澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

軍事研究助成に応募拒否を求める署名運動へのご協力を

最近の毎日新聞「みんなの広場」(投書欄)は充実していると思う。これだけ質の高い豊富な意見が寄せられれば、読み応えがある。担当者もやりがいがあるだろう。

その内の一つ。本日(12月16日)朝刊の「関西大の軍事研究禁止に賛同」と題する大阪府河内長野市在住の高井正弘さん(80)の投書。

 関西大学が軍事研究を禁止する方針を打ち出したことを伝える記事を読んだ。その姿勢に賛同の拍手を送りたい。
 防衛装備庁が防衛装備品に応用できる研究を公募して資金提供する「安全保障技術研究推進制度」について、学内の研究者が申請することを禁止する方針を決めたとのことだ。研究者を軍事研究に引き込もうとする政府の思惑に対し、関大は「基本的人権や人類の平和・福祉に反する研究活動に従事しない」と定める研究倫理の原則に沿って判断したという。
 現在、大学や研究機関は過剰な業績主義にさらされ、研究者は研究費獲得などに駆り立てられている。その果てに論文不正や研究費をめぐる不正まで生じている。安倍政権は特定秘密保護法、安全保障関連法の制定を強行したうえ、国是としてきた武器輸出三原則や原子力の研究・利用3原則をほごにした。危機的な国情に対して、一私学が学問研究の理念を堂々と表明したことを称賛したい。
http://mainichi.jp/articles/20161216/ddm/005/070/012000c

多少の補足をしたい。問題とされているのは、「安全保障技術研究推進制度(競争的資金制度)」である。防衛装備庁が始めた応募型軍事技術研究助成制度。軍事技術の研究に1件3000万円(程度)の研究費を付けて募集する。その成果は、防衛省が「我が国の防衛」「災害派遣」「国際平和協力活動」に活用するものだが、研究費不足の大学や研究機関において、3000万円の研究費助成は大いに魅力的である。思わず手が出ようというもの。関西大学はこの誘惑を自ら断ち切ったのだ。

具体的なイメージは、防衛装備庁の下記募集要項でつかめるのではないか。
「平成28年度は、以下の20件の研究テーマについての技術的解決方法(研究課題)を公募します。各研究テーマの細部について確認した上で応募をお願いします。なお、研究テーマは毎年更新します。
 1. 革新的な反射制御技術を用いた光学センサの高感度化に関する基礎技術
 2. レーザシステム用光源の高性能化
 3. 光波等を用いた化学物質及び生物由来粒子の遠隔検知
 4. 機能性多孔質物質を活用した新しい吸着材料
 5. 再生エネルギー小型発電に関する基礎技術
 6. 赤外線の放射率を低減する素材
(以下略)

この制度は、2015年度に3億円の予算規模で始まった。翌2016年には6億円に増額され、来年度(2017年度)にはなんと110億円の概算要求となっている。3年目の予算が初年度の30倍を超えるという恐るべき大判振る舞い。科学技術やその研究を軍事に取り込もうという露骨さなのだ。

これには、科学者・研究機関の良心をかけて阻止しようという反対運動が巻きおこっている。その効果もあって、2015年には109件だった応募総数が、予算倍増の16年には44件に減少している。予算規模を一気に拡大した2017年が大きな制度定着か否か、攻防のヤマ場を迎えることになるだろう。

幅広く研究者が参集して、「軍学共同反対連絡会」が結成されている。
http://no-military-research.jp/

その喫緊の課題が、全国の科学者や大学・研究機関への、「安全保障技術研究推進制度への応募拒否」の呼びかけである。「軍学共同反対連絡会」のサイトでは、次のように解説されている。

 防衛装備庁は、軍事技術に関する研究助成制度である「安全保障技術研究推進制度」を2015年度に創設しました。この制度の狙いは、防衛装備(兵器・武器)の開発・高度化のために、大学・研究機関が持つ先端科学技術を発掘し、活用することです。2015年度に3億円の予算規模で始まった本制度は、2016年には6億円に増額され、来年度(2017年度)においては当初の30倍超の110億円を概算要求しています。大学予算や科学予算が減額され続けている中で、軍学共同を推進するための予算のみが大幅に増額されようとしていることは極めて異常と言わざるを得ません。そして本制度によって大学・研究機関や科学者が軍事研究に取り込まれてしまうことが強く懸念されます。

この制度が大学・研究機関に浸透すれば、科学は人類全体が平和的かつ持続的に発展するための学術・文化ではなくなり、特定の国家や軍に奉仕するものへと変質させられてしまうでしょう。それは、大学・研究機関が本来行ってきた民生目的での研究・開発を歪めてしまうことになります。また、大学院生やポスドクなどの若手研究者が軍事研究に参加することが当然予想され、次世代を担う人間を育てる高等教育の在り方を変質させ、これまでせっかく築き上げてきた大学・研究機関の健全性への市民の信頼に傷をつけてしまうことは明らかです。さらに、戦時中に科学者が軍に全面協力したことへの痛烈な反省から導かれた「軍事研究を行わない」という戦後の日本の学術の原点をも否定することに繋がります。

以上の趣旨を踏まえて、下記のとおりの新しい署名運動が呼びかけられている。研究者だけでなく、毎日新聞への投書に見られるとおり、市民の意思表示も重要だと思う。呼びかけに応えて署名を成功させたいと思う。これも、平和憲法擁護運動の重要な側面である。

  私たちは、本制度によって、大学・研究機関や科学者が軍事研究に取り込まれてしまうことを強く懸念しています。来年度に、各大学・研究機関がこの制度に応募することのないように各大学・研究機関宛てに提出する緊急署名を実施中です。
  第一次の署名集約は2017年2月末を予定しています。皆様のご賛同をお願いいたします。また、周囲の方々にも広げていただければ幸いです。
署名のフォームは以下のURLから。
http://no-military-research.jp/shomei/
(2016年12月16日)

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