澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

朝日社説「『森友』再調査 この訴えに応えねば」を評価する。

(2020年6月25日)
本日(6月25日)の朝日社説が、「『森友』再調査 この訴えに応えねば」と訴えている。その姿勢を大いに評価したい。

「森友再調査」の必要は、亡くなられた赤木俊夫さんの手記が遺族によって発表され、この手記が多くの人の魂を揺さぶったことを理由とする。赤木俊夫さんは、自分にとって死ぬほど恥ずべき嫌なことを押し付けられたのだ。これを、自己責任として済ませるわけにはいかない。いったい、誰が、なんのために、どのように、彼に文書の改ざんを押し付けたのか。そして、究極の責任をとるべきは誰なのか。それを、明確にしなければならない。

そのための手段として、ひとつは遺族による民事訴訟が提起されている。また、国会による「予備的調査」も進行している。そして、然るべき第三者機関を設定しての「再調査」要求である。今のままで、よいはずはない。朝日の社説をご紹介して、コメントしてみたい。

 国会閉会から1週間。コロナ禍への対応のみならず、様々な課題が積み残された。なかでも、森友問題の再調査を安倍政権が拒み続けていることは見過ごせない。真実を知りたいという遺族の思いに応えずして、信頼回復も再発防止もない。

※ アベ首相は、数々の疑惑が問題となる度に、「ていねいに説明申し上げる」「説明責任を果たす」と言い続けて、その実何もしてこなかった。国民から、「嘘とゴマカシにまみれた」と指弾される珍しい首相。この度も、ごまかして、逃げた。しっかりと調査し、真実を明らかにしてこその信頼回復である。ことさらにそれをしないのは、真実が暴かれることで、政権に不利益がもたらされると考えているのではないのか。

 国会が閉じる2日前、35万2659筆にのぼる署名が、安倍首相、麻生財務相、衆参両院議長宛てに提出された。財務省の公文書改ざんに加担させられ、自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さんの妻雅子さんが、第三者委員会による公正中立な再調査を求めたものだ。

※35万2659筆とは、たいへんな署名の数である。これだけの人が、公正な第三者委員会を設置して、赤木さんの手記で明らかになった事実を確認せよと言っているのだ。前回の、仲間内による調査ではとうてい信頼に堪えない。公正中立な、信頼できる第三者による再調査が求められているのだ。

 雅子さんが3月、国と改ざん当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏に損害賠償を求める訴えを起こしても、首相や麻生氏は再調査に応じなかった。そこで、雅子さんはインターネットサイトで署名を呼びかけた。「このままでは夫の死が無駄になってしまう」という訴えに、共感の輪が広がったのだろう。

※ 世論はいま、赤木さんのご遺族の訴えに共感の輪を広げている。ということは、アベや麻生を信頼できないとしているのだ。遺された赤木さんの手記は、生前の赤木さんが直接体験したことを記してはいるが、改ざんの方針決定と指示は、赤木さんの知らないところで行われている。赤木さんには、推認された事実ということになる。赤木さんの手記に表れた直接体験事実の真実性を検証し、非体験の推認事実に関しては厳格に関係者から事情を聴取する調査が必要なのだ。国と佐川に対する民事損害賠償請求の訴訟は、判決に至るまで長い期間を要する。早期の調査が必要なのだ。

 それでもなお、首相と麻生氏の姿勢は変わらない。なぜ再調査は不要と言えるのか。
 麻生氏は記者会見でこう述べた。「財務省として調査を徹底してやり、関与した職員は厳正に処分した」。しかし、その調査は身内によるもので、佐川氏の具体的な指示内容は明らかになっていない。そもそも、国有地がなぜ8億円も値引きされたのか、首相の妻・昭恵氏が学園の名誉校長だったことが影響してはいないのか、問題の核心は一向に解明されていない。

※麻生の調査拒否が理由に挙げる「財務省として調査を徹底」が嘘なのだ。2018(平成30)年6月4日付の財務省報告書は、明らかに政治家の責任追及に至らぬよう配慮されたものなのだ。51頁のこの報告書で、誰もが真っ先に注目するのは、改ざんの目的である。34ページにこうある。「応接録の廃棄や決裁文書の改ざんは、国会審議において森友学園案件が大きく取りあげられる中で、さらなる質問につながり得る材料を極力少なくすることが、主たる目的であったと認められる」。政治家からの指示も、政治家への忖度も出てこない。この点を問題にした調査ではなく、この点の疑惑を糊塗するための調査と疑われて然るべきなのだ。

 首相は国会でこう述べた。「最強の第三者機関と言われる検察が捜査をした結果がすでに出ている」。これも筋違いというほかない。刑事責任を追及する捜査と、信頼回復や再発防止につなげるための事実の検証を同列にはできない。

※さて、検察は「最強の第三者機関」であったか。「捜査した結果が出ている」か。はなはだ疑問なのだ。検察は政権から独立した検察ではなく、「アベ政権の守護神を抱えた検察」でしかなかった。「最強のアベ政権守護機関」ではなかったか。その検察も、文書の改ざんに関しては、「嫌疑なしの不起訴」にしたのではない。「嫌疑不十分の起訴猶予」としたのだ。けっして、「結果がすでに出ている」わけではない。

 「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」という雅子さんのコメントを重く受け止め、政府は再調査に応じるべきだ。

※ これこそ名言である。アベも麻生も、「被疑者」である。当然に再調査はしたくない立場。そんな二人の言い訳を聞いている暇はない。したくなくても、させなくてはならないのだ。

 国会では新たな動きがあった。衆院財務金融委員会が野党の求めに応じ、公文書改ざんの経緯をつまびらかにするよう、衆院調査局長に調査を命じたのだ。国会のチェック機能を強化するため、97年につくられた「予備的調査」という制度で、委員会審議に役立てるための下調べという位置づけだ。少数会派に門戸を開くため、議員40人以上の要請で実施される。
 関連資料の提出など、政府に協力を求めることはできるが、強制力はない。政府は自ら第三者委を設けないのなら、国会によるこの調査に全面的に協力すべきだ。国会もまた、行政監視の本分を果たすために、全力で真相に迫らなければならない。

※ 「民事訴訟」、「予備的調査」、そして然るべき第三者機関を設定しての「再調査」。場合によっては、再告発もあるだろう。あらゆる手段を考えねばならないが、全ては世論の支持にかかっている。

河井夫妻逮捕、2本の尻尾切りで終わらせてはならない。

(2020年6月18日)
梅雨の晴れ間が今日で4日目。毎日気になる不忍池の模様。昨日には見あたらなかった蓮の華が、今朝は少なくとも3輪。6月18日を「開華記念日」と名付けよう。

