澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

忖度派3候補と一線を画した、野田聖子の発言。

(2021年9月17日)
 本日、自民党総裁選の告示、4人が立候補した。この総裁選、アベスガ政権を見限った国民の批判をどう受け止め、自民党をどう立て直すかがテーマのはず。本来は、アベスガ政権の政治姿勢、政治理念、各分野の政策の不備を徹底して洗い出し、その反省を今後にどう生かすべきかという議論の場でなければならない。

 党外の人間にとって党内の権力闘争などには何の関心もない。来たるべき総選挙に与党として望む自民党が、アベ・スガ路線から変わるのか変わらないのか。変わるとしたら、何がどのようにどの程度変わるのか。その点を国民に示すものでなくてはならない。

 9年に及ぶアベ・スガ政権とは何であったか。何よりも、「モリ・カケ・桜・クロカワイ・卵にカジノ」に表れた、ウソとゴマカシ、国政私物化の政権であった。また、アベノミクスで富裕層を富ませる一方、大量の非正規労働者を創出して格差貧困を拡大した「自助・自己責任」政策の政権でもあった。そして、改憲に血道を上げ、人種や民族の差別を煽った政権でもあった。

 岸田・河野・高市の3候補は、どれもこれも似たり寄ったり。アベ・スガ政権を批判するのではなく、アベ・スガ政権に擦り寄りおもねってばかり。アべ・アソウ・ニカイなどに睨まれような発言はできない。後世、アベ・スガ・キシダ政権時代とか、アベ・スガ・コーノ路線と評されることになるしかない。まさしく、コップの中の嵐の総裁選の模様、…と思われた。

 ところが、ギリギリで野田聖子が4人目の候補者として名乗りを上げ、少し様相が変った。野田の立候補支援は河野追い落とし派の策謀という見方もあるようだが、そんなことはどうでもよい。この4人の中で、他の3人とは一線を画した野田発言の真っ当さに、どれだけ世論の注目が集まるか。そのことを見守りたい。

本日の4候補共同記者会見では、アベ・スガ政権に対する世論の批判を象徴する問題として、森友学園をめぐる公文書改ざん問題について「再調査をするかどうか」が問われた。この質問はこれまでも話題となってきた。どの候補も予想していた質問で、想定問答の回答を練ってきたはず。

アベ・アソウ忖度派3候補は、再調査の実行を否定した。
河野太郎は「すでに様々な司法まであがっているものですから、再調査の必要はない」と明確に述べた。「安倍さん、よく聞いてね」と言わんばかり。

高市早苗は「現在、ご遺族が国などを相手取って提訴しているので、この点についてはコメントができない、するべきではない」と回答を避けた。

岸田文雄はやや微妙な言い回しだった。「行政、司法において様々な調査、報告が行われている。その上で国民の納得感で足りないことがあれば、政治の立場から丁寧に説明をしていきたい」。これは、誰に、どのような場で、どのような手続で「説明」するというのかよく分からないが、世論がイメージする再調査はしないことの弁明を述べたと解すべきだろう。

野田聖子は違った。「反省し、アプリオリに調査をする必要がある」と答えたのだ。
「公文書の隠蔽、偽造、改ざん、廃棄。これは絶対にあってはならないこと」「多くの国民が納得していない」「起き得ないことが起きたことは、しっかりと知るべきだ」に続けての調査必要発言である。これは、アベやその取り巻きに忖度しない、という宣言ではないか。

アプリオリを「自明に」「先天的に」などと注をつけている報道が多いが、「理屈抜きで」「無条件で」という意味ととらえるべきだろう。

この点の論争はこれからも続くことになる。野田は、もっと具体的に、再調査の構想を打ち出すべきだろう。財務省内の身内の調査では国民が納得していない。偶然のことから存在が明らかとなり、民事訴訟でようやく開示された赤木ファイルには、財務省調査はまったく言及していない。信頼できる外部の第三者による再調査チームを作ることを具体的に発言するべきだろう。

「民事訴訟中だからコメントできない」「言うべきでない」というのは、まったくおかしい。再調査をしない理由にはならない。

AとBとが訴訟をしているとき、第三者であるCが「どちらの言い分が正しいのかよく分からないので、AB間の訴訟の決着がつくまで見守ろう」ということはあり得る。しかし、問われている局面はまったく異なる。

今、A(自死した赤木さんの遺族)がB(国)に提訴をした。候補者4名は、第三者としての意見を聞かれているわけではない。B(国)のトップになったら、どうするのかの意見を聞かれているのだ。

この訴訟は形の上では国家賠償だが、原告が望んでいるのは「徹底した真相の究明」である。被告国の立場としては、これまで通り責任を否定して真相の究明に背を向けるのか、「徹底した真相の究明」に協力するのか、二つに一つである。それについての、国のトップの意思と責任が問われている。

忖度派3候補は、結局今までの通り財務省の内部調査以上の事実はなく、赤木さんの自死に国は責任はないという立場を貫けという意見。野田聖子だけが、再調査して「徹底した真相の究明」に協力しようというのだ。この姿勢は、アベ・スガ政権の腐敗を反省して再出発するための第一歩として貴重なものと言えよう。

来たるべき総選挙で、アベ・スガ政権の腐敗と傲慢を断ちきろう

(2021年9月12日)
 権力の私物化に余念のなかったウソとごまかしのアベ政権。そして、そのフロクであったアベ亜流のスガ政権。両政権の余りに長期にわたった腐敗の構造がもたらした日本の政治・行政の行き詰まり。その転換は、自民党総裁選候補者らにできることではない。そもそも彼らには、政治の刷新をいう資格がない。しかも、薄汚いアベの顔色を見ながらの、みっともない右へ右への擦り寄り競争。

 停滞した政治を転換する一筋の光明は、野党共闘の成立にある。9月8日、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党首が調印した「衆議院総選挙における野党共通政策の提言―命を守るために政治の転換を―」が、アベ・スガ政権とその後継に対する明瞭なアンチテーゼとなっている。

