6月8日(金)午前10時15分415号法廷に。 ー DHC・吉田嘉明スラップ訴訟10件の顛末 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第133弾
DHCスラップ訴訟。DHC・吉田嘉明が、吉田批判言論の萎縮を意図して提起した不当極まる典型的スラップ。DHC・吉田嘉明はスラップの常連だが、2014年3月に明らかになった「対渡辺喜美8億円事件」の批判言論封じ目的のスラップは計10件。私に対する提訴は、そのうちの1件である。
私の勝訴が確定はしたが、DHC・吉田嘉明が意図した、「吉田を批判すると面倒なことになる」「吉田嘉明という男は、カネに飽かせて裁判をやって来る」「面倒なことに巻き込まれるのはゴメンだ。だから吉田嘉明を刺激せずに批判は差し控えた方が賢い」という風潮が払拭されていない。そこで、今私は、DHC・吉田嘉明を相手に、スラップ提訴が不法行為となるという裁判を闘っている。これを「反撃訴訟」「リベンジ訴訟」などと言っている。
その反撃訴訟の次回期日が、6月8日(金)午前10時15分から、東京地裁415号法廷での開廷。担当裁判所は民事第1部合議係。
今回の法廷では、DHC・吉田嘉明側が「反訴被告準備書面2」を提出する。そして、反訴原告(澤藤)側から、いくつかの立証に必要な事項について、求釈明をする予定となっている。
今回の法廷は、山場ではない。見せ場もない。それでも、表現の自由やDHC・吉田嘉明に関心のある皆様に、是非傍聴をお願いしたい。どなたでも、なんの手続も不要で、傍聴できる。誰何されることはない。
閉廷後、いつものとおり、弁護団からのご説明や意見交換の機会を持つことになります。然るべき資料も配付いたします。
今回の法廷で陳述となる「反訴被告準備書面2」は全6頁のたいへんに短いもの。
第1 前訴提起に至る経緯
第2 反訴原告準備書面(2)に対する若干の反論
の2節からなっている。
その内、第1節、第7項?8項の全文をご紹介したい。
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平成29年(ワ)第98149号損害賠償請求反訴事件
反訴原告 澤藤統一郎
反訴被告 吉田嘉明,株式会社ディーエイチシー
反訴被告ら準備書面2
平成30年6月1日
東京地方裁判所民事第1部合議係御中
反訴被告ら訴訟代理人弁護士 今村憲
第1 前訴提起に至る経緯
7 訴訟提起した10件の内1件は謝罪がなされたので取下げた。
内1件については,裁判所の和解勧告があり,双方代理人が尽力した結果,相手が事実と異なる表現をしたことを認め,和解金を支払うに至ったので,早期円満解決した。
内2件は一部勝訴し,残部について当然控訴するかは検討したが,相手も控訴せず,素直に判決に従・た。金員を遅延損害金を含めて支払うというので,早期解決のため,控訴しなかった。
内5件については敗訴したが、わが国においては,三審制が採られており,特に本件は前記最高裁判決の射程,解釈に関わる問題を含んでいたこともあり,上級審に救済を求めて,いずれも控訴,上告受理申立てをしたものである。
8 以上のとおり,前訴提起が,違法となる余地など微塵もない。
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これに、少しだけ解説を加えておきたい。
「前訴」とは、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を被告として提起した、6000万円請求のスラップ訴訟のこと。
そして、「訴訟提起した10件」とは、DHC・吉田嘉明が、対渡辺喜美8億円裏金交付事件についての批判者を被告としたスラップ訴訟である。これが、何と10件。その概容は以下のとおり、一見して凄まじい。
1 平成26年(ワ)第9172号
被 告 ジャーナリスト
提訴年月日 2014年4月14日
損害賠償請求額 6000万円
2 平成26年(ワ)第9407号
被 告 ジャーナリスト
提訴年月日 2014年4月16日
損害賠償請求額 2000万円
3 平成26年(ワ)第9411号
被 告 業界紙
提訴年月日 2014年4月16日
損害賠償請求額 2000万円⇒後に1億円に増額
4 平成26年(ワ)第9408号
被 告 弁護士(澤藤)
提訴年月日 2014年4月16日
損害賠償請求額 2000万円⇒後に6000万円に増額
5 平成26年(ワ)第9412号
被 告 弁護士
提訴年月日 2014年4月16日
損害賠償請求額 2000万円
6 平成26年(ワ)第10342号
