澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

今や、国際世論がロシアの侵略を阻止する現実的な力になりつつある。

(2022年3月3日)
 世界が、ロシアに怒っている。ロシアによって引き起こされた戦争に怒っている。世界中の人々が無法者プーチンを糾弾している。ウクライナへの軍事侵攻は、ロシアとプーチンの孤立をもたらした。そのことによって、侵略者の側が深刻な深手を負っている。この侵略行為は成功体験とはなり得ない。一見頼りなげな国際世論が、いま、大きな力を持ちつつあるのではないか。

 昨日(3月2日)、国連総会は、ウクライナ危機をめぐる緊急特別会合で、「ロシアを非難し軍の完全撤退を要求する決議」を採択した。国連加盟193か国のうち、賛成票を投じたのが141カ国であった。反対は孤立した5か国。その国名をよく覚えておこう。ロシアとベラルーシ・シリア・北朝鮮・エリトリアである。棄権は35カ国、その中に、中国・インドがあることも今後忘れてはならない。かつて冷戦下では世界を二分する勢力の領袖であったロシアのこの凋落ぶりである。

 決議が採択されると、ウクライナのキスリツァ国連大使は起立し、議場は40秒にわたって鳴り響いた拍手で支持を表明したという。ロシアとウクライナ、国際世論の支持でくっきりと明暗を分けた。

 この決議は、ウクライナの主権や領土保全を再確認し、ロシアの行動は「国連憲章に反する」と明記した。ロシアによる「特別な軍事作戦」の宣言を非難し、ウクライナ東部の親露派支配地域の「独立承認」も撤回するよう要求。ロシア軍が「直ちに完全無条件で撤退すること」を求めているという。ロシアにとっては、徹底した厳しい内容となっている。

 この決議を採択したのは、ニューヨークの国連本部でのこと。一方、ジュネーブでは国連人権理事会の通常会期が進行中である。そこでの興味深い一幕が、報道されている。

 この人権理事会で、3月1日ロシアのラブロフ外相がオンラインで演説をした。この演説が始まるや、多くの外交団が一斉に退席し、抗議の意思を示したという。

 退席したのは日本を含む約40カ国の100人以上の外交官。退席した外交官らは議場の外で、ウクライナ大使の周りに集まり、ウクライナへの支持を表明したという(ロイター)。

 ラブロフは、当初ジュネーブを訪れて会合に参加する予定だったが、欧州連合(EU)が、自身を制裁対象とし、「移動の自由の尊重を拒否したため、オンライン参加を余儀なくされた」とし、約15分間の演説で侵攻の正当性を主張した(共同)と報道されている。

 ここでも、肩身の狭いロシア、友情に包まれているウクライナの明暗である。

 目前に迫った北京パラリンピックでも、同様の事態が生じている。
 国際パラリンピック委員会(IPC)は、4日に開幕する北京冬季パラリンピックに、ウクライナに侵攻したロシアと、ロシアに協力的なベラルーシの参加を容認した。
 同日夜、北京市内で開かれたIPCの記者会見で、ウクライナ紙の男性記者が写真を示しながら真っ先に質問した。「この選手には、もう二度と競技をする機会は訪れない」。

 この記者によると、写真の男性はウクライナのバイアスロンのジュニア世代元代表。1日にウクライナ第2の都市ハリコフで爆撃を受け、亡くなったという。「あなたは侵略側の選手には競技をさせると言うが、この選手にはもう二度と競技をする機会は訪れない。彼の遺族にあなたはどんな言葉をかけるのか」とたたみかけた。

 これに対し、IPCのアンドルー・パーソンズ会長は「ウクライナの皆さんの苦痛は想像だにできない」と哀悼の意を表したが、「彼に起きたことを私たちが変えることはできない」「スポーツと政治は別だ」とも述べた。

 ウクライナ紙の記者は会見後、「規則を盾に逃げただけだ」と断じた。会見にはロシア人記者も出席したが、質問に立つことはなかった。(以上、毎日)

 これが、昨日(3月2日)のこと。ところが、本日事態は逆転した。

 「国際パラリンピック委員会(IPC)は3日、4日から開幕する北京パラリンピックに、ロシアとベラルーシ選手の出場を認めないと発表した。複数のパラリンピック委員会、チーム、選手が参加辞退をほのめかし、北京大会の実施が難しくなる可能性と、選手村の状況が悪化し、選手らの安全が守れないと発表した。」(朝日)

 結局、各方面からの批判で、1日足らずで方針を撤回する形になったという。これも国際世論の力だ。世論が、事態を変化させ、その変化が世論に自信を与え、さらなる世論を呼ぶ。

 このような国際世論の興隆が、政治的・経済的・社会的・文化的なロシア・プーチン批判の大きな渦を作りつつある。これが、ウクライナの人々を励まし、ロシアの戦意を喪失させている。こうして、国際世論は現実的な力になりつつある。

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