澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

喜ばしや、2度までの維新の目論見の蹉跌。

(2020年11月2日)
昨日(11月1日)投開票の「大阪市廃止」住民投票。1万7000票余の僅差ではあったが否決された。欣快の至りというしかない。

それにしても、仕掛ける側が「絶対に勝てる」という確信があっての住民投票実施である。維新は、このタイミングなら絶対勝てるとの判断で賭に出た…はず。5年前の投票では1万票差の否決だった。今回は、公明党を賛成派に抱き込んでの再提案。必ず勝てると思い上がっていたに違いない。それでも負けたのだ。この衝撃と影響は前回にもまして大きい。

「大阪都構想」は、維新にとっては「1丁目1番地の看板政策」である。それに固執して2度までも負けたのだ。一説では100億円という府・市の予算を投じ、コロナ対策そっちのけでの住民投票対策。住民を敵味方に2分しての宣伝戦は、大山鳴動したのみでネズミ一匹出てこなかった。当然のことながら、維新のこの責任は大きい。

維新の打撃について、時事はこう報じている。

「大阪都構想」が1日、否決された。実現を目指した日本維新の会にとって打撃だ。看板政策が地元の理解を得られず、次期衆院選で狙う全国展開の推進力を失った形で、今後は国政で厳しい立場に立たされそうだ。松井一郎代表(大阪市長)は否決を受け、市長の任期満了後の政界引退を表明。将来的に党が維持されるかも見通せない。

また、政治状況に影響が大きい。維新とは、与党でも野党でもない「ゆ党」だと揶揄される立ち位置。その実態は政権の補完勢力である。いざというときに政権に自らの存在を高く売りこもうという意味での改憲別働隊でもある。こんな輩に勢いづかせてはならない。

ところで、「15年の住民投票に続く2度目の否決で、維新代表の松井一郎大阪市長は23年4月の市長任期満了での政界引退を表明した」と報じられている。意味不明というしかない。任期満了までの在職継続宣言が、どうしてケジメをつけることになるのか、責任を取ることになるのか理解しかねる。

自分に市長としての適格性のないことを自覚したからこそのケジメではないか。重要政策に市民の信頼を得られなかったことに関する責任を取ろうということでもある。速やかに職を辞するのがスジというものであろう。なにゆえ、あと2年半も、のうのうと市長として録を食むと言えるのだろうか。

10月26日に、「大阪市廃止なら年間218億円分の財政コスト増」との試算をメディアに提供した大阪市の財政局長は、事態をどう見ているだろうか。速やかに市長が引責辞任してくれれば今後の軋轢は防げるのだが、あと2年半もの市長在任となれば、その間戦々恐々と報復を恐れなければならない。

また、大阪維新の会の代表代行を務めるという、大阪府知事の吉村洋文である。敗北後の記者会見で、「進退についてだが、今回、1丁目1番地の都構想が否決された。重く受け止め、僕自身が都構想について再挑戦することはない」と述べたという。重くは受け止めたが、責任を取ることまでは考えていないというわけだ。この姿勢もいただけない。

ところで、前回5年前の敗北と同様、確実に維新の存在感に陰りが生じることになる。次の衆院選戦略にも影響を与えるとの観測記事が多い。松井と菅とが親しいことは知られており、「次期衆院選で自民、公明両党の議席が減った場合は「自公維政権を作ればいい」(自民関係者)との声もあるほど」(毎日)だという。ここでの松井のレームダック化は、首相の政権運営に影響を及ぼしそうだ。それ故に、昨日の住民投票の結果が「欣快の至り」なのだ。

なお、偶然なのか必然なのかはわからないが、昨日今日の大阪府と東京都とのコロナ感染者数の比較は以下のとおりである。人口比から見て、大阪の感染蔓延は相当なものだ。

11月 1日 大阪 123人  東京 116人
11月 2日 大阪  74人  東京  87人

大阪都構想などにかまけている余裕なんぞははなかったのだ。

大阪市廃止の住民投票 ー 「維新側のなりふり構わない姿勢は異様だ」

(2020年10月31日)
本日の東京新聞「こちら特報部」の記事が、実によくできている。説得力十分。明日(11月1日)の「大阪市廃止の住民投票」の重要な資料だ。惜しむらくは、投票までに、この記事に目を通す大阪市民がどのくらいいるだろうか。

見出しだけでも、この迫力。ほぼ事態を把握できる。

 大阪都住民投票ギリギリでゴタゴタ
 維新流不穏な火消し
 「行政コスト218億円増」市試算に「捏造」
 市長指摘で財政局長が謝罪

 職員、報道に責任すり替え
 国会代表質問でも筋違いの反論
 専門家冷ややか「情報開示を怠った市長こそ問題」

リードは下記のとおり。

 大阪市を廃止し四特別区を設置することの是非を問う住民投票は一日投開票される。だが、直前になってドタバタが。市当局が出した「廃止なら年間200億円分の財政コスト増」との試算に松井一郎大阪市長が激怒。市財政局長が「捏造だった」と謝罪会見をしたのだ。維新側は、国会の代表質問まで利用して火消しに必死だが、この不穏すぎる状況の背景には何があるのか。

 以上の見出しとリードで、何が問題となっているかがわかるだろう。そして結論が、以下の「デスクメモ」だ。

 「松井市長は特別区の収支は黒字になるとしてきた。それだけに、年二百億円もコスト増になるという試算は、許せなかったのだろう。だからこそ、市財政局長に「捏造」とまで言わせて謝罪させたということか。だが世間には、その強列な火消しぶりの方が目に焼き付いたはずだろう。」

 つまりは、仮に住民投票の結果、大阪市廃止が実現するようなことがあれば、財政コスト増が生じる。その額は現状に比較して年間218億にも達するというのだ。素人の算定ではない。プロ中のプロと言ってよい大阪市財政局の試算なのだ。この試算が絶対ではないことも、記事には書き込まれているが、「有力な試算」であることには疑問の余地がない。

問題は二つある。一つは、このような有力な「大阪市廃止のデメリット」に関して、提案側が責任ある説明を回避していること。【専門家冷ややか「情報開示を怠った市長こそ問題」】という見出し。大阪市民に、「大阪市廃止の是非判断に関する情報」が提供されていないのだ。市民は、「廃止のメリットとデメリット」の両者を比較して賛否を決める。ところが、市長から市民へは、「メリット情報だけが伝えられ、デメリット情報は隠匿されているのだ」。住民投票の主役は、投票する市民でなければならないが、実態は市長が諮問を操作しているのだ。東京新聞の記事は、そのことをよく抉り出している。

問題のもう一つは、「維新流不穏な火消し」の見出しに見られる、情報操作の強引なやり方である。なりふり構わぬ手口に。局長を恫喝して試算を撤回して謝罪させ、国会代表質問でも筋違いの反論をぶち上げる。その体質を問題としている。

