最近、鏡に映る自分の姿がどうもはっきりしない。後ろの壁がぼんやりと透けて見えるんだ。久しぶりに陽の当たる道を歩いてみたら、自分の影だけが妙に薄いことに気がついた。こんなこと、以前にもあったっけ。そうだ、2007年夏に第1次アベ政権が崩壊したあのあたりのことだ。また胃が痛い。いや腸がキリキリと痛んできた。
内政外交とも八方ふさがりだ。森友・加計・南スーダンだけでない。イラク日報、財務省セクハラ問題で、内政は最悪だ。嘘つき内閣・改ざん政権・公私混同首相・行政私物化総理とさんざんだ。「アベ・やめろ」とうるさくてならない。こんなにまで言われる私には人権はないとでもいうのだろうか。とりわけ、右腕と便りにしてきた麻生さんが、セクハラ次官をかばって火だるまだ。それに、元首相秘書官だった柳瀬が国会で洗いざらいしゃべったら私はいったいどうなることか。どちらも気が気でない。
これまでは、内政の失敗を外交で挽回してきた。安倍得意の外交とさえ言われてきたが、そのメッキが完全に剥げ落ちてしまった。北朝鮮問題こそが私の独壇場だった。トランプ政権と一緒に、ヒトツオボエで「圧力・圧力」「最後までアツリョク」と言ってりゃよかったのだから、楽なもんだった。それで、選挙に勝てたのだから、北朝鮮様々だ。南の文政権に出過ぎたことをするなと釘を刺す役を馬鹿正直に務めていたんだ。
ところが、なんてこった。トランプの奴め、こっそり北と水面下の対話を進めていたんだ。アベの面子など眼中になく、「国際信義よりは中間選挙ファースト」と言うことだった。これまでトランプを「一貫して支持」し、「日米は100%共にある」と繰り返してきたことが、われながら情けなくも恥ずかしい。トランプも金正恩も馬鹿ではなかった。馬鹿を見たのは、私ばかり。今や、トランプが上機嫌で、「南北対話を100%支持する」「アメリカとそのすべての国民は今、朝鮮半島で起きていることをとても誇りに思う」なんて言っている。文在寅の株が大いに上がった。トランプは抜け目なく、習近平まで持ち上げている。私の面目は丸つぶれじゃないか。
さりとて、スネ夫の宿命としてジャイアンには逆らえない。トランプには「拉致問題をよろしく」って、辞を低くしてお願いするしかない。そのお願いはトランプにだけじゃない。南北会談の設定で意気揚々の文在寅にも、頭を下げるしかない。これまで、「最終的かつ不可逆的な合意と言ったろう」などと居丈高な物言いをしてきたように思うんだが、あれは夢の中のことだったのか。
トランプには、頻繁に電話をして日米の緊密をアピールするしかないが、奴はその電話の最中に、ツイートを発信していることがあとになって分かった。私だって、一国の首相だ。あまりに無礼な態度だとは思うが、抗議もできないことがなんとも歯がゆい。
そんなことから、南北会談の前には、「拉致問題が前進するよう、私が司令塔となって全力で取り組む」と言ってみたし、事後には「南北首脳会談はわれわれが決めていたラインにのっとって行われたことが確認できた」と虚勢をはってもみたんだ。こう言わざるを得ない私の立場は、支持者の右翼の諸君には理解も同情もしてもらえるだろうという読みでの発言。右翼以外の「あんな人たち」や「こんな人たち」には、さぞやバカにされることになるんだろうな。だから、キリキリと腸が痛い。
関係国は、みんなそれぞれ主体的に問題に関わっている。中朝首脳会談を皮切りに、南北会談、そしてもうすぐ米朝会談だ。日本だけが蚊帳の外。私の影がうすーくなっている。何とか蚊帳の中に入れてくださいと言わなきゃならないのが癪のタネ。拉致問題の解決には、ピョンヤンに行かねばならないのだが、気が重い。腰も重くなる。うまく行くだろうか。なんと言っても、植民地支配の清算ができていない相手だ。どんな条件を持ち出されることになろうやら。「最終的かつ不可逆的」などと一方的に言って通じる相手ではなさそうだ。
何よりも、思惑外れは北の核やミサイルについての態度の豹変だ。これには心底困った。昨年10月の総選挙は、「国難選挙」と名付けて闘うことができた。与党が勝てたのは、核やミサイルで挑発的な姿勢をとり続けた北朝鮮のお陰だ。Jアラートは頼もしい武器になった。ところがどうしたことだ。南北会談で一気の平和ムードだ。これでは、軍拡の口実もなくなる。防衛予算の拡大もできない。9条改憲進展も棚上げになってしまうではないか。下手をすると、国民世論は、「安倍こそ国難」と盛り上がりかねない。
今こそ、自衛隊増強と改憲の絶好の機会だったはずではないか。「アベのいるうち」「両院の改憲派議席が3分の2あるうち」が千載一遇のチャンスだったはず。このままでは、みすみすとその好機を逃してしまいそうだ。何とかしなければならないが…、よい考えも浮かばない。ああ、腸がキリキリ痛むばかりだ。これが、断腸の思いというものだろうか。
(2018年4月30日)
先月(18年3月)韓国訪問の印象が強く、南北首脳会談の成り行きには期待をもって注目していた。その期待は裏切られず、本日(2018年4月27日)は歴史的な日となった。今日の日が、軍事緊張から平和へ、北東アジア国際情勢転換の記念日として、後日長く記憶されることを願う。
南の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と、北の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。最初は多少の硬さもあったようだが、打ち解けて和やかな笑みがこぼれる会談となった。その演出はみごとで、両国の平和と統一への熱意を世界にアピールするものとなった。
あらためて思う。同じ民族の南と北が、何ゆえ骨肉相食むの悲劇に陥ったのだろうか。犠牲者500万と言われる朝鮮戦争は、いったいなんのための殺戮だったのか。本日の両首脳の笑顔を見ていると、過去の歴史が信じがたい。
