判決は必ず公開の法廷で、予め告知された日時に言い渡される。民事訴訟の場合、各当事者に出席の義務はなく主文だけしか朗読されないが、ともかく公開性は確保され、言い渡しの日時は必ず事前に通知されている。突然の判決言い渡しはあり得ない。
ところが、判決ではなく決定となるとそうではない。言い渡しという観念がない。公開性もなく決定の日の事前通知もない。労働仮処分についても、ある日予告なく決定が出ることになる。決定が出たという通知を受けて、裁判所に決定書を取りに行くか、郵便による特別送達を待たねばならない。
連休明けの本日(5月8日・月曜日)午前11時頃に、「東京地裁民事19部です」という書記官からの電話を受けた。「平成29年(ヨ)第21001号と2号事件の決定が出ました」という。愛想よく、「お待ちかねの認容の決定が出ましたよ」などとはけっして言わない。
「今日中に決定書を受領に伺いますが、まさか申し立て却下の決定ではないですよね」と水を向けるが、なんとも返事は素気ない。「決定書の送達が告知ですので、決定書の受領をお願いします」というのみ。
いま私の手許に、その2通の労働仮処分の決定書がある。同じ使用者を「債務者」(仮処分事件では相手方をこう呼ぶ。本訴になれば被告にあたる呼称)とするもので、事実上の解雇を争い、賃金の仮払いを求める内容。1件は、「毎月21万2000円を仮に支払え」という申立の全額が認められた。もう1件は、「毎月12万円を仮に支払え」という決定主文。この人は、別の収入があるのだから、仮払い金額としてはこれでよいだろうというもの。あとは本訴で勝ち取ればよいのだ。なによりも、決定の理由が素晴らしい。
この事件は、澤藤大河が弁護士として依頼を受け、方針を定め、申立書を作成し、疎明資料を集め、審尋を担当してきた。今年の正月明けの1月4日に、東京地裁労働部に賃金仮払いの仮処分を申し立て、事件番号が労働仮処分事件として今年の01番と02番の事件番号が付いた。その後、審尋期日に疎明を尽くし、裁判所は債権者(労働者)側の勝利を前提とした和解を提案したが、債務者の受け入れるところとならず、4月12日審尋を終えて、今日まで決定の通知を待っていたもの。
2人の労働者はアメリカ人でいずれもリベラルな知性派だが、日本語が堪能とは言えない。私もリベラルな知性派だが、英語が堪能とは言えない。会話はほとんどできない。依頼者とのコミュニケーションはもっぱら英語によらざるを得ないのだから、この事件は大河にまかせるしかない。私の出る幕はない。
2人の勤務先は都内に12のブランチをもつかなり大きな語学学校で、この2人は英語講師としてかなり長く働いてきた。その間、労働者であることに疑問の余地はないと考えてきた。使用者は、広告によって受講者を募集し、授業時間のコマ割りをきめ、定められた受講料のうちから、定められた講師の賃金を支払う。労働時間、就労場所、賃金額が定められている。これまでは、疑いもなく、労働契約関係との前提で、有給休暇の取得もあった。
ところが、経営主体となっている株式会社の経営者が交替すると、各講師との契約関係を、「労働契約」ではなく「業務委託契約」であると主張し始めた。そして、全講師に対して、新たな「業務委託契約書」に署名をするよう強要を始めた。この新契約書では有給休暇がなくなる。一年ごとの契約更新に際して、問答無用で解雇される恐れもある。
経営側が、「労働契約上の労働者」に対する要保護性を嫌い、保護に伴う負担を嫌って、業務請負を偽装する手法は今どきの流行りである。政権や財界は、労働形態の多様性という呪文で、正規労働者を減らし続けてきた。これも、その手法の主要な一端である。
