澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

スラップは両刃の剣だ。統一教会は、自分を斬ることになる。

(2023年7月5日)
 先月の28日、統一教会の本部(韓国・清平)で、教団トップの韓鶴子が、日本人を含む約1200人の幹部信者を前に、「岸田を呼びつけ、教育させなさい!」と演説した旨報じられている。

 岸田と呼び捨てにされたのは、日本の首相である岸田文雄のこと。「岸田を呼びつけ、教育させなさい!」は、演説というよりは、悪罵を浴びせたというのがふさわしい。
 
 複数メディアが入手した韓鶴子の音声データの翻訳はこんなところ。
 「1943年、韓半島で独生女(救世主=韓鶴子自身を指す)が誕生しました。分かっているのは、日本は第2次世界大戦の戦犯国だということ。犯罪の国。ならば賠償すべきでしょ、被害を与えた国に」
 「今の日本の政治家たちは、我々に対して何たる仕打ちなの。家庭連合(統一教会のこと)を追い詰めているじゃない。私を救世主だと理解できない罪は許さないと言ったのに。その道に向かっている日本の政治はどうなると思う? 滅びるしかないわよね! あなた(信徒)たちの運動は国(日本のこと? それとも韓国のことか?)を生かす道だ!」
 「政治家たち、岸田をここに呼びつけて、教育を受けさせなさい! 分かっているわね!」

 信者たちは、歓声と拍手で応え、「万歳!!」と叫んだという。統一教会とは、統一教会信者とは、「韓鶴子を救世主だと理解できない罪は許さない」という、思い上がりも甚だしい、他からは理解不能の集団なのだ。

 その統一教会が、日本の右翼と相性が良い。とりわけ、岸信介・笹川良一・安倍晋三などが教団と癒着し、これに取り入っていたことはよく知られている。国士を気取る右翼の輩が、どうして韓国ナショナリズム集団とかくも親和的であるのか、理解しがたい。岸田を除く自民党の連中が、「文鮮明や韓鶴子を救世主だと理解していた」というのだろうか。

 その韓鶴子が創設したのが、「世界平和女性連合」である。統一教会の宗教法人としての登録名が「世界平和統一家庭連合」。名称が近似しているだけではない、ダミー団体。その女性連合が、「韓鶴子を救世主だと理解できない」弁護士7名を被告とし、損害賠償を求めて東京地裁に新たな提訴をした。昨日(7月4日)のことである。請求金額は、3300万円。

 この訴訟の原告代理人となった弁護士は、統一教会お抱えとしてお馴染みの福本修也ではなく、これまでは、右翼の弁護士として知られていた徳永信一。なるほど、統一教会のダミーと攻撃されている女性連合の代理人が統一教会お抱え弁護士では座りが悪いということなのだ。統一教会と右翼との蜜月を見せつける弁護士選任である。

 女性連合は、6月から8月にかけて、全国28カ所で留学生向けの日本語弁論大会を開く。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、これを「旧統一教会の資金集め、人集めのためのイベント」と指摘して警戒を呼び掛け、6月15日の全国弁連声明では、女性連合は「ボランティア組織を仮装した悪質な献金勧誘団体」として、全国の自治体に施設の利用許可をしないよう求めた。

 女性連合は、この声明を「宗教ヘイト」と主張、弁連の主要メンバーである弁護士7人に損害賠償を求めて提訴した。訴状提出後の記者会見では、「声明は悪質な印象操作だ」「旧統一教会と創設者は同じだが、活動も運営も独立した別個のNGO団体だ」とし、全国弁連の声明は「事実無根で名誉毀損に当たる」、自治体への働きかけは「差別的取り扱いを勧奨する宗教ヘイトとして、法の下の平等を定める憲法14条などに反する」とした。

 この訴訟には万に一つも、原告側の勝ち目はない。勝ち目がなくても、提訴によって統一教会に対する批判の言論を怯ませることができるだろうという思惑だけがよく見える。

 しかし、スラップは常に両刃の剣である。この訴訟も、原告敗訴が確定した時の、統一教会側のダメージは大きい。全国弁連側がコメントしているとおり、「訴訟の中で、女性連合の実態が明らかにされざるを得ない」からだ。統一教会は、この提訴によって自分を斬って傷つくことになるだろう。

テレビ放送での名誉毀損発言の内容は、「一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準」に特定されなければならない。

(2023年6月30日)
 久しぶりのブログ投稿。なんとなく懐かしい心もち。日課としていた毎日の更新から解放されたこの3か月、なんと気が楽で心穏やかな日々となったことだろう。10年間の連日ブログ更新は相当の重荷だった。あらためて、これからやれと言われてもできることではない。とは言え、何もしないでは物足りない。時折に、気ままに、永く書き続けたい。

 本日午後、統一教会スラップ5事件のトップを切って、八代英輝事件での東京地裁判決があった。当然のことながら統一教会の敗訴、請求棄却判決である。もちろん、敗訴判決で統一教会側がめげることはない。もともと勝てると思っての提訴ではないからだ。だから、当然控訴ということになるだろう。

 これを、教団内部では「法難」というのだろうか。「左翼勢力が仕掛けた教団バッシングに裁判所までが乗せられ欺されている」「受難の時代には、正義の訴えも届かない」「不当判決の試練を乗り越えよう」…。どのようにも、ものは言いようなのだ。

 ちょうど、安倍晋三銃撃一週年を目前のタイミング。統一教会問題とは何なのか、このカルトが安倍や萩生田などの右翼政治家となにゆえにどのように結びついていたのか。再確認の好機ではある。

 統一教会スラップとは、下記5件の名誉毀損訴訟である。
 いずれも原告・統一教会から、テレビあるいはラジオ放送での発言で、原告法人の名誉を毀損したとして、当該発言者と放送局を訴えたもの。(提訴日は、いずれも2022年)

  被告 紀藤正樹・讀賣テレビ (請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 本村健太郎・讀賣テレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 八代英輝・TBSテレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 紀藤正樹・TBSラジオ(請求額1100万円)10月27日提訴
  被告 有田芳生・日本テレビ (請求額2200万円)10月27日提訴