アメリカでは黒人差別抗議デモが高揚し、朝鮮半島も中印国境も穏やかではない。北京でのコロナ蔓延の兆しも報道されている。国内も多事山積で騒然としてるが、この蓮池と周りの紫陽花ばかりは平和そのものである。

さて、昨日(6月17日)201通常国会が閉会となった。今朝の朝日の川柳欄に、「長居は無用と火事場泥棒(東京都 三井正夫)」との投句がある。あるいは、「はやばやと現場立ち去る火事場泥」と詠むべきか。火事場泥になぞらえられた一国の首相は、国会という現場から、早々と逃げたのだ。しかも、「検察庁法改正」という財物を盗み損ねた。会期最終日における内閣委員会での継続審議の提案はなく、結局審議未了で廃案となった。

検察幹部の人事を掌握して、検察庁に官邸支配の手掛かりを得ようとしたアベ晋三の目論見は裏目に出た。却って、世論は検察の官邸からの独立に大きな関心をもつこととなり、検察もこの世論の動向を意識して、官邸からの独立を見せなければならない立場となっている。

それあらぬか、本日(6月18日)の朝日のトップ記事が、「河井前法相・案里氏 逮捕へ」である。毎日もトップの扱いだが、「河井夫妻 きょう強制捜査」と、少し温和しい。東京新聞は社会面だが「河井前法相夫妻、きょう逮捕 検察当局、買収容疑」と、共同配信記事。いずれも、検察からのリークなければ書けない内容で、各紙とも容疑の内容が詳細である。このリーク記事のとおりに、本日河井夫妻の逮捕状請求となり、午後執行された。こちらも、「開華記念日」にふさわしい出来事。

しかし、課題は河井夫妻の逮捕・立件ではなく、その背後の「官邸の犯罪」にどこまで切り込めるかということにあり、検察にそれを暴く意気込みがあるのかが問われている。この点の示唆に富むのが、文春オンラインの「まもなく逮捕へ…河井克行・案里夫妻の“買収問題” 東京地検特捜部は全貌を解明できるか」という記事。概要を紹介したい。

 稲田伸夫検事総長の肝煎りで始まった捜査は、黒川弘務の辞任を受け新たに東京高検検事長に就任した林眞琴が、東京地検管轄の事件として本格捜査着手の指揮を執っている。

 捜査の焦点は言うまでもなく、昨年7月21日投開票の参院選に向け、自民党が河井夫妻陣営に振り込んだ1億5000万円の“公認料”である。同じ選挙区の溝手顕正に対する公認料の10倍という法外な金額。

 広島県選管が参院選挙費用として認めている上限は4726万9500円だから、そもそも“公認料”そのものが上限をはるかに超えていることになり、それ自体の問題もある。一方、河井陣営が選管に提出した収支報告書によれば、参院選の選挙運動費用は2405万円、チラシの作成費用などを含めた支出額を2688万9896円と計上している。

 克行は案里が参院選へ立候補を表明した昨年3月以降、95人の広島県議や後援会関係者に2400万円の現金を渡して票の取りまとめを依頼し、当の案里も克行の指示で5人に150万円を配ったとされる。選挙買収に使われたこの2550万円プラスアルファの2600万円の原資が、1億5000万円の法外な“公認料”だと見ていい。それでもまだ、1億円近くの行方が謎である。

 参院自民党の広島選挙区は溝手の出馬が決まっており、そこへ2人目の候補として河井案里を割り込ませた。そのための“公認料”である。「ポイントは安倍首相と菅官房長官のどちらが案里を担ぎ出したか。安倍首相側は菅官房長官が子飼いの河井の妻を擁立したんだといい、逆に菅官房長官側は溝手嫌いの安倍首相が判断したんだと互いをけん制している」と自民党関係者は言う。
 事件はもはや修復不可能といわれる官邸内の首相対官房長官の確執に飛び火しそうな雲行きだ。仮に黒川が東京高検検事長としてそのまま居座っていればどうなっていたか、とも囁かれる注目の捜査。検察の威信をかけた東京地検特捜部はどこまで全貌を明らかにできるか。

また、従来から「捜査で押収した携帯は『宝の山』。1億5000万円の使途、安倍首相秘書らの選挙中の動向が見えつつある」とも報道されてきた。「安倍首相秘書らの選挙中の動向」こそが、まさしく注目される捜査である。検察が忖度も遠慮もなく、政権に切り込むことができれば、その日を「蓮華満開記念日」としよう。

なお、本日(6月18日)都知事選の告示。なんとも論戦低調で盛り上がりに欠ける選挙戦の始まり。それにつけても、赤旗の選挙記事を見るだに、その大仰な支持候補者紹介にこちらが気恥ずかしくなる。売らんかなの商品の宣伝には誇大誇張が付きものではあるが、過剰に過ぎては白けて逆効果だろう。消費者としての商品の選択にも、選挙における候補者の選択にも、誇大広告に惑わされることのないよう、よくよくお気を付けを。

通常国会閉会後には、速やかな河井克行・案里両議員の徹底捜査と起訴を。

(2020年6月12日)
今国会(第201通常国会)の予定された会期終了が近づいている。野党は攻勢的に「この非常時に国会を閉じるな」とスローガンを掲げているが、与党側は徹底した逃げの姿勢である。国会での追及に自信を喪失した政権の末期症状。今のままでは17日(水)に閉会となる。

コロナと検察庁法に揺れた今国会、検察庁法改正の頓挫はアベ政権の凋落を象徴する出来事だった。コロナ禍のリアルなデモが成立しにくい不利な状況が、ツィッター・デモという新たな抗議の手法を生みだし、専門家を勇気づけた。

2度に渡る検察OBの連名の意見書の影響力も大きかった。このような、幾重もの政権包囲網の中で黒川検事長賭けマージャン疑惑発覚となって、法案は潰えた。まだ廃案確定とはなっていないが、政権には大きな痛手である。もしかしたら、致命傷になるかもかも知れない。というのは、政権の守護神喪失は今後への影響が大きいと考えられるからだ。当面、その影響は河井克行・案里両議員の刑事訴追の在り方に表れる。

国会会期中の議員に対する強制捜査はやりにくい。6月17日閉会となれば、その直後から昨年参院選での河合案里陣営における選挙違反捜査が本格化する。河井克行・案里両議員の不逮捕特権はなくなるから、その逮捕もあり得ないではない。

