ニューヨークからの新しい爽やかな風の予感
2012年東京都知事選ではリベラル派候補惨敗に終わったが、2013年ニューヨーク市長選では「元左翼活動家」とされるリベラル派市長候補の圧勝確実と報じられている。
各種世論調査によって、本日(11月5日)行われる市長選で当選確実視されているのは、民主党の市政監督官ビル・デブラシオ氏(52)。市政監査官とは耳慣れぬ言葉だが、public advocateの訳語でニューヨーク市では「市長に次ぐナンバー2の地位にあり、市長と同様に選挙で選任される」のだそうだ。
デブラシオ氏は01年にニューヨーク市議に初当選し、10年に市政監督官に就任した。高校時代から反核運動などに取り組み、90年代初頭まで中米ニカラグアの左派サンディニスタ民族解放戦線を募金活動などで支援していたことで知られている(毎日)、とのこと。
これまでの市政が大企業寄りの政策で「富裕層と貧困層の格差が拡大した」との現市長批判や、年収50万ドル(約4900万円)以上の市民に増税して幼児教育を拡充する公約が支持を集める(毎日)。また、病院閉鎖の回避や黒人や中南米人を狙いうちにした警察の捜査手法に制限を加えるなど、富裕層と貧困層という「市の両極」に向き合うと公約している(ロイター)という。10月の連邦政府機関一時閉鎖で「戦犯」視された共和党の不人気も追い風となり、最近の世論調査では、7割近くが「これまでと方向が異なる市政」を望むとの結果と報じられている。
さらに、人口動態もデブラシオ氏を後押ししていると指摘されている。白人比率は90年の43%から10年には33%に減少。一方、この20年間でヒスパニック系が24%から29%に増加、黒人、アジア系を加えると計64%だ。こうした非白人層は民主党支持者が目立ち、デブラシオ氏が「救済」を訴える貧困世帯も多い。
さて、ニューヨークと言えば資本主義世界のメッカ。資本主義と言えば、レーガノミクスや新自由主義を連想する。事実、現ブルームバーグ市長は紛れもない、「世界一の金持ち市長」として知名度を誇る人物。
ウィキペディアによれば、彼は、ハーバード・ビジネス・スクールで経営管理学修士号(MBA)を取得し、その後は証券会社大手のソロモン・ブラザーズに勤務。退社後に通信会社ブルームバーグを設立し、ウォール街の企業へ金融情報端末を販売して巨万の富を築き上げた、世界でも有数の大富豪とのこと。唾棄すべき「金融賭博業界」でアブク銭を掴んだ勝者、薄汚い「アメリカン・ドリーム」の体現者なのだ。
ほかならぬニューヨークでの、「ウォール街の大富豪市長」から「格差是正を掲げる左翼活動家市長」への象徴的大転換。新自由主義に揺れた振り子が方向転換のきっかけにならないか。なんとなく、爽やかで暖かい新しい風が吹き始める、そんな予兆を感じるのだが‥。
(2013年11月5日)