前川さん 負けるな 民意はここにあり
昨日(3月20日)の毎日朝刊トップ記事は衝撃だった。
「文部科学省が前川喜平・前事務次官の授業内容を報告するよう名古屋市教育委員会に求める前、文科省に照会したのは自民党文科部会長代理の池田佳隆衆院議員(比例東海)で、市教委への質問項目の添削もしていたことが取材で明らかになった。文科部会長を務める赤池誠章参院議員(比例代表)が文科省に照会していたことも判明した。」
これは問題が大きい。これまでは、「文科省の不祥事」だった。これで一気に、「政権与党と安倍政権の体質露呈事件」となった。この池田佳隆。安倍政権を支える安倍チルドレンの一人だという。
この露骨な教育への権力的介入に、野党が合同ヒアリングでスクラムを崩さない。前川さんを招いた中学校長、地元名古屋市教委も原則を貫いて清々しい。中日新聞もよく頑張っている。
そしても何よりも、前川さんご本人の姿勢が頼もしい。
「文部科学省の前川喜平・前事務次官は21日、長野市内で講演。自民党国会議員の指摘を受けて文科省が自身の授業内容を名古屋市教委にメールで報告を求めた問題について「メールは、威嚇効果を狙ったともとれる内容で前代未聞だ。『政治家が関与しているのでは』と思ったら、やはりそうだった。文科省も情けない。断れなかったとしても、うまくかわすべきだった」と述べた。」(毎日)
かつては「面従腹背」だったという前川さんだが、いまは政権と自民党を相手に、一歩も引かない姿勢が小気味よい。しかも、悲壮感なく、大言壮語せず、落ちついて誰もが納得せざるを得ない原則論を語るところが素晴らしい。
前川コメントの中で、「『政治家が関与しているのでは』と思ったら、やはりそうだった」という点が印象的だ。元事務次官の長い官僚経験が、(「官僚だけでやれることではない」)「政治家が関与しているのでは」との判断に至らせたのだ。背後関係発覚後の「やはりそうだった」という、この「やはり」が重い。
ひるがえって、森友問題が同じ構図である。こちらは、財務省理財局の国有地9割引不当廉売だから、文科省のメールよりは格段にその違法が分かり易い。この極端な値引きが違法であるだけでなく、その決裁関連文書の書き換えがこれに輪をかけた重大な違法である。国民誰もが、「官僚だけでやれることではない」「官邸か有力政治家が関与しているにちがいない」と思っているのだが、いまだにスッキリと「やはりそうだった」と言えないもどかしさが残っている。
また、前事務次官が「メールは、威嚇効果を狙った(ともとれる)内容」と言っていることを噛みしめなければならない。
「命令も禁止もしていない」「質問しただけだ」「何の問題もない」は、失当も甚だしい。権力をもつ者と、権力に従わざるを得ない弱い立場にあるものとの関係で問題は生じる。権力者の意向を忖度して、その意向のとおりに動かざるを得ないのが、弱い立場にあるということである。権力をもつ者が、含意のある質問をしただけで、命令や禁止の効果を持つことは当然なのだ。これが権力の側から見た威嚇効果であり、弱い立場にある者の萎縮効果である。
この不当な政治介入は自民党文科部会の組織的な教育内容への「不当な支配」である点で深刻な問題である。しかも、文科省メールで誹謗された前事務次官は、安倍首相の腹心の友が理事長を務める学校法人加計学園の獣医学部新設に関して、「国家戦略特区での学部新設を認める過程で行政がゆがめられた」と明言した人物である。
衆目の一致するところ、これは政権の腹いせとしての「見せしめ」を、文科省のメールで行っているということなのだ。これも、安倍政権とこれを支える与党の質の低下を示して余りある事件だと言ってよい。
前川さん、政権に負けるな。自民党に負けるな。不正に負けるな。教育の何たるかを知らない野蛮な行為に負けるな。真っ当な教育行政回復のために、負けてはならない。
今、野党は一丸となって前川さん、あなたを応援している。メディアもそうだ。そして何よりも、民意があなたを支えている。これで、内閣支持率は、さらに確実に低下する。目指せ支持率20%。
(2018年3月21日)
不当な支配