澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

開示されたNHK経営委員会議事録 ー 森下俊三は「もはや辞任は当然」

(2021年7月14日)
 NHK経営委員会議事録開示請求問題とはこういうことだ。報道の自由の旗を高く掲げて自主・自立であるべきNHKの報道番組制作現場に、明らかに違法な外部からの権力的介入が行われた。具体的には、2018年4月「クローズアップ現代+」の、かんぽ生命保険の不正販売報道の続編制作妨害である。

 見える範囲での妨害のルートは、鈴木康雄郵政グループ上級副社長(元総務事務次官)→森下俊三NHK経営委員会委員長代行→NHK経営委員会→上田良一NHK会長→NHK番組制作現場

 NHK経営委員会は、事実上「クローズアップ現代+」についての番組の作り方を注意され郵政に謝罪せざるを得ない立場に追い込まれた。消費者被害告発の有益な番組の制作が批判され、NHKトップが加害企業側に謝罪を余儀なくされたのだ。まさしく、石流れ木の葉が沈む景色である。

 このNHK経営委員会によるNHK会長への「厳重注意」を行ったのが、2018年10月23日経営委員会の席においてのこと。ところが、その議事録が公表されてこなかった。放送法では議事録作成が法的義務とされ、直ちに公表しなければならないとされているにもかかわらず、誰が請求しても出てこなかった。

 ところが、急転直下その議事録が公開となった。切っ掛けは、民事訴訟の提訴であったと思う。100名余のNHK問題に関する市民活動家らが、不開示の場合は提訴することを広言して、2018年10月23日経営委員会議事録を中心とする諸文書に関して、NHK独自に制定された情報開示請求(NHKの定めた制度では、「開示の求め」)に踏み切った。以後の経過は次のとおりである。

 2021年
 4月7日  NHKに対する文書開示の求め
 5月6日  NHK文書開示判断期間延長の連絡
 6月6日  NHK文書開示判断期間再延長の連絡
 6月14日 原告104名文書開示請求の提訴
 7月6日  NHK文書開示判断期間再々延長の連絡
 7月7日  NHK「(一部)文書開示の連絡」書を発送
 7月8日  NHK「(一部)文書開示の連絡」書を受領
 7月9日  開示文書(合計47ページ)受領
 7月10日 毎日新聞社説
 7月13日 朝日新聞社説
 7月13日 衆院総務委員会NHK経営委議事録について質疑
 7月14日 東京新聞社説

7月10日毎日新聞社説は「NHKの議事録開示 経営委の番組介入は明白」と題するもの、7月13日朝日新聞社説は「NHK経営委 視聴者への背信明らか」、そして本日の東京新聞社説は「NHK議事録 番組介入は明らかだ」という表題。なお、東京新聞は、提訴時に6月16日の社説「NHK経営委 議事録公開に応じよ」を出してもいる。

なお、地方紙では7月11日に高知新聞の「【NHK経営委】番組介入は認められない」がある。その末尾で、公開された議事録の内容についてこう言っている。

 当時の上田会長は、公になれば「非常に大きな問題になる」と抵抗している。厳重注意は現場を萎縮させ、それだけで番組介入に等しいとする見方もある。
 厳重注意の問題は、情報開示を拒んだ経営委の姿勢も含め公共放送を担うNHKへの信頼を揺るがせた。経営委の在り方や委員の選任についても検証する必要がある。

 経営委の選任がまことにひどい。これは、安倍晋三の恣意的人事の典型と言ってよいだろう。その恣意的人事が、公共放送を担うNHKへの信頼を揺るがせ、有意義なNHKの番組潰しに加担したのだ。今、誤った人事を象徴するものが、森下俊三の任命であり、再任であり、その委員長職就任である。

東京新聞の末尾を引用させていただく。

 かんぽ生命の不正販売では実に多くの被害者が出た。経営委の姿勢は視聴者をも裏切ったことになる。放送の自主自律を脅かしたことは明らかだ。
 経営委は「議論は非公開が前提だった」ことを理由に、速やかに開示すべき議事録を非開示としてきた。これも放送法の定めに反する。NHKの第三者機関が昨年五月と今年二月に出した「開示すべきだ」との答申も拒んできた。視聴者が提訴した後にようやく開示した。それまで約三年もかかったこと自体が異常である。
 森下委員長は国会でも番組介入を否定していたが、どう言い逃れするつもりか。経営委員は国会の同意を得て首相が任命するが、もはや辞任は当然と考える。

 まったく同感である。このような人物を、公共放送のあり方を左右する地位に留めておいてはならない。「もはや辞任は当然」ではないか。

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