法とは弱い立場の者を守るためにある。経済的な弱者を守るべきが社会法であり、その典型としての労働者保護法制である。本件のような、「請負偽装」を認めてしまっては労働者の権利の保護は画餅に帰すことになる。
本件の場合、講師の立場は極めて弱い。仕事の割り当ては経営者が作成する各コマのリストにしたがって行われる。受講者の指名にしたがったとするリストの作成権限は経営者の手に握られている。このリストに講師の名を登載してもらえなければ、授業の受持はなく、就労の機会を奪われて賃金の受給はできない。これは、解雇予告手当もないままの事実上の解雇である。やむなく、多くの講師が不本意な契約文書に署名を余儀なくされている。
しかも、外国籍の労働者には、就労先を確保することがビザ更新の条件として必要という特殊な事情もある。つまり、労働ビザでの滞在外国人労働者にとっては、解雇は滞在資格をも失いかねないことにもなるのだ。その学校での100人を超す外国人講師のほとんどが、契約の切り替えに憤ったが、多くは不本意なからもしたがわざるを得ない、となった。
それでも、中には経営者のやり口に憤り、「断乎署名を拒否する」という者が2人いた。「不当なことに屈してはならない」という気概に加えて、この2人は永住ビザをもつ立場だった。
この五分の魂をもった2人は大河の友人でもあった。大河は、友人の役に立てただけでなく、弁護士として労働者全体の利益のために貢献したことになる。この事件の争点は、2人の労働者性認定の可否だった。債権者側が提示したメルクマールをほぼ全て認めて、完膚なき勝利の決定となった。
明日には、債務者から任意に支払いを受けるか、あるいは強制執行をすることになるかが明確になる。本案訴訟の判決確定までフルコースの解雇訴訟経験も良し、早期解決も良しである。今日は実に良い日だ。
(2017年5月8日・連続第1499回)
働く者は、よりよい労働条件と労働環境を求めて闘い続けてきた。
座して得られるものはない。団結して闘うことこそ、働く者の誇り。
働く者は、暮らしを営む者でもある。
よりよい暮らしも、団結して闘うことで初めて得られる。
平和で自由な社会を求めて、労働者の力を確かめ合うメーデー。万歳。
今日、第88回メーデー(全労連系)のメインスローガンは、
「働くものの団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう」
というもの。異論のあろうはずはない。
そして、喫緊の課題としてのサブスローガンがならぶ。
*戦争法廃止!許すな共謀罪!憲法改悪を許さない!
*市民と野党の共闘で安倍「暴走」政治STOP!
*なくせ貧困と格差 大幅賃上げ・底上げで景気回復、地域活性化
*いますぐどこでも最賃1000円に 全国一律最賃制の実現
*安倍「働き方改革」反対 なくせ過労死 8時間働いて暮らせる賃金を
*年金・医療・介護など社会保障制度の拡充 消費税10%増税の中止
*被災者の生活と生業を支える復興 原発の再稼働反対、原発ゼロの日本
*南スーダンからの自衛隊即時撤退 特定秘密保護法の廃止
*安倍「教育再生」反対 辺野古新基地建設反対 オスプレイ全国配備・訓練反対
*核兵器全面禁止条約の実現
トップに、「戦争法廃止!許すな共謀罪!憲法改悪を許さない!」という政治課題。そうだ、そのとおり!!
次に、その政治課題を実現する不可欠の手段としての「市民と野党の共闘で安倍『暴走』政治STOP!」だ。
そして、経済課題の根本は、「なくせ貧困と格差」。さらに「大幅賃上げ・底上げで、景気回復・地域活性化」という好循環の実現を!!