不利な情報の隠匿・改ざんは、まるでアベ政権なみだ。その点では同様の体質。しかし、アベは、下僚に忖度をさせた。ところが維新には、下僚が忖度してくれない。そこで、強権発動となる。東京新聞の記事は、これに怒っている。怒りが、立派な記事の原動力だ。

「一般的に、住民が多ければ多いほど行政の仕事は効率が上がり、一人当たりのコストが割安になる。大阪都構想は現在の市を四つの特別区に分割する。では、現在の人口を四分割して試算するとどうなるのかー。毎日新聞記者のそんな取材に応じ、市が『スケールメリツトを端的に表し、意味があると思って出した数字』(東山局長)だった。」が、同局長は松井市長の逆鱗に触れ「あり得ない数字だろ、虚偽だろ」と指摘されて、メディアに対して「捏造だった」とまで言わせられたのだ。

記事中のコメンテーターの言が良い。

 政治評論家の森田実氏は「国民の負託を受けた国会議員が大阪の問題を(代表質問で)長々と弁ずるのはナンセンス」とばっさり。馬場氏が毎日新聞批判をしたことも「住民投票で形勢が悪くなりそうだとなると、維新の延命のために国会でデタラメをいう。国会議員としての誇りも品もない。辞職すべきだ」と痛烈に批判する。

 都構想問題に詳しい立命館大学の森裕之教授(地方財政学)は「四特別区への分割は例えるなら、一家四人の暮らしから、一人一人が家を持つようなもの。教育や福祉などの標準的な住民サービスを維持するためのコストは増えるが、増加分に対する国の補助はない。それで二百億円増加というわけだ。当局の試算も毎日の報道もその限りでは間違っておらず、松井氏の印象操作ははなはだしい」と憤る。森氏も同様の試算を他の研究者ど進めており「政令市でなくなることで減るコストも数十億円分あり、それを合算するとコスト増は二百億円を下回りそうだ」という。だが、「そもそも財政状況がどう変わるかきちんと試算するのは市長の責任。それを怠った松井氏の怠慢こそが問題だ」と話す。

「維新側のなりふり構わない姿勢は異様だ。東山局長の謝罪会見を聞いたジャーナリストの吉富有治氏は「森友学園」をめぐる公文書改ざん問題が重なったという。「松井市長の言い分が正しいと仮定するなら、職員の過ちの責任は松井氏にあり、市民への背信として松井氏がまず謝罪すべきなのに、部下をねじふせて『誤った考えに基づき試算した』とまで言わせた。メディアや職員に責任をすり替え、都合の悪い情報はうそをついてもつぶす。自らを責任のらち外に置き、敵をつくって批判しては勢力を広げてきたのが維新のやり方。今回も賛成多数となれば『勝利』と、なりふりかまわぬその手ロが国政に広がる可能性がある。まゆにつばをつけて警戒すべきです」

厳しいが、全て同感である。明日の投票の結果に期待したい。

「大阪市廃止」の住民投票、最新世論調査で賛否逆転。

(2020年10月25日)
11月1日、来週の日曜日に、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う大阪市の住民投票が行われる。もっとも、この投票で「大阪都」が生まれるわけではなく、府民の意見が聞かれているわけでもない。大阪市選挙管理委員会による正式な名称は、「大阪市廃止・特別区設置住民投票」である。もちろん、ここには「大阪都構想」の文字はない。問われているのは「大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する」ことの是非である。

この住民投票が注目されているのは、もっぱら維新の政治的影響力のバロメータとしてである。2015年の前回投票では、維新が「自・公・共」を相手にたたかって敗れた。最近の地元での維新の勢いを背景にした、再度の住民投票だが、今回は公明が鞍替えし、「維・公」対「自・共」の争いとなっている。

これまで、賛成派が断然優勢とされていたが、反対派との差は縮小しつつあると報じられてきた。そして、本日(10月25日)の世論調査結果の速報で、僅差ながらも賛否が逆転したという。これは、大きなニュースだ。

毎日新聞(デジタル)の本日16時09分(最終更新18時52分)の記事は、次のとおり報じている。

大阪都構想 反対が賛成上回る 9月上旬の前回調査から賛否逆転 世論調査

 大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」について、毎日新聞は23~25日、大阪市内の有権者を対象に電話による2回目の世論調査を実施した。都構想への賛否は反対が43・6%で、賛成の43・3%を上回った。賛成49・2%、反対39・6%だった9月上旬の前回調査から賛否が逆転した。11月1日に投開票される住民投票に向け、賛否は拮抗している。

 調査は大阪市の有権者を対象に共同通信社、産経新聞社、毎日放送、関西テレビと共に実施。データは共有し、分析・記事化は各社で行った。コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法を用い、実際に有権者がいる世帯にかかったのは1446件、うち1043人から回答を得た。

毎日だけでなく産経も共同して行った世論調査。これを産経がどう報道しているか。ちょっと面白い。

産経(デジタル)は、本日16:40に第一報を配信した。その見出しが以下のとおり。毎日と共通する内容である。

大阪都構想の世論調査、約1カ月半前と賛否逆転

ところが、18:23の配信記事では見出しがまったく変わっている。

大阪都構想、有権者は高い関心 8割超が「投票に行く」

 ほとんど同じ内容の報道で、見出しを変えたのが興味深い。「賛否逆転」が、大きなインパクトを持つ人目を惹く見出しであることに疑問の余地はない。記者としては、こう見出しを付けたいところ。しかし、この見出しは反対派を勢いづけることになりはしまいか。あるいは、賛成派からのクレームを招く恐れはないか。忖度の結果の見出し変更ではないかと想像させる。その産経記事の抜粋を引用する。

(産経新聞)16:40
 産経新聞社は23〜25日、大阪市内の有権者を対象に電話による世論調査を実施した。大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪都構想については反対43・6%、賛成43・3%と拮抗した。9月4〜6日の前回調査では賛成(49・2%)が反対(39・6%)を9・6ポイント上回っていたが、反対が巻き返した。吉村洋文大阪府知事を「支持する」とした人は65・5%で、前回より10・0ポイント減少した。

 今回、都構想に賛成する理由のトップは「二重行政が解消されるから」の35・8%で、前回比8・8ポイント減。次いで「思い切った改革が必要だから」の23・8%(同4・8ポイント増)だった。

 反対理由で最も多かったのは「メリットが分からないから」の30・8%。「大阪市がなくなるから」(21・3%)、「住民サービスが良くならないから」(15・3%)が続き、それぞれ前回比5・3ポイント増、3・5ポイント増だった。反対派が、大阪市が廃止されると住民サービスが低下するなどと訴えていることが影響しているとみられる。