 この共通政策の成立によって、政治の世界を、人権・民主主義・平和という理念を指標に2分する構図が出来上がった。立民・共産・社民・れ新4党の「立憲政治志向ブロック」と、自民・公明・維新の「守旧派ブロック」と。両ブロックの間には、越えがたい分水嶺がある。

 来たるべき総選挙では、野党共闘ブロックに民意を集中すべきである。それこそが、停滞した、アベ・スガ政権の腐敗と傲慢を断ちきる道である。今年4月の、参院広島選挙区再選挙、参院長野選挙区補欠選挙、衆院北海道2区補選、いずれも野党共闘が勝利しているではないか。都議選も善戦している。横浜市長選も勝っている。野党共闘は今有望なのだ。

 4野党の共通政策6項目は体系的によくできている。権力の私物化を承継し、憲法を壊し、明文壊憲までたくらむ自公与党とこれに追随する維新勢力との対決軸をよく表している。もちろん、その6項目のうちには、実現には時間のかるものもあれば、政策実現の成否判断が微妙なものもある。その反対に、すぐにでもできるものがある。政権交代でこれが実現できるとイメージしてもらうに最もふさわしいものは、次の部分だろう。

「3 格差と貧困を是正する
・所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化する。」

「6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する
・森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑について、真相究明を行う。
・日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。」

 消費税減税と富裕税の創出を宣言することと、森友・加計問題、桜を見る会疑惑などに関して徹底した真相解明のための強力なチームを編成すること。そして、直ちに日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。これは、政権交代による政治の変化を具体的にイメージ付けることになろう。

 これに平仄を合わせて、立憲民主党の枝野幸男は、次期衆院選で政権交代を実現した場合、「枝野内閣」の初閣議で直ちに決定する7項目の政策を発表した。

?30兆円の補正予算編成
?新型コロナ対策の司令塔を官邸に設置
?22年度の予算編成の見直し
?日本学術会議で任命拒否された6人の任命
?入管でのスリランカ人女性の死亡事案でカメラ映像や資料を公開
?森友学園問題の決裁文書改竄の敬意が示された「赤木ファイル」関連文書開示
?森友・加計学園・「桜を見る会」問題の真相解明チームを設置

 初閣議でこれだけのことができるのなら、政権交代を期待してよいのではないか。長い長い悪夢であつた、アベスガ政権の停滞を転換する具体的なイメージを語らねばならないと思う。

あゝ河野太郎よ 君を泣く(第3版)

(2021年9月10日)
あゝ河野太郎よ、君を泣く
なにゆえ矜持を捨てたるや
なにゆえ膝を屈せしや
気骨はどこへ失せにしや

かつては言葉の歯切れよく、
末頼もしき君なれば、
君への期待はまさりしも
次第に萎縮を重ねつつ
遂には己を封印し、
総裁選に名乗り上げ
安倍と麻生にへつらいて、
魂売るとは思いきや

あゝ河野太郎よ君を泣く
なにゆえ節を屈せるや
いかでか理由は知らねども、
モリ・カケ・サクラの再調査
必要ないとはなさけなや

あゝ河野太郎よ君を泣く
節を屈せしそのことば
脱原発を信条に
「再稼働は無責任」
昨日まではそう言った

同じ口から本日は
「再稼働が現実的」の無責任
お気は確かか正気かや
平気で人を裏切るか

あゝ河野太郎よ君を泣く
親の情けはまさりしを
たかが安倍やら麻生やら

有象無象に右顧左眄

節を曲が口惜しや

かつては党のあるじにて
正統保守の良心と
令名高き親の名を
嗣いで来たりし君なれば
河野太郎よ 君を泣く
君 などて籠絡されたるや
出処進退過つやアベとスガとの自民党
決して堅固ならざるぞ
塵と吹き飛ぶときならん
世論の支持の急落は
民意と天意のなせるわざ
河野太郎よ君を泣く 
総裁選への出陣は
民意と天意に背くもの

君は知らじな民の意を
改憲策謀は猛虎の尾
安倍と一緒に踏むなかれ

ああ河野太郎よ君を泣く
などて節を屈せしや
はや その気骨は挫けたか
沈没間近の船のごと
アベスガお粗末内閣に
まことの保守はすでになく
極右の輩がのさばりぬ

かつては正論吐く人と
この人ありと言われたる
君の人望潰えなば
保守には人の絶え果てて
あゝまた誰をたのむべき
君 などて膝を屈せしや
安倍に尻尾を振りたるや

森友文書改ざん再調査 ー 前言撤回の岸田もおかしいが、再調査に怒った安倍はもっとおかしい。

(2021年9月8日)
 私、岸田文雄です。自民党総裁選に立候補いたします。よろしくお願いしま?す。

 安倍晋三さんの政権が7年8か月、そして後継の菅義偉さんがほぼ1年。右寄り政権には国民が飽き飽きしている頃ではありませんか。保守的政権に危機が来れば、リベラル派のバネを利かせるのが自民党の伝統。そろそろ、私の出番なのですよ。菅さん相手の勝負には、アベ・スガの痛いところを衝かなきゃ勝てない。だから、少し思い切ったことを言ってみた。

 キーワードは、「国民への丁寧な説明」。安倍政権にも菅政権にも決定的に不足していたもの。そこで、森友問題での財務省の決裁文書改ざん問題について『国民が納得するまで説明を続けることが政府の姿勢として大事』と踏み込んだ発言をしちゃったんだ。こうすれば、国民からの喝采を受けることができる。そうなれば、選挙の顔として申し分がない。

 菅退陣表明は9月3日だった。まだ、その前兆もつかめなかった前日の9月2日。菅さんと闘うことだけを想定して、BSーTBSの番組で言っちゃったんだ。いや、自分から言ったわけではない。森友事件の再調査の必要性を問われたからだ。

 「調査が十分かどうかは国民が判断する話だ。国民は足りないと言っているわけだから、さらなる説明をしないといけない。国民が納得するまで努力することが大事だ」とね。誰が聞いても、徹底的な再調査を尽くして、政府の説明責任を果たし、国民誰もが納得するまで努力を継続する覚悟、と思うよね。

