澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

年金制度は、自己責任・自助努力が前提なのさ。甘ったれちゃいけないよ。

君ら、人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ。でも、今のうちから考えておかないかんのですよ。

年金はね、人生設計のうちの生涯収入の一部だ。まさか、年金だけで老後の生活が安泰なんて、君たち本気で思い込んではおるまいね。年金で100年安心と思っているなんて、冗談だろう。

君ら誤解していないか。「年金100年安心」って、文字どおり「年金の制度維持は100年安心」ということで、「人生100年時代の年金生活が安心」ということではない。2004年の年金改革は「持続可能な年金制度」作りが目的で、老後の暮らしの保証じゃなかったんだよ。この辺の勉強がしっかりできているかね。

君らの勝手な誤解は、政府の責任じゃない。世の中そんなに甘いもんじゃない。知ってるだろう。「自己責任」、「自助努力」だよ。私なんか、年金なんて当てにしていない。受給しているかどうかも自分じゃ知らない。

でもお分かりだろう。老後の暮らしの安心のために、気前よく年金の支払いを振る舞っていたら、たちまち年金制度そのものが成り立たなくなる。年金制度の維持が100年は安全のためには、「入るを量って出ずるを制す」が肝要なんだ。分かり易く言えば、「保険料を増額して、給付額を減額する」「負担増、受益減」ってことだ。

とどのつまりは、高齢者の生活を犠牲にして年金制度を守ろうということ。これって常識だろう。誰が考えても分かることだし、それ以外に、年金制度維持の方法があったら教えてくれ。

今の時勢を考えて見たまえ。保険料負担の現役世代がどんどん減っているのが現実じゃないか。「入るを量る」はたいへん困難だ。ならば、「出ずるを制す」に徹するしか方法はなかろう。

ところが、年金受給者世代が際限なく増えている。平均余命がどんどん延びているんだから、「出ずるを制す」の政策は一人あたりの年金支給額を減らという方法に落ちつくことになる。それだけの単純なロジックじゃないか。

手品じゃあるまいし、「保険料は減らせ」「年金給付は増やせ」なんて、身勝手なことができるわけはない。安倍晋三が、決算委員会で言ったとおり、そりゃ「バカげた政策」だ。「年金100年安心」のためには、「保険料は増やす」「年金給付は減らす」しかないんだよ。

マクロ経済スライドは、そのためのシステム。このご時世、マクロ経済が年金受給者に厳しく推移することは、誰の目にも明らかではないか。安閑と年金受給額を現状維持としていたら、年金制度が崩壊することは目に見えている。だから、経済の悪化にしたがって、年金額を自動的に減額するのが、マクロ経済スライドだ。合理的だろう。年金生活者の生活をカットして、年金制度を維持しようという優れものだ。

2004年は、小泉内閣のときだ。あのとき、安倍晋三は確か自民党幹事長。自公で、「年金100年安心」を吹聴した。でも、あのときから、今のご時世は見通せていた。問題は財源の確保だったんだ。なんと言っても、国庫負担の問題だ。

ここは、基本的な考え方の相違だ。もちろん、「税制による所得再分配機能を最大限発揮せよ」という野党の皆さんの、いつもながらの主張はあるだろう。決まり切ったフレーズとして、「大企業や富裕層への優遇税制を見直せ。負担増を求めよ」「軍事費削って、福祉にまわせ」ってね。

でも、もう、やれることはやった。給付財源の国庫負担分を、段階的に引き上げて3分の1から2分の1までにした。これで十分だろう。これ以上、国庫負担部分を増やすことは、財界がウンと言わない。何よりも、企業や富裕層の経営意欲に水を差すことになり、経済の活性化が失われる。だから、財源は、消費増税しかない。

金融庁金融審議会の報告書が「年金だけでは老後の資金を賄うことができないため、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要」と言って非難囂囂だ。非難の声が高いから、臭い物に蓋をした。政治家として、当然のことじゃないか。

ところがだ。自公政権の国家的詐欺」だの、国民に対する年金詐欺」だのとまことに評判が悪い。こんな悪口雑言が言論の自由として許されてよいもんかね。まあ、フランスや韓国や香港とは違って、日本人は行儀がよくて温和しいから安心はしているが、年金問題は選挙に響くところが頭が痛い。

ホンネのところ、言いたいのは次のことだ。
国民諸君よ、年金だけでは暮らせるはずがない。貯金も利息はないに等しい。だから、株に投資したまえ。さすれば、国民こぞっての株式市場参入が実現して、株価が大いに上がる。株価が上がっている限り、政権は安泰なのだ。

えっ? 株式投資のリスクが現実化したらどうなるか? 前にも言ったろう。そりゃ、自己判断・自己責任・自助努力の大原則だ。誰も、責任とってはくれない。世の中けっこう厳しいんだよ。甘えてくれるな。
(2019年6月17日)

「防衛費の異常な増加に抗議し、教育と社会保障の充実を求める声明」

本日(12月21日)、幾つかの紙面朝刊に、「おや、お久しぶり」。徳岡宏一朗さんのお顔が。日本外国特派員協会での申ヘボン(しん・へぼん)青山学院大教授と並んでの記者会見の写真。

この会見は、「防衛費の異常な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明」という、やや長い標題の声明発表記者会見。いま、防衛大綱が発表され、来年度予算案の閣議決定が話題となっている。誰の目にも、青天井の防衛費によって福祉・教育の予算が圧迫され侵蝕されている構図が明らかとなっている。これを、国際人権の視点から批判したのがこの声明。「研究者・実務家有志一同」による声明だが、18人の呼びかけ人に、220人が賛同した形。私も、18人の呼びかけ人の一人となっている。

この記者会見の報道は、東京新聞が最も大きく紙幅を割いている。「防衛費増大に抗議声明 大学教授ら『人権規約に反する』」という見出し。

 米国製兵器の輸入拡大で防衛費が毎年増加している問題で、申惠ボン(しんへぼん)青山学院大教授(国際人権法)らが20日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見し「政府が米国などから莫大な額の兵器を買い込む一方で、生活保護費や年金の切り下げ、貧弱な教育予算を放置することは、憲法の平和主義、人権保障だけでなく、国際人権規約に反する」との抗議声明を発表した。

 声明は申さんら18人の大学教員や弁護士が呼び掛け、東京大大学院の高橋哲哉教授(哲学)、小林節慶応大名誉教授(憲法学)、伊藤真弁護士ら約210人が賛同者に名を連ねた。
 声明では、安倍政権は史上最高規模の防衛予算を支出し、その補填として補正予算も使っているのは、憲法の財政民主主義に反すると指摘。「主要先進国で最悪の財政状況にある日本にとって、米国の赤字解消のため借金を重ねて巨額の予算を費やすのは常軌を逸している」と批判している。
 一方で「政府は生活保護費の減額で予算削減を見込んでいるが、米国からの野放図な兵器購入を抑えれば必要なかった」と指摘。「社会保障や適切な生活水準の権利の実現を後退させることは、国際人権規約に反する」とした。

 申さんは会見で「巨額の武器を米国の言い値でローンまで組んで買うのが問題。貧困・格差が広がっており、財政破綻しないように限られた予算をどれだけ防衛費に割くか、真剣に考えないと。中国が軍事力を増やすからと張り合えば、際限のない軍拡競争。十九世紀に逆戻りだ」と話した。 

 徳岡さんは、この声明の独自性を、「財政赤字の中、福祉・教育予算にしわ寄せして、防衛費だけ異常に増大させることは国際人権規約(社会権規約)に違反すると明言した」ところにあると言っている。また、この声明が「なぜ成功したか」というと、「憲法などの法律の専門家だけではなく、国際人権法、社会保障、教育、財政法など様々な専門家と実務家が結集できる内容だったから」とも言っている。人脈は貴重だ。