 この世論調査結果は、反対派の宣伝活動が、大きな成果を上げていることを物語っている。バラ色の「大阪都構想」のメッキが剥げかかっているのだ。

ポピュリズム政党・維新は、今やアベスガ政権の走狗となって、改憲勢力の一翼を担おうとしている。11月1日の大阪市住民投票の結果は、憲法の命運にも関わる。反対派の奮闘を期待して已まない。

日本国憲法を大切に思う有権者は、けっして維新に投票してはならない。

いよいよ参院選に突入である。日本国憲法の命運にかかわる選挙戦。本日(7月5日)の各紙は、安倍政権を問う」「改憲3分の2が焦点」「争点は、年金・増税」とほぼ共通している。

驕る平家は久しからず。長すぎるアベ政権の綻びは明らかで、有権者はウンザリのはずなのだが、アベは、政治の安定」を売り物としての延命策。なんという開き直りよう。なんというふてぶてしさ。なんという図々しさ。

ところで、多くの政党・政派が有権者の支持獲得を競っているが、各政党は一本の物差しの所定の目盛りに位置している。大雑把にいえば、最も右に自民党が、最も左に共産党が位置して、その中間にそれぞれの政党が、あるいは自民寄りに、あるいは共産寄りに、ふさわしい位置を占めている。

本日の朝日が、これを図示している。「朝日と東大谷口研究室」の共同調査による、「候補者 読み説く」という記事。いくつもの指標で、13もの政党の立ち位置を図示しているが、最も目を惹くのは、憲法改正に関する各党の積極度。

常識的には、改憲積極派の最右翼が自民党で、その対極の積極護憲派の位置に共産党がある。その両極の間の自民寄りに公明党、共産党寄りに立憲・国民などがある。この常識は、大きな間違いがない。

ところが、朝日の改憲度物差しの図示には、驚くべきことがある。右翼自民よりも、さらに右に位置する政党がある。なんとそれが維新なのだ。維新こそが自民党を凌ぐ積極改憲派なのである。

念のため、改憲派⇔護憲派》の位置関係を順に並べてみると、次のとおり。
維新・自民・公明・国民・立憲・れ新・共社 の順となる。

そして、自民と公明の間は、かなり大きく開いている。ここに、紛れもない右翼の「N国」や、何ものかよく分からない「安楽死の会」などの諸派が入る。

なるほど、維新と共産。これは改憲・護憲軸の両極端、水と油なのだ。そういえば、最近維新が共産に絡む事件が目につく。取りようによっては、維新の自民党への媚びであり、すり寄りの手段のようでもあるが、本来この両党は本質的に相性が悪いのだ。

通常国会閉幕直前の本年6月25日、野党4党1会派が、共同で衆院本会議に内閣不信任案を提出した。これに、維新は反対に回り、足立康史が反対討論をした。足立が登壇すると、与党席から拍手が起こったという。

足立の演説は驚くべきものだった。アベ内閣が国民の信任に値するものであるか否かの、メインテーマには直接触れずにこう述べ、その行動の基準が、反共にあることを明言したのだ。

「念のため申し上げますが、私たち日本維新の会は内閣不信任決議案に反対と申し上げたのは、別に自民党や公明党と行動を共にしたいからではなく、共産党と同じ行動を取るのが、死んでもいやだからであります!」

通常国会閉会後の6月30日、ドワンゴとヤフー共催によるネット党首討論で、維新の松井代表と、共産党の志位委員長との間に、こんなやり取りがあった。
https://www.youtube.com/watch?v=Wdm4c7NCqlc

司会:松井さん、お願いします

松井:今、消費増税のお話がありました。これはもう、他の政党の皆さん、そうなんですが、2011年復興増税の折には増税の負担を国民の皆さんにお願いする限り国会議員が、すべての国会議員で身を切る改革をやろうと。ということで、いっとき2割カットがスタートしたのに、今は元に戻ってしまっております。
 まず国民の皆さんに負担をお願いするのなら、自分たちが自分たちの身分を見直すべきだと思いますが、志位さん、どうでしょうか。

志位:あの、私たちは消費税を国民に押し付ける代わりに自分たちの身を切るというのは、これは理屈が違うと思います。身を切れば増税を押し付けていいんでしょうか? そんなことにはならない。ただ、私たちはたとえば、政党助成金、317億円。これ、各党が取っているわけですが、松井さんのところもたくさん貰っていると思います。

松井:いや…、活動経費に…(聞き取れず)
志位:これ全部返上したらいかがですか? 私たちは廃止を求めておりますし、私たちは受け取っておりません。まず身を切ると言うんだったら、まずそこから取り組んだらいかがですか?
松井:いや、それは…

7月3日、日本記者クラブ主催「党首討論会」でもこんな場面があった。
https://www.youtube.com/watch?v=DQgu5yni7rI

松井:前の総選挙のときの党首討論で、国会議員が領収書なしでもらえている文書通信交通滞在費は見直すべきだ、せめて領収書公開しようと提案したとの話があり、「その折、志位さんはやるといったが、あれからもう2年が経過している。今のところ、知らぬ存ぜぬで、これはまったく実行されていない。志位さんの公約というのはそういう軽いもんなんでしょうか」

志位:共産党ウオッチャーで有名な松井さんがご存じないというのは驚きましたが、私たちはホームページで、文通費の使途をすでに公開しております。公表した通り、文通費の趣旨を踏まえて活用し、人件費と選挙には使っておりません。会計処理はすべて、領収書と伝票に基づいて行い、領収書と伝票を保管しており、ルールができればいつでも提出する用意はあります。

 …領収書、私、維新の会についてちょっと調べてみたんですが、ここに持ってきた杉本和巳議員の使途報告書は、100万円の文通費の全額を杉本議員自身が支部長を務める政党支部に入れており、領収書はこの2枚付いておりますが、領収書を発行したのも杉本議員、領収書を受け取ったのも杉本議員、何に使われたのかはまったくのブラックボックスです。この使途が何かが大事なのであって、使途を公表して初めて公表したといえるのではないでしょうか。

 この問題についてもう一言申し上げますと、先ほど「身を切る改革」ということ議論になりましたが、そんなに身を切るのがお好きなら、政党助成金を返上したらいかがと、私は思います。

こういうのを、みごとな「切り返し」「返り討ち」というのだろう。あるいは、「効果的逆襲」「ブーメラン効果」「ツケが回る」「形なし」「ぐうの音も出ない」「身から出た錆」…。維新には党首の発言にファクトチェックの助言をする態勢がないのだろうか。いずれにせよ、憲法を大切に思う有権者は、けっして維新に投票してはならない。
(2019年7月5日)