 ところが驚いたことに、これが裏目に出た。翌日、菅さんは退陣を表明。私の相手は、突然に菅さんじゃなくなった。それなら、キーワードもキャッチフレーズも変わってくる。それだけではない。安倍晋三さんがエラくご立腹だとのこと。私ではなく、あの保守も保守、夫婦別姓も絶対に認めようとしない高市早苗さんを応援すると伝えられた。これは、たいへんだ。安倍さんに反省の情を見せなくてはならない。

 そこで、7日の前言撤回記者会見となったわけだ。今度はこう言い訳をした。
 「行政において調査が行われ、報告がなされた。裁判が続いており、これから判決が出る。必要であれば国民に説明すると申し上げている。従来のスタンスと全く変わっていない」
 実のところは、変わっていないどころではない。もちろん、「再調査はやっぱりや?めた」宣言だ。これで安倍さん、少しは気分を直してくれるよね。そして、最後は私を支援してくれるんじゃないのかな。

 だけど安倍さん、なぜ怒ったんだろう。わたしは、安倍さんの責任を追及するとも、安倍さんに忖度した官僚の実態を暴くとも言ってないじゃないか。「国民が納得するまで調査する」と言っただけ。安倍さん常々言っていたよね。「自分も妻も、一切関与していない」って。調査の結果、国民誰もが、安倍さんの関与はないって、納得してもらえるはずなんだから、怒るのは筋違いじゃないのかな。

 それともなにかな。徹底して調査されると、政治家生命を断たれるような不都合な真実が出てくるのを心配しているのだろうか。

 スホーツ紙の見出しに、「岸田文雄氏、森友問題への態度一変『再調査考えてない』安倍晋三前首相に忖度?…自民党総裁選」「安倍晋三前首相に配慮した変節とも取られかねない軌道修正」なんて書かれちゃって、国民世論的には痛手だけど、それだけ、長老政治家には「岸田は安全パイだ」って、考え直してもらえたんじゃないだろうか。

 それにしてもだ。あ?あ、ヘマやっちゃったな。優柔不断で芯のない政治家だと国民に思われちゃったな。でも、安倍さん、モリ・カケ・桜に触れられるとあんなに怒るんだ。凄いな。やっぱり、触れられては困るんだ。でも、それでいいのかね。

秋元司有罪は、アベ・スガ政権への断罪でもある。

(2021年9月7日)
 ことあるごとに思い起こそう。忘れぬように繰り返そう。

 モリ・カケ・桜・クロカワイ・アベノマスクにIR

 ウソとゴマカシをもっぱらとし、政治を私物化した安倍晋三という人物と、その政権を忘れてはならない。度しがたい歴史修正主義者で改憲論者の安倍、しかも無能・無責任のこの人物の長期政権をわれわれは許してしまった。さらに1年、その付録であり、事実上の延長政権である菅義偉後継政権がようやく終わった。

 次期総裁選などというコップの中の嵐に興味を惹き寄せようという策謀に乗せられてはならない。アベ・スガ政権を清算して、そのアンチテーゼとしての新政権を樹立する議論こそ、今なすべきもの。

 本日の秋元司のIR汚職と証人買収での有罪判決。あらためて、安倍政権とは何であったかを思い出させる。この秋元という男、なんとも汚い。政治を金儲けの手段としただけでなく、金で無罪も買えると考えたのだ。本日の判決言い渡しで、裁判長に、「公人としての倫理観はおろか、最低限の順法精神すら欠如している」と言わしめたとおりである。この汚い人物が安倍政権IR担当の内閣府副大臣だった。そのイスと人物とよく似合う。釣り合いまことにピッタリではないか。

 しかも、IRは安倍政権の観光振興策の目玉であり、安倍はカジノ議連の最高顧問を務めたこともある。菅とともにカジノの旗振り役だった。成長戦略の目玉として「カジノ解禁法案」採決を強行した当時、「カジノ事業者らによる議連関係者へのロビー活動がすごかった」と報道されている。

 業者にとっても政治家にとっても、おいしい事業であり、法案だった。それだけに、危険が見え見えの代物である。案の定、安倍政権の薄汚さを象徴する収賄事件が発覚して秋元は逮捕され、不要な尻尾として切られた。

 秋元は無罪を争ったが、本日の判決は懲役4年の実刑で、追徴金約760万円(求刑懲役5年、追徴金約760万円)が言い渡された。

 判決言い渡しにおいて、裁判長は「特定の企業と癒着し、職務の公正や社会の信頼を大きく損なった。証人買収は前代未聞の司法妨害だ」と厳しく非難し、刑事責任は重く、長期の実刑は免れないと述べたという。

 この事件の贈賄側は、日本でのIR事業参入を目指していた中国企業「500ドットコム」。この企業から、議員会館事務所で300万円を受け取るなど、総額約760万円相当の賄賂を受領。保釈中だった昨年6?7月、同社元顧問2人に報酬を示し、公判で自分に有利な証言をするよう持ち掛けたが、これが裏目に出た。

 カジノもIRも、こんな汚いものはまっぴらだ。アベ・スガ政権の残滓とともに、日本中から一掃しなければならない。アベ・スガも秋元も、その身を恥じて、もう政界から身を引いてもらいたい。

ところが、秋元は十分に懲りては居ないようだ。判決前のメディアの取材に対して、今秋に予定されている衆院選について「やましいことはないので有罪判決でも出馬する」と答えているという。嗚呼、おそらくは、安倍も菅もなのだ。

また、目先を変えて、国民を目眩ましさせようというのか。

(2021年9月3日)
 当ブログは「日記」だから、菅義偉の突然の政権投げ出しを記録しておこう。ここ数日、「菅では戦えない」「党内の菅下ろし」「菅離れ」という見出しの報道が目立っていた。当人は、悪評芬々の幹事長交代や、先手をとっての解散などという、小器用なシナリオを描いてはみたが、実現できなかった。追い詰められて、矢尽き刀折れ、万策尽きての、表面的には唐突な政権投げ出し。

