首相会見がシナリオに沿った「台本営発表」では知る権利に応えられない。
松尾貴史が、絶好調である。日曜日の朝は、毎日新聞の「松尾貴史のちょっと違和感」が楽しみ。3月8日は「首相会見打ち切り、自宅直帰のワケ 聞かれてなぜ、うろたえる?」というタイトル。分かり易く、面白くて、ためになる。
ついでながら、これに比較して、月曜日の西原理恵子「りえさん手帳」がまったくつまらない。貴重な紙面の無駄だ。最近は、月曜日のこの乱暴な絵には目を背ける。ヘイト派の片割れとなり果てては、表現者はお終いなのだ。こんなものの連載を続けている毎日新聞の見識を疑う。
さて、3月8日の松尾貴史コラム。毎日新聞を読んでいない人のために、一部を引用しておきたい。
蓮舫氏は、安倍氏がコロナウイルス問題について「会見」と称して開いた「演説会」で、記者からの質問に対する答えも用意された原稿を読む形ですすめ、まだ質問があると手をあげる記者もいる中、とっとと終えて、忙しいのかと思いきや自宅に直帰した件でもただした。
「ジャーナリストの江川紹子さんが、『まだ質問があります』と挙手しました。なぜ答えなかったんですか」という質問に、安倍総理が「あの、これはですね、あのー、あらかじめ、えー、ま、記者あー、クラブとですね、あの、おー。ま、広報室側で、えー、あの、ある程度の、え、打ち合わせをしていると、おー、いうふうに聞いているところでございますが、ま、時間の関係で、えー、時間の関係で、ですね、あのー、お、お、おー、うちらせ(打ち切らせて?)、えー、いただいた、とまあ、こういうことでございます」としどろもどろ。何をそんなにうろたえているのか。いつもは、ことに女性議員には居丈高になる安倍氏だが、支持率が下がっているせいなのか、意外と言葉だけは低姿勢の印象だ。
そこで蓮舫氏が「いや、36分間の会見終わって、そのあとすぐ帰宅しています。そんなに急いで帰りたかったんですか」と聞くと、安倍氏は「あの、えー、いつも、えー、この、おー、総理……会見、においてはですね、ある程度の、おーこの、えーやり取り、や、やり取りについて、え、あらかじめ質問を、頂いている、ところでございますが、えー、その中で、誰に、えーこの、お答えをさしていただくか、ということについては、ですね、司会を務める、えー、広報官の方で、責任もって、対応をしているところで、えー、あります」。
もう、わらうしかない。毎度のことながら、「急いで帰りたかったのか」という聞かれたことには一切答えなかった。
とうとう蓮舫氏に、「いや会見でね、総理はね、『さまざまなご意見、ご批判、総理大臣として、そうした声に真摯(しんし)に耳を傾けるのは当然だ』と。だったら、広報官を止めて、遮らないで、会見をもっと続けて、江川さんやみんなの声に応えると、何で自らそこでリーダーシップを発揮しなかったんですか」とピシャリとやられていた。
どうだろう、日本国のトップとしてこの体たらくは。これはコント台本ではない。
沖縄タイムスが、この首相記者会見のやり方を「台本営発表」と表現した。なるほどうまいものだ。この首相記者会見をきっかけに、事前にやり取りが決められた総理大臣の会見の在り方を変えるための署名活動が始まっている。呼びかけたのは新聞労連の南彰委員長。署名はオンラインで集めるもので、当初の予定だった1万を遙かに超えて3万余となっている。。
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十分な時間を確保したオープンな「首相記者会見」を求めます!
