犯罪成立の可能性に満ちている。公職選挙法・政治資金規正法・公用文書毀棄等々。もしかしたら、贈収賄までも。森友疑惑の既視感がある。
しかし、多くの場合、安倍晋三本人の罪責にまで行き着くのは一苦労である。背任罪なら、安倍晋三の責任が明らかというべきなのだ。何しろ、「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。その立場にある者が、国民に対する信頼を裏切って、行政を私物化し、国費を私的な利益に流用して国に損害を与えているのだ。
いかに、告発状本体の全文を掲載する。1月20日から始まる通常国会での安倍内閣追及の一助にもしていただきたい。
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?告 発 状
2020(令和2)年1月14日
東京地方検察庁 検察官 殿
告発人
別紙告発人ら目録記載の上脇博之含む13名
告発人ら代理人
別紙告発人ら代理人目録記載の51名共同代表
弁 護 士 阪 口 徳 雄
弁 護 士 澤 藤 統一郎
弁 護 士 徳 井 義 幸
〒100?0014 東京都千代田区永田町2丁目3?1
被告発人 安 倍 晋 三
第1 告発の趣旨
被告発人安倍晋三の下記告発事実に記載の所為は、刑法第247条背任罪に該当すると思料しますので、捜査のうえ厳重に処罰されたく告発いたします。
記
1 告発事実
被告発人は、2015年(平成27年)から2019年(平成31年)まで、内閣総理大臣の地位にあって、下記の「会開催日」記載の各年月日に、新宿御苑(東京都新宿区内藤町11所在)における「桜を見る会」の主催者として、国の事務である「桜を見る会」に関する業務全般を統括・管理し、いずれの会においても予算額として定められた金1766万6000円の範囲で、内閣官房及び内閣府が定める各年の「桜を見る会」開催要領に基づき、「皇族、元皇族、各国大公使等、衆参両院議長及び副議長、最高裁長官、国務大臣、副大臣及び大臣政務官、国会議員、認証官、事務次官及び局長などの一部、都道府県の知事及び議会の議長などの一部、その他各界の代表者等」として制限列挙され合計約1万名と定められていたのであるから、招待者を上記開催要領に従い適正かつ慎重に厳選し、国家財政にいたずらに損害を与えることのないよう当該予算の範囲内で合計約1万名の招待者枠を厳守して当該事務を遂行すべき任務を有するところ、その任務に違背し、主催者であることを奇貨として、自己が主宰する後援会員,自己が所属する与党議員、妻の安倍昭恵夫人などの利益をはかる目的で、招待者枠を恣に大幅に拡大して多数招待して参加させ、しかも後援会が配布する招待状には知人、友人であれば誰でも「コピーして参加出来るよう」安倍後援会の桜を見る会の参加申し込み用紙を大量に配布する等して、下記「会開催日」欄記載の日に各「参加者」欄記載の通り約1万5000人ないし約1万8200人も開催要項に決められた人数を大幅に超過した人数を招待して参加させ、その為の飲食代金等を国に各「支出額」記載の通り支出せしめ、もって国に各「予算超過金額」欄記載の財産上の損害を各「会開催日」欄記載の各日に与えたものである。
記
会開催日 参加者 予算額 支出額 予算超過額
2015年4月18日 約15000人 17,666,000 38,417,000 20,071,000
2016年4月09日 約16000人 17,666,000 46,391,000 28,725,000
2017年4月15日 約16500人 17,666,000 47,250,000 29,584,000
2018年4月21日 約17500人 17,666,000 52,290,000 34,624,000
2019年4月13日 約18200人 17,666,000 55,187,000 37,521,000
2 罪名及び罰条
背任罪、刑法第247条
第2 告発の理由
1.はじめに
被告発人安倍晋三は、2012(平成24)年12月第二次安倍内閣の組閣以来、四次にわたり内閣を組閣し、既に7年余りの長期間にわたってその政権を組織してきた。昨年11月20日には、内閣総理大臣としての在任日数は2,887日となり、憲政史上最長となっている。この間、森友学園事件、加計学園事件を通じて、「国政の私物化」の強い疑惑をもたれ、国民の強い批判にさらされながらも、自己に関する事実に関しては全て否定し、官僚達はその意向を忖度して、関係証拠を隠匿、隠蔽等するなどして説明責任を果たさず長期政権が維持、存続されてきた。