いいや、「過去」のことだけではない。ヒステリックに、Jアラートで北への警戒を叫んでいたのは、つい先日のことではないか。現実は、願望をはるかに超えた。夢想だったことが、実現しつつある。
また、あらためて日本国憲法9条とその精神を述べた前文とを噛みしめる。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
相手国に対する不信は、自国に対する不信となって返ってくる。憎悪は憎悪を生むばかり。自衛の名による軍備も、互いに相手国の軍備を凌駕しようとして軍拡競争に陥ることになる。これを断ち切るのが、9条の精神ではないか。「平和を愛する諸国民の公正と信義への信頼」こそが平和の根源なのだ。南北の宥和が進展しつつある今、9条改憲などとんでもないことではないか。
本日の会談後両首脳は「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」に署名した。「平和」と「繁栄」と、そして「統一」の文字がまぶしい。
朝鮮半島の「完全な非核化」という目標だけでなく、直通電話での話し合いの継続や、5月1日からの軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布の停止など、具体的な事項も折り込まれている。今秋、文氏が平壌を訪問することも。
最も関心を集めた「非核化」について、「南北は完全な非核化を通じて、核のない韓(朝鮮)半島を実現するという共同の目標を確認した」「南北は半島の非核化のため、国際社会の支持と協力のため、それぞれ努力していく」と明記している。
ところで、恒久的な平和の構築に向けて、「南と北は停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための『南・北・米3者』または『南・北・米・中4者』会談の開催を積極的に推進していく。」としている。けっこうなことだが、どうやら日本の出る幕はなさそうなのが、気にかかる。
ここは、南・北両国に積極的な外交的接触が必要な局面ではないか。そのときには、憲法9条を持つ国として、平和外交を押し進めていただきたい。9条改憲にこだわる政権では、なんとも権威に乏しいと嘆かざるを得ない。
**************************************************************************
「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」
大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、平和と繁栄、統一を念願とする全同胞の一致した志向を込めて、朝鮮半島の歴史的な転換が起こっている重要な時期に、2018年4月27日に板門店・平和の家で、南北首脳会談を行った。
両首脳は、朝鮮半島ではもはや戦争は起きず、新しい平和の時代の到来たことを8000万わが同胞と全世界に厳粛に闡明した。
両首脳は、冷戦の産物である長い分断と対決を一日も早く終息させ、民族の和解と平和、繁栄の新時代を果敢に作り出しながら、南北関係をより積極的に改善し発展させていかなければならないという確固たる意志を込めて、歴史の地、板門店で次のように宣言した。
1.南と北は南北関係の全面的で、画期的な改善と発展を遂げることにより、分断された民族の血脈をつなぎ、共同の繁栄と自主統一の未来を早めていく。
南北関係を改善し発展させることは、全同胞の一様な望みであり、これ以上、先送りできない時代の差し迫った要求である。
(1)南と北は、わが民族の運命はわれわれ自身が決定するという民族自主の原則を確認し、既に採択された南北宣言とすべての合意を徹底的に履行することにより、関係改善と発展の転換的局面を開いていくことにした。
(2)南と北は高位級会談をはじめとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意された問題を実践するための積極的な対策を立てていくことにした。
(3)南と北は当局間協議を緊密に行い、民間交流と協力を円滑に確保するために、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城(ケソン)地域に設置することにした。
(4)南と北は民族の和解と団結の雰囲気を盛り上げていくために、各界各層の多様な協力と交流往来と接触を活性化することにした。
内においては6.15をはじめ、南と北の双方において意義ある日を契機に、当局と国会、政党、地方自治団体、民間団体など各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進して和解と協力の雰囲気を盛り上げながら、外においては2018年のアジア競技大会をはじめとする国際競技に共同で進出し、民族の英知と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。
(5)南と北は民族分断により発生した人道的問題を早急に解決するために努力し、南北赤十字会談を開催し、離散家族・親戚の再会をはじめとする諸問題を協議解決していくことにした。
当面、来たる8.15を契機に離散家族・親戚の再会を進めることにした。
(6)南と北は民族経済の均衡ある発展と共同の繁栄を達成するために、10.4宣言で合意された事業を積極的に推進して行き、一次的に東海線および京義線鉄道と道路を接続して近代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした。
