澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

日本会議の会合で、高市早苗はいったい何を語ったのか。

(2022年10月6日)
 昨日の毎日新聞朝刊のこんな見出しに目を惹かれた。「国葬反対投稿 8割が大陸から」「三重県議『根拠は高市早苗氏』」。右翼にとっても、アベ国葬問題は尾を引いている。「国民の過半数がアベ国葬反対」という事実は、どうしても受け容れがたいのだ。なんとか、「アベ様・バンザイ」としなければならない。

 「安倍晋三元首相の国葬への是非を巡り、三重県の小林貴虎県議(48)=自民=が2日、ツイッターに「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析が出ているという」と投稿した。」(毎日)

 「隣の大陸」と言えば中国以外にない。世論調査にも顕著となった「アベ国葬反対」という国民の声は、中国の仕掛けによるものだというのだ。日本の世論を撹乱し、アベ国葬の権威を貶めようという中国の企みが功を奏しての「嘘の世論」だというのが、この自民党議員の言いたいことである。

 もっとも、これだけなら、地方版限りの小さなニュースでしかない。ところが、この自民党県議。うかつにも、いわでもがなのことを言ってこのニュースを全国版のものにした。

 「4日に小林氏が報道陣の取材に応じ、ツイートの根拠について「誰が話したかって話ですよね。高市早苗さんです」と述べた。」「小林氏によると、2日に名古屋市内で日本会議の会合が開かれ、高市早苗・経済安全保障担当相が安全保障問題について講演した。高市氏がその際「政府の調査結果」として話した内容を基にツイートしたという。」(毎日)
 
 高市は毎日新聞の取材に「日本政府が情報操作に関して調査した旨の発言は、私からはありません」とだけ回答したという。「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸から」との発言については、肯定も否定もしていない。

 小林は投稿内容の根拠について2日のツィッターでは、「今日の講演で伺った話。ソースは以前三重の政治大学院でもご講演いただいた事のある現職」とし、3日には「政府の調査のデータだと講演者から聞いた」と語ったが、講演者の名前を高市と明かしたのは、4日のツイッターでのこと。小林は、こう言っている。
 
 「さて皆さん非常に関心が高い様なのでお答えすることにしました。私が総理大臣になって頂きたいと強く願っている高市早苗先生が、政府の調査結果としてお伝えいただいた内容です」というのだ。

 昨日(5日)、小林が委員長を務める県議会・戦略企画雇用経済常任委員会が開かれ、出席した委員からツイートの説明や辞任が求められたという。そして、彼は、委員長辞任を表明した。

 そして本日(6日)、事態は一転する。小林は津市内で記者会見を行い、一連のツィッターの投稿内容は誤りだったとして、撤回を撤回を表明し謝罪した。ツィッターは削除済みであるという。

 ただ、釈然としないのだ。自分の発言の誤りを認めて謝罪の会見をするのなら、どの発言がどのように誤っていたのか、なぜ誤ったのか。どうしてこれまで誤りに気付かなかったのか、何をきっかけに誤りに気付いたのか。そのくらいのことは、明らかにしなければならない。

 ところが、6日の会見では「内容に誤りがあった。撤回したい」「(高市の)講演では自らメモを取っていたものの、同席した複数の参加者からの指摘で誤りに気づいた」「高市事務所にもおわびの連絡を入れた」というだけだったようだ。

 具体的に何が誤りだったかは、講演会が非公開だったとして説明を拒んだ。「圧力はない。本心からだ」とも述べ、自身の進退については「深く反省している。議員として努力を積み重ねたい」と、来春の県議選で有権者の審判を仰ぐとした。
 一方、当初の投稿に差別や偏見を助長するとの批判が出ていたことについては、「講演の中身に言及せざるを得ない」などとして、評価を避けた。なお、小林のツイッターは5日夜以降、非公開となっているという。

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 記者会見の一問一答を、朝日が詳報している。その一部を抜粋するが、これはたいへんに興味深い内容。

 ――誤りとは高市氏の発言ということではなく、調査の主体、政府が間違っていたということでいいか。

 詳細はそもそもクローズド(非公開)な会だということで具体的なお話はできないのだが、同じ講演を聞いていた複数の方々の記録と突き合わしたところ、異なっている部分があるということが分かったので、訂正する。