下記に、やや長いが、声明の全文を掲載しておきたい。呼びかけ人や賛同者たちのの危機感が伝わってくると思う。
(2018年12月21日)
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防衛費の異常な増加に抗議し、教育と社会保障への
優先的な公的支出を求める声明

2018年12月20日 研究者・実務家有志一同

声明の趣旨

世界的にも最悪の水準の債務を抱える中、巨額の兵器購入を続け、他方では生活保護や年金を引き下げ教育への公的支出を怠る日本政府の政策は、憲法と国際人権法に違反し、早急に是正されるべきである。

1.安倍政権は一般予算で史上最高規模の防衛予算を支出しているだけでなく、補填として補正予算も使い、しかも後年度予算(ローン)で米国から巨額の兵器を購入しており、これは日本国憲法の財政民主主義に反する。

2.米国の対日貿易赤字削減をも目的とした米国からの兵器「爆買い」で、国際的にも最悪の状態にある我が国の財政赤字はさらにひっ迫している。

3.他方で、生活保護費や年金の相次ぐ切り下げなど、福祉予算の大幅削減により、国民生活は圧迫され貧困が広がっている。

4.また、学生が多額の借金を負う奨学金問題や大学交付金削減に象徴されるように、我が国の教育予算は先進国の中でも最も貧弱なままである。

5.このように福祉を切り捨て教育予算を削減する一方で、巨額の予算を兵器購入に充てる政策は、憲法の社会権規定に反するだけでなく、国際人権社会権規約にも反する。

以下、具体的に理由を述べる。

1 莫大な防衛費増加と予算の使い込み
現在、安倍政権の下で防衛費は顕著に増加し続け(2013年度から6年連続増加)、2016年度予算からは、本予算単独でも5兆円を突破している。加えて、防衛省は、本来は自然災害や不況対策などに使われる補正予算を、本予算だけでは賄いきれない高額な米国製兵器購入の抜け道に使い、2014年度以降は毎年2,000億円前後の補正予算を計上して、戦闘機や輸送機オスプレイ、ミサイルなどを、米側の提示する法外な価格で購入している。
しかも、これには後年度負担つまり次年度以降へのつけ回しの「ローン」で買っているものが含まれ、国産兵器購入の分を合わせると、国が抱えている兵器ローンの残高は2018年度予算で約5兆800億円と、防衛予算そのものに匹敵する額に膨れ上がっている(2019年度は5兆3,000億円)。米国へのローン支払いが嵩む結果、防衛省が国内の防衛企業に対する装備品代金の支払いの延期を要請するという異例の事態まで起きている(「兵器ローン残高5兆円突破」「兵器予算 補正で穴埋め 兵器購入『第二の財布』」「膨らむ予算『裏抜』駆使」「防衛省 支払い延期要請 防衛業界 戸惑い、反発」東京新聞2018年10月29日、11月1日、24日、29日記事参照)。毎会計年度の予算は国会の議決を経なければならないとしている財政民主主義の大原則(憲法86条)を空洞化する事態である。
防衛省の試算によれば、米国から購入し又は購入を予定している5種の兵器(戦闘機「F35」42機、オスプレイ17機、イージス・アショア2基など)だけで、廃棄までの20?30年間の維持整備費は2兆7,000億円を超える(「米製兵器維持費2兆7,000億円」東京新聞11月2日)。さらに、これに輪をかけるように、政府は、「F35」を米国から100機追加取得する方向で検討しており、取得額は1機100億円超で計1兆円以上になる見込みである(2018年11月27日日本経済新聞)。

2 米国のための高額兵器購入による財政逼迫
このような防衛費の異常な膨張について、根源的な問題の一つは、米国からの高額の兵器購入が、トランプ政権の要請も受け、米国の対日貿易赤字を解消する一助として行われていることである。
歳入のうち国債依存度が約35%を占め、国と地方の抱える長期債務残高が2018年度末で1,107兆円(対GDP比196%)に途するという、「主要先進国の中で最悪の水準」(財務省「日本の財政関係資料」2018年3月)の財政状況にある日本にとって、他国の赤字解消のために、さらなる借金を重ねてまで兵器購入に巨額の予算を費やすことは、国政の基盤をなす財政の運営として常軌を逸したものと言わざるを得ない。
また、導入されている兵器の中には、最新鋭ステルス戦闘機「F35」のような攻撃型兵器が多数含まれている。戦闘機が離着陸できるよう海上自衛隊の護衛艦「いずも」を事実上「空母化」する方針も示されている。これらは専守防衛の原則を逸脱する恐れが強い。
政府は北朝鮮情勢や中国の軍備増強を防衛力増強の理由として挙げるが、朝鮮半島ではむしろ緊張緩和の動きが活発化しているし、近隣国を仮想敵国として際限なく軍拡に走ることも、武力による威嚇を禁じ紛争の平和的解決を旨とする現代の国際法の大原則に合致せず、それ自体が近隣国の警戒感を高める、かえって危険な政策というべきである。

3 福祉切り捨ての現状
このように防衛費が破格の扱いで膨張する一方、政府は、生活保護費や年金の受給額を相次いで引き下げている。
生活保護については、2013年からの大幅引き下げに続き、今年10月からは新たに、食費など生活費にあてる生活扶助を最大で5%、3年間かけて引き下げることとされ、これにより、生活保護世帯の約7割の生活扶助費が減額となる。
しかし、削減にあたってば、減額された保護費が最低限の生活保障の基準を満たすのかどうかにっいての十分な検討がされておらず、厚生労働省の生活保護基準部会の報告書がこの点で提起した疑問は反映されていない。特に大きな影響を受ける母子世帯や高齢者世帯を含め、受給当事者の意見を聴取することも一切されていない。
生活保護基準は、最低賃金や住民税非課税限度額など様々な制度の基準になっているため、引き下げによる国民生活への悪影響は多方面にわたる。
また、年金については、2013年からの老齢基礎年金・厚生年金支給額の減額に続き、長期にわたり自動的に支給額が削減される「マクロ経済スライド」が2015年から発動されており、高齢者世帯の貧困状況は悪化している。
政府は生活保護減額によって160億円の予算削減を見込んでいるが、そもそも、国家財政を全体としてみた場合、この削減は、青天井に増加している防衛費の増加、とりわけ米国からの野放図な兵器購入を抑えれば、全く必要がなかったものである。
日本の国家財政は、米国の兵器産業における雇用の剔出iと維持のために用いられるべきものではない。国民の生存権よりも同盟国からの兵器購入を優先するような財政運営は根本的に間違っている。

4 主要国で最も貧弱な日本の教育予算
日本は、GDPに占める教育への公的支出割合が、主要国の中で例年最下位である。特に、日本は「高等教育の授業料が、データのあるOECD加盟国の中で最も高い国の一つであり、過去10年、授業料は上がり続けている。「高等教育機関は多くを私費負担に頼っている。日本では、高等教育段階では68%の支出が家計によって負担されており、この割合は、OECD加盟国平均30%の2借を超える」(OECD.Educalion at a Glance 2018)。
給付型奨学金は2017年にようやく導入されたものの、対象は住民税非課税世帯に限られ、学生数は各学年わずか2万人、給付額は月2?4万円にすぎない。大学生の75%は私立大学で学んでいるが、国の私学助成が少ないため家計の負担が大きいところ、私大新入生のうち無利子奨学金を借りられるのは15%にすぎず(東京私大教連調査)、多くの卒業生は奨学金という名のローン返済に苦しんでいる。「卒業時に抱える平均負債額は32,170ドルで、返済には学士課程の学生で最大15年を要する。これは、データのあるOECD加盟国の中で最も多い負債の一つである」(OECD,supra)。2011年から2016年の5年間で延べ15,338入が、奨学金にからんで自己破産している(「奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる」朝日新聞デジタル2018年2月12日)。
国立大学法人化後、その基盤経費となる運営費交付金も年々削減され(2004年から2016年までで実質1,000債円以上。文部科学省調査)、任期付き教員の増加など大学の教育・研究に支障をきたしている(「土台から崩れゆく日本の科学、疲弊する若手研究者たち これが『科学技術立国』の足元」Wedge Infinity2017年11月27日)。
高等教育だけではない。教育予算が全体としてきわめて貧弱であり人員が少ないため、公立の小・中・高等学校では半数以上の教員が過労死レベルで働いている(「過労死ライン超えの教員、公立校で半数 仕事持ち帰りも」朝日新聞デジタル2018年10月18日)。
教育に予算を支出しない国に未来はあるだろうか。納税者から託された税金を何にどう用いるかという財政政策において、教育を受ける権利の実現は最優先事項の一つでなければならない。

