本日(9月13日)、沖縄知事選か告示された。9月30日が投票日で、即日開票となる。主要な争点は、辺野古新基地建設反対の姿勢を貫くか、それともこれを容認するのか。これは、政権の外交・内政の根幹に関わる問題。したがって、選挙の帰趨は、政権の存続にも憲法改正の可否にも大きく影響する。
翁長県政承継を標榜する新基地建設反対派からは玉城デニーが立候補し、政権の意向を酌んだ容認派からは佐喜真淳が立候補した。事実上、この二人の一騎打ち。デニーは県民を代表し、佐喜真は政権を代理している。沖縄と政権の角逐である。それはだれにも自明なことだが、佐喜真側は意識的にこの構図の明確化を避けている。
県民派は沖縄の「魂」を掲げ、政権派は「魂では喰えない。背に腹は代えられない」と、魂よりは「腹」を第一義として掲げる。
デニー側の支持勢力は、「市民と野党の共闘」。幅は広いがまとまりをどう作るかがに課題があるという。佐喜真側は政権と与党の丸抱え。これに、維新がくっついての「保守連合」。この両者の対立関係は、今後の国政における政治地図の基本構図だ。統一地方選、参院選、さらには次の総選挙の基本構図でもあり、そのまま改憲勢力と改憲阻止勢力の対決の構図でもある。
そのような状況下に始まったデニーと佐喜真の「論戦」は、今年2月4日の名護市長選を彷彿とさせる。
翌2月5日、私は当ブログに「名護高校の生徒諸君 ― 小泉進次郎のトークに欺されてはいけない」と題する記事を掲載した。まさかの稲嶺候補敗北という衝撃のなかでのつぶやきであり、ぼやきでもあった。
https://article9.jp/wordpress/?p=9879
私はその記事で、小泉進次郎の選挙演説を、〈詐欺まがい悪徳商法のトーク〉になぞらえて、若い高校生諸君に「欺されてはいけない」と警告を発したのだが、時既に遅しで愚痴にしかなっていない。
本日、沖縄知事選の告示日に当たって、同じことを繰り返さざるを得ない。今度は、名護だけではなく沖縄全県の若い有権者を念頭において語りかけねばならない。
稲嶺落選は、「名護ショック」であった。ショックは連鎖することが少なくない。一つの選挙結果で作られた空気が、次の選挙結果に伝染するのだ。勝者の側の勢いが次の選挙でも有利に働き、敗者の側の萎縮が次の選挙のデメリットになる。
沖縄での名護ショック、全国的には新潟ショックの影響が、最近の選挙に蔓延している。ウソとごまかしで塗り固められた安倍政権を支える与党勢力が、最近の選挙では優勢な現実を見据えなければならない。
名護市長選の敗因として、巷間言われていることはいくつかある。
オール沖縄の稲嶺陣営は基地反対を焦点に明確化し、渡具知陣営は争点をそらして経済活性化を訴えた。その作戦の巧拙が勝敗を分けた、というのだ。なるほど、政権が経済支援をエサに渡具知陣営への露骨な利益誘導を行ったということなのだ。基地反対の稲嶺陣営にはムチだけを、一方渡具知陣営にはアメを差し出したというわけだ。
また、辺野古基地建設反対運動の先が見えず、住民が疲れ果ててこれまでとは別の選択を強いられた結果だともいう。反対しても、国は強大で抗いがたい。裁判所だって、所詮は国家機関だ。政府の肩を持つに決まっている。それは既に明らかになっているではないか。いずれ基地はできてしまう。それなら、無用な抗争をするよりは、条件闘争に転じた方が得ではないか。望まぬ基地を押しつけられるのだ、その見返りをできるだけとるという方針のどこが悪い、というわけだ。
公明党がその存在感を示さんがために選挙運動に全力をあげた結果であったともいう。公明党が力をいれた選挙では、期日前投票の割合が高くなるといわれるが、その現象が如実に出た結果と受けとめられている。
さらに重要なことは、この選挙では初めての18歳・19歳の選挙権行使が、保守の側に有利に振れて「オール沖縄」派敗北の原因となった…のだとも。
この名護ショックの原因の構図は、沖縄知事選告示に当たって、既視感に充ち満ちている。
政権は沖縄に基地の負担を強いたうえに、こう言っているのだ。
「おとなしく基地の建設を認めろ。そうすれば悪いようにはしない。その見返りは真剣に考えてやろう」「しかし、言うことを聞かないのなら、徹底して経済的に締め上げるから覚悟しろ」
こう言われて、「我々にも五分の魂がある」という意気地派と、「魂では喰えない。背に腹は代えられない」という現実派が真っ二つになっている。前回知事選では「五分の魂」派の翁長陣営が圧勝したが、今回は「背に腹」派の勢いは侮りがたく、予断を許さない。
公明党・創価学会は、前回知事選では自主投票だった。しかし、今回選挙では佐喜真陣営に本腰を入れた応援態勢。全国から5000人規模の活動家をこの選挙戦に送り込んでいるとされる。
若者の動向、はどうだろうか。
名護市長選における地元OTV(沖縄テレビ)の出口調査では、年代別の投票先は次のようだったという。若者世代の保守化は著しいというほかない。
10代 稲嶺37% 渡具知63%
20代 稲嶺38% 渡具知62%
30代 稲嶺39% 渡具知61%
40代 稲嶺41% 渡具知59%
50代 稲嶺38% 渡具知62%
60代 稲嶺65% 渡具知35%
70代 稲嶺68% 渡具知32%
80代 稲嶺67% 渡具知33%
90代 稲嶺86% 渡具知14%
RBC(琉球放送)の出口調査では、
10代 稲嶺33.3% 渡具知66.6%
20代 稲嶺44.0% 渡具知56.0%
人は若くしては理想に燃えて革新派であり、社会で長く生きるにしたがって世のしがらみと妥協して保守派に転じる。そう信じていた私は戸惑うばかりだ。10代で既に保守派が多数とは、人類にいったいどんな異変があってのことなのだろうか。
名護市長選挙で、ネットの動画に見た高校生は、おとなしくにこやかに、小泉進次郎のつまらぬ話しを聞いていた。これには、少なからぬ衝撃を受けた。「この美ら海を埋め立ててよいのか」「オスプレイで学校の騒音はどうなるのか」「ヘリが校庭に落ちてきたらどうする」などとヤジは飛ばない。本来は、こう問い質すべきなのだ。「どうして、選挙演説で基地のことをお話ししないの」「辺野古基地の建設は我慢しなければならないの」「基地ができたら、今普天間の学校や保育園で起こっていることが今度は名護で起こることにならないの」「オスプレイはどのくらいうるさいの」「どうして、渡具知さんが勝った場合だけ経済振興になるのですか。稲嶺さんでは応援しないと言うことですか」「あなたは私たちに、具体的に何をお約束されるのですか」「そのお約束は、稲嶺さんが市長ではできないのでしょうか」「稲嶺さんの政策のどこに間違いがあるということでしょうか」「結局あなたは、名護のためにはではなく、基地建設推進のために渡具知さんを応援しているのでではありませんか」
さて、今回知事選は、政権と向き合う沖縄にとっての正念場である。ということは、全国の「市民と野党の共闘」にとっての正念場でもある。来年の参院選や改憲問題にも影響する重大事態。不利なことも多々あるが、ウソとごまかしで行政を私物化している政権の評判はまことに芳しくない。我がこととして、この選挙を闘い抜きたい。
**********************************************************************
いまこそウソとごまかしの「安倍政治」に終止符を! 賛同署名のお願い。
https://article9.jp/wordpress/?p=11058
安倍政治に即刻の終止符を求める人々の熱い言葉の数々。
https://article9.jp/wordpress/?p=11073
ネット署名に是非ご協力を。そして、拡散もお願いします。
署名は、下記URLからお願いいたします。
https://bit.ly/2MpH0qW
(2018年9月13日・連続更新1992日)
沖縄知事選から目が離せない。
昨日(9月3日)の当ブログで、佐喜真候補の討論会出席拒否を、候補者としての資格がないと厳しく批判した。一夜明けたら、「佐喜真氏、一転討論会参加へ 批判受け方針転換 『事務方の不手際で誤解』」という。やはり、批判はすべきものだ。
ここで堂々と、佐喜真は「できれば論争を避けようとした自らの姿勢を反省し、県民にお詫びするとともに、以後は歴史的な2018年沖縄県知事戦の候補者として恥ずかしくない論戦に挑みます」というべきだった。そうすれば、汚名挽回できたのだ。いま「正直」が政治家倫理の最重要徳目ではないか。ところが、「事務方の不手際で誤解」は、「正直」とはほど遠い不誠実な取り繕い。「秘書が」「妻が」「事務方が」との責任転嫁はみっともない。