被 告 出版社
提訴年月日 2014年4月25日
損害賠償請求額 2億円
7 平成26年(ワ)第1 1 3 0 9号
被 告 出版社
提訴年月日 2014年5月8日
損害賠償請求額 6000万円
8 平成26年(ワ)第1 5 1 9 0号
被 告 出版社
提訴年月日 2014年6月16日
損害賠償請求額 2億円
9 平成26年(ワ)第1 5 1 9 1号
被 告 ジャーナリスト
提訴年月日 2014年6月16日
損害賠償請求額 2000万円
10 平成26年(ワ)第1 5 1 9 2号
被 告 ジャーナリスト
提訴年月日 2014年6月16日
損害賠償請求額 4000万円
以上のスラップ10件がどのような結末となったか。DHC・吉田嘉明が前記準備書面において「訴訟提起した10件」について書いているところに沿って明らかにしておきたい。
「訴訟提起した10件の内1件は謝罪がなされたので取下げた。」
これは、上記7の事件である。1審の審理の最中、原告が突然訴えの取り下げ書を提出し、その3日後に被告が取り下げ同意書を提出して訴訟終了となっている。同事件被告の出版社が謝罪した記録はなく、もちろん、謝罪の訂正記事も出されていない。そもそも、6000万円の請求を「謝罪がなされたので取下げた」は余りにも不自然。問題の記事は、被告出版社が事前に吉田に取材して執筆したもの。この記事での謝罪は、ジャーリストとしてのプライドを投げ捨てるに等しく、到底考えられない。記録を閲覧した限りでは、DHC・吉田嘉明は、まったく勝ち目ないことを覚って、敗訴判決を避けるために取り下げたとの印象が強い。
「内1件については,裁判所の和解勧告があり,双方代理人が尽力した結果,相手が事実と異なる表現をしたことを認め,和解金を支払うに至ったので,早期円満解決した。」
これは信じがたい不正確。上記1事件と10事件の被告は同一人物。そのため両事件が併合された。合計請求額が1億円である。和解に至ったのは併合された両事件。1億円請求に対して、和解金額は30万円。300万円の間違いではない。請求金額の1%の和解というのも恥ずかしいが、この和解は、0.3%という代物。係争費用を考えれば、和解したくもなる気持は理解できる。「相手が事実と異なる表現をしたことを認め」は、形式的にはそのとおりである。しかし、記事のどの部分がどのように事実と異なっていたかの特定はまったくない。この被告は、1億円もの請求の提訴から「30万円と形式だけの謝罪」で解放される道を選んだのだ。むしろ、「9970万円=99.7%」は不当訴訟であったとも言える低額和解ではないか。
「内2件は一部勝訴し,残部について当然控訴するかは検討したが,相手も控訴せず,素直に判決に従った金員を遅延損害金を含めて支払うというので,早期解決のため,控訴しなかった。」は、噴飯物の言い分である。DHC・吉田嘉明の体質をよく物語る主張と言うべきだろう。DHC・吉田嘉明の言には、眉に唾して聞かなければならない。
「内2件」とは前記3の事件と、6の事件である。
3事件は1億円の請求に対して100万円の一部勝訴、6事件は2億円の請求に対して100万円の一部勝訴であった。問題は、この勝訴部分が、いずれも対渡辺喜美8億円裏金交付事件についての批判言論とはまったく無縁なのだ。つまり、スラップとは無関係の別件を併せて提訴して、そちらの方では一部勝訴したから提訴の面目が立ったということにして矛を収めたのだ。確認しておこう。対渡辺喜美8億円裏金交付事件についての批判の言論をけしからんとした、DHC・吉田嘉明の提訴での判決はゼロ敗なのだ。
「内5件については敗訴したが、わが国においては,三審制が採られており,特に本件は前記最高裁判決の射程,解釈に関わる問題を含んでいたこともあり,上級審に救済を求めて,いずれも控訴,上告受理申立てをしたものである。」
馬鹿馬鹿しいから、これ以上の論評はしない。確認しておくが、その請求額は、2000万円(上記2の事件)、2000万円(上記4の事件)、6000万円(上記5の事件)、2億円(上記8の事件)、2000万円(上記9の事件)であり、これでゼロ敗なのだ。これだけ負け続けて、反省の弁もない。謝罪もしないのだ。
ところで、貼用印紙(裁判所利用の手数料)は、上記8の事件だけで、1審62万円、控訴審93万円、上告審124万円である。合計279万円。これをはるかに上回る弁護士費用を払っているものと考えられる。
スラップ訴訟とは金がかかる。カネを持つものと持たざるものと、同じ金額でもまったく重みがちがうから、スラップが脅しとなる。言論抑圧手段となるのだ。
(2018年6月7日)