澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「9条の平和を壊す3文書 軍拡・増税で夜も眠れず」

(2022年12月18日)
八っつぁん「たいへんだ、たいへんだぁ。ご隠居、昼寝なんかしていられる場合かよ」
ご隠居「おや、八っつぁんか。まあ、落ち着け。いったいどうした」
八「どうしたもこうしたもあるもんか。落ちついてなんかいられない。政府は戦争おっぱじめる決意をしたそうじゃないか」
隠「ああ、なるほど。16日の安保3文書閣議決定のことだな」
八「そうそう。その3文書。まずは、うんと武器を揃えるぞ。そのため、軍事予算は倍増するぞ。さあ、戦争だ。てぇことじゃないのかね」
隠「そう言われると、なるほど、そのとおりかも知れんな」
八「そうかも知れんななんて。よくも変に落ちついてんだね」
隠「まずは、3文書よく中身を吟味しなけりゃならんな」
八「まだるっこいこと言ってやんなあ。でも教えて。3文書っていったい何だ」
隠「安保3文書は、(1)最上位の「国家安全保障戦略」、(2)「防衛目標」達成の手段を示す「国家防衛戦略」、(3)軍事費の総額や装備品数量を示す「防衛力整備計画」のこと。中身は、さっき八っつぁんが言ったとおりだね」
八「そんなたいへんなこと、勝手に決めていいもんかね」
隠「臨時国会が終わったのが10日。その後に、与党協議と自民党内の議論があっただけで国会審議はまったくない」
八「それじゃ、まだちゃんと決まったというわけじゃないんだ」
隠「そのとおりだ。議席数では与党の勢力が圧倒しているが、けっして世論がこの閣議決定を支持しているわけではない。頑張り次第だな」
八「戦争の危険てぇのが問題なんだが、何が一番危険なのかね」
隠「一言で言えば、『専守防衛』というこれまでの方針を転換して、『敵基地攻撃能力』をもつと明言したことだ」
八「『専守防衛』って、これまでも聞かされてきた。万が一、日本にどこかの国の軍隊が攻め込んできた場合にその侵略軍と闘うことだけはできるようにしておこう、ってことだよね。だから、敵国を攻撃するような武器の装備は必要ないってこと。ご隠居は、それにも反対していたんじゃなかったったっけ」
隠「そのとおり。そもそも憲法9条は、軍隊をもつことを禁止している。警察予備隊から、保安隊、自衛隊と成長してきた日本の軍事力は憲法違反というしかない。だがな、これまで政府は、専守防衛に徹するから自衛隊は違憲ではない、と言い続けてきた。この方針が大転換することになる」
八「今度は、敵基地を攻撃できるような強力な兵器をバンバン備えるってわけだ」
隠「中国や北朝鮮やロシアという国名を出してな。いざというときには、敵の基地を攻撃する能力を備えるという」
八「そんなことしたら、中国や北朝鮮やロシアも穏やかでない。対抗手段をとるに違いない」
隠「そのとおりだ。敵基地攻撃を実行に必要だとして、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークなど大量のミサイルを購入して配備することになる」
八「そうすりゃ、相手も、負けるものかと軍事力を増強することになる。すると日本も負けてはならないとなり、相手もまた、負けるものかと…。切りがない」
隠「それを、『安全保障のジレンマ』とか、『軍拡競争の悪循環』と言っている。そんなことにならないための平和憲法だったのに」
八「戦争の危険もだけど、軍拡にはカネがかかるよね」
隠「来年度から5年間の軍事予算を43兆円とすることになった。これはたいへんなことだ。その後は、軍事費をGDPの2%にするという。今の2倍だ。すると日本は世界3位の軍事大国になるということだ」
八「するってぇと大増税ってことですか。日本の経済は落ち目で、国の借金はベラボウな金額で、福祉も医療も教育も予算が不足だっていうじゃないですか。そんな日本が軍事費のための大増税ができるはずもない」
隠「軍拡はやむを得ないとする人たちも、増税は反対だな。早くも、毎日新聞が、17、18の両日全国世論調査をして、今日の夕方その結果を発表している」
八「世論調査ね。まずは、こんな閣議決定をしたことで、岸田内閣の支持率は上がったんですか。それとも下がったんですかね」
隠「見事に下がった。岸田内閣の支持率は25%で、11月19、20日の前回調査の31%から6ポイント下落し政権発足以降最低となった。しかも、不支持率は69%で前回(62%)より7ポイント増加。末期症状といってもよい」
八「次に気になるのは、大増税への賛否」
隠「防衛費増額の財源としての増税に「賛成」が23%で、「反対」の69%を大きく下回った。社会保障費などを削ることについては「賛成」が20%で、「反対」がなんと73%だ。そして国債発行は「賛成」33%、「反対」52%。」
八「岸田政権、ここに進退きわまったり」
隠「おや、随分と元気になったじゃないか」
八「まだ、大軍拡が決まったわけじゃない。何よりも平和が大切だよ。隣り合う国を敵国として軍備を張り合うなんて、愚の骨頂じゃないか」
隠「そのとおりだ。みんなで反対すれば、この軍拡は阻むことができる」
八「みんなに訴えよう。『たいへんだ、たいへんだぁ』じゃあなく、軍拡には『はんたいだ、はんたいだぁ』」
隠「軍事優先に反対して、子どもや年寄りを大切にしなけりゃのう。そうだ。年金切り下げて防衛費にまわすなんて絶対に許さん」