 もちろん、それぞれの事件で論点は違ってくる。八代英輝事件訴状に記載された名誉毀損文言は長い。当該部分を転載してみよう。

 《被告八代は,令和4(2022)年9月1日,被告会社(TBSテレビ)が制作放送する「ひるおび」(以下,「本件番祖」という。)にコメンテ一ターとしてテレビ出演し,「信 教の自由ということを大上段に振りかかったら,調査もだめですし,自ら点検することも僕はダメだと思います。先ずは点検してそれを公表求めるわけですから。ですから,一緒です。ですからその信教の自由の問題ではないということを先ず自民党の方々に理解して頂くのがこのスタートであって,これは数々の消費者被害を生んだ,カルト団体であって,思想の根底に反日的な思想を持っている,あの組織の問題だと,いうことで,誰もこの党,あのこの統―教会の教義そのものを点検しようなんて話はしてないんですよ。ですから,教義が内容云々で,それをその思想内容を調査しようとしているんではなく,この教団がやっている外形的な犯罪行為等をですねそういうことに着目しているわけです。反セクト法,あの反カルト法もまさにそういう意味,部分で,外形に着目して,信教のその内心の教義ということは問題にしないってこと,だからこそ許されてるわけです,フランスでも。ですから,そこの部分はやはりその,信教の自由に逃げてしまうということになると,ちょっと,あのー,それは違うんじやないかなっていう風に僕には見えてしますね」と発言した。
 上記発言は,一般視聴者をして,原告が犯罪行為等を現に行っていると認識させるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を著しく毀損するものである(以下「本件名誉毀損行為」という。)。なお,上記発言は事実に反する。原告が「犯罪行為等」を現に行い,又は過去にこれを行ったという事実はない。》

 話し言葉を録音して反訳した文章ゆえの読みにくさはあるが、内容はごく常識的な発言である。「統一教会の教義や布教活動のあり方を問題にすれば、信教の自由に対する不当な弾圧となってしまう。それを避けるためには、飽くまで信教の自由に関わる問題とせずに、この教団がやっている外形的な犯罪行為等に着目すべきである。 そうすれば、教団に対する調査も点検も許される」との意味であろう。

 この八代発言を違法な名誉毀損行為とする原告(統一教会)側の主張の建て方は、こうであろう。
(1) 「教団がやっている外形的な犯罪行為等」が存在するとは何ごとか。これこそ、原告法人(統一教会)の名誉を毀損する違法な発言である。
(2) もっとも、「教団がやっている外形的な犯罪行為等が存在する」という発言が真実であることを被告が立証した場合には、発言の違法性が阻却されて責任追及はできない。
(3) だから、この事件の争点は「教団がやっている外形的な犯罪行為等の存否に尽きる」ことになる。そして、「教団が犯罪行為等を現に行い,又は過去にこれを行ったという事実はない」のだから、被告八代の発言は違法であり、損害賠償の責任は免れない。

 「統一教会が過去に犯罪を行ったことはない」は、微妙な問題である。が、統一教会としては、「統一教会自体として、あるいは統一教会の代表者として有罪判決を受けた例はない」という立場である。

 しかし、判決は原告(統一教会)の思うような判断の仕方にはならなかった。原告主張の判断過程(1)の前に、「一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準」として、八代発言の意味を、字義のとおりではなく「実質的な意味」に理解したのだ。これは、いわゆる「ダイオキシン事件」における最高裁判決が定立した以下の解釈基準によるものである。

 《テレビジョン放送された報道番組による事実摘示型の名誉毀損における社会的評価の低下の有無、およびそこで摘示された事実がどのようなものであるかについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断すべきである》(2003(平成15).10.16第一小法廷判決)

 まだ、私はこの判決書を読んでいない。しかし、複数の報道を総合すると、本日の地裁判決はこう判断したようである。

 《一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とすれば、八代発言の「教団がやっている外形的な犯罪行為等」は、実質的に「数々の消費者被害を生み出していること」の意味と捉えるべきである。その上で、この発言の真否を考えれば、教団が信者に違法な献金や物品購入の勧誘をしたと認定した判決が複数あることから、発言の実質的な内容は「真実と認められる」。また、「(教団の)構成員の行為に起因して数々の消費者被害が生じたとする点は真実である以上は、これにもとづいた発言の全体が意見や論評として尊重されるべきであり、意見や論評の域を逸脱するとはいえない》

 関連事件にとって、幸先のよい第一号判決となった。他事件も順次これに続いての判決となるが、よもや取りこぼしはないだろう。

2022年の大晦日に、今年の自分を振り返る。

(2022年12月31日)
 よく晴れた大晦日だが、時代は視界の開けない昏い印象である。世界も、国内も、どんよりと重苦しい。だれもが望んできたはずの平和が蹂躙されている。大量の兵器が世に溢れ、核の脅威さえ払拭できない。軍需産業とその手先の政治勢力が、不気味にほくそ笑んでいる。18世紀のスローガンであった、『リベルテ、エガリテ、フラテルニテ(自由・平等・友愛)』が、いまだに虚しいスローガンのままだ。明日の元日が、一陽来復とか初春の目出度さを感じさせるものとなろうとは思えない。

 それでも、今年の私生活は比較的順調だった。身内の不幸がなかったことだけでもありがたいと思う。この夏には、「DHCスラップ訴訟」(日本評論社)を上梓した。表現の自由についてだけでなく、民事訴訟のあり方や、政治とカネ、消費者問題についても、それなりの言及が出来ていると思う。

 そして、この夏にもう一冊、兄弟で父と母を偲ぶ歌集(兼追悼文集)を自費出版した。数年前に兄弟4人で作ることを決め、次弟の明(元・毎日新聞記者)が選句し編集していたが、昨夏突然に没した。そのあとを三弟の盛光が完成させた。明の遺した歌も入れ、編集後記は生前に明が書いた通りのものとなった。

 B6版で88ページ、装幀と印刷は株式会社きかんし(東京都江東区辰巳2-8-21 TEL03-5534-1131)にお願いしたところ、手際よく手頃な値段で立派なものを作ってくれた。できあがってみると感慨一入である。200部の非売品である。

 表題は「歌集 『草笛』 澤藤盛祐・光子 追悼」。歌集の題は、「草笛」という。歌集冒頭の父の一首からとった。

  校庭の桜の若き葉をつまみ草笛吹きし少年のころ

 この校庭は旧制黒沢尻中学(現黒沢尻北高)のもの。父にも、多感な「少年のころ」があったのだ。そのことを書き留めておく意味はあろうかと思う。

 11月12日に、縁者が秩父の小鹿野町に集まって、このささやかな「追悼歌集」の出版記念会を開いた。盛祐・光子の子・孫・ひ孫と、その配偶者27名の賑やかな集いとなった。楽しいひとときではあったが、次弟・明の姿はなく、小鹿野に家を建てた妹の夫も鬼籍に入っている。時の遷りに、さびしさも感じざるを得ない。