今回発覚した「桜を見る会」の「私物化」は、この政権の長期化に伴うモラル・ハザードが治癒しがたい事態にまで立ち至っていることを示すものであり、安倍内閣は、国会内やマスコミの追及の前に早くも来年度の「桜を見る会」の開催の中止を発表したが、単なる中止によってモラルハザードは治癒するものではなく、真相の解明と法的責任の明確化によってのみ治癒するものである。
本件告発は、そのことを念願してなされたものである。
2.「桜を見る会」の概要
(1)この会は、皇族、元皇族、各国大使等、衆議院議長と参議院議長及び両院副議長、最高裁判所長官、国務大臣、副大臣及び大臣政務官、国会議員、認証官、事務次官等及び局長等の一部、都道府県の知事及び議会の議長等の一部、その他各界の代表者等、計約1万人が招待され(甲1)、酒類や菓子、食事が振る舞われる公的行事であり、招待客の飲食費や新宿御苑の入園料は無料であり、これらの費用は税金から拠出される。安倍内閣は「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものであり、意義のあるものと考えている」と答弁している。
(2)この会は内閣総理大臣が主催するが、招待客の選定は各府省庁からの意見を踏まえて内閣官房と内閣府が最終的にとりまとめる(招待者名簿の作成、推薦者名簿の作成)とされるが、実態として、与党国会議員に推薦枠が割り振られているとも言われ、「桜を見る会」の案内状の発送は内閣府が一括し、必ず招待客一人ひとりに宛てて送付を行うとされている。芸能人やスポーツ選手が多数参加する様子が毎年メディアで取り上げられており、テレビ報道でその様子を見たことのある国民も多い。
(3)「桜を見る会」の前身として「観桜会」が戦前にはあった。この観桜会は1881(明治14)年に吹上御所で「観桜御宴」が行われたのを前史とし、1883(明治16)年から1916(大正5)年までは浜離宮、1917(大正6)年から1938(昭和13)年までは新宿御苑に会場を移し、いずれも国際親善を目的として天皇主催の皇室行事として開催されていた。戦後この観桜会を復活させる形で1952(昭和27)年に吉田茂が総理大臣主催の会として始めたのが「桜を見る会」であるとされている。
由緒ある「桜を見る会」を私利私欲のために汚れた行事としているのが被告発人安倍晋三である。
3.第二次安倍内閣の下での「桜を見る会」の異常な肥大化
(1)戦後の「桜を見る会」は吉田茂によって、内閣総理大臣が主催する公的行事として開催されてきたが、第二次安倍内閣が登場するまでの「桜を見る会」は、その招待客数は計約10,000人前後であり、その予算の規模は1700万円台で、その支出も予算額程度であったと思われる。
回次 開催日 首相 出席者数
51?2004/4/17 小泉純一郎 約8000人
52?2005/4/09 小泉純一郎 約8700人
53?2006/4/15 小泉純一郎 約11000人
54?2007/4/14 安倍晋三? 約11000人
55?2008/4/12 福田康夫 約10000人
56?2009/4/18 麻生太郎 約11000人
57?2010/4/17 鳩山由紀夫 約10000人
(2)ところが、第二次安倍内閣成立後に開催された「桜を見る会」の招待者数と支出額は以下のとおりで、明らかに異常な肥大化を遂げてきた。
回次 開催日 首相 招待数 出席者数 支出額
58 2013/4/20 安倍晋三 調査出来ず 約12000人 17,180,000
59 2014/4/12 安倍晋三 約12800人 約14000人 30,053,000
60 2015/4/18 安倍晋三 約13600人 約15000人 38,417,000
61 2016/4/09 安倍晋三 約13600人 約16000人 46,391,000
62 2017/4/15 安倍晋三 約13900人 約16500人 47,250,000
63 2018/4/21 安倍晋三 約15900人 約17500人 52,290,000
64 2019/4/13 安倍晋三 約15400人 約18200人 55,187,000