 この事態まことに残念ではないか。人気低迷の菅義偉。もっと総裁・首相の地位に連綿としがみつき、菅自民の歴史的惨敗を見せていただきたかった。これまで、この人が率いた選挙は全敗ではなかったか。最後を歴的大敗で締め括ってこその菅政権であったはず。

 結局は最後の敗北が地元横浜の市長選となつた。ここでの身内同然の候補の惨敗は、地元県連の明確な菅離れを印象づけた。国政選挙を率いるどころか、次の選挙での自分の地位も危うい。

 菅政権とは何であったか。その出自を訪ねれば、完全な安倍政権の亜流であった。安倍の官房長官だった菅ではないか。国政を私物化した邪悪な安倍よりは、朴訥でマシかと思われたが、1年間で馬脚が顕れた。要するに愚鈍なだけの首相だったのだ。

 就任直後の学術会議任命拒否問題で、これはダメだと見切りを付けた。「Go Toキャンペーン」でもミソをつけた。国民の命よりも自分への支持がほしい人なのだ。オリ・パラも同じ。そしてその後は、何をやってもダメだった。無為無策と原稿棒読みが、印象に残るこの人のトレードマークだった。それ以外はなにもない。

 またまた自民党お得意の、目先変更目眩まし大作戦が始まった。菅義偉だって、就任直後は支持率60%を超えていたのだ。今、立候補予定者6人とも報じられている。誰が総裁・総理になっても、ご祝儀人気で次の選挙は闘えそうだ、との思惑。もう自民党から化かされるのも、欺されるのもよしにしよう。

愚者・愚問・愚答のぐしゃぐしゃ

(2021年8月26日)
(以下は、すべてフィクションである。このフィクションに多少のリアリティがあるとすれば、登場人物に多少の責任があるからである)

記者  二階幹事長に伺います。横浜市長選では、首相のお膝元で首相ご自身が全面支援した小此木氏が大差で敗れましたる。ご感想を。

二階俊博幹事長  選挙の結果については、我々は謙虚に受け止めたいと思っております。一方で、コロナ禍で国民の不満が政権政党に向かうのは当然で、菅首相はしっかりやっていると思いますよ。

記者  自民党の党内には、菅首相では総選挙は戦えないとの声がで広がっているとの報道もありますが。

二階  それは党内には、いろんな意見がありますよ。しかし誰々さんでは選挙を戦えないというのは、失礼な話だよ。

記者  焦点となっている自民党総裁選ですが、菅首相再選支持の考えに変わりはありませんか?

二階  もちろん変わりはありません

記者  二階派としても支持されるお考えですか?

二階  当然のことではありませんか。愚問だよ!

記者  えっ? 愚問ですか。どうして愚問なんですか。

二階  理由など述べる必要はない。答の分かりきった問いを愚問という。

記者  そんなに分かりきったことなのですか。

二階  それこそ愚問だ! 答える必要はない。

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 菅義偉や小池百合子など40人が、パラリンピックの開幕前夜「歓迎の夕べ」とするパーティーを開催した。

記者  組織委広報担当の高谷さんに伺います。5人以上の会食は控えるように要請をしている方たちのパーティーですが、感染リスクはお考えにならなかったのでしょうか。

高谷正哲・組織委広報担当  あいさつの場をもつことは社会の慣習で、適切な対応ではないでしょうか。

記者  多人数の会合で、感染リスクはお考えにならなかったのかと。

?谷  質問の意図するところが分かりませんね。

記者  意図はともかく、感染リスクはお考えにならなかったのかと。

?谷  愚問ですよ!

記者  えっ? 愚問ですか。どうして愚問なんですか。

?谷  理由など述べる必要はありません。答える必要のない問いを愚問という。

記者  どうして答える必要がないのですか。

?谷  それこそ愚問だ! 答える必要などない。

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記者  小池百合子知事に伺います。9月1日の「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」に追悼文を送らないのでしょうか。

小池百合子都知事  出しません。その必要がないからです。

記者  でも、以前の歴代都知事は追悼文を送っていましたし、都知事に対して、追悼の気持ちを表してほしいという都民の要望も強いのではありませんか。

小池  反対のご意見もございますし、その日に東京都は全ての犠牲者に哀悼の意を示す慰霊祭を挙行しますから、個別の追悼文は控えさせていただきます。

記者  人の手で命を奪われた犠牲者の追悼には、謝罪の気持ちや責任への言及が伴うと思うのです。自然災害の犠牲者の慰霊と一緒にすると謝罪も責任も不問となりはしませんか。

小池  愚問ですね。

記者  えっ? 愚問ですか。どうして愚問なんでしようか。

小池  愚問はあくまで愚問。なぜ愚問かなんて質問は、それこそが愚問。

記者  それでは、記者会見にならないのではありませんか。

小池  そうよね。もうやめましょう。

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記者  菅総理にお伺いします。どの世論調査も、内閣支持率は低迷しています。横浜市長選挙では、総理の推す候補が惨敗しました。世論の菅内閣を見る目はたいへん厳しくなっていますが、その原因はどこにあるとお考えでしょうか。

菅義偉首相  政府としては国民に対する安全安心な生活の確保を責務とし、コロナに対する医療態勢の整備を最優先で取り組んでおります。この急激な感染拡大を阻止して安定したかつての日常を一日も早く取り戻せるように、しっかりと全力で取り組んでまいります。今、明かりははっきりと見えはじめています。

記者  そのような、コロナに対する政府の方針が具体策を欠いて、国民からの信頼を得られていないというご認識はお持ちでしょうか。

菅  政府としては国民に対する安全安心な生活の確保を責務とし、コロナに対する医療態勢の整備を最優先で取り組んでおります。この急激な感染拡大を阻止して安定したかつての日常を一日も早く取り戻せるように、しっかりと全力で取り組んでまいります。今、明かりははっきりと見えはじめています。

記者  政府の方針を楽観的すぎるとして、不満・不安を述べる国民の声は日増しに高まるばかりです。至急に野党が求めている臨時国会を開いて、野党とともに効果的な対策を講じていこうというお考えはありませんか。

菅  政府としては国民に対する安全安心な生活の確保を責務とし、コロナに対する医療態勢の整備を最優先で取り組んでおります。この急激な感染拡大を阻止して安定したかつての日常を一日も早く取り戻せるように、しっかりと全力で取り組んでまいります。今、明かりははっきりと見えはじめています。

記者  別の質問です。そのペーパーは引っ込めてください。必ずしも、菅再選を望む国民の暖かい声があるとは思えないなかで、近づく総裁選への出馬の意思は変わらないでしょうか。

菅  これまでも申し上げたとおり、時期がくれば出馬をさせて頂くのは当然ではありませんか。

記者  自民党や公明党の内部には、菅総理を与党の顔として次の総選挙は戦えないという意見があるやに伺っていますが、後進に道をお譲りになる気持ちはありませんか。

菅  愚問だね!