共産党が例年、党独自の長大なメーデースローガンを掲げる。今年のものは以下のとおり。
☆ 安保法制=戦争法廃止!立憲主義の回復を。
?内心の自由を侵す共謀罪阻止。
?教育勅語容認の閣議決定を撤回せよ。
?憲法改悪反対。
?「戦争する国」づくり許さず、憲法を生かす政治へ。
☆ 8時間働けばふつうに暮らせる社会を。長時間労働を規制せよ。
同一労働同一賃金と均等待遇を実現しよう。
最低賃金時給いますぐどこでも1000円に。1500円をめざそう。
中小企業には本格的支援を。
格差をただし貧困をなくそう。
大企業の内部留保を活用し、大幅賃上げと安定した雇用の拡大で、経済と社会の健全な発展を。
☆ 消費税10%への増税を中止せよ。富裕層と大企業に応分の負担を。
税金の使い方を、社会保障・若者・子育て優先に改め、軍事費を削れ。
☆ 中小企業と農林水産業の振興で地域経済の再生を。
経済主権と食料主権、くらしを守る公正・平等な貿易と投資のルールを。
☆ 東日本大震災、熊本地震からの復興に全力を。自然災害から国民の命と財産を守る政治を。
☆ 原発再稼働を許さず「原発ゼロの日本」を。再生可能エネルギーの飛躍的普及を。
福島原発事故の収束に全力をあげよ。
政府と東電の責任ですべての被災者の生活と生業(なりわい)の再建を。
☆ 辺野古新基地建設反対、普天間基地無条件撤去。オスプレイの配備・訓練を許すな。沖縄と本土の連帯で全国の基地強化に反対しよう。
?日米安保条約を廃棄し、米軍基地のない日本を。対等・平等の日米友好条約を結ぼう。
?軍事対軍事の対米追随でなく、憲法9条を生かした平和外交で北朝鮮の非核化を。
北東アジアでも平和の地域共同体を。
☆ 核兵器禁止条約の実現を。「ヒバクシャ国際署名」を推進しよう。アメリカの「核の傘」から離脱し、非核の日本を。
☆ 森友疑惑徹底究明。南スーダン「日報」隠蔽許すな。
安倍暴走政権打倒!
?野党と市民の共闘をさらに発展させ、野党連合政権をつくろう。
都議選に勝利し、総選挙で新しい日本への道を切り開く確かな力=日本共産党の躍進を。
総花的との印象も拭えないが、なるほど全面的だ。中小業者や農林水産業者の要求も出てくる。課題は広がっているのだ。毎年、そう思いを新たにさせられる。
ところで、連休前に済まされる「連合メーデー」のスローガンはどうなっているのだろう。私は、労使協調、闘わない、労働貴族の巣、資本ベッタリ、などと批判されるような組合でも、労働組合の存在自体が貴重だと思っている。職場に組合が、「ある」と「ない」とでは雲泥の差。連合への批判はあっても、期待は失わない。
連合メーデーのスローガンに、政治課題はおそらくないのだろう。安倍政権打倒などとは言えないよね。原発についてのスローガンは無理だろうな。せめて、平和や民主主義くらいは掲げているのかも。そう思いつつ、調べて見たが、よく分からない。
連合のホームページには、下記の「7つの絆」が掲載されている。
>平和運動
>核兵器廃絶・被爆者支援
>人権を守る(差別撤廃・拉致問題)
>被災地支援と自然災害に負けない
>愛のカンパ(NGO支援/災害支援)
>メーデー
>より強固な絆にしよう
とはいえ、この6番目の「メーデー」を開いても、要求やスローガンは出てこない。代わって、次のような説明がある。
「連合は、毎年、私たち働く者たちの祭典『メーデー中央大会』を開催しています。近年の会場となっている東京・代々木公園には、連合の組合員をはじめ中央労福協、労金協会、全労済などの関係団体、NGO・NPOといった諸団体からおよそ40,000?50,000名の仲間が結集し、中央式典や各種イベントに参加しています。」
メーデーの歴史や果たしてきた役割についての記述は別として、連合メーデーについての解説はこれが全部。
そこで、連合メーデーのポスターをよく読んでみる。書いてある文字を全部書き出してみよう。
「第88回メーデー中央大会」
日時4月29日(土)10:00?14:30 会場:代々木公園」
長時間労働の撲滅
ディーセント・ワークの実現
今こそ底上げ、底支え、格差是正の実現を!
☆暮らしの底上げ
☆36協定に上限時間の規制を
☆インターバル規制を導入しよう
☆もう、過労死はなくそう
これで全部。ウーン、示唆に富む。
それでも、メーデーはメーデー。労働者の祭典。けっして、次のようには言わない。
「日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島・竹島・北方領土を守り、
日本を悪者として扱っている、中国、韓国が、
心改め、歴史で嘘を教えないよう、お願い致します。
安倍首相、ガンバレ! 安倍首相、ガンバレ!