 なお、今年も365日このブログの連続更新は1日も途切れなかった。あと3か月、来年の3月末で、満10年の連続更新となる。その10年を一区切りにして、しばらく擱筆しようと思う。第2次安倍晋三政権の危険性に触発されて連載を始めた当ブログである。幸いに、明文改憲だけは許さずに、10年になろうとしている。そして、安倍晋三は、既に世に亡い。

 目も歯も悪くなった。腰は痛い。筆が遅い。それでも、気力だけが健在である。あと3か月このブログを書き続けて、その後しばらくは今引き受けている仕事に専念しようと思う。 

《有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会》に、ご支援のカンパをお願いします。

(2022年12月21日)
 《有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会》が立ち上がっている。
 その公式ホームページが下記URL。

https://aritashien.wixsite.com/home

 単に「有田さんを支援しよう」というのではなく、《有田芳生さんと共に闘おう》と名乗りを上げているのが末尾に記した29人。大した面子ではないか。

 闘う相手は旧統一教会で、闘いの場は法廷である。闘いによって勝ち取ろうとしているものは、抽象的な「表現の自由」にとどまらない。「信教の自由」の美名のもとに猛威を振るったカルトの反社会性と政権との癒着を徹底して明らかにすること、そのことを通じて真っ当な政治を取り戻すこと。そのための闘いなのだから、有田さん一人に任せずに、わがこととして共にスラップ訴訟を闘おう、という29人。

 その有田芳生さんが、「共に闘う会」のホームページに《闘争宣言》を掲出している。一節をご紹介したい。

▼教団が韓国で生まれて68年目。統一教会=家庭連合は組織内外に多くの被害者を生んできました。まさに反社会的集団です。私は元信者はもちろん現役信者とも交流してきて思ったものです。日本史に埋め込まれた朝鮮半島への贖罪意識を巧みに利用して真面目な信者を違法行為に駆り立ててきた統一教会の犯罪的行為の数々は絶対に許すわけにはいきません。

▼安倍晋三元総理銃撃事件事件をきっかけに、自民党との癒着など「戦後史の闇」の蓋が開きはじめました。私は信頼する弁護団と社会課題についてはたとえ立場が異なれども教団に立ち向かう一点で集ってくれた「有田さんと闘う会」の高い志を抱きしめて、みなさんとともに、統一教会と徹底的に本気で闘っていきます。

▼その物質的支えとして、賛同してくださる方々それぞれの「一灯」、資金カンパをお願いできると幸いです。定職もなく元のフリーランスに戻ったのは、人生の循環で、ごく普通にうけとめています。でも裁判には時間もお金もかかります。旧統一教会に訴えられてからは、ピタッとテレビの仕事はなくなりました。まさにスラップ(恫喝)訴訟の効果です。反社会的な旧統一教会に圧倒的に勝たなければなりません。被告は私と日本テレビです。私は独自に5人の強力弁護団にお願いして闘っていくことにしました。日本テレビとは別個の弁護団です。HP表紙に「カンパのお願い」があります。どうかお気持ちをお寄せください。よろしくお願いします。

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「有田さんと闘う会」への特別カンパのお願い

 旧統一教会との裁判は、長丁場になることが予想されます。

 スラップ裁判の目的が、<金銭的余裕がある原告が、相手を弁護士費用、時間消費、精神的・身体的疲労などで、追い詰めていくこと>にある以上、私たちは、有田さんを精神的にも、金銭的にも支えていかなければならないと考えています。

 旧統一教会は、理不尽な霊感ビジネスや、信者からの多額な寄付で、かなりの資金を持っています。一方、訴えられた有田さんは、裁判準備だけで数百万円単位のお金が必要です。

 そこでご支援していただける方に、カンパをお願いする次第です。
 金額は問いません。可能な範囲でのご協力をお願いします。

 振込先
 三菱UFJ銀行 月島支店
 普通口座 4500218
 口座名 チームAAA

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《有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会

賛同人リスト》


青木理 ジャーナリスト
池田香代子 翻訳家
石井謙一郎 フリーライター
石坂啓 漫画家
石橋学 新聞記者
?井筒和幸 映画監督
内田樹 作家
江川紹子 ジャーナリスト
木村三浩 一水会代表
坂手洋二 脚本家
佐高信 作家
辛淑玉 コンサルタント
せやろがいおじさん(榎森耕助) 芸人
谷口真由美 法学者
寺脇研 映画プロデューサー
中沢けい 作家
仲村清司 作家
浜田敬子 ジャーナリスト
藤井誠二(事務局) ノンフィクションライター
二木啓孝(事務局) ジャーナリスト
前川喜平 教育評論家
松尾貴史 俳優・コラムニスト
三上智恵 ドキュメンタリスト
宮台真司 社会学者
室井佑月 作家
望月衣塑子 新聞記者
森達也 映画監督
安田浩一 ノンフィクションライター
吉永みち子 ジャーナリスト

近時のスラップ訴訟・紹介

(2022年11月30日)
 ある会合でのミニ講演を引き受けて、スラップについて語ることになった。その報告のために、最近話題となったスラップをまとめてみた。その進行がどうなっているのか、リアルタイムでの把握は、なかなか面倒で難しい。

?スラップとは、言論の封殺を目的とする民事訴訟を意味する。訴訟提起による威嚇が目的だから、典型例は高額の請求となる。が、最近必ずしも、高額請求ばかりではなさそうだ。それでも、スラップの効果は十分に期待できるのだ。

 こうして並べてみると、維新の面々によるスラップが目立つ。そして、時節柄統一教会絡みが大きな影を落としている。

?本年提起の主要スラップ
☆統一教会スラップ(下記5件の名誉毀損訴訟)
A 被告 紀藤正樹・讀賣テレビ (請求額2200万円)9月29日提訴
B 被告 本村健太郎・讀賣テレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
C 被告 八代英輝・TBSテレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
D 被告 紀藤正樹・TBSラジオ(請求額1100万円)10月27日提訴
E 被告 有田芳生・日本テレビ (請求額2200万円)10月27日提訴