丸山穂高と斎藤隆夫。泉南と但馬、その有権者が問われている。

一躍勇名を馳せて《超有名政治家》となった維新公認当選の丸山穂高。なかなかユニークなお人のようだ。

北方領土返還実現のためには戦争が必要で、「戦争なんて言葉を使いたくない」などと生温いことを言っているようでは、「でも(そんなことでは)取り返せないですよね」「戦争をしないとどうしようもなくないですか」と言ってのけた。酔余の妄言か、幼児性の発露か、はたまた戦争賛美の確信に基づいた素面の発言か。いずれにしても、この上なく危険で、国会議員としてふさわしくない。

それだけではない。昨日(5月22日)には、丸山議員 ロシア女性紹介しろ」「大声で卑猥な言葉繰り返す(北海道新聞)と見出しを打たれる醜態も明らかとなっている。

ビザなし交流訪問団の一員として訪れた国後島で、戦争による北方領土の奪回に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員(大阪19区)が、同島の宿泊施設「友好の家」に滞在中、団員に対し「ロシア人女性の店に行こう」という趣旨の発言をし、単独行動が認められていないにもかかわらず何度も外出しようとして政府関係者らに止められていたことが22日、分かった。」

「丸山氏は11日夜、友好の家の食堂で団員10人程度が懇談していた際、大声で卑猥な言葉を数回繰り返した。その後、丸山氏は食堂の端で同行記者2人の取材を受けていた大塚小彌太団長(90)に対し、『戦争でこの島を取り返すのは賛成か反対か』と語りかけた。」

週刊文春報道での丸山の言動は、さらにえげつない。
「丸山氏は“戦争暴言”の後、『俺は女を買いたいんだ』と禁じられている外出を試み、事務局スタッフや政府関係者ともみ合いになったという。売買春は日露両国で共に違法行為である。」

丸山穂高、その行為や恐るべし。もしかしたら、単なる常習泥酔者の「うっかり本音」なのかも知れないが、それならなおのこと、こんな人物が議員となっている現実が恐ろしい。

丸山穂高は、大阪19区選出の35歳だという。大阪19区とは、貝塚市・泉佐野市・泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町の、泉南地域4市3町。今や、泉南の恥である。こんな人物を当選させたことを地元有権者は真剣に反省しなければならない。もっとも、丸山だけではなく、維新の幹部・議員や候補者には問題人物山積である。維新の責任重にして、かつ大なるは、指摘するまでもない。

想起するのは、よく似ているようで真反対の事例。「反軍演説」で帝国議会を除名になった立憲民政党の斎藤隆夫のこと。1940年2月2日、帝国議会衆議院本会議において彼が行った演説は、日中戦争に対する根本的な疑問提起と、軍部批判を内容とする「反軍演説」として知られる。彼は、聖戦を冒涜したとして、同年3月7日の本会議決議によって議員除名となる。除名決議の票決内容は、賛成296、棄権121で、反対はわずか7票であったという。

しかし、彼の選挙区である兵庫県5区(但馬選挙区)の有権者は、反軍演説で除名の斎藤隆夫を誇りとした。次の1942年の翼賛選挙に斎藤は非推薦で立候補してダントツのトップ当選(当時は中選挙区・定員4名)を果たしている。当局や右翼の妨害をはねのけてのこと。

いま、有権者の質が問われている。丸山穂高を議会に送ったのも、斎藤隆夫を再び議員に押し上げたのも、地元選挙区の有権者である。泉南と但馬、いま国民の目は、雲泥の差ありとして両地域を見ている。
(2019年5月23日)

野村修也懲戒。橋下徹の責任をこそ思い起こそう

野村修也という弁護士がいる。もともと商法の研究者で中央大学法科大学院教授とのこと。特例弁護士(「司法試験に合格し司法修習を終えた者」以外の弁護士)として、2004年に第二東京弁護士会に登録されている。その野村弁護士が、本日(7月17日)二弁から懲戒処分を受けた。業務停止1か月である。

私は、この人と面識はなく、恩も怨みもない。だから、個人的な感情を交えずに、感想を率直に述べることができる立場にある。そのような立場の一弁護士としてこの懲戒処分に一言申し述べておきたい。

この懲戒請求事案が、「懲戒」の結論となったことをまずは喜びたい。これが、「懲戒しない」の結論となっていたら、弁護士会の明らかな失態であったろう。弁護士に対する世人の信頼は大きく揺らぎ、弁護士とは所詮その程度のものかと見られることになったに違いない。
もっとも、処分の量定は軽きに失した感がある。また、懲戒請求から処分まで約6年を要したことは、いかにも遅いとの印象。もっと迅速に懲戒すべきであったろう。

経過の概要の理解のために、簡にして要を得た日経記事を引用する。

「大阪市が職員に回答を義務付けた組合活動に関する記名式のアンケート調査を巡り、第二東京弁護士会は17日、市特別顧問として調査を担当した野村修也弁護士を業務停止1カ月の懲戒処分にしたと発表した。
 同会によると、野村弁護士は2012年1月に市特別顧問に任命され、市職員の違法行為を調べる第三者調査チームの責任者としてアンケートを実施。組合活動の有無や政治家の応援への参加歴などを尋ねたことが、団結権やプライバシー権、政治活動の自由などの基本的人権を侵害していると認定し、弁護士の「品位を失うべき非行」に該当すると判断した。野村弁護士は同会に対し、「当時は必要かつ有益な調査だった」と弁明したという。
 調査は当時の橋下徹市長が職務命令で回答を義務付け、正確に答えない場合は処分対象になりうるとした。大阪府労働委員会が「(組合活動への)支配介入に該当する恐れがある」と調査の一時停止を勧告し、市も調査を凍結。アンケートは未開封のまま廃棄された。
 調査を巡っては、市職員や労働組合が提訴し、プライバシー権や団結権の侵害を認めて市に賠償を命じる判決が確定している。」

「市職員や労働組合が提訴し」た大阪市に対する国家賠償請求事件は大阪高裁判決で確定している。その判決を報じる毎日新聞の記事を引用しておく。野村は、1審では、責任を認められていたが、控訴審では責任を免れたのだ。

毎日新聞(2015年12月17日)

