恐るべき法感覚ー維新議員の「残業代支払わない」宣言
議会というところは、諸勢力、諸階層、諸階級の代表が、それぞれの利益を代弁してせめぎ合うコロシアムだ。有権者は、どの政党、どの議員が自分の味方で、敵は誰なのかを見極めなければならない。多くの政党や議員が、騙しのテクニックに磨きをかけて、庶民の味方を装う。「オレオレ詐欺に引っかかってはなるものか」という、あの細心の注意が必要なのだ。
時にホンネが語られることがある。ついつい議員の地金が出る。メッキがはげ、衣の下から鎧が見える。これを見逃してはならない。
その典型例が、昨日(3月25日)の衆議院厚生労働委員会での、維新の党足立康史議員(比例近畿)の発言。これは、維新の党が誰の味方で誰の敵であるかを、よく物語って分かり易い。同時に、維新の党のレベルを物語る点でも興味深い。
共同配信記事は以下のとおり。短いがまことに要領よく事態をとらえたもの。
「維新議員、秘書残業代不払い宣言 『労基法は現実に合わない』
維新の党の足立康史衆院議員(比例近畿)は25日の厚生労働委員会で質問に立ち、元私設秘書から未払いの残業代700万円を請求されたことを明かし『払うことはできない。私たち政治家の事務所は、残業代をきっちりと労働基準法に沿って払えるような態勢かと問題提起したい』と述べ、未払いを正当化した。
足立氏は『私は24時間365日仕事をする。そういう中、秘書だけ法に沿って残業代を支払うことはできない』と持論を展開。元秘書からの請求に対しては『ふざけるなと思う』と強弁。
取材に対し『労基法は現実に合っておらず、見直しが必要だ。議論を喚起するために発言した』と述べた。」
「ふざけるな」と言いたいのは、まずは未払いの残業代を請求している元秘書氏だろう。そして、おそらくは現役の同議員秘書氏もだ。うかうかしていると残業代を含めた未払い賃金の請求権は2年で時効になる。早めに手を打っておくことをお勧めする。
それだけではない。すべての労働者が「足立議員よ、フザケルナ」と言わねばならないし、法による秩序を大切に思うすべての国民が「維新の党よ、フザケルナ」と言いたいところだ。私は、法による秩序すべてが守るに値するという立場ではない。しかし、社会法の典型として弱者を保護する労基法は厳格に遵守されねばならないことは当然だ。仮に、法改正を要するとの意見を持っていたとしても、現に存在する法規に違反することは許されない。この維新議員、恐るべき法感覚と指摘せざるを得ない。
いうまでもなく、残業には割増分(25%)を付した賃金を支払わなければならない(労基法37条)。その支払いを拒絶することは犯罪に当たる。刑罰は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金である(労基法119条1項)。足立発言は、国会と公の場での犯罪宣言にほかならない。足立議員は、告発され厳重に処罰されてしかるべきだ。
念のためにユーチューブで彼の質問を聞いてみた。「自分はこういう労働基準法を改正するために議員になった」とまで言ってのけている。臆面もなく、強者の側に立って、弱者保護の法律をなくしてしまおうという使命感。こんな議員、こんな政党に票を投じることは、自分のクビを締めることになる。
画面を見つつ納得した。なるほどこれが維新の役割なのだ。この維新の議員は、「残業代ゼロ法案」を提案している悪役・政府与党の政務三役までを品良く見せている。こんなお粗末な手合いが、維新の党を作り、議員になっているのだ。民主主義の堕落というほかはない。
この足立という議員。元は「みんなの党」支部長からの転身だという。2012年の総選挙では、陣営から選挙違反の逮捕者を出している。投票呼びかけの電話作戦を担当した女性運動員3人に時給約800円の報酬を支払う約束をしたという被疑事実。維新全体がそうだが、コンプライアンス意識に問題あり、なのだ。
「ブラック議員」というネーミングが、まことにふさわしい。ブラック企業、ブラック社長、ブラック選対だけではない。ブラック政党、ブラック政治家、ブラック議員、そしてブラック政権だ。この世にブラックが満ちている。
さて、今日から統一地方選挙に突入だ。ブラック掃除のチャンスである。残念ながら、足立議員は今回は選挙民の審判を受けないが、同類の維新を一掃することは可能だ。労働者の利益のためにも、民主主義の劣化防止のためにも、自民とともに維新にノーを突きつけよう。
(2015年3月26日)