記者  えっ? 愚問ですか。どうして愚問なんですか。

菅  失礼じゃないですか。理由など答える必要もない。

記者  世論の風は厳しい。いま総理は、どう身を処すべきとお考えか。国民の関心事です。それをどうしてお答えの必要がないとおっしゃるのでしょうか。

菅  それこそ愚問だ! 答える必要などない。

記者  総理、総理。まだ、質問があります。逃げないで、お答えください。総理、総理……。ダメだこりゃ…。

学術会議会員任命拒否問題《個人情報開示請求》《行政文書開示請求》は審査請求段階に

(2021年8月21日)
 菅義偉が首相に就任したのは、昨年(2020年)の9月16日。同月28日には、内閣府から日本学術会議の事務局に、新会員任命対象者の名簿が送付されている。学術会議が推薦した105名から6人を除外した99名だけを搭載した名簿。これが、10月1日に天下の大事件として知られるところとなる。「学術会議任命拒否事件」こそは、菅義偉首相の初仕事であり、菅義偉は学問の自由・自治の侵害者として後世にその悪名を残すことになった。

 菅義偉政権が強引に日本学術会議の人事に介入した。端的に言えば、政権に対する批判勢力を切ったのだ。狙いは大きくは二つあったろう。一つは、恫喝である。政権に対する批判を許さないとする居丈高な姿勢の表明である。そして、もう一つは政府機構に埋め込まれた学術専門家集団のチェック機能の放逐である。専制支配復活への一歩にほかならない。民主主義を大切に思う者にとって、けっして傍観も、座視も許されない。

 岡田正則・早稲田大学大学院教授ら任命を拒否された6人は、本年4月26日内閣府と内閣官房に「自己情報開示請求」を求めた。個人情報保護法を根拠に、各々の任命拒否に関わるすべての行政文書の開示を得て、その上で行政の違法の有無を正確に判断しようということである。また、同時に法律家1162名が、行政情報公開法を根拠に、主権者たる国民の立場から、同様の文書開示を求めた。

 開示対象とされた文書の主要なものは、《2020年に日本学術会議が推薦した会員候補者のうち一部の者を任命しなかった根拠ないし理由がわかる一切の文書》として、特定されている。

 この請求の主要部分に関しては、内閣官房は情報を保有していないとして不開示を決定。内閣府は支障があるとして情報の有無を含めて応答を拒否した。開示された一部の文書も「公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼす恐れがある」などの理由で黒塗りだった。まったく「任命拒否の理由や根拠」がわかる資料の開示にはなっていない。

 こんな重大なことに説明責任を果たそうとしないムチャクチャな政府の姿勢である。任命拒否の当否は措くとしても、その理由を明らかにしてもらいたい、任命拒否に至る行政文書を開示してもらいたいという要求に対する、首相直轄機関のこの無責任極まる対応。これが、民主国家のやることか。

 これだけの重大事である。決裁に至る過程での関係文書がないことは考えられない。しかも、任命拒否をめぐっては、加藤勝信官房長官が昨年11月、「杉田和博官房副長官(鑑定事務方トップ、元警備公安警察官僚)と内閣府でやりとりした記録を内閣府で管理している」と国会で答弁しているのだ。

 この不開示決定にはとうてい納得できるはずもなく、昨日(8月20日)任命を拒否された6人も開示請求をした法律家481人も行政不服審査法に基づく審査請求を申し立てた。審査請求では、不開示の理由の説明がないことを違法として、不開示決定を取り消す旨の裁決を求めている。これから、首相が情報公開・個人情報保護審査会に諮問し、その答申を待つことになる。

 任命拒否された6人のうち、提出後に都内で会見した岡田教授は、任命拒否は日本学術会議法の規定に反して行われたとしたうえ、「民主主義や法治国家の原則からしてはならないことを(首相は)した。しかもその根拠をまったく説明していない。今からでも是正する機会として今回、審査を請求した」「不開示は説明しない政治・行政の現状を端的に示している。是正しなければ社会に禍根を残す」と語っている。

 また、任命拒否された1人の小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授は「任命拒否を決めた際の政府内でのやりとりを記録した文書が、これまでほとんど示されていない。違法な決定がなされたことを示すと言わざるを得ない。このプロセスを明らかにすることは民主主義にとって重大な意味を持つ。審査で解明されることを期待する」と述べている。

 繰り返すが、日本学術会議の推薦会員任命拒否の問題は、看過することのできない重大問題である。民主主義の土台を崩す暴挙と言って過言ではない。こんなあからさまな違法を放置しておいてはならない。

8月22日横浜市長選は、300万有権者による菅政権に対する信任投票となっている。

(2021年8月18日)
 横浜は巨大都市である。夜間人口の比較では大阪市を大きく上回る。多面・多様な相貌をもつ魅力的なこの街にカジノが必要だとはとうてい考え難い。その街に、いまコロナの蔓延が急である。その横浜の市長選挙が、今週末の日曜日・8月22日に迫っている。これまで、争点はカジノとコロナだと言われてきた。