「職員アンケート5問違法、大阪市に2審も賠償命令

 橋下徹・大阪市長の指示で市が職員約3万人を対象に実施した、労働組合や政治活動への関与など22問に記入するよう義務付けたアンケートをめぐる訴訟の控訴審判決が16日、大阪高裁であった。中村哲裁判長は1審・大阪地裁に続き、設問のうち5問を違法と判断。国家賠償法に基づき、市に対し、原告の職員29人と5労組に1審のほぼ倍額の約80万円を支払うよう命じた。
 判決によると、1審と同様、22問のうち5問について、憲法が保障する団結権やプライバシー権を侵害したと認定。プライバシー権侵害を認定されていた「特定の政治家を応援する活動に参加したか」「特定の選挙候補者の陣営に知人を紹介するカードを配られたか」の2問については新たに「橋下市長が労組の政治的関与を非難する発言を繰り返す中、地方公務員法に抵触しない範囲でできる政治的行為を萎縮させる」と判断。「政治活動の自由と団結権も侵害した」と認定した。
 一方、橋下市長から依頼されて設問を作成した市特別顧問(当時)の野村修也弁護士については、「アンケートの作成と実施に関与した『公務員』というべきだ」と指摘。「個人として民事上の賠償責任は負わない」とし、賠償責任を認めた1審判決を覆した。

弁護士は、人権擁護を職責とする。クライアントの依頼内容が人権侵害を伴うときには、依頼者を説得し指導しなければならない。人権感覚を欠いた大阪市長からの依頼を受ける以上は、市長を説得し指導する覚悟がなければならない。野村に、十分なその覚悟があったか。

そして、改めて橋下徹の責任を思い起こさざるをえない。当然、維新は同罪である。野村よりは、橋下の責任が大きい。野村の不運は、何の覚悟もないままに、橋下徹というクライアントに迎合したことにある。アンケートという名の思想調査は3万人の職員に強制されていた。その強制は橋下徹によって行われたのだ。

野村弁護士懲戒に際して、あらためて橋下徹が6年前に何をしたのかを思い起こしたい。下記が、橋下が市長として市職員3万人にアンケート調査に応ずべきことを指示した通知である。

2012年2月9日

職員各位

アンケート調査について

 市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて、次々に問題が露呈しています。
 この際、野村修也特別顧問のもとで、徹底した調査・実態解明を行っていただき、膿を出し切りたいと考えています。
 その一環で、野村特別顧問のもとで、添付のアンケート調査を実施いただきます。
 以下を確認の上、対応よろしくお願いします。
1)このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。
 正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。
2)皆さんが記載した内容は、野村特別顧問が個別に指名した特別チーム(市役所外から起用したメンバーのみ)だけが見ます。
 上司、人事当局その他の市役所職員の目触れることは決してありません。
 調査票の回収は、庁内ポータルまたは所属部員を通じて行いますが、その過程でも決して情報漏えい起きないよう、万全を期してあります。
 したがって、真実を記載することで、職場内でトラブルが生じたり。人事上の不利益を受けたりすることはありませんので、この点は安心してください。
 また、仮に、このアンケートへの回答で、自らの違法行為について、真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な量定を軽減し、特に悪質な事案を除いて免職とすることはありません。
 以上を踏まえ、真実を正確に回答してください。
以上

    大阪市長 橋下徹

このアンケート調査強行のあと、2012年中に4回にわたり計656人から、野村弁護士に対する懲戒請求があったという。二弁は、回答を強制されたアンケート調査が、職員の団結権、プライバシー権、政治活動の自由の侵害等、憲法や労働組合法に違反する内容が含まれていたと認定し、野村について「弁護士の品位を失うべき非行」に当たると判断したが、これは橋下徹の責任をも認めたに等しい。

公権力を用いて職員の思想調査を強制する人物が、大阪府知事にもなり、この事件後も大阪市長として再選され、いまだに社会的発言を続けている。本来は、大阪市民、大阪府民が橋下や維新を選挙で裁くべきだったのだ。それができないままの民主主義の現状を嘆かざるを得ない。
(2018年7月17日)

スラップ被害者に「同憂相救う」の連帯を呼びかける。― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第117弾

松井一郎の米山知事に対するスラップ提訴(12月6日)に続いて、今度は橋下徹がジャーナリスト岩上安身にスラップを仕掛けた(12月15日)。岩上の記者会見は1月22日。これについて、リテラが昨日(1月24日)付で詳しく報じている。
http://lite-ra.com/2018/01/post-3754.html

「橋下徹がリツイートしただけの岩上安身を名誉毀損で見せしめ提訴! 松井府知事の新潟県知事“誤読”提訴に続きスラップ攻撃」というタイトル。

なるほど、松井一郎のスラップは「誤読提訴」で、橋下徹のは「見せしめ提訴」なのだ。両訴訟の代理人弁護士は同一人。弁護士法人橋下総合法律事務所所属の弁護士。

松井スラップは、客観的には「誤読提訴」だ。1月19日の当ブログ、「これはこれは―知事が知事を被告にスラップ訴訟」を参照されたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=9780
頭を冷やしてツイートを読み直してみれば、誤読は明らかだろう。それでも、あえて提訴までした意図は、社会に「松井を批判すると面倒なことになるぞ」という警告を発して威嚇することで、自分を批判する言論の抑止効果を狙ってのものと考えざるをえない。決して、毀損された名誉を回復する手段としての提訴ではない。

橋下スラップは、文字通りの「見せしめ提訴」だ。しかも、極めて安直な「お手軽提訴」でもある。リツイートのクリックひとつに対して110万円の請求。東京在住の被告に対し、大阪簡裁への提訴にもいやがらせ効果。まずは、東京への移送問題が前哨戦となる。

この訴状、請求の趣旨と請求原因の記載が、合わせてわずか3頁だという。この種の訴状は、極めて安直に書けるのだ。「被告の表現行為を特定し、この表現が原告の名誉を毀損したので、慰謝料と弁護士費用の損害賠償を求める」と言えば足りることになっている。

「当該の表現によって毀損される名誉よりも表現の自由の価値が優越する」という被告の立場は、公共性・公益性・真実(相当)性の違法性阻却3要件を立証してはじめて認めるられることになる。これが、我が国の名誉毀損訴訟の実務の実態なのだ。

だから、訴状は実に安直に書ける。しかし、答弁書は安直には書けない。違法性阻却3要件の主張挙証責任は、あげて被告に背負わされることになるからだ。提訴されたら、面倒極まりないという現実がある。そこが、スラップ横行の土壌となっている。

私は、DHC・吉田嘉明から、典型的なスラップ訴訟をかけられた。吉田は、提訴時には2000万円の請求で私を黙らせようとした。私が黙らず、当ブログでDHCスラップ訴訟を糾弾する記事を掲載し続けるや、2000万円の請求金額は6000万円に跳ね上がった。明らかに、黙らせることが目的の提訴なのだ。

DHCスラップ訴訟は私が完全勝訴して確定し、今反撃訴訟が始まったところである。なお、DHCスラップ訴訟に関連する記事は120件ほどになる。是非、下記のURLでお読みいただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?cat=12

私に対するDHC・吉田嘉明の6000万円請求訴訟が古典的な大型スラップで、橋下の100万円訴訟が、お手軽・お気軽の新種小型スラップといえよう。吉田は請求金額で恫喝し、橋下はその手軽さで「見せしめの数」を恃もうということだろう。