メディアは、「検察当局が公選法違反(買収)の疑いで河井克行氏を立件する方針を固めた」と報じている。少なくとも2000万円といわれる現金ばらまきの古典的「買収」の容疑である。これが、この間まで、法務大臣だった人物の容疑なのだ。

地方議員など多くの人が、被買収側として任意の調べを受けており、捜査進展の模様もリークされている。今のところ1億5000万円とされているこの選挙資金の出所は自民党本部であって、この異例の巨額支出に総裁安倍晋三が関わっていないはずはない。

参院広島選挙区で6選を目指した自民現職の溝手顕正は反安倍の急先鋒としてアベ晋三から嫌われ、そのために「安倍晋三が、自分に近い河井克行の妻案里擁立を画策した」とされる。だから金をばらまき、選挙事務の運営には、安倍事務所の秘書4人が投入された。アベ・菅らの党幹部が何度も広島へ応援に入ってもいる。河井夫妻起訴は、アベに対する最大限のダメージとならざるを得ない。

選挙では、案里が当選し溝手は落選という、アベ晋三の思惑通りの結果となったが、派手な金権選挙の付けがまわってきた。捜査と起訴がどこまで及ぶのか。安倍晋三としては、ここでの「官邸の守護神」の働きを期待していたはずだが、思惑がはずれて、今や守護神はない。世論と検察OBに背中を押されて、稲田検事総長は政権にとっての貧乏神となる肚を固めているのやも知れない。

問題は、単にアベ政権にとっての検察の在り方ではない。行政権力から独立して、権力に怯むことなく公正かつ厳正にその任務を遂行する検察本来の在り方が問われている。

「黒川検事長定年延長閣議決定を可能とした検察庁法解釈変更は、どのようになされたのか」 ― これを問い質す、情報公開訴訟を提起。

(2020年6月1日)
本日(6月1日)、上脇博之さん(神戸学院大学法学部教授・憲法学)が原告となって、注目すべき情報公開請求訴訟(開示・不開示決定取消請求訴訟)を大阪地裁に提訴した。被告行政庁は、法務省法務大臣、人事院事務総局給与局長、内閣法制局長官である。

情報公開請求者として原告適格をもつのが上脇さんお一人、阪口徳雄君ら大阪中心の情報公開訴訟ベテラン弁護士が中心の弁護団だが、何人か東京からの参加弁護士もあり、私もその一人となった。

この提訴を「注目すべき情報公開訴訟」というのは、上脇さんが開示を求めた文書が、いずれも黒川弘務元東京高検検事長の本年1月31日定年延長閣議に至る判断過程を明確にするためのものだからである。

このところの議論で知られところとなったのは、かつては一般公務員の定年制に関する規定は、検察官には適用ないものというのが関係各省庁での統一解釈であった。それが、どこかの段階で解釈変更となって、1月31日黒川検事長定年延長閣議決定となった。しかし、いつ、どのような議論を経て、誰がそのような判断をしたのかは定かでない。

上脇さんは、こう考えた。「閣議決定のための法務大臣請議(閣議を求める手続き)以前に、関係省庁で検察官の定年延長に関する解釈変更摺り合わせが行われたであろう。その摺り合わせの過程の文書の開示を得れば、どこの段階で、『検察官にも一般公務員と同じく定年延長の規定適用が可能』という解釈変更の決断に至ったかわかるはず」。その関連文書の開示を求めることで、解釈変更の過程と理由を明確にすることができる。仮にそのような文書が不存在なら、それ自体で閣議決定の違法を明らかにすることができる。また、閣議決定前に不存在なら、そのような文書は、閣議決定後には存在するはずではないか。

こうして、上脇さんは、本件解釈変更に関係する法務省・人事院・内閣法制局に、閣議決定以前の関係全文書、ならびに閣議決定以後の関係全文書を開示するよう情報公開請求をした。これに対する各行政庁の決定では、貧弱ながらも閣議決定以前の関係文書(各省庁各1点)は出てきた。しかし、これは内容・体裁から、本当に当時作成したものとは信じがたい。そして、閣議決定後の関係文書は、いずれも不存在として不開示決定となった。

そのため、この訴訟の事件名は、「開示及び不開示決定処分取消請求事件」とされている。閣議決定前に作成されたものとして開示された3件の文書についての開示決定と、閣議決定後には作成されていないとして不開示とされた求める3件の文書についての不開示決定を、いずれも違法として合計6件の処分取り消しを求める訴えである。請求が認容されて、取消の判決が確定すれば、各行政庁は改めて真正の開示決定をしなければならない。

分かり易く言えば、求めるものとは違う文書を開示した3件の処分は違法だから取り消せ、あるはず文書を不存在として不開示とした3件の処分も違法だから取り消せ、隠さずにもっとちゃんとした文書を出せ、と求めているのだ。

この情報公開請求は、いずれについても本年1月31日黒川定年延長閣議決定に至る判断過程を国民が知るために不可欠なものである。安倍政権発足以来、森友事件、加計学園事件、桜を見る会事件等々、政権の疑惑として報じられる案件において、当然なされるべき公文書の作成、管理及び情報公開が極めて杜撰である。本件黒川元検事長の定年延長問題もその例に漏れず閣議決定に至る経過が不透明極まる。

閣議決定前に作成された文書として、法務省、人事院、内閣法制局から上脇さんに開示された各行政文書については、真実、閣議決定前に作成された文書であることを示す内容が記載されていない。各省庁の協議の結論だけが一応記載されてはいるが、作成年月日、作成者、その結論に至るまでの協議内容、経過が全く記載されていない。公文書管理法、公文書ガイドライン、各省庁の公文書管理規則などに従えば当然に記載されているはずの、誰と誰が協議して、いつそのような結論に至ったかの「意思形成過程」を明確にする内容が開示されていないのだ。

公開された文書は、無責任に、誰でも、何時でも作成できるメモ的文書あるいは、「作文」に過ぎないと言って過言でない。閣議決定後の文書は不存在という決定であったが、開示された文書は実は閣議後に作成された文書とも思われる。

本件裁判は以上の疑惑を明らかにして、黒川元検事長の定年延長閣議決定過程における、法務省、人事院、内閣法制局の行政文書の作成や情報公開の在り方を問う裁判である。

平然とウソ ー これがアベ流印象操作

一昨日(5月25日)の緊急宣言解除首相記者会見。アベ晋三の自己弁護・自己宣伝に終始した白々しさだけが印象に残る不快なものだった。

その中での、記者との以下の遣り取りに注目したい。具体的な回答を求める記者の質問に、(1) まともに答えない、(2) 抽象的な言葉の羅列ではぐらかす、というアベ回答の常套手段がよく現れている。なお、引用は官邸のホームページから。

