内閣不信任案否決の過程に見えてくる各党の政治姿勢
(2022年6月9日)
本日の衆院本会議で、立憲民主党提出の岸田内閣不信任案が賛成少数で否決された。現状での否決という結果自体は予想されたところ。むろん、大切なのはプロセスである。この不信任案への対応で各党の姿勢がよく見えてきた。
自民・公明の与党が、反対に回ったのは謂わば当然である。
ところが、国民民主と維新の両党も反対にまわった。これは、あるまじき対応というべきか、「ゆ・党」と「悪・党」にふさわしいありかたというべきか。いずれにしても、その立ち位置を明確にすることとなった。
さらに、れいわ新選組は採決を棄権した。おやおや、この党は国民生活擁護、反権力をウリにしていたはずではなかったか。
結局、賛成は,立憲民主・共産党・社民党となった。
なお、細田博之衆院議長の不信任決議案も同様に、自民・公明に加え、維新・国民民主の反対で否決された。
立憲民主の泉健太は、岸田内閣下での、円安・物価高を「岸田インフレ」と批判した。「補正予算においても経済無策を続け、国民生活の苦境を放置しているのは許されない」と訴えた。
さらに、消費税率の時限的な5%への引き下げや、安倍政権から続く異次元の金融緩和を含む「アベノミクス」の見直しを主張。岸田内閣の看板政策「新しい資本主義」を「分配政策が乏しく、格差を広げるアベノミクスが継続されている」と指摘。「分配を軽視し、格差が拡大させ、国民が分断される」と強調した。
誰もが納得せざるを得ない常識的な主張ではないか。反対派は、これに反論し得たのか。
自民の上川陽子は反対討論で、「ウクライナ情勢などによって、不確実性を増す情勢変化に的確に対応し続けてきた。唐突な不信任決議案の提出は不誠実だ」と反論。公明の浜地雅一は内閣支持率が政権発足時から上がっていることを理由に「国政を安定的に着実に運営する岸田内閣はまったく不信任に値しない」と討論したと報じられている。
いずれも噛み合った反論になっていない。とりわけ、岸田内閣の看板政策「新しい資本主義」について、「分配政策が乏しく、格差を広げるアベノミクスが継続されている」「分配を軽視し、格差が拡大させ、国民が分断される」との指摘に対する噛み合った議論を期待したいところだが、ない物ねだりとなってしまった。
反対討論に立った維新の足立康史氏は「内閣を積極的に信任するわけではない」としつつも、「少数派の野党が内閣不信任を提出し、多数派の与党が粛々と否決する一連の茶番に異議を申し立てると言う意味で、反対を投じる」と述べたという。
この人のいうことは、常によく分からない。意味が伝わらない。それでも分かることは、この党のあまりの不真面目さである。それだけでも、不信任案提出の意味はあったというべきであろう。
一方、共産の笠井亮氏は不信任案に賛成の立場から岸田政権が検討する「敵基地攻撃能力」の保有を「専守防衛の大原則を投げ捨てるものだ」と批判した。これはこれで、あまりに真っ当な対応のコントラスト。
なお、NHKは、立民と自民との討論を、こう整理している。
立憲民主党の泉代表は「国民が物価高で苦しむなか、政府が物価対策を届けていないことで、消費が低迷し、日本経済に打撃となる可能性がある。その事実を国民に伝え、国民の意思によって政治を動かせる限られた機会がこの不信任決議案だ」と述べ、賛同を呼びかけました。
これに対し、自民党の上川幹事長代理は、「情勢の変化に対応し続けてきた岸田総理大臣の決断力や実行力への期待が高まっている。その歩みを止める不信任案の提出は極めて不誠実だ」と反論しました。
立民の問題提起に自民が応え得ているか。議論は内容であって、有権者一人ひとりの判断が大切なのだ。結果としての賛否の票数だけを問題とするのは、民主主義の形骸化であり堕落である。この討論を茶番という輩が、民主主義の何たるかを知ろうとしない者なのだ。