安保法制国会通過よかったです!
日本ガンバレ!えいえいおー!」
その程度ではあれ、とにもかくにも、メーデー万歳!
(2017年5月1日・連続第1492回)
1 社員あっての会社である。命より大切な仕事はありえないものとこころえよ。
2 会社はすべての社員に安全配慮義務を負うことを知れ。なすべき安全配慮の具体的な内容については謙虚によく学び考えよ。
3 会社と社員とは対等平等であることを認識せよ。常に、社員の人格を尊ぶべきことを心がけよ。
4 社員は、平等に遇しなければならない。性別、国籍、信条、学歴、または縁故等を理由とする一切の差別的処遇をしてはならない。
5 労働条件の明示と遵守こそが、社員との信頼の基礎であることを再認識せよ。明示された労働条件を超える業務指揮をしてはならない。
6 コンプライアンスの欠如は、会社に致命的な打撃となるものと知れ。戦々恐々として薄氷を踏むが如くコンプライアンスを心がけることが幹部の使命である。
7 信頼される堅固な内部通報のパイプを確保せよ。社員からの法令違反やハラスメント報告に聞き耳を立て、迅速に対処せよ。
8 社長や役員との摩擦を恐れるな。社命に拳々服膺するよりは、部下の意を体して、正論を堂々と述べよ。でないと君が卑屈未練になるばかりでなく、社のためにならない。
9 労働組合には誠実に対応し、その運営に介入してはならない。労働組合の活動歴を社内の待遇に不利にも有利にも考慮してはならない。
10 この十則を守りなば会社は社員の士気とともに興隆し、無視せば社員の士気とともに衰亡に至るべし。この旨を銘記し手帳に刻して毎日三読せよ。
(2016年11月26日)
本日は第86回メーデーである。労働者の祭典は、清々しくもさわやかなこの季節のこの日にふさわしい。
もっとも、連合メーデーは4月29日におこなわれた。「昭和の日にメーデー」とは、「紀元節に民主主義」「靖国と非戦」「安倍晋三と憲法」ほどの違和感がある。
さらに昨年の連合メーデーは、安倍晋三を招いての集会だった。今年も安倍代理としての塩崎厚労相に挨拶させている。さわやかならざること甚だしい。
連合メーデーのメインスローガンは、
「平和を守り、雇用を立て直す
みんなの安心のため、さらなる一歩を踏み出そう!」
というもの。
連合のホームページでは、古賀伸明会長の主宰者挨拶を次のように報じている。
「現在、政府が推し進めようとしている労働者保護ルールの改悪についてや、労働者派遣法が、均等待遇原則が欠落し世界の常識から逸脱していることにふれ、『“生涯派遣で低賃金”を招く改悪案に連合は断固反対する。労働者保護ルール改悪の流れにストップをかけるため、立ち上がり、行動しよう』と強く訴えた。同時に『戦争は最悪の人権侵害である。二度と戦争を起こしてはならない』と戦後70年の年に開催した本メーデー中央大会に込めた平和を希求する思いで結んだ。」
なるほど、連合とて労働組合である。労働法制の改悪には断固反対なのだ。「平和」だって語らねばならない。このことに評価を惜しんではならない。
対して、本日の全労連・全労協系の本家の統一メーデー。メインスローガンは、以下のとおり、時代を表すものとなっている。
「戦争する国づくり」反対。
安倍「暴走」政治ストップ。
憲法を守りいかす社会の実現。
8時間労働を守れ。派遣法・残業代ゼロなど労働法制改悪反対。
大幅賃上げ実現でくらしの改善、景気回復を。
時給1000円以上、全国一律最賃制の実現。
年金・医療・介護など社会保障制度の拡充。「貧困と格差」の解消を。
消費税10%増税中止、TPP交渉撤退。
被災者が希望のもてる早期復興。原発再稼働反対、原発ゼロの日本。
安倍「教育再生」反対。辺野古新基地建設反対。オスプレイ配備・訓練反対。
核兵器の全面禁止・廃絶を。
平和と憲法擁護、そして安倍政権批判が真っ先にある。まったくそのとおりだ。