(記者)東京新聞、中日新聞の後藤です。
 政府の緊急事態宣言が出されているさなかの賭けマージャンで辞職した黒川前東京高検検事長の問題についてお伺いします。
 捜査機関や政府に対する信頼を大きく損なう重大な事案であるにもかかわらず、国民から処分が甘いという批判が相次いでおります。総理は先ほど、批判は真摯に受け止めるという発言がありましたが、そうした厳しい国民感情を踏まえても、今回の訓告の処分が適当で、満額で6,000万円とも言われる退職金がそのまま支払われることに何ら問題はないと考えているのでしょうか。
 また、法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していましたが、官邸が懲戒にはしないと結論づけたというような報道もありますが、処分の前にどのような協議が官邸となされていたのか、その点についても詳しくお聞かせください。

記者の質問は次の2点である。
(1) 6,000万円もの退職金を(満額)支払うことに問題はないと考えているのか。
(2) 処分の前に、(官邸と法務省との間で)どのような協議がなされていたのか。

敷衍するなら、(1)は、「これだけの問題を起こした黒川に、6,000万円もの退職金を(満額)支払う」ことについて、「アベさんよ、国民感情に鑑みて、あなたはそれでよいと考えているのか」という糾問である。回答は、「イエス」か「ノー」。あるいは「当然」、「やむを得ない」などを想定している。

(2) は、黒川処分の経過について、官邸の言ってることとは食い違う報道もあるから確認したい。官邸と法務省との間で、処分の前にどのような協議がなされたのか、詳しく聞かせていただきたい、というもの。こちらは、いわゆる「開かれた質問」。具体的な経緯についての詳細な説明が求められている。

これに対するアベ答弁はどうであったか。まず、端的に答えねばならない(1)をスルーして、(2)について答えようと、何かをしゃべっている。以下のとおり。

(安倍総理)
 黒川氏の処分については、先週21日に法務省から検事総長に対し、調査結果に基づき訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長においても訓告が相当であると判断をして、処分したものと承知をしています。
 私自身は、森法務大臣から、事実関係の調査結果を踏まえて処分を行ったこと、その上で、黒川氏本人より辞意の表明があったので、これを認めることとしたいとの報告がありまして、法務省の対応を了承したものであります。もちろん、対応を了承しておりますので、この処分について総理大臣として、行政府の長として、責任を持っているところでございます。
 国民の御批判に対しては、これも真摯に受け止めなければならないと、この上は、法務省、検察庁において信頼を回復するために全力を尽くさなければならないと、私も全力を尽くしていきたいと思っています。

 アベ晋三、「処分の前に、(官邸と法務省との間で)どのような協議がなされていたのか」と聞かれて、「処分の前に協議などなかった」とは言わない。言えないのだ。記者だけでなく、国民の多くが、「官邸と法務省との間で摺り合わせがあり、協議が調ったから、《検事総長において訓告とし、内閣に報告をした》と形を整えた、と考えている。記者の質問は、そんな分かりきったことを聞いていない。聞きたいのは形が整えられる以前の経過だ。それが、「処分の前にどのような協議がなされていたのか詳しく聞きたい」という問になっている。

これに対してみごとなまでの「ゼロ回答」である。国民を舐めているとしか、言いようがない。確かに、何かをしゃべってはいるのだが、聞かれたことにはけっして答えない。全ては、摺り合わせができた後の話ばかり。これは、無能の極みか、高等戦術なのだろうか。いずれにしても、こんなことを聞かされれば、大いに苛立つしかない。

「再質問禁止ルール」での、形ばかりの記者会見だったが、質問をスルーされて、さすがに記者が食い下がった。

(記者)退職金については、そのまま支払われることは問題ないでしょうか。

(安倍総理)退職金については、訓告処分に従って減額されているというふうに承知をしています。

これは、「高額な退職金が減額なくそのまま支払われることを、国民感情に照らして問題ないと考えているのか」という、重ねての質問。これに対する、アベの「訓告処分に従って減額されているというふうに承知をしています」は、噛み合わない変な答弁。噛み合わせようという意識があれば、「訓告処分に従って○○○万円も減額されていますから、国民も納得してくださるものと考えています」としなければならない。

ところが、アベはそうは言えないのだ。訓告は国家公務員法にもとづく不利益処分ではなく、《公務員の非違に対する上司の指導監督措置》に過ぎない。法的根拠を要せず、法的効果ももたないとされる。だから訓告には、行政手続法に定める事前の聴聞手続きも不要で、法的な救済手続も用意されていない。そもそも不利益性がないとされているからだ。

従って、「訓告処分に従って退職金減額」はありえない。それでも、あるかのごとく平然と言ってのけるのが、アベの常套手法。印象操作を得意とするアベのアベたる所以なのだ。

この点について、昨日(5月26日)の衆院法務委員会で、森雅子法相は、「自己都合退職」となるため定年退職の場合より約800万円減額されていると説明した。何のことはない、「自己都合の退職だから」「定年まで勤務して退職する場合に比較すれば、」「約800万円減額」になる、というのだ。訓告だから減額ではない。

アベ晋三が言った「訓告処分に従って退職金減額」は嘘なのだ。「減額」という言葉が意図的に使われている。訓告を受けたことは、退職金の額にまったく影響はしていない。だから訓告「処分」という言葉の使い方もおかしい。本来から言えば、黒川は2月7日定年退職だったはず、その時点での退職金から、金額を具体的に示せないが、かなりの金額を「増額されている」はずなのだ。

メディアは、慎重に「首相と法相の発言が食い違いを見せた」というが、「食い違い」ではない。法相の答弁のとおり、「(訓告の場合は)処分自体で支給額は影響を受けない」のだから、アベの印象操作は、明らかな嘘である。

なお、常習賭博の黒川を懲戒処分としなかったことは、どんな事前の協議があったにせよ、あるいはなかったにせよ、懲戒処分権者である内閣の責任である。これは免れようがない。にもかかわらず、その内閣の長の地位にあって、明らかな嘘をつき、軽い訓告で済ませたことを法務大臣・検事総長の責任と転嫁する印象操作を重ねるみっともない人物。そんな人物を、われわれは長年にわたって行政のトップに据えてきたということなのだ。
(2020年5月27日)