第二次安倍内閣になって以降の招待者数は、従来の約10,000名前後から2019年4月の「桜を見る会」では15,400名に、また出席者数は招待者数を大幅に上回り約18,200名に、経費の支出額も予算額の1766万6000円の3倍を超える5518万7000円にまでも拡大して肥大化したのである。
この規模の拡大・肥大化の原因は、与党議員への推薦枠の拡大等だけでない。「安倍事務所」が桜を見る会への参加者への申込書に『参加される方はご家族(同居人を含む)、知人、友人の場合は別途用紙でお申し込み下さい(コピーしてご利用下さい)』と招待者を自らの後援会の会員に拡大するだけではなく、無原則にその「知人、友人」の場合でも参加申し込みを認め、しかも申し込み用紙を「コピー」でも良いとした事に起因すると思われる。
(3)安倍晋三による自身の後援会会員850名余りが招待されたと報道されているが、真実は、それ以外に安倍事務所の後援会会員の「知人、友人」が申し込み用紙をコピーして参加申し込みしている者が、大幅に参加して増えたと思われる。
4.「あべ晋三後援会」会員の「桜を見る会」への招待の実態
(1)参議院議員田村智子は、この問題を昨年11月8日の国会質問で取り上げ、その実態を以下の如く告発している(甲2)。
「安倍首相の地元後援会のみなさんを多数招待している」が「友田(有・山口)県議、後援会女性部はどういう功労が認められたのか」などと指摘して開催要項の定める招待者の範囲外の後援会員を選定しているとして、批判した。これに対し大塚幸?内閣府大臣官房長は「具体的な招待者の推薦にかかる書類は、保存期間1年未満の文書として廃棄している」と述べ、被告発人安倍晋三は「各界で功績、功労のあった方々を招いて開催している。地元には自治会やPTAなどの役員をしている方々もいるので、後援会の方々と重複することも当然ある」と述べた。安倍総理の地元の自治会やPTA役員などが各界の功労者、代表者であるとは到底言い難いものである。そして、この「招待者名簿」は既に廃棄されたとされるが、廃棄は宮本徹衆議院議員よりの資料提出要求のあった昨2019年5月9日当日であったことも発覚している。都合の悪い「招待者名簿」の隠蔽工作と言わざるを得ない(甲3)。
現に各省庁の推薦者名簿は保存されていたのであり、いわゆる政治家枠のもののみが破棄されていた(甲4)。
また、田村議員は「安倍事務所に申し込んだら、内閣府から招待状がきた」という下関の後援会員の証言があると指摘し、「税金の私物化が行われている」と指摘している。さらに、開催前日の後援会員との懇親会に被告発人安倍晋三の妻である安倍昭恵が出席している事を指摘し、「(桜を見る会が)まさに首相の後援会の一大行事になっている」と指摘している。これらのことから野党議員がこれが「事実だとすれば、内閣総理大臣がその地位を利用して個人の後援会活動にそれを利用していたこと。いわば税金で主催するこの国の公的行事で接待していたと受け取られかねない事案だ」と述べているのは当然のことである。
さらに、自由民主党の若林健太元参議院議員はブログで「大臣政務官(在職当時)としてご招待出来る枠を数件頂いたので、後援会役員の方に声を掛けさせて頂いた」「私が許された枠は5組だけ。お世話になっている地元関係者へご案内を申し上げている」と自身の権限で招待したと述べているのである。各界での功績・功労の有無とは無関係に政治家の後援会員へのサービス行事として悪用されている事態を示している。
(2)具体的に見れば、「あべ晋三後援会」は、この「桜を見る会」への後援会員の招待を前日の都内の有名ホテルで開催される前夜祭と称するパーティーへの参加と一体として取り組んでいることも判明しており、この点からも開催要領が招待者の範囲としている各界の功労者・代表者とは無縁の人を自己の後援会会員を招待していることが明白である。
すなわち、安倍晋三事務所が事務所名で「『桜を見る会』のご案内」と題する文書を後援会員に配布し案内したうえ、「出席を希望される方は、2月20日までに別紙申込書に必要な事項をご記入のうえ、安倍事務所または担当者までご連絡ください」との文書を発行し、この文書では前日にホテルニューオータニで関係される「あべ晋三後援会主催前日夕食会」の開催案内をセットで実施していることも明白である(甲5)。