☆猪瀬直樹 対三浦まり&朝日 (請求額1100万円)9月6日提訴
☆松井一郎対水道橋博士 スラップ(請求額550万円)3月31日提訴
☆橋下徹対大石あき子&日刊ゲンダイ(請求額300万円)3月11日第1回期日
☆山口敬之対大石あき子(請求額880万円)9月20日第1回口頭弁論

?現在進行のスラップ
☆世耕弘成対中野昌宏・青学教授(請求額150万円)提訴19年08月30日

?過去のスラップ
☆幸福の科学スラップ
☆武富士関係スラップ⇒武富士ボロ負け(武富士側弁護士に大きな責任)

☆DHCスラップ訴訟(DHC側弁護士に大きな責任)
(1)提訴日 2014年4月14日 被告 ジャーナリスト
  請求金額 6000万円
  訴えられた記事の媒体はウェブサイト
(2) 提訴日 2014年4月16日 被告 経済評論家
  請求金額 2000万円
  訴えられた記事の媒体はインターネット上のツィッター
(3) 提訴日 2014年4月16日 被告 弁護士(澤藤)
  請求金額 当初2000万円 後に6000万円に増額
  訴えられた記事の媒体はブログ。
(4) 提訴日 2014年4月16日 被告 業界紙新聞社
  請求金額 当初2000万円 後に1億円に増額
  訴えられた記事の媒体はウェブサイトと業界紙
(5) 提訴日 2014年4月16日 被告 弁護士(折本)→(15年1月15日一審判決)
  請求金額 2000万円 
  訴えられた記事の媒体はブログ
(6) 提訴日 2014年4月25日  被告 出版社
  請求金額 2億円
  訴えられた記事の媒体は雑誌
(7) 提訴日 2014年5月8日  被告 出版社→(14年8月18日 訴の取下げ)
  請求金額 6000万円
  訴えられた記事の媒体は雑誌
(8) 提訴日 2014年6月16日  被告 出版社
  請求金額 2億円
  訴えられた記事の媒体は雑誌
(9) 提訴日 2014年6月16日  被告 ジャーナリスト
  請求金額 2000万円
  訴えられた記事の媒体は雑誌(寄稿記事)
(10) 提訴日 2014年6月16日  被告 ジャーナリスト
  請求金額 4000万円
  訴えられた記事の媒体は雑誌(寄稿記事)

?注目される世耕スラップ判決
 世耕弘成対中野昌宏(青山学院大学教授・西洋思想史)事件では、被告側が世耕の提訴を違法なスラップだとして、本訴請求と同額の損害賠償請求の反訴を提起している。今月4日、当事者双方の本人尋問を終え、おそらくは来春判決になるものと思われる。この判決は注目すべきである。

 世耕が名誉毀損文言と特定した中野のツィートは、「世耕弘成は原理研究会(統一教会)出身だそうですね。日本会議とシームレスにつながる。」というもの。これが「世耕の社会的評価を低下させる事実摘示」「だから「世耕弘成は原理研究会(統一教会)出身』であったか否かだけが唯一の問題」「その事実の挙証責任はもっぱら中野側にある」とするのが世耕側の主張。中野はこれにこう反論している。

 「政治家(世耕)に対する市民(中野)の言論は公的なものとして、手厚く保護されなくてはならない。この裁判で市民側が敗訴するようなことでは、市民が政治家への疑惑や政治姿勢・思想について、証拠がないと論評できなくなる」。しかも、世耕は中野の投稿へ否定や反論、削除要請をせずに提訴しており、「世耕の提訴は、政権に批判的な言論を抑圧する意図で起こした『スラップ訴訟』として断罪されねばならない」どう喝や嫌がらせを主眼にした訴訟だと主張。
 
 本人尋問で世耕は、旧統一教会に関連する団体の出身だと事実無根のツイッターに投稿で名誉を傷つけられたとして、「メッセージを送っただけで厳しい指摘を受ける中、元会員だったと言われ、政治家としての名誉を著しく傷つけられた」と述べた。一方、中野は、訴訟が言論を抑圧する目的で起こされた「スラップ訴訟」だとした上で、ツイートの趣旨は世耕議員の思想が旧統一教会の関連団体と近いものであると指摘するためだったと説明したという。

 中野はこうも述べたという。「裁判所にお願いしたいのはスラップ訴訟を政治家が一般人に対して起こす訴訟は特別なので、一般の名誉毀損とは同じように扱われると意味が違う。公益的な言論をやっている中で萎縮させてしまう。」

 これは事実上、合衆国連邦最高裁が1960年代に判例として確立したと言われる「現実的悪意の法理」の主張ではないか。

 これは、公人(世耕)が表現行為の対象である場合に限っては、表現者(中野)がその表現にかかる事実が真実ではなくても、「虚偽であることを知り、又は、虚偽であるか否かを無謀にも無視し」た場合、つまり日本法でなら、「故意または重過失」あったことを原告(世耕)が立証しない限り名誉毀損の成立を認めない、とするもの。公人に対する表現の自由を手厚く保護するものだが、我が国の判例の取らないところとされている。

 さて裁判所が、中野の声にどこまで耳を傾けるだろうか。注目に値するのだ。

統一教会スラップに怯んではならない。言論封殺の成功体験を作らせてはならない。

(2022年11月15日)
ジャーナリスト有田芳生が「統一教会―銃撃・北朝鮮・自民党―」と表題したパンフを作成している。編集・発行は立憲フォーラム、頒価100円。今起きている問題の整理に手頃な内容。

 その冒頭に、「有田芳生×与良正男」の「30年の放置繰り返すな」と題する対談が掲載されている。毎日新聞9月2日夕刊記事の転載。その中で、有田はこう詳しく語っている。

有田 一連のオウム事件が裁判の局面に移った95年秋のことです。警察庁と警視庁の幹部に呼ばれ、統一教会についてレクチャーしてほしいと頼まれたんです。当日、全国から集まった目の鋭い男性たちの前で教団の歴史や霊感商法の手口などを話しました。終了後、両庁の幹部に聞くと、「オウム事件はほぽ決着がついた。次は統一教会の摘発を準備している」と言うのです。
与良 ところが、その後も摘発は行われませんでした。
有田 10年たった2005年、警視庁公安部の幹部2人と居酒屋で飲む機会がありました。「統一教会をやると言っていたけど、何もなかったじゃないですか」と聞いたら、「政治の力だ」と。それ以上は言わないんですが、警察に太いパイプを持つ政治家が動いたとしか考えられませんでした。実際、07年の教団の内部資料を見ると、「対策費」という名目で毎月1億円の予算がついている。その一部は「警察に強い国会議員の対策」と関係者から聞きました。おそらく領収書のあるようなお金ではないので、どこへどう流れたかは確認しようがない。ですが、こうした資料から推測すると、95年以降、警察の動きを察知した教団が政界への働きかけを図っていた可能性が浮かんできます。

