澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

イナダ敗訴確定の名誉毀損訴訟は、DHCスラップ訴訟と同じ構造。ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第103弾

豊穣な日本語の言語空間の片隅に、「藪蛇」という言葉がある。この「藪を突いて蛇を出す」の出典が分からない。小学館の「故事・俗信・ことわざ大辞典」にも、用例は出て来るが出典の記載はない。

出典など分からなくても、「しなくてもよいことをしたことで災難を招いて臍を噛む」ことは、誰にも憶えのあること。とりわけ、イナダさんご夫妻には、思い当たることが多々ありそう。

夫君稲田龍示弁護士の「藪蛇」については、当ブログに「『弁護士バカ』事件で勇名を馳せたイナダ防衛大臣の夫は防衛産業株を保有」(2016年9月18日付)の記事を書いた。
http://article9.jp/wordpress/?p=7458
もっとも、このブログは揶揄の記事ではない。防衛大臣の家族が、特定の防衛産業企業株を購入していることの問題点の指摘と恐ろしさへの警告である。ではあるが、見事に藪を突いて立派な蛇を、突つき出した好例でもある。この人の「弁護士バカ」なる一語への反応と提訴がなければ、稲田龍示の蛮名がとどろくことはなかっただろう。

さすがは教育勅語信奉者の防衛大臣。「夫婦相和シ」の精神で、こちらも夫と同様、損害賠償請求訴訟で大いに藪を突ついた。そして、夫君同様の敗訴。敗訴の都度、何度も「藪」を突ついて、さらなる「蛇」を出した。

この訴訟事件の発端は、サンデー毎日2014年10月5日号「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」と題する記事。この記事が、イナダの資金管理団体「ともみ組」への献金者の中に在特会幹部らとともに活動する人物が8人いて、その献金額合計が21万2000円となると指摘し、「在特会との近い距離が際立つ」と書いた。

これがイナダのお気に召さなかった。翌15年3月になって、「『在日特権を許さない市民の会』(在特会)と近い関係にあるかのような記事で名誉を傷つけられた」として、「サンデー毎日」の発行元の毎日新聞社に550万円の慰謝料と謝罪記事の掲載を求めた訴訟を大阪地裁に提起した。

これが、最初の「藪を突ついた」という行為。「サンデー毎日」の読者は限られている。しかし、この提訴で「サンデー毎日」記事が指摘した「イナダと在特会との蜜月」は広く知れ渡った。このことが、一匹目の「蛇」だった。

2016年3月11日に大阪地裁で言い渡された一審判決は、当然のことながら原告イナダ側の全面敗訴だった。「記事は論評の域を逸脱しない」「論評の前提となった事実には真実性の証明がある」「しかも記事の内容は公共の利害に関わるもので、公益を図る目的で掲載された」との認定。これが2匹目の「蛇」。人々は、イナダと極右レイシスト集団との深い関わりをあらためて思いだすこととなった。アベ政権自身が、このような輩と親密な集団だとも。

さて、これでやめておけばよかったのに、イナダは敢えてもう一度もっと深く、2度目の藪を突ついた。大阪高裁に控訴したのだ。その控訴審判決が、2016年10月12日に出た。当然のごとく控訴棄却である。またまたのイナダ全面敗訴。これが3匹目の「蛇」だ。常識的には訴訟はこれで終わり。

ところが、防衛大臣は事態の収束も撤兵も考えなかった。「藪がある限り、徹底して突つきまくる」「撃ちてし止まん」以外の策をもたないのだ。彼女は、またまた果敢に藪を突ついた。3度目である。それが上告受理申立。ウワバミが針の穴を通るくらいに困難な作戦。

そして、昨日(6月1日)の報道によれば、あえなく作戦は失敗。上告受理申立は最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)が5月30日付で不受理としてその旨を通知した。訴訟は、予想のとおりに、イナダ敗訴で確定した。この報道が4匹目の「蛇」である。「グリコは一粒で2度美味しい」、「イナダは一件で4度も蛇を出す」。たいしたものだ。

この事件は、DHC・吉田が私(澤藤)を被告として提起した「DHCスラップ訴訟」に酷似している。標的とされた「サンデー毎日」の記事の題名が「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」であり、私のブログが「『DHC8億円事件』大旦那と幇間 蜜月と破綻」というもの。

両事件の判決はともに、「記事は原告(イナダ・吉田嘉明)の社会的評価を低下させ名誉を傷つけた」と認めた。そのうえで、表現の自由保障の観点から、記事は公共にかかる事項について公益目的をもってなされた「論評」であり、論評の基礎となった事実は真実であると認定して、その言論に「違法性はない」と結論づけた。

判決の帰趨は、提訴前から分かっていたというべきであって、なにゆえむやみに何度も藪を突ついて、何匹も「蛇」を出し続けたのか。信じがたい愚挙と言わざるを得ない。これが、わが国の防衛大臣。

「むやみに何度も藪を突ついて、何匹も「蛇」を出し続けた」については、DHC・吉田もまったく同じこと。だから、スラップであり、不当訴訟といわれるのだ。

それにしても、在特会は形無しだ。イナダに擦り寄って政治献金をしたにもかかわらず、「在特会と近しいなんて言われるのは名誉毀損」とイナダに袖にされた。加えて、裁判所の判決でも「在特会と近しいなんて言われたら社会的評価は下がる」とお墨付きをもらったのだ。自業自得とはいえ、少々気の毒でもある。
(2017年6月2日)

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