私はかつて、万国のブロガー団結せよと訴えた。
万国のブロガー団結せよ-『DHCスラップ訴訟』を許さない・第2弾
http://article9.jp/wordpress/?p=3061

「万国のブロガー団結せよ」再論
http://article9.jp/wordpress/?p=6127

あらためて、この事態にスラップ被害者の連帯を呼びかけたい。勇ましくはなく、「同病相憐れむ」「同憂相救う」の互助精神から。

『呉越春秋・闔閭内伝』に、“復讐に生きた”伍子胥の言葉として、「同病相憐れみ、同憂相救う」が語られているという。父と兄とを殺した仇敵である楚の平王に燃える復讐心を抱いていた、あの伍子胥である。呉の力を借りて復讐を遂げ、亡き平王の墓をあばいて屍にむち打った人物が「同憂相救う」といっている。

私には水に落ちた犬を打つ趣味はないが、理由なく吠えられたら、吠えた犬には仕置きが必要だと考える。同じく吠えられた同士、「同憂」を抱える者として、「相救う」連帯を申し出たい。

情報を交換し、事蹟を集積し、対抗理論を検討し、そしてともに世論に訴えようではないか。表現の自由こそは民主主義社会を支える基礎である。これを失墜させようという輩への対抗においての連帯を。

この件についてのリテラのまとめに、賛成する。
「批判勢力を吊るし上げ、言論人やメディアを名指しながら罵倒して大衆を煽動する手法は、いまや、アメリカのトランプ大統領の戦術として知られるが、もともと橋下氏が政治家時代から繰り返してきたことだ。」「彼らにどんな思惑があるにせよ、こんなやり方を許してしまったら、日本の言論の自由が脅かされることになる。政治的スタンスとは関係なく、メディアは徹底的に批判していくべきではないか。」
(2018年1月25日)

これはこれは―知事が知事を被告にスラップ訴訟

報道によると、「2017年12月6日、日本維新の会代表の松井一郎・大阪府知事が、新潟県の米山隆一知事に550万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した」。提訴の理由は、「大阪府立高の頭髪指導訴訟をめぐるツイッターの投稿(2017年10月29日)で名誉を傷つけられた」ということ。「本年1月18日、米山知事がこのことを自身のブログで公表した」という。

知事が知事を訴えたのだ。濫訴時代の到来を予感させる事態。そして、問題の名誉毀損言論は、ツィッターだ。いかにも、今日的なお膳立て。衆人環視の中での短い文章のやり取りが売り言葉に買い言葉となって、論争の舞台を裁判所に移したというわけだ。

この事件の原告となった松井知事は、1月18日大阪府庁で記者団の取材に応じ、提訴の事実を認めて、次のように語ったという。
「ツィッターで人を馬鹿にしたようなことを言うからね、彼(米山知事)も今はもう公人なんだから、公人として不特定多数の皆さんに事実でないことを掲げて、人を馬鹿にするということをやれば、それに対して、きちっと反省していただく。」

いささか軽すぎる印象ではあるが、原告松井側の言い分は、「被告米山が不特定多数に対して『事実でないことを掲げて』、人を馬鹿にした」ということだ。公然事実を摘示して、他人の名誉を毀損した、というわけだ。

これに対する被告米山側の反論は、次のとおりホームページに掲載されている。
①そもそも私のツイートが松井府知事に対するものだとの松井府知事の主張は誤読であり、私のツイートは松井府知事に対するものではなく、当然ながらその名誉を棄損するものではない。
②仮に私のツイートが松井府知事に対するものだと解する余地があるとしても、その後再三にわたってツイッター上でそうでない旨説明しており、既に誤読の余地はない。
③仮に私のツイッター上の説明をもってしてもなお、松井府知事の主張する誤読の通りだと解する余地があるとしても、その誤読自体松井府知事と日本維新の会に対する言論の自由の行使としての正当な論評であり不法行為に当たらない。

もっとも、これだけでは何のことだかよく分からない。

三浦瑠璃という人物(政治学者)のツィッター発言が先にあり、名誉毀損とされる米山ツィッターは三浦発言に対してなされた言論で、松井知事宛のものではない。

三浦発言の内容は、「大阪府立高3年の女子生徒が2017年、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう教諭らから指導されて精神的な苦痛を受けたとして、府を相手取り、約220万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした」件について、被告大阪府を批判する立場からのものだった。

三浦のツイートは「まあどんな1984年に迷い込んだんだとおもうよね。私が公教育でときどき体験したあの感じを思いだす。支配への従順さを強要する態度。染める行為に従順さを見出し満足するという教師として最低の態度。」というもの。

これに対して、米山がこう呟いたのだ。
「因みにこの『高校』は大阪府立高校であり、その責任者は三浦さんの好きな維新の松井さんであり、異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足するという眼前の光景と随分似ていて、それが伝染している様にも見えるのですが、その辺全部スルー若しくはOKというのが興味深いです」
このツイートが、名誉毀損言論とされた。

三浦が、府立高教師の「支配への従順さを強要する態度」を不快とした発言に対して、米山が「異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足するという眼前の光景」に似ていると軽く揶揄したもの。

このツイートに、松井が反応した。「米山君、いつ僕が異論を出した党員を叩き潰したの?君も公人なんだから、自身の発言には責任取る覚悟を持ってるでしょうね。いつ僕が異論を出したものに恭順を誓わせたのか説明して下さい。」と出てきた。

明らかに、松井は米山ツイート中の、「異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足する」の主体を原告松井自身と判断してのこと。

これに、米山が弁明する。
「どこにも松井さんとは書いていないのですが…。文章上分かりづらかったなら恐縮ですが、状況上誰かは言わずもがな当然松井さんもご存知と思います。叩き潰していないという理屈は勿論言われるのでしょうが、あれだけ衆人環視で罵倒されれば、普通の人は異論は言えないと思います。違いますでしょうか?」

「状況上誰かは言わずもがな」とは、「松井さん、あなたを指しているのではなく、橋下徹さんのことだとお分かりでしょう」ということなのだ。「あれだけ衆人環視で罵倒されれば、普通の人は異論は言えないと思います。」とは、報道によってよく知られた事実を指している。「橋下氏は当時、衆院選直後に『衆院選総括と代表選なしに前に進めない』などとツイートした同党所属の丸山穂高衆院議員(大阪19区)と対立。『代表選を求めるにも言い方があるやろ。ボケ!』とTwitter上で激しく反発していた。」ということ。

しかし、松井はこの弁明に納得しない。「話をすり替えるのはやめなさい。僕がいつ党員の意見を叩き潰したのか?恭順させたのか?答えなさい。」と言い募る。そして、もう一つが、「僕が『生徒指導は適法』としていると報道から把握しているとされていますが、何処の報道でしょうか?僕は生徒指導は適法なんて一言も言っておりません。」という点。