そもそも、「事務方の不手際で誤解」は意味不明だ。佐喜真の言う「さまざまな行き違いで、討論会について事務方の不手際でマスコミに誤解を与えた」とはいったい何のことだ。マスコミが何をどう「誤解」したというのか。
確認しておこう。マスコミの理解は、以下のとおりである。これが誤解か。
「自民党沖縄県連は2日、沖縄県政記者クラブが出席を求めた県知事選立候補予定者討論会に対し、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)が参加しないことを文書で回答した。「日本青年会議所(JC)が予定する討論会に一本化する」とし、マスコミ各社の討論会や座談会には一律で応じない。これに対し県政与党が擁立する衆院議員の玉城デニー氏(58)の陣営は「マスコミからの出席の要請には積極的に臨む」として候補者が露出する機会に前向きで、姿勢が分かれている。(琉球新報)」
重要なことは、拒否回答が文書で行われたことだ。文書の内容は、「投票まで残り1カ月もない超短期決戦の中で、1人でも多くの県民と直接、対話を重ねたいところから、日本青年会議所の討論会に一本化して対応したい」(琉球新報)という、愚にもつかない文面。この文書の読み方に、誤解の生じようがないではないか。
しかも、この文書の作成は、佐喜真擁立の最大母体である自民党沖縄県連。「事務方」とは、自民党のことなのだ。常識的に、「知事選立候補予定者討論会不出席。但し、極右団体の討論会を例外とする」。こんな非常識で、重要な方針決定が候補者抜きで決められていることは考えられない。それとも、佐喜真は自民党の操り人形に過ぎないということなのだろうか。
自民党県連も佐喜真も、信用ならぬというほかはない。佐喜真という人物、今後都合が悪くなると、「事務方の不手際で誤解」を繰り返すことに、きっとなる。そのような私の判断を誤解とは言わせない。
「自民県連が不参加と回答した報道を受けて県連に批判が相次いだため、方針を変更した」という、各紙の報道内容が正確なところだろう。ここからは私の推測だが、この批判は身内からのものが多かったに違いない。「こんな候補者の姿勢では、まったく意気が上がらない」「これでは選挙にならない。初めから負けいくさだ」という批判ないし抗議。真面目な運動員としては、せざるを得ないではないか。玉城陣営としては、幸先のよい願ってもない事態。涼しい顔で見守っていたというところだろう。
さて、知事候補佐喜真淳(自・公・維の推薦)が政策を発表した。メディアの報ずる内容は以下のとおりである。
「普天間飛行場の一日も早い返還を政府に求め、日米地位協定の改定を具体的に提言する」と強調した。一方で、最大の争点である名護市辺野古新基地建設の是非には触れなかった。「県民の暮らし最優先」を掲げ、全国平均並みの県民所得300万円の実現や子どもの保育費、給食費、医療費の無償化、跡地利用の推進などを打ち出した。
普天間飛行場の辺野古移設について「最も重要なのは固定化を避けることだ。返還までの基地負担の軽減と危険性の除去を県民に訴えたい」と語った。辺野古移設の是非に触れないことについて、県が埋め立て承認を撤回したことで今後、政府が法的措置を検討していることを挙げ「法律的にどうなるか注視しなければいけない」と説明した。(琉球新報)
米軍普天間飛行場について「返還作業への即時着手と速やかな運用停止を求める」と明記したが、辺野古新基地建設の是非について触れなかった。国と連携し新たな沖縄振興計画の策定や経済特区、税制を実現する考えを示した。
辺野古新基地建設の是非に言及しない理由について、県が辺野古の埋め立て承認撤回をし、国が法的措置を取る構えを示していることを挙げ「法律的にどうなるのか注視しなければならない。一日も早い返還、それまでの負担軽減と危険性の除去を県民に訴えたい」と説明した。(沖縄タイムス)
妙な錯覚に襲われる。この佐喜真という候補者、沖縄県知事選を闘っているという自覚があるのだろうか。相変わらず宜野湾市長選を闘っている感覚のままなのではないだろうか。「世界で一番危険な・普天間飛行場」の返還・撤去について、沖縄県民に異論があろうはずはない。問題は、そのための条件とされた辺野古新基地の建設強行を認めるか否か。それこそが最大の争点ではないか。玉城は、断固阻止といっている。佐喜真はどうなのか。阻止にせよ、容認にせよ、あるいはその他の選択肢にせよ、意見をはっきりと言わねばならない。それが今、沖縄県知事選の候補者に求められている最低限の誠実さと言わねばならない。それなくして、沖縄県民の選択ができないではないか。
佐喜真や自民党は、このまま県民をごまかし、自民・公明の支持者もごまかしたまま票を掠めとろうというのか。佐喜真支持者諸君、自民党県連と佐喜真候補に、再びの抗議を集中されたい。辺野古新基地建設の是非について明確な政策を打ち出すように、と。
(2018年9月4日)
注目の沖縄知事選。「オール沖縄」陣営からの玉城デニーと、「チーム沖縄」からの佐喜真淳との事実上の一騎打ち。最大の争点は、アベ政権が強行する辺野古新基地建設を許さないとする県民意思を確認するのか容認するのか。
さて、前宜野湾市長佐喜真淳とは何者であるか。宜野湾市で知られてはいても、沖縄全県で知られた存在ではない。ましてや、全国では無名の人。佐喜真は、自分が何者であるか、どのような政治思想を持ち、どのような県知事としての政策を持っているのか、有権者に対して明らかにする責任がある。沖縄に国民の注目が集まっている以上、ひろく国民にも明らかにしていただきたい。
とりわけ、宜野湾市の利益と沖縄全県の利益との関係微妙な「基地移転」の問題について、宜野湾市長選での「県外移転」公約を維持するのか変更するのか、明確にしなければならない。そのためには、立候補予定者討論会を重ねることが最も適切であろう。
ところが、彼は立候補予定者討論会には参加しないという。「沖縄県政記者クラブが主催する立候補予定者討論会への参加を断る方針を決めた。佐喜真氏側は『異例の超短期のため日程がつかない』との理由で、マスコミ各社が個別に主催する討論会や対論番組にも一切出席・出演しない対応を取っている。(琉球新報)」
要するに、議論を避けて逃げているのだ。これはみっともない。まるで、総裁選での討論を避けているアベとおんなじではないか。討論しても恥をかくだけ。票が増える見込みはない。票を減らすことが明らかなのだから、討論会や対論番組に出席・出演することのメリットはない。そんな時間があれば、県内右翼団体の挨拶回りをして票を固めた方がよい、との割り切った判断なのだ。
しかし、沖縄県民は、この佐喜真陣営の姿勢を民主主義政治における公職の候補者としてあるまじきものとして批判しなければならない。選挙の主体は、飽くまでも有権者である。有権者が正しい選択ができるように、候補者は自らが何者であるかを有権者に積極的に語って知ってもらわねばならない。それは、候補者の責務である。
消費者が市場で商品を購入するに際しては、ためつすがめつ商品の説明をよく聞き、よく調べなくてはならない。複数の商品あれば比較検討しなければならない。これは消費者にとっての、商品説明を受け、正しい選択を受ける権利である。商品の説明を拒否するような売り手は、市場から駆逐されなければならない。まさしく、佐喜真という知事選市場に並んだ商品は、その商品吟味を拒否するのだから、市場から退場してもらわねばならない。
さらに、興味を掻きたてるのは、佐喜真が、「日本青年会議所(JC)沖縄ブロック協議会が主催する公開討論会だけには出席する」としていること。要するに、佐喜真にとっては、「日本青年会議所(JC)」だけがホームで、他のすべてがアウェイなのだ。佐喜真は、「討論会はアウェイでは困る。イヤだ」「日本青年会議所(JC)の討論会なら、主催者との事前の打ち合わせが十分にできて、恥をかかずに済ませることができるから、これだけはやる」という算段なのだ。卑怯千万。佐喜真の何たるかをよく物語っている。
伊波洋一と争った2012年宜野湾市長選の際に話題となったことだが、佐喜真淳とは日本会議に所属する真正右翼である。いや極右であって、保守本流や創価学会・公明党が推せるような代物ではない。一方、「日本青年会議所(JC)」も同様の極右。佐喜真とJC。琴瑟相和する仲。あるいは、腹心の友の間柄。