2.南北は、朝鮮半島で尖鋭な軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力してゆくものである。
(1)南と北は、地上と海上、空中をはじめとするすべての領域で軍事的緊張と対立のもととなる相手に対する一切の敵対行為を全面停止することにした。
当面、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布をはじめとするすべての敵対行為を停止し、その手段を撤廃し、今後の非武装地帯を実質的な平和地帯にしていくことにした。
(2)南と北は黄海の北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を確保するための実際的な対策を立てていくことにした。
(3)南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化されることによるさまざまな軍事的保障対策を取ることにした。
南と北は双方の間に提起された軍事的問題を遅滞なく協議解決するために、国防相会談をはじめとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず、将官級軍事会談を開くことにした。
3.南と北は朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制の構築のために積極的に協力していく。
朝鮮半島で非正常な停戦状態を終息させ、しっかりとした平和体制を樹立することは、これ以上先送りできない歴史的課題である。
(1)南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないことについての不可侵合意を再確認し、遵守していくことにした。
(2)南と北は軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに従って、段階的に軍縮を実現していくことした。
(3)南と北は停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための南・北・米3者または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進していく。
(4)南と北は、完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した。
南と北は、北側がとっている主動的な措置が朝鮮半島の非核化のために非常に意義あり、大きい措置だという認識を共にして、今後それぞれ、自己の責任と役割を果たすことにした。
南と北は、朝鮮半島の非核化のための国際社会の支持と協力を得るために積極的に努力することにした。
両首脳は、定期的な協議と直通電話を通じて、民族の重大事を頻繁かつ真剣に議論して信頼を強固にし、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくため共に努力することにした。
当面して文在寅大統領は、今年の秋に平壌を訪問することにした。
2018年4月27日
板門店
大韓民国大統領 文在寅
朝鮮民主人民共和国国務委員会委員長 金正恩
? (デイリーNKジャパン編集部訳)
(2018年4月27日)
韓国・平昌での第23回冬季オリンピック・パラリンピック(平昌五輪)が問題を抱えたまま目前となっている。来月(2月)9日開幕で、25日までの17日間の日程だという。ドーピング問題でのロシア選手団の問題だけでなく、隣国北朝鮮が参加の可否を態度表明しないまま推移して暗い影を落としている。韓国の文在寅大統領は、かねてから「オリンピックの成功が朝鮮半島の平和と安定につながる」と表明してきたが、北朝鮮は態度を保留したままだった。
突然に事態が変わった。北が平昌五輪への参加の意図を表明し、南がこれを歓迎する声明を発表した。これをきっかけに、南北対話の進行までが期待される。
昨日(1月1日)北朝鮮の国営放送「朝鮮中央テレビ」が放映した金正恩朝鮮労働党委員長の「新年の辞」の中で、金正恩は平昌五輪についてこう語ったという。
「新年はわが人民が共和国創建70周年を祝い、南朝鮮(韓国)では冬季オリンピック競技大会が開かれることで、北と南にこのように意義のある年だ」「平昌冬季オリンピックは、民族の地位を誇示する良いきっかけとなり、私たちは大会が成功裡に開催されることを心から願っている」「北朝鮮も代表団の派遣を含めて必要な措置を執る用意がある」
「私たちは民族の尊厳と気概を内外に知らしめるためにも、凍結状態にある北南関係を改善し意味深い今年を民族の歴史に書き加える年に輝かさなければならない」
「何より南北間の先鋭的な軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境から用意しなければならない」「北と南の情勢を激化させることをこれ以上してはならず、軍事的緊張を緩和し、平和的環境を用意するために共同で努力しなければならない」
明らかに、平昌五輪をきっかけとする南北対話の意図の表明として影響は大きい。ぜひ、実現してもらいたいものと思う。
当然に、「北朝鮮の戦術」という見方は出てくるだろう。「国連安保理決議による制裁の影響が大きく出てくる前に、友好ムードに切り替え、これ以上の制裁を避けるための方策」という読みだ。だからといって、せっかくの対話のチャンスを逃してはならない。オリンピックも役に立つこともある。うまくことが運べば、オリンピックの大手柄だ。
