澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

戦争法案参議院審議入りー「断固廃案にしよう」「必ず廃案にできる」

本日(7月27日)延長国会での、戦争法案参院審議が始まった。連日、猛暑の中で、多くの人が国会を取り囲んで法案反対の意思表示をしている。デモも集会も、対外的には世論の盛り上がりを可視化する方策であり、対内的には連帯と団結を確認し拡大する手段だ。反対運動は、確実に拡がりつつある。とりわけ、若者に、女性に、つまりは戦争の被害を最も深刻に受ける層に。また、これまで声を上げにくかった人々も起ち上がりつつある。大いに勇気づけられる。

衆議院の強行採決による敗北感・無力感や焦燥感が感じられない。これは、運動参加者の確信によるものであろう。本日(7月27日)日経と読売が世論調査結果を発表して、7月の各紙の調査が出揃った。日経が「内閣不支持率50%となり、支持率38%を上回った」。読売が、「不支持49%、支持43%」。ともに初めて不支持率が支持率を上回った。産経調査でも、「不支持52・6%、支持39・3%」となっている。すべての調査が示している、この逆転劇の衝撃は計り知れない。安倍政権、盤石のように見えて、実は案外に脆いことをさらけ出した。とても、もう一度の強行採決などできそうにもない。60日ルールの適用も同様だ。

それだけではない。こういうときには、劣勢側の焦りがエラーを招き寄せる。またまた、オウンゴールの1点が献上された。

これまでもたびたび話題の礒崎陽輔首相補佐官が、昨日(7月26日)大分市の講演で、安全保障関連法案が法的安定性を損なうものとの批判があることに反論した。「法的安定性は関係ない。わが国を守るために(集団的自衛権行使が)必要かどうかが基準だ」と述べた、という。「この発言は安保環境の変化に立脚した議論が必要との考えを示したものとみられるが、法的安定性を軽視したとも受け取れる言い方で、野党の反発を呼びそうだ」(共同)。「安保法案『法的安定性確保』軽視発言の礒崎補佐官が大炎上 民主は解任要求、自民も不快感」(産経)と報道されている。

さっそく本日、民主党の枝野幹事長が、記者会見でこの発言を取り上げた。
「法治主義や法の支配は、ルールはこう解釈されて一方的に変更されない(というもの)。であればこそ、そのルールに従ってみんな生きていくことができる。それを法的安定性と呼ぶ。ところが、法的安定性を関係ない、つまり、ルールは都合でころころ変わるということでは、憲法はもとより、そもそも法治主義、法の支配という観点から、行政に携わる資格なし、と思う。安倍首相は法の支配の『いろは』の『い』もわかっていない補佐官をいつまで使い続けるのか」

本日安倍首相は本会議の答弁において「民主党などが『徴兵制復活』と連呼しているが、『徴兵制は明確な憲法違反で導入はあり得ない』と否定した」という。しかし、憲法に「徴兵制は許さない」との条文があるわけではない。徴兵制は、憲法18条で禁止されている「その意に反する苦役」に当たるという解釈が定着して、違憲と言われているのだ。「集団的自衛権行使は違憲」と定着していた解釈を、一転合憲と覆したのは安倍政権である。さらにこの上、「法的安定性は問題ではない」ということになれば、「徴兵制は崇高な国民の自発性に基づく義務であって苦役ではない。したがって合憲であることは明らかである」と、いつでも言い出せることになるのだ。

法案の危険性は次第に国民に浸透しつつある。反対運動は盛りあがってる。運動の成果は目に見えるものとなっている。防戦側はミスの連続だ。最近、公明党支持者の公明党への愛想づかしがニュースに大きく取り上げられるようになってきた。このままでは公明党がもたなくなるだろう。

そのような中で、安倍に何か智恵があるか成算があるかといえば、何もなさそう。本日の参院本会議答弁も、「わが国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、憲法9条の範囲内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために不可欠な法案だ」「参院での法案審議においても工夫を凝らして分かりやすく、丁寧な説明を心掛けていく」と、すり切れたレコード状態だ。的を外した答弁を丁寧に繰り返すことを宣言したに過ぎない。

これなら、法案を廃案に追い込むことのリアリティ十分ではないか。来夏に選挙を控えた参議院である。公明党議員が、この評判の悪い戦争法案成立にがんばれるわけがない。公明がポシャれば、自民党単独では過半数に届かないのだ。

「どうせ数の力で押し通す」「60日ルールの適用が可能なのだから、既に勝負あった」という醒めた発言はけっして的を射たものではない。

政治学の概念として「自己実現する予言」というものがある。「法案は、どうせ通る」「勝負は2014年12月の総選挙で既についている」「結局は議会内の数の力で決まる」という「予言」が重なれば、そのとおりに自己実現することになる。

反対に、多くの人が「この闘い、勝たねばならない」ことを理解し確認し、「絶対に勝とう」と決意を固め、そして「きっと勝てる」と確信したとき、運動の昂揚は安倍政権とともにこの法案を葬ることになる。

ものごとをなし遂げようというときには、成功体験のイメージトレーニングの重要性が説かれる。法案を廃案に追い込むとともに、安倍退陣をイメージして、「戦争法案ただちに廃案」「安倍はやめろ」「安倍政権を許さない」のスローガンを高く掲げて、自己実現させようではないか。
(2015年7月27日)

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