さらに安倍事務所は「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み書」(甲6)、「『桜を見る会』について(ご連絡)」(甲7)、「『桜を見る会』アンケート(4月12日?4月13日)」(甲8)、「桜を見る会「懇親会」についてのお知らせ」(甲9)、「桜を見る会注意点」(甲10)の各文書を後援会員に配布して、「桜を見る会」への参加を案内しているが、これらの文書の記載よりして、「あべ晋三後援会」の主催する後援会行事であるホテルニューオータニで開催される前夜祭やその前に実施されるA、B、Cの三つのコースに分かれた安倍事務所ツアーと内閣総理大臣安倍晋三の主催する「桜を見る会」とは完全にセットになっており、後援会行事と「桜を見る会」は完全に一体化していることが判明する。
また、安倍晋三事務所自身が内閣総理大臣安倍晋三の主催する「桜を見る会」への参加申込をその後援会に配布して、募集しており、「各界の代表者」には該当しない人を開催要領に違反して招待者としていることも歴然としているものである。すなわち、この申込書では「桜を見る会」への参加資格を問題とすることが全くないことが前提となっているのである。
(3)そして、被告発人安倍晋三は、11月20日開催された参議院本会議において、「私自身も事務所から相談を受ければ推薦者についての意見を言うこともあった」として、招待者の選定に直接自ら関与したことを認めた。また当日の国会審議においては、招待者の内訳について各省庁推薦の各界功労者・大使などが6000人、自民党関係者が6000人、官房長官や副総理が1000人、安倍首相よりの推薦が1000人でその中には総理夫人の昭恵氏の推薦分まで含まれていたことが明らかにされている(甲11)。
森友学園事件において総理夫人昭恵氏の関与が重大な疑惑となったが、今日の「桜を見る会」をめぐる問題においても同夫人の関与が明らかにされたのである。同夫人は、私人であると内閣は位置付けており、何ゆえに私人が総理大臣主催の公的行事の招待者を推薦することができるのか、被告発人安倍晋三のモラル・ハザードと「国政の私物化」はここまでの腐敗に至っているのである。
(4)以上の通り、被告発人安倍晋三は「桜を見る会」という内閣総理大臣が主催する公的行事への招待を自己の後援会行事と一体化して実施し、開催要領にも明白に反する招待者の選定などの任務違背のあることは歴然としているものである。
5.背任罪の構成要件該当性
(1)背任罪について
刑法第247条は、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた」ことを背任罪の構成要件とし、「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と法定刑を定める。
以下に、本件に即して、背任罪の構成要件としての「主体」「図利加害目的」「任務違背」「財産上の損害」について、略述する。
(2)主体
背任罪は身分犯であって、その主体は、「他人のためにその事務を処理する者」である。憲法第15条に基づき、「全体の奉仕者」として公共の利益のために職務を行うべき公務員が、身分犯としての背任罪の主体となり得ることは判例通説の認めるところである。内閣総理大臣の職にある者においてはなお当然というべきで、この点に疑問の余地はない。
本件の場合、「他人」とは国であって、被告発人は、各年の「桜を見る会」の主催者である。同「会」の遂行に関する一切の事務について国の利益のために適切に企画し実行すべき立場にある者として、構成要件における「他人のためにその事務を処理する者」に当たる。
(3)図利加害目的
背任罪は目的犯であって、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要とされる。本件の場合は、「自己若しくは第三者の利益を図る」図利の目的が明白なので、「本人(国)に損害を加える」積極的な加害の目的の有無は問題とならない。被告発人自身の利益、ならびに第三者である被告発人の妻・被告発人の政治的後援会員・被告発人と所属政党を同じくする国会議員らの利益をはかる目的があっての任務違背であることは、自明のことというべきである。
(4)任務違背
背任罪の本質は背信であると説かれる。被告発人の国に対する任務に違背する行為が、構成要件上の犯罪行為である。当該任務は、「法令、予算、通達、定款、内規、契約等」を根拠とする。その根拠にもとづく「任務に反する行為でその行為が、国に財産的損害を生ぜしめる性質のものである限り原則的に任務違背が成立する。」(西田典之著『刑法各論第6版』258頁など)