小池百合子さん、あなたは知事にふさわしくない。

お騒がせ検察官・黒川弘務の趣味は、「犬の散歩と麻雀とカジノ」だそうだ。「犬の散歩」は結構だが、「麻雀とカジノ」はいただけない。この人、休日にはマカオや韓国にカジノに出掛けることもあるとか。また、朝日新聞広報部の発表では、同社の社員が、緊急事態宣言が出た後に、黒川と計4回、金銭を賭けてマージャンをしていたことを認めたという。

朝日の社員とだけ、賭けマージャンをしていたわけでもあるまい。実はこの人の賭マージャンには常習性があるのではないか。また、この人、ギャンブル依存症というべきではないのか。

賭マージャンが、賭博にあたる犯罪行為であることは言うまでもない。現行刑法上単純賭博罪(185条)なら、法定刑は最高50万円の罰金だが、常習賭博罪(186条1項)となると最高刑は3年の懲役となる。「常習とは、犯行を反復する習癖の発現としての犯罪」を言い、「賭博の常習者とは、反復して賭博行為をする習癖のある者」なのだから、この人は、まさしく常習者であり、今回も常習として賭博行為をした者に当たるのではないか。さらには捜査の進展次第で、収賄罪にも該当しうる。到底訓告で済まされることではない。

今や地に落ちた検察の信頼を回復する方策としては、東京地検が被疑者黒川を、朝日・産経の記者とともに厳正に捜査し処罰することを措いてない。

また、「余人をもって換えがたい」として、黒川の違法な定年延長を強行したのは内閣である。内閣は、その責任をとらねばならない。口先だけの謝罪は、聞きたくもない。アベさん、もう、いいかげんにおやめなさい。

東京高検検事長という立場にある者にすらとりついて、職を棒に振らせるのがギャンブル依存症の恐ろしさである。そのことを印象強く教えられたその日に、東京都議会では、「カジノ反対 不採択」「都議会委陳情 都ファ自公など」という出来事。これはいったいどうしたことだ。本日(5月22日)の赤旗がこう伝えている。

 東京都議会経済・港湾委員会は21日、カジノ誘致に向けた取り組みを行わないよう求める陳情を、都民ファーストの会、公明党、自民党などの反対多数で不採択にしました。陳情は「カジノいらない!東京連絡会」が提出していたもの。

 共産党の、あぜ上三和子都議は、党都議団の請求で開示された文書で都が2018年度、委託調査会社に「IR(カジノを中核とする統合型リゾート)が2020大会(東京五輪)後の起爆剤の可能性」を持つ趣旨の記載を求めていたことが判明したと指摘。「IRをつくるかどうかで一番大事な都民の世論を調査したのか」とただすと、都港湾局の若林憲担当部長は「調査していない」と答えました。

 あぜ上氏は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大でカジノ業界が軒並み業績悪化し、最大手のカジノ運営会社も日本でのライセンス取得を断念したと強調。マスコミの世論調査でも6〜7割がカジノ誘致に反対していることを示し、人の不幸を土台に収益を上げるカジノ誘致はやめるよう求めました。

 国内の誘致先として、最有力候補と目されながら、まだ公式には名乗りを上げていない東京都。実はひそかにカジノ誘致への動きを進めてきているというのが、都民の常識となっている。昨日の委員会審議でもその一端が現れている。「都知事選のあとに、カジノ誘致を表明するのではないか」との評判のとおりなのだ。小池百合子知事だけでなく、「都民ファーストの会、公明党、自民党など」が誘致賛成派なのだ。

黒川のような依存症患者や犯罪者を大量に作らなければカジノは産業として成り立たない。もともと、バクチ場とは、不幸な人を生み出し続けるビジネスモデルである。きっぱりと、「都民の幸福のためには、カジノは不要」と言いきる都知事でなくてはならない。

小池百合子さん、おなたじゃだめなんだ。
(2020年5月22日)

官邸の守護神(黒川弘務検事長)失脚の日に、安倍晋三の刑事告発。

ときに、思いがけないことが起こる。本日(5月21日)、東京高検の黒川弘務検事長が辞表を提出した。時の人の、突然の表舞台からの退場である。

はからずも、この日に全国の弁護士・法学者659名が、「桜を見る会・前夜祭」問題について、東京地方検察庁に対して、安倍晋三らを刑事告発した。なんという絶妙のタイミング。

公然と言われてきたとおり、黒川はアベの守護神だった。本来政権と緊張関係を保たねばならない検察のトップが、官邸とはズブズブの間柄。そのことが、こんなにも世論の叱責を受けたのだ。その背景には、アベ内閣の不祥事の数々が刑事訴追されて然るべきなのに、甘い検察によってことごとく見逃されてきたという、国民の批判の高まりがある。

検察庁法改正案は、官邸の検察人事介入法案とも、検察人事コントロール法案とも、また端的に「黒川法案」とも言われてきた。その法案の審議が頓挫しても、なお居座るかに見えた官邸の守護神。それがかくもあっけなく、突然の辞表提出となった。守護神も辞表を出せばただの人。既にその通力は失われた。

官邸が守護神の加護を失ったその日に、安倍晋三に対する法律家659人の刑事告発である。見えざる神の御業というほかはない。守護神の庇護を失った安倍晋三、法の支配に服さなければならない。あらためて、検察の権威と信頼が試されている。

この告発、被告発人は、安倍晋三ら3名、罪名は「政治資金規正法違反」及び「公職選挙法違反」である。以下に、「桜を見る会を追及する法律家の会」ならびに告発人659名の声明と、告発状を掲載する。

