衆議院の解散と、みんなの党の解党ー保革対決の図式に
いよいよ解散、またまた暮れの総選挙である。12月14日赤穂浪士討ち入りの日の政治戦が本決まり。さてこの日、首尾よく総理のクビを討ち取れるか。
ところで、なにゆえの選挙か、何を問うべき選挙か。安倍首相の説明は腑に落ちない。当人も、国民が納得するとは思っていない。
首相は、「国民生活、国民経済にとって重い重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだと決心した」と言った。「国民に信を問うべき重い重い決断」とは、何なのだ。消費増税を延期することなのか。それとも延期はしても2017年4月には消費増税を行うことなのか。
消費増税自体は既定路線となっている。消費税法など、いわゆる消費増税関連8法の成立によって、法的には10%の増税は決まっていること。いまさら、「国民に信を問う」とは大袈裟な。唐突に「代表なくして課税なし」というスローガンが出てきたことに驚いた。「課税負担には代表権が伴わなくてはならない」との意味でもあるのだから、在日の諸氏へ選挙権付与の布石かと一瞬耳を疑った。が、そうではなく国民に信を問うことで、痛みの負担を我慢してもらおうという思惑での発言でしかなかったようだ。
では、増税延期の方が解散して国民の信を問うべき大きなテーマかといえば、そんなことはない。この経済環境において増税先送りは大多数の国民が歓迎するところで、反対派の抵抗を想定しがたい。法的にも「景気弾力条項」の発動で済むこと。増税先送りは、首相がまなじりを決して「国民の信を得て敢えて断行する」などと口にするほどのテーマではない。
ほんとのところは、「高支持率の唯一の頼みであったアベノミクスのメッキが剥がれてきた。これから好転することも考えにくい。だから、どうせジリ貧になるのなら、傷が小さい内に解散して、議席の目減りを最低限に抑えておきたい」というものだろう。
だから、大義なき解散と評判が悪い。解散に打って出ることで風を起こしたいという思惑は外れたようだ。既に、自民党へは逆風が吹き始めている。しかし、解散の思惑がどうであれ、民意を示すビッグチャンスではある。壮大な政治戦のゴングが鳴ろうとしている。まさしく、国民全てに安倍政権への信任か不信任かの選択が迫られる。シングルイシューもありうる地方選挙とは違うのだ。
消費増税の延期ではなく、増税自体の是非が問われなくてはならない。逆進性の消費増税は格差・貧困を拡大するものではないか。大企業と金持ちは空前の儲けに潤い、一方実質賃金は15か月連続の目減りである。非正規労働者の急増で雇用は不安定となり、残業代は次第になくされつつある。中小企業と地方は冷え込み、TPPの強行で農漁業は切り捨てられようとしている。福祉は削られ、医療も介護も不安だらけだ。
さらに、自民党改憲草案、96条改憲構想、特定秘密保護法の強行、集団的自衛権行使容認の閣議決定、原発再稼働、原発輸出、NHK「国営化」、歴史修正主義、靖国参拝、日米ガイドライン、沖縄基地固定化、オスプレイ導入、教育再生、地教行法改正、道徳の教科化‥‥。挙げればキリがない。たいへんな内閣なのだ。
国民の選択は、自・公の与党、共社の革新、その中間政党のどれかとなる。安倍政権対革新政党の対峙の骨格がまずあって、その間に民主党・生活の党などの中間政党が点在する構図がある。
ところが、これまでのマスコミの論調は、二大政党としての自民・民主に吸収されない「第3極」をもてはやしてきた。前回総選挙時には、みんなの党と維新とが、持ち上げられた。両党とも、その後の離合集散を経て勢力の衰えを露わにしている。そして本日、みんなの党は、両院議員総会を衆院議員会館で開き、解党することを賛成多数で議決した。
「採決は、地方議員も含めた出席者の怒号が飛び交う中、議事進行役を除く国会議員19人で行われ、反対したのは渡辺氏ら6人にとどまった。決定を受け、みんなは28日に正式に解党。衆院選公示日の12月2日に解散を総務相に届け出る」
「これにより、自民、民主二大政党に対抗する第三極の一角が消滅。所属議員は、民主党や維新の党への合流や新党結成を模索する見通しで、野党陣営の候補者調整が進みそうだ」(時事)と報道されている。
総会で解党を求める決議を提案したのは松沢成文参院議員。「党内は与党路線、野党路線、第三極に割れている。これでは選挙を戦えない。それぞれの道を行くべきだ」と発言したという。これは、たいへん示唆的だ。第3極とは、所詮こんなものなのだ。
我々は、みんなの党崩壊のきっかけとなったDHC吉田との間の8億円授受事件に関して、渡辺喜美を政治資金規正法違反として告発している。我々とは、研究者グループの告発人16名、そして代理人弁護士24名のことである。告発状は26頁におよぶもの。東京地検に告発状を提出して以来5か月が経った。そろそろ何らかの捜査があってしかるべき時期ではないか。
具体的事実の詳細に分からぬところがあることから、構成要件と罰条を必ずしも一義的に特定しがたいものの、8億円の授受についての渡辺喜美の行為が政治資金規正法に違反していることについては、自信をもっての告発である。そして、この告発をきっかけとする徹底した捜査の進展によって、渡辺に関しての被告発事実だけでなく、その周辺事実や関連人物までの捜査を通じて事案の全体像をあきらかにされるよう期待してやまない。問題の焦点は、8億円ものカネの授受が、政治をどう歪めたかにあるのだから。
衆議院解散と、みんなの党の解党決議。今回の重要な政治戦は保・革の対決、端的には自・共の対決を軸とするものとなるだろう。本日のみんなの党の解党は「第3極」の衰退を象徴するものとして、保革対立の図式を際立たせるものとなっている。
(2014年11月19日)