堺市長戦の共闘に学ぶ
注目の堺市長戦は、投票締切と同時に「竹山候補当確」となった。票差がどのくらいのものかはよく分からないが、「竹山圧勝」「維新惨敗」で間違いなさそう。明日の朝刊には、「橋下不敗神話崩れる」などの見出しが躍ることになる。
最大の争点と影響が「大阪都構想問題」なのではない。実は、「維新の会」という危険な存在の勢いが、増長するのか失速するのか、それこそが最大の争点であった。その選挙で、維新の凋落が決定的になった。
この結果をもたらしたのは、反維新の各党各勢力の共闘である。共産党は、自民と組んでまでして反維新を貫き成功させた。国共合作を彷彿とさせる。中国共産党は、蒋介石の国民党と組んでまでして、日本軍の侵略と戦った。これに比肩すべき、「自共共闘」。但し、この「自」は「安倍自民」ではなく、「自民府連」であることの意味は小さくない。
堺の各政党の勢力は、7月の参院選比例代表の得票数で自民8万1103票、民主2万4793票、共産4万1720票。3党を合計すれば、維新の10万856票を遙かに凌駕する。そして、党派別市議数は、公明12、維新10、ソレイユ堺(民主)10、共産8、自民7である。
共産党単独では首長選に勝ち目はない。さりとて、常に独自の候補を立てて存在感をアピールし、選挙ごとに影響力を拡大していくのが、政党本来の在り方。数合わせで共闘を考えてはならない。問題は、維新を、侵略外国軍と同等の敵と規定できるかどうかにある。これまでの、維新橋下の大阪府政、大阪市政を見ていれば、その凶暴ぶり、危険さは侵略外国軍並みと言ってよい。共闘は理念においても、現実的な政治選択としても正しかったとえるだろう。
珍しく、共産党がネットで選挙総括の市田書記長談話を発表している。
その中で「今回の勝利は、‥『構造改革』の推進、憲法改悪など自民党よりさらに『右翼』的立場にたつ『維新』への都議選、参院選につづく審判でもあり、今回の結果はきわめて大きな意義をもつものです」と言っている。
維新側は、竹山陣営に共産が加わっていることについての批判を前面に打ち出した。
橋下は、「竹山さんはある意味、共産党の市長なんです」。「共産党軍団が『堺はなくなる』と言う。堺なくなる詐欺だ」と与野党相乗り支援を批判し、共産をことさらに標的にした。維新の体質をよく表している。しかし、反共攻撃が成功しなかったことの意味は大きい。いまや、反共攻撃の効果は期待しがたい。むしろ、非理性的な反共体質の露呈は、逆効果でさえある。
維新関係者の不祥事続出が維新凋落の必然を象徴している。振り返れば、昨年暮れの総選挙が維新のピークだった。今年6月の都議選が終わりの始まり。7月参院選は終わりの始まりの確認。そして、今回が凋落への本格的第一歩なのだろう。
安倍は自らを「右翼」と呼べと言った。維新は、「極右」といってよい。また、極端な新自由主義、反人権主義、そしてその政治手法の凶暴性において際立っている。自民と共闘しても抑え込まねばならない政治勢力であって、本日の選挙結果はまことに喜ばしい。
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『キイロスズメバチの巣』
ジョロウグモの巣がキラキラ光る朝露で飾られると、秋がきたと思う。どうやって張るのか驚くほど大きなネットがあちこちに張り巡らされる。意外に強いその糸が行く手をさえぎって、おちおち歩けない。巣の真ん中には赤と黄色の派手な衣装をまとった、歌舞伎役者のような雌グモがにらみをきかせている。冬の寒さがくる前に、獲物をたくさん捕らえて力をつけて、旅する雄グモと交接し、卵を産まなければならない。卵嚢には1000個もの卵が包まれ、それを守る母グモは衰え死んでも、来年の春には子グモがふ化する。暖かくなる頃には、子どもたちは文字通り、クモの子を散らしたように広い世界に散らばってゆく。
生命の営みを活発化するクモにひきかえ、この時期スズメバチの活動は静かになる。
我が家の2階の軒下がよほど気に入ったとみえて、キイロスズメバチが3年連続で巣をかけた。はじめの2年は、早めに役所の環境課の職員に巣を撤去してもらったが、毎年お願いするのは気が引けた。今年はどのくらい大きくなるのか見届けてやろうという興味もあって、放置したのが間違いのもと。5月の初め頃、女王バチがひとりで巣作りしていたうちは遅々として進まなかった。しかし、夏の盛りに働きバチが殖えると、唸り声がきこえるほど密集して、見るも恐ろしい状態になり、ただ唖然として見守るしかなかった。みるみるうちに巣は両手で抱えきれないほどの大きさになってしまった。後悔先に立たずである。
しかし、気温が低くなるにつれて、飛び回るハチの数は目に見えて減ってきた。それを見透かしたかのように、まわりにクモの巣が張られた。今朝はその細い糸に一匹のスズメバチがかかってしまった。目先を飛び回る仲間のハチはまったく無関心で、助けようとするそぶりも見せない。ジョロウグモの方も恐ろしいのか近づかない。当然、蹴破って逃げるに違いないと思っていたけれど、午後にはスズメバチは静かになってしまった。凋落を象徴する事件だ。
また気温が上がれば、スズメバチもしばらく勢力挽回するだろうが、いずれ新女王バチが選ばれて、古い巣は見捨てられてしまう。新女王は枯れ葉の下で受精卵を腹に抱えて、またくる春の栄華を夢見て、寒さの冬を眠って過ごす。
地方によってはスズメバチが家に巣作りすることを、縁起がいいこととして喜ぶところもあるそうだ。冬になったら、巣を取り外して窓辺にでも飾って、「分限者バチ」にあやかろうか。今年は何とかおっかなびっくりスズメバチと共生できた。 さて来年はどうしよう。放っておけば、来年の巣はどこまで大きくなるのだろうか。興味津々だが、思案のしどころである。
(2013年9月29日)