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「桜を見る会・前夜祭」刑事告発にあたっての声明

本日、全国の弁護士・法学者659名が、「桜を見る会・前夜祭」問題について、東京地方検察庁に対して、安倍晋三首相ら3名を被告発人とする刑事告発を行いました。
総理主催の「桜を見る会」は、安倍政権のもとで参加者・経費が急増しただけでなく、多数の安倍晋三後援会員が招待され、招待者の中に消費者被害の加害者や反社会的勢力の人物もいるなど、安倍首相による公的行事・税金の私物化が問題とされ、すでに背任罪での告発もなされています。
また、その前日に安倍晋三後援会が主催して高級ホテルにおいて800人規模で開催された「前夜祭」についても、その収支報告を行わず、かつ、ホテルの正規の費用を大幅に下回る会費で実施されていたことが、政治資金規正法・公職選挙法に違反するとの指摘がなされていました。
安倍首相は当事者として国民に対して真摯かつ誠実に説明する義務があったにもかかわらず、国会で問題となるとすぐに「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄し、招待者についても、「個人情報」を口実に国会での説明を拒否し続けてきました。また、「前夜祭」の収支についても、明細書・請求書等の資料の開示を拒否し、主催は個々の後援会員なので後援会は収支報告をする必要がないなど、不自然かつ不合理な弁明を繰り返し、国民の疑問に誠実に答える姿勢がまったくみられません。
このような安倍首相の対応は、議会制民主主義の軽視にとどまらず、法の支配、法治主義をも踏みにじるものであり、到底容認できるものではありません。
「桜を見る会・前夜祭」問題は、日本の政治の最高責任者である安倍首相自身(安倍後援会と内閣府・内閣官房)に直接かかわるものであり、首相としての政治的・道義的な責任に止まらず、刑事責任を含む法的責任が問われる重大事件であり、その真相を明らかにし、責任を追及することが強く求められています。
安倍首相自身が説明責任を果さず、与党(自民党・公明党)の数の力によって国会での真相究明・責任追及が阻まれるという憂うべき状況を打開し、議会制民主主義、法の支配・法治主義を回復するためにも、検察による事実の究明と事件の徹底的な捜査を行う必要があります。
この思いで、本日、刑事告発を行いました。
私たちは、東京地方検察庁に対して、本件の重大性を真摯に受け止め、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現(刑事訴訟法1条)するため、政権に忖度することなく、厳正公平・不偏不党の立場を貫き、強制捜査も含む徹底した捜査を行い、真相の究明と刑事責任の追及を迅速に行うことを強く求めます。

2020年5月21日
「桜を見る会」を追及する法律家の会
告発人659名一同

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告 発 状

東京地方検察庁検事正曽木徹也殿

告発人住所
氏名 印

被告発人
住所 省略
(東京都千代田区永田町2丁目3番1号首相官邸)
氏名 安倍晋三
職業 衆議院議員・内閣総理大臣
生年月日 1954(昭和29)年11月12日

被告発人
住所 省略
氏名 配川博之
職業 安倍晋三後援会代表者

被告発人
住所 省略
氏名 阿立豊彦
職業 安倍晋三後援会会計責任者

第1 告発の趣旨
1 被告発人安倍晋三、被告発人配川博之及び被告発人阿立豊彦の後記第2?1の所為は、刑法60条、政治資金規正法第25条1項2号、同法12条1項1号ホ及び同2号に該当する。

2 被告発人安倍晋三及び被告発人配川博之の後記第2?2の所為は、刑法60条、公職選挙法249条の5第1項及び同法199条の5第1項に該当する。

よって、上記の被告発人らにつき、厳重な処罰を求め、告発する。

第2 告発の事実
被告発人安倍晋三(以下、「被告発人安倍」という)は、2017(平成29)年10月22日施行の第48回衆議院議員選挙に際して山口県第4区から立候補し当選した衆議院議員、被告発人配川博之(以下、「被告発人配川」という)は、安倍晋三後援会(以下、「後援会」という)の代表者、被告発人阿立豊彦(以下、「被告発人阿立」という)は、後援会の会計責任者であった者であるが、

1 被告発人安倍、被告発人配川及び被告発人阿立は、共謀の上、政治資金規正法第12条1項により、山口県選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出すべき後援会の収支報告書につき、2019(令和元)年5月下旬頃、山口県下関市東大和町1丁目8番16号所在の安倍晋三後援会事務所において、真実は、2018(平成30)年4月20日、ホテルニューオータニ東京において開催された宴会である「安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭」(以下、「前夜祭」又は「本件宴会」という)の参加費として、参加者1人あたり5000円の参加費に参加者数約800名を乗じた推計約400万円の収入があり、かつ、上記前夜祭の前後に、ホテルニューオータニ東京に対し、少なくとも上記推計約400万円の本件宴会代金を支出したにもかかわらず、後援会の2018(平成30)年分の収支報告書に、上記前夜祭に関する収入及び支出を記載せず、これを2019(令和元)年5月27日、山口県選挙管理委員会に提出し、

2 被告発人安倍及び被告発人配川は、共謀の上、法定の除外事由がないのに、2018(平成30)年4月20日、ホテルニューオータニ東京において開催された前夜祭において、後援会を介し、被告発人安倍の選挙区内にある後援会員約800名に対し、飲食費の1人あたり単価が少なくとも1万1000円程度であるところ、1人あたり5000円の参加費のみを徴収し、もって1人あたり少なくとも6000円相当の酒食を無償で提供して寄附をし
たものである。

以下(第3?6)は表題のみ
第3 告発に至る経緯
第4 告発事実1(政治資金規正法違反25条1項2号違反)
第5 告発事実2(公職選挙法249条の5第1項違反)
第6 被告発人安倍に共謀共同正犯が成立することについて
第7 最後に
以上のとおり、被告発人らに上記の各犯罪が成立することは明白である。
前夜祭に関する収支の不記載は、政治資金の収支を公開することによって政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする政治資金規正法の趣旨(同法1条)に真っ向から反するものであり、極めて悪質である。
また、後援会による違法な寄附は、選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公正かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする公職選挙法の趣旨(同法1条)に真っ向から反するものであり、極めて悪質である。
しかも、前夜祭は1回だけの行事ではなく、後援会の恒例行事として、2013(平成25)年から2018(平成30)年まで6年連続(本告発の対象としていない2019(平成31)年4月を含めると7年連続)で行われている。従って、収支報告書に記載されなかった収入、支出及び後援会が違法に行った寄付の合計額は巨額に上り、この意味でも悪質性は高い。
内閣総理大臣たる被告発人安倍がこのような犯罪を犯していることは、民主政治の根幹を揺るがす事態であり、これを放置することは絶対に許されないことである。
本告発にかかる事実につき、捜査当局が公正かつ厳正な捜査を行い、事案の真相を解明し、被告発人らが厳重に処罰されることを強く希望する。

(2020年5月21日)

「黒川弘務法案」今国会では無理でも次期国会で。それが無理でも、黒川検事を検事総長に。

ワタクシ、アベ・シンゾーで、ごじゃます。
例の「黒川弘務法案」の件でごじゃますが、国民の皆様には、いくら丁寧にご説明してもですね、もはや国民の皆様には、理解してはもらえない。まさに、まさにですよ、ここはですね、いったん引くしかない。まさしく、そう考えた、のでごじゃます。ですから、ここは、いったん引くことにしよう。まさにこう決定した、のでごじゃます。

