澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

風が変わりはじめた?特定秘密保護法案に反対の世論調査結果

自信をもとう。風向きの変化を感じる。ようやく、特定秘密保護法案を批判する世論の風が吹き始めた。

先日、大新聞の元記者と雑談を交わす機会があった。「今の新聞社の内部の雰囲気が、国家秘密法に社をあげて反対した当時とはずいぶん違ってますね」とおっしゃる。「じゃあ、今回は負けいくさですか」と聞くと、「それは外の運動の盛り上がりしだいですよ」とのこと。「新聞は社会の木鐸をもって任じておられるじゃないですか。言論封殺の特定秘密保護法には真っ先に反対とはならないんですか」と再度問うと、「社内のみんな、反対と思ってはいるけれども、思いきって記事が書ける雰囲気にはなっていない」「外が盛りあがれば、新聞も書けるんです」と言われる。言外に、反対運動の盛り上がりが今ひとつではないか、ということのようだ。

この会話。必ずしも悲観的というばかりでもない。「市民の運動が盛りあがればメディアも動ける。メディアが動けば、大きく世論を変えることもできる」ということでもあるのだから。プラスの循環が始まれば、政権を追い詰めることができようというもの。なに、実は安倍政権の支持基盤が脆弱なことは政権自体がよくご存じのとおりだ。世論を甘く見て暴走すれば、政権の命取りになりかねない。議席数を数えるだけでは、法案の成否は分からない。与党に、「無理押しすると、政権がもたなくなるかも」という危惧を抱かせるだけの世論の形成ができるかどうか、それが勝負の分かれ目だ。

今朝の共同配信記事が、「秘密保護法、世論調査では過半数が反対」というもの。これは、大事件だ。このところ、各紙の社説がかなり変わってきている。ここ数日、どこの集会でも特定秘密保護法に反対する声を聞くようにもなった。96条先行改憲論に反対世論が盛りあがったあのときのような、「春二番」を感じる。良い循環の歯車が回り始めたのではないか。

「共同通信社が26、27両日に実施した全国電話世論調査によると、政府が今国会に提出した特定秘密保護法案に反対が50・6%と半数を超えた。賛成は35・9%だった。慎重審議を求める意見は82・7%を占め、今国会で成立させるべきだとする12・9%を上回った。機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案には国による情報統制が強まるとの批判がある。政府、与党は今国会での成立を目指しているが、調査結果は世論の根強い懸念を鮮明にした。」というのが記事の内容。
 
さらに、この調査結果の解説が立派なものものだ。
「共同通信社の世論調査で特定秘密保護法案に反対が半数を超えたのは、国民の『知る権利』が大幅に制約されかねないという国民の疑念を反映した結果だ。政府は『米国などとの情報共有には秘密保全のための法整備が不可欠』との立場だが、世論の理解が進んだとは言い難い。
今国会での成立にこだわらず、慎重な国会審議を求める声も82・7%に達した。与党は11月上旬に審議入りし中旬までに衆院を通過させたい考えだが、数の力に頼った『成立ありき』の国会運営は慎み、議論を尽くすべきだ。
『特定秘密』の指定は第三者のチェックを受けず、政府が 恣意的な運用をする懸念は消えない。特定秘密は30年を超える場合でも内閣の承認があれば延長可能で、政策決定過程が「歴史の闇」に葬られて検証できない恐れもある。
数々の問題が指摘される法案であるにもかかわらず、安倍晋三首相は所信表明演説で特定秘密保護法案に明示的に触れなかった。政府は国民が抱える不安を直視し、疑問に答えるべきだ」

元記者氏のおっしゃる「外の運動の盛り上がり」が既にできつつあるのではないか。なるほど、この世論調査の結果あればこそ、このような解説を書くことができる。

私見では、自民党の町村信孝さん(この問題の自民党プロジェクトチーム座長)の発言がジャーナリストのプライドを大いに刺激して、反対運動に大きな役割を果たしたのだとおもう。彼は、10月19日テレビでこう言った。「まっとうな取材をしている記者は法律の適用外だ。逮捕されることはない」。この発言、まっとうな記者には、「政府がまっとうと認める限りの取材なら記者の逮捕はしない」「政権がまっとうと認める範囲での取材をしておくのが身のためですよ」と聞こえたはず。まっとうなジャーナリスト魂をいたく傷つけ、果敢にたたかう筆をとらせたのだ、と思う。

以前当ブログに掲載したが、特定秘密保護法の賛否を問う世論調査は惨憺たる結果だった。国民にこの問題の本質が分かりにくいことがその原因。意識的な世論への働きかけなしには、自然に反対世論が盛りあがることはない。

これまでの世論調査結果についての当ブログの記事を再掲する。
時事通信が9月6?9日に行った世論調査で、「機密情報を漏えいした国家公務員らの罰則を強化する特定秘密保全法案」について賛否を聞いたところ、「『必要だと思う』と答えた人は63.4%、『必要ないと思う』は23.7%だった」という。

さらに、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が9月14?15両日に実施した合同世論調査では、「機密を漏らした公務員への罰則強化を盛り込んだ『特定秘密保護法案』について、必要だとしたのは83.6%、必要だと思わないが10.4%だった」という。

本日(10月4日)の「毎日」に、10月1?2日実施の新たな世論調査の結果が発表されている。これが、見出しを付けるとすれば、「特定秘密保護法必要の世論 6割に近く」として不正確とは言えない内容。産経の83.6%はさすがに眉唾としても、毎日の「必要だ」は57%、「必要でない」は15%に過ぎない。毎日の社会的信頼度を考慮すれば無視しえない。

時系列に、時事→産経→毎日⇒共同 の調査結果の推移を単純に比較してみよう。
 反対 24%→10%→15%⇒51%
 賛成 63%→84%→57%⇒36%

この推移は劇的な変化と言って良い。しかも、今国会で成立させるべきだとする「安倍追随世論」は13%に過ぎず、反対世論が83%を占めていることの意味は限りなく重い。同時に行われた内閣支持率、自民党支持率とも、着実に低下をしてもいる。

思い起こそう。「特定秘密保護法案の概要に対するパブリックコメント募集に対して、9月3日から17日までの15日間に94000件の意見が寄せられ、そのうち反対が77%を占め、賛成は13%に過ぎなかった」のだ。

自信をもって、世論の喚起に務めよう。できる限りの自分の周囲に法案の危険性を知らせよう。この法案、きっと潰せる。
(2013年10月28日)

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Published in 月曜日, 10月 28th, 2013, at 23:54, and filed under 未分類.

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