澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「3・15」弾圧を繰り返すことのないよう、共謀罪への反対を訴えます。

本郷三丁目交差点をご通行中の皆さま。毎月第2火曜日の昼休みに続けております、「本郷湯島九条の会」からの訴えです。
春に似つかわしくない陰鬱な日に、陰鬱な話題となりますが、皆さま、しばらく耳をお貸しください。

今日は3月14日。明日が、忘れてはならない『3・15事件』の当日となります。小林多喜二が小説「1928年3月15日」で描いたとおりの、野蛮きわまる天皇制政府による思想の大弾圧事件です。

89年前の、3月15日払暁午前5時。全国1道3府(東京・大阪・京都)27県の警察が一斉に日本共産党との関連を疑われる組織や個人宅を襲いました。合法政党だった労農党、全日本無産青年同盟、日本労働組合評議会、日本農民組合などの団体の事務所や個人宅百数十か所。検挙者数は1600名。押収文書1万余点とされています。

3・15事件は、治安維持法の最初の本格的発動の日として記憶されています。治安維持法とはなんだったのでしょうか。いまにつながる問題として、思い返してみなければなりません。参議院のホームページで、「治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願書」を読むことができます。ここに、治安維持法とは何であるかが、簡潔に記されています。その要旨は以下のとおりです。

「戦前、天皇制政治の下で主権在民を主張したため、あるいは平和を望んで侵略戦争に反対したために、多くの国民が治安維持法で弾圧され犠牲を被った。治安維持法が制定された一九二五年から廃止されるまでの二十年間に、逮捕者数十万人、送検された人七万五千六百八十一人(起訴五千百六十二人)、警察署で虐殺された人九十五人、刑務所・拘置所での虐待・暴行・発病などによる死者は四百人余に上っている。
 治安維持法は日本がポツダム宣言を受諾したことにより政治的自由への弾圧と人道に反する悪法として廃止されたが、その犠牲者に対して政府は謝罪も賠償もしていない。世界では、ドイツ、イタリア、アメリカ、カナダ、韓国、スペイン、イギリスなど主要な国々で戦前、戦中の弾圧犠牲者への謝罪と賠償が進んでいる。日本弁護士連合会主催の人権擁護大会(一九九三年)は「治安維持法犠牲者は日本の軍国主義に抵抗し、戦争に反対した者として…その行為は高く評価されなければならない」と指摘し、補償を求めている。再び戦争と暗黒政治を許さないために、国が治安維持法犠牲者の名誉回復を図り、謝罪と賠償をすることを求める。…」

治安維持法は、1925年4月に制定され、1928に大改正、さらに1941年に全面改正されています。言わば、小さく生まれて、大きく育てられたのです。

治安維持法は、もともと「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者」を処罰する法律でした。教育勅語で教えられた國體つまりは天皇制を変革しようとする思想や行動、そして私有財産制度を否定する思想や運動を取り締まるための法律でした。まさしく、時の政権に不都合な思想を取り締まり弾圧する道具としての稀代の悪法でした。

しかも、1928年改正で追加されたのが、「結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為」の禁止規定です。端的にいえば、共産党の目的遂行ノ為にする行為とレッテルを貼ることによって、政権や公安警察にとって不都合なあらゆる行為を弾圧の対象とすることができたのです。

こうして弾圧されたのは、最初は共産党でした。しかし、共産党にとどまることなく、弾圧の対象が拡大していったのは、皆さまご存じのとおりです。労働組合活動、農民運動、生活協同組合活動、ジャーナリスト、宗教者、平和主義者、リベラリスト、学生、教員、軍国主義批判、綴り方運動…。天皇制を賛美することのないあらゆる思想や活動が弾圧の対象となり、批判の言論を失った国家は暴走して破滅に至りました。その轍を再び踏んではなりません。

今、共謀罪が、治安維持法の再来であり復活を目ざすものとして、表舞台への登場をたくらんでいます。権力にとって、自らの政策に反対する人や組織や、その運動を取り締まる便利な道具があれば、何と調法なことでしょう。その道具を振り回さずとも、国民を萎縮させることができれば、こんなに好都合なことはありません。治安維持法はまさしく、そのようなものでした。そして、共謀罪も同様の役割を期待されているのです。

治安維持法が悪法であった理由は、表だって思想の弾圧を掲げた法律であったこと、そして、刑罰を科する対象の行為に限定なく、なんでも弾圧できたことにあります。さすがに、共謀罪が表向き特定思想の弾圧を掲げていることはありません。しかし、刑罰を科する対象の行為に限定なくなんでも弾圧できる危険をもっていることは治安維持法と変わりません。このことを通じて、政権は特定の思想や、特定の政党を狙い撃ちにした弾圧が可能となるのです。

いつものパターンのとおり、自民党が共謀罪の最悪シナリオを発表し、公明との協議で「少しマイルドになりました」という与党案を提出しようとしています。共謀罪ではなく、「テロ等準備罪」だ。「組織的犯罪集団」だけが刑罰の対象だ、と言いますが、実はその危険性に変わりはありません。

これまで3度廃案になった「共謀罪」。4度目に通してはなりません。治安維持法の前史から、誕生の経過、そしてそれがどう改悪を重ねて、どのように猛威を振るったかを、教訓として、「共謀罪」の成立を阻止するよう訴えます。陰鬱な、あの時代を繰り返すことがないように。

(2017年3月14日)

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