この法案はですね、この法案はですよ。国民の皆様方の理解なくしては前に進めることができない。そこが、ほかの法案とは違うんです。我が国は民主主義の国ですから、一番大切なのは、選挙です。その大切な選挙で、自民党と公明党は、まさしく勝っている、のでごじゃます。国民の皆様から信任をいただき、たくさんの議席を頂戴している、のでごじゃます。この議席の数の力こそが民主主義の力、その力で、消費税も上げ、辺野古の埋立もし、アメリカから兵器の爆買いもしている。いちいち、国民の皆様の理解など、気にする必要もない、わけでごじゃます。

もちろん、この法案も、数の力で押し通そうとしたわけでごじゃまして、自民党と公明党だけでなく、まさにどういうわけか維新の皆様もですね、しっかりと法案の審議促進と成立にご協力の姿勢で、民主主義の手続に従って採決を強行すれば、まさしく成立することは疑いない、のでごじゃます。

だから、ワタクシはですね、法案の内容や本質がですよ、国民の皆様によく知られてしまわないうちにですね、早め早めに粛々と法案の審議を進めてですね、一日も早く上げてしまうよう指示していたところ、なのでごじゃます。ところが、コロナと同じ、対応が後手後手にまわってしまい、気が付いたときには世の中の空気が変わってしまった、というわけなのでごじゃます。

それでも、強行突破すれば国民の皆様は健全な健忘症ばかり、どうせすぐにこの法案への不満などはケロリと忘れてくれるはず、こう高をくくっていたわけでごじゃます。何しろ、コロナ蔓延で、デモなどできっこないこのチャンス。火事場泥棒と言われても、今やるしかないじゃありませんか。

それが、ご存じのとおり、どうにも納得できない不思議な展開となってまいった、のでごじゃます。「twitterデモで、法案の撤回を目指そう」って、いったい何のことやら。理解を遙かに超えた事態の展開になっていった、のでごじゃます。

ワタクシ・アベの支持者としては若年層が多いのが自慢でごじゃました。ところが、今回はスマホやtwitterを操作する若年層が、アベ批判にまわっているというのでごじゃます。また、いくつかの世論調査で、明らかに内閣支持率が低下してきた、のでごじゃます。これは、たいへんなこと。

強行突破すれば、アベ内閣瓦解の危険を感じざるを得ない、のでごじゃます。ワタクシも、まったくバカではごじゃませんから、ここは引くしかない。こう考えたわけでごじゃます。

もちろん、メディアには「国民の声に十分に耳を傾けていくことが不可欠であり、国民のご理解なくして、前に進めていくことはできない」と申しあげました。その真意は、「国民の声に十分に耳を傾けていくポーズをとらざるを得なくなった」ということであり、「いまは、国民の理解を得ることは無理だから、非難の火勢おさまるので法案は引っ込めておくことにする」ということで、ごじゃます。

ですから、「国民の皆様の正確な理解を得るよう、今後しっかりと丁寧な説明をおこなっていこう。そうすれば、なんの問題もない」のでごじゃます。もちろん、法案にはなんの問題もなく、ワタクシの考え方が間違っていたものてもありません。法務大臣の国会での説明が不十分で、国民の皆様に誤解を与えただけなのでごじゃますから、今国会では野党の議員や「デモ」に参加している国民の皆様には頭を冷やしていただき、秋の臨時国会にも、同じ法案を再提出させていただこうと、考えているところでごじゃます。

なお、今国会での法案の審議は断念いたしますが、黒川弘務東京高検検事長の定年延長閣議決定の効力には何の影響もないので、ごじゃます。皆様、ご存じのとおり、閣議決定はなんでもできるのです。

これも皆様ご存じのとおり、検事総長の任期は慣例では2年となります。ですから、現在の稲田伸夫検事総長の任期は、今年2020年7月24日までですね。稲田さんが任期を全うしたあとの、後任人事が問題になります。黒川さんが最適任なのは客観的に明らかなことです。なにしろ、黒川さんは、内閣と軋轢を生じないよう、官邸の意向を忖度してまことに理想的な対応をされる方です。まさしく、日本人の長所である「和」の精神を身につけた得がたい人物。後ろ暗い官邸の守護神とまで言われている方。守護神を頼りたくなるのは、当然のことではないでしょうか。黒川さん以外のそのほかの方では、官邸とギグシャクして、ワタクシが枕を高くして眠ることができない、のでごじゃます。

望ましいのは、早期に「黒川法」を成立させること、今国会は断念やむなしてすが、必ず次の国会で。仮にそれが無理でも、黒川氏を検事総長にすることが、ワタクシ・アベシンゾーの望みであり狙い、なのでごじゃます。
(2020年5月19日)

「検察庁法、今国会での改正断念」の快挙

これは快挙だ。圧倒的な国民の意思と意思表示がなし遂げた快挙。溜飲の下がる思いである。本日(5月18日)の各紙夕刊に、「検察庁法、今国会での改正断念」の大見出し。午前中は、「与党は20日採決へ 野党は徹底抗戦」と報じていたNHKも、夕刻には「政府・与党 検察庁法改正案 今国会での成立見送り決定」と転じた。

そのNHK(On-line)は、やはり夕刻世論調査の結果を発表した。「安倍内閣を『支持する』と答えた人は、先月の調査より2ポイント下がって37%だったのに対し、『支持しない』と答えた人は7ポイント上がって45%でした。『支持しない』が『支持する』を上回ったのは、おととし6月の調査以来となります」というもの。アベ内閣不支持が支持を逆転し、8ポイントリードというのだ。

また、「朝日新聞社が16、17日に実施した緊急の全国世論調査(電話)でも改正案に『賛成』は15%にとどまり、『反対』は64%だった」。まさしく山が動いた。到底、強行突破は不可能と、アベも判断せざるを得ない事態となったのだ。

アベは、本日の二階との会談で、「同改正案には野党だけでなく、自民党内にも異論があるほか、国民の批判が拡大している。そんな現実を前にして、国民の理解がないまま法案審議を前に進めることはできない」との認識で一致したという。
その後アベは、記者団に対して「法案については国民のみなさまから様々なご批判があった」「そうしたご批判にしっかり応えていくことが大切なんだろうと思う」と発言したという。先日まで、「国民はいっとき反対しても、どうせ忘れる」とうそぶいていた人物とは思えない変わり身の早さ。

これは、暫定的なものではあるが民主主義の勝利だ。憲法も人権も民主主義も踏みにじってきたアベ政権にとっての手痛い敗北である。これまで民意を小馬鹿にしてきたアベとその取り巻きは、今度に限っては、民意の恐さを思い知った。

