澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

菅義偉は地元横浜市で大敗した。野党共闘の実績が一つ積み上げられた。

(2021年8月24日)
 「20時当確」という言葉は聞いていたが、「ゼロ打ち」は知らなかった。8月22日20時。横浜市長選の投票箱が閉まると同時に、メディア各社は一斉に山中竹春当確と報じた。開票率ゼロパーセントで当確を打ったのだ。この瞬間に、小此木八郎の大敗が確実となり菅政権が大きく揺れた。

 この選挙では、誰が当選するかではなく、もっぱら小此木八郎の勝敗が焦点だった。菅政権の命運を占うものとして注目されたのだ。菅義偉の政治家としての出身地、いまだに地元とも、お膝元とも言われる横浜である。菅と小此木との関係は、切っても切れない間柄。しかも、小此木八郎は現役閣僚を辞しての出馬。菅も、ここは自分の政治生命に直結する踏ん張りどころと、なりふり構わず前面に出た。その結果が、「ゼロ打ち」である。菅から見れば「ゼロ打たれ」。自業自得とは言え、菅の衝撃やいかばかり。

 「ゼロ打ち」は、小此木ではなく、明らかに菅内閣への不信任である。とりわけ、コロナ対策への無為無策に対する市民の苛立ちの表明。コロナ禍の中で、市民は政権のあり方が自分の命や暮らしに直結することを実感し始めているのだ。だから、投票率も上がった。だから、次の総選挙、決して菅義偉安泰ではないのだ。

 菅の選挙区は神奈川2区、横浜市の西区・南区・港南区がその区域。今回の山中票と小此木票の出方を較べてみると以下のとおり。

 西 区 (山中)13,103票 30.79% (小此木)9,362票 22.00%
 南 区 (山中)23,765票 31.84% (小此木)18,275票 24.10%
 港南区 (山中)31,246票 33.72% (小此木)21,016票 24.10%

 1994年の小選挙区制導入以来、8回の選挙で菅義偉は連続当選を果たしている。その菅の選挙区で、小此木は圧倒的に負けているのだ。闘い方次第では、次の選挙で菅落選もあり得なくはない。

 カジノ(IR)問題はやや影が薄くなった感があるが、本日の朝日社説がこう論じている。これは、重要な指摘だと思う。

 首相は安倍前政権の官房長官当時からIRの旗振り役を務め、地元横浜市は候補地として有力視されていた。にもかかわらず、今回、(IR反対に転じた)小此木氏支持を打ち出したのは、市民の間に反対が強いとみて、野党系市長の誕生阻止を最優先したのだろう。
 IRには、ギャンブル依存症の増加やマネーロンダリング(資金洗浄)、治安の悪化などの懸念がある。推進の林氏の得票率は13%にとどまった。首相はこの機会に、IR政策全体の見直しに踏み込むべきだ。でなければ、小此木氏支援はご都合主義の極みというほかない。
 本来であれば、IR誘致をどうするのか、方針を転換するならするで、党内論議を重ね、意思統一をしたうえで有権者に提示するのが、政党としてあるべき姿だろう。自民党のガバナンスもまた問われている。

 そして、もう一つの注目点が、「カジノ反対の市長を誕生させる横浜市民の会」などの市民運動とも連携した野党共闘の成果である。朝日社説は、こう触れている。

「当選した山中氏は、共産、社民両党も支援する、事実上の野党統一候補だった。内閣支持率が下がっても、野党の支持率は低迷が続くが、しっかりした受け皿を用意できれば、政権への批判票を呼び込めることが示された。総選挙でも有権者に認められる選択肢を示せるか、野党の協力が試される。」

 野党は4月の衆参3補選・再選挙で「全勝」し、東京都議選でも議席を伸ばしている。共闘ができれば大きな勝利の展望が開けることの実証を、また一つ積み上げた。共闘は難しいが、総選挙目前の今喫緊の課題なのだ。

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