せっかく論戦の場ができているのだから、お互い言論の応酬を徹底すればよい。ところが、松井は言論戦継続ではなく、提訴を選んだ。この姿勢は残念というほかはない。

この点を米山は、
「私は、この様な訴訟は、憲法で保障された言論の自由(憲法21条)を強く委縮させ、事実上、松井府知事、松井府知事が代表を務めるおおさか維新の会、日本維新の会への正当な批判を極めて強く委縮させる効果があるものであり、訴訟それ自体の成否を度外視して批判を抑圧するためになされる所謂SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation:批判的言論威嚇目的訴訟)であるとの疑いを禁じえないとの念を抱いていることも、併せて申し上げさせて頂きます。」と言っている。

DHC・吉田嘉明からスラップ訴訟を起こされ、恫喝された私の経験から、松井の提訴をスラップという米山意見に賛同する。「批判的言論威嚇目的訴訟」というスラップの訳語もよくできていると思う。

この訴訟は、「公的立場にある者の、批判の言論に対する不寛容」という問題と把握するしかない。「今後容認し得ない私に対する批判には、誰であろうとも、遠慮なく訴訟を提起するぞ」という威嚇効果を持つからだ。

法律論としては、当該の言論が被告松井の社会的評価の低下をもたらしたものかがまず問題になる。この訴訟の判決は、この点を否定して棄却となる公算が高い。

名誉毀損、つまりは社会的な評価の低下の有無は、「一般読者の普通の注意と読み方」を基準として判断される。「原告松井の名誉が毀損された」は、米山の弁明も踏まえれば無理筋だと考えざるをえない。

仮に、原告松井側がこの点のハードルを越えたとしても、違法性阻却3要件(公共性・公益性・真実(相当)性)具備の判断がなされる可能性はきわめて高い。

実務上の問題点は、「名誉毀損表現が事実の摘示か、意見・論評か」ということとなる。
「異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足する」は「一般読者の普通の注意と読み方」からすれば、直接的には維新の党への名誉毀損表現として原告松井に関連すると考えざるをえないが、否定し得ない前提事実を踏まえての「意見・論評」と解する以外にない。言うまでもなく、政党のあり方に対する批判の「意見・論評」は、高度に尊重されなければならない。

被告米山の側は、政党の党首であり大阪府の知事でもある公人松井についての批判受忍義務論を精力的に展開し、公人に対する政治的言論の自由を古典的に強調することになろうが、勝算十分と考えられるところ。

一方、原告松井の側が、どうしてかくも強気で提訴に及んだのか、理解に苦しまざるを得ない。が、所詮スラップ訴訟とはそのようなものなのだ。

このような「スラップ訴訟」が、早期の棄却判決で決着となるよう期待している。
(2018年1月19日)

《嘘を平気で言う。ばれても恥じない》ー「橋下徹対野田正彰」訴訟 判決紹介

本年(2017年)2月1日付の、「橋下徹」対「新潮社・野田正彰」損害賠償請求事件、上告審の決定書を入手した。橋下から、新潮・野田医師に対する上告を棄却するとともに、上告受理申立も不受理とする三行半の決定。

その原判決が、大阪高裁第5民事部(中村哲裁判長)の2016年4月21日言い渡しの判決。このほどその判決書も入手し一読した。その内容は、紹介するに値するものである。

周知のとおり訴訟は公開で行われるが、その法廷外への公表においては、市井の人のプラバシー保護への十分な配慮を必要とする。しかし、本件判決において話題とされた事項は、政治家橋下徹の政治家としての資質に関する情報である。公的人物の公的関心事にかんする情報として、むしろ積極的に世に知らしむべき内容といってよい。

私は、問題となった雑誌記事はまったく読んでいなかったが、訴訟になったおかげで、野田医師の「誌上診断」と橋下の「病状」を知ることになった。訴訟提起の偉大な効果である。せっかくだから、判決を通じて、何が問題となって、裁判所がどのような理由で橋下の請求を棄却したのか、ご紹介したい。

控訴審判決は、事件の概要を次のようにまとめている。
「本件は、元大阪府知事であった被控訴人(橋下徹)が、精神科医である控訴人野田が執筆し、控訴人会社(新潮社)が発売した月刊誌『新潮45』平成23(2011)年11月号(以下「本件雑誌」という。)に掲載された「大阪府知事は『病気』である」と題する原判決添付の別紙記事(以下「本件記事」という。)によって名誉を毀損されたと主張して、控訴人らに対し、不法行為(民法719条・共同不法行為)による損害賠償請求権に基づき、連帯して、1100万円及びこれに対する不法行為日(本件雑誌の発売日)である平成23(2011)年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、被控訴人の請求のうち、控訴人らに対し、連帯して、110万円及びこれに対する平成23(2011)年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余は、理由がないとしていずれも棄却したことから、これを不服とする控訴人らが控訴した。」

この控訴審判決の主文は以下のとおり。
1 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 上記取消部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、1、2審を通じて披控訴人の負担とする。

つまり、橋下側から見て、一審では一部(請求額の10分の1)勝訴判決だったが、控訴審で逆転し全面敗訴となったのだ。

掲載記事のうち、原告が名誉毀損の言論と主張したのは、A~Dと符号をつけられた4カ所。一審判決は、その内C部分について違法を認めた。

名誉毀損とは、人の社会的評価を低下させることだが、ある言論が人の評価を低下させただけでは損害賠償の責任は生じない。違法な名誉毀損行為だけが責任を生じる。訴訟実務では、被告の側で当該の言論が、真実であるか、真実と信じるについて相当であれば、違法性は阻却される。

本件一審判決は、C部分について、真実であることの立証も、真実と信じるについての相当性の立証も足りないとした。控訴審判決はこれを逆転して、真実であることはともかく、真実と信じるについての相当性は認められる、としたのだ。

「C部分」とは、野田医師が橋下の高校時代のA教諭から得た、橋下の高校時代の行動についてのエピソードである。判決書きの中から拾えば、次のようなもの。
「大掃除の時汚れ仕事から逃げていく。帰ってしまう。地味なことはしない。」、「目と目をあわせることができず、視線を動かし続ける。嘘を平気で言う。ばれても恥じない。信用できない。約束を果たせない。自分の利害に関わることには理屈を考え出す。」「バレーボールで失敗した生徒を罵倒。相手が傷つくことを平気で言い続ける。」、「文化、知性に対して拒絶感があるようで、楽しめない」、「話していても、壁に向かって話しているような思いにこちらがなる」「感情交流ができず共感がない」「伝達、伝言のようでコミュニケーションにならない」「馬鹿にされていると敏感に感じるのか、見返そうとしているようだった」など。

