「日本の有権者の選択はかなり愚か」ではあったろう。さはさりながら…。
(2021年11月4日)
前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民)の、今回総選挙結果の評価に関する2本のツィートが話題を呼んでいる。とは言え、予想される人々からの予想される反応以上のものではない。もう少し、賛否両論がヒートアップしても良さそうなもの。
前川ツィートのその一本は、「人権感覚が欠如し、排外主義に染まった集団が維新。この政党に投票した有権者は猛反省するべきだ」という、維新とその支持者に対する批判。理由や根拠についての言及はないが、極めて常識的な意見の表明と言ってよい。
前川は、今回の選挙結果が出た直後には「日本が辻元清美代議士を失った損失は計り知れない。大阪10区の有権者にはよくよく考えてもらいたい」と投稿している。「大阪10区の有権者」批判では足りず、「維新に投票した有権者全員」に猛省を迫ったのだ。
当然のことだが、政党の支持も批判も、支持者に対する批判も、タブーにしてはならない。堂々と発言してしかるべきである。私も、前川意見にまったく同感だ。維新に投票した有権者諸君に、その軽率さ、思慮の足りなさを猛省していただきたい。
維新当選者の酷さについては、リテラの記事が詳細である。下記をお読みいただきたい。
https://lite-ra.com/2021/11/post-6065.html
もう一本の前川ツィートは、「政治家には言えないから僕が言うが、日本の有権者はかなり愚かだ。」というもの。こちらは、維新支持者に留まらない有権者一般に対して、今回総選挙の結果をもたらしたことに対する批判。このツィッターに対しては、リベラル陣営からも批判が寄せられているようだ。「民主主義を否定する謬論」「愚民観と選良意識の表れ」…。果たしてそうだろうか。
橋下徹は、相変わらずのものの言い方で、こう毒づいている。
「元官僚にはこの手の勘違い野郎が多い。自分の考えこそが絶対に正しいと信じて疑わない。古賀茂明も。だから選挙が必要で、政治家が官僚を統制しなければならない。選挙の結果を否定したら民主主義など成り立たない。」
悪意と悪罵は伝わるが、論理の切れ味は鈍く、説得力はない。
果たして前川は、「選挙の結果を《否定》している」のか。選挙の結果を批判してはならないのか。この選挙結果をもって「日本の有権者はかなり愚か」と言ってはならないのか。そもそも有権者に対する批判はタブーなのか。
橋下の「選挙の結果を否定したら民主主義など成り立たない」は大いなる勘違い。有権者の選択が常に正しいとは限らない。選挙の結果を大いに批判してよいのだ。選挙の結果は暫定的な民意の確認であって神判ではない。今回の選挙結果には次の選挙まで誰もが従わざるを得ないが、次回選挙ではどうにでも変わり得る。次回選挙のための言論戦は、既に始まっている。選挙結果への批判は大いにあってしかるべきなのだ。
普通、選挙に関わろうとする者が有権者を愚かと言うことはない。有権者を味方に付けなくては選挙に勝てないからだ。それでも、維新の議席を伸ばし、自公与党に過半数を与えた今回総選挙の有権者の投票行動を「愚か」と言わざるを得なかったのが前川の心情。その気持ちはよく分かる。私も同じだ。
しかし、橋下と同レベルでの悪罵の交換と思われるのは不本意極まる。今回、維新に投票した有権者の耳に届く言葉で、語りかけなければならない。面倒なことだし容易なことではないが、それが民主主義の政治過程というものなのだろう。