 この対談は8月下旬と思われるが、そのときにはこのような発言が問題となるとは思いもよらなかっただろう。

 有田は8月18日には、テレビ朝日「モーニングショー」に出演し、旧統一教会に関連して要約以下の発言をしている。

 「1995年秋に警察庁と警視庁の幹部の依頼で、対象者を聞かずに20?30人を相手にレクチャーを行い、その際に、「統一教会の摘発」を視野に入れていると聞いたと明かした。
 そのうえで、その10年後のこととして「幹部2人と話をした時に、10年たって、今だから言えることを教えてくれって聞いたんですよ。なんでダメだったんですか。一言ですよ。『政治の力』だったって。圧力」

 8月19日放送の日本テレビ番組「スッキリ」でも同趣旨の発言がなされている。
そして、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、10月27日に至って有田と日本テレビを被告として、名誉毀損訴訟を東京地裁に提起した。請求金額は2200万円である。典型的なスラップ訴訟といってよい。

 報道によると、「スッキリ」で有田がした教団についての発言内容は、以下のとおりである。

「一時期距離を置いていた国会議員達も、もう一度あの今のような関係を造ってしまったっていうその二つの問題があるということを思うんですが、どうすればいいかっていうのは、やはりあの、もう霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係をもたないと、そういうことをあのスッキリ言わなきゃだめだと思うんですけどね」

 要約すれば、「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」という内容。これが名誉毀損文言であると主張されている。
 
 とすれば、この訴訟は比較的単純な事実摘示型名誉毀損訴訟である。報道が正確なものだったとして、有田の「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」という発言が、統一教会の社会的評価を低下させるに十分な名誉毀損文言に当たることは論を待たない。

 訴訟では、被告の側の抗弁として、公共性・公益性・真実性(または相当性)を挙証しなければならないことになる。名誉毀損訴訟の実務において、公共性と公益性の立証のハードルはさして高いものではない。問題は、事実上真実性(または真実と信じたことについての相当性)の立証如何に絞られる。

 被告は2名だが、日テレ側が有田発言の真実性の立証に格別の役割を果たすことは考え難い。被告有田自身が真実性や相当性の立証活動に奔走しなければならないことになる。軽々には言えないが、スラップの提起そのものを違法とした反訴の提起にも期待したい。

DHCから身を退く吉田嘉明に問われる社会的責任

(2022年11月14日)
DHCが身売りするという。その買い手はオリックス。事業は承継されるが、吉田嘉明は経営から手を引き、ブランド力を強化するという。DHCmなんぼかマシになるのだろう。吉田嘉明が経営から脱しさえすれば、それだけでマイナスイメージが薄められ、ブランド力は向上する。

消費者がその力量を発揮してDHCを追い込んだという構図ではなさそうなことが少々は残念だが、デマとヘイトとスラップの元兇と目されてきた吉田嘉明退任だけでも、良いニュースと捉えよう。

 少し考えさせられる。私が、DHC・吉田嘉明とスラップ訴訟を闘っているときであったら、どうなっていただろうか。訴訟継続の是非は、新経営陣の判断に任されたであろう。そのときには、どのような訴訟終了の選択がなされただろうか。

 もっと早期に吉田嘉明が経営から手を引いていれば、私が被告とされることはなかったのに、と思わないでもない。こういう傍迷惑な問題経営者がのさばっているのは、社会の歪みである。DHCには、まずは早期に、純粋な経済合理性に基づく企業活動のできる会社への変身を期待したい。

 その後は、コンプライアンスに遺漏なく、企業倫理を弁えたDHCへの成長を期待したい。吉田嘉明さえいなければ可能であろう。

 さて、このDHCの身売りの事情については、いつもながらリテラの報道が、詳しいし、的確である。下記URLを参照されたい

オリックスDHC買収で「虎ノ門ニュース」だけでなくヘイトデマ垂れ流しの「DHC テレビ」も解体の動き 問われる吉田会長の責任
https://lite-ra.com/2022/11/post-6244.html

 以下何か所か、引用させていただく。

 今月7日、DHCテレビジョンが制作するネット配信番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』が11月18日をもって終了すると発表された。『虎ノ門ニュース』といえば、百田尚樹氏や有本香氏、ケント・ギルバート氏、竹田恒泰氏などといった安倍政権応援団がコメンテーターとして勢揃いし、ヘイトと陰謀論、フェイクを撒き散らかしてきた“ネトウヨの巣窟”的番組。それが7年8カ月の歴史に幕を下ろすと公表され、歓迎の声の一方で「いったいなぜ」と憶測を呼んでいたのだが、その理由が明らかになった。
 11日にオリックスが、DHCテレビの親会社であるDHCを、事業継承目的で買収すると発表したのだ。
 オリックスはDHC創業者でDHCテレビの代表取締役会長でもある吉田嘉明・DHC会長兼社長から全株式を買い取り、吉田会長兼社長は株式譲渡完了後に退任する。

 オリックスによる買収にともなうかたちで、DHCを冠にしたヘイトメディアは消滅する可能性はかなり高いと思われるが、そのことを手放しで喜ぶことはできない。このままでは、オリックスの事業継承によって、吉田会長やDHCテレビが喧伝してきた犯罪的なヘイト・陰謀論などがなかったことにされ、問題自体がフェードアウトしてしまう恐れがあるからだ。
 しかも、DHCテレビがなくなっても、もっとも酷いかたちで復活する可能性もある。前述したように、今回の買収総額は3000億円程度と言われており、吉田会長は莫大な金を手に入れることになる。新たなメディアを立ち上げることはもちろん、巨額の資金をバックに政界に進出しても、何ら不思議はない。

