ダウと日経平均に大型のクリスマスプレゼント
クリスマスである。私自身はキリストに対する信仰とは縁もゆかりもなく、キリストの誕生を祝う気持は皆無である。釈迦やマホメットや天皇の誕生を祝う気持がないのと変わらない。
ところがこの社会には、クリスマス文化が定着している。クリスチャンならざる人々が、クリスマスソングを唱い、クリスマスツリーを飾って、クリスマギフトを交換する。同じ人が、大晦日には寺に参詣して除夜の鐘を撞き、明けては神社に初詣をする。すべてが信仰とは無縁。これが文化と割り切ってのこと。そして、商業主義がしっかりとこのシンクレティズムを支えている。
信仰心なき輩が購入するクリスマスプレゼント。その経済効果は小さくない。社会全体がクリスマスセールやクリスマスパーティによるクリスマス景気で、つかの間の活況に沸くことになる。その意味では社会が、クリスマスプレゼントをもらうのだ。
ところが、今年のクリスマスプレゼントは、皮肉なものとなった。つかの間の経済活況に沸くどころか、大幅株安の打撃である。イブの24日、ニューヨークダウが653ドル下げて21,792ドルで引けた。続いて本日(25日)、東証日経平均が連休前終値の20,166円から1010円値下がりして、大台の2万円を割った19,155円で引けた。実に、一日にして5%を超える下げ幅。特大級のクリスマスプレゼント。
株が上がるたびに手柄顔をしてきたトランプには、ずっしり重いプレゼント。例のごとく、慌てふためいて株価下落の犯人捜しだ。商務長官あたりの首を斬ろうとしているとか。
東証は深刻な様相だ。「平均株価の値下がりは5営業日連続で、1年8カ月ぶりの安値を付けた。市場関係者によると、直近の高値からの下落率は2割を超え、悲観的な見方が優勢になる『弱気相場』入りした。」(共同)
明日の相場がどうなるかは誰にも読めない。しかし、公共資金を湯水のごとく注ぎ込んで支えていた「アベノミクス相場」の崩壊を思わせる。国民生活を支えるはずの原資をバクチにまわして、「スッてしまった」では、腹を切っても治まるまい。
別の話。12月上旬のころ、某有名証券会社からのセールス電話を受けた。爽やかで自信にみちた女性の声が、「あなたの資産運用に絶好のチャンス」という。例の携帯会社「ソフトバンク」株式の新規公開に伴うセールスだった。
「NTTの株式公開以来の話題でございましょう」「たいへんな人気なんですよ」「あのとき以来のチャンスです」とのたまう。普段なら電話を切ってしまうところだが、おもむろに聞いてみた。「で、私がその新規上場株を買っておけば、必ず儲かるということでしょうか」。セールストークの滑らかさが、少し言い淀んだ口調になった。「必ず儲かるとは言えません。でも、このような大型の株式公開では、これまではほとんどが順調に推移しています」という。「やっぱり、必ず儲かるという話しではないんですね。大事なお金。バクチにはまわせませんね」「だいたい、ソフトバンクなんて会社を育てようなどとは思わない。」
ここで腰折れしていては、セールスはできない。投資勧誘とは、人に不幸を押しつけることを厭わないのが真骨頂。「リスクがないとは言いませんが、利益の出る可能性は高いんですよ。銀行預金にしておいたところで、微々たる利息でしょう」「リスクがある投資よりは、タンス預金の方がマシだと思ってますから」「ではお客様。利は薄くてもリスクのない債権の購入をお勧めしたいと思いますが、いかがでしょうか」 なるほど、立派なもんだ。
12月19日、発行価格1500円での新規上場は、初値が1463円と発行価格に満たず、その日の終値は1282円と15%も下回る低調な出だしとなった。うっかりセールストークに乗せられなくて正解だった。公開されたソフトバンク株、本日(12月25日)も順調に値を下げて終値は、1271円である。
相場は政策的につくられ得る。しかし、いつまでもは続かない。最終的には、株は誰もの思惑を裏切ることになる。悪評さくさくのアベ政権だが、株高に支えられてきた。この株高の終焉は、政権の終焉にもつながる。明日の東証がどうなるか、政権の未来をも占うものとして関心をもたざるをえない。
この株安。ならず者トランプや、嘘つきアベの政治生命の終焉につながれば、その点は本物のクリスマスプレゼントになるのだが。
(2018年12月25日)