この金正恩のテレビでの呼びかけに応じて、韓国大統領府は、直ちにこれを歓迎する声明を発表した。声明は「韓国大統領府は南北関係の改善と朝鮮半島の平和に関連する事案であれば、時期、場所、形式にこだわらず、北朝鮮と対話に応じる用意があると明らかにしてきた」とし、北朝鮮が提案した選手団派遣に向けた南北間協議に応じる方針を明らかにした、という。
また、韓国大統領府の朴洙賢報道官が、「平昌五輪が『平和五輪』として成功すれば、朝鮮半島と北東アジア、世界の平和に寄与する」と期待感を示したことが報じられている。
文政権からしてみれば、「遅かりし由良之助」「待ちかねた」と言いたいところだろう。幸いなことに間に合いそうなタイミングではないか。「米・韓」対「北」のチキンゲームに終止符を打って、平和の協議への第一歩とならんことを、切に願う。
まだ、十分に成算の見えた話ではないが、明らかに風向きが変わった。
トランプやアベには、思惑外れ。とりわけ、北朝鮮の危険を最大限利用して、9条改憲を目論むアベには面白くない展開。
ようやく訪れたこの風向きの変化に、言いたくもなる。
「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」
(2018年1月2日)
叩かれ続けて逃げまくり
それでも選挙に勝てたのは
北朝鮮のおかげです
核とミサイルぶっ放す
金正恩さんよありがとう
改憲発議の議席数
危ない選挙でとれたのは
北朝鮮のおかげです
核とミサイルもてあそぶ
金正恩さんよありがとう。
防衛予算を拡充し
兵器をたくさん買えるのも
北朝鮮のおかげです
核とミサイル大好きな
金正恩さんありがとう
憲法9条改正し
ああ堂々の自衛隊
国防軍にもできるのは
北朝鮮のおかげです
金正恩さんありがとう
大浦湾を埋め立てて
辺野古の新基地作るため
デモ隊弾圧できるのも
北朝鮮のおかげです
金正恩さんありがとう
ホントは誰が悪いのか
ホントは誰のおかげやら
かんがえ出すと難しい
それでもこの際
当てつけに
北朝鮮のおかげです
金正恩さんありがとう
甘い日本だけでなく
渋い韓国ともどもに
兵器買わせてボロ儲け
こんな商売できるのも
北朝鮮のおかげです
金正恩さんありがとう
平和な世界は儲からぬ
緊張緩和は儲からぬ
テロがなくては儲からぬ
儲けのタネをばらまいた
北朝鮮よありがとう
金正恩さんありがとう
ホントにホントに
ありがとう。
なにをおっしゃるトランプさん
それにくっつくシンゾーさん
平和でこまるはお互いさまよ
緊張あるから国がもつ
緊張あればの権力安泰
お二人さんには大感謝
トランプさんよありがとう
シンゾーさんもありがとう
ホントにホントに
ありがとう。
(2017年11月9日)
歓迎すべからざる不作法な人物が、慌ただしく東から来て、名残惜しげに西に去った。
ほぼ48時間の滞日中のなんとも不躾な振る舞いは、とうてい大国の大統領とは思えない。どう見ても、ふてぶてしい殺戮兵器の悪徳商法セールスマン。自分で戦争の緊張を煽っておいて、心配だろうから際限なく武器を買えという、この上ない厚かましさ。
この厚かましい悪徳セールスマンに、プライドを捨てて腰をかがめ、にやけた表情を崩さなかった情けない男が、我が国の首相である。これまた、一独立国のトップの姿とは思えない。まことに、ジャイアンとスネ夫の関係を彷彿とさせる。
イバンカ、トランプ、メラニーのもてなしぶりは、屈辱以外の形容をもたない。日本国民として赤面せざるを得ない。
そのトランプの世論調査による支持率について、米紙ワシントン・ポストが5日伝えるところでは、「過去70年で最低 支持率37%」だという。「就任から同時期の過去約70年の歴代大統領で最低の37%だとする世論調査結果を発表した。不支持率は59%だった。」「35%が業績を高く評価すると答えたが、65%は否定的な見解を示した。前政権が導入した医療保険制度(オバマケア)の見直しなど重要公約が軒並み停滞していることが主因。北朝鮮対応で、51%がトランプ氏を『全く信用できない』とした。」
アメリカ国民の過半が『全く信用できない』というトランプとの会見の結果が、以下のとおりである。
「この2日間にわたり、ドナルドと国際社会の直面する様々な課題について、非常に深い議論を行うことができました。その中でも圧倒的な重要性を占めたのは北朝鮮の問題です。十分な時間を掛けて北朝鮮の最新の情勢を分析し、今後とるべき方策について、完全に見解の一致を見ました。
日本は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持しています。2日間にわたる話合いを通じ、改めて、日米が100%共にあることを力強く確認しました。」(官邸の公式ホームページから)
トランプは、「北朝鮮との戦争を選択肢として排除しない」と明言し、アベは、戦争という選択肢を含んで、「100%共にあることを力強く確認」したというのだ。かたや、なんたる醜悪。そして、こなた、なんたる邪悪。
悪徳セールスマンの本領は、日本に米国製の防衛装備品をさらに購入していくことの押しつけに表れた。トランプはアベに、「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ」と具体的な武器の名を挙げてたたみ込み、「そのことが米国での雇用拡大と日本の安全保障環境の強化につながる」とのセールストークを続けた。これにアベは何と答えたか。「日本の防衛力を質的に、量的に拡充していかなければならない」としたのだ。いったい誰の金を使って、誰の命を奪おうというのか。