 ――政府の調査という言葉はなかったということか。

 その内容については発言を控えたい。

 ――政府の調査が誤りだったという認識には間違いないか。

 どこがということに関しては講演の内容になるので控えたい。

 ――政府がどうだったかということも、言えないということか。

 繰り返しになるが、何点か記録と異なっていることが分かったので、訂正をしたい。

 ――メモにそもそも誤りがあったということか。

 そういうことだ。

 ――高市氏が何を「調査」と言ったのか、言えないという話か。

 差し控えたいと思う。

 ――訂正をしたいということだが、何をどう誤ってどう訂正したいのか。

 繰り返しになるが、講演の内容に関わることなので、ここでの発言は差し控えたい。

 ――どこを訂正したのか、なぜ説明できない。

 そもそもクローズドな会だったからだ。

 ――訂正の内容が分からないと何のための説明か分からない。責任を持って答えているようにはとらえられない。

 申し訳ない。深く反省しているが、具体的な講演の内容に関しては差し控えたい。

 ――会見を開いたのだから、明かすべきだ。

 申し訳ない。すべてに対して撤回をしたい。

 ――撤回するのか。

 はい。

 ――訂正ではなく。

 撤回する。

 ――その理由はクローズドな会だったから言えないと。

 はい。

 ――小林県議自身が本当にそう考えているか、わからない。本当にそう思っているならば当然明かすべきだ。

 はい。

 ――撤回するのは2日に投稿した「国葬反対のSNSは8割が隣の大陸から」という投稿と、4日の「発言のソースは高市早苗さんです」という、この2点についてということか。

 双方ともに撤回する。

 ――どこが誤りだったか、クローズドだからという一点張りで説明されていない。十分伝わらないと思うが。

 会の性質がそもそもクローズドだったとしか言いようがない。

 ――内容が違ったというのは、誰から言われたのか。

 同じく同席した私の知人に確認した。

 ――そもそもクローズドな会合で出た内容をツイッターで発信するというのはどういう意図があったのか。

 具体的な意図を話してしまうと(会の)内容になるので差し控える。

 ――高市氏は政府の調査はないと否定した。意見が食い違っている状況をどう考えるか。

 講演の内容に言及せざるを得なくなるので、そこに関しては発言を差し控えたいと思う。

 ――高市氏の事務所から説明を求められたとか、何かやりとりはあったか。

 ありません。私から電話をかけた。高市氏の秘書と話し、謝罪をさせていただいた。

 ――小林県議自身が本心から撤回しているのか、それとも誰かからの圧力で撤回することになったのか。

 圧力ではない。本心だ。

 ――「8割が大陸」という内容については今も事実だと思っているのか。

 内容について私がどう考えるかということも、会の全体的な内容に触れざるをえないので、差し控えたい。

 ―― 信憑性(しんぴょうせい)が高いと感じたのはどうしてか。

 それも、誰が話したかということになるので控える。

 ――発言した人のことを考えて信憑性が高いと判断したのか。

 差し控える。

 ――自身の責任はどのように考えているのか。現職大臣の名前を出して投稿した以上、県議としての投稿なので責任を伴うと思うが。

 ことの重要性は認識しているので、党からの指示を待ちたいと思う。

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 以上の一問一答の結果から、常識的に何が推認できるだろうか。小林がメモに基づいたとして、自信をもって投稿したツィッターの内容がおおきく間違っていたとは考えにくい。記者の質問にもあるように、だれかからの圧力で、小林の「問題ツィッター」は削除を余儀なくされたと考えざるを得ない。その「だれか」の中に高市が含まれていることは当然というべきである。

 問題の会合は、日本会議の会合である。統一教会ばかりではない。日本会議も、自民党右派にベッタリとくっついているのだ。そして、その「日本会議+自民党」の会合は、かくもクローズドで秘密裡に行われている。だから、高市は安心していい加減なことを喋ったのだろう。

 その掟になじんでいない小林が、秘密裡の会合の内容を外部にばらした。高市は自らは、表に出ることなく小林に詰め腹を切らせたのだ。ああ自民党、ああ高市。

 岸田の方がまだマシだ。低支持率に喘ぎながら、がんばれ岸田。

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