5 日本は社会権規約に違反している
憲法25条は国民の生存権を保障している。また、日本が批准している「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)は、社会保障についての権利(9条)、適切な生活水準についての権利(11条1項)を認め、国はこれらの権利の実現のために、利用可能な資源を最大限に用いて措置を取る義務があるとしている(2条1項)。
権利を認め、その実現に向けて措置を取る義務を負った以上は、権利の実現を後退させる措置を取ることは規約の趣旨に反する(後退禁止原則)。社会権規約の下で設置されている社会権規約委員会は「一般的意見」で、「いかなる意図的な後退的措置が取られる場合にも、国は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び、国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されること、を証明する責任を負う」としている。
このような観点から委員会は、日本に対する2013年の「総括所見」で、社会保障予算の大幅な削減に懸念を示している。また、日本の最低賃金の平均水準が最低生存水準及び生活保護水準を下回っていることや、無年金又は低年金の高齢者の聞で貧困が広がっていることにも懸念を表明した(外務省ウェブサイト「国際人権規約」参照)。
今年(2018年)5月には、10月からの生活保護引き下げについて、「極度の貧困に関する特別報告者」を含む国連人権理事会の特別報告者ら4名が連名で、引き下げは日本の国際法上の義務に違反するという声明を発表し政府に送る事態となった。「日本のような豊かな先進国におけるこのような措置は、貧困層の人々が尊厳をもって生きる権利を直接に掘り崩す、意図的な政治的決定を反映している。」「貧困層の人権に与える影響を慎重に検討しないで取られたこのような緊縮措置は、日本が国際的に負っている義務に違反している」。
また社会権規約は、国はすべての者に教育の権利を認め、中等教育と高等教育については、無償教育を漸進的に導入することにより、すべての人に均等に機会が与えられるようにすることと規定している。適切な奨学金制度を設立することも定めている(13条2項)。
教育に対する日本の公的支出の貧弱さはこれらを遵守したものになっていない。

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 後年度負担まで組んで莫大な額の兵器を買い込み国家財政を逼迫させる一方で、十分な検討も経ずに生活保護を引き下げることや、きわめて貧弱な教育予算を放置し又は削減することは、憲法の平和主義、人権保障及び財政上の原則のみならず、国際法上の義務である社会権規約(及び、同様の規定をもつ子どもの権利条約や障害者権利条約など)に違反している。我々は、安倍政権による防衛予算の異常な運営に抗議し反対の意を表明するとともに、教育と社会保障の分野に適切に予算を振り向けることを強く求めるものである。

<呼びかけ人>(五十音順、*発起人)
荒牧 重人(山梨学院大学教授、憲法学・子ども法)
井上 英夫(金沢大学名誉教授・佛教大学客員教授、人権論・社会保障法学)
大久保 賢一(弁護士)
小久保 哲郎(弁護士、生活保護問題対策全国会議事務局長)
今野 久子(弁護士)
澤藤 統一郎(弁護士、日本民主法律家協会元事務局長・日本弁護士連合会元消費者委員会委員長)
*申 ホンヘ(青山学院大学教授、国際人権法学会前理事長、国際人権法学)
田中 俊(弁護士)
谷口 真由美(大阪国際大学准教授、国際人権法学)
角田 由紀子(弁護士)
*徳岡 宏一朗(弁護士)
戸室 健作(千葉商科大学専任講師、社会政策論)
根森 健(神奈川大学特任教授、新潟大学・埼玉大学名誉教授、憲法学)
尾藤 廣喜(弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事)
藤田 早苗(エセックス大学研究員、国際人権法学)
藤原 精吾(弁護士・日本反核法律家協会副会長・日本弁護士連合会元副会長)
吉田 雄大(弁護士)

3月3日は納税者一揆第2弾だ。「少々普通じゃない者」も「こんな人たち」もみんな集まれ。

佐川長官 御用だ! 
従業員用エレベーターで逃げるな! 
国会へ出てこい!
佐川長官を任命したのは麻生大臣だ! 
麻生も責任を取れ!
麻生はニヤけた答弁やめろ! 国民をなめるな!
安倍首相、佐川長官を「適材」とは何事だ!
公務員は安倍の私兵ではない。国民全体への奉仕者だ!
昭恵さん、「私も真実を知りたい」はないだろう! 
知りたいのはこっち(国民)だ! 国会で証言せよ!
税金は政府の私物ではない 国民のために使え!

麻生よ。俺たち「少々、普通じゃない」ってか。
安倍政権は「普通」かね?
あんたは、どんだけ真っ当なんだ。
国民を愚弄しちゃいけない。
納税者を怒らすな。
主権者の逆鱗に触れるな。

さあ、納税者一揆の第2弾だ。
3月3日、再度国税庁を包囲しよう。
このまんまじゃあ、納税がばからしい。
真面目な納税者はあつまれ。
「少々普通じゃない者」も、
「こんな人たち」も、
佐川と麻生と安倍に、抗議の声を上げよう。

金子兜太さんを偲びつつ、叫ぼう。
「アベ政治を許さない」と。
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■2月16日納税者一揆第1弾の様子は、以下の通り。
? ユープランの動画(フルバージョン)
https://www.youtube.com/watch?v=ECxGAC0yAWs
(1時間33分21秒 包囲行動+デモ行進)

?毎日新聞動画ニュース
「確定申告:怒る納税者 国税庁長官罷免求め、街頭行動」
https://l.mainichi.jp/HcdoLz3
?「『佐川はやめろ!』財務省・国税庁前で怒りの納税者一揆」
(レイバーネットTV,2018年2月16日、7分間動画)
http://www.labornetjp.org/news/2018/0216kokuzei

3月3日「モリ・カケ追及! 納税者一揆 第2弾」をやります
私たちの運動も2.16行動1回で「幕引き」とはいきません。
国会は佐川氏と昭恵夫人の証人喚問、麻生財務相、安倍首相の「適材適所」発言をめぐって緊迫した状況が続く見込みです。

そこで、当会は、次のようなアピールを掲げて、第2弾の行動を行うことにしました。より多くの方に参加いただける土曜日です。
<モリ・カケ追及! 第2弾 国税庁包囲行動&デモ行進>

3月3日(土)13時30分 日比谷公園 西幸門集合
13時40分? 国税庁・財務省包囲行動
14時30分  デモ出発
よびかけ一式:
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/233-dd8f.html
チラシ:
https://app.box.com/s/aqgf2wydnsudd2pxfg6fyw4suug7tp0h
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「森友・ 加計問題の幕引きを許さない市民の会」
HP:http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/
連絡窓口(メール):moritomosimin@yahoo.co.jp
または、morikakesimin@yahoo.co.jp
携帯電話:070-4326-2199 (10時?20時)
(2018年2月21日)