JCとは何であるか。「日本青年会議所」をウイキペディアで検索するとよい。『「日本商工会議所」、「日本青年団協議会」、「日本青年協議会」、「日本都市青年会議」、あるいは「日本青年社」とは異なります。」との注意があり、編集部からの註が付いていて、「大言壮語的な記述になっています。宣伝広告的であり、中立的な観点で書き直す必要があります」とされているが、それでも「問題となった事件・不祥事」欄に次の件が記載されている。
1998年 旭川女体盛事件
同 年 横浜セクハラ問題
2003年 東京JC日本振興銀行事件
強制わいせつ事件
2006年 八尾JC傷害致死事件
2007年 靖国神社アニメ制作問題
2008年 憲法タウンミーティング運営トラブル
2018年 「宇予くん」問題
批判ブログ著者への圧力
受動喫煙解雇撤回問題
一見して相当にいかがわしい。興味ある方はぜひウイキペディアの本文をお読みいただきたい。とんでもない団体であることがよく分かる。
今年にはいってから問題となった。「宇予くん」問題についてだけウイキペディアの記載を引用しておきたい。
「宇予くん」とは、本年2月、日本青年会議所国家戦略グループの内部組織である「憲法改正推進委員会」が、年初から「宇予くん」と称するキャラクターを用いたTwitterアカウントを運用し、「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」というコンセプトの元で、関係ない機関・団体への誹謗中傷や品性を欠いた内容ばかり投稿していたとして、外部から批判を受けた。日本青年会議所はTwitterアカウントを削除し、2月28日「不適切だった」として謝罪した。
「宇予くん」とは、「右翼君」の転訛なのだろう。日の丸2本を背負った、いかにも品性と知性を欠いた、右翼っぽい男の子のキャラクター。このことも、リテラが要領よく書いている。以下を参照されたい。
公益社団法人日本青年会議所(通称JC)が、Twitter上で「宇予くん」なるキャラクターを通じ、ネトウヨ丸出しの暴言を連発していたことが発覚した問題。あらためてはっきりしたのは、JCという組織のトンデモぶりだ。
http://lite-ra.com/2018/03/post-3836.html
佐喜真とは、このトンデモJCと蜜月なのだ。お互い、紛れもない改憲右翼。
もちろん、思想は自由である。右翼にも、破廉恥団体との親密者にも、立候補の自由がある。しかし、それを有権者に隠してはならない。正々堂々と、「ワタシは日本会議に属する右翼です」「日本の右翼は、左翼・リベラルの主張の反対を信条としていますから、彼らが辺野古新基地建設反対を言う以上、ワタシは賛成です」「ワタシは、アベ内閣同様アメリカの走狗として甘んじる覚悟ですから、海兵隊もオスプレイも沖縄にいていただいてけっこうです」と正直に言うべきなのだ。
ところが、討論会に出ないとは、自らを有権者の前に曝して、適切な選択をしてもらおうという姿勢ではない。身内には、右翼的姿勢を強調して見せ、一般有権者にはその思想や体質を隠し通そうという邪悪な魂胆。
こういう人物は、民主主義社会における政治家として、そもそもの資質を欠いている。正直・公正に欠けた人物には、用心深く接しなければならない。商品説明の不足を追求せず商品の吟味不十分であったがために、あとになって欠陥住宅をつかまされたり、詐欺商法に泣くことにならぬように。
(2018年9月3日)
本日(8月20日)の毎日新聞朝刊1面に、「政府が賠償請求検討」「県の辺野古承認撤回で」「1日2000万円」の記事。つまり、「沖縄県が辺野古『承認撤回』をしたら、政府は1日2000万円の割合の損害賠償請求をするぞ」というのだ。いよいよ出た、夏のお化け。いや、政府の自治体に対する恫喝・嫌がらせだ。国による県民に対する居丈高な挑発でもある。これまでも噂はあったが、産経の観測記事の程度。事態切迫の中でのひどい話。これも、スラップ訴訟。
「政府は、…県が名護市辺野古の埋め立て承認を撤回した場合、工事の遅延損害金が1日約2000万円発生するとの見積もりをまとめた。撤回処分の是非を巡る行政訴訟で政府が勝訴した場合に、県に損害賠償請求することを検討している。
県が承認を撤回すれば工事は中断され、工期が延びるため、施工業者の人件費や機材費などが膨らむ。県が実際に撤回し、政府が裁判所に撤回の執行停止を申し立てると、司法判断が出るまでに少なくとも数週間はかかる。撤回が違法と認定された場合、賠償請求額は数億円に上る可能性がある。県は土砂投入前に撤回する姿勢を崩していないが、防衛省幹部は「県が慎重なのは損害賠償のリスクがあるからだ」とみている。
ただ、知事だった翁長雄志氏の死去に伴い県知事選が9月30日投開票に前倒しされたため、政府は土砂投入を10月まで自重することも視野に入れている。県が承認を撤回しない限り、工期が延びても県の責任は生じない。政府と県は互いの出方をうかがっている状況だ。最高裁は2016年12月、県による埋め立て承認取り消し処分を違法と判断した。このとき政府は県に対する損害賠償請求をしなかった。」
続報が、本日(8月20日)の夕刊に出ている。
「辺野古埋め立て 承認撤回 沖縄副知事『覚悟決めている』」という記事。つまり、沖縄県(知事不在で職務代行者の副知事)は、政府による損害賠償請求の脅しに屈することなく、「承認撤回」の方針を貫くということなのだ。が、それは担当者にとっては「覚悟」を要することになっている。
「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画で、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回に備え、政府が県への損害賠償請求を検討していることについて、県の謝花喜一郎副知事は20日朝、県庁で記者団に「覚悟を決めている」と述べた。政府が沿岸部に土砂を投入する前に承認を撤回し、工事を止める考えを重ねて示した。
辺野古への移設工事を巡っては、政府が(8月)17日にも一部海域に土砂を投入し、本格的な埋め立てを始めると県に通知していたが、台風の影響で海上作業が難しいことなどから投入を当面見送っている。一方、8日に亡くなった翁長雄志知事は7月27日に、仲井真弘多前知事による埋め立て承認を撤回する手続きに入ることを表明。県は撤回の時期を検討している。
政府は、県が承認を撤回した場合、工事の遅延損害金が1日約2000万円発生すると見積もり、撤回処分の是非を巡る行政訴訟で勝訴した際には、県に損害賠償請求することを検討している。これに対し、謝花副知事は「しっかり覚悟を決めている」と述べた。
「政府は、…撤回処分の是非を巡る行政訴訟で政府が勝訴した場合に、県に損害賠償請求することを検討している。」というが…。
国が敗訴した場合に県に対する損害賠償の請求ができないことは当然として、国が行政訴訟に勝訴して県の行政処分(「撤回」も行政処分)が違法として取り消された場合においても、直ちに県が国に対して損害賠償義務を負うことにはならない。行政処分取消の要件としての違法と、国家賠償(この場合は沖縄県の公権力行使に起因する損害賠償責任)の要件としての違法とは、レベルがちがうとされているのだ。
通常、行政裁量の幅はすこぶる大きい。県は、撤回を理由づける要件をあれほどにも慎重に調えている。これが軽々に違法な処分として取り消されるとは考えにくいし、ましてや損害賠償認容のハードルは極めて高いのだ。
沖縄は、基地の重圧にあえいでいる。そのイヤなものを押しつける手段はアメとムチである。経済振興というアメで前知事は尻尾を巻いた。ところがその知事を排斥して県民が選んだ次の知事は、アメをばらまいても抵抗を止めない。「じゃあ、ムチを取り出すしかない」という安倍政権の発想から出てきた辺野古基地建設強行。その一端に、「1日について2000万円の損害賠償請求」というスラップ訴訟がある。その威嚇と恫喝で、県民の基地建設反対運動を切り崩そうというのだ。
韓国によく似た話がある。今年の3月、チェジュ島で、「それはひどい」「朴槿恵政権はそこまでやったんだ」「さすがに日本では、そこまではやらないよね」と、同行者で話し合った。アベ政権は、「そこまで」やろうとしている。
**************************************************************************
下記は、当ブログ(2018年4月5日)の一節。標題は、「韓国にもあったスラップ訴訟」。朴槿恵政権下での海軍基地建設反対運動弾圧目的のスラップ訴訟の紹介だが、辺野古でも、まったく同様の発想の運動弾圧が行われようとしている。
済州島(チェチュド)の南部カンジョン(江汀)村に、韓国海軍が大きな軍港を建設した。この基地建設に地元の反対運動が息長く続いている。しかも激しく。
