流行語に浮かびあがる「もりかけ元年」の政治の貧困
既に師走。はや、今年を振り返る時期になった。恒例の「今年の重大ニュース」「今年の漢字」「今年の一冊」「マン・オブ・ザ・イヤー」等々が話題となる季節。いささか押しつけがましいこれらの企画に、最近は「新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)が加わっている。
12月1日発表となった年間大賞を、「忖度」と「インスタ映え」の2語が受章した。「忖度」の受章は、さもありなん。「インスタ映え」の方はさっぱり分からんが。
トップ10の他の8語には、「Jアラート」「フェイクニュース」「プレミアムフライデー」「魔の2回生」「○○ファースト」などが選ばれている。なるほど、今年はそういう一年であった。
この授賞。正確には、「ユーキャン新語・流行語大賞」というそうだ。この1年の間に話題となった「さまざまな『ことば』のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その『ことば』に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの。」だという。
1984年創始だというから、もう30年を超える歴史をもつことになるが、話題になってからは、まだ日が浅いという印象。まずは、『現代用語の基礎知識』収録の用語をベースに、自由国民社および大賞事務局がノミネート語を選出するのだそうだ。
その今年ノミネートされた30語が下記のとおり。
アウフヘーベン/インスタ映え/うつヌケ/うんこ漢字ドリル/炎上〇〇/AIスピーカー/9.98(10秒の壁)/共謀罪/GINZA SIX/空前絶後の/けものフレンズ/35億/Jアラート/人生100年時代/睡眠負債/線状降水帯/忖度/ちーがーうーだーろー!/刀剣乱舞/働き方改革/ハンドスピナー/ひふみん/フェイクニュース/藤井フィーバー/プレミアムフライデー/ポスト真実/魔の2回生/〇〇ファースト/ユーチューバー/ワンオペ育児
私にはさっぱりの言葉もあるが、アウフヘーベン、炎上○○、共謀罪、Jアラート、人生100年時代、忖度、ちーがーうーだーろー!、働き方改革、フェイクニュース、プレミアムフライデー、ポスト真実、魔の2回生/〇〇ファースト/ユーチューバー、などと並べると、なるほど2017年の世相が見えてくる。トランプ、安倍晋三、安倍夫妻、安倍チルドレン、そして小池百合子などの愚昧ぶりが想い起こされる。
選考委員会は、「忖度」についてこう述べている。
「今年は、マスコミから日常会話に至るまでのあらゆる場面でこの言葉の登場機会が増えた。きっかけは3月、「直接の口利きはなかったが、忖度があったと思う」という籠池泰典氏の発言。ネット辞書の検索ランキング(goo辞書)では4カ月間、この言葉が1位を独走したという。2017年最大の政治テーマであった「モリカケ問題」を象徴するこの言葉は、この問題が決着するまでは出番が続きそうである。」
また、「魔の2回生」について。
「2歳になる子どもが第一次反抗期を迎えて「イヤイヤ」を始めることを「魔の2歳児」という。そこから連想して、産経新聞の森山志乃芙さんはこの言葉を記事にしたのだという。務台俊介内閣府政務官、中川俊直議員、豊田真由子議員、武藤貴也議員、宮崎謙介議員…暴言、不倫、重婚…、当選2回の「安倍チルドレンン」たちの不祥事が続発した。それは政権の支持率急落という「魔」の事態を招いたのであった」
「〇〇ファースト」
「まずは、アメリカのトランプ大統領が、選挙の段階からしきりに繰り返していた「アメリカ・ファースト」というフレーズ。日本では、小池百合子都知事による「都民ファースト」が続き、最近では「自分ファースト」な人たちがやり玉にあげられている。」
個人的には、「印象操作」と「丁寧な説明」の併せて一本を期待していた。安倍シンゾーという人物。人の話は「印象操作」。自分に痛いことは「印象操作」。反論できないことも「印象操作」。自分の話は「丁寧な説明をいたします」。これを繰り返してある日突然「丁寧な説明をいたしてまいりました」と変わる。平気でこう言える性格をどう表現すればよいのだろう。狡猾、厚顔、鉄面皮、破廉恥? あるいは卑劣、奸佞、邪悪とでも。もし安倍政権が続いたら、いずれこれらの語も、新語大賞に輝くことになるだろう。
そのほか、印象に残ったアベ語としては「こんな人たち」「でんでん(云々)」「怪文書だ」など。小池百合子関連で強烈だったのが「排除いたします」。
2017年は、「もりかけ元年」だった。そのパーソンズ・オブ・ザ・イヤーは、まず安倍昭恵。次いで籠池泰典、加計孝太郎。そして前川喜平。悪玉・善玉の色分けがくっきりである。
さらに、「もりかけ元年」を象徴する川柳の秀句を朝日川柳欄から。
夫婦して「李下に冠」理解せず 佐藤吉男
詳細は御用新聞読めと言い 下道信雄
記録ない確認できない記憶ない 西村健児
新元号はいらない。「もりかけ」の元号で十分ではないか。来年も再来年も、「もりかけ」問題追求の年にしよう。
いずれにせよ、政治の貧困は流行語に表れる。
(2017年12月5日)