「特定秘密保護法」政府原案
9月26日、自民党の特定秘密保護法案に関するプロジェクトチーム(PT)の会合で、政府は自民党に同法の政府原案を示した。
http://www.asahi.com/politics/update/0927/TKY201309270036.html
7章25か条の法律案の形になっている。格別の支障がない限り、この原案が閣法として政府提案される公算が高い。
9月3日に発表された「概要」と内容は変わらないが、法律案となっているので分かりやすく、また生々しい。第5章「適性評価」など、条文を読むだに気分が悪くなる代物。
「第七章 罰則」(21条?25条)の一部についてだけ、紹介しておきたい。
21条 1項 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
2項 第9条又は第10条の規定により提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、5年以下の懲役に処し、又は情状により5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3項 前2項の罪の未遂は、罰する。
4項 過失により第1項の罪を犯した者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
5項 過失により第2項の罪を犯した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
21条1項の犯罪主体は、「特定秘密の取扱いの業務に従事する者」である。公務員に限らない。この「業務に従事する者」が、その業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、最高刑で懲役10年に処せられる。同条2項は、特別の必要あって秘密の提供を受けた者(たとえば、国会議員・裁判官など)が、これを漏らせば最高懲役5年となる。両者とも未遂も過失も処罰される。
第22条 1項 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前2項の規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。
22条は、一定の手段で特定秘密を取得することが、最高刑懲役10年とされている。一定の手段とは、強取、喝取、窃取、詐取など、違法性の強い者に限定されていない。「特定秘密を保有する者の管理を害する行為により」というのだから、ほとんど無限定に等しい。その未遂罪も罰せられる。これは極めて危険だ。記者の活動は著しい制約を受ける。言論界が、こぞって反対しないとたいへんなことになる。
第23条 1項 第21条第1項又は前条第1項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は扇動した者は、5年以下の懲役に処する。
2項 第21条第2項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は扇動した者は、3年以下の懲役に処する。
「特定秘密の取扱いの業務に従事する者」の秘密漏示行為を教唆・煽動したものは最高刑5年の懲役である。教唆・煽動の行為の定型性は緩い。何が教唆・煽動にあたるか、思いがけないことになりかねない。「特別の必要あって秘密の提供を受けた者」への秘密漏示の教唆・煽動も3年の刑となる。
何が秘密かはヒミツである。逮捕されるまで国民には分からない。まさしく、「特定秘密」は埋め込まれ隠された地雷である。地雷を踏んだ記者が直接の生け贄とされるが、地雷敷設による真の被害者は、知る権利を侵害される国民である。
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『パブコメはどう生かされるのか』
なお、内閣官房は同日、同法案の概要に対するパブリックコメントの実施結果を明らかにした。今月3日から17日までの15日間に94000件のコメントが寄せられ、そのうち反対が77%を占め、賛成は13%に過ぎなかったという。
反対意見は「原発問題やTPP(環太平洋連携協定)交渉など重要な情報を知ることができなくなる」「特定秘密の範囲が広範かつ不明確」「取材行為を萎縮させる」など、国民の知る権利や報道の自由を懸念する内容がほとんど。賛成意見は、「スパイを取り締まれる状況にしてほしい」「安全保障のため秘密を守ることは必要」などというもの。
この件数について、東京新聞は、「意見公募は、政府が法案を閣議決定する前などに、国民の意見を聞く制度。意見が数件しか寄せられないケースも多く、九万件は異例だ。今回の募集期間が、一般的である30日の半分しかない15日だったことを考えれば、国民が強く懸念している実態を示したといえる」と論評している。
ところが、自民党の側はそのような評価ではない。町村信孝PT座長は、反対意見が圧倒的に多かったことについて、「多くの人が心配しているのは分かった。ただ、賛成多数だった各種メディアの世論調査と違う結果で、一定の組織的コメントする人々がいたと推測できる」と記者団に述べた(毎日)という。
いったい何のためのパブコメなのだ。件数が少なければ、あるいは賛成意見が多ければ、「これが世論だ」と飛びつき、思うとおりのパブコメではないとなると、「世論調査と違う」「組織的なコメントだ」と開き直る。これではパブコメ募集の意味がない。パブコメはどう生かされるのか、問い質さなくてはならない。
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「アシダカグモ」のこと
日本には1000種、世界には30000種のクモがいるという。ジョロウグモのように、網を張って獲物を捕る「造網性」のクモと、「徘徊性」のクモの2種類に分類される。
「徘徊性」のクモでひとめお目にかかりたいクモがいる。「アシダカグモ」だ。クモは節足動物だから、(写真で)よく見ると「カニ」とよく似ている。「アシダカグモ」は見方によっては長い8本の足を持った「タカアシガニ」に似ているかもしれない。いや、足を縮めると、毛が生えた8本の足にいっぱい身のつまった「ケガニ」にそっくりだ。
足を伸ばしたサイズはちょうど大人の掌くらい。ちょっとグロテスクだけど、漫画やイラストでとても人気がある。
このクモ、ただグロなだけじゃなくて、大変な働き者。夜間に徘徊し、ゴキブリを捕殺する益虫だ。ゴキブリを見ると、目にもとまらぬ早業で、8本の足で抱え込み、消化液を注入して、ゴキブリの体内を液体化して食し、身体の外側の固い部分を粉々にして、小さなラグビーボールのようにまるめて、ポイと捨てるそうだ。一晩に25匹のワモンゴキブリを捕殺したという記録がある。昆虫だけではなくて、トノサマガエルやカヤネズミを餌食にしている写真さえある。どうです、すごいでしょう。
アシダカグモは夜間にしか出てこない。消化液には殺菌効果があり、身ぎれいに毛繕いをして清潔である。室内を歩き回ったり、食物の上を這い回ったりしない。人を噛んだりはしない。長生きで清潔でおとなしくて、世話いらず。飼っていれば、ゴキブリやハエは一匹もいなくなる。メスは13回、オスは9回の脱皮をしておおきくなる。そして、長生きだ。オスは5年、メスは平均7年も長生きをする。
日本の生息域は温暖な関東以南の太平洋側だ。たいして珍しいクモでもなく、ゴキブリのいるところなら住み着くようだ。こんなにゴキブリに強いなら、「ごきぶりホイホイの代わりに、2,3匹飼いましょう」とならないのはなぜか。
分かりきったことだ。やはり、ゴキブリ以上にクモ、とくに大きなクモには虫酸が走るという人が多いということが理由。いくら益虫だと説明しても、「イヤなものはイヤ」ということ。へたをすれば、ゴキブリの代わりにたたき殺されてしまう。
夜な夜なこんなでかいクモがキッチンを這い回って、寝ぼけ眼で起きてきたら、青い目で睨まれた。たしかに、こうした遭遇に耐えられる人は少ない。実をいって、わたしも、もう今となっては「アシダカグモ」にお目にかからなくてもいい気分になっている。
(2013年9月30日)