史上最低支持率大統領を、過剰なオモテナシで歓待したのが日本政府であり、彼にふさわしい対応をしようとしているのが、韓国の民衆である。220余りに上るいわゆる市民運動を糾合して結成された「NOトランプ共同行動」が、7?8日に大々的な反トランプ都心集会を相次いで開催するという。光化門広場?青瓦台周辺?宿泊予定地を動線に合わせてついて行き反米・反戦を叫ぶ計画という。「トランプ国会演説阻止行動」まで予告し警察は最高非常体制となっており、集会の届け出はすでに100件を超えているという。そのスローガンは、「ノー・ウォー、ノー・トランプ」だ。
「戦争反対・トランプ出ていけ」「我々は戦争に反対だ。だから、戦争の危険を煽っているトランプに抗議する」「トランプよ、おまえの存在こそが戦争への危機だ」という含意。
韓国には、1年前に朴槿恵を退陣に追い込んだ「路上の民主主義」が根付いている。その草の根民主主義が、トランプに「ノー・ウォー、ノー・トランプ」を突きつけているのだ。
トランプが日本では歓待受けて居心地よく、韓国では抗議の針のムシロということのようだ。韓国の民主運動の高揚と、日本の民主運動の低迷を思うとき、韓国の民衆に敬意を表するのみである。
(2017年11月7日)
藤原寛一君は、小・中・高を通じて一緒に育った友人。学校生活だけでなく寮生活もともにした仲。高校時代は同じクラブ活動の仲間でもあった。とはいえ、同じ境遇で育って、同じ時代を生きてきても人は同じようにはならないのが面白い。彼からは、ときどき私のアベ批判の口調のとげとげしさをたしなめるメールを頂戴する。彼は、私と違ってアウトドア派の趣味人である。山や花や小鳥の四季をみごとに切りとった写真をネットに掲載し続けている。以下が、彼の自己紹介。
自然が大好きな自由人。山野草の撮影にドップリ。蝶ならぬ私が、花から花へカメラを手に飛び回っています。ホームグラウンドは大阪府・奈良県をまたぐ「金剛山」(1125?)。日本100高山のうち39座に登っています。
https://botibotihuu.jimdo.com/
http://kkfuji.exblog.jp/
http://www.h6.dion.ne.jp/~kk-fuji/
その彼が、定年以来、「人生下り坂。どこに向かうもとても楽」と言い続けている。なるほど、「とても楽」が自由人の心境なのだ。うらやましい限りである。
ところで、「人生下り坂」と観念すれば、「とても楽」であると同時に、いまが一番高みにあることにもなる。いまが、できることが多いのだから、今のうちにやっておこうということになるのではなかろうか。
風情のない話に転じるが、おそらくはアベ晋三も「下り坂」の心境なのだろう。もう少し正確に言えば、「ジリ貧」の認識。ジリ貧なら、早いうちにできることはやっておこう。いまの解散が、傷を最小にとどめる良策だとなる。
野党の態勢の不備を見すかし、これに付け込んで、「いまがチャンス」と見たのだろう。公平で正確な主権者の判断を仰ごうという謙虚さは微塵もない。選挙民の判断材料を隠して、とにもかくにも選挙に勝つこと最優先。勝ちさえすれば官軍でいられるというゲスの根性。その人柄がとうてい信用できないということそれ自身を神無月総選挙の重要な判断材料としなければならない。
一方、トランプも同じではないか。アメリカが北朝鮮に対して、軍事的な絶対優位にあることは疑うべくもない。しかし、相対的な優位度はいま縮まりつつある。これも、トランプの目からは、「下り坂=ジリ貧」と見えているに違いない。
危険なのは、「開戦するなら早ければ早いほど有利」「開戦の機は、相対的優位が最大のいま」という判断になりかねないということだ。
軍事力においては、ドーベルマンとチワワにたとえられる両国の関係。チワワがどう吠えようとも、ドーベルマンに噛みつくまですることはあり得ない。しかし、アメリカが「いまのうちに北朝鮮をたたきつぶしておこう」と考える余地あることは否定し得ない。いまなら、北は米本土への核報復の能力を持っていない。「叩くなら、今のうち」ということはありえない判断ではない。
もちろん、北朝鮮は韓国に対する瞬時の報復能力を持っている。日本国内の米軍基地に対してもだ。楽観的に、アメリカが同盟国を火の海にしかねない危ない選択をするはずはない、と信頼してよいだろうか。もしやアメリカは、「いまなら、戦争の火の粉は、同盟国に降りかかっても、アメリカ本土は安全」「ならば、いまこそ行動の時」と考えはしまいか。
トランプの昨日(9月19日)の国連演説。「米国は大いなる強さと忍耐力があるが、米国と同盟国を守らなければならない時、北朝鮮を完全に破壊するほか選択肢はない」「米国はその準備ができているが、できれば(軍事的行動は)必要でないことを望む」という一節は不気味この上ない。
トランプのテーブルにあらゆる選択肢があるわけではない。軍事オプションは、韓国の国民、日本の国民が許容するところではない。まずは、ドーベルマンに対して、「チワワに噛みついてはならない」と国際世論を喚起しなければならない。窮鼠でさえ猫を噛む危険な存在。噛みつかれたチワワも、近隣諸国民には危険この上ないのだ。
その上で、北朝鮮の瀬戸際政策をも強く批判しなければならない。そうして、国際世論の圧倒的な圧力によって、当事国双方を、時の氏神や近隣諸国をまじえて対話のテーブルに着ける以外にこの危機を解決する方法はない。
トランプに続いて、アベ晋三も国連で対北朝鮮政策を演説するという。伝えられるところでは、トランプへの全面追随で、北朝鮮に対する制裁圧力一辺倒の内容だとか。彼の眼中には、ご主人様トランプ政権だけがあって、韓国や日本の国民の安全はないのではないか。
オーイ、藤原くん。アベ晋三じゃダメだ。安心して「花から花へカメラを手に飛び回って」おられるように、もう少しマシな政権に取り換えようぜ。
(2017年9月20日)
憲法9条の恒久平和主義は、抑止論と対決し続けてきた。