被告発人は内閣府の長として、本件各「桜を見る会」を企画し実施して必要な経費を支出するに当たっては、「桜を見る会開催要領」(甲1)と予め定められた歳出予算額とを遵守すべき義務を負っていたものである。
歳出予算は拘束力を持ち、いわゆる「超過支出禁止の原則」にしたがって、予算計上額を上回って超過支出することが禁止され、予算外支出も認められない。「会計年度独立の原則」にしたがって、それぞれの会計年度の支出は、その会計年度の収入によって賄われなければならないという原則も予算の拘束力を示す一例である。
にもかかわらず、被告発人は、前記の通り「桜を見る会開催要領」をまったく無視して、招待者の範囲を恣に拡大し、約1万名と限定されていた範囲を大幅に逸脱して無原則に招待者を拡大し、予算の制約を大幅に超えて費用を支出した点において、その任務に違背したものである。
(5)国の財産的損害
被告発人は、総理大臣になって以来、前記の通り毎年「桜を見る会」への招待者数を増やし、国に予算を超過する支出を余儀なくさせて、毎年前記各予算超過額に相当する損害を生じせしめた。その金額の総計は、1億5121万5000円にも及ぶものである。
記
年月日 予算額 支出額 予算超過額
2014年4月12日 1766・6万円 3005・3万円 1238・7万円
2015年4月18日 1766・6万円 3841・7万円 2075・1万円
2016年4月09日 1766・6万円 4639・1万円 2872・5万円
2017年4月15日 1766・6万円 4725・0万円 2958・4万円
2018年4月21日 1766・6万円 5229・0万円 3462・4万円
2019年4月13日 1766・6万円 5518・7万円 3752・1万円
予算超過総計 1億5121・5万円
6 結論
以上のとおり、被告発人の行為が背任に該当することは明らかと言わねばならない。しかも、国が支出を余儀なくされた超過支出金額の大半は、「桜を見る会」に本来参加すべき資格なき者に提供された飲食費等としてのもので、被告発人は、本来自らが主宰する後援会が負担すべき支出を国費で賄ったという点において、総理大臣の職務の廉潔性を汚したものである。さらには、公職選挙法や政治資金規正法が重要な理念とする政治に関するカネの流れの透明性を侵害し、総理大臣としての職権を濫用して国政を私物化したと弾劾されるべき行為でもある。議会制民主主義擁護の観点から到底看過し得ない。
この被告発人の長年にわたる国政私物化と,忖度にまみれた安倍内閣のモラルハザードを一掃するには、御庁の巨悪を逃さない強い決意による捜査権限発動が不可欠である。
告発人らは、広範な国民の世論を代表して、本件告発に及んだ。御庁にあっては事案の真相を徹底して解明したうえで、被告発人に対する厳正な処罰をされるよう、強く求めるものである。
証拠目録
1の1.?甲1の1 「桜を見る会」開催要領(平成24年2月28日付)
1の2.? 甲1の2 「桜を見る会」開催要領(平成31年1月25日付)
2.甲2 しんぶん赤旗日曜版 2019年11月17日
3.甲3 朝日新聞 2019年11月21日
4.甲4 しんぶん赤旗 2019年11月23日
5.甲5 「桜を見る会」のご案内 平成31年2月吉日 安倍晋三事務所
6.甲6 「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み書」 あべ事務所
7.甲7 ?? 「『桜を見る会』について(ご連絡)」
平成31年2月吉日 あべ晋三事務所
8.甲8 ?? 「『桜を見る会』アンケート(4月12日?4月13日)」
あべ事務所
9.甲9 ?? 「桜を見る会「懇親会」についてのお知らせ」
平成31年3月吉日 安倍晋三事務所
10.甲10 ?? 「桜を見る会注意点」
11.甲11 ??? 朝日新聞記事 2019年11月2日
添付書類
1 甲各号証写し 各1通
2 委任状 11通
(2020年1月14日)
通常国会は、1月20日開会の予定。「桜」「カジノ」「イラン」と、政権には頭の痛い問題が山積している。開会直後からの、鋭い野党の切り込みを期待したい。
とりわけ、「桜疑惑」は、追及次第で政権を散らすことになりうる大問題である。首相たる者の行政私物化が歴然だからである。モリ・カケは、いずれも安倍晋三の責任についての疑惑は限りなく濃いものの、安倍自身の具体的関与の点において、直接証拠に欠ける。忖度した部下の責任に転嫁した形となっているのだ。これに比して、「桜を見る会」疑惑については、安倍晋三自身の責任が明確なのだ。