次いで、労働法制についての諸要求を述べ、生活者としての福祉を掲げる。
復興と原発ゼロを明確化し、教育・沖縄・核廃絶と対決点を明確にする。
労働者の祭典は、闘う労働者の決意を示す場とならざるを得ないのだ。その決意を披瀝してまことにさわやかである。
本日の赤旗は、さらに詳細に共産党独自のメーデースローガンを掲げている。
☆「海外で戦争する国」への暴走ストップ! 「戦争立法」を許すな。「秘密保護法」を廃止せよ。憲法9条を守ろう。
☆「正社員ゼロ」「残業代ゼロ」への道=労働法制大改悪を阻止しよう。過労死ゼロへ、残業時間の上限を法定せよ。人間らしく働ける雇用のルールを確立しよう。中小企業への抜本的支援とあわせ、だれでも時給1000円以上、全国一律最低賃金制を確立しよう。男女の賃金格差をなくせ。大企業の内部留保を活用し、大幅賃上げと安定した雇用の拡大で経済の好循環を。
☆消費税大増税路線を中止せよ。医療・介護、年金・社会保障を拡充せよ。財政危機の打開は、富裕層・大企業の応分の負担と国民所得増で。
☆農林水産業と食の安全、医療と雇用を土台から破壊し、経済主権をアメリカに売り渡すTPP(環太平洋連携協定)交渉から撤退せよ。家族農業と農協をつぶす「農業改革」反対。
☆東日本大震災からの復興に全力をあげよう。被災者の生活と生業の再建に公的支援の拡充を。「安心して住み続けられる故郷」を取り戻そう。
☆原発再稼働を許さず、「即時ゼロ」を。輸出の強行反対。福島原発事故の収束に全力をあげよ。政府と東電の責任で徹底した除染と全面賠償を。労働者の健康を守り、待遇の抜本的改善を。
☆政党助成金の廃止、企業・団体献金の禁止を。小選挙区制を撤廃し、民意を反映する選挙制度へ抜本改革しよう。
☆辺野古新基地建設反対、普天間基地無条件撤去。日米安保条約を廃棄し、米軍基地のない日本を。対等・平等の日米友好条約を結ぼう。北東アジアでも平和の地域共同体を。
☆「戦後70年」――歴史を偽造し、過去の侵略戦争を賛美する安倍首相の暴走を許すな。
☆「被爆70年」――核兵器禁止条約の国際交渉をすみやかに開始せよ。アメリカの「核の傘」から離脱し、非核の日本を。
☆国民的共同を広げ、安倍政権を打倒しよう。暮らしと民主主義の守り手、反戦と平和の党=日本共産党の前進で、新しい日本への流れを。
対決点を明確にしたこのスローガン群に概ね賛成といわざるを得ないが、教育とメディアへの権力的統制への警鐘のないこと、「憲法9条を守ろう」だけがあって、「改憲阻止」「憲法を活かそう」「立憲主義堅持」とはなっていないことが、不満といえばやや不満。その程度だ。
よく知られているとおり、メーデーはアメリカで8時間労働制を要求する闘いに始まった。19世紀の話である。それが今、日本のメーデーで「8時間労働を守れ」という切実なスローガンを掲げざるを得ない事態である。このことの深刻さを噛みしめなければならない。
100年を大きく超すメーデーの歴史は、労働者の経済的な要求の実現のためには、労働者自身が団結して闘わねばならないこと、しかも政治的スローガンをも併せて掲げて闘わねばならないことを教えている。
薫風の中の闘うメーデーに、精一杯のエールを送りたい。
(2015年5月1日)
議会というところは、諸勢力、諸階層、諸階級の代表が、それぞれの利益を代弁してせめぎ合うコロシアムだ。有権者は、どの政党、どの議員が自分の味方で、敵は誰なのかを見極めなければならない。多くの政党や議員が、騙しのテクニックに磨きをかけて、庶民の味方を装う。「オレオレ詐欺に引っかかってはなるものか」という、あの細心の注意が必要なのだ。
時にホンネが語られることがある。ついつい議員の地金が出る。メッキがはげ、衣の下から鎧が見える。これを見逃してはならない。