マイナンバー? そんな数字は記憶にない。そんな記録は廃棄した。

鉄門を出て不忍池まで無縁坂を下りながらこう考えた。
今年もまた来た申告期。はてさてどうするマイナンバー。原則貫けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に税務は不愉快だ。不愉快が高じると、安い所へ引き越したくなる。しかし、どこへ越してもマイナンバーからは逃げられない。そう悟った時に決意が生れる。角が立っても窮屈でも、意地を通すが我がさだめ。今年も書いてはならないマイナンバー。

五條天神のみごとな梅をみながら、こうも考えた。
とりわけ今年は格別だ。国税庁の長官が、あの佐川宣寿。「記憶にない」「記録は廃棄した」と言い抜いて、そのご褒美で出世したあの佐川。まことに適材が適所に配置されているのだ。そんな政権に協力などしてやるものか。佐川が長官で、徴税はスムーズに行われたなどと、安倍や麻生に言わせてなるものか。

上野大仏の雪割草の咲き初めを愛でつつ考え続けた。
何ゆえ佐川が出世できるのか、なにゆえのご褒美頂戴なのだろうか。安倍と昭恵の窮地を救ったからとしか考えようがない。安倍は、官僚諸君にこう教えているのだ。「行政の公平や透明性の原則を守ろうなどとすれば角が立つ。意地を通せば窮屈だ。政権におもねれば褒められる。出世したければ忖度だ。百僚百官みんなこぞって忖度にやよ励めよ」と。これが、安倍政権の正体であり、ホンネではないか。だから、マイナンバーなど書いてやってはならないのだ。

上野公園から、湯島天神に足を伸ばして、人混みとタコ焼きの匂いの中で、結論に達した。
納税は拒否しない。拒否すべきでもない。しかし、佐川国税庁長官に協力してはならない。その意思表示として、マイナンバー記載は断固拒否しよう。これを咎められたら、大きな声で言ってやろうじゃないか。
「マイナンバー? そんな数字は記憶にない。そんな記録の保存はない。」
「マイナンバー? そんな記録は廃棄した。」
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マイナンバー記載が昨年(所得税については2017年1月)以来、法的な義務であることはずいぶんと喧伝された。問題は、「マイナンバー記載を拒否したらどうなるか」である。刑事罰、行政罰はあるのか。そもそも受け付けてもらえないのではないか。まったく心配には及ばない。「マイナンバー記載を拒否」することの不利益はない。むしろ、マイナンバー記載は、重要な個人情報漏洩のリスクを覚悟しなければならない。

以下は、国税庁ホームページに掲載されている、「番号制度概要に関するFAQ」である。よくお読みいただきたい。
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/gaiyou.htm

Q2-3-2 申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。(平成29年9月7日更新)
(答)税務署等では、社会保障・税番号<マイナンバー>制度に対する国民の理解の浸透には一定の時間を要する点などを考慮し、申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。
なお、記載がない場合、後日、税務署から連絡をさせていただく場合があります。
ただし、その場合でも、税務職員が電話で直接マイナンバー(個人番号)を聞くことはありません。税務職員を装った不審な電話にはくれぐれもご注意願います。
※ 税務職員を装った不審な電話、メールなどにご注意ください。

Q2-3-3 税務署等が受理した申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合や誤りがある場合には、罰則の適用はありますか。
(答)税務署等が受理した申告書や法定調書等の税務関係書類にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合や誤りがある場合の罰則規定は、税法上設けられておりませんが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出をしてください。
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要するに、マイナンバー記載は、「形式的には法的義務」だが、違反に何の制裁もない。これを強制する手段もないのだ国税庁は、国民に「法を守るようお願いしている」に過ぎない。しかもその長官自身が、国会で嘘を突き通し 「記録は廃棄した」と答弁してきた人なのだ。国民の耳には、「そりゃ聞こえませぬ、長官殿」となるのは当然ではないか。

実のところ、私にとってはホントに知らないマイナンバー、知りたくもないマイナンバー、なのである。ナンバー通知の受け取り自体を拒否している。マイナンバーとは、国家が国民を管理して統治する技術としての国民皆背番号制である。マイナンバーをツールとして、あらゆる個人情報の統合が可能となる。いま、反対の声をあげないと、その使途は無限に拡大し、IT技術の発達と相まって、権力が国民生活の隅々まで管理する恐るべき事態を招くことになろう。

管理などされたくない人々の声が大きくなれば廃止できる。佐川宣寿の国税庁長官就任は、そのような大きな運動の起爆剤ととなり得る。これこそ、真の意味での「適材適所」ではないか。
(2018年2月18日)

2月16日 納税者一揆の爆発だ!! ― 「モリ・カケ追及! 緊急デモ」のお知らせ

国民は、モリ・カケ問題に怒っているぞ。
安倍晋三の政治と行政の私物化に怒り心頭だ。
その解明と追及の不徹底にイライラしているぞ。
安倍やその手下は、国民の共有財産をいったい誰のものと思っているんだ。
こんな政府に税金なんか納めたくないぞ。
だから、確定申告の初日に、納税者一揆だ。

一揆の揆は難しい字だ。手許の漢和辞典(大漢和語林)では、漢音でキ、呉音でギと読み、「はかる」と訓じている。意味に「はかり考えること」「はかりごと」とある。一揆は、多数人がひとつになって「はかり考える」「はかりごと」を企て実行することなのであろう。我が国で古くから、一致協力する意味の言葉として定着し、権力者に対抗しての連帯や団結、そしてその行動として使われた。同じ辞書に、「農民や信徒などが団結して権力者に立ち向かうこと」とある。民衆の権力者の横暴への怒りの発露が一揆なのだ。

私は一揆が大好きだ。民衆の団結と知恵の力が権力者の心胆を震えあがらせる。こんな痛快なことはない。

しかし、今や農民一揆だの打ち壊しの実力行使の世ではない。一揆の精神でデモをかけよう。安倍や麻生、佐川らに。森友・加計問題対する国民の怒りを行動で表わそう。

詳細は、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」のホームページで。
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/216-c9bf.html
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今国会でのモリ・カケ問題に対する政府答弁は国民を愚弄する、うそとごまかし満載の極めて異常なものです。
(参考 モラルも血も涙もない異様な国 納税者はどう見たか 麻生ニタニタ答弁(日刊ゲンダイ) http://www.asyura2.com/18/senkyo239/msg/270.html)
私たちの会は今年度の確定申告が始まる2月16日(金)午後、次のような「モリ・カケ追及! 緊急デモ」を行うことになりました。

モリ・カケ追及! 緊急デモ
悪代官 安倍・麻生・佐川を追放しよう!
 検察は財務省を強制捜査せよ!
安倍昭恵さんは証人喚問に応じなさい
 納税者一揆の爆発だ!

主催 森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会
<行動スケジュール  2月16日(金)
13時30分 日比谷公園 西幸門 集合
13時40分 ?財務省・国税庁 包囲行動
宣伝カーを使ったアピール行動
14時15分 デモ出発(西幸門)
→ 銀座・有楽町の繁華街を行進
15時(予定) 鍛治橋(丸の内)で解散

背任、証拠隠滅の悪行を犯しながら、責任逃れの答弁で逃げ切りを図ろうとする悪代官たちを許さない主権者の怒りを総結集して、納税者一揆を爆発させましょう!
皆さまのご参加、お知り合いへの呼びかけをぜひともお願いします。

PDFダウンロード
https://app.box.com/s/ktgpzbj9uw92kh9hx5ye7ui1h46b57jn
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当日のコール(案):みんなで提案しようではありませんか
・今日から確定申告だ
・税金いったい誰のもの
・全国民の財産だ
・財産管理がおかしいぞ
・ただ同然で売り払い
・記録も記憶もないという
・そいつは誰の責任だ
・アイアムソーリー 安倍ソーリー
・安倍の取り巻き怪しいぞ
・検察は財務省を強制捜査せよ!
・森友疑惑に 加計疑惑
・森友・加計は火を噴いた
・龍池留置に出世の佐川
・加計孝太郎氏は逃亡中
・孝太郎さん どこにいる
・「モリ・カケ」食い逃げ 許さんぞ
・音声・録音 嘘はない
・佐川は辞めろ
・任命責任 麻生だろ
・嘘つき大将 安倍晋三
・昭恵夫人は 喚問だ
・加計の孝太郎氏も喚問だ
・おれたち国民怒ってる
・納税者一揆の爆発だ!