いやしくも首相の地位にある者において、国民のための行政を、安倍晋三個人のための行政にねじ曲げ、国民からの負託に背いたのである。その罪は深く、放置してはならない。適切な責任をとらせなければならない。
本来国民への奉仕者である公務員が、その任務に背き自分の私益のために権限を濫用する行為は、背任に該当する犯罪である。公務員のトップに位置する内閣総理大臣の行政私物化は、国家の私物化に等しい犯罪行為である。こんな人物に権力を委ねることはできない。
昨年11月18日参院予算委での田村智子質問が衝撃的だった。が、それ以後も具体的な問題が次から次への出てきた。安倍晋三の行政私物化の実態が、衆目に曝されつつある。こんな人物が、こんな政治を行っていたのだ。
これまで、安倍晋三の行政私物化の証左として、安倍の選挙区(山口4区≒下関市)内の後援会員の多くが「桜を見る会」に招待されていたことが問題とされてきた。安倍の私的な後援会活動、延いては選挙対策活動を、国費で行っていたということへの批判である。
しかし、どうも漠然と選挙区内の後援会員を招待していたというにとどまらないようなのだ。もう少し生臭い事情があるという。それが下関市長選における論功行賞だというのだ。これは、昨年末の野党の合同ヒアリングでも問題とされていると言うが、「紙の爆弾」2月号に、横田一記者(フリー)が、ルポを書いている。タイトルが、「山口県下関市『桜を見る会』税金私物化―首相の地元選挙対策と特定企業優遇」というもの。その概容をご紹介したい。
下関市では、安倍首相と宏池会(岸田派)の林芳正・元農水大臣が父親の代からライバル関係で、市長選は両者の代理戦争の様相も呈し、市長ポストの争奪戦を続けてきた。最近三代の下関市長は、以下の通りである。
江高潔市長(1995年?2009年)安倍派
中尾昭友市長(09年?17年)林派
前田晋太郎市長(17年?)安倍派
17年の市長選は、8年も続いた林派の市長ポストを、久々に安倍派奪還の選挙だった。この選挙対策として、あるいは論功行賞として、この選挙の前後に地元選挙民の招待者が膨らんだという。
問題はこの先である。
なぜ安倍首相は、法律違反のリスクを冒してまで、「桜を見る会」を使って下関市長選などの地元選挙対策に力を入れていったのか。
江島市長(安倍派)時代には、神戸製鋼所などの安倍首相関連企業が地元大型案件を相次いで受注して談合疑惑も浮上、田辺よし子市議(無所属)らが議会で追及した。
こうした『アベ友優遇案件』ともいえる談合疑惑で最も有名なのが、安倍首相の出身企業であった神戸製鋼所が市のゴミ処理関連事業を連続受注したことだ。同社は談合情報が飛び交うなか、2000年に「奥山工場焼却施設」(110億円)、そして01年にも新環境センター「リサイクルプラザ」(60億円)を落札した。
しかも奥山工場の焼却施設は「プラズマ溶融炉」で「焼却灰がリサイクルできる」ということが売りだったが、当時の神戸製鋼所の実績は皆無だったのに、なぜか受注に至った。「癒着ではないか」という声が市民の間から出たのはごく自然のことだった。
しかもメリットとされた「焼却灰のリサイクル」は実現せずに頓挫。それでもプラズマ溶融炉の維持管理費を関連企業「神鋼ソリューション」に払い続けてきたが、林派の中尾市政になった12年8月に使用停止を決定、電気代などが浮いて経費削減をすることができた。安倍派市長時代には、神戸製鋼所からプラズマ溶融炉を購入しただけでなく、余計な維持管理費も系列企業に支払っていたが、林派市長時代に打ち止めになったということだ。
もう一つのリサイクルプラザでも「神戸製鋼所に決まった」という談合情報が流れたが、市は入札を強行。情報通り、神戸製鋼所が落札したため、市議会で「官製談合ではないか」と追及された。
こうした地元での『アベ友優遇政治』への反発が強まり、首相直系の江島氏は不出馬に追い込まれ、09年の下関市長選では、安倍派県議だった新人候補(友田たもつ県議)を林減の中尾市長が破った。ようやく安倍減市長による市政にピリオドが打たれたのだ。
しかし13年に再選された中尾氏は17年の市長選で安倍首相が全面的に支援した前田氏に僅差で敗北、三選を果たせなかった。」