八「ところでご隠居、この噺にはオチがないね」
隠「あたりまえだ。オチついてなどおられるか」

本郷三丁目交差点で、「専守防衛」逸脱の大軍拡・大増税に抗議する。

(2022年12月13日)
 本郷三丁目交差点ご通行中の皆さま、とりわけ若い方々に訴えます。ご意見もお聞かせいただきたい。あなたは、命じられたら戦争に参加しますか。兵士となって戦場に行く覚悟がありますか。怨みのない人と命をかけた殺し合いもやむを得ないと思いますか。

 お父さんやお母さんの世代の方にも伺いたい。愛する子どもや家族を戦争に差し出しますか。ご親戚や友人、隣人ならどうですか。国を守るためなら戦争もやむを得ないと思いますか。誰かに、命をかけて国のために闘ってもらいたいと思いますか。

 政府・与党は今、大軍拡大増税に踏み切ろうとしています。軍拡って他人事ではありません。軍拡は武器だけでなく、たくさんの兵士を必要とします。あなただって、兵士として戦場に引っ張られるかも知れない。祖国の防衛のためなら、勇躍して任務に当たりますか。

 政権や右翼や扇動者は、平和を維持するためには抑止力が必要と言います。抑止力って、イザというときには反撃できる能力のことのようです。張り子の虎では抑止力にならない。イザというときには対等以上に戦闘する能力を備えるための軍備拡張。あなたは、イザというときの反撃のために兵士になることをやむを得ないと受け容れますか。

 臨時国会が10日に閉幕となりました。この国会では岸田内閣のタカ派的な姿勢は目立ちませんでした。ところが、国会が終わってそのくびきから脱したとたんに、事態は様変わりしました。昨日、安保3文書の与党内合意が成立したことが公表されました。本日の各紙朝刊が、その骨子を報道しています。これが16日に閣議決定される予定ということです。

 恐るべき事態と言わねばなりません。歴代政権が憲法違反だとしてきた敵基地攻撃能力の保有が明記されることになります。米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークが導入されます。来年23年度から27年度までの5年間で、防衛予算は総額43兆円に膨れあがります。大軍拡に伴う大増税を覚悟せよというのです。そのうえで、大軍拡のとばっちりを受けて、教育や福祉の予算は削らざるを得ないことになります。「軍事栄えて民痩せる」という時代がやってきます。本当にこれでよいのでしょうか。

 なによりも、軍拡は兵士を必要とします。あなたは兵士として、命をかけて闘う覚悟がありますか。大切な人を、お国のために差し出す覚悟がありますか。

 12月です。太平洋戦争の開戦を思い起こさねばなりません。1941年12月8日の天皇の「詔勅」は、こう言っています。
 「日本は平和を望み、長い間忍耐を重ねてきたが、米も英も少しも互譲の精神がなく、ますます経済上・軍事上の脅威を増大し続け、それによって我が国を屈服させようとしている。このような事態が続けば、アジアの平和を願っての我が国の努力はことごとく水の泡となり、帝国の存立もまさに危機に瀕している。今や自存と自衛のため、決然と立ち上がって一切の障害を破砕する以外にない。」

 今また、同じ轍を踏みかねません。かつては、日本は正義の国で、英・米・蘭・ソ・中などは、どれも日本を敵視する不正義の国。ドイツやイタリアと同盟して、これと闘わねばならないとしました。あの頃とは、敵国・味方国が変わっていますが基本は変わりません。かつてヒトラーのドイツと結んだ日本は、今、アメリカと同盟しています。主たる敵が中国であることは隠そうともしません。中国の脅威に備えて軍備を拡大し、軍拡増税をしようというのです。

 77年前の敗戦のあと、日本国民は再びの戦争という過ちを犯してはならないと、深く強く決意しました。その決意の根本には、平和は武装することによって得られるものではない。近隣諸国との軍備拡大の競争という愚かなことはしない。それが日本国憲法9条に結実しました。

 あの戦争の反省には、まったく異なる二通りがありました。一つは、戦争に負けたことを反省しようというのです。今度は、精強な大軍事力を作って、米英にも、中国にも負けない大軍事国家を建設しようという反省の仕方。これは、ほんの一握りの戦争指導者の立場。圧倒的な国民は、戦争そのものを反省しました。どんな理由があろうとも、けっして再び戦争をしてはならない。

 その国民の意思を結実した憲法9条が次第に影を薄くし、いま自衛隊という軍事力が存在感を増すにいたっています。それでも、憲法9条とそれを支える世論があるから、敵基地を攻撃するような武器は持てないとしてきたのです。

 今回の安保3文書は、かろうじて9条の効果としての「専守防衛」路線を事実上放棄すること。敵国の軍事力には、我が国の軍事力を対抗することで、平和を守ろうという路線への転換にほかなりません。明文改憲ないままに、事実上の「壊憲」が行われようとしています。このままでは、9条は空文に帰しとめどない軍拡の悪循環に巻き込まれかねません。慌てず、騒がず、浮き足立つことなく、落ちついて、戦争のない国際社会を作る努力をしようではありませんか。

 [プラスター]★敵基地攻撃能力、戦争への道。★軍拡大増税、くらしはカツカツ大赤字。★穏やかな声優しそうな顔で、憲法9条を壊してゆく岸田政権。★人類の理想、戦争放棄の9条。★トンデモない 軍拡大増税。★浮き足立つな落ち着こう、反対しよう戦争への道。★9条の会、迷わず平和路線。★トマホーク、ハイマースもオスプレイもいらない、憲法9条と国連強化。

澤藤統一郎の憲法日記 © 2022. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.