(2018年2月3日)

未決勾留428日の民商職員に、一審有罪破棄(差戻し)の控訴審判決

かつては、松川事件・三鷹事件、菅生事件、白鳥事件、メーデー事件等々の大型「刑事弾圧事件」があった。過半は、権力による謀略事件である。しからずとも、公権力が政治的意図をもって、政治活動や市民運動に打撃を与えるための刑事訴追。逮捕・勾留・捜索・差押え、そして起訴、有罪判決執行までがフルコースだ。

最近は少ない。が、もちろんなくなったわけではない。隙があれば、権力とは牙を剥くもの。私はそう思っている。労働争議への介入、選挙弾圧、集会やデモへの過剰な取締り、そして民主運動諸団体の活動掣肘を狙った刑事事件のでっち上げ。

そのような現在進行中の刑事弾圧事件の典型として、岡山倉敷民商(民主商工会)弾圧事件がある。
その倉敷民商職員に対する、「法人税法違反幇助・税理士法違反」被告事件の控訴審判決で朗報がはいった。一審の有罪判決を破棄して、地裁に差し戻す判決。無罪判決ではないが、無罪に道を開いた判決である。

「山陽新聞」(電子版)の第一報が次のとおり。
「高裁支部 一審破棄差し戻し 倉敷民商職員脱税ほう助
建設会社の脱税を手助けしたなどとして、法人税法違反ほう助などの罪に問われた倉敷民主商工会(倉敷市)事務職員禰屋町子被告(62)の控訴審判決で、広島高裁岡山支部は(1月)12日、懲役2年執行猶予4年とした一審岡山地裁判決を破棄、審理を同地裁に差し戻した。
判決理由で長井秀典裁判長は、一審で鑑定書として証拠採用された広島国税局財務事務官の報告書について『一審が鑑定書に当たるとして事実認定に用いたのは違法。判決に影響を及ぼすことが明らかな手続きの法令違反がある』とした。」(2018.1.12)

一審判決の決め手とされた証拠が、証拠能力のないものとして排斥されたのだ。禰屋さんが、無罪となる可能性はきわめて高い。

この広島国税局財務事務官の報告書については、次のように問題にされていた。
「岡山・倉敷民商弾圧事件・禰屋町子さんの控訴審初公判が(2017年)10月27日、広島高裁岡山支部で開かれました。長井秀典裁判長は、『国税査察官報告書』を鑑定書扱いした一審判決に疑問を投げかける『意見書』を証拠採用しました。裁判の流れが大きく変わる可能性も指摘されています。裁判所が証拠採用したのは、立命館大学大学院法務研究科の浅田和茂教授が刑事法学の観点から検討した『意見書』。岡山地裁判決が『鑑定書』として扱った国税査察官報告書について『必ずしも特別の専門的知識を用いたものとはいえない』とした上で、『査察官は訴追者そのものであって第三者としても鑑定人とはいえない』と指摘。さらに『たとえ書面の内容が鑑定にあたり査察官が第三者に当たるとしても、他の査察官の報告書の利用は再伝聞であって、そのままでは証拠能力を有しない』と断定しています。」(全国商工新聞2017年11月13日号より)

2017年3月3日禰屋裁判の不当判決に対する国民救援会の抗議声明の中に次の言葉が見える。
「禰屋町子さんは本来無罪であり、この事件の真実は、憲法が保障する納税者の自主申告権にもとづき運動をすすめる民主商工会への弾圧である。
禰屋さんは428日間勾留され本犯の建設会社の社長は逮捕も勾留もされず追徴課税があったかも明かされていない。」

また、下記は一審判決以前に書かれた、「週刊金曜日」の解説記事(抜粋)である。筆者は成澤宗男さん。

「逮捕者は428日も勾留――不可解な公安『倉敷民商』捜索
確定申告の際、申告者が作成した決算書の数字を税務ソフトに入力するといった手伝いをしただけで民主商工会(民商)の女性事務局員が脱税がらみの「法人税法違反容疑」等で逮捕・起訴され、しかも当の申告者が逮捕も勾留もされていないのに、何と約1年2カ月間(428日)も勾留される――。こんな異様な事件が、岡山地裁で審理中だ。

この女性は、倉敷民商の事務局員・禰屋町子さん。事件の発端は2013年5月21日、岡山県倉敷市の民商事務所に広島国税局が、当時会員だった建設会社社長夫妻の「脱税容疑」と称して捜索に入ったこと。禰屋さん宅も捜索された。

禰屋さんの容疑は、建設会社の経理担当者の指示に従い、単にパソコンの会計ソフトの入力作業や振替伝票の作成を行なったことが脱税(法人税法違反)を「幇助」し、さらに資格がないのに税理士の業務をした(税理士法違反)というもの。だが、家宅捜索で押収された164点の書類中、この建設会社関連のものはごくわずかで、大半が容疑と関係のない倉敷民商の会議議事録や会員の名簿、スケジュール表といった組織の内部資料で占められていた。

しかも、この種の経済事件とはまったく管轄外のはずの岡山県警公安部は翌2014年1月21日、禰屋さんを「法人税法違反」で逮捕したのに続き、2月には「税理士法違反」で再逮捕。だが、脱税当事者であるはずの建設会社社長夫妻は後に在宅のまま懲役1年6カ月・執行猶予付きの有罪判決が確定したものの、1日も勾留されず、なぜか広島国税局の捜索すら受けていない。

つまり、形式上脱税事件の「主犯」を単に「幇助」した立場の禰屋さんが、「主犯」が免れた国税局の捜索や勾留を強いられた上に、勾留日数も428日にも及ぶという異常な事件だ。さらに検察側は肝心の建設会社の脱税に関し、現在まで重加算税が課せられたのかどうかの事実すらも明らかにしていないという不自然さだ。弁護側は、「禰屋さんが一貫して容疑の否認を貫いたため、裁判所が事実上の制裁を課した人権侵害だ」と抗議している。」

「かりに民商側の行為が違法でも通常は反則金等の行政罰で足りるケースだ。それを管轄外の公安警察が捜索し、「主犯」でもない逮捕者を長期勾留するのは、「中小企業会員の『自主計算・自主申告運動』を続けてきた民商に対する、権力の弾圧」(須増事務局次長)と批判されても仕方ないだろう。」

禰屋さんの428日間の勾留は、有罪判決を前提とした刑の執行の前倒しにほかならない。禰屋さんが無罪判決を受けたとする。無実の者が、確定判決もないままに428日間もの自由刑の執行を受けて、自由を失ったことになる。この自由の喪失は、取返しがつかない。

昨年(2017年)7月31日に逮捕され、以来半年になろうとする長期勾留中の籠池夫妻の場合も同様だ。私たちは、政権の意向を忖度した近畿財務局の関係者の8億円値引きが背任に当たるとして告発した。この公務員らの背任こそが主たる犯罪で、籠池の補助金詐欺容疑はこれに付随する微罪というべきものだろう。

にもかかわらず、近畿財務局の関係者には何のお咎めもなく、籠池側は逮捕されて半年間の勾留。独房の中で年越しを余儀なくされた。このような事件では、もっと柔軟に保釈の活用あってしかるべしである。そうでないと、裁判所までが弾圧事件に加担していることになる。
(2018年1月15日)