下関市でも、安倍派市長がアベ友企業(神戸製鋼所)優遇の談合疑惑があったというのだ。既にその追及が下関市議会では行われてきたという。この横田一ルポを読むまで私はまったく知らなかった。この際、是非とも国会で徹底的な追及を期待する。日本の政治全体が腐る前に、患部を摘出しなければならない。
(2020年1月5日)
クリスマス・イブとやら。外つ国の神の御子の生誕に何の感興もなく、したがって何の反感もない。万世一系のまがまがしさよりはずっとマシな今宵の穏やかさ。
イブよりは年の瀬。たまたま10日前、12月14日の「朝日川柳」(山丘春朗選)欄掲載句が、今年を振り返るにまことに的確で秀逸。投句者と選者の才能と炯眼に脱帽するばかり。もっとも、朝日川柳欄、いつもいつも秀逸句ばかりではない。この日の粒ぞろいは神の御業か。野暮を承知で秀句に感想の駄弁を。
一字から万事が見える桜かな(東京都 鈴木英人)
「一事が万事」というがごとく、「桜」の一字からいろんなことか見えてくる。まずは政権の驕り。そして安倍晋三という人物の薄汚さ。さらにはその取り巻き連の、意地汚さ。嘘と誤魔化しがまかりとおる、この世の情けなさ。おや、「桜を見る会」とは、実は「政権末期の醜態と世相を見る会」であったか。
信なくも立ち続けてるその不思議(兵庫県 妻鹿信彦)
政治の要諦は「信なくば立たず」である。ところが、この政権に限っては、国民の信をすっかり失ってもなお立ち続けている。満身創痍、膿にまみれ腐敗臭を放ちつつ、なお立ち続けているのだ。これほどの不思議はない。「弁慶の立ち往生」を思い出す。この政権は、もうすぐ立ったまま干からびて枯死に至るのか。
支持率の落ちて天下の怒気を知る(愛知県 石川国男)
冬枯れの落ち葉が散る。落ちた葉が木枯らしに舞う。この落ち葉こそ我が身の姿。支持率の低落は、モリ・カケ・サクラ・テストと続く疑惑の数々がなせる業。政権トップによる政治の私物化への民の怒りだ。この天下に満ちた怒気が肌に突き刺さる。目に痛い。「桜」疑惑追及をかわしたはずの国会閉幕後にこの世論の風の冷たさ強さ。わびしき、年の暮れ。
文科省目玉ふたつを落っことし(埼玉県 西村健児)
これこそ秀逸句。ふたつの目玉とは、安倍政権肝いりの大学入試共通テスト改革。英語民間試験の活用と、国語数学に記述式導入の試み。のみならず、下村博文と萩生田光一の二人でもあり、安倍にとっての支持率と改憲気運のふたつでもある。また、行政に対する国民の信頼と安倍政権に対する信任でもある。文科省は、これを見事に、落っことしたのだ。
首里首里と奏で辺野古を忘れさせ(埼玉県 堀利男)
ウームなるほど。首里首里と世相が騒いでいるのは、政権が奏でる曲に乗せられているのかも知れない。なんとなく、「首里が通れば辺野古が引っ込む」という印象は否めない。ここは、「首里も辺野古も」でなくてはならない。あるいは、「首里はゴーで、辺野古はストップ」、「辺野古建設を止めて、浮いた金を首里に回せ」でなくてはならない。「首里城も辺野古もともに忘れまい」。
逃げ切った男が仕切る税調か(青森県 大橋誠)
疑惑の人。グレイではない真っ黒けの甘利明経済再生担当相(当時)である。この人も、安倍の側近といわれた人。「その人の安倍との距離は、醜悪さに比例し廉潔さに反比例する」という、アベの法則を地で証明した政治家。思い出させるのは、何ゆえこんなあからさまな政治家の犯罪が不起訴とされた悔しさ。ああ、検察もアベ一強に忖度する存在になりさがったか。その人が、またうごめいている。
あいにくと川柳はせぬ年忘れ(神奈川県 朝広三猫子)
これが、今年の掉尾を飾るにふさわしい一句。アベも、アソウも、ニカイも、萩生田も下村も、良民どもは年が変われば旧年のできごとはすっぱりと忘れてくれるはずと思い込んでいる。みんな盛大に「忘年会」をやっているだろう。大切なのは、「年忘れ」をして新たな年を迎えることだ。ところがおあいにくにも、「川柳はせぬ年忘れ」なのだ。年の暮れにも初春にも、梅のころにも桜のころも、「桜疑惑」もモリ・カケも、忘れてなるものか。
(2019年12月24日)
一昨日(12月18日)、「ジャパンライフ全国被害弁護団連絡会」が、安倍晋三の「桜を見る会」疑惑に関連して声明を発し記者会見を行った。「安倍首相は、山口隆祥元会長を「桜を見る会」に招待した経緯を、被害者らに誠意をもって説明すべきだ」とする趣旨。弁護団代表は、さらに同日、国会内で行われた野党の合同ヒアリングにも参加して、被害者の立場から内閣府の担当官に,強い姿勢で「誠実な説明」を求めた。
