「前夜?日本国憲法と自民党改憲案を読み解く」本日発売。
今朝、知人から、標題の書籍を書店でお買い求めいただいた旨の電話があった。今日が発売初日なのだ。せっかく出版していただいた出版社に赤字にならないような売れ行きを期待したい。
現代書館のホームページを開いてみた。
「前夜――日本国憲法と自民党改憲案を読み解く」
装丁 中山銀士
岩上安身・梓澤和幸・澤藤統一郎 著
12月12日発売!
A5判 並製 336ページ
定価 2500円+税
「日本国憲法と自民党改憲草案を序文から補則まで、延べ40時間にわたり逐条解釈し、現在の世界状況を鑑み、両憲法(案)の根本的相違を検討した画期的憲法論。細かいことばの解釈、250項目にわたる詳細な注釈で、高校生でも、分かりやすい本。」
と惹句があった。
http://www.gendaishokan.co.jp/new01.htm
初めから出版の予定があったわけではない。逐条解説のつもりもなかった。自民党の改憲草案にアタマにきた状態で、喋っているうちに、次回も、次々回もと、結局は12回のロングインタビューとなり、これを活字にしていただいた。
読み直して不足なところは多々ある。しかし、満足な物を作ろうと思っている内に、時は遷ろう。生きのよさが失われる。なによりも、しゃべりを起こしたものだから、私の発言も、梓澤君の力説にも、勢いがある。けっして解説に終始しているのではない。怒りがほとばしっているのだ。これはこれで、出版に値するものではないだろうか。読み物としても面白いのではなかろうか。
「前夜」という書名の提案があったときには、少し大袈裟じゃないかなとの印象をもった。前夜とは、「改憲」の前夜でもあり、再びの開戦の前夜であり、あるいは現行憲法の理念が投げ捨てられた「軍国主義国家」「全体主義国家」成立の前夜との意味であろう。既に、「Point of No Return」(後戻り不能点)一歩手前の状況にあることの警告の意が込められている。いま、そこまで行っているのかなとの思いはあった。しかし、一番熱心な読者である編集者が、この書物を通じてそのような危機感を持ったというのであれば、「前夜」というタイトルもふさわしいのだろうと、承諾した。
ところが、その後の特定秘密保護法審議の状況はいったい何ということだ。紛れもなく「前夜」にふさわしいのではないか。あっという間に、状況がこの書名に追いついてしまった。戦前、議会制民主々義の危機は、軍国主義の進展と裏腹だった。この185臨時国会の55日は、議員がその職責を放棄した過程だった。しかも、広範な国民の良識ある声に、敢えて背を向けてのことである。これは、ただ事ではない。
それだけではない。
自民党の石破茂幹事長は、会期中に自身のブログで、市民団体のデモを「テロ行為」と同一視したホンネを露わにして、抗議で撤回していた。特定秘密保護法成立後の11日の記者会見では、秘密情報の報道が場合によっては処罰対象となり得るとの見解を示し、これも直後に訂正した。ところが、本日ニッポン放送の番組で、再び元に戻った。特定秘密保護法で指定された特定秘密について、やっぱり報道の自制が必要だと訴えたのだ。こういう人物が、今時代を動かしている。
また、安倍内閣が来週始めて「国家安全保障戦略」(NSS)を決定する。明らかな、「米国とともに戦争できる国」づくりの第一歩。防衛大綱・中期防も、今後はNSSを指針とすることになる。貫かれるのは、「積極的平和主義」。集団的自衛権の行使や、多国籍軍への参加、「海兵隊」機能の強化、敵基地先制攻撃などが示唆されている。「武器輸出三原則」撤廃、愛国心の盛り込み、過剰な中国敵視が問題視されている。
「前夜」は大袈裟ではないか、そんな印象をもった私の感性が鈍いのだ。特定秘密保護法は明らかな軍事立法である。石破の論理なら、国家の安全保障はすべてに優先する。これから先、国家安全保障基本法を中核とする諸軍事立法の予定が、目白押しである。民主々義も人権も平和も極めて危うい。
「前夜」はけっして的外れでも誇張でもない。この時代に、警鐘を鳴らし続けなくてはならない。「前夜」の講読を伏してお願い申し上げる。
(2013年12月12日)