発信者:日本マスコミ文化情報労組会議 宛先:内閣総理大臣 安倍晋三(内閣総理大臣)
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の全国一斉臨時休校を打ち出した安倍晋三首相が2月29日、記者会見をしました。
安倍首相は「国民の皆さんのご理解とご協力が欠かせません」と訴えましたが、質疑に入ってからも事前に用意した原稿を読み上げるばかり。「なぜ全国一律の対応が必要と判断したのか」「ひとり親や共働きの家庭はどうすればいいのか」などについて十分な説明はありませんでした。約35分間のうち約19分間を一方的な冒頭発言に費やし、まだ質問を求めている人がいるにもかかわらず、官邸側はわずか5問で一方的に「終了」を宣言。説明責任を果たさぬまま、安倍首相は私邸に帰宅しました。立ち去ろうとする安倍首相に対し、「まだ質問があります」「最初の質問にもちゃんと答えられていません」とフリージャーナリストの江川紹子さんが上げた声は、国民・市民の率直な声です。
しかも、2月29日の会見で述べた内容すら揺らいでいます。2日後の3月2日の国会答弁では、「直接、専門家の意見をうかがったものではない」と一斉休校要請が明確な科学的根拠に基づく判断ではないことが明らかになりました。
ウイルス対策は重要ですが、生活や経済が破綻したり、市民的自由が奪われたりするリスクも考慮しなければなりません。多大な影響、痛みが生じる政策決定の根拠や効果、デメリットを抑える具体的な対策について、国民・市民にわかりやすく説明し、納得を得る必要があります。早期に日本記者クラブを活用して、再質問も行える十分な質疑時間を確保し、雑誌やネットメディア、フリージャーナリストも含めた質問権を保障した首相記者会見を行うよう求めます。
政府と同時に、内閣記者会(官邸記者クラブ)に所属している報道機関にも要請します。
現在の首相記者会見は、内閣広報官が質疑を取り仕切り、不十分な答弁に対しても再質問ができない慣例になっています。安倍首相が3月2日の参院予算委員会で、「いつも総理会見においては、ある程度のやり取りについて、あらかじめ質問をいただいている。その中で、誰にお答えさせていただくかということは、司会を務める(内閣)広報官の方で責任を持って対応している」と事前質問通告や官邸側の仕切りを公然と認める状態になっています。このことは、「運営などが公的機関の一方的判断によって左右されてしまう危険性」を指摘し、「当局側出席者、時期、場所、時間、回数など会見の運営に主導的にかかわり、情報公開を働きかける記者クラブの存在理由を具体的な形で内外に示す必要がある」とした記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解(2002年作成、2006年一部改訂)にも抵触する状況です。
国民・市民の疑問を解消できない記者会見のあり方には、内閣記者会に所属する報道機関側にも国内外から批判が向けられています。日本記者クラブでのオープンで十分な時間を確保した記者会見が実現するよう、各報道機関が首相官邸に要請し、その立場を広く社会に表明するよう求めます。
また、2011年以降、日常的に首相が記者の質問に応じる機会がなくなりました。特に例年3月末に新年度予算が成立した後は、首相が国会で説明する機会も急減します。官邸の権限が増大する一方で、説明の場が失われたままという現状は、民主主義の健全な発展を阻害しています。日常的に首相へ質問する機会を復活するよう、政府と報道機関に求めます。
国民・市民の「知る権利」を実現するため、メディアの労働組合や1人1人のジャーナリスト、市民らが共に声をあげることによって、今の状況を変えていきたいと思い、署名活動を始めました。ぜひ、ご賛同よろしくお願いいたします。
2020年3月5日
【呼びかけ人】
●日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)
議 長 南 彰(新聞労連)
副議長 是村 高市(全印総連)
副議長 土屋 義嗣(民放労連)
副議長 酒井かをり(出版労連)
副議長 瀬尾 元保(映演共闘)
副議長 土屋 学(音楽ユニオン)
●国会パブリックビューイング
代 表 上西 充子
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こちらは、パロディである。「週刊金曜日」3月13日号、戯作者・松崎菊也のなんと達者な「緊急事態宣言」。これも、その一部の引用。全部をお読みいただくには、ぜひ同誌の定期購読を。
総理「非常事態宣言というのは、いわばですね、まさに非常事態を、宣言することにおいて、ですね。非常事態である、ということをご理解いただき、その上において、さらにですね、いわゆる、非常事態であるということを、いち早く、え〜、宣言すること、お〜、において、え〜、政府与党のみならずですね、ま、いわば、野党のみなさまのご理解をいただいた上において、え〜、国としても、ま、やってるんだということをですね、ご理解いただく、とともにですね、さらにですね、感染拡大の、防止という事態をですね、…先手先手のみならず、後手後手になってもいいように、みなさま方と、責任を分担する上において、私の独断で、え〜、実効性のある対策を、実効性のある無しにかかわらず、実行するべくですね。と同時に、専門家の知見、等も踏まえ、ですね。専門的な知見に惑わされることなく、非常事態を宣言する、と同時にですね。国民のみなさまお一人お一人に寄り添い、…なりふりかまわず、徹底的な防止策を推し進め、国民の生命と私の政権を守る延命策、をですね、政権としても、募集するというよりは、募りたい、という観点から、え〜、寒天から、トコロテン」
(2020年3月13日)