自民党とは何であるか、自民党議員とはいかなる存在であるか。このことを広く世に知らしめた広瀬めぐみの功績を忘れてはならない。
(2024年8月16日)
昨8月15日。不敗の大日本帝国が無条件降伏したその記念の日に、腐敗の広瀬めぐみが参議院議員の職を辞した。大日本帝国の降伏は明らかに遅すぎたが、広瀬めぐみの辞職は合点がいかない。チト早すぎたのではないか。
國体の護持にこだわっての聖断の遅疑逡巡は数十万の同胞の生命を奪った。その罪万死に値する。これに較べれば、広瀬の罪は取るに足りない。一死に値するほどでもありえない。が、検察権力と敢然と闘ってこそ、弁護士にして国会議員ではないか。特捜への卑屈な迎合ぶりは、あまりにも惨めでみっともない。もっと立派な権力との闘い方を見せて欲しかった。
広瀬はこの日、議員辞職に関するコメントを報道各社に発表している。公設秘書詐欺疑惑については、「事務所の経費捻出のため、公設第1秘書の配偶者に公設第2秘書をお願いし、秘書給与から資金提供を受けたことは事実」との説明。これは往生際が悪い。この期に及んで、「秘書給与から資金提供を受けた」では、詐欺を認めたことにはなっていない。潔さのカケラもない、中途半端な「自白」である。
広瀬の公式ホームページの冒頭に、「岩手にめぐみ」とある。これはブラックジョークだ。「岩手に災厄」「岩手に恥」と書き改めねばならない。この人が岩手の印象に与えたマイナスの大きさを思う。が、自民党とは何か、自民党議員とはいかなる存在かを広く世に知らしめた、この人の功績を忘れてはならない。
なお、ホームページには、いまだに、「【抗議文】 広瀬めぐみ議員の『幽霊公設秘書疑惑』と題する記事に関して」などの掲載があり、「平日は主として遠野市に在住してリモートワークで支援者の方々のリスト作成・更新作業や祝文作成などをし、土日は盛岡に在住して、上記のような作業のほか、盛岡事務所で事務作業をしたり、私の駅などへの送迎をしてもらったりしました」「以上のとおり、令和4年12月から同5年8月まで、B氏には公設第二秘書としてしっかりと働いていただいていましたことをご説明させていただきました」などと述べられている。もちろん、国民にも県民にも、そして自民党へも、謝罪の言葉は一切ない。
エッフェル視察も、不倫疑惑も、議会での居眠りも、褒められたことではないが犯罪ではない。しかし、公設秘書詐欺疑惑はれっきとした犯罪の指摘である。しかも、政治資金規正法上の不記載罪などは異なる実質犯。メディアにたたかれ、自民党を離党し、議員を辞任した…だけでは済まない。起訴を前提に、「逮捕はいつか」が当面の問題となる。国会議員の、公費詐取事案である。しかも、ウソで固めた反論の準備もあった。常識的には、証拠を散逸させないように逮捕が予想される。身柄事件として起訴に至り保釈請求が認められてしかるべき事案。
だが、一部の報道では、逮捕ないままの在宅起訴の方針とささやかれている。真偽のほどは定かではないが、この問題に火を付けたデイリー新潮の報道が以下のとおりである。
「広瀬めぐみ参議院議員(58)が、8月15日、秘書給与を国から詐取していた疑惑を認めて議員辞職した。検察は広瀬氏を逮捕せず「在宅起訴」する方針だという。」
「7月に女性初の検事総長に就任したばかりの畝本直美氏は逮捕に後ろ向きで、在宅起訴する方針を固めているとのことです。表向きは逮捕要件となる『逃亡のおそれ』『罪証隠滅のおそれ』がないという判断ですが、実際はこれから総裁選を控える政権与党への配慮があると思われます」
いずれ詐欺の罪名で起訴があり、有罪判決の言い渡しあることはほぼ間違いのないところ。公職選挙法や政治資金規正法違反事件ではないから、公民権停止は問題にならないが、弁護士資格の剥奪は免れない。議員の職だけでなく、弁護士という職も失わざるを得ない。
弁護士法7条1項一号は、「禁錮以上の刑に処せられた者」を、(弁護士の欠格事由)とする。詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役だから、広瀬に対する有罪判決の確定は弁護士資格の自動的な剥奪を意味する。仮に、執行猶予が付せられても「刑に処せられた」ことに変わりなく、弁護士資格を喪失する。執行猶予を取り消されることなく猶予期間満了となれば資格は回復するが、軽々に入会を認める弁護士会があるだろうか。
辞職した広瀬の欠員を埋める参院岩手選挙区補選は、10月27日(日)投開票が有力だという。おそらくは、この補選での自民党候補の当選はあり得ず、野党候補が議席を獲得することになるだろう。そのとき、もう一度、広瀬めぐみの民主主義への貢献に感謝しよう。