抑止論は、「自国の武力の整備は、相手国の武力行使抑止の効果を持つ」「武力の整備を欠いた非武装無防備は、相手国の武力行使を誘発する」「武力の権衡あってこそ相互の攻撃を自制させる」「したがって、相互に均衡をした武力の整備こそが平和の条件である」という。
これが、論理においてまったく成り立たない愚論だとは思わない。しかし、過去の苦い歴史が、このような考え方こそが、軍拡競争をもたらし、恐怖の均衡に人々を陥れ、偶発的な均衡の破綻が悲惨な戦争をもたらしてきた。戦力の不保持を宣言する憲法9条の恒久平和主義は、過去の悲惨な歴史への真摯な反省からの決意であり、唯一の平和の保障策である。
核抑止論ともなれば、さらに問題は深刻である。冷戦終了後も、使う予定もなく、現実には使うこともできない核兵器の廃棄がいまだにできない。相互不信から核軍縮が十分に進展せず、核抑止論の克服ができないうちに、公然と核抑止論の有効性を掲げて核開発を進める北朝鮮の暴挙である。
核保有の5大国には、声を大にして核廃絶を迫らなければならない。米・韓・日の合同演習など軍事挑発行為にも反対しなければならない。しかし、同様に北朝鮮の核開発を批判しなければならない。防衛的なものだからとして容認してはならない。北朝鮮の核抑止論と核開発は、容易に他国に飛び火する。まずは韓国、次いで日本に、同じ論理での核開発を誘発しかねない。
北朝鮮の核とミサイル開発。北に直接対峙している韓国世論の動揺が深刻なようだ。以下は、発行部数韓国最大の朝鮮日報が報じるところ。
「韓国ギャラップが(9月)5?7日に実施した調査では『核武装に賛成』が60%で、『反対』の35%を上回った。野党・自由韓国党支持者で核武装に賛成する人は82%、同・正しい政党支持者で賛成する人は73%、与党・共に民主党支持者でも賛成(52%)の方が反対(43%)を上回っている。韓国社会世論研究所(KSOI)が8日と9日に成人男女1014人を対象に調査した結果も、『北朝鮮の核の脅威に対応して防衛の観点から戦術核を再配備すべきだ』という人が68.2%だった。『南北間関係をさらに悪化させるから戦術核再配備に反対する』という人は25.4%、「分からない・無回答」は6.4%だった。」
韓国世論は、いま深刻な事態にあるのだ。
同じく、日本語で読める朝鮮日報のサイトでは、「(保守系最大野党の)自由韓国党は9月10日、『戦術核再配備と核兵器開発のためのオンライン・オフライン1000万人署名運動』を開始した」と報じている。
また、9月16日付で、朝鮮日報は北朝鮮の核についての主筆のコラムを掲載している。「全く、国とは言えない」という表題の長文のもの。自国のこれまでの核政策を「国とは言えない」と強く批判するもの。1991年に韓国が在韓米軍の核を全面撤去して以来の、歴代韓国大統領による北朝鮮核開発への対応を具体的に無策と批判している。朝鮮日報が保守論壇を代表する立場にあるにせよ、これは見過ごせない。その一部を引用する。
「1991年より前は、韓国に核(米軍の戦術核)があり、北朝鮮には核がなかった。それが、韓国から核がなくなり、北朝鮮に核があるという、あべこべの形になった。国際政治の歴史上、こんな逆転はない。一体どうしてこんなことが可能だったのか気になり、91年の本紙を読み直してみた。11月9日付、1面トップは『在韓米軍の核、年内に撤収』だ。その横にある、もっと大きな記事が『盧泰愚(ノ・テウ)大統領、韓半島(朝鮮半島)非核化宣言』だ。韓国国内の核兵器を全面撤去し、今後核を保有・製造・使用しないという内容で、『非核の門をまず南が開け、北に核の放棄を迫る』というものだった。
続いて12月19日付、1面トップは盧大統領の『韓国国内の核不在』宣言だった。米軍の戦術核が全て引き揚げられたという意味だ。92年1月1日付、1面の冒頭記事は『南北非核宣言完全妥結』だ。南北双方が核兵器の試験・生産・受け入れ・保有・貯蔵・配備・使用を禁止するという内容。北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れると約束した。その日、盧泰愚大統領は新年のあいさつで『われわれの自主的な努力により核の恐怖がない韓半島を実現しようという夢で、大きな進展が実現した』と語った。『北が核兵器製造技術を持たないと表明したことは、本当に喜ばしい』とも語った。
全ては、北朝鮮による完全な詐欺だった。南北非核化宣言に合意したその日も、北朝鮮は寧辺でプルトニウムを抽出していた。金日成(キム・イルソン)主席は米軍の戦術核が撤収したのを確認した後、韓国の鄭元植(チョン・ウォンシク)首相と会談した席で『われわれには核がない。在韓米軍を撤収させよ」と要求した。『核査察の約束を守れ』という韓国側の要求には答えなかった。韓国という国の間抜けなドラマと、北朝鮮の核の悪夢が同時に開幕した。
北朝鮮の核問題の過程は、歴代韓国大統領の北朝鮮に対する無知と幻想が国家の安全保障を崩壊へと追いやっていく、完全に『国家の失敗』の歴史だ。盧泰愚大統領の後を継いだ金泳三(キム・ヨンサム)大統領は、北朝鮮が核爆弾を作っているにもかかわらず、就任演説で『いかなる同盟国も、民族より勝るということはあり得ない』と語った。金大中(キム・デジュン)大統領は、金正日(キム・ジョンイル)総書記との首脳会談を終えた後、『われわれにも新しい日が差してきた。分断と敵対に終止符を打ち、新たな転機を開く時期に至った』と語った。『北は核を開発したこともなく、能力もない。私が責任を持つ』という発言が報道されたこともあった。…」
NHK(WEB)によれば、「北朝鮮外務省でアメリカを担当する幹部(北米局のチェ・ガンイル副局長)は、15日の弾道ミサイル発射について、『核抑止力強化のための正常な過程の一環だ』と述べ、アメリカのトランプ政権が北朝鮮政策を転換しない限り、核・ミサイル開発を加速させる姿勢を重ねて強調しました。」