とは言え廃案が勝ち取られたわけではない。飽くまで「今国会成立断念」という限りでの成果でしかない。法案成立強行の恐れが、次期国会以後にずれ込んだに過ぎない。アベは、今夕記者団に対して、「定年延長と公務員制度改革についての趣旨と中身について、丁寧にしっかり説明していくことが大事だ。これからも責任を果たしていきたい」と述べたという。危機が去ったというわけではない。今後の警戒を怠ることができないのだ。

それにしても、国会内での圧倒的な議席差を乗り越えて、真っ当な世論の高揚がアベ提案の閣法成立を阻止したのだ。この成功体験、この自信を得たことが何よりも大きい。真っ当な世論が、真っ当ならざるアベ支持勢力に勝ちうる。アベの野望を砕くことができる。今回、その勝ち方を知ったのだ。せっかくのこのノウハウである、今後とも惜しみなく繰り返し使うことにしよう。せっかく編み出し、せっかく使ったこの勝ち方。使う度に、鋭利なこの道具に磨きをかけ、多くの人の手で、政権を倒そうではないか。見掛けほど強くはないことを露呈した、この政権を。
(2020年5月18日)

官邸の検察官定年人事介入法案は、「法の支配」にかかわる重大事。

 おじさん、専門家でしょう。「#検察庁法改正案に抗議します」が大きな話題になっているけど、いったいどんな法案で、何が問題なのか教えて。

 現在衆議院で審議中の検察庁法改正法案は、検察官の定年延長の法案なんだけど、検察官の定年を単純に延長するわけじゃない。幹部検察官について、その役職の定年延長に官邸の意向を反映させる仕組みが織りこまれている。つまり、検察官の人事に官邸が介入できるというところが大問題。

 これまでは、検察官の定年に官邸が介入する余地はなかったの?

 戦後すぐにできた検察庁法では、検察官の定年は63歳、検事総長だけが特別で65歳とされてるけど、定年の定めはない。

 だけど、そのあと、国家公務員法に定年延長の定めができたときに、検察官にも定年の延長ができるようになったと、法務大臣が言ったんじゃなかったっけ。

 そうなんだ。ところが、当時の資料を調べて見ると、検察官の職務の特性に照らして「国家公務員法の定年延長の規定は検察官には適用しない」というのが明確な政府の解釈だった。だから法務大臣答弁は明らかに間違い。

 それでも、今年(2020年)の1月31日に、内閣は黒川弘務東京高検検事長の定年延長閣議決定をしてしまったわけね。違法な閣議決定じゃないの?

 これまでまったく前例のないことで、もちろん違法。この点を追及されて、法務大臣は「解釈を変更した」と回答した。勝手な解釈変更も大きな問題だけど、どんな必要があって、いつ、どのような手続で解釈変更したかは答えられない。決裁文書を示せと言われると、「口頭決裁」だと居直る始末。

 いかにもアベ内閣らしいご都合主義ね。いつものとおりの、嘘とごまかしと公文書管理の杜撰さ。その黒川人事を後付けで合法化するための法案だから問題なの?

むろん、そのこともある。黒川さんは、今年の2月8日で63歳となる。だから、既に失職しているはずだ。政府が、どうしてこんな違法で不自然なやり方にこだわったのかが、問い質されなければならない。

 結局は、後暗いところをたくさん抱えるアベ政権にとって、黒川さんは頼りになる人というわけのようなのね。

そのとおりだ。今日(5月17日)の、毎日新聞「松尾貴史のちょっと違和感」に、「検察庁法改正案に抗議の声 また壊される三権分立」という記事があって、その最後がこう締めくくられている。

 小渕優子元経済産業相の政治資金規正法違反問題、松島みどり元法相の選挙でのうちわ配布問題、甘利明元経済再生担当相のUR口利き問題、下村博文元文部科学相の加計学園パーティー券問題、佐川宣寿元国税庁長官らによる森友学園公文書改ざん問題、これらすべてを不起訴にしたのが黒川氏だと言われているが、つまりは政権と一蓮托生、二人三脚、ということなのだろうか。

 なるほど、分かり易いよね。気に入ったオトモダチ検察官は定年延長を認めて、骨のある厳正な検察官は定年延長しないと、えり好み出来ることになるわけね。結局はそれが、検察官人事に官邸が介入ということね。

 法案の問題点は、官邸が検察官の定年人事に介入できる仕組みとなっているところにあると言ってよいと思う。人事介入は結局仕事の中身への介入につながる。

 アベ内閣のやることだから、どうせ汚いことだろうし、不愉快なことだとも思うけど、官邸による検察官の定年人事介入が、そんなに大きな問題なのかしら。

 実は、そこがポイントだ。これは、法の支配の根幹に関わる重大問題なんだけど、アベ首相も、森法務大臣も、「検察官だって一般職の公務員だ。内閣の人事権に服して当然」という姿勢だが、それが間違っている。

 検察官には、準司法官としての立場もある、という検察官職務の特殊性のことね。

 そのとおりだが、このことの意味するところは重いと思う。法の支配とは、権力も法に服さねばならないという大原則だが、憲法を頂点とする法体系が適正に運用されているかのチェックは司法の役割で、この司法の場で働く実務法律家は、裁判官・検察官・弁護士の三者の職能に分かれている。これを法曹三者と呼んでいるが、それぞれが権力から独立していなければならない。

司法の独立という言葉はよく聞くけど、司法権イコール裁判所だと思っていたし、裁判官の独立は大切だとも思うけど、検察官の独立性も大切だということ? そして、検察官一人ひとりの独立も?

 そのとおりだ。司法権を行使するのは独立した一人ひとりの裁判官で、司法の独立とは裁判官の独立の保障のことでなくてはならない。弁護士の身分も、行政権や司法権から守られなければならない。そして、検察官もだ。

 でも、検察庁は法務省に属する組織でしょう。法務省は内閣に従わなければならない。検察官が独立していては、行政の統一性を損なうことにならないのかしら。

 検察官は、刑事事件で被疑者を起訴する権限をもっている唯一の職能。権力が暴走するときの歯止めの役割を担っている。内閣総理大臣と言えども、犯罪に該当する行為があれば、検察官は躊躇なく捜査し起訴できなくてはならない。常に、権力との緊張関係を保たなければならない。権力からの検察官定年人事への介入によって、権力を忖度し、権力におもねる検察官では、法の支配を保つことができない。

 分かったような気がする。キーポイントは、権力に対してどれだけ厳しい姿勢をもっているかという問題のようね。

 そのとおりだ。その点、アベ政権のやること、とても分かりやすい。これだけは、安倍さんの功績かもしれないね。

(2020年5月17日)

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