澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

本郷三丁目交差点「かねやす」前で ー 「本郷湯島九条の会」からの訴え

(2023年5月9日)
 本日は5月9日、第2次大戦の主戦場だったヨーロッパの戦争が終わった日です。ドイツの連合国への降伏文書調印時刻は、ベルリン時間で1945年5月9日午前0時15分であったとされています。この歴史的な戦勝記念日を5月8日とする国も、5月9日とする国もありますが、いずれにせよ本日以後ヨーロッパの戦禍は止みました。

 5月9日以後も、連合国と絶望的な戦いを続けたのは日本でした。4月末までに、ムソリーニはパルチザンに処刑され、ヒトラーは自殺しました。残るヒロヒトだけが生き延びていて、「もう一度戦果を上げてからの有利な和睦」に固執して、日本各地の空襲や沖縄地上戦の悲劇を招いただけでなく、ヒロシマ・ナガサキの惨劇にまで至って、無条件降伏を余儀なくされました。

 こうして、天皇の国・大日本帝国は、3か月後の8月に亡びました。自ら始めた戦争によって、近隣諸国にこの上ない惨禍をもたらしてのことです。新しい日本の再生は、再びの戦争を繰り返さない、平和国家の建設以外にはあり得ませんでした。

 もっとも、戦争への反省の仕方は、二通りありました。一つは、軍事力が足りなかったという反省の仕方です。もっと強い軍隊をもち、もっと強力な武器を備え、もっと国防思想を高め、国力をもっともっと軍事に傾注していれば、世界を敵にまわしても戦いに負けることなかった。今回は負けたが、今に、どの国にも負けない軍事大国に日本を育てなければならない、という反省です。

 これは、戦争の準備こそが自国の安全を保障するという考え方です。他国は全て敵、隙あらば侵略を狙っているのだから軍事的な威嚇をもって敵に対処しなければならない。自国の軍事力を強大化し戦争の態勢を整えることこそが、敵国に対して侵略の意図を思いとどまらせる抑止力となる。この軍事的な抑止力こそが自国の安全を保障するもの、という考え方。

 これに対峙して、平和を獲得するためには平和に徹しなければならない、という考え方があります。近隣諸国も自国民と同様に平和を願う人々と信頼して、すべてのトラブルは外交で解決することにより平和を実現しようという考えです。自国の安全のために戦争を準備するというやり方は、明治維新以来の大日本帝国の基本路線であり、その失敗に学んだはずではないか、という批判に立ってのものです。

 相手国に対する不信は、自国に対する不信となって返ってくる。敵視は敵視を生み、仮想敵国に対する軍備の増強は際限のない軍拡競争に陥るばかり。新生日本は平和憲法を制定し、軍隊を持たない国、軍事力に頼らない国としての大方針を確定しました。文字通り、戦争のない世界を目指して、人類の理想を自ら実践する道を選んだのです。

 残念ながら、平和に徹する道の実践は長続きしませんでした。しかし、不徹底ながらも、憲法9条は生き続け、その生命力を保ち続けて今日に至っています。

 これを「平和を望むなら戦争の準備を」という思想に転換しようというのが、戦後一貫した保守政権の立場です。安倍政権で質的転換が起こり、岸田政権がこれを完成しようとたくらんでいます。憲法の危機、平和の危機と、心を痛めざるを得ません。

 昨年の12月16日、「安全保障3文書」が閣議決定となりました。その基本思想は、軍事大国化の推進によって我が国の安全を守ろうというものです。幾つかのキーワードがありますが、まずは「大軍拡・大増税」。皆さん、容認できますか。

 そして、「敵基地攻撃能力保有」です。明らかに専守防衛ではなく、他国を攻撃することもあるぞ、という宣言です。しかも、集団的自衛権行使と組み合わせて、日本ではなく同盟国の軍隊が攻撃を受けた際にも、敵基地攻撃ができるし、そのような能力を持とうと言うのです。

 さらにもう一つのキーワードが、「武器輸出」です。防衛産業を育成し、武器輸出を認める方向に踏み出すことを明確にしています。ご覧ください、本日のプラスターは、武器輸出を認めてはならない、というものです。

★武器輸出 憲法9条目のかたき
★緊張を高めてもうける武器輸出
★武器輸出 9条の国崩壊す
★武器輸出 あらたな戦前目の前に
★武器輸出 死の商人がほくそ笑む
★戦争へ 軍拡増税 武器輸出
★9条の陰でたくらむ武器輸出
★馬鹿げてる! 武器輸出、もうけた金で武器購入。

 かつて、「武器輸出3原則」というものがありました。三木内閣以来、その運用として、事実上武器の輸出はしないことを取り決めてきました。ところが、第2次安倍政権の2014年、「装備移転3原則」と名前を変えて、武器輸出の道を開きました。

 そして、岸田政権は「防衛産業強化法案」を提出して、防衛産業を育成し、さらに武器輸出の道を広げようとしています。これが、本日衆議院を通過しようという情勢と報じられています。同盟国を強化することによって、集団的に抑止力を高めようという発想によるものです。

 皆さん、武器とは人を殺傷する道具ではありませんか。大量の殺人や傷害、建造物の破壊以外に、役に立つものではありません。そんなものを製造する産業を育成しようという方針が、明らかにまちがっています。武器輸出となれば、なおさら非人道と指摘せざるを得ません。

 私たちは、平和のためには戦争の準備をせよという、デマに踊らされてはなりません。今こそ平和憲法を擁護して、国際平和に貢献しなければならないと思います。それこそが、戦争の惨禍を経て生き残った私たちの、人類の理想に対する責務だと思うのです。

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