 東京近郊の自治体の選挙は盛り上がりに欠ける。住民の地元意識が希薄で、自治意識に欠けるからだと言われる。投票率も低い。横浜も、東京のベッドタウンという側面をもっている。今は昔のことだが、私も磯子区の杉田に住んで東京の端に位置する蒲田まで通勤していたことがある。朝夕、東京湾に浮かぶ船と対岸の房総半島を眺めて暮らした。そのときは、横浜市の住民として市長選にも神奈川県知事選にも選挙権を持ってはいたが、社会的な活動の舞台は東京で自治体選挙には関心の薄い「横浜都民」の一人だった。

 ところが、今回は事情が違うのだという。「横浜都民」にも、市長選投票のモチベーションができたとして俄然注目された選挙となっている。場合によっては、この市長選の結果が菅内閣の命運を決することになるかも知れないというのだ。

 本日の朝刊を開いて、週刊文春の広告が目に入った。なんと、「菅 9・6『首相解任』 横浜市長選敗北で引導」というのだ。凄い見出しだが、ホントかね。

 私は、週刊文春は広告を見るだけ。あるいは、無料のオンライン記事に目を通す程度。絶対に買わない。なにせ、植村隆バッシングに狂奔した前科のある週刊文春である。一円の支払いもするものかという信念を堅持している。

 その広告には、《菅ハイテンション「パラ直後に解散」に周囲は唖然》《菅“官邸ひとりぼっち”医療ブレーンも切り捨て》《自民党幹部が小誌に「菅・二階では戦えない」》《安倍動き出した「菅さんじゃダメと若手が…」》《安倍 麻生極秘会談で岸田推し河野は出馬準備》などという内容。これだけでほぼ分かる。本文を読む必要はない。

 このあたりのことは、毎日新聞の名物コラム「水説」(古賀攻)が落ちついた解説をしている。「首相血眼の市長選」というタイトル。もちろん、選挙結果を断定などしていない。
https://mainichi.jp/articles/20210818/ddm/002/070/020000c

 そのコラムの書き出しが、「内閣総理大臣の命運が、単一自治体の首長選に左右される―。…22日投票の横浜市長選は実態としてそうなりつつある。しかも、進んで仕向けているのが菅義偉首相というから驚く」というもの。以下、抜粋である。

 「小此木八郎さんが閣僚ポストをなげうって出馬。しかも首相と一緒に旗を振ってきたカジノ誘致を「取りやめる」と公約した。はしごを外された現職の林文子さんは「カジノ継続」で参戦し、自民党系市議は30対6に分裂している。菅軍団(元菅秘書の市議5人を指す)もとうとう小此木支持3人、林支持2人に割れた。焦ったのだろう。首相は7月半ばから公然と介入を始めた。」

 「首相には冷静に考えて選挙と距離を置く選択肢もあった。それを拒み、市長選を政治上の最高ランクに高めたのは自身の行動だ。『カジノよりコロナ』と訴える無名の野党系候補が追い上げているという。どんな結果が出ようと首相は無傷ではいられない。」

 今回の横浜市長選、立候補者は異例の8名。しかも、売名目的の泡沫候補はなく、それなりの候補者ばかりだという。水説も言うとおり、注目は菅を背後霊に背負う小此木八郎の当落のみである。その他の誰が当選するかはまったく注目されていない。言わば、横浜・東京圏の300万有権者による菅政権に対する信任投票となっている。

 とすれば、「安倍後継の菅政権」の信任を拒否する真っ当な感覚をもつ有権者の合理的投票行動は、小此木以外の最有力候補者に投票を集中することにならざるを得ない。水説が「『カジノよりコロナ』と訴える無名の野党系候補が追い上げている」というのが、その事情を物語っている。

 問題は、反小此木票の受け皿と意識されている「無名の野党系候補」である。この人が素晴らしい立派な候補だという話はトンと聞こえてこない。この人の政治信条も、人柄も、情熱も、政策も伝わってこないのだ。しかし、この人ひたすらに消去法での集票で有力候補となって、当選に近いとされている。つまりは、反「安倍・菅」の風が作り出した、選挙情勢なのである。これも、民主主義の一断面なのであろうか。ともあれ、菅政権の命運に関わる選挙として、22日の投開票に注目せざるを得ない。

検察審査会は、被疑者安倍晋三の不起訴処分を不当とした ー 検察はその威信をかけて、安倍晋三を徹底捜査し起訴せよ。

(2021年7月31日)
 ことあるごとに思い起こそう。忘れぬように繰り返そう。

 モリ・カケ・桜・クロカワイ・アベノマスクにIR

 ウソとゴマカシをもっぱらとし、政治を私物化した安倍晋三を忘れてはならない。度しがたい歴史修正主義者で改憲論者の安倍、その長期政権をわれわれは許してしまった。

 昨日(7月30日)は、安倍の数々の悪行のうち、「桜」を思い起こさせる日となった。検察審査会事務局から「審査申立事件についての『議決の要旨』をお渡ししたい」旨の連絡があって、午後1時半頃に受領した。その全文が後記のとおりである。(但し、安倍晋三ら被疑者4名の肩書は、原文にはない。澤藤が告発状から引用した。なお、「晋和会」は、政治家安倍晋三の資金管理団体である)

 審査申立事件は、「桜を見る会」前日の夕食会をめぐるもの。特捜は、公設第一秘書であり、安倍晋三後援会代表者・同前会計責任者でもあった配川博之だけを後援会の政治資金収支報告書不記載罪だけで立件し、被疑者安倍晋三を不起訴とした。安倍は、尻尾を切って難を逃れたのだ。

 これを不当とする東京検察審査会への審査申立の議決が、告発被疑事実の2件について、不起訴不当の結論となった。起訴相当ではなかったが、この民意は重い。11人の検察審査員に敬意を表したい。

 安倍晋三が尻尾を切って難を逃れた、昨年(2020年)12月24日、私はブログに要旨こう書いた。

 日本国民の民度なるものの寸法が、安倍晋三という人物にぴったりだったのであろう。国民は、この上なくみっともない政権投げ出しのあとの安倍の復権に寛容であった。のみならず、何と7年8か月もの長期政権の継続を許した。