 こういった暴挙を許さないためにも、DHCの名の下に吉田会長が垂れ流してきた差別、DHCテレビが流布してきたデマやヘイトをなかったことにせず、その犯罪性を改めて徹底的に糾弾していく必要がある。
 そしてもちろん、DHCを買収し、吉田会長に巨額の金を払うことになるオリックスもその社会的責任が問われるべきだ。
 オリックスは、メディアの取材に「人種などによるあらゆる差別を容認しない」という通り一遍のコメントを出しただけで、ネット上では「差別を容認しないなら、なぜそんな会社を買うのか」と批判を受けているが、たしかに、この程度の対応でお茶を濁していいはずがない。

 少なくとも、DHCの事業を引き継ぐ以上、その代表、会社および関連会社がやってきた行為についてきちんと総括したうえで、吉田会長をきちんと名指ししてヘイトを批判し、社会や被害者に対して真摯に謝罪する必要があるはずだ。

 まことに、そのとおり。カネは、凶器になるのだ。カネモチは、危険なある。ある。

記事の解釈は「一般読者の普通の注意と読み方とを基準として」。

(2022年11月10日)
 昨日、東京地裁で興味深い名誉毀損事件判決が言い渡された。共同通信は、「産経新聞と門田隆将氏に賠償命令 森友記事、2議員名誉毀損」との分かり易い見出しで報じている。

 原告の2議員とは、立憲の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員。この見出しのとおり、被告は産経新聞と門田隆将、メディアとライターである。請求は880万円、認容額は220万円であった。

 朝日の報道が的確な内容となっているが、その見出しは「『国会議員が職員つるし上げ』表現めぐり産経新聞と門田氏に賠償命令」というもの。この見出しは、不正確とまでは言えないが、ややミスリードではないか。「つるし上げ」という表現が問題になったわけではない。記事の日本語としての文意の理解如何が問題となった。朝日の報道は以下のとおりである。

 「学校法人森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題を取り上げた、産経新聞への寄稿記事で名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が、産経新聞社と筆者でジャーナリストの門田隆将氏に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が9日、東京地裁(大嶋洋志裁判長)であった。判決は名誉毀損を認め、産経新聞社と門田氏に計220万円の支払いを命じた。

 記事は2020年10月25日付の朝刊に掲載。18年3月に財務省近畿財務局の職員が自殺した件に言及し「(両議員は)財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺は翌日だった」と記載した。一方、両議員が訪れたのは東京の本省で、自殺した職員には面会していなかった。

 判決は、『当該』との単語が使われ、連続した2文で構成されたこの文章を読めば『読者は、両議員が自殺前日にこの職員を集団的に批判、問責し、自殺の要因になったと理解する』と判断し…名誉毀損を認めた。」

 森友学園の決裁文書について、命じられた改ざん実行を苦に自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの死をめぐる門田隆将の産経寄稿記事のなかに国会議員に対する名誉毀損表現があったとされて、訴訟になった。

 原告となった両議員が、門田の産経寄稿記事における名誉毀損表現として特定したのは、「(両議員が)財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺は翌日だった」という文章。原告両議員は訴訟で「この記事は我々が赤木さんをつるし上げ自殺に追いやったとする内容だ」「それゆえ、この記事は両議員の議員としての名誉を著しく毀損するもの」と主張。これに対し、被告両名は「つるし上げを受けた職員と自殺した職員が別人であることは、容易に理解できる」と反論した。

 判決は、「(この文章の)読者は、両議員が自殺前日にこの職員を集団的に批判、問責し、自殺の要因になったと理解する」と判断した。記事内のつるし上げられた職員と自殺した職員は同じ人物を示していると読み取れると認定。「国会議員としての社会的評価を低下させたのは明らか」と結論付けた。

 以下は、判決後の門田のツィッターである。悔しさが滲んでいるが、具体性に欠け、判決批判になっていない。

 「添付の私のコラムを読んで頂きたい。自殺した近畿財務局職員の上司に関する新聞の意図的報道を取り上げたものだ。これに何と“我々への名誉毀損”と訴えてきたのが立憲の小西洋之&杉尾秀哉両議員。どこが名誉毀損?と門前払いと思ったら司法は彼らの訴えを認めた。唖然…左傾化し正義を捨てた日本の司法」

 この判決をもって「左傾化し正義を捨てた日本の司法」とする悪罵に、「唖然…」とするしかない。

 2022年10月25日産経朝刊への門田寄稿の問題箇所は以下のとおりである。

 「国会で野党が安倍晋三首相や、佐川宣寿理財局長を糾弾し、同時に公開ヒアリングと称して官僚が吊るし上げられていたことを思い出してほしい。平成30年3月5日、福島瑞穂氏(社民)、森裕子氏(自由)ら野党は近畿財務局に乗り込み、数時間も居座り、押し問答を続けた。また東京では、翌6日、民進党の杉尾秀哉、小西洋之両氏が財務省に乗り込み、約1時間職員を吊るし上げている。当該職員の自殺はその翌日の7日だった。」

 この内の「また東京では、翌6日、民進党の杉尾秀哉、小西洋之両氏が財務省に乗り込み、約1時間職員を吊るし上げている。当該職員の自殺はその翌日の7日だった。」という文章をどう読むべきか。「6日、両議員は約1時間職員を吊るし上げている。当該職員の自殺はその翌日の7日だった。」という文章を素直に読めば、「6日に両議員が約1時間職員を吊るし上げ、吊し上げられた当該職員が翌日の7日に自殺した」という文意に読みとるしかないと思われる。

 判例は、一定の記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかについては、繰り返して「一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである」と判示している。
 
 昨日の東京地裁判決も、「一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断」して、門田の文章を『一般読者は、両議員が自殺前日にこの職員を集団的に批判、問責し、自殺の要因になったと理解する』と判断して…名誉毀損を認めたのだ。

 物書きに思い込みは禁物である。自分の文章を「一般読者の普通の注意と読み方とを基準として」どう理解されるかを弁えなければならない。「どこが名誉毀損?」「唖然…左傾化し正義を捨てた日本の司法」などと責任転嫁する以前に、である。

DHCテレビの『虎ノ門ニュース』は、間もなく放送を終了いたします。

(2022年11月7日)
 今日は、少し嬉しいニュースのお知らせである。DHCテレビの『虎ノ門ニュース』が、11月18日(金)に放送を終了するという。その裏側はまだ分からないが、目出度い話ではないか。

 デマ(D)とヘイト(H)とチート(C)と、そしてスラップで高名となったDHC。「DHCテレビ」はその100%子会社、代表取締役会長が吉田嘉明。事実上、DHCの一部門と言って良い。DHCと吉田嘉明が金を注ぎ込んだ、極右メディアである。