2007年4月に、突然この地が基地の候補地とされたのは、ここなら抵抗運動もあるまいと侮られたからのようだ。同年8月村民は、当時の村長を解任し、基地建設反対派の新村長を選任した。その直後の海軍基地建設の是非を問う住民投票では、賛成36、反対680だったという。以来、村民の反対運動は粘り強く継続されている。にもかかわらず、政府と軍は、基地建設を強行した。この点、辺野古とよく似ている。
地元住民や全国の平和団体が熾烈な反対運動を繰り広げたが、2016年2月、基地は完成した。政府は住民や団体員9人を「北朝鮮を利する行為」として国家保安法で起訴した。
それだけではない。政府は運動体にスラップ訴訟を提起した。工事遅延による損害賠償として34億ウォンを要求しての民事訴訟の提起。「海軍はサムスン物産が工事遅延による損失賠償金を要求すると、273億ウォン(約27億円)を弁償し竣工式から1カ月後に住民と村会など個人116人と5団体を相手に34億5千万ウォン(約3億4千万円)の求償権を請求し、住民たちに不意打ちを食わせた」のだ。
2017年1月31日付ハンギョレ新聞は、「国策事業に反対するとどうなるのか見ておけと、国民に“警告”するかのような訴訟」と評している。まさしくこれこそがスラップ訴訟なのだ。これが朴槿恵政権下の事態であった。
与野党国会議員165人が、2017年10月、「政府が国民との訴訟を通じて主権者である国民を苦痛の崖っぷちに追いやることがあってはならない」とし、求償権の撤回を要求する決議案を提出した。
文在寅(ムン・ジェイン)政権となってから、空気は大きく変わっている。2017年12月、国はこのスラップ訴訟を取り下げたという。
いま、アベ政権も、「国策事業に反対するとどうなるのか見ておけと、国民に“警告”するかのような訴訟」をチラつかせている。アベ政権を倒すことが、諸悪の根源を断つことではないか。
(2018年8月20日)
本日は、8月17日。防衛省沖縄防衛局が沖縄県に通知した、大浦湾埋立の土砂投入開始予定日とされていた日。
午前中、カヌー50艇や小型船数隻が周辺海域に繰り出し、「美ら海を守れ」「違法工事はやめろ」「サンゴを殺すな」と訴えた。埋め立て土砂の投入や護岸工事、工事用ゲートからの資材搬入はなかったという。
土砂投入の通知がなされたのは6月12日。通知は、沖縄県赤土等流出防止条例上の義務なのだそうだ。県は通知後、45日の調査期間に、県が設定した基準に適合しているか否かを審査して、不適合の場合には計画変更命令を出すことができる。
その6月12日の記者会見で、翁長知事は「辺野古に新基地は造らせないとの決意はみじんも揺るがない。看過できない事態となれば、躊躇することなく(埋立承認)撤回を必ず行う」と明言している。
以来、8月17日が、辺野古新基地建設を推進する政府と、これに反対する県民・国民との抜き差しならぬ対決の日と想定され、沖縄県はこの日までに仲井真前知事の埋立承認を撤回すべく準備をしてきた。
翁長知事が、埋立承認撤回の具体的手続に着手し、その旨を公表したのが、7月27日。条例上の45日の調査期間満了の日に当たる。この日の記者会見で、知事は、承認撤回の理由について、国が「全体の実施設計や環境対策を示さずに工事に着工した」こと、サンゴ類を移植せずに着工したこと、埋め立て予定海域の地盤が軟弱であること、新たな活断層が発見されたことなど「承認時には明らかにされていなかった事実が判明した」ことを説明した。このときも、知事は「今後もあらゆる手法を駆使して辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と述べている。
同日県は、埋立の事業者である国から事前の反論を聴く「聴聞」の手続きを8月9日と指定して通告した。8月17日以前に承認撤回実行を意識しての日程である。
こうして、承認撤回を経て8月17日を迎えることが予想されていたが、聴聞手続きの前日8月8日に翁長知事急逝という予期せぬ事態の出来で事情が変わった。
沖縄県(知事職務代行者)は、本日(8月17日)までに「承認撤回」の通告をしていない。また、沖縄防衛局も土砂投入の工事の強行を差し控えている。現地での衝突もなく、法的手続の応酬もないままに、8月17日を迎えた。
政府は一昨日(8月15日)土砂投入を先送りする方針を固めたと伝えられている。17日の工事予定は台風の影響で準備が間に合わないというのが表向きの理由だが、翁長知事急逝を受けた知事選前倒しを踏まえ、「選挙戦への影響を見定める狙い」があると報道されている。
台風の影響で準備が間に合わないというのなら、数日の順延ということにしかならないが、本日の琉球新報は、「県関係者によると、翁長氏急逝を受け、政府が県に対し埋め立て承認撤回や土砂投入の延期を申し入れており、投入時期が9月30日投開票の知事選後にずれ込む見立てもある」との記事を掲載している。
当初は知事選が11月に予定されていたため、8月からの土砂投入で既成事実を積み上げておくほうが得策という政府の判断だった。しかし、9月に前倒しの選挙となると、もろに辺野古基地建設強行の可否が選挙戦の争点として問われることになる。その事態を避けたい、という本音なのだろう。
朝三暮四という故事成語が思い出される。餌の量は、朝三暮四でも朝四暮三でも変わらない。それでも、餌付けをされる猿は、朝三暮四では怒り、朝四暮三なら喜んだという。被治者を猿に喩えた、不愉快な寓話。
安倍や菅は、国民を猿並みに見下している。いずれ本格的な基地建設工事の強行は避けがたいが、選挙前は手荒なことをせずにやり過ごし、選挙後にやれば抵抗は少なかろうという、選挙民を愚弄する手口。県民の意思を真摯に聞こうという姿勢が欠落しているのだ。
政府は、沖縄知事選を県民操作の手段と見てはならない。新基地建設反対の県民の声に謙虚耳を傾けよ。そして、嵐の前の静けさのあとに、状況は激しく動くことになる。それを乗り越えた、オール沖縄の新知事誕生を期待したい。
(2018年8月17日)
翁長雄志・沖縄県知事の急逝が8月8日夕刻。その後の事態は急展開している。
翌9日が、大浦湾埋立承認撤回のための聴聞手続。非公開ではあるが、沖縄防衛局の期日延期要請は斥けられ2時間余で終了した。そして、2回目の聴聞はないとも報道されている。これで、8月17日土砂投入開始前の撤回が可能となった。
10日には、ゴルバチョフが遺族(妻・樹子さん)宛に追悼文を寄せたことが話題となった。「彼の活動の基本方針は、平和のための戦いであり、軍事基地拡大への反対と生活環境向上が両輪だった」とした上で「翁長雄志は私たちの中で永久に生き続けます」と結んでいる(琉球新報)。
そして、11日が辺野古新基地建設断念を求める県民集会である。那覇市奥武山陸上競技場での集会は、翁長雄志の追悼大集会ともなり、台風接近で雨が降るなか、主催者発表で7万人の参加者を得て大きな盛り上がりを見せた。
この集会参加者が手にしたプラカードにある「県民はあきらめない!」というスローガンが印象的である。今年1月28日投票の名護市長選の結果の分析で語られたのが、「沖縄のあきらめ」「地元のあきらめ」であったからだ。
辺野古に基地を作られるのは、地元民ならだれだっていやだ。できれば作らせたくはないに決まっている。しかし、地元が反対しても、県が反対しても、本土の政権は強大だし強行だ。裁判所も結局は政権の味方でしかないことが明確になった。どのように抵抗したところで、いずれは耐用年数200年という水・陸にまたがる巨大な辺野古基地が作られてしまうだろう。大浦湾の美ら海は死んでしまうことになる。望むところではないが、どうしようもない。あきらめざるを得ない。
名護市長選後に語られた「沖縄のあきらめ」はこれで終わらない。
辺野古での基地建設がやむを得ないなら、せめてその代償を手にしておかなければ踏んだり蹴ったりの結果となる。本土の政府に抵抗して押し切られた形で、基地建設が実現すれば、取れるものもとれない最悪の結果となる。今のうちに、政権に恩を売る形で、取引をしておけば何とか基地建設の代償を手にすることができる。地元振興策という代償が獲得目標とならざるを得ないではないか。
これが、沖縄の「自・公」が先導した、「沖縄のあきらめ」と「あきらめの先の政治選択」だった。11日の雨中7万人大集会は、この「あきらめ」のムードを転換させたのではないだろうか。「やはり、沖縄県民の矜持を大切に、基地建設反対を貫くべきではないか」との思いが新たになったように見受けられる。