 その安倍晋三、一見しおらしく、本日の記者会見で、「国民のみなさま」に謝罪した。「深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」と頭を下げたのだ。

 安倍晋三によると、「会計責任者である私の公設第1秘書が、(桜を見る会前夜祭での)政治資金収支報告書不記載の事実により略式起訴され、罰金を命ぜられたとの報告を受けた」。「こうした会計処理については、私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」「今般の事態を招いた私の政治責任はきわめて思いと自覚しており、真摯に受け止めている」という。

 難解なアベ語を翻訳すると、こんなところだろうか。

 「これまでずっと、繰り返しウソをつき続けてきたんだけど、ばれちゃったから一応ゴメンネって言うの。でも、あれはみんな秘書がやったことなの。その秘書が罰金100万円の責任とったんだから、もう問題済んだよね。ボク、な?んにも知らなかったんだから、しょうがないでしょ。ただね、みんな怒っているようだから、取りあえず『政治責任を自覚』って言ってみたんだ。どういうふうに、政治責任をとるかって? そんなこと、なーんにも。口だけ、口だけ。これまでそれで通ってきたんだから,今回もそれでいいでしょ。今回ちょっとまずかったから、これからはバレないように気をつけなくっちゃね」。

 「桜を見る会」とは何であったか。各界の功労者を招いて総理大臣が主催する、公的行事である。これを安倍晋三は,露骨なまでに私的な後援会活動に利用した。これを許したのは山口4区の選挙民の民度である。下関・長門両市民は大いに恥ずべきである。石原慎太郎を知事にした、かつての東京都民と同様に。

 しかし、公的行事である「桜を見る会」の私物化が明らかになっても、国民の民度は十分な安倍批判をなしえなかった。やむなく、「桜を見る会」ではなく、「桜を見る会」とセットにされた後援会主催の「前夜祭」の、その収支報告書の不記載という、本筋ではないところに問題の焦点を宛てざるを得なかった。そして、本来であれば、国民の怒りをもって国政私物化政権を糾弾しなければならないところ、検察への告発という形で安倍晋三を追い詰めようとしたのだ。(以下略)

 もう一つ、忘れてはならないのが、安倍晋三のウソつきぶり。「桜を見る会」の前夜祭の費用を安倍晋三が補填していた問題をめぐり、安倍が国会で事実と異なる答弁を少なくとも118回繰り返していたことが、衆院調査局の調査で明らかになっている。調査は立憲民主党が同局に依頼し、結果を公表したもの。2019年11月?20年3月までの計33回の衆参本会議や委員会での答弁を対象としたもの。内訳は、「事務所は関与していない」との趣旨の答弁が70回、「明細書はない」との趣旨が20回、「差額は補てんしていない」との趣旨が28回で、計118回という。こんな人が政治家になり、こんな人を首相にまでさせたのが、わが国における民主主義の実態なのだ。

 昨日発表の議決で、安倍を「不起訴不当」とした被疑事実は二つある。
 その一つは、安倍による夕食会の費用補塡は、選挙区内での寄付にあたるという公職選挙法違反。不起訴の理由は、「寄附を受けた側に,寄附を受けた認識があったことを認定する十分な証拠がない」とのことだが、議決は「秘書や安倍氏の供述だけでなく、メールなどの客観的資料も入手して犯意の有無を認定すべきだ」と証拠収集の不十分さに言及している。

 もう一つは、安倍の資金管理団体「晋和会」の会計責任者だった西山猛(元私設秘書)の政治資金収支報告書の不記載について、安倍が選任監督の責任を怠ったという政治資金規正法25条2項違反。

 その詳細については、「憲法日記」の2020年12月21日号「『桜・前夜祭収支疑惑』で、安倍晋三を第2次告発」をご覧いただきたい。

https://article9.jp/wordpress/?p=16066

 なお、25条2項の法定刑は、最高罰金50万円に過ぎない。しかし、被告発人安倍晋三が起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、政治資金規正法第28条第1項によって、その裁判確定の日から原則5年間公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を失う。その結果、安倍晋三は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失う。この結果は、法が当然に想定するところである。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受しなければならない。

 検審議決の命じる本件告発への捜査に、検察の威信がかかっている。安倍政権時代の黒川弘務東京高検検事長問題で、検察の威信は大いに失墜した。国民の検察に対する信頼を回復する大きなチャンスではないか。検察は安倍晋三らに対する厳正な捜査を徹底して起訴すべきである。そうして初めて、国民の検察に対する信頼を回復できることになる。

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令和3年東京第一検察審査会審査事件(申立)第8号
 申立書記載罪名 公職選挙法違反,政治資金規正法違反
 検察官裁定罪名 公職選挙法違反,政治資金規正法違反
 議決年月日 令和3年7月15日
 議決書作成年月日 令和3年7月28日

議  決  の  要  旨

審査申立人  澤 藤 大 河,澤 藤 統一郎

被 疑 者  安 倍 晋 三 (衆議院議員・晋和会代表者)
被 疑 者  配 川 博 之 (安倍晋三後援会代表者・同前会計責任者)
被 疑 者  阿 立 豊 彦 (安倍晋三後後会会計責任者)
被 疑 者  西 山   猛 (晋和会会計責任者)

不起訴処分をした検察官
   東京地方検察庁 検事  田 渕 大 輔

議決書の作成を補助した審査補助員   弁護士  宇田川 博 史

 上記被疑者安倍晋三に対する公職選挙法違反,政治資金規正法違反被疑事件(東京地検令和2年検第18325号),被疑者配川博之に対する公職選挙法違反被疑事件(同第18326号),被疑者阿立豊彦に対する政治資金規正法違反披疑事件(同第18327号),被疑者西山猛に対する政治資金規正法違反被疑事件(同第32650号)につき,令和2年12月24日上記検察官がした不起訴処分の各当否に関し,当検察審査会は,上記審査申立人の申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。