 そのキャッチフレーズは、『“既存のメディアに満足していない”全ての視聴者をターゲットに、地上波メディアでは “伝えない”内容を深く掘り下げた番組製作』という。要するに、「右翼の皆さん、ウチは思いっきり右寄り目線で、右翼にご満足いただける番組作りますから、見てね」というわけだ。

 DHCテレビの看板右翼番組が『虎ノ門ニュース』である。常連の出演者が、百田尚樹・ケントギルバート・有本香・竹田恒泰などという面々。この連中を「日本で最高レベルの知性を集結」などと言ってのける、お恥ずかしい限りの図々しさ。その『虎ノ門ニュース』が本日、下記の社告を出した。

「真相深入り!虎ノ門ニュース」番組終了のお知らせ

 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼を申し上げます。
 既に番組内において発表させていただいておりますが、この度「真相深入り!虎ノ門ニュース」は11月18日(金)をもって最終回とさせていただきますことを謹んでお知らせいたします。

 2015年4月1日の番組開始から7年7ヶ月、これまで番組配信を継続してこられましたことは、ひとえに視聴者の皆様の温かいご支援のおかげでございます。
 長きに渡り番組へのご愛顧を賜り、出演者ならびスタッフ一同、心より感謝申し上げます。

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 唐突な番組終了の理由は述べられていない。経営破綻ないし不振説・親会社(DHC)の資金投入打ち切り説・内紛説などささやかれてはいるが、経営的な逼迫がなければこうはなるまい。常連の出演者は飽きられて視聴回数が低下し、赤字続きをDHC・吉田嘉明が穴埋めしてきたと噂はされてきた。真偽のほどを確かめる術はないが、右翼メディアの衰亡は、右翼には「悲報」でも社会全体には悪いニュースではない。目出度いニュースと言ってよい。

 DHCテレビは、かつては「DHCシアター」の社名で、MXテレビやCS放送にも配信していたが、昨今はもっぱらユーチュブ配信のネット番組制作会社となっている。

 この会社がその本性を現して有名になったのは、情報番組「ニュース女子」のデマとヘイトによってのこと。BPOに指弾されたのは、まともな取材もせぬままの沖縄基地反対闘争と在日を誹謗するデマ。対沖縄・対在日ヘイトの姿勢あればこそ。「虎ノ門ニュース」は放送継続して今日に至っている。安倍晋三なども、居心地よくこの番組に出演していた。お似合いの場所なのだ。

 DHCテレビの「虎ノ門ニュース」の突然の終了宣言の理由の一つとして、「近々、DHCは大幅な会社再編を行うようです」「そのなかで、現状赤字経営の子会社DHCテレビの運営にメスが入ったというわけです」「吉田会長個人としては、なんとかして虎ノ門ニュースを続けたかったようです。しかし、吉田会長は今までのように会社の経営に関わることができなくなったため、経営面で虎ノ門ニュースの継続を断念せざるを得なかったようです」などの噂がネット投稿されている。真偽のほどは分からないが、いかにもありそうな話。

 安倍は世になく、虎ノ門ニュースも消える。そして、吉田嘉明の威も地に落ちようという。時代は確実に遷りつつある。

統一教会スラップ批判の声明 ー 「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮してはならない」

(2022年11月1日)
 本日午後2時、東京地裁庁舎内の司法記者クラブで記者会見し、「統一教会のスラップを批判する弁護士・研究者・ジャーナリスト声明」を発表した。正式のタイトルは、「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」というもの。

 声明を掲載する特別のサイトはない。本日の当ブログに、全部の記録を掲載することとする。
 以下に、(1) 記者会見概要の説明、(2) 10月11日付け呼び掛け文、(3) 呼び掛けの主体となった「23期・弁護士ネットワーク」の個人名、(4) 声明文本体、(5)スラップの被告とされた各メディアに対するご通知、の順で掲載する。これで、経緯と声明の内容はお分かりいただける。

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2022年11月1日

「旧統一教会スラップ批判声明」のご説明

 本日、旧統一教会が9月29日東京地裁に提訴した3件のスラップ訴訟について、これを批判する立場からの声明を発表いたします。
 声明の趣旨は、「報道機関各社が、スラップに萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない」「報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたい」というものです。

 この声明を呼びかけたのは、23期・弁護士ネットワーク。その個人名は別紙に記載したとおりの26名(23期弁護士22名と客員4名)です。弁護士を主に、親しい研究者・ジャーナリストにも賛同を呼びかけ、呼びかけ人を含む全声明賛同者は下記のとおりとなりました。

   弁護士        212名
   研究者         29名
   ジャーナリスト      5名
   その他(宗教者など) 25名 (総数271名)

 本日、声明を被告とされた各社にお届けするとともに、この声明を公表することによって全報道機関各社やジャーナリストの皆様への声援としたいと思います。

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2022年10月11日

弁護士・研究者・ジャーナリストの皆様に、別紙声明への賛同の呼びかけ
「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく
市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」


 人権や民主主義擁護に活躍していらっしゃる弁護士・研究者・ジャーナリストの皆様に、別紙声明への賛同を呼びかけます。

 私たちは、1969年に司法修習生となった同期(23期)の弁護士です。1971年に弁護士や裁判官となって以来今日までの50年余、一貫して日本国憲法の理念を大切にする立場で職業生活を送ってきました。
 この同期のなかには、長年にわたって法廷で統一教会と対峙してきた者、スラップ訴訟と闘ってきた者、メディアの表現の自由を擁護してきた者、真実の隠蔽を許さずとして情報公開問題に取り組んできた者、消費者被害救済をライフワークとしてきた者、等々がいます。
 これまで、同期の気安さから忌憚なく懇談を重ねてきましたが、時として、どうしてもこの件については意見をまとめて公表しようという気運が高じることがあります。この度、そのような、やむにやまれぬ思いから多くの弁護士や研究者、ジャーナリストの皆様に別紙の声明へのご賛同を得たく呼びかける次第です。
 ことは、統一教会による、放送メディアと番組出演の弁護士とを被告とした名誉毀損損害賠償請求訴訟の提起です。これによって、報道機関各社が萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない。報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたいという趣旨です。是非、所定のURLをご使用の上、声明にご賛同ください。月内に賛同署名を締め切り、11月の冒頭に公表いたします。