12日、沖縄県は翁長雄志知事が死去したことを受け、県選挙管理委員会に知事の死亡を通知した。公選法の規定では、通知後50日以内に知事選が実施されることになる。この日、県選管によると、「10月1日までのいずれかの日となるが、9月23日か同30日の投開票が有力」とした。
そして、本日(13日)、故翁長雄志知事の告別式が那覇市松山の大典寺で行われた。氏の位牌を乗せた車が自宅から出発して、那覇市役所や県庁を回り、多くの県民が別れを告げるなかで、告別式会場に向かった。告別式終了後に、迫る県知事選の候補者選定の協議が行われるという。そして、選挙日程は9月30日に決まった。
ところで、11日の県民集会では、故知事の次男であるの翁長雄治(那覇市議)が登壇して、生前の知事の言葉を次のように紹介している。「沖縄は試練の連続だが、ウチナーンチュが心を一つにして闘うとき想像よりはるかに大きな力になる、と何度も何度も言われてきた」。
さて、この抜き差しならない事態である。ぜひとも、ウチナーンチュが心を一つにして、「沖縄のあきらめ」を払拭し大きな力を発揮することを期待したい。もちろん、心ある本土の人々の応援にもも期待を寄せたい。
(2018年8月13日)
驚愕し、そして落胆せざるを得ない。翁長雄志沖縄県知事が、劇的にその生涯を閉じた。2018年8月8日午後6時43分、浦添市浦添総合病院でのことだという。死因は膵癌。享年67。謹んで哀悼の意を表したい。
本日(8月9日)アベ晋三が、「翁長知事のこれまでの沖縄の発展のために尽くされたご貢献に対して、敬意を表したい」「常に沖縄の発展のために文字通り、命がけで取り組んでこられた政治家だ」との談話を発表したそうだ。
翁長に対する「常に沖縄の発展のために文字通り、命がけで取り組んでこられた政治家だ」という評価にはだれも異存はなかろうが、アベの「ご貢献に対して、敬意を表したい」は白々しい限りだ。「沖縄の発展」の内容は、翁長の目指したものと、アベがいうものとは、まったく異なっているからだ。
翁長の目指したものは、基地負担のない平和で豊かな沖縄。アベが押しつけようとしている沖縄とは、米軍基地負担を甘受し、さらには自衛隊基地の拡充をもやむなしとした、危険で不穏な沖縄である。県民の誇りを蹂躙した屈従の沖縄でもある。
その象徴が、名護市辺野古への新基地建設の翁長の反対と、オール沖縄を背にした翁長の反対を押し切ってのアベ政権の押しつけとの角逐である。
アベは、今年6月23日沖縄慰霊の日平和祈念式典に同席した際の翁長の刺すような眼差しを忘れることはなかろう。今にして思えば、翁長は「命を懸けて」あるいは、「命を削って」辺野古新基地建設反対を貫いていたのだ。翁長の命の何分かは、アベによって削られたと言って過言でない。
翁長が知事として、辺野古埋立の承認撤回の手続開始を表明したのが7月27日。その12日後の逝去である。かつて、辺野古の座り込みに参加した妻・樹子が、こう述べたと報じられている。
「(夫は)何が何でも辺野古に基地は造らせない。万策尽きたら夫婦で一緒に座り込むことを約束しています」
これが、翁長の遺言といってよい。沖縄防衛局からの8月9日聴聞を経ての埋立承認撤回は、知事代行者の遺言執行である。8月17日の土砂搬入開始以前の「撤回」と、その後の法的対応は、翁長の遺志の実現としてやり遂げられねばならない。
それにしても、翁長雄志は沖縄では、保守のエースといわれた人物である。安保条約廃棄論者ではなく、もとより自衛隊違憲論者でもない。その自民党沖縄県連の幹事長・翁長をして、辺野古新基地建設反対の先頭に立たしめたのは、沖縄県民の総意であった。自公の政権の乱暴なやり方が、オール沖縄勢力を育て、沖縄県民の反政権意識や運動を作りあげたのだ。
辺野古の基地建設の是非をめぐっては、なお、激しく「政権対沖縄」の図式で争い続けられるだろう。50日以内に、新知事を選出する選挙が行われる。翁長の遺志を受け継ぐ新知事の選出を希望する。それこそが、「これ以上の基地負担はゴメンだ」という、県民の悲鳴ともいうべき総意実現への道なのだから。
(2018年8月9日)
下記が7月11日(10時43分)にアップされた、琉球新報(デジタル版)の記事。「新基地中止へ要望書 東京・文京区議会『地方自治反する』」という見出し。この請願者が「文京9条の会連絡会」なのだ。
東京都の文京区議会(名取顕一議長)は6月25日に名護市辺野古の新基地建設の中止を求める要望書を政府に提出することを賛成多数で採択し、今月4日に首相、防衛相、外相宛てに送付した。
要望書の送付について6月21日に開かれた委員会で審議し、自民党と公明党の3人が反対したが共産党ほか3会派5人が賛成し、25日の本会議で採択した。東京都の区議会や市町村議会で辺野古新基地建設の中止を求めた要望の採択は、2015年に武蔵野市議会が採択した事例がある。今回はそれに次ぐものとみられる。
要望書は日本の防衛のためにある米軍基地の負担は全国で平等に負うべきであることや、弾薬庫などを備えた新基地は普天間基地の代替施設ではないことなどを指摘している。その上で「沖縄県民の反対を押し切っての新基地建設は、地方自治・民主主義の精神に反するもの」だとして、辺野古新基地建設中止を求めた。
区議会に要望書を提出するよう請願したのは文京区の市民らでつくる文京区9条の会(平本喜祿代表)で、5月25日に請願書を提出した。請願書の作成に関わった文京区9条の会の山田貞夫氏は「新基地建設に関し、東京からも反対の声を上げることは意義があると思った。今後も積極的に活動する」と話した。
経過を追うと、以下のとおり。
5月25日 文京9条の会連絡会(代表 平本喜祿)請願書提出
紹介議員4名
5月31日 受理? 総務委員会に付託
6月21日 総務委員会審議 賛成5 反対3(自・公)で可決
6月25日 本会議で採択
7月 4日 地方自治法99条に基づき、首相、防衛相、外相宛てに意見書提出
この請願の詳細は下記のとおりである。
受理年月日及び番号 平成30年5月31日 第3号
件 名 沖縄「辺野古新基地」建設の中止を求める請願
請願者 文京9条の会連絡会(代表 平本喜祿)
紹介議員 藤原美佐子 浅田保雄 関川けさ子 宮崎文雄
付託委員会 総務区民委員会
請願事項 沖縄の「辺野古新基地」建設の中止を国に求めること。
請 願 理 由
沖縄にある米軍基地の大部分は、米軍占領下で造られたものです。米軍基地の集中に伴い、婦女暴行などの刑事犯罪が頻発し、加えて、ヘリコプターの墜落事故なども続発しており、沖縄県民の生活・安全が脅かされています。
このような状況下で、沖縄県民は辺野古の新基地建設に反対しています。
理由は、
?沖縄にとって命の源ともいえる海を埋め立てることは認められない。
?米軍基地は日本の防衛のためのものであり、その負担は全国で平等に負うべきである。沖縄だけへの押し付けは差別である。
?辺野古新基地は普天間基地の代替だと政府は言っているが、強襲揚陸船の係船護岸や弾薬庫などを備えた新基地であって代替基地ではない。
などです。
わたしたちは、この沖縄県民の辺野古新基地建設反対の理由に賛同いたします。また、沖縄県民の反対を押し切っての新基地建設は、地方自治・民主主義の精神にも反すると考えます。これらの理由から、辺野古新基地建設は中止されるべきだと考えます。
わたしたちのこのような請願の理由にご賛同いただき、下記請願を採択され、政府並びに関係省庁に対して要望書を提出していただけるよう要請いたします。
なお、この請願に賛成した会派は共産・未来・永久・市民・まちづくりの5会派。反対したのは自民と公明の2会派。
また、地方自治法99条は、「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。」としている。国民の声を国政に反映させるチャンネルの一つである。
**************************************************************************
私は、「本郷・湯島9条の会」に所属する。「会」には会長がおり、会合は定期に行っているが、会費があるわけではなく、会員名簿も見たことはない。それでも、月一回の街宣行動はにぎやかに途切れることなく4年余も継続している。そして、ときおり、他の9条の会との共催で集会を企画する。
「本郷・湯島9条の会」以外に、文京区内には、各地域にも学園や職場にも少なからぬ「9条の会」があるようだが、正確な数は知らない。「文京9条の会連絡会」が行ったというこの請願のことも事前には知らなかった。また、請願採択に賛成した、文京区議会内の「共産・未来・永久・市民・まちづくり5会派」の連携についても、よくは知らない。