「そのうえで、『アメリカがわれわれを敵視し続け、核で脅し続けるかぎり、われわれは絶対に核兵器とミサイルを協議のテーブルに載せない。まずアメリカが敵視政策と制裁をやめてこそ、対話になる』と述べ、トランプ政権が北朝鮮政策を転換しないかぎり、核・ミサイル開発を加速させる姿勢を重ねて強調しました。」
「また、『核・ミサイル開発は自衛的な措置だ』とする主張を改めて示」した、という。
北朝鮮の、「自国の核開発は自衛的な措置だ。凶悪なアメリカの核攻撃を抑止する唯一の手段だ」という主張は、韓国や日本の好戦勢力や防衛産業にまことに好都合。同じ理屈で核武装や核持ち込みのシナリオを描くことができる。
金正恩。その世襲制、個人崇拝、反人権、非民主的な体制だけでなく、絶対悪としての核をもてあそぶその姿勢においても批判されなければならない。
北朝鮮の地下核爆発実験の報には心が凍りつく。どうして、笑っていられのだろうか。金正恩も開発に携わった科学者たちも。広島や長崎の被爆者の叫びを聞け。叫ぶ術もなく死んでいった多くの人々の声を聞け。核抑止論を主張する人々は、原爆資料館に足を運ばねばならない。丸木美術館で原爆の図を凝視しなければならない。
いまは、関係各国に無条件で和解のテーブルに着くべきだとする国際世論を喚起するしかない。「核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用の禁止ならびにその廃絶に関する条約」(核兵器禁止条約)の締結が、国際世論の本流になっているいま、その声が巻きおこらぬはずはない。
(2017年9月17日)
今日はルンルンだ。国民はチョロいぜ。勿体ないがだましよい。
各紙の世論調査で内閣支持率が軒並みアップだ。不支持率を逆転したぞ。どんなもんだい。
今日(9月11日)発表のNHKの世論調査ではこんな具合だ。
安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より5ポイント上がって44%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、7ポイント下がって36%で、3か月ぶりに、「支持する」が「支持しない」を上回りました。
さすがNHK。立派な国営放送だ。誰が言ったか、「アベ様のNHK」。悪い気はしない。
朝日新聞も、9日10日の全国調査結果を今日発表している。こちらはやや渋いが。
「安倍内閣の支持率は38%(前回8月調査は35%)で、不支持率38%(同45%)と並んだ。回復傾向にはあるものの、無党派層の支持率は17%と依然低い。」
朝日だもの。反アベだろう。それでも、前回調査の不支持率と支持率の差10ポイントが、今回はゼロだ。やっぱりルンルンだぜ。
なぜこうなったかって? 幾つか考えられる。
まずは、北朝鮮のおかげだ。これまでも、私の支持率の落ちたところで、私を助けてくれている。「困ったときの友こそ真の友」と言うだろう。金正恩こそが私の真の友だと思うよ。これ、ホンネだ。
ICBMの発射も、核実験も、ホントによいタイミングでやってもらった。しかも核は160キロトン相当の水爆だと言うじゃないか。国民の目は、森友・加計問題から、北朝鮮に完全に移った。共謀罪も、南スーダンPKOでの日報隠しも、閣僚不祥事も、アベチルドレン問題も、すべては忘却の彼方だ。
しかも、この北朝鮮によるわが国への支援の恩恵は、内閣支持率アップにとどまらない。迎撃ミサイルだの、イージスショアだの、自衛の措置が必要ではないかとの理由付けで、防衛予算の増強がとてもやりやすくなった。アメリカの軍需産業も大喜びだ。
だから、北朝鮮危機の深刻さは、できるだけ大袈裟に国民に伝えなければならない。Jアラートも国民の危機意識涵養に大成功だった。国民が不安になればなるほど一体感が造成される。時の内閣支持率がアップするのが、世の習いではないか。
私も、不愉快そうに深刻な顔つきで記者会見をしなければならないのだが、ついつい腹の中では笑みがこぼれる。
北朝鮮危機→国民の不安→対抗措置の必要 こうなるのが思う壺。目には目。歯には歯だ。核兵器には核兵器だろう。北朝鮮が持つなら、この機会にわが国の核武装も、というのが民の声じゃないか? えっ? ちっとも論理性がないって? そんなことはどうでもよい。日本の核武装ができないまでも、使用済み核燃料から抽出したプルトニウムの保管に精出すくらいは国民合意ができそうじゃないか。うまくいけば、憲法改正だってできるかも。これも北朝鮮・金正恩のおかげだ。
もっとも、朝日の調査では、「北朝鮮の弾道ミサイルや核実験に対して、日本政府が、対話と圧力のどちらにより重点を置く方がよいかを尋ねると、『圧力の強化』40%、『対話の努力』45%と割れた。」という。これでは、まだまだ内閣の努力が十分ではない。「対話」じゃなくて、圧倒的な「圧力」世論を作らなければならない。そのためには、もう一押しの「反北朝鮮キャンペーン」だ。
そう、北朝鮮危機を本当に解決できななくてもいいのさ。危機は深刻であるほど、そして長引くほどありがたい。その間、支持率低下の心配はない。
北朝鮮の協力の次は、「寝たふり作戦の成功」だね。頭を下げ、お詫びをし、反省のふりをしたことが成功の原因だ。本当に国民は忘れっぽくってありがたい。
それだけでない、弱体野党の御陰もある。野党第一党の党首が、野党共闘に消極的なことも、消局的な内閣支持率アップの原因だ。
これまでは寝たふりをしていたけど、この事態なら、ジリ貧になる前に早期解散に打って出る手も大ありだ。これで負けを最小限に押さえられれば、それこそ正恩に足を向けては寝られない。