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23期・弁護士ネットワーク

「旧統一教会スラップ批判」声明
呼びかけ人(23期・弁護士ネットワーク)個人名
(23期弁護士)
梓澤和幸  (東京)
井上善雄   (大阪)
宇都宮健児 (東京)
大江洋一  (大阪)
木嶋日出夫 (長野)
木村達也  (大阪)
児玉勇二  (東京)
郷路征記  (札幌)
阪口徳雄   (大阪)
澤藤統一郎 (東京)
瑞慶山茂  (千葉)
豊川義明  (大阪)
野上恭道  (群馬)
野田底吾  (兵庫)
本多俊之  (佐賀)
藤森克己  (静岡)
松岡康毅  (奈良)
村山 晃  (京都)
森野俊彦  (大阪)
山田幸彦  (愛知)
山田万里子 (愛知)
吉村駿一  (群馬)
(以下・客員)
野原 光 (広島大学・長野大学名誉教授)
西川伸一 (明治大学教授・政治学)
北村 栄 (弁護士・愛知)
本田雅和 (ジャーナリスト)   以上26名

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(声明文)

2022年11月1日


「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく
市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」

 本年9月29日、旧統一教会(現名称「世界平和統一家庭連合」)が、テレビ番組での出演者の発言を同教会に対する名誉毀損として、各テレビメディアと発言者である各弁護士を被告とする3件の損害賠償請求訴訟を提起しました。賠償請求金額は合計6600万円、謝罪放送の請求もされています。
 私たちは、この訴訟提起を看過し得ない重大事と受けとめました。その主な理由は下記の3点にわたるもので、報道機関各社をはじめとする関係者に適切な対応を要請するだけでなく、広く社会に大きな問題ととらえていただくよう訴えます。

 第1の理由は、各提訴とも報道機関を標的とした表現の自由への挑戦であり、市民の知る権利に蓋をしようとする企てだという点にあります。
 旧統一教会は、各訴訟において被告として特定した報道機関だけでなく、あらゆる分野のメディアに対して、旧統一教会問題追及の言論を威嚇し牽制して、批判を封じようとしているものと指摘せざるを得ません。
 最近の旧統一教会と政権与党との癒着をめぐる報道には、目を瞠らせるものがあります。日本の政治構造の根幹にも関わる重大な問題として、多くの人々が関心をもって関連報道に注視してきました。
万が一にも、報道機関各社が本件各提訴に萎縮して、旧統一教会批判の報道や番組編成に支障が生じるとすれば、日本の民主主義の行方にも関わるものとして憂慮せざるを得ません。放送に限らず各分野における報道機関は、是非とも、この重大な時期に重大な報道を萎縮することなく、視聴者・市民の知る権利に真摯に応えて、ジャーナリズムの本領を発揮されるよう要望いたします。

 第2の理由は、本件提訴がいわゆる「スラップ訴訟」であることです。
 正確な定義は困難ですが、「自分を批判する言論を威嚇し萎縮させる目的で提起される民事訴訟」をスラップ訴訟と言って間違いはありません。多くの場合、その目的のためにスラップは高額請求訴訟となります。直接被告とされた者に心理的負担と応訴費用の経済的負担を余儀なくさせるだけでなく、被告以外の周辺にも言論萎縮の効果をもたらします。
 状況から見て、本件3訴訟は、被告とされた報道機関と発言者を威嚇することで旧統一教会批判の言論封じを目的とした、典型的なスラップ訴訟と考えざるを得ません。民事訴訟本来の役割は、法的正義の実現であり、また社会的弱者の権利救済にあります。本件のごとき民事訴訟の濫用を、法の適正な運用に関心をもつ者としてとうてい看過し得ません。
 私たちは、スラップ訴訟を成功させてはならないと考え、その被害者に状況に応じた適切な支援を惜しみません。

 第3の理由は、本件各訴訟がいずれも、旧統一教会によるさまざまな被害を救済し、あるいは防止しようという運動の妨害を目論むものだからです。
 各訴訟の被告とされている弁護士は、旧統一教会の霊感商法被害救済を求めて闘ってきた人、あるいは現時点で旧統一教会のあり方を批判する立場を鮮明にしている人です。その人たちを被告として高額の損害賠償を請求することは、現在高揚しつつある旧統一教会による種々の被害救済・防止の施策や運動の進展を牽制し妨害することを意味しています。
 霊感商法被害・高額献金被害・二世信者被害等々の旧統一教会による種々の被害の救済や防止策が、社会的な注目の中で行政をも巻き込んで進展しつつある現在、これを妨害しようという提訴を許してはならならず、全ての関係者に毅然たる姿勢の堅持を期待いたします。

 私たちは、以上の理由から、旧統一教会が提起した各訴訟の被告となった各弁護士、報道機関各社を激励するとともに、全ての報道機関・メディアに対して旧統一教会への正当な批判報道に萎縮することがないよう訴え、ひろく社会に同様のご支援をお願いする次第です。

23期・弁護士ネットワークと    
賛同の弁護士・研究者・ジャーナリスト

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2022年11月1日

〒540-8510 大阪市中央区城見1丁目3番50号
讀賣テレビ放送株式会社
代表取締役 大橋善光様


23期・弁護士ネットワーク    
「声明」呼びかけ人26名の一人として

弁護士 澤 藤 統 一 郎

「旧統一教会スラップ批判声明」のご送付

 
 本日、弁護士212名・研究者29名・ジャーナリスト5名・その他市民(宗教者など)25名の総数271名の連名で、別紙の声明を発表いたしました。
 その内容は、旧統一教会が9月29日東京地裁に提訴した3件のスラップ訴訟について、統一教会を厳しく批判する立場からのもので、声明の趣旨は、「報道機関各社が、スラップに萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない」「報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたい」というものです。

 この声明を起案し呼びかけたのは、23期・弁護士ネットワーク。その個人名は別紙に記載したとおりの26名(23期弁護士22名と客員4名)です。この26名が、親しい弁護士を主に、研究者・ジャーナリストにも賛同を呼びかけて、本日の声明となりました。

 被告とされた御社に本声明をお届けするとともに、スラップに屈することなく、今後とも全社を挙げてジャーナリズムの本道を歩まれ、旧統一教会の問題性を掘り下げる報道を継続されるよう期待申し上げます。

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2022年11月1日


〒107-8006 東京都港区赤坂五丁目3番6号
株式会社TBSテレビ
代表取締役 佐々木 卓 様

(以下、同文)

 

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