民主党の混沌ー特定秘密保護法案への対応
特定秘密保護法案の成否に大きく関わるものとして民主党の動向が注目されている。反対を貫くのか、自民党との妥協策に走るのか。
「毎日」の13日朝刊トップが「特定秘密保護法案 民主反対へ 修正協議応じず」と打ち、大きく耳目を集めた。そして、「北海道新聞」が続いて、同日の夕刊1面で、「民主 秘密保護法案反対へ 自公は維新と修正協議」と記事を出した。
「毎日」の記事のキモは、「民主党幹部は12日、毎日新聞の取材に、海江田万里代表ら党執行部が11日に同法案に反対で臨む方針を確認したことを明らかにしたうえで『採決で反対するだけか、対案を出すかはまだ決めていない』と説明した」というもの。
道新は、「民主党幹部は同日、仮に与党側との修正協議を行っても、大幅な内容変更は困難との見通しを示した上で『一部を修正した程度で法案に賛成すれば、民主党の存在意義がなくなる』と述べた」「国会審議で秘密指定が妥当かどうか検証できないなどの問題点が明らかになったことに加え、同法案に対する世論も厳しいため、海江田万里代表ら党執行部が反対に傾いた」としている。
ところが、13日付の民主党ホームページの記載内容は、すこし様子が違う。同党「広報委員会」名の発表は、タイトルを「特定秘密保護法案に関する一部報道に『事実と違うもの』と抗議 松原国対委員長」としている。毎日や道新の報道を真っ向否定するのではないが、「法案に反対とは言われたくない」との態度がありあり。自民との協議の余地も残しておきたいとの腹と読める。内部での意見の不一致が解消されていないということなのだろう。続いて次のように述べている。
「民主党は13日昼、国会対策役員・理事合同会議を開いた。松原仁国会対策委員長は冒頭のあいさつで、特定秘密保護法案に関し、『民主党が与党との修正協議には入らず反対する方針を固めた』とする同日の一部報道を取り上げ、…『事実と違うもの』だと抗議の意を表した。これに関連し、国家安全保障特別委員会では、特定秘密保護法案と情報公開法改正案の審議が本格化していると述べ、さらに議論を深めていくとした」というもの。
また、同党ホームページに、「役員会で『特定秘密の保護に関する法律案』に関する論点整理(メモ)を提示」とも掲載されている。「同メモは、政府案についての問題点を50項目にわたって整理したもの」「民主党としては修正案か対案を準備する方向だ」「国会審議のなかで、いろいろ問題点が浮かび上がってきた。答弁はまだまだ不十分だ」「与党にも窓は開いている」‥。
以上の記事を読んでもなにが方針かは分からない。要するに、方針は混沌としているとしか言いようがないのだろう。
ところで、「50項目の論点整理(メモ)」は、昨日来、民主党ホームページからダウンロードできる。A4・8ページの分量だが、結構な読みごたえがある。
たとえば、「『秘密保護法』制定の必要性」と標題された、冒頭の3項目は以下のとおり。
(なぜ新規立法が必要なのか)
○現在の国家公務員法、自衛隊法などの秘密保護法制では、どこがどのように問題なのか。「防衛秘密」、「特別防衛秘密」などの制度で対応できるのではないか。なぜ現行法では駄目で、新規立法が必要なのか。現行法の見直しで対応することは政府として検討したのか。
(立法の目的に合致するのか)
○政府は、外国の情報機関からの情報提供を受けるとともに共有するために必要と説明している。そもそも米国など外国からの要請がどこまでのものなのか。本法律によって外国の情報機関が情報提供・共有をするという確証はあるのか。その理由は何か。
(肝心な運用はすべて政令にゆだねられ、政府の都合で運用されるおそれ。)
○本法案は、以下のように、「特定秘密」の範囲および指定、管理や有効期限、指定者や適正評価、「知る権利」、刑罰対象行為などで、数多くの曖昧な点がある。しかし、これらの統一的な運用を図るために必要な基準は、有識者の意見を聞くものの、すべて政令に委ねられ(第18条、第20条)、政府が定めて運用することになっている。これでは、時の権力の恣意性によらない民主的で公正な運用を保障することができないのではないか。基準とともに、実際の運用についても、国会が関与して国民の監視ができるような仕組みを検討する必要があるのではないか。
以上の3項目の「徹底追及」「徹底解明」が、今月中に審議できようとはとても考えがたい。50項目全部となればなおさらのこと。この50項目のホームページでの公表を根拠に、「徹底審議を通じて廃案に追い込む姿勢」と見ることもできようし、「与党にも窓は開いている」と「自民党との妥協を探る姿勢」を見ることもできる。
私の理解だが、民主党内にも意見はさまざまなのだろう。この混沌がどう収束するかは、今のところ予断を許さない。毎日も道新も、民主党が反対に転じた理由として「同法案に対する世論の厳しい反応」を挙げている。もしかしたら、まだ「世論の厳しさ」の伝わり方が十分ではないのかも知れない。
そこで、やはり11月21日(木)午後6時半の STOP!「秘密保護法」11・21大集会が大きな意味をもつことになりそう。この集会が法案審議の帰趨を決めることになるかも知れない。
同集会には、日弁連が後援することが正式に決まった。山岸憲司会長が登壇して挨拶することになるだろう。私も万余の群衆の一人として参加する。その数を、その声を、その力を、与野党にも政府にも見せつけよう。そして、民主党を励まそうではないか。
(2013年11月14日)