昨日(9月10日)の東京新聞社説が「桐生悠々と防空演習」を取り上げている。例の「関東防空大演習を嗤う」の論評を書いたジャーナリスト。
社説はこう言うのだ。
「悠々の評論の核心は、非現実的な想定は無意味なばかりか、有害ですらある、という点にあるのではないでしょうか。その観点から、国内の各所で行われつつある、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えた住民の避難訓練を見るとどうなるのか。」
「国民の命と暮らしを守るのは政府の役目です。軍事的な脅威をあおるよりも、ミサイル発射や核実験をやめさせるよう外交努力を尽くすのが先決のはずです。そもそもミサイルが現実の脅威なら、なぜ原発を直ちに停止し、原発ゼロに政策転換しないのでしょう。」
何を言っているのか。東京新聞は何も分かっちゃいない。何のための避難訓練かといえば、国民に北朝鮮への恐怖を煽るためのものであることは明らかじゃないか。軍事的な脅威をあおってこその防衛予算拡大であり、9条改憲の実現じゃないか。
そういうところをメディアも学ばねばならない。信頼関係は、相互に敬愛の精神をもつところから出発する。「メディアの使命は権力監視だ」なんてカビの生えたことを言っていたら、信頼関係なんて無理だね。読売のように従順なら、公安の捜査情報をくれてもやろうが、ね。
なんてね。今日は気分がよい。さてこれがいつまで続くやら。
(2017年9月11日)
北朝鮮は8月29日早朝、北海道を越え太平洋に落下する射程2700キロの弾道ミサイル発射を強行した。地図上日本を越えるコースは、これが5回目。無通告発射としては2回目となる。そして、本日(9月3日)6回目の核実験を強行した。水爆だという。安倍ならずとも、断じて容認しえない。北朝鮮だけではなく、あらゆる国や勢力の軍事挑発にも、核実験にも断固として抗議しなければならない。
問題は、これにどう対処するかである。「圧力を強める」一辺倒で解決に至らぬことは目に見えている。とりわけ、石油禁輸による経済封鎖には不吉な臭いが漂う。現在の北朝鮮は、戦前の日本とそっくりだ。日本を国際的に孤立させる、ABCD包囲網による対日石油全面禁輸体制は1941年8月に完成した。その直後同年12月には日本は暴発して対米英の宣戦に踏み切った。「座して死を待つことはできない」というのが、開戦の言い分。
8月29日の「Jアラート」なるものも、戦前戦時を想起させる。バケツリレーでの空襲対応、竹槍での本土決戦などと精神構造は変わってないのだ。
8月31日付の赤旗に、丸山重威さんが、「どう考える 北朝鮮ミサイル問題と国民の不安」として寄稿している。取り上げられているのは桐生悠々。
「1933年(昭和8年)8月、陸軍は民間の防衛意識を涵養するため、「関東防空大演習」を実施した。大規模な空襲があった場合を想定してのことだった。信濃毎日新聞の桐生悠々は「関東防空大演習を嗤う」という論説で「敵機を関東の空に帝都の空に迎え撃つということは、我が軍の敗北そのもの」と書いた。」
桐生ならずとも、Jアラートには嗤わざるを得ない。「不安」を煽るだけの小道具でしかないのだ。
「ミサイルの時代に、しかも「核」が想定される時代に、ミサイルの撃ち合いが始まれば、勝者も敗者もない。「Jアラート」は、ミサイル攻撃があった場合、という「後ろ向き」の対策だ。日本政府は「圧力と対話」と言いながら、結局は、憲法9条違反の「武力による威嚇」に同調し、協力し、話し合いの道を閉ざしている。
しかし、善悪は別として、北朝鮮は、今のままでは、どう「圧力」をかけても、米国などと同様、核開発とミサイル開発はやめないだろう。」
とすれば、不愉快であろうとも、対話の路線を模索するしかない。米朝2国間対話でも、6カ国協議でも、対話の実現以外に打開策はない。
対立する当事者の一方だけが100%正義で、他方が悪などということはあり得ない。また、相手を全面的な邪悪と決めつけては、真摯な対話も交渉も成立し得ない。日韓併合以来の歴史を繙けば、北朝鮮側には大いに言い分のあることだろう。第二次大戦後の南北の分断と朝鮮戦争の経過に鑑みれば、北朝鮮に米国や国連に対する不信感あることはもっともだ。そして、最近の米韓、米日の合同軍事演習のエスカレートによる挑発も無視し得ない。
憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」の一文をあらためて確認しなければならない。ベトナム戦争、パナマ戦争、グラナダ侵略、湾岸戦争、アフガン・イラク侵攻等々の戦争を重ねてきた好戦国アメリカをも、「平和を愛する諸国」の一つとして、その公正と信義に信頼する度量が必要である。もちろん、北朝鮮にも同様の姿勢で臨まなくてはならない。
ようやく、アメリカに対して交渉の席に着くよう、国際世論の圧力が増しているように見える。ともかく、戦争を避けるための対話を重ねるしか、平和への道はないのだ。
トランプ政権は「今は対話の時ではない」と繰り返し、安倍政権もこれに追随している。トランプも安倍も、おそらくはホンネのところ、危機を打開しようという意思はない。トランプにしてみれば、北朝鮮危機はアメリカ産の武器を同盟国に売るチャンスだ。軍需産業が活気づけば、雇傭が増えて自分の支持者が納得する。その程度の認識だろう。
安倍も同じ穴のムジナ。北朝鮮危機を煽れば、たやすく防衛予算の増額が実現するだろう。うまくいけば、9条改憲の世論の喚起も期待できる。失政で危うくなった政治生命だが、タカ派の自分にとっては失地回復のチャンスとなりうる。
北朝鮮問題を危機を煽ることによる、防衛予算の増額や9条改憲の策動を警戒しなければならない。「北朝鮮に対抗して日本も核武装を」などは愚の骨頂。この事態を奇貨とする安倍政権の復権も許してはならない。
(2017年9月3日)