譜  決  の  趣  旨

 本件各不起訴処分は,
1 被疑者安倍晋三について
 (1)公職選挙法違反(後援団体関係寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任)は不当である。
 (2)政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載,晋和会の収支報告書不記載,晋和会代表者の重過失責任)については相当である。
2 被疑者配川博之について,公職選挙法違反(後援団体関係寄附)は不当である。
3 被疑者阿立豊彦について,政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)は相当である。
4 被疑者西山猛について,政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)は不当である。

議  決  の  理  由

1 被疑事実
(1)公職選挙法違反(後援団体関係寄附)
 都内のホテルで,桜を見る会に先立ち行われた「安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭」において,選挙区内の後援会員に対し,飲食代金不足分を補てんしたことが後援団体関係寄附に当たるという被疑者安倍及び被疑者配川に対する公職選挙法違反
(2)政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)
 前記前夜祭に関する収入及び支出を後後会の収支報告書に記載せず,選挙 管理委員会に提出したという被疑者安倍及び被疑者阿立に対する政治資金規正法違反
(3)政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)
 前記前夜祭に関するホテルに支払うべき代金の補てん分として,後援会に代わり,晋和会が支払ったことにつき,晋和会の収支報告書に支出及び収入を記載せず,総務大臣に提出したという被疑者安倍及び被疑者西山に対する政治資金規正法違反
(4)政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任)
 被疑事実(3)事件につき,晋和会の会計責任者である被疑者西山の選任及び監督につき,相当の注意を怠ったという被疑者安倍に対する政治資金規正法違反
(5) 政治資金規正法違反(晋和会代表者の重過失責任)
 被疑事実(3)事件につき,重大な過失があったという被疑者安倍に対する政治資金規正法違反

2 被疑者安倍及び被疑者配川に対する公職選挙法違反(後援団体関係寄附)について
 前夜祭における会費収入を上回る費用が発生し,その不足額を後援会側が補てんした事実が認められるものの,寄附を受けた側に,寄附を受けた認識があったことを認定する十分な証拠がないとする。
 しかしながら,寄附の成否は,あくまで個々に判断されるべきであり,一部の参加者の供述をもって,参加者全体について寄附を受けた認識に関する判断の目安をつけるのは不十分と言わざるを得ない。
 また,実際に提供された飲食物の総額を参加人数で除すると1人当たりの不足額は大した金額ではなく,参加者において不足分があることを認識し得なかったとも考えられるが,都心の高級ホテルで飲食するという付加価値も含まれているのであるから,単純に提供された飲食物の内容だけで寄附を受けたことの認識を判断するのは相当とは言えない。
 さらに,被疑者安倍の犯意について,不足額の発生や支払等について,秘書らと被疑者安倍の供述だけでなく,メール等の客観的資料も入手した上で,被疑者安倍の犯意の有無を認定すべきである。
  以上のとおり。寄附を受けた側の認識及び被疑者安倍の犯意のいずれについても,十分な捜査を尽くした上でこれを肯定する十分な証拠がないとは言いがたく,不起訴処分の判断には納得がいかない。したがって,被疑者安倍及び被疑者配川両名とも不起訴処分は不当である。

3 被疑者安倍及び被疑者阿立に対する政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)について
 被疑者安倍は,後後会の会計責任者でも会計責任者の職務を補佐する者でもなく,被疑者配川と意を通じ,後援会の収支報告書の不記載の罪を実行したと言えるような,共謀の事実を認定することは困難と思われるため,不起訴処分はやむを得ないと判断する。
 被疑者阿立については,仮にも内閣総理大臣の後後会の会計責任者という立場を自覚していたはずであり,責任を問われないことには納得がいかないが,犯意を認定することは困難であり,不起訴処分はやむを得ないと判断する。

4 被疑者安倍及び被疑者西山に対する政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)について
 前夜祭の主催者は後援会であるとしても,前夜祭の開催には,被疑者西山が主体的,実質的に関与していたと認められるから,晋和会による政治資金規正法違反(収支報告書の不記載)の事実が認められるか否かについては,慎重な捜査が行われなければならない。
 また,領収証は,一般的には宛名に記載された者が領収証記載の額を支払ったことの証憑とされるから,宛名となっていない者が支払ったという場合は,積極的な説明や資料提出を求めるべきであり,その信用性は,慎重に判断されるべきである。
 以上のとおり,晋和会の資金による支払があったかどうかについて,十分な捜査が尽くされているとは言いがたいため,不起訴処分の判断には納得がいかず,被疑者西山の不起訴処分は不当である。
  被疑者安倍にっいては,今後捜査を尽くしても収支報告書の不記載につき,認識があったという証拠を入手できる見込みが大きいとは考えにくいことを踏まえ,不起訴処分は相当と判断する。

5 被疑者安倍に対する政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任,晋和会代表者の重過失責任)について
 前述のとおり,政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)について,被疑者西山の不起訴処分は不当であり,今後,同事実に関し再検査が行われるのに併せて,被疑者安倍の会計責任者被疑者西山に対する選任監督に対する注意義務違反の有無の捜査も行われるべきであり,不起訴処分は不当である。
 なお,被疑者安倍の収支報告書不記載に関する重過失責任については,今後捜査を尽くしても重過失を裏付ける新たな証拠を入手できる見込みが大きいとぱ考えにくいことを踏まえ,不起訴処分は相当と判断する。

6 まとめ
 よって,上記趣旨のとおり議決する。
 付言すれば,「桜を見る会」は税金を使用した公的な行事であるにもかかわらず,本来招待されるべき資格のない後援会の人達が多数参加しているのは事実であって,今後は,候補者の選定に当たっては,国民からの疑念が待たれないように,選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい。
 また「桜を見る会前夜祭」の費用の不足分を現金で補てんしているが,現金の管理が杜撰であると言わざるをえず,そういった経費を政治家の資産から補てんするのであれば,その原資についても明確にしておく必要があると思われ,この点についても疑義が生じないように証拠書類を保存し,透明性のある資金管理を行ってもらいたい。
 最後に,政治家はもとより総理大臣であった者が,秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表者である自覚を持ち,清廉潔白な政治活動を行い,疑義が生じた際には,きちんと説明責任を果たすべきであると考える。

            東京第一検察審査会 印

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