よくは知らなかったが、我が地元文京区には、市民運動においても、議会内の力関係においても、自・公の反対を押さえて、「沖縄「辺野古新基地」建設の中止を求める請願」を採択させるだけの力量と良識があるのだ。この請願採択を実現した関係者の努力に敬意と感謝の意を表したい。
二つ印象を書き留めておきたい。
一つは、冒頭に紹介した琉球新報の記事である。小なりとはいえ、1自治体の区議会がこのような請願を採択していることが、沖縄の運動体を励ます一助となっていることだ。
辺野古新基地建設問題については、沖縄と「本土」の運動の連携の必要が語られる。本土は具体的に何をすればよいのか。さまざまな試みがあるが、地元の地方議会での請願採択という方法もあるとを示した。
もう一つ。今回の請願採択は、市民と野党の共闘の成果にほかならない。文京区議会内の「共産・未来・永久・市民・まちづくりの5会派」が共闘に成功すれば、自・公という反平和勢力を凌駕するのだ。自・公は、少数派として孤立した途端に反憲法・反平和・反福祉の本性を露わにせざるを得ない。
毎月一度の街頭で喉を枯らしての訴えに、毎回確かな手応えを感じられるわけではない。しかし、今回の区議会での請願採択は、多くの人々の地道な努力の積み重ねの結果だろうと思わせる。
さて、もうすぐ8月。戦争と平和を熱く語るべき8月の「本郷・湯島9条の会」街頭宣伝行動は14日(火)の昼休み。おそらくは、炎天下真昼の本郷三丁目交差点は厳しい熱暑。しかし、アベにも負けず、夏の暑さにも負けぬ気概で、「9条の会」の活動に取り組みたい。
(2018年7月29日)
昨日(7月27日)、翁長沖縄県知事が辺野古新基地建設のための海面埋立承認を撤回の意向を表明しその手続が始まった。仲井眞前知事の大浦湾埋立「承認」を、承認時とは事情が変わったとして「撤回」することになる。当然、工事は続行できなくなる。新基地建設のための工事を続行するためには、国から県に対する「撤回処分の取消し」を求める提訴が必要となる。
本日(28日)、各紙が社説に取り上げている。ことの性質上、各紙の立場を鮮明にするものとなっていることが興味を惹く。
まず、沖縄2紙の社説。いずれも胸を衝くものがある。地元の願いや悩みをよく伝えているだけでなく、経過や問題点の指摘も詳細である。この2紙の社説と、読売・産経の、高飛車で冷ややかな社説とを読み較べられたい。維新直後の琉球処分以来の、本土による沖縄への差別意識が連綿と続いていることがよく分かる。太平洋戦争において、本土防衛のための捨て石にされた沖縄の歴史が持続しているのだ。
**************************************************************************
琉球新報(7月28日)社説
埋め立て撤回表明 新基地建設断念求める
翁長雄志知事が辺野古埋め立て承認の撤回を表明した。新基地建設を強行してきた政府はさまざまな対抗措置を準備しているとみられ、再び司法の場での争いになると予想される。政府がやるべきことは、長年基地の過重負担に苦しんでいる沖縄の状況を是正することである。知事が民意を背に決断したことを尊重し、辺野古新基地建設を断念すべきだ。
?
2014年知事選で勝利した翁長知事は、仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認を取り消した。代執行訴訟や和解、国地方係争処理委員会(係争委)の審査などを経て、最後は国が提起した不作為の違法確認訴訟で県が敗訴した。知事が「取り消し」を取り消したため、承認の効力が復活し現在に至っている。
? 承認に違法性がある場合に承認時にさかのぼって効力を失わせる「取り消し」に対し、承認後に生じた違法行為を根拠にする「撤回」は、その時点で効力を失わせる。いずれも公有水面埋立法で定められた知事の権限であり、事業者である国は埋め立ての法的根拠を失う。国の姿勢が変わらなければ、事業者の言い分を聞く聴聞を経て、知事は撤回を行うことになる。
国と県が裁判で繰り返し争うのは正常な姿ではない。政府の一方的な姿勢が県を訴訟に追い込んできた。岩礁破砕を巡っても、政府が県の許可を一方的に不要と主張し強行した。県は差し止め訴訟を起こし、現在も係争中だ。
? 15年の承認取り消し後の代執行訴訟では、裁判所が勧告した和解が成立した。しかしすぐに国が是正指示を出したため県は係争委に審査を求めた。係争委委員長は法的判断を回避した上で「国と沖縄県は真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題解決に向けての最善の道である」と述べた。しかし、ほとんど協議せず国は新たな提訴に踏み切る。裁判所や係争委の意向を国は無視した。
? そもそも国土の0・6%にすぎない沖縄県に全国の米軍専用施設面積の約70%が集中していることが問題の根本だ。基地の過重負担を強いながら、基地縮小を求める県民大多数の民意を無視し、貴重な自然を破壊する工事を強行する。このようなことが沖縄以外でできるだろうか。
? 辺野古に新基地を建設することについて自民党の石破茂元幹事長でさえ「ベストでもベターでもない。ワーストではないという言い方しかできない」と述べた。ワーストでない所なら沖縄以外にいくらでもあるはずだ。普天間飛行場の代替施設がどうしても必要と言うなら、沖縄以外に求めるべきである。他県には決して振りかざさない強権を沖縄には突き付ける。二重基準であり、差別そのものだ。
? 知事の決断を多くの県民が支持している。その民意に向き合うよう改めて政府に求める。建設強行に未来はない。
沖縄タイムス・7月28日社説
[辺野古撤回手続き]正当性を内外に訴えよ
法廷で再び国と争うことになる重い決断であるが、国は勝訴を見越して平然としている。
本来問われるべきは、問答無用の姿勢で工事を強行し、知事をここまで追い詰めた国の行政の公正・公平性であり、あまりにも理不尽な基地の恒久的押しつけである。負担軽減と言いながらその自覚すらないことに深い危惧の念を覚える。
翁長雄志知事は27日会見し、前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回するため、事業者である沖縄防衛局への聴聞手続きに入ることを明らかにした。
「撤回」は、埋め立て承認後に違反行為が確認されたり、公益を損なうような問題が浮上したときに、承認の効力を失わせるものである。
「撤回」のハードルは高い。それ相当の理由づけが必要だ。県庁内部では、技術的な理由から土木建築部などが「撤回」に二の足を踏み、意見集約が遅れた。
辺野古現地で反対行動を展開する市民からは「撤回」を求める悲鳴にも似た声が日に日に高まっていた。知事不信さえ広がりつつあった。
国は6月の段階で県に対し、8月17日から土砂を投入する、と通知している。その先に控えているのは11月18日の知事選だ。知事の決断は、埋め立て予定地への土砂投入が迫る中、時間的にも、支援団体との関係においても、県庁内の調整という点でも、ぎりぎりのタイミングだった。
記者会見で翁長知事は「撤回」の理由として、埋め立て承認の際に交わされた留意事項に反して工事が進められていることを挙げた。事業全体の実施設計も環境保全策も示さないまま、事前協議をせずに工事を進め、県の再三の中止申し入れにも応じてこなかった。
大浦湾側に倒壊の危険性がある軟弱地盤が存在すること、新基地建設後、周辺の建物が米国防総省の高さ制限に抵触することなども、埋め立て承認後に明らかになった問題点だ。
個々の問題に対する国と県の見解は、ことごとく異なっている。
国が「撤回」の効力停止を求め、裁判に訴えるのは確実である。その場合、「撤回」が妥当かどうか、その理由が大きな争点になるだろう。
翁長知事の埋め立て承認「取り消し」は2016年12月、最高裁によって違法だと見なされ、県側の敗訴が確定した。「撤回」を巡る訴訟も楽観論は禁物だ。
米軍基地を巡る行政事件だけに、なおさら、厳しいものになるのは確実である。
沖縄県はどこに展望を見いだすべきなのか。
県が埋め立て承認を「撤回」した場合、国と県のどちらの主張に「正当性」があるかという「正当性」を巡る議論が一気に高まるはずだ。
国は、普天間飛行場の早期返還のためと言い、負担軽減を確実に進める、と言う。「最高裁判決に従って」とも強調するようになった。菅義偉官房長官の定例会見で国の言い分は連日のように茶の間に流れ、ネットで拡散される。