控訴審判決は、「当裁判所は、被控訴人(橋下)の本件請求には理由がないからこれをいずれも棄却すべきものと判断する。」と結論した。その理由として、野田医師が、橋下の「教科のみならず生活指導や進路指導にも関係したA教諭」から本件記載部分Cのエピソードについて聴き取りをした経過を詳細に認定して、「C部分を真実と信じるについての相当性が認められる」としたのだ。

また、判決は、別人が「その取材活動で、Cと重なり合う、同様の事実、たとえば、『体育のバレーボールの時間などに失敗した子を徹底的に罵倒する』、『掃除の時間になるといつの間にかいなくなる』、『校内大掃除などみんなでやる作業も徹底して拒否する』、『約束も守らず友達も少ない』、『ラグビー部の練習をさぼるときに平気で嘘をつき、嘘がばれても全然気にしない』などの事実を得ていた」を認定し、「それぞれ異なる取材であったのに本件記載部分Cのエピソードと別件記事に係る上記内容とが重なり合っていた」としている。

確かに、裁判所の認定は、野田医師の記事の真実性ではなく、相当性(真実と信じるについての相当性)ではある。しかし、ことの性質上、厳密な意味での記事の真実性立証は不可能に近い。本件での相当性の立証は、実は真実性の立証に近いものと言って間違いでない。

野田医師の、橋下に対する「診断」名は「自己顕示欲型精神病質者」「演技性人格障害」という精神疾患であった。関係者に取材して情報を集めての誌上診断であるのだから、臨床診察による診断ではない。また、収集された情報は厳密に立証された事実とも言えない。しかし、それに代わる高校時代の橋下の教師の証言を得るについての真摯な姿勢は、判決が認定しているところである。

そのような真摯な姿勢で野田医師が収集した、「大掃除の時汚れ仕事から逃げていく。帰ってしまう。地味なことはしない。」、「嘘を平気で言う。ばれても恥じない。信用できない。約束を果たせない。自分の利害に関わることには理屈を考え出す。」「バレーボールで失敗した生徒を罵倒。相手が傷つくことを平気で言い続ける。」、「文化、知性に対して拒絶感があるようで、楽しめない」、「話していても、壁に向かって話しているような思いにこちらがなる」「感情交流ができず共感がない」などは、政治家の資質に関わる重要なエピソードではないか。

その意味で、野田医師の記事は社会的に極めて有益な情報なのだ。政治家の名誉を毀損するものとして、これを軽々に違法としてはならない。違法とする判決によって貴重な情報をシャットアウトしてはならない。

「嘘を平気で言う。ばれても恥じない。信用できない。約束を果たせない。自分の利害に関わることには理屈を考え出す。」などという指摘には、橋下に限らず、思い当たる政治家の顔が、いくつも浮かんでくる。

厚顔な輩に負けてはおられない。野田医師も新潮社も、萎縮することなく有益な情報提供を続けていただきたいと願う。先日まで、被告業を余儀なくされていた者として、連帯の意を表明する。民主主義の前進のために。
(2017年2月6日)

『政界三悪党』(自・公・維)の揃い踏み

親分<自民・駄右衛門>

問われて名乗るもおこがましいが
その名もゆかしき「自由」と「民主」
企業と強者の「自由」を唱い
選挙で勝っての「民主」主義。
水清ければ魚棲まず
汚濁のこの世を立ち回り
利権を漁って肥え太り
危ねえ橋も乗り越えて
人の定めは五十年
もはや六十の坂を越え
六十余州に隠れのねえ
悪名とどろく
賊徒の総元締め 自民駄右衛門。

出自をたどれば玉石の
戦後の保守の寄せ集め
次第に戦犯はば利かせ
官僚これに追随し
改憲目指して六十年
いまだ悲願はならないが
せめてバクチは解禁し
賊徒の大義を顕わさん~。

一の子分<公明・下駄小僧雪之助>
知らざあ言って聞かせやしょう
話せば長いことながら
我が身は法蓮華経の申し子で
王仏冥合実現のお努め励んで人となり
政教分離に敵対の
憲法違反と叩かれて
忍ぶ姿も傷ましく
あまたの言論妨害の
悪名背負った幾星霜。
ついには、世論の糾弾を
自民駄右衛門に助けられ
以後は親分には逆らえぬ
哀れなこの身となりはてぬ。

子分に加えていただいて、
「どこまでもついて行きます」と
おかしら忠義の下駄の雪。
かつては「平和」の「福祉」のと
理想を語ったこともある。
今じゃ、かしらの言いなりで
「右と言われれば、まさか左とは言えない」ていたらく
与党の蜜を吸い続け
ズッポリはまった悪の道
いまさらに足抜けできない身の辛さ。

バクチ解禁法案は
賛成すれば、義賊の化粧がはげ落ちて
反対すれば、かしらの怒りを忍びかね
アチラを立てればこちらが立たぬ
ここが思案のしどころで、
両方の顔を立てての自主投票。
小細工あたらず、もしや両者の機嫌を損ねたか。
あっち見こっち見、優柔不断、二股膏薬の
下駄小僧雪之助~。

二の子分<維新・ポピュ太郎>
さてどん尻に控えしは
政界三悪党の新参で
庶民泣かせの法案を
自民に加担で押し通す
その名も「維新・ポピュ太郎」

以前を言やあ大阪で
八百八橋を股にかけ
薄汚い人の心根に付け込んで
闇のホンネを引き出した
弱者イジメの政治が大ウケで
地方政治を乗っ取った
あのおもしろみを忘られず
今度は国をねらっての
重ね重ねの大ばくち。

自民は風除け必要で
公明抱き込む戦略で
自公政権の悪だくみ。
オレから見りゃあ、生温い。
自民を右から引っ張って
自民の悲願の改憲を
オレの力で助けると
ここは恩のウリどころ。

大阪万博夢洲での賭博開帳のそのときは
大金儲けるバラ色の夢をばらまいて
がっぽりゼニを巻きあげる
あとは野となれ山となれ
恥を知らない
ワイが維新・ポピュ太郎だ~。

 

〈議会の三悪党〉
我等三人団結し、切磋琢磨でがんばれば
庶民の願いを蹂躙し、
なんでも実現できそうだ。

年金カットにTPP
賭博の解禁だけでなく
労働法制締めつけて
元気に原発再稼働
産軍学の共同も
海外派兵や武器輸出
沖縄新基地押し進め
悲願の憲法改悪も
けっして夢ではなくなった。
韓国見てればたいへんだ。
民衆決起は恐ろしい。
幸い日本の民衆は
欺され方がお上手だ。

さあ、今日も悪政に精出すぞ。
ぼくらは「悪・党」三人組。
(2016年12月14日)

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