「桜を見る会」疑惑の本質は、安倍晋三とその取り巻きの行政私物化である。国家の私物化といってもよい。なによりもこのことの重みを明確にしておかねばならない。
安倍晋三とその取り巻きのやったことは、公私混同という醜行である。彼らの頭の中では、「公」と「私」の区別が溶けてなくなっているのだ。アベ後援会の活動も自民党の活動も「私」の分野のものである。本来、すべて私費で行われなければならない。「桜を見る会」は政府の公的な行事である。参加者の選定も、その招待も、会の進行も、本来「公」の活動である。この区別を殊更に無視して、「桜を見る会」という「公」の行事を、「私」の安倍後援会活動の一端に組み込んだ公私混同が、まず糾弾されなければならない。
のみならず、安倍晋三とは内閣総理大臣の座にある者である。言うまでもなく、内閣総理大臣とは公権力のトップに位置する職務である。彼の場合の「公」と「私」との区別は、法の支配や立憲主義と密接に関わる。近代以前には、王や領主の私的な家法が、そのまま国法でもあった。そこでは、権力者の意思はすなわち国の意思であって、権力者の私的行為と公的行為の区別の必要はなかった。しかし、近代国家では、権力者の恣意の振る舞いは許されない。憲法に従い国民の利益のために働く意思と能力を持つ者に、その限りで権力が預けられ、その範囲で権力の行使が許されるのである。近代社会では、権力の私物化など、原理的にあり得ないのだ。
ところが、安倍晋三という人物は、権力を私物化し、「私」の利益のために「公」を利用しているのだ。この人物には国民の利益のために働く誠実さと能力を欠くことにおいて、権力を預かる資格がない。
そのことを確認した上で、「反社の方々」や「甚大な被害を輩出している詐欺師」を「桜を見る会」の招待者としたことの非を、派生問題として把握しなければならない。が、この派生問題は、実はたいへんに大きなインパクトを持っている。
被害者弁護団は、「桜を見る会」の招待状が同社の宣伝や勧誘に利用されたことで「多くの被害者がジャパンライフを信頼できる会社と誤解した」と指摘。長年にわたって悪徳商法を展開してきた山口を功績・功労があった者として招待した経緯について「(安倍首相は)被害者に対し、誠意をもって説明すべき」だと強調している。
ジャパンライフとは大規模な詐欺組織である。山口隆祥とは、その総帥の詐欺師にほかならない。安倍官邸はこの詐欺師を「桜を見る会」に招待し、招待された詐欺師は、総理主催の公的行事に招待されたことを,社会的信用の証しとして最大限に活用した。
現在破産手続き中の同社の負債総額は2405億円、契約者は7000人に上るものの、破産手続き中の同社が被害者に返金できる資金はないという。そこで弁護団は、同社の元顧問らに顧問料の返還を求めるよう管財人に要請し交渉中という。元内閣府官房長・永谷安賢、元特許庁長官・中嶋誠、元科学技術庁科学技術政策研究所長・元日本オリンピック委員会(JOC)理事・佐藤征夫、経済企画庁長官秘書官・松尾篤元、元朝日新聞政治部長・橘優らである。いずれも、被害者を信用させるに足る地位にいた顧問ら。その合計金額が1億4500万円に上るという。
ジャパンライフが悪徳業者として話題に上ってから20年余にもなる。かくも長期に永らえ、かくも甚大な被害に至ったのは、行政や大物政治家との癒着があったからである。多くの天下り官僚を受け入れてもいた。政治資金パーティーには、毎年100万円?200万円を支出していた。この癒着の象徴として、「桜を見る会」の招待がある。
また、同社はこれまで4度の行政処分を受けており、その悪名を内閣府が知らなかったはずはない。それでも、公的に山口に「桜を見る会」の招待状が届き、詐欺商法に利用させた。これについて、内閣府も官邸も可能な限りの調査をし説明をしようという誠実さのカケラもない。名簿の保存がないから、山口を招待したことすら確認できないという、説明拒否に終始する態度なのだ。誰がどのような理由で推薦し、内閣府がどのような根拠で招待に値すると判断したのか、その過程を誠実に調査して明確にすれば、安倍政権の公私混同ぶり、権力者の放埒な振る舞いが白日のもとにあぶりだされるからなのだ。
「桜を見る会」への詐欺師招待は、必ずしも問題の本質ではない。しかし、たいへん分かり易く、行政の私物化がもたらす弊害を明らかにしている。同時に、行政が資料の廃棄を急いだ理由をも教えてくれてもいる。はからずも、詐欺師正体が、「桜を見る会」疑惑の正体を照らし出すものとなっているのだ。
(2019年12月20日)