国の主張する「正当性」が日本全体を覆うようになれば、沖縄の言い分はかき消され、「安全保障は国の専権事項」だという言葉だけが基地受け入れの論理として定着することになる。
「国の専権事項」というお決まりの言葉を使って、普天間飛行場の代替施設を九州に持って行かないのはなぜなのか。
日米地位協定が優先される結果、情報開示は不十分で、事故が起きても基地内への立ち入り調査ができず、飛行制限に関する約束事も抜け穴だらけ。沖縄の現実は受忍限度を超えている。
「『沖縄県民のこころを一つにする政治』を力の限り実現したい」と翁長知事は言う(『戦う民意』)。知事の苦悩に満ちた決断を冷笑するような日本の政治状況は危うい。沖縄の主張の「正当性」を幅広く内外に発信していくことが今ほど切実に求められているときはない。
**************************************************************************
各全国紙の社説を対比してみよう。朝日・毎日・読売・産経の順に。
朝日・7月28日社説
辺野古工事 目にあまる政府の背信
沖縄県・辺野古で進む米軍基地の建設について、翁長雄志知事がきのう、海面の埋め立て承認を撤回すると表明した。
県が理由にあげた数々の指摘は、いずれも重い。これにどう答えるのか。近く開かれる聴聞手続きで、政府は県民、そして国民に対し、納得できる説明をしなければならない。
今回、県に「撤回」を決断させた最大の要因は、今月初めに沖縄防衛局が県側に部分開示した地質調査報告書の内容だ。埋め立て用の護岸を造成する沖合の海底の一部が、砂や粘土でできていて、想定とは大きく異なる軟弱地盤であることを示すデータが多数並んでいた。
地盤工学の専門家によると、難工事となった東京・羽田空港の拡張現場の様子に似ていて、「マヨネーズくらい」の軟らかな土壌が、深さ40メートルにわたって重なっている。政府が届け出ている設計や工法では建設は不可能で、その変更、そして費用の高騰は避けられないという。
驚くのは、報告書は2年前の3月に完成していたのに、政府は明らかにせず、県民や県の情報公開請求を受けてようやく開示したことだ。加えて、「他の調査結果を踏まえて総合的に強度を判断する」として具体的な対策を打ち出さず、工法の変更許可も申請していない。
他の部分の工事を進めてしまえば、引き返すことはできなくなる。設計変更はそれから考えればいい。予算はいくらでもつける。秋には知事選が予定されているので、政府に理解のある候補者を擁立して、県の抵抗を抑えこもう――。そんなふうに考えているのではないか。
県と県民を裏切る行いは、これまでもくり返されてきた。
13年に前知事から埋め立て承認を受けた際、政府は海域のサンゴや海草、希少種の藻を事前に移植すると言っていた。だが守らないまま工事に着手。さらに、来月にも海への土砂投入を始めると表明している。資材の運搬方法についても、陸路を経由させて海の環境を保護する、との約束はほごにされた。
権力をもつ側がルールや手続きを平然と踏みにじる。いまの政権の根深い体質だ。これでは民主主義はなり立たない。
安倍首相は「(16年末の)最高裁判決に従って、辺野古への移設を進める」とくり返す。だが判決は、前知事の埋め立て承認に違法な点はないと判断したもので、辺野古に基地を造れと命じたわけではない。
軟弱地盤という新たな事実が判明したいま、新たな対応が求められるのは当然である。
「目にあまる政府の背信」というタイトルからして、県民の立場から政府を批判する内容になっている。県が撤回の理由にあげた数々の指摘はいずれも重いとして、政府に納得できる説明を求めている。なかでも、地質調査報告による軟弱地盤問題を重視している。
毎日新聞・7月28日社説
辺野古埋め立て工事 知事選を待った方がよい
……政府は土砂投入によって埋め立ての既成事実化を進め、移設阻止を掲げる翁長氏を支持してきた側のあきらめムードを誘いたいのだろう。
翁長氏自身が健康不安を抱え、移設反対派の知事選候補が定まらない中、土砂投入の開始を遅らせることで求心力を保つ狙いもあるようだ。
知事選前に工事を再開するかどうか、国側も難しい判断を迫られる。強引に進めれば県民の反発を招き、自民、公明両党の支援する候補に不利に働くかもしれない。
普天間飛行場の危険性は誰の目にも明らかなのに、辺野古への移設をめぐって国と県の関係がここまでこじれた原因は安倍政権の強権的な姿勢にあるといわなければならない。
4年前の知事選で示された民意と向き合うどころか、移設反対派を抑えつけ、県との対立をエスカレートさせてきた。今年2月の名護市長選では現職を落選させるため、補助金を使って住民の分断をあおった。
こうした政権側の姿勢を翁長氏は「傍若無人」と批判している。
分断と対立をできる限りなくすのが政府の務めではないか。そのためには知事選の結果を待ったうえで土砂投入の是非を判断した方がよい。
**************************************************************************
読売・7月28日社説
辺野古移設問題 承認撤回は政治利用が過ぎる
工事を止めるために手段を選ばない。政府との対立をあおるかのような姿勢は甚だ疑問だ。
沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、翁長雄志知事は埋め立て承認の「撤回」手続きに入る方針を表明した。「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地は造らせない」と語った。
政府は来月17日、護岸工事が終わった海域で土砂の投入を開始する。県は、沖縄防衛局から意見を聞いた上で、土砂投入の前に正式に撤回を決める構えだ。工事を中断させる狙いがあるのだろう。
翁長氏は撤回の理由について、サンゴの移植など環境保全措置が不十分だと主張したほか、埋め立て海域の災害防止の協議に政府が応じない、と批判した。
政府は、希少なサンゴについては移植の準備を進めている。県との協議も定期的に行っている。県の主張は一方的ではないか。
辺野古の埋め立て承認の問題は司法の場でいったん決着した。
翁長氏は2015年、前知事による承認手続き時に瑕疵があったとして、承認の「取り消し」を行った。最高裁は翌年、翁長氏の判断を違法と結論づけている。
県は、「撤回」は承認後の違反が理由であり、「取り消し」に関する最高裁判決は影響しない、と主張している。
政府の法的な正当性を認定した司法の判断を軽視するものだ。工事停止ありきの姿勢は、強引との批判を免れまい。
撤回が決まれば移設工事は一時的に止まる。国は、撤回の取り消し訴訟を起こすほか、執行停止を申し立てて対抗する。辺野古移設を巡る訴訟は6件目となる。
法廷闘争が繰り返される事態は異常だ。不毛な対立を多くの県民も望まないのではないか。
沖縄では11月に知事選が行われる。翁長氏は4月にがんの手術を受け、出馬するかどうか明言していないが、工事を遅らせることで基地問題に再び焦点をあてようとしているのだろう。
国家の安全保障にかかわる問題を政争の具とすべきではない。
辺野古移設は普天間飛行場の危険性を除去し、米軍の抑止力を維持する現実的な選択肢である。
移設計画は、過去の訴訟の影響で工事が再三中断し、大幅に遅れている。日米両国は、早ければ22年度の普天間返還を目指しているが、難しくなっている。
政府は移設の重要性を地元住民に丁寧に訴え、理解を得る努力を続けなければならない。
国と県との状況認識がまったく異なるように、地元二紙と読売の認識も真逆である。読売には、基地の負担を沖縄に押しつけていることについての心の痛みがない。「国家の安全保障にかかわる問題を政争の具とすべきではない。」という、この大新聞の切って捨てるがごとき断定には背筋が寒くなる。「地方は国に逆らうな」「沖縄は、日本のために我慢せよ」「もう、県民の我が儘は許さない」と言っているのだ。
産経・7月28日社説
辺野古埋め立て 知事は「承認撤回」中止を
? 米軍普天間飛行場の辺野古移設は、平和のための抑止力確保と普天間周辺の県民の安全を両立させるためのものだ。その意義は、いささかも減じていない。
沖縄県の翁長雄志知事が移設を阻止するため、県の関係部局に対し、前知事が出した埋め立て承認の撤回手続きに入るよう指示した。
県民を含む国民の安全確保と、北東アジア地域の平和の保持に逆行する誤った対応である。翁長氏は撤回手続きを中止すべきだ。
国は、早ければ8月17日にも辺野古沿岸部への埋め立て土砂投入を始める予定だった。