その典型例が、昨日(3月25日)の衆議院厚生労働委員会での、維新の党足立康史議員(比例近畿)の発言。これは、維新の党が誰の味方で誰の敵であるかを、よく物語って分かり易い。同時に、維新の党のレベルを物語る点でも興味深い。
共同配信記事は以下のとおり。短いがまことに要領よく事態をとらえたもの。
「維新議員、秘書残業代不払い宣言 『労基法は現実に合わない』
維新の党の足立康史衆院議員(比例近畿)は25日の厚生労働委員会で質問に立ち、元私設秘書から未払いの残業代700万円を請求されたことを明かし『払うことはできない。私たち政治家の事務所は、残業代をきっちりと労働基準法に沿って払えるような態勢かと問題提起したい』と述べ、未払いを正当化した。
足立氏は『私は24時間365日仕事をする。そういう中、秘書だけ法に沿って残業代を支払うことはできない』と持論を展開。元秘書からの請求に対しては『ふざけるなと思う』と強弁。
取材に対し『労基法は現実に合っておらず、見直しが必要だ。議論を喚起するために発言した』と述べた。」
「ふざけるな」と言いたいのは、まずは未払いの残業代を請求している元秘書氏だろう。そして、おそらくは現役の同議員秘書氏もだ。うかうかしていると残業代を含めた未払い賃金の請求権は2年で時効になる。早めに手を打っておくことをお勧めする。
それだけではない。すべての労働者が「足立議員よ、フザケルナ」と言わねばならないし、法による秩序を大切に思うすべての国民が「維新の党よ、フザケルナ」と言いたいところだ。私は、法による秩序すべてが守るに値するという立場ではない。しかし、社会法の典型として弱者を保護する労基法は厳格に遵守されねばならないことは当然だ。仮に、法改正を要するとの意見を持っていたとしても、現に存在する法規に違反することは許されない。この維新議員、恐るべき法感覚と指摘せざるを得ない。
いうまでもなく、残業には割増分(25%)を付した賃金を支払わなければならない(労基法37条)。その支払いを拒絶することは犯罪に当たる。刑罰は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金である(労基法119条1項)。足立発言は、国会と公の場での犯罪宣言にほかならない。足立議員は、告発され厳重に処罰されてしかるべきだ。
念のためにユーチューブで彼の質問を聞いてみた。「自分はこういう労働基準法を改正するために議員になった」とまで言ってのけている。臆面もなく、強者の側に立って、弱者保護の法律をなくしてしまおうという使命感。こんな議員、こんな政党に票を投じることは、自分のクビを締めることになる。
画面を見つつ納得した。なるほどこれが維新の役割なのだ。この維新の議員は、「残業代ゼロ法案」を提案している悪役・政府与党の政務三役までを品良く見せている。こんなお粗末な手合いが、維新の党を作り、議員になっているのだ。民主主義の堕落というほかはない。
この足立という議員。元は「みんなの党」支部長からの転身だという。2012年の総選挙では、陣営から選挙違反の逮捕者を出している。投票呼びかけの電話作戦を担当した女性運動員3人に時給約800円の報酬を支払う約束をしたという被疑事実。維新全体がそうだが、コンプライアンス意識に問題あり、なのだ。
「ブラック議員」というネーミングが、まことにふさわしい。ブラック企業、ブラック社長、ブラック選対だけではない。ブラック政党、ブラック政治家、ブラック議員、そしてブラック政権だ。この世にブラックが満ちている。
さて、今日から統一地方選挙に突入だ。ブラック掃除のチャンスである。残念ながら、足立議員は今回は選挙民の審判を受けないが、同類の維新を一掃することは可能だ。労働者の利益のためにも、民主主義の劣化防止のためにも、自民とともに維新にノーを突きつけよう。
(2015年3月26日)