官房機密費訴訟上告審ー最高裁はブラックボックスに光を当てうるか。

国の財政は国民が納めた税金によって成り立っている。国の機関が国民に税金の使途について報告の義務があり、納税者たる国民はすべての税金の使途について知る権利がある。国民が主権者である以上、あまりに当然のことだ。

ところが、これに例外がある。正確に言えば、例外としてまかり通っている「穴」がある。官房機密費(「内閣官房報償費」とも)がその典型。例年14億6000万円が予算計上され、内閣情報調査室の活動に充てる2億円ほど(これも具体的な使途は明らかにされない)を差し引いた残りの12億円余りが、官房長官の一存で使えるカネとされる。

「使途は自由、領収書は不要、会計検査院もノーチェック」だと言われている。国民への報告義務のないカネ。私的な着服があっても、流用があっても、国民の目からは覆い隠されて窺い知ることができない。検証のしようがない、まさしくブラックボックスの世界。

そんなカネだから、昔から疑心暗鬼の対象となってきた。悪いうわさが絶えない。野党工作費として使われた、首相経験者に中元・歳暮として現ナマが渡されている、世論操作のため御用評論家にばらまかれている、外遊する議員への餞別、飲み食いに使われている…。

ときに、官房長官経験者から、「これでよいのか」と問題提起がなされる。小渕恵三内閣の野中広務、民主党野田佳彦政権の藤村修など。

野中広務がメディアに漏らしたところでは、「官邸の金庫から毎月、首相に1000万円、衆院国対委員長と参院幹事長にそれぞれ500万円、首相経験者には盆暮れに100万円ずつ渡していた」という。「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。持って行って断られたのは、1人だけ」「国民の税金だから、官房機密費を無くしてもらいたい」などとも。

2009年総選挙で自民党が大敗し、政権交代が決まった直後に、麻生内閣の河村建夫官房長官が2億5000万円の官房機密費を引き出したことが話題となり、告発までされた。もう政権がなくなる時点で、いったい何に使おうと言うことだったのだろうか。謎のままである。

このブラックボックスに光を当てようという試みが、市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーによる大阪地裁への情報公開請求訴訟。10年がかりの、1次?3次までの3件の訴訟で、官房機密費支出に関連する各文書の開示を求めて、いま最後の最高裁判決を迎えようとしている。

問題になっているのは、官房長官を安倍晋三が務めた2005?06年の約11億円と、河村建夫の09年の約2億5千万円、そして菅義偉による13年の約13億6000万円の、各官房機密費支出に関連する3種類の文書開示の是非。

開示請求は、5種類の文書に対して行われたが、「支払決定書」「領収書」の2種類については、3件の大阪高裁判決のすべてで原告側の敗訴となり、これは既に最高裁でも確定している。残る「政策推進費受払簿」「出納管理簿」「報償費支払明細書」の3種類の文書では、高裁の判断が割れた。

1次・2次各訴訟での大阪高裁判決は原告側勝訴となって、その開示が命じられた。一部にせよ、官房機密費の使途を明かすよう求めた訴訟での高裁認容判断は初めてだという。しかし、3次訴訟では原告側敗訴となって、原告側と被告・国側の双方が上告した。

昨年暮れの12月22日に、最高裁で弁論が行われ、上告審判決が1月19日第2小法廷(山本庸幸裁判長)で言い渡される。さて、「ブラックボックス」に一筋の光が差し込むことになるだろうか。

政権を信頼する立場からは、行政を円滑に進めるための「ブラックボックス」は必要だから情報開示の必要はない、となろう。しかし、健全な民主主義とは政権に対する国民の猜疑によって支えられるとする立場からは、財政使途のブラックボックスなどあってはならない、ということになる。

果たして、最高裁は、健全な民主主義擁護の立場に立つことができるだろうか。
(2018年1月11日)

佐川国税庁長官の罷免を求める1万人署名運動にご協力を

「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」が、『佐川国税庁長官(前理財局長)の罷免を求める1万人署名運動』に取り組んでいる。
ネット署名の締め切りは8月20日(日)24時まで。あと一週間。署名のフォームは、下記のURL。是非ご協力いただきたい。拡散もお願いしたい。現在の署名者数は、約5000くらいと思われる。
http://bit.ly/2uCtQkK
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佐川宣寿国税庁長官昇進問題の持つ意味について、私なりに考えてみたい。
森友学園問題・加計学園問題とも、安倍晋三というお粗末な政治家が過剰な権力を持ったことから生じた政治と行政の歪みである。政治と行政の歪みの手段は、恣意的な情報操作である。消極的には権力に不都合な情報の隠蔽であり、積極的には意図的に人心を誘導するための情報の捏造である。

8月15日が近い。「政府の行為によって再び戦争の惨禍を繰り返してはならない」という反省と決意は、「大本営発表」によって国民意識が操作され誘導された苦い体験にもとづく、情報民主主義の徹底でもあったはずではないか。

民主主義の政治過程を実効あるものとするためには、国民の知る権利の保障が不可欠である。情報を遮断された状態での国民は真の主権者ではあり得ない。情報操作の対象とされた主権者は裸の王様に過ぎない。主権の行使に必要な正確な情報を得ることのできない状態では、民主主義は成立し得ない。操作され誘導された国民の政治意識も政策的選択も無意味である。選挙での与党勝利も、世論調査での内閣支持率も、所詮は茶番であり民主主義の形骸に過ぎない。こうして維持された政権は、再びの大本営発表を繰り返すことになるだろう。

佐川宣寿理財局長とはいったい何をしたのか。安倍政権が政治と行政を歪めたのではないかという国民大多数が抱いた疑惑の解明を頑なに阻止したのだ。情報を徹底して隠蔽することによって政権を守り抜いたのだ。安倍政権は、露骨な論功行賞で、この功に報いた。理財局長から、国税庁長官への栄転である。

安倍晋三は、「政権に忠実な犬には昇進のご褒美がある」と、実例をもって示した。言い換えれば、「公務員は国民に忠実であってはならない。政権にこそ忠誠を尽くせ」と、誰の目にも分かるようにデモンストレーションしたのだ。

佐川理財局長のみっともなさは、官僚としての良心を捨てて、国民の疑惑解明要望の声に背を向けたところにある。自らの良心と格闘しながら、情報を開示する努力を放棄して、疑惑を糊塗するための記録の隠蔽、記憶の偽証をやってのけたのだ。その苦しい努力は無駄にはならず、昇進に実を結んだ。これこそ、政権が望むところであることが雄弁に語られた。謙虚に丁寧に説明するという安倍政権のホンネがよく分かろうというもの。

この事態を看過してはならない。民主主義を形骸にさせてはならない。主権者としての不断の努力を怠ってはならない。せめては、佐川宣寿国税庁長官の罷免を求める1万人緊急署名運動を成功させようではないか。

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*紙による署名も、8月20日(日)までの到着なら可。
郵便局局留め宛分は → 8月18日(金)到着分までとなる。
下記のURLを参照のこと。
http://bit.ly/2ub1F8W

なお、下記のURLで、リアルタイムのネット署名数と、添えられた意見を読むことができる。(署名者の氏名は秘匿されている)
http://bit.ly/2h5AR94
これがとても興味深いコメントになっている。中心になっている醍醐聡さんから、下記のメールがあったので転載する。

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ネット署名に添えられたメッセージを読んでいきますと、手前みそのようですが、佐川国税庁長官の罷免を求める署名運動に共感が広がっていることを実感します。私にとって、運動の糧にもなっています。
まだでしたら、皆さまも、ぜひ、訪ねていただいて読んでいただけたらと思います。
ネット署名に添えられたメッセージ → http://bit.ly/2h5AR94
私の拙い呼びかけよりも、いろいろな体験をされた方の貴重なメッセージを読んでいただくのが一番と思い、その後、届いた中から、いくつかを紹介させていただきます。
署名簿を添えた罷免の申しれは8月21日(月)となりました。
それに伴い、署名の締め切りを8月20まで延長しました。
詳しくは以下をご覧ください。拡散もお願いします。
・「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」HP
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/1-2e8c.html
・ツイッター
https://twitter.com/toketusa98/status/895867223776022529