承認撤回の決定は8月半ばになる見通しで、国が裁判所に撤回の執行停止を申し立て、認められれば数週間後には土砂投入が可能になる。その後、国と県は法廷闘争に入ることになる。
?11月には、翁長氏の任期満了に伴う県知事選がある。
撤回劇を演じることで移設反対の世論をかき立て、選挙戦を有利にしようとする思惑があるとみられても仕方ない。
翁長氏は会見で、移設工事の環境保全措置が不十分であることなどを理由にあげ、埋め立て承認について「公益に適合し得ないものだ」と語った。
国は希少サンゴの移植など環境保全に取り組んできた。埋め立て承認自体を撤回すべきほどの不手際が国側にあるとはいえまい。
?菅義偉官房長官が会見で、県の通知には法令に従って対応するとした上で、「移設工事を進める考え方に変わりはない」と述べたのは極めて妥当だ。
翁長氏は会見で、米朝首脳会談などが「緊張緩和」をもたらしたため、辺野古の埋め立ては「もう理由がない」と語った。これも誤りである。
北朝鮮は核・弾道ミサイルを放棄しておらず、依然として脅威である。尖閣諸島(沖縄県石垣市)をねらう中国の軍事的圧力は高まっている。これを理解しない翁長氏の情勢認識は間違っている。陸上自衛隊の石垣島配備受け入れと協力を表明した中山義隆石垣市長に学んだらどうか。
沖縄を含む日本や北東アジア地域の平和を守る上で、沖縄の米軍は欠くことのできない役割を果たしている。市街地の真ん中にある普天間飛行場の危険性を取り除くことも急務である。
産経は、読売以上にイデオロギッシュで高飛車である。安全保障のためなのだから文句を言うなとの論旨。産経によれば、「北朝鮮も中国も危険な存在」なのだから、沖縄に米軍の駐留は不可欠なのだ。だから翁長知事は間違っている、という聞く耳を持たない姿勢。だから、承認撤回手続きを中止せよという。
薩摩による琉球侵攻(1609年)以来、琉球王国は明と薩摩の両国に二重服属の状態を余儀なくされた。読売・産経の論調はその再来を思わせる。アメリカと日本、駐留米軍と自衛隊によって、沖縄は二重の占領関係にあるのではないか。
時代は違う。県民の意思を、問答無用と切り捨ててはならない。
(2018年7月28日)
沖縄県が防衛局申請のサンゴ移植を許可したことが、私の参加する複数のメーリングリストに紹介され、賛否の意見が飛び交っている。
昨日(7月14日)の琉球新報記事は以下のとおり。
「県、サンゴ採捕許可 防衛局申請 食害対策条件付き 反対市民が5時間抗議」
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-761509.html
「米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、県水産課は13日、埋め立て予定海域にある絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体を別の場所に移植するため沖縄防衛局が申請していた特別採捕を許可した。防衛局は食害対策のかごを設置してから14日以内にサンゴを移植することになる。ただ、かごの設置には、さらに県の同意が必要としている。移植されれば工事が進み、知事の承認撤回の方針に「逆行する」との批判の声も上がっている。
今回許可した希少サンゴは2月に特別採捕が許可された後、食害の跡が見つかって不許可になり、防衛局は3月20日と4月5日に再申請した。県が許可の判断を防衛局に伝えた13日、工事に反対する市民が県庁を訪れ、約5時間にわたって県水産課に抗議した。
県は防衛局の食害対策を妥当と判断した。県水産課の粟屋龍一郎副参事は「ずっと審査して説明要求もした。内容を精査した結果、許可に至った」と述べた。
防衛局は辺野古海域で約7万4千群体のサンゴを移植対象とし、準絶滅危惧種のヒメサンゴ1群体や小型サンゴ約3万8760群体や大型サンゴ22群体なども、移植のための特別採捕を申請している。
沖縄タイムス記事は、以下のとおりだ。
「埋め立て海域の「オキナワハマサンゴ」採捕、沖縄県が許可 辺野古新基地」
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/283504
沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡って、翁長雄志知事は13日、埋め立て海域で見つかった「オキナワハマサンゴ」9群体を別の場所に移植するため、沖縄防衛局が申請していた特別採捕を許可した。翁長知事はこれまで、採捕許可を新基地建設を阻止する権限の一つとして掲げてきており、工事に反対する市民らが「埋め立ての進展につながる」と県に強く抗議した。移植されれば来月中旬以降にも始まる埋め立てが加速する可能性が高い。
許可したのは環境省の絶滅危惧種リストに掲載されているハマサンゴで、防衛局は3月20日に1群体、4月5日に8群体の採捕許可を申請していた。
移植期間は、防衛局が移植先にサンゴを保護するための籠を設置してから2週間。週に2回モニタリングし、県に報告することなどを条件とした。
県の担当者は、許可の可否を判断する標準処理期間の45日を大幅に経過した理由について、「希少なサンゴで知見もなかった。申請内容にも疑問があり、防衛局に説明を求め、その回答内容の精査に時間を要した」と答えた。
日本自然保護協会の安部真理子主任は「移植に適さないと専門家からの提言があったにもかかわらず、なぜそれを無視する形でサンゴの産卵期にあたる今、許可を出したのか」と疑問を呈した。
琉球新報と沖縄タイムスの両記事。ずいぶんと印象が異なる。
見出しだけだと、「反対市民が5時間抗議」とした琉球新報記事が、辺野古新基地反対派の立場から県の許可に批判的な印象となっている。しかし、琉球新報記事の内容は、「県は十分な技術的検討を行った結果、サンゴ保護策に格別の支障がないとの結論に至ったから、移植許可やむなしとなった」と思わせるものとなっている。
これに対して、沖縄タイムス記事は、見出しこそ穏当だが自然保護団体の「移植に適さないと専門家からの提言を無視する形でサンゴの産卵期にあたる今許可を出した」との意見の紹介が、鋭い県政への批判となっている。
県の真意ははかりがたい。確かに、行政処分である以上は、他事考慮は許されず、環境保護の施策として万全であるなら、許可はやむを得ない。しかし、「当該サンゴは移植に適さないと専門家からの提言があった」ということとなると、話しはちがってくる。少なくとも、その「専門家からの疑念」が払拭されるまで許可を留保すべきではなかったか。
たまたま本日(7月15日)糸数慶子参院議員にお話を聞く機会があって、率直に質問してみた。当然に、「この時期に許可を出すべきではなかったのではないか」とのニュアンスが滲む質問となった。そして、「オール沖縄としては、どうお考えか」が聞きたいところ。
回答は、必ずしも歯切れのよいものではなかった。翁長知事の健康問題が生じて以来、知事と沖縄選出国会議員団との意見交換の機会が十分に持てていないということでもあった。そうか、質問先がまちがっているのだ。県の判断なのだから、糸数さんにではなく、県の担当者に聞いてみなければならない。「オール沖縄」は一体という思い込みがそもそもの間違い。
「オール沖縄」は、保革の溝を超えて作られた微妙な政治的連合体だ。今、米・日政府の理不尽に対して、「辺野古新基地を造らせない」との一致点での統一戦線。安保についても、自衛隊についても、あるいは運動スタイルについても、意見さまざまな幅の広い党派やグループが参加している。「オール沖縄」が翁長県政を支えているとはいえ、「オール沖縄」が県の方針を決めているわけでも指導しているわけでもない。
それでも、思い出す。今年6月23日沖縄慰霊の日の「沖縄全戦没者追悼式」における翁長知事の「辺野古新基地はつくらせない」という決意を。来賓の安倍を睨みつけるごとき眼差しを。
糸数さんの講演も、11月知事選挙への翁長知事再出馬への期待に収斂するものだった。そして、本土の人々への我が事として捕らえなおしていただきたいという訴え。耳が痛い。何ができるだろうか。何をなすべきだろうか。
いま、私たちがなすべきことは、沖縄にこの理不尽を押しつけている安倍政権を掘り崩すことなのだろう。北朝鮮危機を煽り、「国難選挙」で掠めとった自民党の議席が、沖縄を苦しめ、憲法の危機を招いている。沖縄県政や「オール沖縄」との連帯とは、「アベ政治を許さない」との声を上げ続けること以外にはないように思う。
(2018年7月15日)