澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

佐喜真淳の討論会出席拒否 ― 候補者としての資格がないぞ

注目の沖縄知事選。「オール沖縄」陣営からの玉城デニーと、「チーム沖縄」からの佐喜真淳との事実上の一騎打ち。最大の争点は、アベ政権が強行する辺野古新基地建設を許さないとする県民意思を確認するのか容認するのか。

さて、前宜野湾市長佐喜真淳とは何者であるか。宜野湾市で知られてはいても、沖縄全県で知られた存在ではない。ましてや、全国では無名の人。佐喜真は、自分が何者であるか、どのような政治思想を持ち、どのような県知事としての政策を持っているのか、有権者に対して明らかにする責任がある。沖縄に国民の注目が集まっている以上、ひろく国民にも明らかにしていただきたい。

とりわけ、宜野湾市の利益と沖縄全県の利益との関係微妙な「基地移転」の問題について、宜野湾市長選での「県外移転」公約を維持するのか変更するのか、明確にしなければならない。そのためには、立候補予定者討論会を重ねることが最も適切であろう。

ところが、彼は立候補予定者討論会には参加しないという。「沖縄県政記者クラブが主催する立候補予定者討論会への参加を断る方針を決めた。佐喜真氏側は『異例の超短期のため日程がつかない』との理由で、マスコミ各社が個別に主催する討論会や対論番組にも一切出席・出演しない対応を取っている。(琉球新報)」

要するに、議論を避けて逃げているのだ。これはみっともない。まるで、総裁選での討論を避けているアベとおんなじではないか。討論しても恥をかくだけ。票が増える見込みはない。票を減らすことが明らかなのだから、討論会や対論番組に出席・出演することのメリットはない。そんな時間があれば、県内右翼団体の挨拶回りをして票を固めた方がよい、との割り切った判断なのだ。

しかし、沖縄県民は、この佐喜真陣営の姿勢を民主主義政治における公職の候補者としてあるまじきものとして批判しなければならない。選挙の主体は、飽くまでも有権者である。有権者が正しい選択ができるように、候補者は自らが何者であるかを有権者に積極的に語って知ってもらわねばならない。それは、候補者の責務である。

消費者が市場で商品を購入するに際しては、ためつすがめつ商品の説明をよく聞き、よく調べなくてはならない。複数の商品あれば比較検討しなければならない。これは消費者にとっての、商品説明を受け、正しい選択を受ける権利である。商品の説明を拒否するような売り手は、市場から駆逐されなければならない。まさしく、佐喜真という知事選市場に並んだ商品は、その商品吟味を拒否するのだから、市場から退場してもらわねばならない。

さらに、興味を掻きたてるのは、佐喜真が、「日本青年会議所(JC)沖縄ブロック協議会が主催する公開討論会だけには出席する」としていること。要するに、佐喜真にとっては、「日本青年会議所(JC)」だけがホームで、他のすべてがアウェイなのだ。佐喜真は、「討論会はアウェイでは困る。イヤだ」「日本青年会議所(JC)の討論会なら、主催者との事前の打ち合わせが十分にできて、恥をかかずに済ませることができるから、これだけはやる」という算段なのだ。卑怯千万。佐喜真の何たるかをよく物語っている。

伊波洋一と争った2012年宜野湾市長選の際に話題となったことだが、佐喜真淳とは日本会議に所属する真正右翼である。いや極右であって、保守本流や創価学会・公明党が推せるような代物ではない。一方、「日本青年会議所(JC)」も同様の極右。佐喜真とJC。琴瑟相和する仲。あるいは、腹心の友の間柄。

JCとは何であるか。「日本青年会議所」をウイキペディアで検索するとよい。『「日本商工会議所」、「日本青年団協議会」、「日本青年協議会」、「日本都市青年会議」、あるいは「日本青年社」とは異なります。」との注意があり、編集部からの註が付いていて、「大言壮語的な記述になっています。宣伝広告的であり、中立的な観点で書き直す必要があります」とされているが、それでも「問題となった事件・不祥事」欄に次の件が記載されている。
1998年 旭川女体盛事件
同 年 横浜セクハラ問題
2003年 東京JC日本振興銀行事件
強制わいせつ事件
2006年 八尾JC傷害致死事件
2007年 靖国神社アニメ制作問題
2008年 憲法タウンミーティング運営トラブル
2018年 「宇予くん」問題
批判ブログ著者への圧力
受動喫煙解雇撤回問題

一見して相当にいかがわしい。興味ある方はぜひウイキペディアの本文をお読みいただきたい。とんでもない団体であることがよく分かる。

今年にはいってから問題となった。「宇予くん」問題についてだけウイキペディアの記載を引用しておきたい。
「宇予くん」とは、本年2月、日本青年会議所国家戦略グループの内部組織である「憲法改正推進委員会」が、年初から「宇予くん」と称するキャラクターを用いたTwitterアカウントを運用し、「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」というコンセプトの元で、関係ない機関・団体への誹謗中傷や品性を欠いた内容ばかり投稿していたとして、外部から批判を受けた。日本青年会議所はTwitterアカウントを削除し、2月28日「不適切だった」として謝罪した。

「宇予くん」とは、「右翼君」の転訛なのだろう。日の丸2本を背負った、いかにも品性と知性を欠いた、右翼っぽい男の子のキャラクター。このことも、リテラが要領よく書いている。以下を参照されたい。

公益社団法人日本青年会議所(通称JC)が、Twitter上で「宇予くん」なるキャラクターを通じ、ネトウヨ丸出しの暴言を連発していたことが発覚した問題。あらためてはっきりしたのは、JCという組織のトンデモぶりだ。
http://lite-ra.com/2018/03/post-3836.html

佐喜真とは、このトンデモJCと蜜月なのだ。お互い、紛れもない改憲右翼。
もちろん、思想は自由である。右翼にも、破廉恥団体との親密者にも、立候補の自由がある。しかし、それを有権者に隠してはならない。正々堂々と、「ワタシは日本会議に属する右翼です」「日本の右翼は、左翼・リベラルの主張の反対を信条としていますから、彼らが辺野古新基地建設反対を言う以上、ワタシは賛成です」「ワタシは、アベ内閣同様アメリカの走狗として甘んじる覚悟ですから、海兵隊もオスプレイも沖縄にいていただいてけっこうです」と正直に言うべきなのだ。

ところが、討論会に出ないとは、自らを有権者の前に曝して、適切な選択をしてもらおうという姿勢ではない。身内には、右翼的姿勢を強調して見せ、一般有権者にはその思想や体質を隠し通そうという邪悪な魂胆。

こういう人物は、民主主義社会における政治家として、そもそもの資質を欠いている。正直・公正に欠けた人物には、用心深く接しなければならない。商品説明の不足を追求せず商品の吟味不十分であったがために、あとになって欠陥住宅をつかまされたり、詐欺商法に泣くことにならぬように。
(2018年9月3日)

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