————–以下、ネット署名に添えられたメッセージより —————–
「この要求が通らなければ、今後確定申告時に『領収書は廃棄した』『自動的に消去された』という申告者が殺到すると思うが当然受け入れてもらえますよね?」(8月10日、埼玉県)

「安倍政権、官僚の不誠実さに憤り、もどかしい思いをして居ました。この思いを共有できる人達がいるのが何とも嬉しく、諸兄らの活動に加えて頂けたら…署名しました。此の輪が日本全国に広がるのを期待します。」(8月10日、愛知県)

「私は、財務省外局のOBです。と言っても、佐川氏のようなエリートではなく、いわゆる木端役人でした。しかし、就職時には憲法・国公法遵守の宣誓をし、在職中も出来る限り公正な行政にすべく努力してきたつもりです。少なくとも知っていることを『知らない』とシラをきったり、会〔ママ〕ったことを『記憶にない』ととぼけたり、などと言うふざけた回答をしたことはありません。又、関係者(内外とわず)との会議や交渉事があれば、全て記録に残しておくのは当たり前でした。”すぐ廃棄”などしたら、それこそ『処分物』でした。しかし、残念ながら財務省では、いけしゃあしゃあと嘘をつける人間の方が出世すると言うのは、私の在職中から全く変わっていないと言うのも実感です。この際、こういう財務省の体質にメスを入れ、少しでも国民目線の役所に転換してほしいと切望します。このままでは、『財務省OBです』なんて、とても知人に名乗れません。」(8月11日)

「JALは2007年に最大労組と一体となって、約1万人の客室乗務員の個人情報をファイルしていたことが発覚しました。1回目の裁判で会社が認諾し裁判から逃げましたが、5名の管理職が関与していたことが明らかになりました。その関与していた管理職らが、何とその後昇格をしたのです。違法なことをしても昇格をできるというという世界はJALだけではありませんでした。この度の佐川氏の国税庁の長官への就任でふと思い出しました。佐川氏は1企業の役員ではありません。国民の税金を預かる大事な立場です。就任にあたり公正な税のあり方云々を述べて言いますが、森友問題で8億円もの税金を明快な説明もなくうやむやにしようとした方が、公正な税の扱いを述べる資格はありません。よりにもよってなぜそのような立場につけるのか理解できません。就任の記者会見もできないような後ろめたいことがある方に、国民の税金を任せるわけにはいきません。マスコミももっと追究すべきです。」(8月12日、神奈川県、JALで解雇された者)

「総理大臣はじめ、政府要人、官僚が臆面もなく虚偽発言を押し通す。証拠を隠滅する。公文書を可能な限り公開しようとしない。それが日本の現政権下では常態化してしまっています。国政・地方(必ず同時)選挙で、投票率85%前後、しかも、死票を4%前後に止める完全比例代表制の選挙制度を採用する政治的民度の高いスウェーデンからは、日本は民主主義の後進国と見做されます。こういう政治状況を変えるのは,市民の異議申し立て、抵抗運動以外にありません。憲法16条の請願権を最大限に活かすことが肝要です。これは市民の権利であり、これを活かすことによって民度を高め、ジャーナリズムにも本来の使命へと軌道修正させることにもなります。」(8月10日、スウェーデン)

「嘘つきは泥棒の始まり。泥棒が税金を集める国なんて聞いたことがありません。国税不払い運動が起こる前に罷免を。」(8月10日、岐阜県、ジャーナリスト)

「食もままならない子どもたちが増え続ける中、為政者の意を受け、巨額の国家資産を一部の人たちに還流する。国家公務員の任に非ずです。今直ぐ職を辞し、真実を述べるべきです。」(8月10日、アムネスティ京都四条の会)

「このような運動をしてくれている人がいることを知って大変嬉しく思いますぜひ目的を達成したいです」(8月10日、東京都)
(2017年8月13日・連続第1596回)

「マイナンバー使用は 自尊心が許さない」

先日、少人数の学習会の席で、マイナンバーを話題にした。「みなさん、役所への書類にマイナンバーを書いていますか?」と振ったら、一人の女性がこう言った。
「私には、ちゃんとした名前があります。役所から勝手に12ケタの番号を押しつけられて、これを名前の代わりに使えといわれてもその気にはなれません。私は、国から番号で管理されるのはイヤですから、マイナンバーはけっして使いません。マイナンバー書かないから逮捕するなどということがない限り(笑)」
なんときっぱりした、すがすがしい姿勢。これは素晴らしい。

この女性の発言は、マイナンバー使用の押しつけは自分の人格の尊厳を傷つけるものだという主張。「私は名前を持っている」「私を特定するのは名前で願いたい」「割り当てた番号で私を管理することは拒否する」という、自尊心がほとばしり出た言である。これを支える憲法の条文を探せば13条(個人の尊重)であり、11条(基本的人権の享有)であり、あるいは97条(基本的人権の本質)ということになろう。憲法にどう書かれていようと、なにより大切なのが個人であり、その尊厳だ。国家は、個人の尊厳を傷つけてはならず、個人の尊厳を最大限尊重しなければならない。マイナンバーの使用は、これに反するではないか。

そう思っていたところに、先週金曜日(3月24日)赤旗「くらし・家庭」欄のマイナンバー解説記事に接した。その見出しが「マイナンバーは個人の尊厳侵す」である。解説者は、旧知の浦野広明さん(税理士・立正大学法学部客員教授)。大いに賛同する立場から、ご紹介したい。

まず、結論。明快この上ない。
個人番号(マイナンバー)は憲法13条が保障する個人の尊厳を侵すもので、明らかに憲法違反です。『法律だから』といって従うのではなく、はっきり拒否すべきです。

マイナンバーを違憲と主張する複数の裁判も係属中だという。
国を相手に個人番号の利用停止や削除などを求める違憲訴訟も、全国八つの地裁で進行中です。

具体的にどう対応すべきか。
悪法は世論と運動の力で使わせずに形骸化させることが大事です。窓口で『知りません』『番号を使うつもりはありません』といえば、それまでです。

ほんとうにそれで大丈夫なのか。面倒なことにならないか。
約100件の相談を受け、番号を記載せずに郵送で申告してすべて受理されました。国税庁などの省庁も『番号未記載でも受理し、罰則や不利益はない』と繰り返し表明しています。

次いで、制度についての納得できる説明。まずは法の名称。こんなことご存じでしたか。
「マイナンバー」の根拠法である「個人番号法」の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」です。似た名前の法律に「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(2003年)があります。BSE(牛海綿状脳症)対策として導入された同法によって、肉屋さんや消費者は、肉の生産履歴を知ることができます。牛の個体識別は食の安全・安心にとって有用でしょうが、私たちは家畜ではありません。

表向きの立法目的と真の立法動機
徴税など政府の都合や目的のために、私たちの全情報を一つの番号で収集・管理し、「特定の個人を識別するための番号の利用」が個人番号の核心なのです。私たちは既に、個別の目的ごとに、さまざまな番号をつけられています。基礎年金番号や保険者番号、・住民登録番号、運転免許証、パスポート、診察券、口座番号、社員番号などなどです。しかし、個人番号は、すべての情報を一つの番号で国が一元的に管理しようというものです。

マイナンバー制度はどんな危険をもっているか。
番号制を導入している韓国では、コンビニで買い物する際に番号を提示します。何番が、いつ、どこで、何を売買したかが、レジと国税庁のコンピューターが連動していて把握できます。このように、一つの番号で個人の全情報をつかむことは、憲法13条が保障する個人の尊厳に反することは明らかです。

マイナンバーの利便性についての国の説明
国は、「マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤」(内閣官房ホームページ)と説明します。しかし、《コンビニで住民票が取れる》程度の利便性と引き換えに、個人の尊厳を捨てたり、個人情報の流出・番号不正利用の危険に甘んじたりするわけにはいきません。

国民にマイナンバー使用の義務はない。
番号を扱うのは、国と地方自治体、「番号を利用する事業者」です。国民には何ら義務規定はなく、もちろん罰則や不利益もありません。

他人の番号を集めると苦労する
番号は最終的には国が把握しますが、社会保障や税の分野などでは個人番号を集めるのは主に民間です。漏えいなどに対する重い罰則があり、取り扱いで苦労することになります。すでに、番号がもれた時の損害保険も用意されています。

マイナンバー笑うは政府と大企業
個人番号は初期投資だけで3000億円、セキュリティー対策などで1兆円市場といわれます。大儲けするのは一握りの大手IT企業だけです。
(2017年3月27日)

マイナンバー 知らせて危険。知らせられるともっと危険。

年末から年初にかけて確定申告のための支払い調書(源泉徴収の票)が届いた。
今までにないこととして、事前に「調書作成のためにマイナンバーをご連絡ください」とする問合せが何件かあった。そのいずれの問合せにも、「マイナンバー記載なしで調書の作成をお願いします」「その方がお互い面倒でないでしょう」ということで、なんの問題も起きていない。行政が「どうしても必要」という場合には、それなりの対応をしなければと思ってはいたが、そのようなケースに遭遇することはなかった。

マイナンバー、使って何の得もない。うっかり使えば、漏洩のリスクが大きい。知られた者も知らされた者も、リスクを抱えることになる。こんなもの、ないに越したことはない。こんな制度は眠り込ませるに如くはない。

目についた限りで、関連した幾つかの情報をご紹介する。

不記載の給与支払い報告書 市が受け取り拒否を撤回
小松島市(徳島県)「生活と健康を守る会」は、1月18日小松島市に対し、マイナンバー不記載を理由とする申請書等の受け取り拒否を改めるよう申し入れました。
 1月16日、漁業を営む会員の島田佳代さん(仮名、74歳)がマイナンバー不記載を理由に、市から給与支払報告書の受け取りを拒否されました。
 小松島市生健会は3月の税金集団申告に向け、昨年11月から税金学習会を3回開催。その中でマイナンバーについて学習をし、プライバシー侵害のおそれがあるため、マイナンバーは書かないことを確認してきました。
 1月18日は、毎月第1、第3月曜に開催している「なんでも相談会」の日でした。受け取りを拒否された島田さんは相談に訪れ、「給与支払報告書を仕上げ、市役所に提出しようとして拒否された」ことを話しました。
 早速、市に申し入れることにし、島田さんと井上博善会長ほか役員3人が参加しました。市役所からは税務課長と担当係長が出席。初めに、生健会から「給与支払報告書の受け取り拒否は、国の定めたマイナンバーの取り扱い原則から逸脱している。不記載でも受け取るのが原則だ。なぜ受け取り拒否したのか」と質問し、その経緯の説明を求めました。
 担当係長は「窓口担当職員から事情を聴いた。受け取り拒否でなく、会員の方がどうするか考えるため持ち帰った」との説明。島田さんは「マイナンバー不記載では受け取れないと、担当者が言った」と反論。
 その後担当係長から「行き違いがあり、迷惑をかけました。不記載の意思が確認できる場合は受理します」と謝罪がありました。
 その場で(マイナンバー記載のない)給与支払報告書を提出しました。
 2月14日から始まる確定申告のマイナンバー記載の取り扱いについても、尋ねました。「所得税に関するマイナンバーについては、市税務課(所得税申告を受け付ける市の窓口)では確認しないよう税務署から指示されている」「住民税については、マイナンバー記載の場合、証明するものの提示を求める。不記載の場合は、『来年の申告では記載するよう』指導する」との説明がありました。
 最後に井上会長は、「マイナンバー制度により事業所は事務が増えている。国民はマイナンバー漏えいによるプライバシー侵害を心配している。マイナンバー制度は廃止すべきである」と述べました。
(以上、2017年2月5日号「守る新聞」。同会ホームページから)

税申告マイナンバー不要 全生連が省庁交渉で確認

全国生活と健康を守る会連合会(全生連・安形義弘会餐)は8日、国が個人情報を管理するマイナンバー(共通番号)制度をめぐり、担当省庁と国会内で交渉し、税申告の際、マイナンバーの記入がなくても申告が受け付けられることを確認しました。総務省、国税庁、内閣府の3省と交渉しました。
 総務省の担当者は、「マイナンバーの記入がない場合も税申告を拒否することはない。申告を受け付ける。記入がないことによる罰則もない」と話しました。参加者は、新潟県南魚沼市の住民が税申告の際にマイナンバーを記入しないことを伝えたところ、市役所から「記入拒否の理由書を住所・氏名とともに提出せよ」と同市が作成した「マイナンバー未記入理由書」への記入を求められた事例を紹介。「まったく必要がないと周知徹底してほしい」と申し入れました。
 総務省の国税庁の担当者は、「法令上、そういった書類を出してもらう必要はない。自治体にもそういった指導はしていない」と回答しました。
 全生連はこのほか、▽行政から発送される通知などにマイナンバーを記載しない▽国民のプライバシーを侵害するマイナンバー制度そのものを廃止する?ことを求めました。
(しんぶん赤旗 2017年2月10日)

マイナンバー 記載なくても不利益ない 全中連に各省庁が回答
全商連も加盟する全国中小業者団体連絡会(全中連)が(2015年)10月27、28の両日に行った省庁交渉ではマイナンバー(共通番号)制度実施の延期・中止を求めるとともに「共通番号の記載がなくても提出書類を受け取り、不利益を与えないこと」などを要望しました。主だった各省庁の回答を紹介します。

【内閣府】
・「扶養控除等申告書」「源泉徴収票」などの法定資料や雇用保険、健康保険、厚生年金保険など書類に番号が記載されていなくても書類は受け取る。記載されていないことで従業員、事業者にも不利益はない。
・従業員から番号の提出を拒否されたときは、その経過を記録する。しかし、記録がないことによる罰則はない。
・「個人番号カード」の取得は申請によるもので強制ではない。カードを取得しないことで不利益はない。
【国税庁】
・確定申告書などに番号未記載でも受理し、罰則・不利益はない。
・事業者が従業員などの番号を扱わないことに対して国税上の罰則や不利益はない。
・窓口で番号通知・本人確認ができなくても申告書は受理する。
・これらのことは個人でも法人でも同じ。
【厚生労働省】
・労働保険に関して共通番号の提示が拒否され、雇用保険取得の届け出で番号の記載がない場合でも、事務組合の過度な負担が生じないよう、ハローワークは届け出を従来通り受理する。罰則や不利益はない。
・労働保険事務組合が番号を扱わないことによる罰則や不利益な扱いはない。
・番号を記載した書類を提出するとき、提出者本人の番号が確認できない場合でも書類は受理する。

以上のとおり、マイナンバー不記載による納税者等の不利益はない。一応、事業者にはマイナンバー記載の義務は定められており、労働者には協力義務があることにはなっている。だから、行政が、マイナンバー記載の指導を求めることは違法ではない。しかし、国民が自らのマイナンバー不記載の意思を明示すれば、法はこれを強制することを想定して作られてはいない。刑罰のないことはもちろん、強制や誘導のための一切の制度はない。

一方、うっかり番号を預かると、担当者には秘密保持義務が課せられ、「秘密を漏らし、又は盗用した者は、3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(番号法第50条)」とされる。これはたいへんなことではないか。
マイナンバー人に知らせて危険。人から知らせられると、もっと危険。
(2017年2月12日)

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